(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168888
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】テニスボール
(51)【国際特許分類】
A63B 39/00 20060101AFI20241128BHJP
A63B 45/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A63B39/00 Z
A63B45/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085920
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】阪本 尚桂
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 亮平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森田 康揮
(57)【要約】
【課題】十分に補強されたコア4を含んでおり、かつ適正な質量を有するテニスボール2の提供。
【解決手段】テニスボール2は、コア4、フェルト6及びシーム8を有している。コア4は、ゴム組成物が架橋されることで形成されている。このゴム組成物は、基材ゴムとミクロフィブリル化繊維とを含んでいる。ミクロフィブリル化繊維の好ましい量は、基材ゴム100質量部に対し、5.0質量部以上30.0質量部以下である。好ましいミクロフィブリル化繊維は、セルロースナノファイバーである。好ましい基材ゴムは、イソプレン系ゴムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと外皮とを備えており、
上記コアが、ゴム組成物から形成されており、
上記ゴム組成物が、基材ゴムとミクロフィブリル化繊維とを含む、テニスボール。
【請求項2】
上記ミクロフィブリル化繊維が植物由来である、請求項1に記載のテニスボール。
【請求項3】
上記ミクロフィブリル化繊維がセルロースナノファイバーである、請求項2に記載のテニスボール。
【請求項4】
上記ゴム組成物が、100質量部の基材ゴムと、5.0質量部以上30.0質量部以下のミクロフィブリル化繊維とを含む、請求項1から3のいずれかに記載のテニスボール。
【請求項5】
上記基材ゴムの主成分がイソプレン系ゴムである、請求項1から3のいずれかに記載のテニスボール。
【請求項6】
上記イソプレン系ゴムが天然ゴムを含んでおり、この天然ゴムの、全ての基材ゴムに対する比率が、30質量%以上である、請求項5に記載のテニスボール。
【請求項7】
上記ゴム組成物の10℃における複素弾性率(10Hz)が、13.5MPa以上16.5MPa以下である、請求項1から3のいずれかに記載のテニスボール。
【請求項8】
上記ゴム組成物の10℃における損失正接(10Hz)が、0.065以上0.070以下である、請求項1から3のいずれかに記載のテニスボール。
【請求項9】
(1)ゴムラテックスにミクロフィブリル化繊維を添加して、混合液を得る工程、
(2)上記混合液を凝固させて、マスターバッチを得る工程、
(3)上記マスターバッチに添加剤を添加して、ゴム組成物を得る工程、
(4)上記ゴム組成物を加圧及び加熱して、ハーフシェルを得る工程、
(5)2のハーフシェルを貼り合わせて、コアを得る工程、
並びに
(6)上記コアの表面にフェルトを貼り付ける工程
を備えた、テニスボールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、テニスボールを開示する。詳細には、本明細書は、テニスボールのコアの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
テニスボールは、コアと、このコアを覆う外皮とを有している。コアは、中空である。コアは、ゴム組成物が架橋されて形成される。このコアは、テニスボールの反発性能に寄与しうる。コアのためのゴム組成物の一例が、特開2019-17996公報に開示されている。このゴム組成物は、無機充填剤を含んでいる。この無機充填剤は、ゴムを補強しうる。この無機充填剤は、テニスボールの反発性能に寄与しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2019-17996公報に開示されたテニスボールでは、無機充填剤による補強効果は不十分である。もしコアが、多量の充填剤を含有すれば、このコアはテニスボールの反発性能に寄与しうる。しかし、多量の充填剤の含有は、コアの高密度を招く。密度の高いコアは、国際テニス連盟の、質量に関する規格への、テニスボールの適合を阻害しうる。
【0005】
本出願人の意図するところは、質量が適性であってかつ十分に補強されたコアを有する、テニスボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するテニスボールは、コアと外皮とを有する。このコアは、ゴム組成物から形成される。このゴム組成物は、基材ゴムとミクロフィブリル化繊維とを含む。
【発明の効果】
【0007】
このテニスボールでは、ミクロフィブリル化繊維によってコアが十分に補強される。このコアでは、補強材及び充填剤は、少量で足りる。このコアを有するテニスボールの質量は、過大ではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るテニスボールが示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0010】
[テニスボール]
図1に、テニスボール2が示されている。このテニスボール2は、コア4、2枚のフェルト6及びシーム8を有している。これらフェルト6及びシーム8は、外皮10を形成している。この外皮10は、コア4を覆っている。テニスボール2の外径は、6.54cm以上6.86cm以下が好ましい。テニスボール2の質量は、56.0g以上59.4g以下が好ましい。
【0011】
[コア]
コア4は、球形状を有している。このコア4は、中空である。コア4の厚さは、一般的には、3.0mmから4.0mmである。コア4には、圧縮ガスが充填されうる。コア4の内圧が、大気圧と同じであってもよい。コア4の材質は、後に詳説される。
【0012】
[フェルト]
それぞれのフェルト6は、ダンベルに類似の形状を有している。このフェルト6は、コア4に貼り付けられている。貼り付けは、接着剤(ラテックス)によって達成されている。テニスボール2の外観は、主としてフェルト6の外観に依存する。本実施形態では、フェルト6の色は黄色である。このフェルト6により、国際テニス連盟の規格に適合した、テニスボール2の色が達成される。フェルト6の色が、白であってもよい。この規格への適合の必要がないテニスボール2の場合、種々の色のフェルト6が採用されうる。フェルト6以外のシートから、外皮10が形成されてもよい。
【0013】
[シーム]
シーム8は、一方のフェルト6と他方のフェルト6との間に位置している。シーム8は、ゴム組成物が架橋されることで得られうる。シーム8の幅は、2.0mm以上8.0mm以下である。
【0014】
[コアの材質]
コア4は、ゴム組成物が架橋されることで形成されている。
【0015】
[基材ゴム]
コア4のゴム組成物は、基材ゴムを含んでいる。基材ゴムに適したゴムとして、イソプレン系ゴムが挙げられる。イソプレン系ゴムは、テニスボール2の反発性能に寄与しうる。イソプレン系ゴムには、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、高純度化天然ゴム、脱タンパク質天然ゴム及びポリイソプレンが含まれる。ゴム組成物が、2種以上のイソプレン系ゴムを含んでもよい。
【0016】
基材ゴムとして、イソプレン系ゴム以外のゴムが採用されてもよい。イソプレン系ゴム以外のゴムとして、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体及びアクリルゴムが例示される。
【0017】
ゴム組成物が、イソプレン系ゴムと、イソプレン系ゴム以外のゴムとを含んでもよい。反発性能の観点から、基材ゴムの主成分がイソプレン系ゴムであることが、好ましい。イソプレン系ゴムの、全ての基材ゴムに対する比率は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。この比率は、理想的には100質量%である。
【0018】
反発性能の観点から特に好ましい基材ゴムは、天然ゴムである。ゴム組成物が、天然ゴムと、他のゴムとを含んでもよい。反発性能の観点から、基材ゴムの主成分が天然ゴムであることが、好ましい。天然ゴムの、全ての基材ゴムに対する比率は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。この比率が100質量%であってもよい。
【0019】
[ミクロフィブリル化繊維]
このゴム組成物は、ミクロフィブリル化繊維を含んでいる。ミクロフィブリル化繊維は、原料繊維が解されることで、得られうる。原料繊維として、セルロース繊維及びアラミド繊維が例示される。ミクロフィブリル化繊維は、小さな繊維径を有する。従って、このミクロフィブリル化繊維の比表面積は、大きい。このミクロフィブリル化繊維の補強効果は、大きい。コア4におけるミクロフィブリル化繊維の含有率が少量であっても、このコア4は、テニスボール2の反発性能に十分に寄与しうる。
【0020】
補強効果の観点から、ミクロフィブリル化繊維の数平均繊維径は1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。それぞれの繊維の強度の観点から、数平均繊維径は3nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上が特に好ましい。
【0021】
ミクロフィブリル化繊維の量は、基材ゴム100質量部に対して5.0質量部以上が好ましい。この量が5.0質量部であるゴム組成物から、テニスボール2の反発性能に寄与するコア4が得られうる。この観点から、この量は7.5質量部以上がより好ましく、10.0質量部以上が特に好ましい。テニスボール2の適正な質量の観点から、この量は30.0質量部以下が好ましく、25.0質量部以下がより好ましく、22.5質量部以上が特に好ましい。
【0022】
[セルロースナノファイバー]
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の趣旨への合致の観点から、植物由来のミクロフィブリル化繊維が好ましい。特に好ましいミクロフィブリル化繊維は、セルロースナノファイバーである。セルロースナノファイバーの比表面積は大きいので、このセルロースナノファイバーの補強効果は大きい。セルロースナノファイバーは、テニスボール2の反発性能に寄与しうる。セルロースナノファイバーは、汎用性にも優れる。
【0023】
セルロースナノファイバーの密度は、小さい。従って、ゴム組成物におけるセルロースナノファイバーの含有率が小さくても、十分な補強効果が得られうる。このテニスボール2の質量に占めるセルロースナノファイバーの質量は、小さくて足りる。このテニスボール2では、他の添加剤の添加に関する自由度が高い。セルロースナノファイバーの含有率が大きい場合でも、テニスボール2の質量への影響が小さいので、セルロースナノファイバーと他の添加剤とが併用されても、国際テニス連盟の規格で定められた質量の範囲を、このテニスボール2が満たしうる。
【0024】
コア4において、セルロースナノファイバーと、マトリックスであるゴムとの密着力は、過剰ではない。従って、テニスボール2がラケットで打撃されたとき、適度なエネルギー損失が生じる。打撃時のテニスボール2の、ラケットとの接触時間が長いので、プレーヤーは、このテニスボール2を、くいつき感が良いと感じる。換言すれば、このテニスボール2は、コントロール性能に優れる。
【0025】
セルロースナノファイバーを含むゴム成形品のガス透過係数は、小さい。セルロースナノファイバーを含むコア4では、内圧が維持されやすい。このコア4を有するテニスボール2は、長時間の使用に耐えうる。
【0026】
セルロースナノファイバーは、原料であるセルロース繊維が解されることで得られうる。セルロース繊維は、地球上に多量に存在する。セルロース繊維は、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、わら、もみ殻、茅、海藻等から得られうる。農業残渣である野菜くず、茶殻、ミカン皮等からも、セルロース繊維は得られうる。再生セルロース繊維(ビスコース、キュプラ、テンセル等)又はセルロース誘導体繊維から、セルロースナノファイバーが得られてもよい。
【0027】
セルロースナノファイバーが、無機エステル化物であるセルロース繊維から得られてもよい。無機エステル化物として、硝酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル及びケイ酸エステルが例示される。セルロースナノファイバーが、エーテル化物であるセルロース繊維から得られてもよい。エーテル化物として、メチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシブチルエーテル、カルボキシメチルエーテル及びシアノエチルエーテルが例示される。セルロースナノファイバーが、TEMPO酸化処理パルプから得られてもよい。
【0028】
セルロース繊維の解しの手段として、機械的な加工が挙げられる。加工として、磨砕及び叩解が例示される。加工に適した機械として、リファイナー、二軸混錬機、二軸押出機、二軸混錬押出機、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー、振動ミル及びサンドグラインダーが例示される。
【0029】
セルロースナノファイバーの形状は、結晶部、准結晶部及び非晶部からなるシングルナノファイバーであってよい。セルロース繊維が局所的に複数のシングルナノファイバーに解された形状を、セルロースナノファイバーが有してもよい。複数のシングルナノファイバーがもつれた形状を、セルロースナノファイバーが有してもよい。複数のシングルナノファイバーが網目状に集合した形状を、セルロースナノファイバーが有してもよい。非晶部が加水分解されてもよい。
【0030】
補強効果の観点から、シングルナノファイバーの数平均繊維径は100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、70nm以下が特に好ましい。それぞれのシングルナノファイバーの強度の観点から、数平均繊維径は3nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上が特に好ましい。補強効果の観点から、シングルナノファイバーの数平均アスペクト比は10以上が好ましく、20以上が好ましく、25以上が特に好ましい。シングルナノファイバーの長さは、100μm以下が好ましい。
【0031】
セルロースナノファイバーの具体例として、王子ホールディングス社の商品名「AUROVISCO」及び商品名「AUROVEIL」、大王製紙社の商品名「ELLEX」、第一工業製薬社の商品名「RHEOCRYSTA」、日本製紙グループ社の商品名「cellenpia」、並びにダイセルミライズ社の商品名「Celish」が、挙げられる。
【0032】
[加硫剤]
ゴム組成物は、加硫剤を含みうる。加硫剤として、粉末硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄及びコロイド硫黄のような硫黄;並びにモルホリンジスルフィド及びアルキルフェノールジスルフィドのような硫黄化合物が、挙げられる。
【0033】
テニスボール2の反発性能の観点から、基材ゴム100質量部に対する加硫剤の量は0.5質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上が特に好ましい。この量は6.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、4.5質量部以下が特に好ましい。
【0034】
[加硫促進剤]
ゴム組成物は、加硫促進剤を含みうる。好ましい加硫促進剤として、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン及び1-o-トリルビグアニドのようなグアニジン系加硫促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール及び2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールのようなチアゾール系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドのようなスルフェンアミド系加硫促進剤;テトラエチルチウラムジスルフィド及びテトラメチルチウラムモノスルフィドのようなチウラム系加硫促進剤;並びにジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛及びジエチルジチオカルバミン酸テルルのようなジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤が、例示される。ゴム組成物が、2種以上の加硫促進剤を含んでもよい。
【0035】
テニスボール2の反発性能の観点から、基材ゴム100質量部に対する加硫促進剤の量は0.5質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上が特に好ましい。この量は6.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、4.5質量部以下が特に好ましい。
【0036】
[加硫助剤]
ゴム組成物は、加硫促進剤を含みうる。好ましい加硫助剤として、ステアリン酸のような脂肪酸、亜鉛華のような金属酸化物、及びステアリン酸亜鉛のような脂肪酸金属塩が例示される。
【0037】
[補強材]
ゴム組成物は、補強材を含みうる。補強材として、カーボンブラックが例示される。テニスボール2の反発性能の観点から、基材ゴム100質量部に対するカーボンブラックの量は1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。この量は20質量部以下が好ましく、17質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。
【0038】
[充填剤]
ゴム組成物は、充填剤を含みうる。好ましい充填剤として、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリンクレイ、グラファイト、グラフェン、ベントナイト、ハロサイト、モンモリロナイト、マイカ、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ノントロナイト、バーミキュライト、イライト及びアロフェンが例示される。
【0039】
テニスボール2の物性及び質量の観点から、基材ゴム100質量部に対する充填剤の量は10質量部以上120質量部以下が好ましい。この量は20質量部以上がより好ましく、25質量部以上が特に好ましい。この量は110質量部以下がより好ましく、100質量部以下が特に好ましい。
【0040】
[他の添加剤]
ゴム組成物が、他の添加剤を含んでもよい。添加剤として、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、加工助剤及び着色剤が例示される。
【0041】
[コアの物性]
テニスボール2の反発性能、打球感及びコントロール性能のバランスの観点から、コア4のゴム組成物の複素弾性率E*は、12.0MPa以上18.0MPa以下が好ましい。複素弾性率E*は13.0MPa以上がより好ましく、13.5MPa以上が特に好ましい。複素弾性率E*は17.0MPa以下がより好ましく、16.5MPa以下が特に好ましい。
【0042】
テニスボール2の反発性能、打球感及びコントロール性能のバランスの観点から、コア4のゴム組成物の損失正接tanδは、0.050以上0.085以下が好ましい。損失正接tanδは0.060以上がより好ましく、0.065以上が特に好ましい。損失正接tanδは0.075以下がより好ましく、0.070以下が特に好ましい。
【0043】
複素弾性率E*及び損失正接tanδは、「JIS K 6394」の規定に準拠して測定される。測定条件は、以下の通りである。
初期歪み:10%
振幅:0.05%
周波数:10Hz
変形モード:引張
温度範囲:-50℃から+50℃
昇温速度:4℃/min
ステップ温度:2℃
この測定に適した装置として、ユービーエム社の粘弾性スペクトロメーター(商品名:「E4000」)が例示される。測定には、コア4のゴム組成物と同じ組成を有するゴム組成物から得られた試験片が、使用される。この試験片のための、加硫温度は160℃であり、加硫時間は2分である。この試験片では、厚さは2mmであり、幅は4mmであり、長さは20mmである。測定は温度分散にてなされ、10℃の複素弾性率E*及び損失正接tanδが抽出される。
【0044】
[製造方法]
以下、このテニスボール2の製造方法の一例が、説明される。この製造方法では、基材ゴムのラテックスに、ミクロフィブリル化繊維が添加され、混合液が得られる。この混合液が凝固して、マスターバッチが得られる。このマスターバッチに添加剤が添加され、ゴム組成物が得られる。このゴム組成物が金型で加圧及び加熱されることにより、ハーフシェルが得られる。このハーフシェルは、半球形状を有する。2つのハーフシェルを貼り合わせることで、球状のコア4が得られる。貼り合わせに先立ち、コア4の内部にガス発生源が投入されてもよい。ガス発生源として、アンモニウム塩及び亜硝酸塩の組み合わせが例示される。アンモニウム塩及び亜硝酸塩の化学反応によって生じた窒素ガスが、コア4に内圧を付与する。一方、ダンベル状のフェルト6の裏面にシーム糊が塗られる。このシーム糊の粘着力により、コア4の表面に2つのフェルト6が貼られる。このコア4及びフェルト6が金型に投入され、加圧及び加熱されて、テニスボール2が得られる。このテニスボール2のコア4では、マトリックスであるゴムに、ミクロフィブリル化繊維が均一に分散している。
【実施例0045】
以下、実施例に係るテニスボールの効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
【0046】
[実施例1]
天然ゴムラテックス(ムヒバラテックス社)の固形分濃度を、30%(w/v)に調整した。このラテックス500gに、界面活性剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社の商品名「エマールE-27C」)の10%水溶液を、12.5g添加した。このラテックスと、所定量のセルロースナノファイバー(CNF)の1%水溶液とを混合し、混合液を得た。この混合液を筒型ホモジナイザー(プライミクス社の商品名「オートミクサー20型」)に投入し、8000rpmの速度で1時間撹拌した。この混合液に、3gの老化防止剤分散体を添加し、さらに攪拌した。この攪拌を継続しつつ、この混合液にpHが4.0に達するまで凝固剤を徐々に添加し、凝固物を得た。この凝固物を水絞りロールで絞り、シートを得た。このシートを70℃の温度下で10時間保持し、マスターバッチを得た。セルロースナノファイバーの固形分は、100質量部の天然ゴムに対して7.5質量部であった。
【0047】
天然ゴム換算で100質量部のマスターバッチ、0.51質量部のステアリン酸(日油社の商品名「つばき」)、12質量部の酸化亜鉛(正同化学社の商品名「酸化亜鉛2種」)、5.0質量部のシリカ(東ソー・シリカ社の商品名「ニプシールVN3」)、51質量部のカオリンクレイ、及び15質量部のカーボンブラック(キャボットジャパン社の商品名「ショウブラックN330」)をバンバリーミキサーに投入し、90℃の温度下で5分間混練し、混練物を得た。この混練物に、3.6質量部の硫黄(三新化学社の商品名「サンフェルEX」、20%オイル含有)、1.0質量部の加硫促進剤DPG(三新化学社の商品名「サンセラーD」)、1.0質量の加硫促進剤CZ(大内新興化学社の商品名「ノクセラーCZ」)及び1.88質量部の加硫促進剤DM(大内新興化学社の商品名「ノクセラーDM」)を添加し、ゴム組成物を得た。加硫促進剤の詳細は、以下の通りであった。
DPG:1,3-ジフェニルグアニジン
CZ:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド
【0048】
このゴム組成物を金型に投入し、150℃の温度下で4分間加圧して、ハーフシェルを得た。このハーフシェルに、0.2gの塩化アンモニウムタブレット、0.3gの亜硝酸ナトリウムタブレット、及び1.5gの水を投入した。このハーフシェルに他のハーフシェルを貼り合わせて金型に投入し、150℃の温度下で4分間加圧して、コアを得た。このコアに、コア糊及びフェルト裏糊にて、2枚のフェルトを貼り合わせた。このコア及びフェルトを金型に投入し、135℃の温度下で14分間加圧して、実施例1のテニスボールを得た。
【0049】
[実施例2及び3並びに比較例1]
セルロースナノファイバー(CNF)及びカーボンブラックの量を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2及び3並びに比較例1のテニスボールを得た。
【0050】
[比較例2]
コアのゴム組成物を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例2のテニスボールを得た。
【0051】
[コアの粘弾性]
前述の方法にて、コアの複素弾性率E*及び損失正接tanδを測定した。この結果が、下記の表1に示されている。
【0052】
[圧力の変化率]
テニスボールを、圧力がP1である容器で保管した。この容器を開封し、テニスボールを以下の環境下に、保持した。
気圧:大気圧
温度:23.4℃
湿度:55%
28日後のテニスボールの内圧P2を測定した。以下の数式に基づいて、圧力変化率Ppを算出した。
Pp = (P1 - P2) / P1 * 100
この結果が、下記の表1に示されている。
【0053】
[ガス透過率]
コアのゴム組成物の組成と同じ組成を有するゴム組成物を、準備した。このゴム組成物をモールドに投入し、加硫して、厚さが2mmであるシートを得た。加硫条件は、以下の通りであった。
温度:160℃
時間:2分
このシートを、「JIS K 7126-1」に規定された差圧法に準拠した試験に供し、ガス透過係数( cm3・cm/cm2/sec/cmHg)を測定した。測定条件は、以下の通りであった。
試験機:GTRテック社のガス透過試験機(商品名「GTR-30ANI」)
サンプル温度:40℃
測定セルの透過断面積:15.2cm2
差圧:0.2MPa
測定環境:室温
この結果が、下記の表1に示されている。
【0054】
[リターンデフォメーション(RD)の変化率]
スチーブンスコンプレッションテスターにて、テニスボールを2.54cm変形させた。その後、荷重が80.07Nになるまでテニスボールを復元させ、リターンデフォメーションD1を測定した。このテニスボールを、25m/sの速度で、金属板に繰り返し衝突させた。500回の衝突の後、同様の方法でリターンデフォメーションD2を測定した。以下の数式に基づいて、リターンデフォメーションの変化率Pdを算出した。
Pd = (D2 - D1) / D1 * 100
この結果が、下記の表1に示されている。
【0055】
【0056】
表1から明らかな通り、各実施例のテニスボールは、諸性能に優れている。この評価結果から、このテニスボールの優位性は明らかである。
【0057】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態を開示する。
【0058】
[項目1]
コアと外皮とを備えており、
上記コアが、ゴム組成物から形成されており、
上記ゴム組成物が、基材ゴムとミクロフィブリル化繊維とを含む、テニスボール。
【0059】
[項目2]
上記ミクロフィブリル化繊維が植物由来である、項目1に記載のテニスボール。
【0060】
[項目3]
上記ミクロフィブリル化繊維がセルロースナノファイバーである、項目2に記載のテニスボール。
【0061】
[項目4]
上記ゴム組成物が、100質量部の基材ゴムと、5.0質量部以上30.0質量部以下のミクロフィブリル化繊維とを含む、項目1から3のいずれかに記載のテニスボール。
【0062】
[項目5]
上記基材ゴムの主成分がイソプレン系ゴムである、項目1から4のいずれかに記載のテニスボール。
【0063】
[項目6]
上記イソプレン系ゴムが天然ゴムを含んでおり、この天然ゴムの、全ての基材ゴムに対する比率が、30質量%以上である、項目5に記載のテニスボール。
【0064】
[項目7]
上記ゴム組成物の10℃における複素弾性率(10Hz)が、13.5MPa以上16.5MPa以下である、項目1から6のいずれかに記載のテニスボール。
【0065】
[項目8]
上記ゴム組成物の10℃における損失正接(10Hz)が、0.065以上0.070以下である、項目1から7のいずれかに記載のテニスボール。
【0066】
[項目9]
(1)ゴムラテックスにミクロフィブリル化繊維を添加して、混合液を得る工程、
(2)上記混合液を凝固させて、マスターバッチを得る工程、
(3)上記マスターバッチに添加剤を添加して、ゴム組成物を得る工程、
(4)上記ゴム組成物を加圧及び加熱して、ハーフシェルを得る工程、
(5)2のハーフシェルを貼り合わせて、コアを得る工程、
並びに
(6)上記コアの表面にフェルトを貼り付ける工程
を備えた、テニスボールの製造方法。