(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168889
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】距離測定装置、距離測定方法、及び、樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085923
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】原田 昭如
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AD07
4F206AP06
4F206AP11
4F206JA02
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB17
4F206JL02
4F206JM02
4F206JN32
4F206JP14
(57)【要約】
【課題】高温の環境下でも適切にプラテン間の距離を測定することが可能な距離測定装置を提供する。
【解決手段】樹脂成形装置に設けられた上下方向に型締めを行う型締装置の上プラテン及び下プラテンの間の距離を、成形型が取り付けられていない状態で測定する距離測定装置であって、前記上プラテンまでの距離を測定可能な第1の非接触式変位計と、前記第1の非接触式変位計が取り付けられる変位計取付部と、断熱性を有し、前記変位計取付部の下部に設けられ、前記下プラテンに載置可能な断熱部と、を含む測定部と、前記上プラテン及び前記下プラテンのうち少なくとも一方に取り付けられる加熱部と、前記第1の非接触式変位計による測定情報を取得する取得部と、を具備する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形装置に設けられた上下方向に型締めを行う型締装置の上プラテン及び下プラテンの間の距離を、成形型が取り付けられていない状態で測定する距離測定装置であって、
前記上プラテンまでの距離を測定可能な第1の非接触式変位計と、前記第1の非接触式変位計が取り付けられる変位計取付部と、断熱性を有し、前記変位計取付部の下部に設けられ、前記下プラテンに載置可能な断熱部と、を含む測定部と、
前記上プラテン及び前記下プラテンのうち少なくとも一方に取り付けられる加熱部と、
前記第1の非接触式変位計による測定情報を取得する取得部と、
を具備する距離測定装置。
【請求項2】
前記変位計取付部は、複数の脚部を具備し、
前記断熱部は、複数の前記脚部のそれぞれに設けられる、
請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
複数の前記測定部を互いに連結する連結部をさらに具備する、
請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記連結部により連結された複数の前記測定部を、前記下プラテンから離れた状態で、前記樹脂成形装置に設けられた搬送装置のレールに取り付け可能なレール取付部をさらに具備する、
請求項3に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記変位計取付部に取り付けられ、前記下プラテンまでの距離を測定可能な第2の非接触式変位計をさらに具備する、
請求項4に記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記測定部の位置を検出可能な位置検出部をさらに具備する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の距離測定装置。
【請求項7】
樹脂成形装置に設けられた上下方向に型締めを行う型締装置の上プラテン及び下プラテンの間の距離を、成形型が取り付けられていない状態で測定する距離測定方法であって、
前記上プラテン及び前記下プラテンのうち少なくとも一方に加熱部を取り付け、前記加熱部が取り付けられた前記上プラテン及び前記下プラテンを加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後に、前記上プラテンまでの距離を測定可能な第1の非接触式変位計と、前記第1の非接触式変位計が取り付けられる変位計取付部と、断熱性を有し、前記変位計取付部の下部に設けられ、前記下プラテンに載置可能な断熱部と、を含む測定部を、前記上プラテンと前記下プラテンとの間に配置する配置工程と、
前記上プラテンと前記下プラテンとの間に配置された前記測定部の前記第1の非接触式変位計による測定情報を取得する情報取得工程と、
を含む距離測定方法。
【請求項8】
前記情報取得工程において、前記測定部を移動させて、異なる複数の位置における前記測定情報を取得する、
請求項7に記載の距離測定方法。
【請求項9】
前記加熱工程において、前記加熱部を、前記上プラテン及び前記下プラテンの外周端部から離れた位置に配置し、
前記情報取得工程において、前記加熱部の周囲の異なる複数の位置における前記測定情報を取得する、
請求項8に記載の距離測定方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の距離測定方法を用いて、前記上プラテン及び前記下プラテンの間の距離を測定した後に、測定結果に基づいて前記上プラテン及び前記下プラテンの間の平行度を調整する調整工程と、
前記上プラテン及び前記下プラテンに成形型を取り付けて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含む樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定装置、距離測定方法、及び、樹脂成形品の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、型締装置の固定盤及び可動盤にそれぞれ固定金型及び可動金型を取り付け、固定金型及び可動金型を樹脂成形時の温度になるまで加熱し、樹脂成形時と同じ大きさの型締力を加えて型締めを行った状態で、複数個所における固定盤と可動盤の間の距離を測定する方法が開示されている。このようにして測定された距離から型盤平行度を算出し、この型盤平行度が所定の値に納まるように調整することで、各部(固定盤及び可動盤、並びに、固定金型及び可動金型)の熱膨張を考慮した型盤平行度の調整を行うことができ、成形品の寸法精度の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1には、固定盤と可動盤の間の距離を測定するための測定機器として、インサイドゲージ、レーザー測長器等が例示されているが、金型を加熱した高温の環境下でこれらの測定機器を使用する場合、熱が測定機器へ悪影響を及ぼして、測定機器の不具合が発生したり、測定誤差が大きくなったりするおそれがある。したがって、高温の環境下でも適切に距離を測定することが可能な技術が求められる。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、高温の環境下でも適切にプラテン間の距離を測定することが可能な距離測定装置、距離測定方法、及び、樹脂成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、この課題を解決するため、本発明に係る距離測定装置は、樹脂成形装置に設けられた上下方向に型締めを行う型締装置の上プラテン及び下プラテンの間の距離を、成形型が取り付けられていない状態で測定する距離測定装置であって、前記上プラテンまでの距離を測定可能な第1の非接触式変位計と、前記第1の非接触式変位計が取り付けられる変位計取付部と、断熱性を有し、前記変位計取付部の下部に設けられ、前記下プラテンに載置可能な断熱部と、を含む測定部と、前記上プラテン及び前記下プラテンのうち少なくとも一方に取り付けられる加熱部と、前記第1の非接触式変位計による測定情報を取得する取得部と、を具備するものである。
【0007】
また、本発明に係る距離測定方法は、樹脂成形装置に設けられた上下方向に型締めを行う型締装置の上プラテン及び下プラテンの間の距離を、成形型が取り付けられていない状態で測定する距離測定方法であって、前記上プラテン及び前記下プラテンのうち少なくとも一方に加熱部を取り付け、前記加熱部が取り付けられた前記上プラテン及び前記下プラテンを加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後に、前記上プラテンまでの距離を測定可能な第1の非接触式変位計と、前記第1の非接触式変位計が取り付けられる変位計取付部と、断熱性を有し、前記変位計取付部の下部に設けられ、前記下プラテンに載置可能な断熱部と、を含む測定部を、前記上プラテンと前記下プラテンとの間に配置する配置工程と、前記上プラテンと前記下プラテンとの間に配置された前記測定部の前記第1の非接触式変位計による測定情報を取得する情報取得工程と、を含むものである。
【0008】
また、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、前記距離測定方法を用いて、前記上プラテン及び前記下プラテンの間の距離を測定した後に、測定結果に基づいて前記上プラテン及び前記下プラテンの間の平行度を調整する調整工程と、前記上プラテン及び前記下プラテンに成形型を取り付けて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温の環境下でも適切にプラテン間の距離を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の全体的な構成を示した平面模式図。
【
図2】成形モジュールの構成を示した正面一部断面図。
【
図3】プラテン及び成形型を示した正面一部断面図。
【
図4】プラテン及び距離測定装置を模式的に示した正面図。
【
図5】(a)測定部を示した斜視図。(b)測定部の断熱部を示した底面図。
【
図6】下プラテンにおける測定部の移動経路を示した平面模式図。
【
図8】(a)第3実施形態に係る測定部ユニットを示した平面図。(b)第3実施形態に係る測定部ユニットを示した正面図。
【
図9】レールを有する樹脂成形装置に測定部ユニットを用いた例を示した正面図。
【
図10】レールを有していない樹脂成形装置に測定部ユニットを用いた例を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<樹脂成形装置1の全体構成>
まず
図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る樹脂成形装置1について説明する。なお、
図1を用いた説明では、図中に示した矢印X及びYを用いて方向を定義する。樹脂成形装置1は、封止前基板W1を樹脂封止し、樹脂成形品(封止済基板W2)を製造するものである。なお、本実施形態では、樹脂封止される前の基板を封止前基板W1、樹脂封止された後の基板を封止済基板W2とそれぞれ称している。また本実施形態では、圧縮成形法によって樹脂成形を行う樹脂成形装置1を例示している。
【0012】
樹脂成形装置1は、構成要素として、樹脂材料・基板供給モジュール10、成形モジュール20及び樹脂成形品搬出モジュール30を具備する。各構成要素は、他の構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
【0013】
樹脂材料・基板供給モジュール10は、封止前基板W1及び樹脂材料を成形モジュール20へと供給するものである。なお、封止前基板W1としては、リードフレームをはじめとして、その他種々の基板(ガラスエポキシ製基板、セラミック製基板、樹脂製基板、金属製基板)を用いることが可能である。樹脂材料・基板供給モジュール10は、主として樹脂材料供給装置11、基板供給部12及び樹脂材料・基板供給装置13を具備する。
【0014】
樹脂材料供給装置11は、樹脂材料・基板供給装置13へと樹脂材料を供給するものである。基板供給部12は、樹脂材料・基板供給装置13へと封止前基板W1を供給するものである。樹脂材料・基板供給装置13は、樹脂材料供給装置11及び基板供給部12から受け取った樹脂材料及び封止前基板W1を、成形モジュール20へと供給するものである。樹脂材料・基板供給装置13は、樹脂材料・基板供給モジュール10及び成形モジュール20内をX方向及びY方向に移動することができる。なお、樹脂材料・基板供給装置13は、樹脂材料と共に、樹脂成形時に使用される離型フィルムを成形モジュール20へと供給することができる。
【0015】
成形モジュール20は、樹脂成形を行うものである。本実施形態では、4つの成形モジュール20が設けられた樹脂成形装置1を例示しているが、成形モジュール20の個数は4つに限定するものではない。成形モジュール20は、主として型締装置40及び成形型70を具備する。
【0016】
成形型70は、上型72(
図2等参照)と、上型72に対して昇降可能な下型71と、を具備する。下型71には、樹脂成形品の形状に対応したキャビティCが形成される。型締装置40は、下型71を昇降させることで、成形型70の型締め、及び、型開きを行うことができる。なお、成形モジュール20のより具体的な構成については、後述する。
【0017】
樹脂成形品搬出モジュール30は、成形モジュール20で樹脂成形された封止済基板W2を搬出するものである。樹脂成形品搬出モジュール30は、主として樹脂成形品収納部31及び樹脂成形品搬出装置32を具備する。
【0018】
樹脂成形品収納部31は、成形モジュール20から搬出された封止済基板W2が収納される部分である。樹脂成形品搬出装置32は、成形モジュール20で樹脂成形された封止済基板W2を、樹脂成形品搬出モジュール30へと搬出するものである。樹脂成形品搬出装置32は、樹脂成形品搬出モジュール30及び成形モジュール20内をX方向及びY方向に移動することができる。なお、樹脂成形品搬出装置32は、本発明にかかる搬送装置の実施の一形態である。
【0019】
<樹脂成形装置1を用いた樹脂成形方法>
以下では、上述の如く構成された樹脂成形装置1による樹脂成形方法の一例について説明する。
【0020】
本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、主として平行度調整工程、基板搬入工程、樹脂材料・フィルム配置工程、型締め工程、樹脂成形工程、型開き工程及び搬出工程を含む。以下、順に説明する。
【0021】
まず、平行度調整工程において、成形型70の姿勢(傾き)が調整される。これによって、樹脂成形品の寸法精度を向上させることができる。なお、平行度調整工程のより具体的な内容については、後述する。
【0022】
次に、基板搬入工程において、成形型70に封止前基板W1が搬入される。具体的には、基板搬入工程において、樹脂材料・基板供給装置13は、基板供給部12から受け取った封止前基板W1を、成形モジュール20の成形型70へと搬送する。
【0023】
次に、樹脂材料・フィルム配置工程において、成形型70(下型71)に離型フィルム及び樹脂材料が配置される。具体的には、樹脂材料・フィルム配置工程において、樹脂材料・基板供給装置13は、樹脂材料供給装置11から受け取った樹脂材料及び離型フィルムを、成形モジュール20の成形型70(下型71)に配置する。この際、下型71に配置された離型フィルムは下型71によって吸着保持される。また、離型フィルムで覆われた下型71のキャビティCには、樹脂材料が配置される。
【0024】
次に、型締め工程において、成形型70の型締めが行われる。具体的には、型締め工程において、後述する下部ヒータープレート53(
図3参照)によって、キャビティC内に収容された樹脂材料が加熱される。また、後述する上部ヒータープレート63(
図3参照)によって、上型72も加熱される。次に、型締装置40が駆動されることで、下型71が上型72に向かって上昇する。下型71が所定の位置まで上昇すると、下型71の上面と上型72の下面とが直接的に、又は、封止前基板W1を介して間接的に接触し、下型71に形成されたキャビティCが上型72又は封止前基板W1によって上方から塞がれる。この状態でさらに下型71が押し上げられることで、下型71に収容された樹脂材料が加圧される。
【0025】
次に、樹脂成形工程において、樹脂材料が硬化されて樹脂成形が行われる。具体的には、樹脂成形工程において、樹脂材料を加圧した状態で所定時間待機する。これによって樹脂材料を硬化させて、封止前基板W1に対して樹脂成形を行い、樹脂成形品(封止済基板W2)を得ることができる。
【0026】
次に、型開き工程において、成形型70が開かれる。具体的には、型開き工程において、型締装置40が駆動されることで下型71が上型72から離れるように下降する。これによって成形型70が開かれ、封止済基板W2を取り出すことができる状態となる。
【0027】
次に、搬出工程において、樹脂成形品(封止済基板W2)が成形型70から搬出される。具体的には、搬出工程において、樹脂成形品搬出装置32は成形型70の封止済基板W2を受け取り、受け取った封止済基板W2を樹脂成形品搬出モジュール30の樹脂成形品収納部31へと受け渡す。
【0028】
このように樹脂成形装置1においては、成形モジュール20に封止前基板W1、離型フィルム及び樹脂材料等を供給し、樹脂成形を行うことができる。また複数の成形モジュール20で並行して樹脂成形を行うことができ、効率的に樹脂成形品を製造することができる。なお、上述の樹脂成形装置1の各部の動作は、図示せぬ制御装置によって適宜制御することができる。
【0029】
<成形モジュール20の構成>
以下では、成形モジュール20の具体的な構成について説明する。
図2及び
図3に示すように、成形モジュール20は、主として型締装置40、下型取付部50、上型取付部60及び成形型70等を具備する。
【0030】
型締装置40は、下型71を昇降させて、上下方向に型締め及び型開き等を行うものである。型締装置40は、主として基台41、支柱42、下プラテン43、上プラテン44、調整機構45及び駆動機構46等を具備する。
【0031】
基台41は、成形型70等を支持するものである。基台41には、複数の支柱42が固定される。一例として、本実施形態では、平面視矩形状に形成された基台41の四隅にそれぞれ支柱42が設けられるものとする。すなわち本実施形態では、基台41に四本の支柱42が設けられる。支柱42は、基台41から上方に延びるように設けられる。支柱42の上下中途部には、下プラテン43が上下に移動可能となるように設けられる。支柱42の上端部には、調整機構45を介して上プラテン44が固定される。
【0032】
調整機構45は、支柱42に対する上プラテン44の固定位置(上下位置)を調整するためのものである。調整機構45は、例えば支柱42と上プラテン44との間に配置されるスペーサにより構成することができる。このスペーサの上下幅を調整することで、支柱42に対する上プラテン44の固定位置を調整することができる。スペーサの上下幅の調整方法としては、例えば、上下幅の異なるスペーサと交換する、スペーサを削って上下幅を変更する、などの方法がある。4本の支柱42のそれぞれにおいて上プラテン44の固定位置を調整することで、上プラテン44の姿勢(傾き)を任意に調整することができる。なお、調整機構45の具体的な構成は特に限定するものではなく、上プラテン44の固定位置を調整可能な種々の構成を採用することができる。
【0033】
下プラテン43は、支柱42に設けられるベース部43aと、ベース部43aの上部に設けられる型固定部43bを具備する。ベース部43a及び型固定部43bは、それぞれ直方体状のブロック状に形成される。ベース部43aは、適宜の上下方向の厚みを有し、平面視矩形状に形成される。型固定部43bは、適宜の上下方向の厚みを有し、平面視においてベース部43aよりも小さい矩形状に形成される。型固定部43bは、4本の支柱42の内側に配置される。型固定部43bには、後述する下型取付部50を介して下型71が設けられる。
【0034】
上プラテン44は、支柱42に設けられるベース部44aと、ベース部44aの下部に設けられる型固定部44bを具備する。上プラテン44は、下プラテン43と上下方向において略対称な形状となるように形成される。型固定部44bには、後述する上型取付部60を介して上型72が設けられる。
【0035】
なお、下プラテン43及び上プラテン44の形状は本実施形態に限るものではなく、任意の形状とすることができる。例えば、本実施形態の下プラテン43は、2段(ベース部43a及び型固定部43b)のブロック状に形成されるものとしたが、1つ(1段)のブロック状に形成することも可能である。
【0036】
駆動機構46は、下型71を昇降させるためのものである。図例では、トグルリンク機構を用いた駆動機構46を示しているが、駆動機構46としては、ボールねじ機構、油圧シリンダ等、種々の構成を採用することができる。駆動機構46は、基台41と下プラテン43との間に配置される。駆動機構46は、基台41と下プラテン43との間で上下に伸縮することで、下プラテン43を上下に昇降させることができる。
【0037】
図3に示す下型取付部50は、下プラテン43に下型71を取り付けるものである。下型取付部50は、主としてスペーサ板51、柱状部材52及び下部ヒータープレート53を具備する。
【0038】
スペーサ板51は、平板状に形成される部材である。スペーサ板51は、型固定部43bの上面に取り付けられる。スペーサ板51の上部には、複数の柱状部材52を介して下部ヒータープレート53が設けられる。下部ヒータープレート53は、上面に下型71を保持すると共に、内部に設けられたヒーター(不図示)によって下型71を加熱することができる。複数の柱状部材52の上下幅を適宜調整することで、下部ヒータープレート53に設けられた下型71の姿勢(傾き)を調整することができる。
【0039】
上型取付部60は、上プラテン44に上型72を取り付けるものである。上型取付部60は、主としてスペーサ板61、柱状部材62及び上部ヒータープレート63を具備する。
【0040】
上型取付部60(スペーサ板61、柱状部材62及び上部ヒータープレート63)は、下型取付部50と上下方向において略対称に構成されるため、詳細な説明は省略する。上型取付部60は、型固定部44bの下面に取り付けられる。
【0041】
成形型70は、下型71及び上型72から構成される。下型71には、樹脂成形品の形状に対応したキャビティCが形成される。下型71は、下部ヒータープレート53の上面に固定される。上型72は、下型71と上下方向に対向するように配置され、上部ヒータープレート63の下面に固定される。
【0042】
<距離測定装置100>
ここで、樹脂成形品を精度良く製造するためには、下型71の上面と上型72の下面とが平行であることが求められる。さらに言えば、下型71及び上型72は下プラテン43及び上プラテン44に固定されるため、下プラテン43と上プラテン44とが平行であることが求められる。特に樹脂成形装置1では、樹脂成形時の高温環境下において下プラテン43及び上プラテン44が熱膨張することが想定されるため、高温環境下における下プラテン43と上プラテン44との平行の度合い(平行度)を測定することが求められる。
【0043】
そこで本実施形態では、高温環境下における下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定するための距離測定装置100を用いて、樹脂成形前に下プラテン43と上プラテン44との平行度を測定し、調整すること(前述の平行度調整工程)を想定している。以下では、距離測定装置100について説明する。
【0044】
<距離測定装置100の構成>
図4に示すように、距離測定装置100は、主として測定部110、加熱部120、位置検出部130及び制御部140を具備する。
【0045】
図4及び
図5に示す測定部110は、下プラテン43を基準として、上プラテン44までの距離を測定するためのものである。測定部110は、主として変位計取付部111、第1の変位計112及び断熱部113を具備する。
【0046】
変位計取付部111は、後述する第1の変位計112が取り付けられるものである。変位計取付部111は、長手方向を上下に向けた略円柱状に形成される。変位計取付部111は、後述する第1の変位計112を、測定に適した高さで支持できるような形状及び寸法となるように形成される。変位計取付部111は、高温環境下における熱膨張を抑制するために、熱膨張係数が比較的低い素材(いわゆる、低膨張材)により形成されることが望ましい。変位計取付部111の具体的な形状及び寸法は特に限定するものではなく、測定対象となる樹脂成形装置1に応じて適宜変更することが可能である。
【0047】
第1の変位計112は、上プラテン44までの距離を測定可能な非接触式の変位計である。第1の変位計112としては、例えばレーザー変位計を用いることができる。なお、第1の変位計112は、非接触式の変位計であればよく、レーザー変位計以外にも、渦電流式、光学式、超音波式等の、種々の非接触式の変位計を用いることが可能である。第1の変位計112は、変位計取付部111の上部に固定される。第1の変位計112は、鉛直上方に配置された対象物(本実施形態では、上プラテン44)までの距離を測定することができる。なお、第1の変位計112は、本発明に係る第1の非接触式変位計の実施の一形態である。
【0048】
断熱部113は、変位計取付部111の下部に設けられ、下プラテン43に載置される部分である。断熱部113は、少なくとも変位計取付部111よりも高い断熱性を有する素材(例えば、セラミック等)により構成される。断熱部113は、変位計取付部111の直径よりも大きい直径を有する円柱状に形成される。断熱部113は、変位計取付部111の下部において、変位計取付部111と同軸上に配置される。変位計取付部111に断熱部113を設けることで、変位計取付部111が下プラテン43と直接接触することを防止することができる。
【0049】
断熱部113の下面には、下方に向かって突出する複数(本実施形態では、3つ)の突起部113aが形成されている。突起部113aは、略半球状に形成される。突起部113aを形成することで、断熱部113と下プラテン43との接触面積を小さく抑えることができる。
【0050】
図4に示す加熱部120は、下プラテン43及び上プラテン44を加熱するものである。加熱部120は、主としてプレート121及びヒーター122を具備する。
【0051】
プレート121は、適宜の上下方向の厚みを有する平面視矩形板状に形成される。プレート121は、平面視において下型取付部50、上型取付部60及び成形型70よりも小さくなるように形成される。プレート121の内部には、ヒーター122が設けられる。本実施形態では、加熱部120は、下プラテン43及び上プラテン44のそれぞれに設けて使用される。
【0052】
位置検出部130は、下プラテン43に配置された測定部110の位置を検出するものである。本実施形態では、位置検出部130として、下プラテン43及び下プラテン43上に配置された測定部110を撮像可能なカメラを用いた例を示している。位置検出部130は、測定部110等を撮像可能な任意の位置に配置される。位置検出部130により撮像された画像に基づいて、下プラテン43上における測定部110の位置を判定することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、位置検出部130としてカメラを用いた例を示しているが、位置検出部130はこれに限るものではない。すなわち、位置検出部130としては、測定部110の位置を検出可能な種々の機器を用いることができる。例えば、位置検出部130として、接触式、又は、非接触式の各種センサを用いることも可能である。
【0054】
制御部140は、測定部110による測定情報を取得するものである。制御部140は、CPU等の演算処理装置、RAMやROM、HDD等の記憶装置等により構成される。制御部140は、測定部110の測定情報を受信することができるように、測定部110と有線又は無線によって接続されている。また制御部140は、位置検出部130の測定情報(撮像した映像)を受信することができるように、位置検出部130と有線又は無線によって接続されている。なお、制御部140は、本発明に係る取得部の実施の一形態である。
【0055】
<距離測定装置100を用いた平行度調整工程>
以下では、距離測定装置100を用いた下プラテン43と上プラテン44との平行度の調整方法(前述の平行度調整工程)の具体的な内容について説明する。平行度調整工程は、主として準備工程、加熱工程、配置工程、情報取得工程、平行度算出工程及び調整工程を含む。以下、順に説明する。
【0056】
まず、準備工程において、
図2及び
図3に示すように、成形モジュール20に下型取付部50、上型取付部60及び成形型70が取り付けられている場合、これらの下型取付部50、上型取付部60及び成形型70が取り外される。これによって、距離測定装置100の加熱部120を取り付けるスペースや、距離測定装置100による測定のための作業スペースが確保される。また準備工程において、位置検出部130(
図4参照)が適宜の位置に設置される。
【0057】
次に、加熱工程において、加熱部120が下プラテン43及び上プラテン44に取り付けられる。具体的には、
図4及び
図6に示すように、加熱部120は、下プラテン43の型固定部43bの上面に取り付けられる。この際、加熱部120は、型固定部43bの外周端部から離れた位置に配置される。本実施形態では、加熱部120は、平面視において型固定部43bの概ね中心に配置される。このように配置することによって、型固定部43bにおける加熱部120の周囲には、測定部110を配置するためのスペースが確保される。
【0058】
加熱工程においては、下プラテン43と同様に、上プラテン44の型固定部44bにも加熱部120が取り付けられる。なお、加熱部120は、下プラテン43及び上プラテン44のうち少なくとも一方に取り付ければよく、必ずしも下プラテン43及び上プラテン44の両方に設ける必要はない。本実施形態では、上下にヒータープレート(上部ヒータープレート63及び下部ヒータープレート53)が設けられた樹脂成形装置1(
図3参照)による樹脂成形時と同様の温度環境を再現するため、下プラテン43及び上プラテン44の両方に加熱部120を設けている。
【0059】
また、加熱工程において、加熱部120が作動され、下プラテン43及び上プラテン44が加熱される。この際、下プラテン43及び上プラテン44は、実際に樹脂成形を行う場合と同等の温度まで加熱される。
【0060】
次に、配置工程において、加熱された下プラテン43(型固定部43b)の上に、測定部110が配置される。本実施形態では、
図4及び
図6に示すように、配置工程において加熱部120の右手前側の位置P1に測定部110が配置された例を示している。
【0061】
この際、下プラテン43は加熱されて温度が上昇しているが、測定部110の下部には断熱部113が設けられているため、下プラテン43の熱が変位計取付部111に伝達することを抑制することができる。また、変位計取付部111は熱膨張係数が比較的低い素材により構成されている。このような構成により、下プラテン43及び上プラテン44が加熱された高温環境下でも、測定部110の熱膨張を抑制することができ、第1の変位計112による測定を精度良く行なうことができる。
【0062】
次に、情報取得工程において、第1の変位計112による測定情報が制御部140に送信される。これによって制御部140は、第1の変位計112による測定情報を取得することができる。
【0063】
ここで、第1の変位計112は、上方に配置された上プラテン44の型固定部44bの下面までの距離を測定することができる。つまり、制御部140は、第1の変位計112から上プラテン44(型固定部44b)の下面までの距離に関する情報を取得することができる。また、測定部110の寸法は事前に把握することができる。このため制御部140は、第1の変位計112による測定情報、及び、測定部110の寸法から、下プラテン43(型固定部43b)の上面から、上プラテン44(型固定部44b)の下面までの距離を算出することもできる。
【0064】
また、情報取得工程においては、作業者によって測定部110を移動させながら、制御部140によって第1の変位計112による測定情報が取得される。一例として、作業者は、
図4及び
図6に示すように、測定部110を、加熱部120の外周に沿って平面視反時計回り方向に移動させる。制御部140は、測定部110が所定の位置に到達した際の、測定情報を取得する。本実施形態では、制御部140は、加熱部120の右奥側の位置P2、加熱部120の左奥側の位置P3及び加熱部120の左手前側の位置P4において、測定情報を取得している。制御部140は、測定部110の位置に関する情報と、その位置における測定情報と、を互いに紐付けて記憶することができる。これによって、位置P1~P4における下プラテン43と上プラテン44との間の距離を把握することができる。
【0065】
測定部110の位置は、位置検出部130により撮像された映像に基づいて検出することができる。例えば制御部140は、位置検出部130によって撮像された下プラテン43及び測定部110等の映像を解析することで、下プラテン43上における測定部110の位置を把握することができる。
【0066】
なお、測定部110の位置と測定情報を紐付ける方法は特に限定するものではない。例えば、制御部140が自動的に映像を解析するのではなく、位置検出部130により撮影された映像と経過時間、並びに、測定部110による測定情報の経時変化等のデータに基づいて、作業者が手動で紐付けを行うことも可能である。
【0067】
また、前述のように、位置検出部130として、接触式、又は、非接触式の各種センサを用いる場合には、制御部140によって測定部110が所定の位置(位置P1~P4)に到達したことを検出し、その時の測定情報を紐付けて記憶することも可能である。また、予め測定部110による測定位置が定められている場合には、位置検出部130を用いて測定部110の位置を検出する必要はない。
【0068】
また、測定部110の移動経路や、測定情報を取得する位置は特に限定するものではなく、任意に設定することができる。
【0069】
次に、平行度算出工程において、制御部140は、情報取得工程で取得した測定情報に基づいて、下プラテン43と上プラテン44との平行度を算出する。ここで、平行度は下プラテン43と上プラテン44との平行の度合いを示すパラメータであれば、その具体的内容は特に限定するものではない。例えば、測定情報の最大値と最小値との差を平行度と定義することも可能である。また、測定情報とその位置に基づいて下プラテン43と上プラテン44との相対的な傾斜角度を算出し、その傾斜角度を平行度と定義することも可能である。すなわち、平行度の定義は、ユーザーが利便性を考慮して任意に決定することができる。
【0070】
次に、調整工程において、平行度算出工程で算出された平行度に基づいて、上プラテン44の位置が調整される。具体的には、平行度算出工程において算出された平行度が目標値に満たない場合(下プラテン43に対する上プラテン44の相対的な傾斜角度が、許容値を超えている場合)には、調整機構45(
図2参照)によって、上プラテン44の四隅の上下位置が調整され、上プラテン44が下プラテン43に対してより平行になるように調整される。
【0071】
なお、上述の加熱工程から調整工程までの処理は、平行度が目標値を満たすまで複数回繰り返し行ってもよい。
【0072】
調整工程において平行度が目標値を満たした後、下プラテン43及び上プラテン44に成形型70が取り付けられる。これによって、平行度調整工程が完了する。その後、前述のように基板搬入工程から搬出工程までの各工程により、樹脂成形が行われる。
【0073】
このように、距離測定装置100を用いて下プラテン43と上プラテン44との平行度を調整することで、樹脂成形品の寸法精度を向上させることができる。
【0074】
<第2実施形態>
以下では、
図7を用いて、第2実施形態に係る測定部210(測定部110の変形例)について説明する。
【0075】
測定部210は、主として変位計取付部211、第1の変位計212、断熱部213及び第2の変位計214を具備する。
【0076】
変位計取付部211は、後述する第1の変位計212及び第2の変位計214が取り付けられるものである。変位計取付部211は、上部に形成された本体部211aと、本体部211aの下部に設けられた複数(本実施形態では、3本)の脚部211bと、を具備する。変位計取付部211は、3本の脚部211bが設けられたことによって、安定して起立した姿勢を保つことができる。3本の脚部211bは、互いの間隔を任意に変更することができる。3本の脚部211bを大きく開くほど、変位計取付部211を転倒し難くすることができる。
【0077】
第1の変位計212は、上プラテン44までの距離を測定可能な非接触式の変位計である。第1の変位計212としては、第1実施形態と同様に、例えばレーザー変位計等を用いることができる。第1の変位計212は、変位計取付部211の本体部211aの上部に固定される。
【0078】
断熱部213は、変位計取付部211の脚部211bの下部に設けられ、下プラテン43に載置される部分である。断熱部213は、少なくとも変位計取付部211よりも高い断熱性を有する素材(例えば、セラミック等)により構成される。断熱部213は、変位計取付部211の脚部211bの下部にそれぞれ設けられる。
【0079】
第2の変位計214は、下プラテン43までの距離を測定可能な非接触式の変位計である。第2の変位計214としては、第1の変位計212と同様に、例えばレーザー変位計等を用いることができる。第2の変位計214は、適宜の支持部214aを介して変位計取付部211に支持される。特に第2の変位計214は、第1の変位計212との間の上下方向の距離が脚部211bの間隔に関わらず一定に保たれるように、変位計取付部211に設けられる。
【0080】
このように、第2実施形態に係る測定部210には、上プラテン44までの距離を測定する第1の変位計212と、下プラテン43までの距離を測定する第2の変位計214とが設けられる。これによって、下プラテン43と上プラテン44との間の距離を精度よく測定することができる。具体的には、測定部210は、脚部211bの間隔によって第1の変位計212の高さが変化するため、第1の変位計212のみでは下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定することができない。そこで測定部210には、第1の変位計212に加えて、第1の変位計212から上下方向に一定の距離だけ離れた第2の変位計214が設けられている。第1の変位計212及び第2の変位計214によって、下プラテン43までの距離と上プラテン44までの距離の双方を測定することで、脚部211bの間隔に関わらず下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定することができる。なお、第1の変位計212の高さは事前に把握することができるため、第2の変位計214を用いることなく下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定することもできる。
【0081】
<第3実施形態>
以下では、
図8から
図10を用いて、第3実施形態に係る測定部310(測定部110の変形例)について説明する。
【0082】
図8に示すように、第3実施形態においては、複数の測定部310が互いに連結されて、1つの測定部ユニット310Uが構成されている。測定部310は、主として変位計取付部311、第1の変位計312、断熱部313及び第2の変位計314を具備する。なお、測定部310の変位計取付部311、第1の変位計312及び断熱部313の構成は、第1実施形態の測定部110(
図5参照)と概ね同様であるため、説明を省略する。
【0083】
第2の変位計314は、下プラテン43までの距離を測定可能な非接触式の変位計である。第2の変位計314としては、第1の変位計312と同様に、例えばレーザー変位計等を用いることができる。第2の変位計314は、変位計取付部311の下部に固定される。第2の変位計314は、鉛直下方に配置された対象物(本実施形態では、下プラテン43)までの距離を測定することができる。なお、第2の変位計314は、本発明に係る第2の非接触式変位計の実施の一形態である。
【0084】
第3実施形態においては、4つの測定部310が連結部350によって互いに連結されることで、測定部ユニット310Uが構成されている。連結部350は、例えば平面視矩形の板状に形成される。連結部350は上下方向において一対設けられる。連結部350の四隅を4つの測定部310がそれぞれ貫通するように配置されると共に、測定部310が連結部350に固定される。4つの測定部310の相対的な位置(互いの間隔)は、例えば
図6に示した位置P1~P4と一致するように適宜設定される。
【0085】
また、測定部ユニット310Uには、レール取付部360が設けられる。レール取付部360は、例えば連結部350と同様に、平面視矩形の板状に形成される。連結部350は、上下方向において一対の連結部350の間に配置される。レール取付部360の四隅を4つの測定部310がそれぞれ貫通するように配置されると共に、測定部310がレール取付部360に固定される。レール取付部360には、断熱部361が設けられる。
【0086】
断熱部361は、レール取付部360の対向する一対の端部(
図8から
図10における左右両端部)に設けられ、レール32aに載置される部分である。ここで、レール32a(
図9参照)とは、例えば樹脂成形品搬出装置32(
図1参照)の移動方向に沿って設けられ、樹脂成形品搬出装置32を案内する部材である。断熱部361は、少なくとも変位計取付部311よりも高い断熱性を有する素材(例えば、セラミック等)により構成される。断熱部361は、レール取付部360の左右両端部に、それぞれ前後方向において一対設けられる。断熱部361は、レール32aに載置可能な適宜の形状に形成される。
【0087】
このように構成された測定部ユニット310Uを用いて下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定する場合、
図9に示すように、レール取付部360の断熱部361が、左右のレール32aに載置される。この状態では、測定部310の下部は下プラテン43と接することなく、宙に浮いた状態で配置される。この際、例えば平面視において
図6に示す位置P1~P4に対応する位置に4つの測定部310が配置されるように、測定部ユニット310Uの位置が調整される。
【0088】
このように、測定部ユニット310Uを用いることで、測定部310を下プラテン43と接することなく配置することができるため、下プラテン43から測定部310への熱の伝達を抑制することができる。また、測定部ユニット310Uを用いることで、複数の位置P1~P4における下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定することができるため、第1実施形態のように測定部310を移動させながら測定を行う必要がなく、作業負担を軽減することができる。
【0089】
また、レール32aを有していない樹脂成形装置1で測定部ユニット310Uを用いる場合には、
図10に示すように、測定部ユニット310Uを下プラテン43に載置することで、下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定することができる。この場合、各測定部310の下部に設けられた断熱部313によって、下プラテン43から測定部310への熱の伝達を抑制することができる。
【0090】
図10に示すように、測定部ユニット310Uを下プラテン43に載置して使用する場合には、第1の変位計312の高さは変位計取付部311等の寸法から把握することができるため、第2の変位計314を用いることなく下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定することもできる。
【0091】
なお、第3実施形態では、4つの測定部310が平面視矩形状の連結部350の角部に固定された測定部ユニット310Uを例示したが、測定部310の個数や配置はこれに限るものではなく、任意に変更することが可能である。但し、プラテン間の水平方向における相対的な傾きを測定する観点から、少なくとも互いに直交する2方向(例えば、
図1に示すX方向とY方向)の相対的な傾きを測定できるような個数及び配置にすることが望ましい。
【0092】
<付記>
本開示の第1側面の距離測定装置100は、
樹脂成形装置1に設けられた上下方向に型締めを行う型締装置40の上プラテン44及び下プラテン43の間の距離を、成形型70が取り付けられていない状態で測定する距離測定装置100であって、
前記上プラテン44までの距離を測定可能な第1の変位計112(第1の非接触式変位計)と、前記第1の変位計112が取り付けられる変位計取付部111と、断熱性を有し、前記変位計取付部111の下部に設けられ、前記下プラテン43に載置可能な断熱部113と、を含む測定部110と、
前記上プラテン44及び前記下プラテン43のうち少なくとも一方に取り付けられる加熱部120と、
前記第1の変位計112による測定情報を取得する制御部140(取得部)と、
を具備する。
本開示の第1側面の距離測定装置100によれば、高温の環境下でも適切にプラテン間の距離を測定することができる。すなわち、断熱部113により、下プラテン43から測定部110への熱の伝達を抑制することで、第1の変位計112の不具合や、測定部110の熱膨張による測定誤差の増加を抑制することができる。また、成形型70が取り付けられていない状態で距離を測定するため、測定部110や加熱部120の配置スペースが確保し易くなる。また、成形型70の型締めを行うことなく距離を測定するため、成形型70の寸法誤差や熱膨張が測定結果に影響することがない状態で、下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定することができる。
【0093】
第1側面に従う第2側面の距離測定装置100において、
前記変位計取付部211は、複数の脚部211bを具備し、
前記断熱部213は、複数の前記脚部211bのそれぞれに設けられる。
本開示の第2側面の距離測定装置100によれば、測定部210を安定して起立した姿勢に保つことができる。
【0094】
第1側面に従う第3側面の距離測定装置100は、
複数の前記測定部310を互いに連結する連結部350をさらに具備する。
本開示の第3側面の距離測定装置100によれば、複数の測定部310で複数個所における下プラテン43と上プラテン44との間の距離を同時に測定することができる。このため、測定作業の効率化を図ることができる。また、複数の測定部310を連結して一体化することで、測定部310の設置等の作業の効率化を図ることができる。
【0095】
第3側面に従う第4側面の距離測定装置100は、
前記連結部350により連結された複数の前記測定部310を、前記下プラテン43から離れた状態で、前記樹脂成形装置1に設けられた樹脂成形品搬出装置32(搬送装置)のレール32aに取り付け可能なレール取付部360をさらに具備する。
本開示の第4側面の距離測定装置300によれば、測定部310を下プラテン43から離れた状態で配置することができ、下プラテン43から測定部310への熱の伝達を抑制することができる。
【0096】
第4側面に従う第5側面の距離測定装置100において、
前記測定部310は、前記変位計取付部311に取り付けられ、前記下プラテン43までの距離を測定可能な第2の変位計314(第2の非接触式変位計)をさらに具備する。
本開示の第5側面の距離測定装置300によれば、測定部310が宙に浮いた状態であっても、下プラテン43と上プラテン44との間の距離を精度良く測定することができる。
【0097】
第1から第5側面に従う第6側面の距離測定装置100は、
前記測定部110の位置を検出可能な位置検出部130をさらに具備する。
本開示の第6側面の距離測定装置100によれば、測定部110の位置と、その位置における下プラテン43と上プラテン44との間の距離の測定結果とを紐付けることができる。これによって、下プラテン43と上プラテン44との平行度を詳細に把握することができる。
【0098】
本開示の第7側面の距離測定方法は、
樹脂成形装置1に設けられた上下方向に型締めを行う型締装置40の上プラテン44及び下プラテン43の間の距離を、成形型70が取り付けられていない状態で測定する距離測定方法であって、
前記上プラテン44及び前記下プラテン43のうち少なくとも一方に加熱部120を取り付け、前記加熱部120が取り付けられた前記上プラテン44及び前記下プラテン43を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後に、前記上プラテン44までの距離を測定可能な第1の変位計112(第1の非接触式変位計)と、前記第1の変位計112が取り付けられる変位計取付部111と、断熱性を有し、前記変位計取付部111の下部に設けられ、前記下プラテン43に載置可能な断熱部113と、を含む測定部110を、前記上プラテン44と前記下プラテン43との間に配置する配置工程と、
前記上プラテン44と前記下プラテン43との間に配置された前記測定部110の前記第1の変位計112による測定情報を取得する情報取得工程と、
を含む。
本開示の第7側面の距離測定方法によれば、高温の環境下でも適切にプラテン間の距離を測定することができる。
【0099】
第7側面に従う第8側面の距離測定方法は、
前記情報取得工程において、前記測定部110を移動させて、異なる複数の位置における前記測定情報を取得する。
本開示の第8側面の距離測定方法によれば、複数の位置における下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定することで、下プラテン43と上プラテン44との平行度を把握することができる。
【0100】
第8側面に従う第9側面の距離測定方法は、
前記加熱工程において、前記加熱部120を、前記上プラテン44及び前記下プラテン43の外周端部から離れた位置に配置し、
前記情報取得工程において、前記加熱部120の周囲の異なる複数の位置における前記測定情報を取得する。
本開示の第9側面の距離測定方法によれば、加熱部120を、上プラテン44及び下プラテン43の中央付近に配置することで、上プラテン44及び下プラテン43を均等に加熱し易くなる。また、加熱部120の周囲における下プラテン43と上プラテン44との間の距離を測定することで、比較的離れた位置で測定を行うことができる。これによって、下プラテン43と上プラテン44とが平行でない場合に、測定値の差が大きくなり、下プラテン43と上プラテン44との平行度を精度良く把握することができる。
【0101】
第10側面の樹脂成形品の製造方法は、
第7から第9側面の距離測定方法を用いて、前記上プラテン44及び前記下プラテン43の間の距離を測定した後に、測定結果に基づいて前記上プラテン44及び前記下プラテン43の間の平行度を調整する調整工程と、
前記上プラテン44及び前記下プラテン43に成形型70を取り付けて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含む。
本開示の第10側面の樹脂成形品の製造方法によれば、樹脂成形品の寸法精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0102】
40 型締装置
43 下プラテン
44 上プラテン
70 成形型
100 距離測定装置
110 測定部
111 変位計取付部
112 第1の変位計
113 断熱部
120 加熱部
130 位置検出部
140 制御部
210 測定部
211 変位計取付部
211b 脚部
213 断熱部
310 測定部
311 変位計取付部
314 第2の変位計
350 連結部
360 レール取付部