(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168894
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】観察装置、検査装置、基板処理装置、観察方法および検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241128BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20241128BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/66 P
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085930
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 大輔
【テーマコード(参考)】
4M106
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA04
4M106CA47
4M106CA50
4M106DH03
4M106DH12
4M106DH31
4M106DH39
4M106DJ06
4M106DJ38
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F157AA12
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB90
5F157CD16
5F157CE28
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157DC21
(57)【要約】
【課題】半導体ウエハなどの円形基板の周縁部を良好に観察することができ、特に基板を撮像した画像に現れる反りの影響による位置ずれを効果的に検出する。
【解決手段】この発明に係る観察装置、検査装置、基板処理装置、観察方法および検査方法は、主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転する円板状の基板の周縁部を観察する。すなわち、基板を主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転させ、回転する基板の周縁部の少なくとも一部に照明光を照射し、照明光が照射された周縁部の一部を撮像視野に含んで撮像し、互いに異なる時刻に撮像された複数の画像に基づき、1周分の周縁部の画像を取得し、しかも、基板の両主面のうち少なくとも一方と基板の端面との両方を撮像し、複数の画像それぞれから端面の位置を検出し、その検出結果に基づき、複数の画像それぞれに含まれる主面の位置ずれ量を算出する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転する円板状の基板の、周縁部を観察する観察装置であって、
前記周縁部の少なくとも一部に照明光を照射する照明部と、
前記照明光が照射された前記周縁部の一部を撮像視野に含んで撮像する撮像部と、
前記撮像部が互いに異なる時刻に撮像した複数の画像に基づき、1周分の前記周縁部の画像を取得する画像取得部と
を備え、
前記撮像部は、前記基板の両主面のうち少なくとも一方と前記基板の端面との両方を撮像し、
前記画像取得部は、前記複数の画像それぞれに含まれる前記端面の位置を検出し、その検出結果に基づき、前記複数の画像それぞれに含まれる前記主面の位置ずれ量を算出する、観察装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記基板の周方向における位置が等しい関係にある前記主面と前記端面とを同一の前記撮像視野に含む、請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
前記画像取得部は、一の前記画像に含まれる前記端面の位置の検出結果から、当該画像に含まれる前記主面の前記位置ずれ量を算出する、請求項2に記載の観察装置。
【請求項4】
前記照明光が入射した前記基板の前記周縁部から出射される反射光を反射させて前記撮像部へ導く反射鏡を備える、請求項1に記載の観察装置。
【請求項5】
前記反射鏡は、前記基板の主面から出射される光と、前記基板の端面から出射される光とを同一の前記撮像部へ導く、請求項4に記載の観察装置。
【請求項6】
前記撮像部の光軸と前記反射鏡の反射面とがなす角をαとし、前記端面の位置検出結果から求められる前記端面の変位量をΔZとするとき、前記主面の位置ずれ量S1を次式:
S1=ΔZ・cos(2α)
により求める、請求項4に記載の観察装置。
【請求項7】
前記画像取得部は、
前記複数の画像それぞれに含まれる前記主面の像から一部を対象領域として切り出して合成することで、前記主面のうち前記周縁部の全周に対応する全周縁画像を作成し、
前記複数の画像から前記対象領域を切り出す際の切り出し位置が、前記位置ずれ量に応じて設定される、請求項1ないし6のいずれかに記載の観察装置。
【請求項8】
円板状の基板の周縁部を検査する検査装置であって、
前記基板を主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転させる回転機構と、
請求項7に記載の観察装置と同一の構成を有し前記全周縁画像を作成する観察部と、
前記全周縁画像に基づき前記周縁部を検査する検査部と
を備える、検査装置。
【請求項9】
円板状の基板を保持して、前記基板を主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転させる回転機構と、
前記回転機構により回転される前記基板の周縁部に処理液を供給して前記基板の周縁部を処理する処理機構と、
請求項7に記載の観察装置と同一の構成を有し、前記処理機構が前記周縁部を処理する前または処理した後に、前記周縁部を撮像して前記全周縁画像を作成する観察部と
を備える、基板処理装置。
【請求項10】
主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転する円板状の基板の、周縁部を観察する観察方法であって、
前記基板を、主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転させ、
回転する前記基板の前記周縁部の少なくとも一部に照明光を照射し、
前記照明光が照射された前記周縁部の一部を撮像視野に含んで撮像し、
互いに異なる時刻に撮像された複数の画像に基づき、1周分の前記周縁部の画像を取得し、しかも、
前記基板の両主面のうち少なくとも一方と前記基板の端面との両方を撮像し、
前記複数の画像それぞれから前記端面の位置を検出し、その検出結果に基づき、前記複数の画像それぞれに含まれる前記主面の位置ずれ量を算出する、観察方法。
【請求項11】
前記複数の画像それぞれに含まれる前記主面の像から一部を対象領域として切り出して合成することで、前記主面のうち前記周縁部の全周に対応する全周縁画像を作成し、
前記複数の画像から前記対象領域を切り出す際の切り出し位置を、前記位置ずれ量に応じて設定する、請求項10に記載の観察方法。
【請求項12】
円板状の基板の周縁部を検査する検査方法であって、
前記基板を主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転させ、
請求項11に記載の観察方法により、前記全周縁画像を作成し、
前記全周縁画像に基づき前記周縁部を検査する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハなどの円板状の基板の周縁部を観察する観察装置、当該観察装置により取得した周縁部画像に基づいて基板を検査する検査技術、ならびに当該観察装置を装備する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの被撮像物の周縁部に対して種々の処理を施す処理システムが知られている。このような基板処理システムでは、例えば処理状態を監視するために、処理される基板を照明しCCDカメラ等の撮像手段によって撮像することが行われる。基板の周縁部の形状としては様々であるが、例えば研磨加工により表面を傾斜面とした、いわゆるベベル部が設けられたものがある。
【0003】
このような基板のベベル部については、基板の上面を撮像する目的で設けられた撮像手段では良好に撮像を行うことができない場合がある。
【0004】
すなわち、ベベル部の形状、例えば傾斜面の傾きについては比較的大きな変動幅が許容されている。そのため、ベベル部に入射した照明光が反射する方向はベベル部の形状によってまちまちであり、反射光が撮像手段に入射せず十分な明るさの像が得られないケースがあるからである。
【0005】
この問題への対応として、ベベル部を撮像する目的で撮像手段を設けることも行われている。例えば特許文献1に記載の技術では、処理後の基板を検査する検査ユニットに、基板の周縁部および裏面にそれぞれ照明光を入射させるための照明サブユニットが設けられる。照明サブユニットは、基板の周縁部を囲むように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
処理対象となる基板は、それまでに受けた各種処理の影響や重力の作用等により反り等の変形を生じていることがある。上記従来技術では、基板の1周分を撮像した画像から基板全体の巨視的な反り量を算出し、その大きさによって以後の処理を継続するか否かが判断されている。
【0008】
しかしながら、基板周縁部をより詳細に観察するためには、このような巨視的な反り量を求めるのみでは不十分であり、周縁部の各位置での反り量を評価することが必要になってきている。また、基板の上面または下面を観察する分においては反りの影響は少ないと考えられるが、基板の上面または下面を撮像した画像に、反りの影響による位置ずれが生じるケースがあることがわかってきている。上記従来技術は、このような問題に対応することのできる構成とはなっていない。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、半導体ウエハなどの円形基板の周縁部を良好に観察することができ、特に基板を撮像した画像に現れる反りの影響による位置ずれを効果的に検出することができ、それにより、基板の周縁部の検査および該周縁部に対する処理を良好に行うことを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一の態様は、主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転する円板状の基板の、周縁部を観察する観察装置であって、前記周縁部の少なくとも一部に照明光を照射する照明部と、前記照明光が照射された前記周縁部の一部を撮像視野に含んで撮像する撮像部と、前記撮像部が互いに異なる時刻に撮像した複数の画像に基づき、1周分の前記周縁部の画像を取得する画像取得部とを備えている。ここで、前記撮像部は、前記基板の両主面のうち少なくとも一方と前記基板の端面との両方を撮像し、前記画像取得部は、前記複数の画像それぞれに含まれる前記端面の位置を検出し、その検出結果に基づき、前記複数の画像それぞれに含まれる前記主面の位置ずれ量を算出する。
【0011】
また、この発明の一の態様は、主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転する円板状の基板の、周縁部を観察する観察方法であって、前記基板を、主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転させ、回転する前記基板の前記周縁部の少なくとも一部に照明光を照射し、前記照明光が照射された前記周縁部の一部を撮像視野に含んで撮像し、互いに異なる時刻に撮像された複数の画像に基づき、1周分の前記周縁部の画像を取得し、しかも、前記基板の両主面のうち少なくとも一方と前記基板の端面との両方を撮像し、前記複数の画像それぞれから前記端面の位置を検出し、その検出結果に基づき、前記複数の画像それぞれに含まれる前記主面の位置ずれ量を算出する。
【0012】
このように構成された発明では、基板の主面の撮像結果に反りの影響による位置ずれが生じるという知見に基づき、基板の主面と端面とが共に撮像され、そのうち端面を撮像した画像から検出された端面の位置検出結果に基づいて、主面を撮像した画像における基板の位置ずれ量が算出される。こうすることで、基板の反りに起因して生じ、主面の撮像結果からは検出することが困難な位置ずれを的確に検出することができる。
【0013】
また、この発明を検査装置および検査方法に適用することで、基板の検査を、その反りによる影響を抑えて良好に行うことができる。また、この発明を適用した基板処理装置では、基板の処理を、その反りによる影響を抑えて良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、半導体ウエハなどの円形基板の周縁部を良好に観察することができ、特に基板を撮像した画像に現れる反りの影響による位置ずれを効果的に検出することができる。また、それにより基板の周縁部の検査および該周縁部に対する処理を良好に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】基板処理装置の構成を概略的に示す図である。
【
図3】基板処理装置の一部を上方から見た平面図である。
【
図4】撮像対象となる基板の周縁部の形状を例示する図である。
【
図5】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】上面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。
【
図8】側面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。
【
図9】撮像部により撮像される基板の周縁部の画像を模式的に示す図である。
【
図10】この基板処理装置で実行される基板処理を示すフローチャートである。
【
図11】基板の全周縁画像の取得動作を示すフローチャートである。
【
図12】基板の反りおよび偏心が画像に及ぼす影響を例示する図である。
【
図13】基板の反りによる影響を説明する図である。
【
図14】反りによる位置ずれとそれに対する補正の原理を説明する図である。
【
図16】基板の偏心による影響を説明する図である。
【
図17】偏心による位置ずれとそれに対する補正の原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態を装備する基板処理システムを示す図である。基板処理システム200は、例えば半導体ウエハなどの円板状の基板Sに対して処理を施す基板処理部210と、この基板処理部210に結合されたインデクサ部220とを備えている。インデクサ部220は、基板Sを収容するための容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard
Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部221と、この容器保持部221に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Sを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット222を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0017】
本明細書では、基板Sの両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターンが形成されている面を意味する。
【0018】
インデクサロボット222は、装置筐体に固定されたベース部222aと、ベース部222aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム222bと、多関節アーム222bの先端に取り付けられたハンド222cとを備える。ハンド222cはその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0019】
基板処理部210は、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット211と、この基板搬送ロボット211を取り囲むように配置された複数の処理ユニット1とを備えている。具体的には、基板搬送ロボット211が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置されている。処理ユニット1の主要構成は処理チャンバ100の内部に設置されている。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット211は適時アクセスして基板Sを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Sに対して所定の処理を実行する。本実施形態では、これらの処理ユニット1の一つが本発明に係る基板処理装置に相当している。
【0020】
図2は基板処理装置の構成を概略的に示す図である。
図3は基板処理装置の一部を上方から見た平面図である。
図4は撮像対象となる基板の周縁部の形状を例示する図である。
図5は
図2および
図3に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図2、
図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。また、各図には方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。
【0021】
基板処理装置(処理ユニット)1は、回転機構2、飛散防止機構3、処理機構4、周縁加熱機構5および撮像機構6を備えている。これら各部2~6は、処理チャンバ100の内部空間101に収容された状態で、装置全体を制御する制御ユニット9と電気的に接続されている。そして、各部2~6は、制御ユニット9からの指示に応じて動作する。
【0022】
制御ユニット9としては、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御ユニット9においては、プログラムに記述された手順に従って演算処理部91としてのCPUが演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御する。これによって、基板処理装置1は、処理チャンバ内で基板Sの上面の周縁部に処理液を供給してベベルエッチング処理を実行する。なお、制御ユニット9の詳しい構成および動作については、後で詳述する。また、本実施形態では、各基板処理装置1に対して制御ユニット9を設けているが、1台の制御ユニットにより複数の基板処理装置1を制御するように構成してもよい。また、基板処理システム200全体を制御する制御ユニット(図示省略)により基板処理装置1を制御するように構成してもよい。
【0023】
回転機構2は、基板Sを、その表面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転方向AR1(
図3)に回転させる。回転機構2は、基板Sの主面中心を通る鉛直な回転軸AXまわりに回転させる。回転機構2は、基板Sより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向に延設されている。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、モータ)23が接続されている。回転駆動部23は、制御ユニット9からの回転指令に応じて回転軸部22をその軸線周りに回転駆動する。したがって、スピンチャック21は、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能である。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を回転軸AX中心に回転させる機能を担っている。
【0024】
スピンチャック21の中央部には、図示省略の貫通孔が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管を介してポンプ24(
図5)が接続されている。ポンプ24およびバルブは、制御ユニット9に電気的に接続されており、制御ユニット9からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Sがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ24が負圧をスピンチャック21に付与すると、スピンチャック21は基板Sを下方から吸着保持する。一方、ポンプ24が正圧をスピンチャック21に付与すると、基板Sはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ24の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Sは水平移動可能となる。
【0025】
飛散防止機構3は、
図3に示すように、スピンチャック21に保持された基板Sの外周を囲むように設けられた概略筒状のカップ31と、カップ31の外周部の下方に設けられた液受け部32とを有している。制御ユニット9からの制御指令に応じてガード駆動部33(
図5)が作動することで、カップ31が昇降する。カップ31が下方位置に位置決めされると、
図2に示すように、カップ31の上端部はスピンチャック21に保持された基板Sの周縁部Ssよりも下方に位置する。逆に、カップ31が上方位置に位置決めされると、カップ31の上端部は基板Sの周縁部Ssよりも上方に位置する。
【0026】
カップ31が下方位置にあるときには、
図2に示すように、スピンチャック21に保持される基板Sがカップ31外に露出した状態になっている。このため、例えばスピンチャック21への基板Sの搬入および搬出時にカップ31が障害となることが防止される。
【0027】
一方、カップ31が上方位置にあるときには、カップ31の内周面はスピンチャック21に保持される基板Sの外周を取り囲む。これにより、後述するベベルエッチング処理時に基板Sの周縁部Ssから振り切られる処理液の液滴が処理チャンバ100内に飛散するのを防止することができる。また、処理液を確実に回収することが可能となる。すなわち、基板Sが回転することで基板Sの周縁部Ssから振り切られる処理液の液滴はカップ31の内周面に付着して下方へ流下し、カップ31の下方に配置された液受け部32により集められて回収される。
【0028】
処理機構4は、ベース41と、回動支軸42と、アーム43と、処理液ノズル44とを有している。ベース41は処理チャンバ100に固定されている。このベース41に対し、回動支軸42が回動自在に設けられている。回動支軸42からアーム43が水平に伸びており、その先端に処理液ノズル44が取り付けられている。回動支軸42が制御ユニット9からの制御指令に応じて回動することによりアーム43が揺動し、アーム43先端の処理液ノズル44が、基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、基板Sの周縁部上方の処理位置との間を移動する。
図3において2点鎖線により示されるノズル44は退避位置にある状態を、実線により示されるノズル44は処理位置にある状態を、それぞれ示している。
【0029】
処理液ノズル44は処理液供給部45(
図5)に接続されている。そして、制御ユニット9からの供給指令に応じて処理液供給部45が処理液を処理液ノズル44に向けて供給すると、処理液ノズル44から処理開始位置Psに向けて処理液が吐出される。この処理開始位置Psは、基板Sの周縁部Ssが移動する経路上の1点である。したがって、処理液ノズル44が処理液を吐出しつつスピンチャック21が回転することで、基板Sの周縁部Ssの各部は処理開始位置Psを通過する間に処理液の供給を受ける。その結果、基板Sの周縁部Ss全体に対し、処理液によるベベルエッチング処理が実行される。
【0030】
周縁加熱機構5は環状のヒーター51を備えている。ヒーター51は、基板Sの下面周縁部に沿って基板Sの周方向に延在された発熱体を内蔵している。このヒーター51に対して制御ユニット9から加熱指令が与えられると、発熱体から放出される熱によって基板Sの周縁部Ssが下方から加熱される。それによって、周縁部Ssの温度がベベルエッチング処理に適した値に昇温される。
【0031】
撮像機構6は、ベース6Aと、回動支軸6Bと、アーム6Cと、ヘッド駆動部6Dと、光源6Eと、撮像部6Fと、ヘッド部6Gと、を有している。ベース6Aは処理チャンバ100に固定されている。このベース6Aに対し、回動支軸6Bが回動自在に設けられている。回動支軸6Bからアーム6Cが水平に伸びており、その先端にヘッド部6Gが取り付けられている。そして、アーム6Cを駆動するヘッド駆動部6D(
図5)に対して制御ユニット9から制御指令が与えられると、当該指令に応じてヘッド駆動部6Dは
図3中の1点鎖線で示すようにアーム6Cを揺動する。これによって、アーム6C先端に取り付けられたヘッド部6Gが、基板Sの上方から側方へ退避した退避位置P1と、基板Sの周縁部Ssを撮像する撮像位置P2との間で往復移動する。
図3において実線により示されるヘッド部6Gは退避位置にある状態を、一点鎖線により示されるヘッド部6Gは撮像位置にある状態を、それぞれ示している。撮像位置P2では、ヘッド部6Gは基板Sの(-Y)側端部に近接して配置される。
【0032】
図3に示すように、撮像位置P2からX方向に離間した離間位置P3に光源6Eおよび撮像部6Fが設けられている。この離間位置P3は、基板Sやカップ31などのベベルエッチング処理を行う各部(回転機構2、飛散防止機構3、処理機構4、周縁加熱機構5)から離間している。光源6Eは、カップ31の外側から撮像位置P2に向けて照明光L1を照射する。このとき、カップ31は下方位置に位置決めされるとともに、ヘッド部6Gが撮像位置P2に位置決めされており、照明光L1がヘッド部6Gに入射する。この照明光L1はヘッド部6Gで拡散反射される。こうして発生する拡散光で基板Sの周縁部Ssは照明される。そして、基板Sの周縁部Ssで反射された反射光L2がさらにヘッド部6Gで反射される。反射光L2はヘッド部6Gから離間位置P3に向けて導光され、撮像部6Fに入射される。これによって、撮像部6Fは基板Sの周縁部Ssの像を取得し、その画像データを制御ユニット9に送る。
【0033】
ここで、本実施形態において撮像対象となる基板Sの周縁部Ssについて、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、半導体ウエハなどの基板Sでは、その周縁部に傾斜面を有するベベル部が形成されたものがある。ここでいう「ベベル部」とは、基板Sの周縁部Ssのうち、基板Sが水平姿勢にあるときに表面が水平面に対し傾いた状態にある領域の全体を指すものとする。
【0034】
ベベル部の断面形状および寸法については、図に点線で示す最大寸法Dmaxと破線で示す最小寸法Dminとが標準規格として規定され、これらの間に収まっている限りにおいては比較的高い自由度が与えられているのが一般的である。ベベル部の断面は、
図4に示すように傾きの異なる複数の面で構成されるケースが多いが、湾曲面で構成されるケースもある。
【0035】
以下において必要な場合には、基板Sの周縁部Ssのうち基板Sの上面と同一平面である部分を「A面」と称して符号Saを付し、基板Sの端面を「C面」と称して符号Scを付す。そして、A面SaとC面Scとを接続する傾斜面を「B面」と称し符号Sbを付す。また、基板Sの下面と同一平面である部分を「E面」と称して符号Seを付し、C面ScとE面Seとを接続する傾斜面を「D面」と称し符号Sdを付す。本明細書における「周縁部Ss」は、これらの各面を包括的に含む概念である。
【0036】
上記したように、ヘッド部6Gは、光源6Eからの照明光L1を受けて拡散光を発生させ、当該拡散光により基板Sの周縁部Ssを照明する拡散照明機能と、周縁部Ssで反射された反射光L2を撮像部6Fに導くガイド機能とを兼ね備えている。以下、ヘッド部6Gの構成および動作を
図6ないし
図9を参照しつつ説明する。
【0037】
図6は撮像機構のヘッド部を示す斜視図である。より具体的には、
図6(a)はヘッド部6Gが撮像位置P2に配置された状態を表す図であり、これから基板Sを取り除いた状態を表すのが
図6(b)である。ヘッド部6Gは、拡散面610を有する拡散照明部61と、それぞれ拡散面611で囲まれた3枚のミラー部材62a~62cで構成されるガイド部62と、拡散照明部61を保持する保持部63とを有している。
図6では、拡散照明部61との区別のために、保持部63に該当する領域にドットを付している。
【0038】
拡散照明部61は、白色の樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:polytetrafluoroethylene)で構成されている。拡散照明部61は、YZ平面に略平行なプレート形状を有しており、(+Y)方向側の端部に切欠部611が形成されている。この切欠部611は、(+X)方向側から見てU字を時計方向に90゜回転させた形状を有している。
【0039】
拡散照明部61では、切欠部611に沿って傾斜面610が設けられている。傾斜面610は、上下方向および(-Y)方向から切欠部611を取り囲むように設けられ、切欠部611に近づくにしたがって(-X)方向に傾斜するように仕上げられたテーパー面である。その表面は入射光を拡散反射させるように仕上げられており、後述するように、照明光を拡散反射させて基板Sの周縁部Ssに入射させる拡散面610として機能する。
【0040】
拡散面610に取り囲まれるように、ミラー部材62a~62cが取り付けられている。より具体的には、拡散面610のうち、切欠部611の鉛直上方に当たる位置には第1のミラー部材62aが、切欠部611の(-Y)側には第2のミラー部材62bが、切欠部611の鉛直下方に当たる位置には第3のミラー部材62cが、それぞれ取り付けられている。なお、本実施形態では、耐薬性や耐熱性などを考慮して、ミラー部材62a~62cはSi(シリコン)で構成されている。
【0041】
一方、保持部63は、薬液および熱に対する耐性の高い樹脂、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン:polyetheretherketone)で構成され、外形が概ね拡散照明部61と同等に形成されたプレート状部材である。保持部63は、拡散照明部61の背面、つまり(-X)側主面に結合されてバックアップ部材として機能する。また、保持部63はアーム6Cに結合されている。したがって、アーム6Cの揺動により、拡散照明部61と保持部63とが一体的に、退避位置P1と撮像位置P2との間を移動する。
【0042】
図6(a)に示すように、ヘッド部6Gが撮像位置P2にあり、かつ基板Sがスピンチャック21により保持されているとき、基板Sの周縁部Ssが切欠部611の間に入り込む位置関係となる。切欠部611を(+X)側から(-X)方向に見たとき、第1のミラー部材62aには、基板周縁部Ssのうち上方から見たときに見える部分、つまりA面SaおよびB面Sbの像が映り込む。同様に、第2のミラー部材62bには、基板周縁部Ssのうち側方から見たときに見える部分、つまりB面Sb、C面ScおよびD面Sdの像が映り込む。また、第3のミラー部材62cには、基板周縁部Ssのうち下方から見たときに見える部分、つまりD面SdおよびE面Seの像が映り込む。
【0043】
詳しくは後述するが、撮像部6Fは、(+X)側から3つのミラー部材62a~62cの全てを見込むように設定された撮像視野で撮像を行う。これにより、ミラー部材62a~62cのそれぞれに映り込んだ基板Sの像が1つの画像内に取り込まれる。すなわち、撮像部6Fは、基板SsのA面Sa、B面Sb、C面Sc、D面Sd、E面Seの全てを1つの画像に一括して撮像することができる。基板Sの回転に伴い複数回撮像を行うことで、周縁部Ssのうち周方向に沿って互いに位置の異なる複数の領域の画像を取得することができる。
【0044】
以下の説明では、第1のミラー部材62aに映り込んだ基板SのA面SaおよびB面Sbの像を撮像することを「上面撮像」と称する。また、第2のミラー部材62bに映り込んだ基板SのB面Sb、C面ScおよびD面Sdの像を撮像することを「側面撮像」と称する。また、第3のミラー部材62cに映り込んだ基板SのD面SdおよびE面Seの像を撮像することを「下面撮像」と称する。
【0045】
図7は上面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。より具体的には、
図7(a)はヘッド部6Gに入射し反射される光の進路を示す斜視図であり、
図7(b)はその垂直切断面における断面図である。
図7(a)および
図7(b)に実線矢印で示すように、基板Sの上面側に沿って(-X)方向に進む照明光L1aは、ヘッド部6Gの拡散面610に入射する。拡散面610のうち特に切欠部611の上方に位置する上方拡散面61aに入射し拡散反射された光が種々の方向から基板Sの上面に入射することで、基板周縁部Ssが照明される。
【0046】
点線矢印で示すように、基板Sで反射された反射光は種々の方向へ進み得るが、このうちミラー部材62aに入射し、かつミラー部材62aで反射されて(+X)方向に進む光L2aが、その光路上に配置された撮像部6Fに入射する。この光を受光することで、基板Sの上面側から見た周縁部Ssを撮像する「上面撮像」が実現される。
【0047】
図7(b)に示すように、基板Sの下面側でも上面側と同様の現象が生じる。すなわち、ヘッド部6Gは上下対称な構造を有しており、基板Sの下面側に沿って(-X)方向に進む照明光L1cは、拡散面610のうち特に切欠部611の下方に位置する下方拡散面61cに入射し拡散反射されて、基板Sの下面を照明する。このとき基板Sおよびミラー部材62cで反射され(+X)方向へ向かう反射光L2cを受光することで、基板Sの下面側から見た周縁部Ssを撮像する「下面撮像」が実現される。
【0048】
図8は側面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。より具体的には、
図8(a)はヘッド部6Gに入射し反射される光の進路を示す斜視図であり、
図8(b)はその水平切断面における断面図である。
図8(a)および
図8(b)に実線矢印で示すように、基板Sの側方を(-X)方向に進む照明光L1bは、ヘッド部6Gの拡散面610に入射し、そのうち特に切欠部611の側方に位置する側方拡散面61bで拡散反射される。この光が種々の方向から基板Sの側面に入射することで、基板周縁部Ssが照明される。
【0049】
そして、点線矢印で示される基板Sからの反射光のうち、ミラー部材62bで反射されて(+X)方向に進む光L2bが、その光路上に配置された撮像部6Fに入射する。これにより、基板Sの側方から見た周縁部Ssを撮像する「側面撮像」が実現される。
【0050】
撮像部6Fは、物体側テレセントリックレンズで構成される観察レンズ系6Faと、CMOSカメラ6Fbとを有している。したがって、上記反射光のうち観察レンズ系6Faの光軸に平行な光線L2(L2a,L2b,L2c)のみがCMOSカメラ6Fbのセンサ面に入射され、基板Sの周縁部Ssおよび隣接領域の像がセンサ面上に結像される。こうして撮像部6Fは基板Sの周縁部Ssおよび隣接領域を撮像し、例えば
図9に示す、上面画像領域Ma、側面画像領域Mbおよび下面画像領域Mcを含む画像Imを取得する。そして、その画像を示す画像データを撮像部6Fは制御ユニット9に送信する。
【0051】
図9は撮像部により撮像される基板の周縁部の画像を模式的に示す図である。
図9(a)はヘッド部6Gおよび基板Sを(+X)側から(-X)方向に見た模式図であり、破線で囲まれた領域FVが撮像部6Fの撮像視野を表している。このように、撮像部6Fの撮像視野FVは、ヘッド部6Gのうちミラー部材62a~62cを含むように設定されている。
【0052】
図9(b)は撮像視野FV内の各ミラー部材62a~62cに映る基板Sの像を模式的に示している。
図9(b)に示すように、第1のミラー部材62aには、基板Sの周縁部SsのうちA面SaとB面Sbとの像が映る。また、第2のミラー部材62bには、基板Sの周縁部SsのうちB面Sb、C面ScおよびD面Sdの像が映る。また、第3のミラー部材62cには、基板Sの周縁部SsのうちD面SdとE面Seとの像が映る。撮像部6Fはこれらの像を一括して同時に撮像し1つの画像を取得する。1つの画像に含まれる各面Sa~Seは同時に撮像されたものであり、基板Sにおける周方向の位置が実質的に互いに同一であるという関係にある。
【0053】
図9(c)は撮像により実際に得られる画像を模式化したものである。上記した構成の撮像機構6では、光源6Eからの照明光を拡散面610で拡散させることで基板Sを照明し、基板Sからの反射光の一部を受光することで撮像を行っている。このため、照明光量および受光光量はいずれも十分とは言えない。このような状況で良好に撮像を行うためにカメラの感度を高くする必要があり、その結果、ヘッド部6Gの詳細な構造は、いわゆる白飛びによって画像にはほとんど反映されなくなる。
【0054】
そのため、
図9(c)に示すように、実際に得られる画像Imは、切欠部611に相当しその内部に非合焦状態で映る基板Sの側面の像を含む暗い領域Mdと、上方から見た基板Sの周縁部Ssの像に対応する上面画像領域Maと、側方から見た基板Sの周縁部Ssの像に対応する側面画像領域Mbと、下方から見た基板Sの周縁部Ssの像に対応する下面画像領域Mcとを含んだものとなる。
【0055】
これらの各領域を含む画像Imを解析することで、周方向における基板Sの周縁部の形状やエッチング状況などを示す情報を取得することができる。そして、これらの情報から、スピンチャック21に載置された基板Sの回転軸AXに対する偏心量、基板Sの反り量やベベルエッチング結果(エッチング幅)などを検査することができる。
【0056】
そこで、上記のように構成された撮像機構6を装備する基板処理装置1では、制御ユニット9が、装置各部を制御し、(A)ベベルエッチング処理前の基板検査、(B)アライメント処理、(C)アライメント処理後のベベルエッチング処理および(D)ベベルエッチング処理後の基板検査を実行する。この制御ユニット9は、
図5に示すように、各種演算処理を行う演算処理部91、基本プログラムや画像データを記憶する記憶部92および各種情報を表示するとともに操作者からの入力を受け付ける入力表示部93を有している。
【0057】
そして、制御ユニット9においては、プログラムに記述された手順にしたがって主制御部としての演算処理部(CPU)91が演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を以下のように制御する。すなわち、演算処理部91は、
図5に示すように、ヘッド部6Gの位置決めを行う位置決め制御部911、全周縁画像を取得する全周縁画像取得部912、ベベルエッチング処理前の全周縁画像から基板Sの偏心量を導出する偏心量導出部913、ベベルエッチング処理前の全周縁画像から基板Sの反り量を導出する反り量導出部914、ベベルエッチング処理後の全周縁画像からエッチング幅を導出するエッチング幅導出部915、および全周縁画像を画像処理して得られる残渣強調画像から残渣を分析する残渣分析部916として機能する。
【0058】
なお、
図5中の符号7は上記偏心量だけ基板Sを移動させて回転軸AXに対する基板Sの偏心を補正する偏心補正機構である。偏心補正機構については、従来周知のものを使用することができるため、ここでは偏心補正機構7の詳しい構成については説明を省略する。
【0059】
ここまで説明してきたように、この実施形態では、基板Sの周縁部Ssがヘッド部6Gの切欠部611に挿入された状態で、撮像部6Fが周縁部Ssを撮像する。基板Sは一定速度で回転しており、基板Sが1周する間、撮像部6Fが定期的に撮像を行い、各時刻で撮像された画像を合成することによって、基板Sの全周分に対応する周縁部Ssの画像、つまり全周縁画像を取得することが可能である。
【0060】
撮像される画像Imには、周縁部Ssを上方から見た画像に対応する上面画像領域Ma、側方から見た画像に対応する側面画像領域Mb、下方から見た画像に対応する下面画像領域Mcを含んでいる。したがって、全周縁画像は、基板Sの全周分について、周縁部Ssを上方、側方および下方からそれぞれ見たときの基板Sの状態を表す情報を含んでいる。この全周縁画像を適宜の画像処理技術を用いて解析することで、周縁部Ssの外観検査を行うことができる。
【0061】
図10はこの基板処理装置で実行される基板処理を示すフローチャートである。この基板処理は、演算処理部91が予め用意された制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。基板Sに対する処理としては種々のものを実行可能であるが、ここでは、ベベル部を処理液によってエッチング処理し、その前後において基板Sの検査を行う一連の処理(ベベルエッチング処理)を例に挙げて説明する。
【0062】
基板処理装置1により基板Sにベベルエッチング処理を施す際には、演算処理部91は、ガード駆動部33によりカップ31を下方位置に位置決めする。また、演算処理部91は、ヘッド駆動部6Dによりヘッド部6Gを退避位置P1に位置決めする。これにより、スピンチャック21の上方に基板搬送ロボット211のハンドが進入するのに十分な搬送空間が形成される。そして、インデクサロボット222と基板搬送ロボット211とが協働して、未処理の基板Sを基板処理装置1に搬入しスピンチャック21の上面に載置する(ステップS101)。これに続いてポンプ24が作動し、基板Sがスピンチャック21に吸着保持される。
【0063】
基板Sの搬入および載置(ローディング)が完了すると、基板搬送ロボット211が基板処理装置1から退避する。それに続いて、演算処理部91は、撮像機構6を作動させて基板Sの全周縁画像を取得する(ステップS102)。
【0064】
図11は撮像部を用いた基板の全周縁画像の取得動作を示すフローチャートである。演算処理部91は、記憶部92に予め記憶された偏心量取得プログラムにしたがって撮像部6Fの各部およびスピンチャック21を制御する。
【0065】
演算処理部91は、基板Sを吸着保持したスピンチャック21を回転させることで、基板Sを基準位置(回転角度がゼロの位置)に位置決めする(ステップS201)。次に、ヘッド駆動部6Dがヘッド部6Gを退避位置P1から撮像位置P2に移動させ、位置決めする(ステップS202)。これにより、
図6(a)に示すように、ヘッド部6Gの切欠部611が基板Sの周縁部Ssおよびその隣接領域を挟み込むように位置決めされる。これにより、撮像準備が完了する。
【0066】
この状態からスピンチャック21が作動して基板Sを一定速度で回転させるとともに、撮像部6Fによる撮像を開始する(ステップS203)。すなわち、光源6Eが点灯して基板Sの周縁部Ssを拡散照明し、回転駆動部23が演算処理部91からの制御指令に応じてスピンチャック21を所定速度で回転させる。その後、基板Sが所定角度だけ回転するごとに、撮像部6Fが撮像動作を行い、画像Imを取得する。
【0067】
基板Sが1回転以上する間、定期的に撮像を行うことで、基板Sの周縁部Ssの1周分の画像を取得することができる。それらの画像をつなぎ合わせることで全周縁画像を作成することができるが、その際に欠落部分が生じるのを防止するため、時間的に隣り合う2回の撮像では、互いの撮像範囲の一部をオーバーラップさせる。
【0068】
スピンチャック21により支持され回転される基板Sには、反りおよび偏心が不可避的に生じる。このため、撮像される画像にもその影響が現れる。詳しくは後述するが、各画像から必要な領域を切り出して合成し全周縁画像を作成するに際しては、予め反りや偏心の影響を排除した状態で切り出しを行うことが望ましい。
【0069】
そこで、取得された1周分の画像に基づき、演算処理部91は、基板Sの反り量および偏心量を順次算出する(ステップS205、S206)。そして、それらの算出値に基づいて各時刻の画像から対象領域を切り出し(ステップS207)、切り出された画像を結合することで全周縁画像を作成する(ステップS208)。これらの処理内容については後で詳しく説明する。
【0070】
図10に戻って、ステップS103では、算出された反り量および偏心量が予め定められた許容範囲に収まっているか否かが判断される。これらのいずれかが許容範囲外であるとき(ステップS103においてNO)、良好な処理結果が望めないものとして、演算処理部91は、当該基板Sが不良品である旨を入力表示部93に表示し(ステップS104)、基板Sに対するベベルエッチング処理を中止する。
【0071】
一方、反り量および偏心量がいずれも許容範囲内にあれば(ステップS103においてYES)、基板Sが良品であることを確認すると、演算処理部91は偏心補正機構7にアライメント補正を実行させ、基板Sの主面中心を鉛直な回転軸AXと一致させて偏心を解消する(ステップS111)。
【0072】
次にエッチング処理が実行される(ステップS112)。具体的には、演算処理部91は、ガード駆動部33によりカップ31を上方位置に上昇させる。これによって、カップ31の内周面はスピンチャック21に保持される基板Sの外周を取り囲む。こうして基板Sへの処理液の供給準備が完了すると、回転駆動部23が基板Sを保持するスピンチャック21を所定の処理速度で回転させる。また、演算処理部91は周縁加熱機構5のヒーター51を作動させる。
【0073】
これに続いて、演算処理部91は、処理液ノズル44を処理開始位置Psに位置決めした後で、処理液供給部45を制御して処理液を供給する。これにより、基板Sの周縁部Ssの各部が処理開始位置Psを通過する間に、処理液の供給を受ける。その結果、基板Sの周縁部Ss全体に対し、処理液によるベベルエッチング処理が実行される。処理が所定の時間継続された後、処理液の吐出、スピンチャック21の回転およびヒーター51による加熱が適時停止される。
【0074】
こうしてベベルエッチング処理が完了すると、ステップS102と同様にして、撮像機構6がベベルエッチング処理後の全周縁画像を取得する(ステップS113)。この全周縁画像は、上面画像領域Maと、側面画像領域Mbと、下面画像領域Mcとを含み、それぞれが基板Sの全周分取得されて結合されている。特に、上面画像領域Maを結合した全周縁画像には、ベベルエッチング処理された領域の像が含まれている。
【0075】
そこで、本実施形態では、全周縁画像に基づき演算処理部91は基板Sを検査する(ステップS114)。つまり、基板Sの周縁部Ssが所望のエッチング幅でベベルエッチングされているか否かを検査し、その検査結果を入力表示部93に表示して操作者に報知するとともに(ステップS115)、記憶部92に記憶する。また、当該全周縁画像IMに対して残渣を強調する画像処理を加えることで、演算処理部91は残渣強調画像を取得する。そして、残渣強調画像に基づき基板Sの周縁部Ssおよび隣接領域に残留する残渣を検出し、サイズ毎の残渣数を計測してベベルエッチング結果のひとつとして報告する(残渣分析)。
【0076】
検査後、基板搬送ロボット211が処理済みの基板Sを基板処理装置1から搬出し(ステップS116)、1枚の基板Sに対する一連の処理が終了する。なお、これら一連の工程は必要に応じ繰り返して実行される。
【0077】
図12は基板の反りおよび偏心が画像に及ぼす影響を例示する図である。このうち
図12(a)は基板Sに反りがある場合を、
図12(b)は偏心がある場合を、それぞれ示している。基板Sに反りがある場合には、
図12(a)に示すように、ヘッド部6Gの切欠部611内における基板Sの位置は、基板Sの回転に同期した周期で上下方向(Z方向)に変動する。一方、基板Sに偏心がある場合には、
図12(b)に示すように、ヘッド部6Gの切欠部611内における基板Sの位置は、基板Sの回転に同期した周期で左右方向(Y方向)に変動する。
【0078】
まず、基板Sの反りについて検討する。切欠部611内で基板Sが上下動することにより、基板Sを側面から見たときの像を映すミラー部材62bに映る基板Sの像も上下に移動する。したがって、撮像された画像Im(
図9(c))における側面画像領域Mb内で、回転に同期して基板Sの像が上下動することは容易に想像できる。また、例えば基板Sを上方から見たときの像を表す上面画像領域Ma、および下方から見たときの像を表す下面画像領域Mc内でも、基板Sの上下動による影響がないとは言えない。以下では第1のミラー部材62aで反射される反射光L2aを例示して説明するが、第3のミラー部材62cで反射される反射光L2cについても同様の議論が成立する。
【0079】
図13は基板の反りによる影響を説明する図である。まず
図13(a)に示すように、ミラー部材62aで反射されて撮像部6Fへ向かう、つまり(+X)方向に進む反射光L2aの光路に対し、ミラー部材62aが45°の傾きで配置されている場合を考える。基板Sのうち反射光L2aの光路上の一点について、基板Sに反りがない場合(実線で示す)を符号P1、基板Sの反りによって上下方向に位置が変化している場合(点線で示す)を符号P2により表すこととする。
【0080】
この場合、基板Sの反りによる上下動に起因して点P1が点P2の位置に移動したとしても、反射光L2aの光路上の点であることに変わりはないため、ミラー部材62aを介して撮像部6Fに上面画像領域Maとして撮像される像の位置は変化しない。つまり、この状況では、実質的に反りの影響はないと言える。しかしながら、このような撮像を実現するためには、基板Sから出射される反射光と同一の光路で照明光を入射させる必要があり、例えば別途照明光の光路を用意しミラー部材をハーフミラーとするなどの対応が必要となる。
【0081】
本実施形態では、ヘッド部6Gによる拡散反射光を照明源としているため、
図13(b)に示すように、ミラー部材62aを45°から少し傾けた配置としている。ここではこの傾きを符号γ[°]により表すこととする。したがって、基板Sからの反射光のうち傾きα(=45°+γ)を持って、つまり入射角(90°-α)でミラー部材62aに入射するものが、撮像部6Fへ向かう反射光L2aとなる。こうすることで、
図7(b)に示したように、拡散面610による拡散反射光を照明光として利用し撮像を行うことが可能となっている。
【0082】
一方で、ミラー部材62aをこのように傾けたことにより、
図13(b)からわかるように、基板Sに反りがない場合の点P1からの反射光(実線矢印で示す)と、これと同一点であるが基板Sの反りによってZ方向の位置が変化した点P2からの反射光(点線矢印で示す)とは、異なる光路を通って(+X)方向に進み撮像部6Fへ向かうことになる。このことは、基板Sの反りにより、上面画像領域Maに現れる点P1の位置がずれることを意味する。
【0083】
このずれ量S1は、
図13(c)に示す幾何学的関係から次式:
S1=ΔZ・sin(2γ)=ΔZ・cos(2α) … (式1)
により表すことができる。ここで、ΔZは反りによる基板SのZ方向への変位量である。このように、基板Sの反りの影響は、側面画像領域Mbのみならず、上面画像領域Maおよび下面画像領域Mcにも現れる。
【0084】
なお、
図13(b)から明らかなように、角度αについては、撮像部6Fの観察レンズ系の光軸がミラー部材62aの反射面に対してなす角とみることができる。したがって、(式1)は、撮像部6Fの光軸がミラー部材62aの反射面に対してなす角αと位置ずれ量S1との関係を表しているということもできる。
【0085】
この位置ずれは画像内でZ方向に対応する方向に生じるから、上面画像領域Maおよび下面画像領域Mcに映る基板S上面の像では、基板Sの上面および下面の像が周方向にずれていることになる。そのため、各時刻で撮像された上面画像領域Ma(下面画像領域Mc)の画像を周方向に結合して全周縁画像を作成する際、この位置ずれを考慮しなければ適切なつなぎ合わせを行うことができない。このことが、全周縁画像を作成する前に位置ずれ補正を行う必要があるとする理由である。
【0086】
Z方向への基板Sの変位量ΔZについては、各時刻で撮像された側面画像領域Mbに含まれる基板Sの像から検出可能である。また、ミラー部材62aの傾きγについては設計情報から既知である。したがって、これらの値を用いて、各画像中の上面画像領域Maおよび下面画像領域Mcにおける像の位置ずれ量を求め、その結果を用いて補正を行うことが可能である。具体的には以下の通りである。
【0087】
図14は反りによる位置ずれとそれに対する補正の原理を説明する図である。また、
図15は補正の効果を模式的示す図である。基板S上の位置を明示して理解を容易にするため、基板Sの周縁部SsのうちA面Saには、撮像周期に対応する回転角度と同じ角度間隔で「+」マークが形成されているものと仮定する。
【0088】
基板Sに反りがない場合には、
図14(a)に示すように、側面画像領域Mbでは上下方向の中央に基板Sの像が現れる。一方、基板Sに反りがある場合、
図14(b)および
図14(c)に示すように、基板Sの回転角度に応じて、側面画像領域Mbにおける基板Sの像の位置は上下に周期的に変化する。このときの変位量ΔZについては、側面画像領域Mbを画像解析することで求められる。
【0089】
一方、上面画像領域Maでは、本来は
図14(a)に示すように画像の上下方向の中央位置に「+」マークが現れるものとすると、上記した理由から、その出現位置が基板Sの反りによって上下方向に変位する。このときの変位量(位置ずれ量)S1については、側面画像領域Mbから求められる変位量ΔZとミラー部材62aの傾きγとを(式1)に代入して求めることができる。
【0090】
したがって、各画像から対象領域を切り出す際、
図14右側に示すように、各画像からの切り出し領域の範囲を求められた位置ずれ量S1だけ上下方向(周方向)にシフトするように設定すれば、反りによる位置ずれの影響をキャンセルした状態で切り出しを行うことが可能となる。なお、側面画像領域Mbから対象領域を切り出す際には、検出された変位量ΔZだけ切り出し領域をシフトすればよい。
【0091】
図15(a)はこのように位置ずれ補正を行いながら切り出した画像を結合した事例を模式的に示している。反りによる位置ずれを適切に補正して画像を切り出し結合することで、位置ずれの影響を受けない全周縁画像を作成することができる。図においては、「+」マークが一定間隔で並んでいることが、位置ずれの影響が解消されていることを表している。
【0092】
一方、画像の切り出しの際に位置ずれの影響を考慮しない、つまり各画像からの切り出し位置を変えずに結合を行うと、
図15(b)に比較例として例示するように、本来は一定である「+」マークの間隔が周期的に変動する全周縁画像が作成されてしまうことになる。本実施形態では、このような基板Sの反りによる位置ずれに対し、適切な補正を行うことが可能となっている。
【0093】
実際の基板Sにおいてこのようなマークが付されているとは限らず、全周縁画像において位置ずれの影響は必ずしも直ちに認識されるものではない。しかしながら、例えば仮にエッチング処理前または処理後の基板Sの周縁部Ssにエッチング不良箇所や異物の付着等の異常が検出されたとき、位置ずれを含んだ全周縁画像から検出される異常箇所の位置の情報が、実際の基板S上の位置と異なったものとなるといった問題が生じ得る。位置ずれを補正して作成された全周縁画像を用いることで、このような問題を未然に回避することができる。
【0094】
次に、基板Sの偏心の影響およびその補正方法について説明する。基板Sが偏心した状態で回転しているとき、撮像部6Fにより撮像された画像Im(
図9(c))においては、上面画像領域Maおよび下面画像領域Mc内の基板Sの像の位置が変化することは明らかである。一方、基板Sを側方から見た画像に対応する側面画像領域Mb内では、基板Sの上下動を伴わない偏心の影響は直ちには可視化されない。しかしながら、上記した反りの場合と同様に、実際には偏心の影響が位置ずれとして現れている。
【0095】
図16は基板の偏心による影響を説明する図である。
図16(a)に示すように、拡散面610の反射による拡散照明での撮像を可能とするため、ミラー部材62bについても、反射光L2bの光路の方向に対し45°とは異なる傾きβ(=45°+δ[°])を持って配置されている。偏心がない場合、実線矢印で示すように、基板S上の点P1から出射された光がミラー部材62bで反射され、反射光L2bとして撮像部6Fに向かう。
【0096】
基板Sに偏心がある場合、その影響により当該点P1は点P2の位置に変位する。そうすると、点線矢印で示すように、当該点P2からの反射光がミラー部材62bで反射され撮像部6Fに向かうときの光路は点P1からの反射光の光路とは異なることになる。これにより、側面画像領域Mbにおいて位置ずれが生じる。このときの位置ずれは、側面画像領域Mbに含まれる基板Sの像においては周方向に現れる。
【0097】
ここで、
図16(b)に示されるように、偏心がない場合の基板Sの中心C1と偏心がある場合の基板Sの中心C2との距離(偏心量)を符号A、ある回転位相角を基準としたときの基板Sの回転角を符号θによりそれぞれ表すとする。回転角の基準については、例えば偏心した基板Sの中心C2の位置が偏心しない場合の中心C1の位置に対して(+Y)側にあるときをθ=0とすることができる。ただし、基準の定めをこれと異なるようにした場合でも、それに応じて後述の数式を一部変更すれば同じ考え方を適用することが可能である。
【0098】
なお後述するように、実際の処理では上面画像領域Maにおける基板Sの変位量はA・cosθと表すことができるから、1周分の画像それぞれで検出された変位量の値をこの式に当てはめれば、基準(θ=0)となる回転角を一意に定めることができる。具体的には、上面画像領域Maにおいて検出された基板Sの変位量が最大となる画像が撮像されたときの基板Sの回転角が、θ=0に対応することとなる。
【0099】
そうすると、点P1から見たときの点P2は、
図16(c)に示すように、基板Sの回転角θの変化に伴って点P1を中心とし半径Aの円上を動くことになる。
図16(c)に示す幾何学的関係から、側面画像領域Mbの画像に現れる周方向の位置ずれ量S2については次式:
S2=A・sin(θ+2δ)=A・cos(θ+2β) … (式2)
により表すことができる。ミラー部材62bの傾き角δは設計情報から既知である。したがって、各時刻に撮像された画像における偏心量Aと回転角θとが求まれば、当該画像中の側面画像領域Mbに現れる位置ずれ量S2を見積もることができる。
【0100】
図17は偏心による位置ずれとそれに対する補正の原理を説明する図である。また、
図18は補正の効果を模式的示す図である。反りについての説明の場合と同様に、基板S上の位置を明示して理解を容易にするため、基板Sの周縁部SsのうちC面(端面)Scには、撮像周期に対応する回転角度と同じ角度間隔で「●」マークが形成されているものと仮定する。また、「位置関係」を表す図においては、黒丸印が点P1を、白丸印が点P2をそれぞれ表すものとする。また、「位置関係」を表す図においては、偏心がない場合の基板Sが実線で示され、偏心がある場合の基板Sが点線で示される。
【0101】
前記したように、基板Sの回転に伴って、側面画像領域Mbにおいては周方向、つまり図において左右方向の位置ずれが生じる。したがって「●」マークの位置は、基板Sの回転角θに応じて左右に移動する。
【0102】
一方、このとき基板Sはいわゆる歳差運動をしているため、上面画像領域Ma(下面画像領域Mb)に現れる基板Sも左右に変位している。
図16(b)に示す関係から、このときの変位量については、例えばA・cosθと表すことができる。そうすると、基板Sの1周分について取得された複数の画像各々における上面画像領域Ma(または下面画像領域Mb)における基板Sの変位量を検出しその変化態様を調べることで、偏心量Aおよび各画像における基板Sの回転角θを特定することができる。
【0103】
こうして偏心量Aおよび回転角θが求まれば、(式2)を用いて位置ずれ量S2を算出することができる。したがって、各画像中の側面画像領域Mbから対象領域を切り出す際には、
図17右側に示すように、各画像からの切り出し領域の範囲を求められた位置ずれ量S2だけ横方向(周方向)にシフトするように設定すれば、偏心による位置ずれの影響をキャンセルした状態で切り出しを行うことが可能となる。なお、上面画像領域Maおよび下面画像領域Mcから対象領域を切り出す際には、検出された変位量Acosθだけ切り出し領域を左右へシフトすればよい。
【0104】
図18(a)はこのように位置ずれ補正を行いながら切り出した画像を結合した事例を模式的に示している。偏心による位置ずれを適切に補正して画像を切り出し結合することで、位置ずれの影響を受けない全周縁画像を作成することができる。図においては、「●」マークが一定間隔で並んでいることが、位置ずれの影響が解消されていることを表している。
【0105】
一方、画像の切り出しの際に位置ずれの影響を考慮しない、つまり各画像からの切り出し位置を変えずに結合を行うと、
図18(b)に比較例として例示するように、本来は一定である「●」マークの間隔が周期的に変動する全周縁画像が作成されてしまうことになる。本実施形態では、このような基板Sの反りによる位置ずれに対し、適切な補正を行うことが可能となっている。
【0106】
上記のようにして、基板Sの反りおよび偏心に対し、それぞれ適切な補正を行うことができる。なお、実際の基板Sでは、反りと偏心とが共に生じ、画像にはそれらの影響が不可分に重畳されて現れるケースがあり得る。したがって、厳密にはそれぞれの影響を分離して処理する必要があるが、本願発明者の知見では、上記のように反りと偏心とを個別に処理しても実用上の問題は少ない。
【0107】
以上のように、本実施形態では、光源6Eから照射される照明光を拡散反射させて基板Sの周縁部Ssを拡散照明するヘッド部6Gに3つのミラー部材62a~62cを設け、これらの映る基板Sの像を撮像部6Fが撮像することで、基板Sの周縁部Ssを上方、側方および下方から見たときの像を1つの画像に含ませて撮像する。
【0108】
そして、側方からの撮像に対応する側面画像領域Mb中の基板Sの像から基板Sの反り量を検出し、その結果に基づき上面画像領域Ma、下面画像領域Mcにおける位置ずれ量を評価している。これにより、上面画像領域Maおよび下面画像領域Mcに現れた反りの影響が把握される。そして、全周縁画像の作成に当たり、上面画像領域Maおよび下面画像領域Mcから対象領域を切り出す際の切り出し領域の位置を位置ずれ量に応じて補正することで、反りの影響が排除された全周縁画像を取得することができる。
【0109】
その結果、この実施形態では、画像に基づく基板Sの検査において、基板Sの反りの影響を抑制して、良好に検査を行うことができる。また、検査結果をフィードバックすることで、基板Sに対する処理を良好に行うことができる。
【0110】
また、この実施形態では、上方または下方からの撮像に対応する上面画像領域Maまたは下面画像領域Mc中の基板Sの像から基板Sの偏心量を検出し、その結果に基づき側面画像領域Mbにおける位置ずれ量を評価している。これにより、側面画像領域Mbに現れた偏心の影響が把握される。そして、全周縁画像の作成に当たり、側面画像領域Mbから対象領域を切り出す際の切り出し領域の位置を位置ずれ量に応じて補正することで、偏心の影響が排除された全周縁画像を取得することができる。
【0111】
その結果、この実施形態では、画像に基づく基板Sの検査において、基板Sの偏心の影響を抑制して、良好に検査を行うことができる。また、検査結果をフィードバックすることで、基板Sに対する処理を良好に行うことができる。
【0112】
以上説明したように、上記実施形態では、基板処理装置1が本発明の「観察装置」、「基板処理装置」および「検査装置」としての機能を有している。また、上記実施形態では、撮像機構6と演算処理部91とが一体として本発明の「観察部」として機能している。また、撮像機構6のうち、光源6Eが本発明の「照明部」として機能し、ミラー部材62a~62cが本発明の「反射鏡」として機能している。また、演算処理部91は、本発明の「画像取得部」および「検査部」としての機能も有している。
【0113】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば実施形態では、基板Sの周縁部Ssを上方、側方および下方から見たときの像を1つの撮像視野に含ませて撮像している。しかしながら、上記した位置ずれの算出方法およびそれに基づく補正方法は、実質的に同時刻に各方向から見た像を撮像することができれば実行可能であり、必ずしも上記各方向からの像を全て1つの画像に含ませる必要はない。
【0114】
また、上記実施形態では、撮像部6Fの観察レンズ系は、物体側テレセントリックレンズで構成しているが、撮像部6Fの観察レンズ系の構成はこれに限られるものではない。撮像部6Fの観察レンズ系は、他のレンズで構成されてもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、拡散照明部61および保持部63は、ベベルエッチング処理を行う処理液の環境下およびヒーター51による加熱環境下にあるため、耐薬性および耐熱性を有する材料から構成されることとしている。拡散照明部61および保持部63をそれぞれPTFEおよびPEEKで構成しているが、構成材料はこれらに限定されるものではない。拡散照明部61は、PTFE以外の耐薬性および耐熱性を有する材料から構成されてもよい。保持部63は、PEEK以外の耐薬性および耐熱性を有する材料から構成されてもよい。拡散照明部61および保持部63は、例えば、金属材料、樹脂材料、またはセラミック材料等の表面にPFA等のフッ素樹脂材料がコーティングされる構成でもよい。また、拡散照明部61および保持部63を互いに異なる材料で構成しているが、同一材料で構成してもよい。また、拡散照明部61および保持部63は、耐薬性および耐熱性が要求されない環境下で使用される場合、構成材料は限定されない。拡散照明部61および保持部63は、耐薬性および耐熱性を有しない材料から構成されてもよい。
【0116】
また、拡散照明部61の拡散面610(61a~61c)の構成は限定されない。例えば、拡散照明部61または保持部63の少なくとも一部が金属材料から構成される場合、拡散面61a~61cは、金属材料の表面にショットブラスト加工が施されたものでもよい。
【0117】
また、ミラー部材62a~62cについても、Si(シリコン)に限定されるものではない。すなわち、処理液に対する耐薬性および処理温度に対する耐熱性を有する材料であれば、他の材料を用いてもよい。ミラー部材62a~62cは、例えば、耐薬性および耐熱性を有する材料の表面に金属材料が蒸着される構成でもよい。また、ミラー部材62a~62cは、耐薬性および耐熱性が要求されない環境下で使用される場合、構成材料は限定されない。ミラー部材62a~62cは、耐薬性および耐熱性を有しない材料から構成されてもよい。ミラー部材62a~62cは、例えば、耐薬性および耐熱性を有しない材料の表面に金属材料が蒸着される構成でもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、基板Sの周縁部Ssをベベルエッチングする基板処理装置1に本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。基板の周縁部を観察するために撮像する観察装置、当該観察装置により作成された全周縁画像に基づいて基板を検査する検査技術などについても、本発明を適用可能である。また、本発明に係る撮像装置に相当する撮像機構6と検査装置は、例えば、塗布膜が形成された基板Sの周縁部に塗布膜の除去液を供給して、基板Sの周縁部の塗布膜を除去する基板処理装置にも適用可能である。
【0119】
以上、特定の実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る観察装置において、撮像部は、基板の周方向における位置が等しい関係にある主面と端面とを同一の撮像視野に含むように撮像してもよい。このような構成によれば、1つの画像に含まれる主面と端面との像が互いに対応する位置のものとなっており、それらの位置関係の対比が容易である。
【0120】
この場合において、画像取得部は、一の画像に含まれる端面の位置の検出結果から、当該画像に含まれる主面の位置ずれ量を算出することができる。このような構成によれば、各時刻に撮像された画像ごとに、端面の変位量から主面の位置ずれ量を求めることができる。
【0121】
また例えば、照明光が入射した基板の周縁部から出射される反射光を反射させて撮像部へ導く反射鏡が備えられてもよい。このような構成によれば、基板の主面および端面からそれぞれ別方向に出射される反射光の方向を揃えて単一の撮像部へ導き、1つの画像に主面および端面の両方の像を含ませることができる。
【0122】
具体的には、撮像部の光軸と反射鏡の反射面とがなす角をαとし、端面の位置検出結果から求められる端面の変位量をΔZとするとき、主面の位置ずれ量S1を次式:
S1=ΔZ・cos(2α)
により求めることができる。
【0123】
また例えば、本発明に係る観察装置および観察方法においては、画像取得部は、複数の画像それぞれに含まれる主面の像から一部を対象領域として切り出して合成することで、主面のうち周縁部の全周に対応する全周縁画像を作成し、複数の画像から対象領域を切り出す際の切り出し位置が、位置ずれ量に応じて設定されてもよい。このような構成によれば、基板の反りに起因して主面の像に生じる位置ずれをキャンセルして切り出すことが可能となるので、合成された全周縁画像においては位置ずれが解消されている。
【0124】
また例えば、円板状の基板の周縁部を検査する検査装置においては、基板を主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転させる回転機構と、上記の観察装置と同一の構成を有し全周縁画像を作成する観察部と、全周縁画像に基づき周縁部を検査する検査部とを備えていてもよい。このような構成によれば、基板の反りに起因する位置ずれが解消された状態で作成された全周縁画像に基づき基板の検査が行われる。このため、例えば基板の周縁部に欠陥があった場合に、その位置に関する情報が誤って取得されたり、計数結果に誤りを生じたりすることを防止できる。
【0125】
また、この発明は、円板状の基板を保持して、基板を主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転させる回転機構と、回転機構により回転される基板の周縁部に処理液を供給して基板の周縁部を処理する処理機構と、上記の観察装置と同一の構成を有し、処理機構が周縁部を処理する前または処理した後に、周縁部を撮像して全周縁画像を作成する観察部とを備える、基板処理装置として構成されてもよい。このような構成によれば、処理に供される、または処理された基板の周縁部を観察することで、処理状態の確認を適切に行うことができる。このため、安定かつ良好に基板を処理することができる。
【0126】
また、この発明は、円板状の基板を主面に垂直でその中心を通る回転軸まわりに回転させ、上記の観察方法により、全周縁画像を作成し、全周縁画像に基づき周縁部を検査することで、基板の周縁部を検査する検査方法として構成されてもよい。このような構成によれば、基板の反りに起因する位置ずれが解消された状態で作成された全周縁画像に基づき基板の検査が行われる。このため、例えば基板の周縁部に欠陥があった場合に、その位置に関する情報が誤って取得されたり、計数結果に誤りを生じたりすることを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
この発明は、半導体ウエハなどの円形基板の周縁部を撮像し観察する観察装置全般、当該観察装置により作成された全周縁画像に基づいて基板を検査する検査技術全般、ならびに当該観察装置を装備する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 基板処理装置(観察装置、基板処理装置、検査装置)
2 回転機構
4 処理機構
6 撮像機構(観察装置、観察部)
6E 光源(照明部)
6F 撮像部
6G ヘッド部
62a~62c ミラー部材(反射鏡)
91 演算処理部(画像取得部、観察部、検査部)
S 基板
Ss 周縁部