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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168890
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085924
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 永梨花
(72)【発明者】
【氏名】神谷 有城
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353CC21
5E353EE54
5E353EE71
5E353KK01
5E353KK11
5E353LL03
5E353QQ05
5E353QQ08
5E353QQ12
(57)【要約】
【課題】オペレータの負担を低減することができる技術を提供する。
【解決手段】実装機は、基板に部品を実装する実装作業を実行する実装機であって、実装作業を実行するための複数の機能部と、複数の機能部を制御する制御部と、を備えている。制御部は、実装作業の実行中に複数の機能部の少なくとも1つに関するエラー情報又はエラー予知情報を取得する場合に、取得されるエラー情報又はエラー予知情報に対応する機能部について第1のキャリブレーションを実行してもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装する実装作業を実行する実装機であって、
前記実装作業を実行するための複数の機能部と、
複数の前記機能部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記実装作業の実行中に複数の前記機能部の少なくとも1つに関するエラー情報又はエラー予知情報を取得する場合に、取得される前記エラー情報又は前記エラー予知情報に対応する前記機能部について第1のキャリブレーションを実行する、実装機。
【請求項2】
前記制御部は、前記実装作業の開始時に複数の前記機能部について第2のキャリブレーションを実行し、
前記制御部は、
前記エラー情報を取得することに起因して前記第1のキャリブレーションを実行した際に、前記第1のキャリブレーションの結果と前記第2のキャリブレーションの結果とが整合すると判断する場合は、前記実装作業を中止し、
前記エラー予知情報を取得することに起因して前記第1のキャリブレーションを実行した際に、前記第1のキャリブレーションの結果と前記第2のキャリブレーションの結果とが整合すると判断する場合は、前記実装作業を継続する、請求項1に記載の実装機。
【請求項3】
前記制御部は、前記実装作業における誤差又は誤差の累積値が所定の閾値を超える場合に前記エラー予知情報を取得する、請求項1又は2に記載の実装機。
【請求項4】
複数の前記機能部は、前記部品を前記基板に実装するヘッドと、前記実装機を上方から撮像可能なマークカメラと、前記ヘッドを下方から撮像可能なパーツカメラと、を含み、
前記制御部は、前記第1のキャリブレーションとして前記マークカメラが撮像した前記実装機に設けられている第1基準マークの撮像結果と、前記パーツカメラが撮像した前記ヘッドに設けられている第2基準マークの撮像結果とに基づいて、前記ヘッドおよび前記マークカメラの位置の補正値を算出する処理を実行する、請求項1又は2に記載の実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、基板に部品を実装する実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に部品を実装する実装機が開示されている。特許文献1の技術では、検査機から実装機に対してキャリブレーション(較正処理)を実行するよう通知がされ、実装機がキャリブレーションを実行する。特許文献1でのキャリブレーションは、実装機での部品を基板上に移動させる移動手段の移動距離の測定値と基準距離とに基づいて実際の移動距離を基準距離に合わせる処理をいう(段落0009参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-046307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品の実装機では、例えば、部品の実際の実装位置が目標の実装位置に対して大きくズレるなどのエラーが発生したときに、実装機のオペレータが必要に応じてキャリブレーションを実行することがある。しかしながら、このような構成では、オペレータの負担が大きくなることがある。そこで本明細書は、オペレータの負担を低減することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する実装機は、基板に部品を実装する実装作業を実行する実装機であって、前記実装作業を実行するための複数の機能部と、複数の前記機能部を制御する制御部と、を備えている。前記制御部は、前記実装作業の実行中に複数の前記機能部の少なくとも1つに関するエラー情報又はエラー予知情報を取得する場合に、取得される前記エラー情報又は前記エラー予知情報に対応する前記機能部について第1のキャリブレーションを実行してもよい。
【0006】
上記の構成によれば、制御部がエラー情報又はエラー予知情報を取得する場合に、オペレータの判断や作業によらず、エラー情報又はエラー予知情報に対応する機能部について自動でキャリブレーションを実行することができる。そのため、オペレータの負担を低減することができる。
【0007】
なお、本明細書におけるキャリブレーションは、基準値と実測値とに基づいて補正値を求める処理としてもよい。例えば、キャリブレーション対象の機能部が部品を吸着保持するノズルである場合、キャリブレーションは、ノズルの位置の基準値とノズルの位置の実測値との差に基づいて、ノズルの位置を実測値の位置から基準値の位置まで補正するための補正値を算出する処理としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の実装機を模式的に示す平面図。
図2】実施例の実装機で実行される処理のフローチャート。
図3】テーブルTの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する実装機では、前記制御部は、前記実装作業の開始時に複数の前記機能部について第2のキャリブレーションを実行してもよい。前記制御部は、前記エラー情報を取得することに起因して前記第1のキャリブレーションを実行した際に、前記第1のキャリブレーションの結果と前記第2のキャリブレーションの結果とが整合すると判断する場合は、前記実装作業を中止してもよい。前記制御部は、前記エラー予知情報を取得することに起因して前記第1のキャリブレーションを実行した際に、前記第1のキャリブレーションの結果と前記第2のキャリブレーションの結果とが整合すると判断する場合は、前記実装作業を継続してもよい。
【0011】
エラー情報を取得する場合に第1のキャリブレーションの結果と第2のキャリブレーションの結果とが整合する状態では、キャリブレーションに基づく補正を実施しても再びエラー情報を取得する可能性が高いため、そのまま実装作業を継続しても基板に部品を実装することができない。そのため、この場合は、実装作業を中止することにより、再びエラーが発生することを抑制することができる。例えば、実装作業を中止して実装機をメンテナンスすることにより、再び実装作業を実行する際にエラーが発生することを抑制することができる。
【0012】
一方、エラー予知情報を取得する場合に第1のキャリブレーションの結果と第2のキャリブレーションの結果とが整合する状態では、そのまま実装作業を継続しても、すぐにエラーが発生して実装機の生産が止まることはない。そのため、この場合は、実装作業を継続することにより、引き続き基板に部品を実装することができる。実装作業が全て終了した後に実装機をメンテナンスすることにより、再び実装作業を実行する際にエラーが発生することを抑制することができる。
【0013】
本明細書に開示する実装機では、前記制御部は、前記実装作業における誤差又は誤差の累積値が所定の閾値を超える場合に前記エラー予知情報を取得してもよい。この構成によれば、エラーが発生する可能性が高いときにエラー予知情報を取得してキャリブレーションを実行することができる。
【0014】
本明細書に開示する実装機では、複数の前記機能部は、前記部品を前記基板に実装するヘッドと、実装機を上方から撮像可能なマークカメラと、前記ヘッドを下方から撮像可能なパーツカメラと、を含んでもよい。前記制御部は、前記第1のキャリブレーションとして前記マークカメラが撮像した前記実装機に設けられている第1基準マークの撮像結果と、前記パーツカメラが撮像した前記ヘッドに設けられている第2基準マークの撮像結果とに基づいて、前記ヘッドおよび前記マークカメラの位置の補正値を算出する処理を実行してもよい。この構成によれば、実装作業を実行するために重要な機能部についてキャリブレーションを実行することができる。そのため、基板に部品を精度良く実装することができる。
【0015】
(実施例)
実施例の実装機2について図面を参照して説明する。図1は実施例の実装機2を模式的に示す平面図である。図1に示す実装機2は、基板Sに対して1又は複数の部品P(例えば、SMD(Surface Mount Device))を実装する機械である。実装機2は、部品Pの実装作業を実行するための複数の機能部(例えば、コンベア21、XYロボット26、ヘッドユニット31、マークカメラ36、パーツカメラ41、ノズルステーション42、部品フィーダ46など)と、制御部50とを備えている。
【0016】
コンベア21は、基板Sを実装機2内の作業位置に搬入すると共に、部品実装後の基板Sを作業位置から搬出する作業を実行するための装置である。コンベア21は、基板Sを下方から支持する支持装置(図示省略)と、コンベア駆動用の駆動装置(図示省略)とを備えている。コンベア21は、基板SをX軸の負方向から正方向に(図1の左側から右側に)搬送する。
【0017】
XYロボット26は、ヘッドユニット31をX方向及びY方向に移動させることにより、部品フィーダ46の上方と基板Sの上方との間で、部品実装ヘッド32を移動させる移動機構である。XYロボット26は、ヘッドユニット31をY方向にスライド移動させるY軸スライダ27と、ヘッドユニット31をX方向にスライド移動させるX軸スライダ28と、を備えている。ヘッドユニット31は、X軸スライダ28に支持されている。XYロボット26は、筐体(図示省略)の内部に収容されると共に、基板Sの上方に配置されている。
【0018】
ヘッドユニット31は、部品実装ヘッド32で吸着した部品Pを基板Sへ実装する作業を実行する可動ユニットである。ヘッドユニット31は、部品実装ヘッド32と、マークカメラ36とを備えている。部品実装ヘッド32は、図示しないホルダを介してヘッドユニット31の下面側に取り付けられている。部品実装ヘッド32は、複数の吸着ノズル33を備えている。複数の吸着ノズル33は、部品実装ヘッド32に着脱可能に支持されている。複数の吸着ノズル33は、部品実装ヘッド32に収容されたアクチュエータ(図示省略)によって上下方向(図面Z方向)に昇降されると共に、部品Pを先端に吸着可能に構成されている。
【0019】
マークカメラ36は、ヘッドユニット31に搭載されており、部品実装ヘッド32と共に移動可能に構成されている。マークカメラ36は、部品実装ヘッド32の近傍に配置されており、コンベア21により作業位置に搬入されてきた基板Sの上方に移動して、その基板Sに付されたマークを撮像対象として撮像する。また、マークカメラ36は、実装機2を上方から撮像可能である。マークカメラ36は、実装機2の上面部に設けられている第1基準マークM1を撮像範囲に入れた状態で実装機2を撮像することができる。第1基準マークM1は、例えば、実装機2のX軸スライダ28の後方の上面部に設けられている。変形例では、第1基準マークM1は、コンベア21により作業位置に配置された基板Sの下方の上面部に設けられていてもよい。マークカメラ36は、基板Sが作業位置から搬出された後に、第1基準マークM1を撮像してもよい。
【0020】
パーツカメラ41は、コンベア21の脇に配置された支持台22に上向きに設けられている。パーツカメラ41は、部品実装ヘッド32の移動経路の下方位置に設けられており、部品実装ヘッド32によって吸着された部品Pを撮像対象として下方から撮像する。また、パーツカメラ41は、ヘッドユニット31の部品実装ヘッド32を下方から撮像可能である。パーツカメラ41は、部品実装ヘッド32の下面部に設けられている第2基準マークM2を撮像範囲に入れた状態で部品実装ヘッド32を撮像することができる。第2基準マークM2は、例えば、部品実装ヘッド32の複数の吸着ノズル33により囲まれた部分の下面部に設けられている。
【0021】
ノズルステーション42は、支持台22においてパーツカメラ41のすぐ横に設けられている。ノズルステーション42は、複数の吸着ノズル33を保管している。部品実装ヘッド32に保持された吸着ノズル33は、ノズルステーション42に保管されている吸着ノズル33と自動的に交換される。
【0022】
各々の部品フィーダ46は、複数の部品Pを収容している。部品フィーダ46は、フィーダ保持部47に着脱可能に取り付けられ、ヘッドユニット31へ部品Pを供給する。部品フィーダ46の具体的な構成は限定されない。例えば、テープ上に複数の部品Pを収容するテープ式フィーダ、トレイ上に複数の部品Pを収容するトレイ式フィーダ、又は、容器内に複数の部品Pをランダムに収容するバルク式フィーダのいずれであってもよい。
【0023】
制御部50は、例えば、CPU、ROM及びRAMなどを備えており、所定のプログラムに従って実装機2に関する様々な制御や処理を実行する。制御部50は、所定の情報(例えば、プログラム)を記憶する記憶部52(例えば、ROM及びRAM)を備えている。また、制御部50は、情報通信を実行するための通信部(不図示)を備えていてもよい。
【0024】
記憶部52には、例えば、ジョブファイルとテーブルTが格納されている。ジョブファイルは、基板Sに部品Pを実装する実装作業の作業内容を示すファイルである。例えば、ジョブファイルには、部品Pを実装する位置、部品Pを実装するタイミング、実装する部品Pの種類などを示す情報が記録されている。制御部50は、ジョブファイルに記録されている作業内容を示す情報に従って実装作業を実行する。
【0025】
テーブルTは、図3に示すように、エラー情報(例えば、E1、E2など)、エラー予知情報(例えば、F1、F2...)、キャリブレーション対象の情報(例えば、X1、X2...)、及びキャリブレーション内容の情報(例えば、C11、C12、C21...)を含む。テーブルTでは、エラー情報と、キャリブレーション対象と、キャリブレーション内容とが対応付けられている。1つのエラー情報に対して、1又は複数のキャリブレーション対象と、1又は複数のキャリブレーション内容とが予め定められている。また、テーブルTでは、エラー予知情報と、キャリブレーション対象と、キャリブレーション内容とが対応付けられている。1つのエラー予知情報に対して、1又は複数のキャリブレーション対象と、1又は複数のキャリブレーション内容とが予め定められている。
【0026】
エラー情報は、実装機2の機能部(例えば、部品実装ヘッド32、吸着ノズル33、マークカメラ36など)においてエラーが発生したことを示す情報である。機能部で発生するエラーとしては、例えば、吸着ノズル33により部品Pを吸着保持することができないなどである。エラー情報は、例えば、吸着ノズル33により部品Pを吸着保持することができないことを示す情報である。その他のエラー情報としては、例えば、「部品Pの実際の実装位置が目標の実装位置に対して大きくズレることを示す情報」、「マークカメラ36による撮像画像において基準マークを検出することできないことを示す情報」などが挙げられる。
【0027】
エラー予知情報は、実装機2の機能部(例えば、部品実装ヘッド32、吸着ノズル33、マークカメラ36など)において生産を継続するとエラーが発生する可能性があることを示す情報である。エラー予知情報は、例えば、実装機2において誤差が所定の閾値を超える場合に生成される。例えば、部品Pの実装作業において部品Pを吸着ノズル33により吸着保持すると仮定する。この場合に、部品Pの吸着保持における目標の吸着位置(例えば、座標X1)と、実際の吸着位置(例えば、座標X1+α)との間に誤差(+α)があると仮定する。その誤差(+α)が所定の閾値を超える場合にエラー予知情報が生成される。
【0028】
変形例では、エラー予知情報は、誤差の累積値が所定の閾値を超える場合に生成されてもよい。例えば、部品Pの実装作業において、5個の部品Pを基板Sに実装する工程により、同一の吸着ノズル33による部品Pの吸着保持を5回繰り返す場合に、初回の部品Pの吸着保持における目標の吸着位置(例えば、座標X1)と、実際の吸着位置(例えば、座標X1)との間に誤差が生じ、2回目の吸着保持において初回の誤差を補正して吸着する。3回目の吸着保持では2回目の吸着保持において生じた誤差を補正する。そのようにして繰り返した5回の吸着保持において生じた誤差の累積値(+α)が所定のエラー予知情報の閾値を超えた場合にエラー予知情報が生成される。
【0029】
なお、実装機2における誤差は、吸着ノズル33による部品Pの吸着位置の誤差に限定されない。変形例では、実装機2における誤差は、例えば、基板Sにおける部品Pの実装位置の誤差、マークカメラ36による撮像画像における基準マークの位置の誤差などであってもよい。エラー予知情報としては、例えば、「部品Pの目標の実装位置に対する実際の実装位置の誤差が所定の閾値を超えることを示す情報」、「マークカメラ36による撮像画像において基準マークの基準位置に対する誤差が所定の閾値を超えることを示す情報」などが挙げられる。
【0030】
図3に示すテーブルTにおいて、エラー情報又はエラー予知情報に対応するキャリブレーション対象は、実装機2の1又は複数の機能部であり、例えば、部品実装ヘッド32、吸着ノズル33、マークカメラ36、パーツカメラ41、部品フィーダ46、コンベア21などである。
【0031】
エラー情報又はエラー予知情報に対応するキャリブレーション内容は、例えば、「部品実装ヘッド32全体のX、Y位置の補正値を算出する。」、「吸着ノズル33の傾きの補正値を算出する。」などである。その他のキャリブレーション内容としては、例えば、「部品実装ヘッド32の回転角度毎の位置又は角度の補正値を算出する。」、「吸着ノズル33の回転角度毎の位置又は角度の補正値を算出する。」、「マークカメラ36及びパーツカメラ41の位置又は角度の補正値を算出する。」、「マークカメラ36及びパーツカメラ41の分解能の補正値を算出する。」、「部品フィーダ46の高さ位置の補正値を算出する。」、「コンベア21のセンサの検知感度の補正値を算出する。」などが挙げられる。
【0032】
次に、実装機2で実行される処理について説明する。図2は、実装機2で実行される処理のフローチャートである。図2の処理は、例えば、部品Pの実装作業を開始するための実装開始指示が実装機2に入力されると開始される。図2に示すように、S2では、制御部50が、実装機2における全てのキャリブレーション対象の機能部(例えば、部品実装ヘッド32、吸着ノズル33、及びマークカメラ36など)についてキャリブレーションを実行する。S2におけるキャリブレーションは、実装作業の開始時のキャリブレーションである。実装機2でのキャリブレーションは、基準値と実測値とに基づいて補正値を求める処理としてもよい。例えば、キャリブレーション対象の機能部が吸着ノズル33である場合、キャリブレーションは、吸着ノズル33の位置の基準値と吸着ノズル33の位置の実測値との差に基づいて、吸着ノズル33の位置を実測値の位置から基準値の位置まで補正するための補正値を算出する処理としてもよい。
【0033】
制御部50は、S2におけるキャリブレーションとして、例えば、マークカメラ36が撮像した実装機2に設けられている第1基準マークM1の撮像結果と、パーツカメラ41が撮像した部品実装ヘッド32に設けられている第2基準マークM2の撮像結果とに基づいて、部品実装ヘッド32およびマークカメラ36の位置の補正値を算出する処理を実行してもよい。
【0034】
続くS4では、制御部50が、S2で実行したキャリブレーションの結果を記憶部52に保存する。制御部50は、キャリブレーションを実行することにより算出される補正値を記憶部52に保存する。また、制御部50は、算出した補正値に基づいてキャリブレーション対象の機能部の位置や角度を補正する。
【0035】
続くS6では、制御部50が、基板Sに部品Pを実装する実装作業を実行する。制御部50は、ジョブファイルで指定された全ての部品Pの実装が終了するまで実装作業を繰り返す(S6-S10)。制御部50は、上記のキャリブレーションが終了した後に実装作業を開始し、指定された全ての部品Pを基板Sに実装し終えた後に実装作業を終了する(S6-S10)。制御部50は、ジョブファイルに記録されている作業内容を示す情報に従って実装作業を実行する。制御部50は、全ての部品Pについて実装作業を終了すると図2の処理を終了する。
【0036】
S6-S10の間のS8では、制御部50が、実装作業の実行中にエラー情報又はエラー予知情報を取得するか否かを監視する。エラー情報は、実装機2の機能部でエラーが発生したことを示す情報である。エラー情報は、例えば、エラーが発生した機能部から制御部50に送られる。エラー予知情報は、実装機2の機能部でエラーが発生する可能性があることを示す情報である。エラー予知情報は、例えば、エラーが発生する可能性がある機能部から制御部50に送られる。制御部50は、エラー情報又はエラー予知情報を取得しない場合(NOの場合)は実装作業を継続する。一方、制御部50は、エラー情報又はエラー予知情報を取得したと判断する場合(YESの場合)はS22に進む。S8でYESの場合、制御部50は、現在実行中の実装作業を一旦中断してもよい。
【0037】
S22では、制御部50が、S8で取得したエラー情報又はエラー予知情報に対応する機能部(例えば、部品実装ヘッド32、吸着ノズル33、及びマークカメラ36など)についてキャリブレーションを実行する。制御部50は、エラーに関連する全てのキャリブレーション対象についてのキャリブレーションが終了するまでキャリブレーションを繰り返す(S22-S30)。変形例では、制御部50は、S22-S30の処理を2回繰り返してもよい。
【0038】
S22-S30の間の処理について説明する。S22-S30の間のS24では、制御部50が、上記のS8で取得したエラー情報又はエラー予知情報に対応するキャリブレーション対象及びキャリブレーション内容を決定する。制御部50は、記憶部52に格納されているテーブルT(図3参照)に基づいてキャリブレーション対象及びキャリブレーション内容を決定する。例えば、制御部50は、部品Pを吸着保持することができないことを示すエラー情報(E1)をS8で取得した場合、キャリブレーション対象としてX1(例えば、部品実装ヘッド32)、X2(例えば、吸着ノズル33)、X3(例えば、マークカメラ36)を決定する。また、制御部50は、例えばキャリブレーション対象のX1に対するキャリブレーション内容としてC11(例えば、ヘッド全体のX、Y位置の補正値を算出する。)、C12、C13を決定する。
【0039】
続くS26では、制御部50が、上記のS24で決定したキャリブレーション対象の機能部(例えば、部品実装ヘッド32、吸着ノズル33、及びマークカメラ36など)についてキャリブレーションを実行する。制御部50は、S24で決定したキャリブレーション内容に基づいてキャリブレーションを実行する。
【0040】
制御部50は、S26におけるキャリブレーションとして、例えば、マークカメラ36が撮像した実装機2に設けられている第1基準マークM1の撮像結果と、パーツカメラ41が撮像した部品実装ヘッド32に設けられている第2基準マークM2の撮像結果とに基づいて、部品実装ヘッド32およびマークカメラ36の位置の補正値を算出する処理を実行してもよい。
【0041】
続くS28では、制御部50が、S26で実行したキャリブレーションの結果を記憶部52に保存する。制御部50は、キャリブレーションを実行することにより算出される補正値を記憶部52に保存する。また、制御部50は、算出した補正値に基づいてキャリブレーション対象の機能部の位置や角度を補正する。
【0042】
S22-S30の処理の後、続くS32では、制御部50が、上記のS2におけるキャリブレーションの結果とS26におけるキャリブレーションの結果とを比較し、両キャリブレーション結果が整合するか否かを判断する。制御部50は、例えば、S26のキャリブレーションにより算出される補正値H26がS2のキャリブレーションにより算出される補正値H2を基準とする所定の範囲(例えば、H2±β)に含まれる判断する場合に、両キャリブレーション結果が整合すると判断する。S32における所定の範囲は、適宜設定可能である。例えば、S2のキャリブレーションにより算出される補正値H2が「10」であり、S2での補正値H2を基準とする所定の範囲が「H2±4(=6~14)」であるとする。この場合に、S26のキャリブレーションにより算出される補正値H26が「12」であるとする。この場合は、S26での補正値H26は、S2での補正値H2を基準とする所定の範囲(例えば、H2±4)に含まれる。S26のキャリブレーション結果がS2のキャリブレーション結果と整合すると判断される場合(YESの場合)、処理はS34に進む。S26のキャリブレーション結果がS2のキャリブレーション結果と整合しないと判断される場合(NOの場合)、処理はS8に戻る。なお、制御部50は、S26での補正値H26がS2での補正値H2と完全に一致すると判断する場合も、S26のキャリブレーション結果がS2のキャリブレーション結果と整合すると判断する。
【0043】
続くS34では、制御部50が、上記のS8で取得した情報がエラー情報であるかエラー予知情報であるかを判断する。S8で取得した情報がエラー情報である場合(YESの場合)、処理はS36に進む。S8で取得した情報がエラー予知情報である場合(NOの場合)、処理はS38に進む。
【0044】
S34でYESの後のS36では、制御部50が、部品Pの実装作業を中止し、図2の処理を終了する。一方、S34でNOの後のS38では、制御部50が、部品Pの実装作業を継続し、上記のS8の処理に戻る。
【0045】
(効果)
以上、実施例の実装機2について説明した。実施例の実装機2では、制御部50が、実装作業の実行中に複数の機能部の少なくとも1つに関するエラー情報又はエラー予知情報を取得する場合に、取得されるエラー情報又はエラー予知情報に対応する機能部についてキャリブレーションを実行する(図2のS8、S22-S30参照)。この構成によれば、制御部50がエラー情報又はエラー予知情報を取得する場合に、オペレータの判断や作業によらず、エラー情報又はエラー予知情報に対応する機能部について自動でキャリブレーションを実行することができる。そのため、オペレータの負担を低減することができる。また、上記の構成によれば、実装作業を実行するために重要な機能部についてキャリブレーションを実行することができる。そのため、基板Sに部品Pを精度良く実装することができる。
【0046】
また、制御部50は、実装作業の開始時に複数の機能部についてキャリブレーションを実行する(S2参照)。制御部50は、実装作業の実行中にエラー情報を取得することに起因してS26のキャリブレーションを実行し、S26のキャリブレーションの結果がS2のキャリブレーションの結果と整合すると判断する場合は、実装作業を中止する(S34、S36参照)。制御部50は、実装作業の実行中にエラー予知情報を取得することに起因してS26のキャリブレーションを実行し、S26のキャリブレーションの結果がS2のキャリブレーションの結果と整合すると判断する場合は、実装作業を継続する(S34、S38参照)。
【0047】
エラー情報を取得する場合にS26のキャリブレーションの結果とS2のキャリブレーションの結果とが整合する状態では、エラーの前後でキャリブレーションに基づいた補正の結果に変化が無いため、実装作業を継続しても再びエラーが発生して基板Sに部品Pを実装することができない可能性が高い。そのため、この場合は、実装作業を中止することにより、再びエラーが発生することを抑制することができる。例えば、作業者は実装作業を中止して実装機2をメンテナンスすることにより、再び実装作業を実行する際にエラーが発生することを抑制することができる。一方、エラー予知情報を取得する場合にS26のキャリブレーションの結果とS2のキャリブレーションの結果とが整合する状態では、エラー予知の前後でキャリブレーションに基づいた補正の結果に変化は無いが、実装作業を継続してもすぐにエラーが発生することは無いため、基板Sに部品Pを実装することが可能である。例えば作業者は、実装作業を継続している間にメンテナンスの準備をしておき、実装作業が全て終了した後に実装機2をメンテナンスすることにより、エラー予知の状態からエラーが発生する状態へ遷移することを抑制することを、実装作業の効率を落とすことなく実施することができる。
【0048】
制御部50は、実装作業における誤差又はその累積値が所定の閾値を超える場合にエラー予知情報を取得する。この構成によれば、実装作業を継続することによりエラーが発生する可能性が高いときにエラー予知情報を取得してキャリブレーションを実行することができる。
【0049】
(対応関係)
図2のS26で実行されるキャリブレーションが「第1のキャリブレーション」の一例であり、S2で実行されるキャリブレーションが「第2のキャリブレーション」の一例である。
【0050】
(変形例)
制御部50は、エラー予知情報を取得することに起因してキャリブレーションを実行する場合は、現在実行中の実装作業が全て終了した後、次回の実装作業が開始される前にキャリブレーションを実行してもよい。
【0051】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0052】
2:実装機、21:コンベア、22:支持台、26:XYロボット、27:Y軸スライダ、28:X軸スライダ、31:ヘッドユニット、32:部品実装ヘッド、33:吸着ノズル、36:マークカメラ、41:パーツカメラ、42:ノズルステーション、46:部品フィーダ、47:フィーダ保持部、50:制御部、52:記憶部、P:部品、S:基板
図1
図2
図3