(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168885
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】通信システムおよび通信装置
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20241128BHJP
H04W 4/80 20180101ALI20241128BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20241128BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20241128BHJP
【FI】
H04W52/02 110
H04W4/80
H04W24/08
H04W84/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085916
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】501397920
【氏名又は名称】旭光電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003465
【氏名又は名称】弁理士法人OHSHIMA&ASSOCIATES
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴志
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA43
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】セットになった端末機器1が無線信号を送信したことを検知して、この無線信号を受信できるようにすることにより、不要な電力消費をなくす。
【解決手段】端末機器1からの無線信号を受信して、所定の動作を行う通信装置2は、端末機器1に隣接して設置あるいは端末機器1の電波近傍界内に設置されて、近距離無線通信を行う。通信装置2は、待受時に無線信号を受信したとき、無線信号の電波強度に基づいて端末機器1からの送信であるかを検知する検知部20と、端末機器1からの送信に応じて所定の動作の制御を行う制御部とを備え、検知部20は、受信した無線信号の電波強度が移動体通信の電波強度や無線LANの電波強度よりも高く設定された所定値を超えているとき、端末機器1からの送信であるとして起動信号を出力し、制御部18は、無線通信部16を起動する。無線通信部16は端末機器1からの無線信号を受信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定期的にあるいは不定期に無線通信を行う端末機器と、端末機器からの無線信号を受信して、所定の動作を行う通信装置とからなる通信システムであって、通信装置は、端末機器に隣接あるいは電波近傍界内に設置されて、端末機器と近距離無線通信を行い、
通信装置は、待受時に無線信号を受信したとき、無線信号の電波強度に基づいて端末機器からの送信であるかを検知する検知部と、端末機器からの送信に応じて所定の動作の制御を行う制御部とを備え、
検知部は、受信した無線信号の電波強度が移動体通信の電波強度や無線LANの電波強度よりも高く設定された所定値を超えているとき、端末機器1からの送信であるとして起動信号を出力し、制御部は、起動信号に応じて所定の動作を起動することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
通信装置は、無線信号を送受信する無線通信部を有し、制御部は、起動信号が入力されると、無線通信部を起動することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
通信装置は、サーバと通信を行う通信部を有し、端末機器は、自機において取得した取得情報を含む無線信号を送信し、端末機器からの送信であることを検知した検知部が起動信号を出力すると、制御部は、無線通信部を起動し、無線通信部は、端末機器からの無線信号を受信し、通信部は、取得情報をサーバに送信する動作を行うことを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
端末機器に隣接あるいは電波近傍界内に設置され、端末機器と近距離無線通信を行い、定期的にあるいは不定期に端末機器からの無線信号を受信して、所定の動作を行う通信装置であって、
待受時に無線信号を受信したとき、無線信号の電波強度に基づいて端末機器からの送信であるかを検知する検知部と、端末機器からの送信に応じて所定の動作の制御を行う制御部とを備え、
検知部は、受信した無線信号の電波強度が移動体通信の電波強度や無線LANの電波強度よりも高く設定された所定値を超えているとき、端末機器からの送信であるとして起動信号を出力し、制御部は、起動信号を受け取ると、所定の動作を起動することを特徴とする通信装置。
【請求項5】
無線信号を受信する無線通信部と、サーバと通信を行う通信部とを備え、端末機器から自機において取得された取得情報を含む無線信号が送信されると、検知部は、端末機器からの送信であることを検知して、起動信号を出力し、無線通信部は、起動して無線信号を受信し、通信部は、取得情報をサーバに送信することを特徴とする請求項4記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置が端末機器の近傍に設置され、通信装置と端末機器とが近距離無線通信を行う通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリで駆動される端末機器と通信装置とが無線通信を行う通信システムにおいて、待受時の電力消費を削減するために種々の対策が取られている。例えば、通信装置が間欠的に受信動作を行う。しかし、受信のタイミングが端末機器の送信のタイミングと合わないと、無線信号を受信できず、無駄に電力が消費されてしまう。
【0003】
そこで、通信装置の電力消費を抑制しながら、端末機器からの無線信号を確実に受信できるようにした通信システムが特許文献1に記載されている。この通信システムでは、端末機器は無線信号の送信を複数回繰り返し、通信装置は、無線信号の信号強度の検出を複数回繰り返し、信号強度の検出結果に基づいて、無線信号を受信するための受信機能を起動または停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通信システムでは、無線信号を受信して、その信号強度が所定値以上であれば、無線信号が受信される。この場合、送信元の端末機器に関係なく、無線信号が受信される。しかし、端末機器と通信装置とがセットになって設置されるような、特定の端末機器と無線通信を行う通信システムにおいては、関係のない端末機器と無線通信を行うことになり、不要な電力消費が生じる。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、セットになった端末機器が無線信号を送信したことを検知して、この無線信号を受信できるようにすることにより、不要な電力消費をなくすことができる通信システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通信システムは、定期的にあるいは不定期に無線通信を行う端末機器と、端末機器からの無線信号を受信して、所定の動作を行う通信装置とからなり、通信装置は、端末機器に隣接あるいは電波近傍界内に設置されて、端末機器と近距離無線通信を行う。通信装置は、待受時に無線信号を受信したとき、無線信号の電波強度に基づいて端末機器からの送信であるかを検知する検知部と、端末機器からの送信に応じて所定の動作の制御を行う制御部とを備え、検知部は、受信した無線信号の電波強度が移動体通信の電波強度や無線LANの電波強度よりも高く設定された所定値を超えているとき、端末機器からの送信であるとして起動信号を出力し、制御部は、起動信号に応じて所定の動作を起動する。
【0008】
端末機器以外のセットになっていない通信機器からの無線信号の場合、電波強度が所定値よりも小さいので、検知部は、この無線信号を受信しても、起動信号を出力しない。通信装置は、所定の動作の起動を行わず、待受状態を継続する。
【0009】
通信装置は、無線信号を送受信する無線通信部を有し、制御部は、起動信号が入力されると、無線通信部を起動する。所定の動作として、端末機器からの無線信号の受信が行われる。また、通信装置は、サーバと通信を行う通信部を有し、端末機器は、自機において取得した取得情報を含む無線信号を送信し、端末機器からの送信であることを検知した検知部が起動信号を出力すると、制御部は、無線通信部を起動し、無線通信部は、端末機器からの無線信号を受信し、通信部は、取得情報をサーバに送信する動作を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、近傍に設置されてセットになった端末機器からの強い電波強度の無線信号のみを検知することにより、周囲の弱い電波強度の無線信号を無視することができ、不要な受信動作をなくすことができる。したがって、通信装置の待受時の電力消費を低減でき、バッテリの長寿命化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る通信システムの全体構成を示す図
【
図3】通信装置の待受時に端末機器が無線信号を送信したときの通信動作のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る通信システムについて説明する。
図1に示すように、通信システムは、無線通信を行う端末機器1と、端末機器1からの無線信号を受信して、所定の動作を行う通信装置2と、端末機器1を管理するサーバ3とから構成される。端末機器1は、通信装置2と互いに無線通信を行い、通信装置2は、ネットワーク4を通じてサーバ3と通信を行う。
【0013】
端末機器1は、各種の設備や監視機器、医療機器あるいはテレメータ、センサなどの産業機器といった通信機能を有する機器とされ、持ち運びできる形態での利用や、固定設置で利用される。通信装置2は、無線ルータ、アクセスポイントなどのネットワーク接続用の通信機器とされ、端末機器1とセットで設置される。通信装置2と端末機器1とは通信距離が短い近距離無線通信を行い、通信装置2は、端末機器1に隣接して設置される、あるいは端末機器1の電波近傍界内に設置される。ここでは、近距離無線通信として、ブルートゥース(登録商標)、ZigBee(登録商標)などの小電力無線が用いられ、省電力な通信を行える。例えば、2.4GHzの近距離無線通信の場合、電波近傍界領域は発信源から数cm~約10cmの距離の領域となる。
【0014】
図2に示すように、端末機器1は、アンテナ10を通じて近距離無線通信による無線信号の送受信を行う無線通信部11と、端末機器1全体の制御を司る制御部12とを備え、バッテリ13により駆動される。制御部12は、バッテリ13の残量などの自機の状態に関する情報を取得する。また、周囲の状況や他の機械の状況などの外部からの情報を取得してもよい。そして、制御部12は、情報を取得すると、取得情報を発信するために無線通信部11を起動する。無線通信部11は、取得情報を含む無線信号を送信する。なお、情報の取得は定期的にあるいは不定期に行われ、これに伴って通信装置2への送信も定期的にあるいは不定期に行われる。
【0015】
通信装置2は、アンテナ15を通じて近距離無線通信による無線信号の送受信を行う無線通信部16と、サーバ3と通信を行う通信部17と、通信装置2全体の制御を司る制御部18とを備え、バッテリ19により駆動される。そして、制御部18は、端末機器1からの送信に応じて端末機器1に関する所定の動作の制御を行う。通信部17は、インターネット網や移動体通信網などのネットワーク4を通じてサーバ3と間接的あるいは直接的に通信を行う。サーバ3は、遠隔で端末機器1の監視や管理を行う。
【0016】
ここで、通信装置2は、端末機器1と通信を行うために、無線信号を待ち受けている。この待受時に通信装置2では、無線信号を受信するために常に無線通信部16は電力を消費している。また、通信装置2の周囲には、移動体通信による電波や無線LANによる電波が存在している。
【0017】
例えば、近距離無線通信のブルートゥースでは、2.4GHz帯の電波が使用され、無線LANでも2.4GHz帯の電波が使用される。なお、電子レンジやワイヤレススピーカでも同じ周波数帯の電波が発せられる。
【0018】
このような関係ない周囲に存在する通信機器からの通信を受ける毎に受信に伴い制御部18が作動してしまうため、無線環境が多い場所に設置された通信装置2は不要な受信に伴う制御電力を消費している。そこで、待受時の消費電力の低減を図るために、端末機器1から無線信号が送信されたときだけ、無線信号を受信できるようにする。
【0019】
まず、通信装置2と端末機器1とは隣接して設置されているので、通信装置2は端末機器1から送信される無線信号を上記の他の電波と比べて非常に強い状態で受信できる。電波強度は通信間の距離の2乗に反比例するので、例えば、距離3mにあるものを10cmまで近づけると、電波強度は1000倍まで増加する。
【0020】
そこで、通信装置2は、待受時に無線信号を受信(受電)したとき、無線信号の電波強度に基づいて端末機器1からの送信であるかを検知する検知部20を加えられている。検知部20は、アンテナ21を通じて受信した無線信号の電波強度に基づいて強度信号を生成して、強度信号に基づいて電波強度が所定値を超えているか否かを検知する。端末機器1からの無線信号の場合、近距離のため無線信号の電波強度は所定値以上となるので、検知部20は、端末機器1からの送信であるとして、制御部18に受信動作を開始するための起動信号を出力し、所定値を超えていないとき、何も出力しない。所定値は、周囲に存在している移動体通信の電波強度や無線LANの電波強度よりも高く設定されている。
【0021】
前記したように、電波強度は通信間の距離の2乗に反比例するので、距離10cmにあるものを3mまで離すと、電波強度は1/1000まで低下する。仮に端末機器1からの距離が10cmで送信電力は10mWの条件で検知部20が検知する場合において、周囲に1Wの送信電力で出力するWI-FIルータがあっても、距離が1m以上離れると、その送信電波の電波強度は検知部20の所定値(検知閾値)以下となるため、影響を与えない。
【0022】
制御部18は、検知部20からの起動信号が入力されると、無線通信部16を起動する。無線通信部16は、起動すると、端末機器1からの無線信号を受信可能となる。起動信号が入力されない場合、制御部18は、無線通信部16を起動せず、通信装置2は待受状態を継続する。通信装置2が待受状態にあるとき、検知部20のみは受信(受電)可能な状態にあるが、検知部20からの起動信号を受けるまで制御部18および無線通信部16は動作しないので、電力を消費しない。
【0023】
次に、通信装置2の待受時に端末機器1が無線信号を送信したときの通信システムの通信動作を
図3に基づいて説明する。端末機器1において、例えばバッテリの残量が少なくなった、あるいはバッテリの残量を検知したといったような事象が発生したとき、制御部12は、この事象に関する情報を取得して、報知すべき取得情報を生成する。そして、制御部12が無線通信部11を起動すると、無線通信部11は、取得情報を含む無線信号を送信する。
【0024】
通信装置2が待受状態にあるとき、検知部20が無線信号を受信する。
図4に検知部20における検波回路を示す。21は検知用のパターンアンテナ、22は特定の周波数帯、ここでは2.4~2.5GHz以外の電波を減衰するバンドパスフィルタ、23は積分回路、24は増幅回路、25はコンパレータである。検波回路において、受信した無線信号のうちバンドパスフィルタ23を通過した高周波信号を半波整流して、低周波信号を取り出して増幅し、強度信号を生成する。
【0025】
受信した無線信号の電波強度に対応する強度信号がコンパレータ25の+入力端子に入力し、-端子には、所定値に対応する基準信号が入力される。強度信号と基準信号が比較され、その大小に基づいて端末機器1からの送信か否かが判別される。端末機器1からの無線信号に対する強度信号は基準信号よりも大であるので、コンパレータ25から起動信号が出力される。
【0026】
制御部18は、起動信号が入力されると、無線通信部16を起動する。無線通信部16は、起動して、端末機器1から取得情報を含む無線信号を受信する。端末機器1は、無線信号を送信し終わると、動作を停止する。通信装置2の制御部18は、受信した無線信号から取得情報を取り出し、通信部17を起動する。通信部17は、取得情報をサーバ3に送信する。通信装置2は、無線信号を受信した後、一定時間受信がないとき、待受状態になる。サーバ3では、取得情報に基づいて端末機器1の監視や管理を行う。
【0027】
端末機器1以外の他の通信機器が発信した無線信号を受信した場合、通信装置2の検知部20は、同様に強度信号を生成するが、前記したように無線信号の電波強度は距離の2乗に反比例して減衰することから、他の通信機器から届く無線信号の電波強度は、隣接する端末機器1からの無線信号の電波強度よりも相当に小さく、所定値よりも小さくなる。そのため、検知部20から起動信号は出力されない。無線通信部は起動されず、通信装置2は待受状態を継続する。
【0028】
したがって、通信装置2の近傍に設置された端末機器1からの非常に強い電波のみを検知して、この無線信号を受信することにより、通信が行われていない待受中の無線通信部16および制御部18をオフにして、電力削減を行えると同時に、移動体通信や無線LANなどの周囲の電波による不要な無線通信部16および制御部18の起動も削減でき、無駄な電力消費を減らすことができる。これによって、バッテリの長寿命化を図ることができ、バッテリ交換等のメンテナンスの手間を極力省くことができる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。通信装置2における起動時の所定の動作として、端末機器1からの呼び出しに応答して、端末機器1と双方向に通信を行ってもよい。
【0030】
また、端末機器1と通信装置2は近距離にあることから、検知部20を電波発電、すなわち受信した無線電力により発電して、検知部20を起動して、上記の機能を行うように構成してもよい。これにより、消費電力の削減量が増える。
【0031】
さらに、定期的に通信するときの時間間隔が固定されている場合、次回の通信が行われる直前まで検知部20を含めた回路をタイマーでオフにする構成でもよい。直前の決められた時間になると、検知部20や制御部18が起動する。これによっても消費電力の削減量を増やすことができる。
【符号の説明】
【0032】
1 端末機器
2 通信装置
3 ネットワーク
4 サーバ
16 無線通信部
17 通信部
18 制御部
19 バッテリ
20 検知部