(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168896
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】生体情報測定装置、生体情報測定方法、および生体情報測定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20241128BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241128BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B5/11 100
A61B5/00 101L
A61B5/0245 100C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085932
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊東 万里子
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 洋仁
(72)【発明者】
【氏名】松村 文幸
(72)【発明者】
【氏名】細井 みのり
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AC01
4C017BD06
4C038VA04
4C038VB31
4C038VC20
4C117XB01
4C117XB03
4C117XB04
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4C117XE13
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4C117XJ13
4C117XJ45
4C117XQ17
4C117XR02
(57)【要約】
【課題】空気袋から圧力センサに至る測定経路の異常を検知できる生体情報測定装置、生体情報測定方法、および生体情報測定プログラムを提供する。
【解決手段】生体情報測定装置は、センサ部310、処理部320,330、および検知部340を有する。センサ部310は、空気を内包する空気袋と接続され、空気袋が被験者120から受ける圧力を計測する。処理部320,330は、センサ部310の計測結果を処理して、被験者120の動圧、および静圧に関する情報を取得する。検知部340は、動圧、および/または静圧の変化に基づいて、空気袋からセンサ部310に至る経路における異常の発生を検知する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を内包する空気袋と接続され、前記空気袋が被験者から受ける圧力を計測するセンサ部と、
前記センサ部の計測結果を処理して、前記被験者の動圧、および静圧に関する情報を取得する処理部と、
前記動圧、および/または静圧の変化に基づいて、前記空気袋から前記センサ部に至る経路における異常の発生を検知する検知部と、を有する、生体情報測定装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記被験者の静圧が下降して所定の静圧下限値を下回った場合、あるいは前記被験者の静圧が所定期間にわたり持続的に下降し、かつ前記動圧の振幅が所定の動圧下限値に達した場合、前記異常として、前記空気袋から前記センサ部に至る経路において空気漏れが発生したと判定する、請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記被験者の静圧が上昇かつ前記被験者の動圧の振幅が所定の動圧下限値に達した場合、前記異常として、前記空気袋から前記センサ部に至る経路において閉塞が発生したと判定する、請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記被験者の動圧、および/または静圧に関する情報に基づいて、前記被験者の状態を判定する判定部をさらに有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記被験者の動圧、および静圧に関する情報の各々に関して、標準値を算出する演算部をさらに有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記センサ部による圧力の計測開始時、または所定時間ごとに取得された前記被験者の動圧、および静圧に関する情報に基づいて、各々の前記標準値を算出する、請求項5に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
前記被験者の動圧、および静圧に関する情報と、前記標準値とを各々比較し、所定の閾値以上の差異がある場合、ユーザに報知する、請求項5に記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
前記センサ部は、前記被験者の動圧を計測する第1センサと、前記被験者の静圧を計測する第2センサと、を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項9】
前記センサ部は、前記被験者の動圧および静圧を計測可能な第3センサを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記被験者の動圧、および/または静圧に関する情報に基づいて、前記被験者の状態の判定に使用する判定閾値を算出する、請求項4に記載の生体情報測定装置。
【請求項11】
前記判定部は、前記センサ部による圧力の計測開始時、または所定時間ごとに取得された前記被験者の動圧、および静圧に関する情報に基づいて、各々の前記判定閾値を算出する、請求項10に記載の生体情報測定装置。
【請求項12】
第1本体部および第2本体部を備える生体情報測定装置であって、
前記第1本体部は、
空気を内包する空気袋と接続され、前記空気袋が被験者から受ける圧力を計測するセンサ部と、
前記センサ部の計測結果を処理して、前記被験者の動圧、および静圧に関する情報を取得する処理部と、
前記被験者の動圧、および静圧に関する情報を第2本体部に送信する送信部と、を有し、
前記第2本体部は、
前記第1本体部からの前記被験者の動圧、および静圧に関する情報を受信する受信部と、
前記動圧、および/または静圧の変化に基づいて、前記空気袋から前記センサ部に至る経路における異常の発生を検知する検知部と、を有する、生体情報測定装置。
【請求項13】
前記第2本体部は、前記受信部および前記検知部として機能するコンピュータである、請求項12に記載の生体情報測定装置。
【請求項14】
空気を内包する空気袋が被験者から受ける圧力に基づき前記被験者の生体情報を測定する生体情報測定装置であって、
前記被験者の動圧、および静圧に関する情報を取得する取得部と、
前記動圧、および/または静圧の変化に基づいて、前記空気袋から前記空気袋と接続され、前記空気袋が被験者から受ける圧力を計測するセンサ部に至る経路における異常の発生を検知する検知部と、を有する、生体情報測定装置。
【請求項15】
空気を内包する空気袋が被験者から受ける圧力をセンサ部により計測するステップ(a)と、
前記ステップ(a)における計測結果を処理して、前記被験者の動圧、および静圧に関する情報を取得するステップ(b)と、
前記動圧、および/または静圧の変化に基づいて、前記空気袋から前記センサ部に至る経路における異常の発生を検知するステップ(c)と、を含む、生体情報測定方法。
【請求項16】
前記ステップ(c)において、前記被験者の静圧が降下して所定の下限値を下回った場合、あるいは前記被験者の静圧が所定期間にわたり持続的に下降し、かつ前記動圧の振幅が所定期間にわたり持続的に縮小している場合、前記異常として、前記空気袋から前記センサ部に至る経路において空気漏れが発生したと判定する、請求項15に記載の生体情報測定方法。
【請求項17】
前記ステップ(c)において、前記被験者の静圧が上昇かつ前記被験者の動圧の振幅が縮小した場合、前記異常として、前記空気袋から前記センサ部に至る経路において閉塞が発生したと判定する、請求項15に記載の生体情報測定方法。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか1項に記載の生体情報測定方法が含む処理を、コンピュータに実行させるための生体情報測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置、生体情報測定方法、および生体情報測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療施設等においては、ベッド上に仰臥や横臥した患者の心拍や呼吸等の生体情報を、患者を動かさずに非侵襲で測定する必要が生じる場合がある。また、介護施設等においては、限られた数のスタッフにより利用者の徘徊を防止し、利用者の安全を確保する必要がある。このような状況に対処するため、従来から、ベッド上に敷かれたマットレスの下に空気袋を敷き込み、空気袋が仰臥や横臥した患者から受ける圧力を圧力センサやマイクロフォン等により検出し、ベッド上の患者の心拍や呼吸等を測定する技術が知られている(例えば、下記特許文献1)。この技術では、検出した呼吸または心拍等の生体情報の振幅と所定の閾値との比較により、患者の入床/出床を判定している。また、近年では、測定した体動波形から、ベッド上の患者の睡眠/覚醒、入床/出床、臥床/離床、呼吸・心拍変化等の状態を解析し、患者の容態変化を医療従事者に報知する製品が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、測定経路(生体センサ3の袋からマイクロフォン5に至る経路)において異常(例えば、リーク、チューブ外れ、閉塞)が発生した場合に、患者の出床と測定経路の異常とを区別できないため、測定経路の異常を検知できないという問題がある。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、空気袋から圧力センサに至る測定経路の異常を検知できる生体情報測定装置、生体情報測定方法、および生体情報測定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決される。
【0006】
本発明の一態様の生体情報測定装置は、センサ部、処理部、および検知部を有する。センサ部は、空気を内包する空気袋と接続され、空気袋が被験者から受ける圧力を計測する。処理部は、センサ部の計測結果を処理して、被験者の動圧、および静圧に関する情報を取得する。検知部は、動圧、および/または静圧の変化に基づいて、空気袋からセンサ部に至る経路における異常の発生を検知する。
【0007】
本発明の他の態様の生体情報測定装置は、第1本体部および第2本体部を備える。第1本体部は、空気を内包する空気袋と接続され、空気袋が被験者から受ける圧力を計測するセンサ部と、センサ部の計測結果を処理して、被験者の動圧、および静圧に関する情報を取得する処理部と、被験者の動圧、および静圧に関する情報を第2本体部に送信する送信部と、を有する。第2本体部は、第1本体部からの被験者の動圧、および静圧に関する情報を受信する受信部と、動圧、および/または静圧の変化に基づいて、空気袋から前記センサ部に至る経路における異常の発生を検知する検知部と、を有する。
【0008】
本発明の他の態様の生体情報測定装置は、空気を内包する空気袋が被験者から受ける圧力に基づき被験者の生体情報を測定する。生体情報測定装置は、被験者の動圧、および静圧に関する情報を取得する取得部と、動圧、および/または静圧の変化に基づいて、空気袋から、空気袋と接続され、空気袋が被験者から受ける圧力を計測するセンサ部に至る経路における異常の発生を検知する検知部と、を有する。
【0009】
本発明の一態様の生体情報測定方法は、空気を内包する空気袋が被験者から受ける圧力をセンサ部により計測するステップ(a)と、ステップ(a)における計測結果を処理して、被験者の動圧、および静圧に関する情報を取得するステップ(b)と、動圧、および/または静圧の変化に基づいて、空気袋からセンサ部に至る経路における異常の発生を検知するステップ(c)と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被験者の動圧、および/または静圧の変化に基づいて、空気袋からセンサ部に至る経路における異常の発生を検知するように構成されている。したがって、空気袋から圧力センサに至る経路の異常を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態における生体情報解析システムの概略的な構成を例示するブロック図である。
【
図2】
図1に示す生体情報測定装置の概略的な構成を例示するブロック図である。
【
図3】
図2に示す解析部の概略的な構成を例示するブロック図である。
【
図4】
図2に示す操作表示部の表示画面を例示する模式図である。
【
図5】一実施形態の生体情報解析装置による生体情報測定方法の処理手順の概略を例示するフローチャートである。
【
図6A】空気漏れによる静圧変化が速い場合における圧力信号の時間変化の例を示すグラフである。
【
図6B】空気漏れによる静圧変化が速い場合における静圧信号の時間変化の例を示すグラフである。
【
図6C】空気漏れによる静圧変化が速い場合における動圧信号の時間変化の例を示すグラフである。
【
図7A】空気漏れによる静圧変化が遅い場合における圧力信号の時間変化の例を示すグラフである。
【
図7B】空気漏れによる静圧変化が遅い場合における静圧信号の時間変化の例を示すグラフである。
【
図7C】空気漏れによる静圧変化が遅い場合における動圧信号の時間変化の例を示すグラフである。
【
図8】チューブが閉塞した場合の波形変化を例示するグラフである。
【
図9】
図5に示すフローチャートのステップS103の処理の詳細を例示するサブルーチンフローチャートである。
【
図10】ディスプレイへのデータ表示を例示する模式図である。
【
図11】
図1に示す生体情報測定装置の第1の変形例の概略的な構成を例示するブロック図である。
【
図12】
図1に示す生体情報測定装置の第2の変形例の概略的な構成を例示するブロック図である。
【
図13】
図1に示す生体情報測定装置の第3の変形例の概略的な構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る生体情報測定装置、生体情報測定方法、および生体情報測定プログラムについて詳細に説明する。図中、同一の部材には同一の符号を用いた。図面における寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
(生体情報測定システムの構成)
図1は、一実施形態の生体情報測定システム10の概略構成を例示するブロック図である。本実施形態では、例えば、病院等の医療施設や介護施設等において、マットレス100が敷かれたベッド110上に患者または使用者(以下、「被験者」ともいう)120が臥床している状態で被験者120の呼吸および/または心拍を測定する状況を想定する。生体情報測定システム10は、ベッド110に臥床している被験者120の呼吸数を非侵襲で測定し、測定された呼吸数を連続的に表示・記録することを主な目的としたシステムであり、例えば、病院の一般病棟において使用されうる。
【0014】
生体情報測定システム10は、マット210、チューブ220、および生体情報測定装置300を有する。
【0015】
マット210は、密閉された空気袋(不図示)を備える。空気袋は、内包する空気を排出する排出口を有し、排出口にはチューブ220の一端が連結されている。空気袋の空気は、チューブ220を通じて生体情報測定装置300に排出される。一方、チューブ220の他端は生体情報測定装置300に連結されている。チューブ220の長さは問わず、生体情報測定装置300外部にチューブ220が出ていない場合もある。空気袋は、気密性を有し、内包する空気の圧力により弾性変形可能な材料(例えば、樹脂、ゴム等)を用いて形成されている。空気袋は、内部に圧縮可能な多孔質体(例えば、スポンジ)を備える弾性体を有し、当該弾性体の復元力により外部から空気が取り込まれ、空気が満たされる。
【0016】
マット210は、空気袋に空気が十分に満たされた状態で、例えば、マットレス100の下面とベッド110の床板上面との間における、ベッド110に臥床した被験者120の背部(胸腹部)に対応する位置に敷設されうる。被験者120がベッド110に横たわる(入床する)と、マット210には、ベッド110に臥床した被験者120およびマットレス100による荷重と、呼吸運動に伴う胸郭の動きや、心拍の鼓動に伴う微小な振動を含む、被験者120の身体の動きによる圧力とが加えられる。したがって、被験者120から受ける圧力に応じて、空気袋の体積が変化することにより、圧力変化がチューブ220を通じて生体情報測定装置300に伝達される。
【0017】
なお、マット210は、ベッド110上に敷かれたマットレス100上の被験者120の背部(胸腹部)に対応する位置に敷設されるようにしてもよい。この場合、マット210には、ベッド110に臥床した被験者120による荷重と被験者120の体動による圧力とが加えられることになる。
【0018】
[生体情報測定装置300の構成]
図2は、
図1に示す生体情報測定装置300の概略的な構成を例示するブロック図である。生体情報測定装置300は、センサ部310、信号処理部320、A/D変換部330、解析部340、およびシステム部350を備える。
【0019】
[センサ部310の構成]
センサ部310は、第1センサ311、および第2センサ312を有する。第1センサ311は、チューブ220の上記他端と連結されており、空気袋からの空気の圧力変化を電気信号に変換して信号処理部320に出力する。第1センサ311は、被験者120の呼吸運動、および心拍運動を含む体動成分(以下、「動圧」という)を計測することを目的としている。第1センサ311は、例えば、ゲージ圧センサ、差圧センサ、絶対圧センサ、マイクロフォンセンサ等の圧力センサでありうる。本実施形態では、負圧も測定可能な圧力センサを使用し、負圧発生時にも体動変化を測定できるように構成されている。
【0020】
また、第2センサ312は、チューブ220の上記他端と連結されており、空気袋からの空気の圧力変化を電気信号に変換して信号処理部320に出力する。第2センサ312は、例えば、ゲージ圧センサ、絶対圧センサ等の圧力センサでありうる。なお、第2センサ312は、被験者120の荷重変化による圧力(以下「静圧」という)の変化成分を計測することを目的としている。したがって、第1センサ311と第2センサ312を同時に用いる場合、第2センサ312における交流成分(すなわち、動圧)の計測精度は低くてもよい。
【0021】
[信号処理部320の構成]
信号処理部320は、センサ部310の計測結果を処理して、被験者120の動圧、および静圧に関する情報を取得する。信号処理部320は、第1増幅回路321、HPF(High-Pass Filter)322、第2増幅回路323、およびLPF(Low-Pass Filter)324を有する。
【0022】
第1増幅回路321は、第1センサ311からの電気信号を所定の電圧レベルまで増幅し、出力する。HPF322は、第1増幅回路321によって増幅された電気信号から所定の第1のカットオフ周波数fc1以上の交流成分を抽出し、A/D変換部330に出力する。第1のカットオフ周波数fc1は、静圧に対応する周波数成分を十分に遮断しつつ、動圧に対応する周波数成分を通過させることのできる周波数である。例えば、fc1は、呼吸に由来する周波数成分を通過させることのできる周波数に設定されうる。呼吸に由来する周波数は、被験者120に関する情報に基づき、例えば、成人に対しては0.1~0.4[Hz]程度に設定されうる。
【0023】
また、第2増幅回路323は、第2センサ312からの電気信号を所定の電圧レベルまで増幅し、出力する。LPF324は、第2増幅回路323によって増幅された電気信号から所定の第2のカットオフ周波数fc2以下の交流(または直流)成分を抽出し、A/D変換部330に出力する。第2のカットオフ周波数fc2は、動圧に対応する周波数成分を十分に遮断しつつ、静圧に対応する周波数成分を通過させることのできる周波数である。第1および第2のカットオフ周波数は、同じ値であってもよいし、異なる値(fc1>fc2)であってもよい。
【0024】
[A/D変換部330の構成]
A/D変換部330は、HPF322から入力された動圧の電気信号(アナログ信号)を動圧のディジタル信号(動圧に関する情報)に変換して解析部340に出力する。また、A/D変換部330は、LPF324から入力された静圧の電気信号(アナログ信号)を静圧のディジタル信号(静圧に関する情報)に変換して解析部340に出力する。
【0025】
[解析部340の構成]
図3は、
図2に示す解析部340の概略的な構成を例示するブロック図である。解析部340は、CPU(Central Processing Unit)341、ROM(Read Only Memory)342、RAM(Random Access Memory)343、および入出力I/F344を有する。CPU341、ROM342、およびRAM343は、コンピュータを構成する。
【0026】
CPU341は、ROM342に予め保存されている生体情報測定プログラムをRAM343にロードし、実行することにより、様々な機能を実現する。
【0027】
ROM342は、不揮発性のメモリである。ROM342には、OS(Operating System)、生体情報測定プログラム等のプログラムや、CPU341の演算処理に必要な各種のパラメータが保存されている。なお、例えば、CPU341による演算結果や、測定経路における異常の検知結果を保存するSSD(Solid State Drive)、またはHDD(Hard Disk Drive)をさらに有するように構成してもよい。
【0028】
RAM343は、揮発性のメモリであり、CPU341による判定結果や各種データを一時的に保存する。
【0029】
入出力I/F344は、システム部350との間においてデータを送受する入出力インターフェースである。
【0030】
解析部340は、動圧のディジタル信号(以下、「動圧信号」という)に基づいて、被験者120の呼吸波形、呼吸数、心拍波形、および心拍数を算出する。より具体的には、解析部340は、動圧信号から呼吸に由来する周波数成分を抽出した信号に基づき呼吸波形を生成するとともに、呼吸数を算出するための所定の解析アルゴリズムにより、被験者120の呼吸数を算出する。呼吸に由来する周波数成分の抽出は、例えば、被験者120が成人の場合、概ね0.1~1.0[Hz]の信号成分を通過させるディジタルフィルタ等を使用することができる。また、解析部340は、動圧信号から心拍に由来する周波数成分を抽出した信号に基づき心拍波形を生成するとともに、心拍数を算出するための所定の解析アルゴリズムにより、被験者120の心拍数を算出する。
【0031】
また、動圧信号、および静圧信号の大きさは、被検者によってバラツキがあると考えられる。解析部340は、演算部として機能し、被験者120の動圧信号、および静圧信号の各々に関して、標準値を算出する。より具体的には、演算部は、センサ部310による圧力の計測開始時、または所定時間ごとに取得された被験者120の動圧信号、および静圧信号に基づいて、各々の標準値を算出することができる。標準値を算出することにより、計測値の妥当性を判断する基準とすることができる。演算部は、例えば、計測開始時から一定期間に取得された動圧信号、および静圧信号の各々に基づいて算出した平均値、最小値、または最大値を、動圧信号、および静圧信号の各々の標準値とすることができる。これにより、ベッド110の使用者が被験者120であることが確実であるため、被験者120に応じた標準値を確実に算出できる。あるいは、所定時間ごとのタイミングから一定期間に取得された動圧信号、および静圧信号の各々に基づいて算出した平均値、最小値、または最大値を、動圧信号、および静圧信号の各々の標準値としてもよい。これにより、ベッド110の使用者が被験者120のから別の被験者に変わった場合においても、別の被験者に応じた標準値を算出できる。
【0032】
上記各々の標準値は、呼吸/心拍の測定において各々動圧信号、および静圧信号について基準となる値である。動圧信号、および静圧信号の各々について、計測値と標準値との差異が小さいほど計測値の信頼度が高いと考えられ、計測値と標準値との差異が大きいほど、計測値の信頼度が低いと考えられる。解析部340は、例えば、動圧信号、および静圧信号の各々について、標準値と比較し、所定の計測閾値以上の差異がある場合、ユーザに報知(アラーム出力)する対象とする。これにより、ユーザは、動圧信号、および/または静圧信号の計測値が標準値からずれていることを認識できる。所定の計測閾値は、例えば予めROM342に保存されている。
【0033】
また、解析部340は、判定部として機能し、動圧信号および/または静圧信号に基づいて、被験者の120の状態(例えば、臥床位置、体位(臥位)、寝返り、離床/在床等)を判定する。例えば、判定部は、静圧信号に基づいて、被験者120の在床/離床を判定する。判定部は、静圧信号が所定の判定閾値よりも大きい場合、被験者120は在床していると判定する一方で、静圧信号が判定閾値未満である場合、被験者120は離床していると判定する。判定閾値は、予めROM342に保存されうる。また、判定部は、動圧信号と静圧信号を組み合わせて解析することにより、被験者の120の状態をより精度良く検知できる。例えば、判定部は、静圧信号が所定の判定閾値よりも大きいことに加えて、動圧信号に基づいて、被験者120の呼吸および/または心拍を確認できる場合に被験者120は在床していると判定するように構成されてもよい。
【0034】
また、判定部は、被験者120の動圧信号、および/または静圧信号に基づいて、被験者120の状態の判定に使用する判定閾値を算出するように構成されうる。例えば、解析部340は、被験者120の動圧信号、および静圧信号に基づいて、被験者120の在床/離床を判定する際の判定閾値を算出するように構成されうる。
【0035】
さらに、判定部は、センサ部310による圧力の計測開始時、または所定時間ごとに取得された被験者120の動圧信号、および静圧信号に基づいて、各々の判定閾値を算出する。例えば、判定部は、被験者120が入床し、呼吸の測定が開始されるタイミングにおいて、被験者120の動圧信号、および静圧信号に基づいて、被験者120の在床/離床を判定する際の判定閾値を算出する。これにより、被験者120の体重に応じた適切な判定閾値を状態判定に適用できる。あるいは、判定部は、所定時間ごとのタイミングから一定期間に取得された動圧信号、および静圧信号に基づいて、被験者120の在床/離床を判定する際の判定閾値を算出する。これにより、ベッド110の使用者が被験者120のから別の被験者に変わった場合においても、別の被験者に応じた判定閾値を適用できる。
【0036】
また、解析部340は、静圧信号の変化に基づき、被験者の120の体重を推定する。解析部340は、静圧信号の大きさと被験者120の体重との関係を表すルックアップテーブル、または関係式に基づいて、被験者の120の体重を推定する。例えば、医療従事者であるユーザは、予め複数の被験者について、各々体重と、その体重に対応する静圧信号の大きさとを測定し、ルックアップテーブル、または関係式としてROM342に保存しておく。
【0037】
また、解析部340は、静圧信号に基づき、マット210に耐荷重以上の重量がかかっているか否かを判定する。耐荷重に対応する静圧信号の値は、ROM342に予め記憶されている。
【0038】
また、解析部340は、被験者120の体重の推定値や、呼吸波形/心拍波形の傾向が急激に変化したか否かを判定する。例えば、被験者120の体重の推定値が急激に変化した場合、被験者120が離床したか、あるいは体重の異なる別の人物に入れ替わった可能性がある。また、呼吸波形/心拍波形の傾向が急激に変化した場合は、被験者120の容態が変化したか、あるいは、呼吸/心拍波形の傾向が異なる別の人物に入れ替わった可能性がある。
【0039】
さらに、本実施形態では、解析部340は、検知部として機能し、動圧、および/または静圧の変化に基づいて、空気袋からセンサ部310に至る経路における異常の発生を検知する。異常の発生を検知する具体的な方法についての詳細は後述する。
【0040】
[システム部350の構成]
図4は、
図2に示す操作表示部の表示画面を例示する模式図である。システム部350は、送信部351、操作表示部352、および記録部353を有する。
【0041】
送信部351は、解析部340による呼吸/心拍の解析結果(呼吸数/心拍数、呼吸波形/心拍波形、トレンドグラフ等)、被験者120の状態、アラーム、測定経路の異常等のデータを端末装置400に送信する。被験者120の状態には、例えば、被験者120の在床/離床、体位(臥位)、体位の変化のトレンドグラフ、位置、体重推定値、健康状態等が含まれうる。ユーザは、送信部351から送信された上記データを端末装置400において確認し、記憶装置に保存できる。端末装置400は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等でありうる。
【0042】
送信部351と端末装置400との間は、無線/有線のネットワークにより相互に通信可能に接続される。ネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、USB等である。ネットワークの通信規格として、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、医療用テレメータ用特定小電力無線、または5Gを使用しうる。
【0043】
操作表示部352は、例えばタッチパネル、各種キー、スイッチ等を有し、ユーザによる指示、各種設定、患者(被験者120)に関する情報等を受け付ける。ユーザによる指示には、例えば、測定開始/終了の指示が含まれ、各種設定には、例えば、データの出力方法や表示方法に関する設定等が含まれる。また、患者に関する情報には、患者の性別、年齢、既往歴等が含まれる。
【0044】
また、操作表示部352は、生体情報測定装置300の筐体の一面に配置されたディスプレイ360、およびスピーカ(不図示)を有し、解析部340による呼吸/心拍の解析結果、被験者120の状態、アラーム、測定経路の異常等のデータを出力する。操作表示部352の出力には、例えば上記データのディスプレイへの表示、スピーカへの音声出力、プリンタへの印刷出力等が含まれる。操作表示部352は、外部のプリンタに接続されうる。
図4には、呼吸数のトレンドグラフTG1、心拍数のトレンドグラフTG2をディスプレイ360に表示した場合について例示している。ディスプレイ360へのデータ表示の詳細については後述する。
【0045】
記録部353は、例えば、SSD等の大容量の記憶装置を有し、上記データを記録する。
【0046】
(生体情報測定方法)
以下、
図5~
図10を参照して、生体情報測定装置300による生体情報測定方法の処理手順の概略を説明する。
図5は本実施形態の生体情報測定装置300による生体情報測定方法の処理手順の概略を例示するフローチャートである。同図に示すフローチャートの処理は、CPU341が生体情報測定プログラムを実行することにより実現される。また、
図6A~
図6Cは、空気漏れによる静圧変化が速い場合における、各々圧力信号の時間変化の例、静圧信号の時間変化の例、および動圧信号の時間変化の例を示すグラフである。また、
図7A~
図7Cは、空気漏れによる静圧変化が遅い場合における、各々圧力信号の時間変化の例、静圧信号の時間変化の例、および動圧信号の時間変化の例を示すグラフである。
図8は、チューブが閉塞した場合の波形変化を例示するグラフである。
図9は、
図5に示すフローチャートのステップS103の処理の詳細を例示するサブルーチンフローチャートである。同図に示すフローチャートの処理は、CPU341が生体情報測定プログラムを実行することにより実現される。また、
図10は、ディスプレイ360へのデータ表示を例示する模式図である。
【0047】
[測定準備]
まず、被験者120の呼吸数の測定に先立ちユーザは、マットレス100の下面とベッド110の床板上面との間、またはマットレス100上における、被験者120の背部(胸腹部)に対応する位置にマット210を配置する。そして、ユーザは、被験者120がベッド110に入床した後、生体情報測定装置300に対して測定開始の指示を行う(例えば、測定開始ボタンを押す)。あるいは、生体情報測定装置300の電源をオンすると測定が自動的に開始される。
【0048】
[呼吸数の測定]
図5に示すように、測定が開始されると、センサ部310は、被験者120の体動由来で発生する、空気袋からの圧力を計測する(ステップS101)。第1センサ311は被験者120の動圧を計測するために使用され、第2センサ312は被験者120の静圧を計測するために使用される。
【0049】
次に、信号処理部320およびA/D変換部330は、処理部として機能し、被験者120の動圧、および静圧に関する情報を取得する(ステップS102)。処理部は、センサ部310の計測結果を処理して、被験者120の動圧、および静圧に関する情報として、各々動圧、および静圧のディジタル信号(動圧信号および静圧信号)を取得する。
【0050】
次に、解析部340は、測定経路(空気袋からセンサ部310に至る経路)における異常の発生を検知する(ステップS103)。解析部340は、検知部として機能し、動圧、および/または静圧の変化に基づいて、測定経路における異常の発生を検知する。本実施形態では、上記異常として、空気漏れ(以下、「リーク」ともいう)、および閉塞を検知する場合について以下に例示して説明する。
【0051】
[測定経路における異常の発生の検知(S103)の処理の詳細]
<リーク検知方法>
リークが発生した場合、空気袋の空気が大気中に排出されるため静圧が変化(降下)する。リークによる静圧変化が速い場合、および遅い場合の2つの場合に分けてリーク検知方法について説明する。例えば、
図6Aに示すように、リークによる静圧変化が速い場合、圧力信号は、時間の経過とともに急速に降下(低下)し、時間Tにおいて静圧下限値に到達する。ここで、静圧下限値は、検知部が測定可能な最も低い圧力に対応する圧力信号の値であり、ROM342に保存されている。一方、
図7Aに示すように、リークによる静圧変化が遅い場合、圧力信号は、時間の経過とともにゆっくりと降下し、時間Tにおいてはまだ静圧下限値に到達していない。この2つの場合について、検知部は、以下のようにリークを検知する。
【0052】
(A)リークによる静圧変化が速い場合
図6Bに示すように、検知部は、静圧信号が急降下し、静圧下限値を下回った場合にリークを検知したと判定する。これにより、リークによる静圧変化が速い場合に、リークを検知できる。なお、静圧信号が急降下する速度は、例えば、静圧信号が数秒~数十分程度で初期値の1~30%、典型的には10%程度まで降下する速度でありうる。
【0053】
(B)リークによる静圧変化が遅い場合
図7B、
図7Cに示すように、検知部は、静圧信号がゆっくりと降下し、静圧下限値に到達する前であっても、静圧信号が一定の速度で(すなわち持続的に)降下し、かつ動圧信号の振幅が所定期間にわたり一定の速度で(すなわち持続的に)縮小し、動圧下限値に達している場合は、リークを検知したと判定する。これにより、リークによる静圧変化が遅い場合に、リークを検知できる。ここで、動圧下限値は、動圧信号の振幅について予め設定された下限値であり、ROM342に保存されている。また、静圧信号が降下する一定の速度は、例えば、静圧信号が数時間で初期値の30~70%、典型的には50%程度まで降下する速度であり、動圧信号の振幅が縮小する一定の速度は、例えば、動圧振幅が数時間で1~30%、典型的には10%程度に縮小する速度でありうる。
【0054】
<閉塞検知方法>
測定経路のいずれかの部分において閉塞が発生した場合の閉塞検知方法について説明する。例えば、
図8に示すように、チューブ220が閉塞した場合、閉塞直後に圧力が急上昇する。同図に示す例では、圧力信号は、チューブ220が閉塞した15[sec]の直後に急上昇したと考えられる。なお、
図8における圧力信号の値は、信号処理部320において処理された後の電圧値に相当する値であり、ここでは圧力信号の大きさを相対的に表す目的で使用している。
【0055】
(C)測定経路におけるいずれかの部分において閉塞が発生した場合
検知部は、静圧信号が急上昇し、かつ動圧信号の振幅が一定の速度で縮小している場合は、閉塞を検知したと判定する。これにより、測定経路における閉塞を検知できる。ここで、チューブ220の閉塞に伴って静圧信号が上昇する速度は、例えば、数秒(典型的には1~2[sec])程度である。
【0056】
本実施形態では、検知部が上記(A)~(C)の処理を単独、または適宜組み合わせて同時並行的に行うことにより、測定経路における異常を検知できる。また、
図9に示すように、上記(A)~(C)の処理を組み合わせて、静圧信号および動圧信号に対する判定を整理することにより、一連の処理手順として記述されたフローチャートにまとめることができる。
【0057】
同図に示すフローチャートにおいて、まず、検知部は、静圧が降下しているか否かを判定する(ステップS201)。検知部は、静圧信号の時間に対する変化率が負である場合、静圧が降下していると判定し、変化率が正である場合、静圧が上昇していると判定する。
【0058】
検知部は、静圧が降下している場合(ステップS201:YES)、静圧が静圧下限値に達したか否かを判定する。(ステップS202)。そして、検知部は、静圧が静圧下限値に達した場合(ステップS202:YES)、測定経路のいずれかの部分においてリークが発生したと判定する(ステップS203)。一方、検知部は、静圧が静圧下限値に達していない場合(ステップS202:NO)、動圧の振幅が動圧下限値に達したかを判定する(ステップS204)。そして、検知部は、動圧の振幅が動圧下限値に達した場合(ステップS204:YES)、測定経路のいずれかの部分においてリークが発生したと判定する(ステップS203)。一方、動圧の振幅が動圧下限値に達していない場合(ステップS204:NO)、処理を終了(リターン)する。
【0059】
一方、検知部は、静圧が降下していない場合(ステップS201:NO)、静圧が上昇しているか否か判定し(ステップS205)、静圧が上昇していない場合(ステップS205:NO)、処理を終了する(リターン)。一方、検知部は、静圧が上昇している場合(ステップS205:YES)、動圧の振幅が動圧下限値に達したか否かを判定し(ステップS206)、動圧の振幅が動圧下限値に達している場合(ステップS206:YES)、測定経路のいずれかの部分において閉塞が発生したと判定する(ステップS207)。一方、動圧の振幅が動圧下限値に達していない場合(ステップS206:NO)、処理を終了する(リターン)。
【0060】
[データ表示]
再び、
図5に示すフローチャートに戻り、操作表示部352は、データを出力する(ステップS104)。例えば、操作表示部352は、ディスプレイに360に、解析部340による呼吸/心拍の解析結果(呼吸数/心拍数、波形、トレンドグラフ等)、被験者120の状態、アラーム、呼吸の測定経路における異常等のデータを表示するように制御する。
【0061】
図10に示すように、操作表示部352は、例えば、端末装置400のディスプレイ、またはディスプレイ360の画面SCの上段部UPに、患者(被験者120)の呼吸数、心拍数、在床/離床、体位(臥位)、およびアラームに関する情報を患者ごとに、患者の病室番号とともに表示させる。同図に示す例では、103号室の光電一郎さん、および106号室の光電三郎さんに対して、アラームに関する情報として体動発生のアラームが表示され、107号室の光電四郎さんに対して、アラームに関する情報として測定経路の異常発生のアラームが表示されている。操作表示部352は、体動発生のアラームとして、例えば被験者120の動きが激しく、波形が乱れているときに体動マークを表示させる。
【0062】
本実施形態では、解析部340は、静圧信号および/または動圧信号の変化に基づいて被験者120の在床/離床を判定し、操作表示部352が在床時のみ呼吸数/心拍数を正確に表示するように構成されている。これにより、ベッド使用者が離床時にも呼吸数/心拍数が誤って算出・表示されることが抑制される。
【0063】
また、操作表示部352は、解析部340によって、マット210に耐荷重以上の重量がかかっていると判定された場合にその旨をユーザに報知する。これにより、マット210に耐荷重以上の重量がかかり、精度が保証できない状態のまま呼吸/心拍の計測が続くことを防止できる。
【0064】
また、操作表示部352は、動圧信号、および静圧信号の各々について、計測値と標準値との差異が所定の計測閾値以上の差異がある場合、ユーザに報知する。
【0065】
また、操作表示部352は、被験者120の体重の推定値や、呼吸波形/心拍波形の傾向が急激に変化したと判定された場合にその旨をユーザに報知する。被験者120の体重の推定値や、呼吸波形/心拍波形の傾向が急激に変化した場合、例えば、被験者120の容態が変化していたり、被験者120が別の人物に入れ替わっていたりする可能性があるので、操作表示部352は、被験者120の容態の変化やベッド110の使用者の入れ替わりの可能性がある旨をユーザに報知するように構成されてもいい。
【0066】
また、操作表示部352は、例えば、画面SCの下段部BTに、101号室の光電太郎さんについて、上段部UPの情報に加えて、在床/離床に関する情報、ベッド上の光電太郎さんの位置、体重推定値(同図においては具体的な数値は省略)、呼吸・心拍に関するグラフ、健康状態に関する情報、臥位に関する情報等について詳細な情報を表示させる。ユーザは、画面SCに表示されたデータから、光電太郎さんは、在床、安静な状態であり、ベッドの中央に仰臥位で臥床していること、呼吸数15、心拍数60、健康状態10、離床回数2回、離床時間8時間であることを直ちに把握できる。なお、離床回数/離床時間の代わりに在床回数/在床時間を表示するように構成してもよい。健康状態に関する情報は、例えば、被験者120の健康状態について、1~10段階で評価した指標(スコア)であり、呼吸数/心拍数、呼吸波形/心拍波形の変化に基づいて算出される。
【0067】
また、呼吸・心拍に関するグラフは、例えば、呼吸・心拍のリアルタイムの波形や、呼吸数・心拍数のトレンドグラフでありうる。
図10に示す例では、例えば、在床/離床に関する情報として、一日における在床、離床、および体動の履歴が帯グラフ状に表示され、体位(臥位)に関する情報として、一日における体位(臥位)(仰臥位または側臥位)の履歴が帯グラフ状に表示されている。
【0068】
本実施形態では、被験者120の状態(臥床位置、体位(臥位)、離床/在床)と、呼吸波形/心拍波形、呼吸数/心拍数を一緒に表示する。また、算出された数値の信頼度も併せて表示するように構成してもよい。これにより、ユーザ(医療従事者)は、被験者120の容態変化を的確に判断できる。また、被験者120の体位(臥位)、体位変化の回数から、褥瘡になる可能性を判定するように構成してもよい。また、睡眠中の被験者120の体位(臥位)変化、呼吸波形/心拍波形の変化から睡眠の質を評価するように構成してもよい。
【0069】
このように、
図5に示すフローチャートの処理においては、センサ部310により、空気を内包する空気袋が被験者120から受ける圧力を計測し、信号処理部320により、計測結果を処理して、被験者120の動圧、および静圧に関する情報を取得する。そして、解析部340により、動圧、および/または静圧の変化に基づいて、測定経路における異常の発生を検知する。
図5に示すフローチャートの処理(ステップS101~S104の処理)は、測定期間中において繰り返し実行される。
【0070】
[第1の変形例]
図11は、
図1に示す生体情報測定装置300の第1の変形例の概略的な構成を例示するブロック図である。
【0071】
第1の変形例では、生体情報測定装置301が、センサ部310、信号処理部320、A/D変換部330、および送信部335を有する第1本体部370と、送受信・解析部340、およびシステム部350を有する第2本体部380との2つの部分からなる場合について説明する。第1本体部370と、第2本体部380とは、例えば、病院内の異なる場所に配置され、相互に通信可能に構成されうる。例えば、第1本体部370は、患者の病室のベッド110に配置され、第2本体部380は、ユーザが携帯しうる。また、第2本体部380は、サーバ等のコンピュータであってもよい。コンピュータは、送受信・解析部340、およびシステム部350として機能する。
【0072】
センサ部310、信号処理部320、およびA/D変換部330の構成については、生体情報測定装置300の対応する各々の構成と同じであるので、詳細な説明を省略する。送信部335は、A/D変換部330によって変換された静圧信号および動圧信号を第2本体部380に送信する。第2本体部380の送受信・解析部340は、受信部または取得部として機能して送信部335によって送られた静圧信号および動圧信号を受信する。また、送受信・解析部340は、動圧信号に基づいて、被験者120の呼吸数、心拍数等を算出する。また、送受信・解析部340は、検知部として機能して動圧信号、および/または静圧信号の変化に基づいて、測定経路における異常の発生を検知する。呼吸数、心拍数等の算出方法、および異常の発生を検知する方法の詳細については上述した方法と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0073】
本変形例の変形例によれば、ユーザは、第1本体部370が配置されている病室のベッド110とは別の場所において被験者120のデータを確認できる。
【0074】
[第2の変形例]
図12は、
図1に示す生体情報測定装置300の第2の変形例の概略的な構成を例示するブロック図である。
【0075】
第2の変形例では、第1センサ311が第2センサ312の役割を兼ねる場合について説明する。この場合、第1センサ311を第3センサともいう。本変形例では、センサ部310は、第1センサ311を有するが、第2センサ312を有しない。また、信号処理部320は、第1増幅回路321、HPF322、LPF324を有するが、第2増幅回路323を有しない。第1増幅回路321の出力は、HPF322およびLPF324の入力に接続されており、LPF324は、第1増幅回路321によって増幅された電気信号から第2のカットオフ周波数fc2以下の交流(または直流)成分を抽出し、A/D変換部330に出力する。すなわち、本変形例では、第1センサ311によって計測された動圧成分をHPF322によって抽出し、第1センサ311によって計測された静圧成分をLPF324によって抽出するように構成されている。
【0076】
本変形例の変形例によれば、第2センサ312および第2増幅回路323を省略でき、生体情報測定装置の部品点数が削減されるため、生体情報測定装置の製造にかかるコストを抑制できる。
【0077】
なお、センサ部310が、第2センサ312の役割を兼ねる第1センサ311(第3センサ)のみを有する場合について説明したが、このような場合に限定されず、センサ部310が、第1~第3センサを有するように構成してもよい。
【0078】
[第3の変形例]
図13は、
図1に示す生体情報測定装置300の第3の変形例の概略的な構成を例示するブロック図である。
【0079】
第3の変形例は、上記第1の変形例および第2の変形例を組み合わせた変形例である。すなわち、生体情報測定装置303は、第1本体部370と、第2本体部380との2つの部分からなる。また、センサ部310は、第1センサ311を有するが、第2センサ312を有しない。また、信号処理部320は、第1増幅回路321、HPF322、LPF324を有するが、第2増幅回路323を有しない。
【0080】
以上で説明した本実施形態の生体情報測定装置300~303は、以下の効果を奏する。
【0081】
被験者120の動圧、および/または静圧の変化に基づいて、空気袋からセンサ部に至る測定経路における異常の発生を検知するように構成されている。したがって、測定経路における異常を検知できる。
【0082】
また、解析部340は、動圧信号と静圧信号を組み合わせて解析することにより、被験者120が離床している場合と、測定経路に異常が発生した場合(例えば、チューブ220が外れている場合)との区別をつけることができる。
【0083】
また、解析部340は、動圧信号と静圧信号を組み合わせて解析することにより、被験者の120の状態、例えば、被験者120の起き上がり、寝返り、離床等の検知を精度良く行える。
【0084】
また、被験者120の臥床位置や体位(臥位)によって測定性能がばらつくことが抑制されるため、呼吸/心拍波形、呼吸/心拍数の変化が、容態変化によるものなのか、それ以外の要因(例えば、体位、寝る位置の変化)によるものか判別することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態に係る生体情報測定装置300~303、生体情報測定方法、および生体情報測定プログラムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【0086】
例えば、上述した例では、信号処理部320をアナログ回路により実現し、A/D変換部330の前に配置する構成としたが、このような構成に限定されず、信号処理部をディジタル回路により実現し、A/D変換部330の後に配置するように構成してもよい。
【0087】
また、上述した例では、生体情報測定装置300~303内の解析部240(コンピュータ)により生体情報測定プログラムを実行し、被験者120の呼吸数、心拍数等を算出したり、測定経路における異常の発生を検知したりする場合について説明したが、本発明はこのような場合に限定されない。例えば、呼吸数、心拍数等の算出処理、および測定経路における異常検知を生体情報測定装置300~303の外部のサーバや汎用のコンピュータ(パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等)により行ってもよい。
【0088】
また、上記実施形態において生体情報測定プログラムにより実行される機能の一部または全部を電子回路などのハードウェアにより実行してもよい。
【符号の説明】
【0089】
100 マットレス、
110 ベッド、
120 被験者、
210 マット、
220 チューブ、
300 生体情報測定装置、
310 センサ部、
320 信号処理部、
321 第1増幅回路、
322 HPF,
323 第2増幅回路、
324 LPF,
330 A/D変換部、
335 送信部、
340 解析部/送受信・解析部、
341 CPU、
342 ROM、
343 RAM、
344 入出力I/F、
350 システム部、
351 送信部、
352 操作表示部、
353 記録部、
400 端末装置。