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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168897
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/016 20060101AFI20241128BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60G17/016
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085933
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】平尾 隆介
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA05
3D301AA06
3D301AA07
3D301CA01
3D301DA33
3D301DA38
3D301EA14
3D301EA21
3D301EA22
3D301EA23
3D301EA43
3D301EA50
3D301EA52
3D301EB13
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC07
3D301EC20
3D301EC21
3D301EC39
(57)【要約】
【課題】 制御タイミングの遅れを抑制して、適切な車体姿勢の制御を行う。
【解決手段】 車両制御装置は、車両の軌道予測から車両の挙動を求め、第1指令値(計画ロール制御指令値)を演算する第1制御部(計画ロール制御部20)と、前記車両の状態量から前記車両の挙動を求め、第2指令値(通常ロール制御指令値)を演算する第2制御部(通常ロール制御部19)と、前記第2指令値が入力されるよりも前の状況において前記第1指令値に基づき制御され、前記車両の挙動を制御する緩衝器(可変ダンパ6)と、を備えている。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御装置であって、
車両の軌道予測から前記車両の挙動を求め、第1指令値を演算する第1制御部と、
前記車両の状態量から前記車両の挙動を求め、第2指令値を演算する第2制御部と、
前記第2指令値が入力されるよりも前の状況において前記第1指令値に基づき制御され、前記車両の挙動を制御する緩衝器と、
を有する車両制御装置。
【請求項2】
前記緩衝器は、前記第2指令値が入力された後は、前記第2指令値が所定値以下になるまで前記第2指令値に基づいて前記車両の挙動を制御する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第1制御部が求める前記車両の挙動は、横方向の速度または該速度の1回もしくは複数回の微分値の少なくとも一つである、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第1制御部が求める前記車両の挙動は、前後方向の速度または該速度の1回もしくは複数回の微分値の少なくとも一つである、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第1制御部は、少なくとも前記横方向の速度の二階微分値である横加加速度を少なくとも求め、
前記緩衝器は、前記横加加速度が入力された場合に前記車両の挙動の制御を開始する、
請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記第1制御部は、少なくとも前記前後方向の速度の二階微分値である前後加加速度を少なくとも求め、
前記緩衝器は、前記前後加加速度が入力された場合に前記車両の挙動の制御を開始する、
請求項4に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば4輪自動車等の車両に適用して好適な車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、目標姿勢を実現するために、車体姿勢検出手段で検出した車体姿勢に基づいてサスペンションを制御する車両制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-131303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された車両制御装置では、車体姿勢検出手段で検出した現在の車体姿勢に基づいてサスペンションを制御するため、車体姿勢が変化してから制御することになり、制御タイミングが若干遅れるという問題がある。
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、制御タイミングの遅れを抑制して、適切な車体姿勢の制御が可能な車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、車両制御装置であって、車両の軌道予測から前記車両の挙動を求め、第1指令値を演算する第1制御部と、前記車両の状態量から前記車両の挙動を求め、第2指令値を演算する第2制御部と、前記第2指令値が入力されるよりも前の状況において前記第1指令値に基づき制御され、前記車両の挙動を制御する緩衝器と、を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、制御タイミングの遅れを抑制して、適切な車体姿勢の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態による車両制御装置が適用された4輪自動車を示す全体構成図である。
図2図1中の自動車に搭載した緩衝器を模式的に示す図である。
図3】車両状態コントロールユニットの構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態による車両状態推定部の構成を示すブロック図である。
図5】車両状態制御部の構成を示すブロック図である。
図6】第1の実施形態によるロール制御部の構成を示すブロック図である。
図7図6中のロール制御指令選択部の構成を示すブロック図である。
図8】第2の実施形態によるロール制御部の構成を示すブロック図である。
図9】第2の実施形態および比較例について、操舵角、横加速度、ロールレイト、ロール角、制御指令の電流値の時間変化を示す特性線図である。
図10】第3の実施形態による車両状態推定部の構成を示すブロック図である。
図11】第3の実施形態によるアンチダイブ・スクオット制御部の構成を示すブロック図である。
図12図11中の前後加加速度推定部の構成を示すブロック図である。
図13図11中のアンチダイブ・スクオット制御指令選択部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態による車両制御装置を4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0010】
ここで、図1ないし図7は本発明の第1の実施形態を示している。図1および図2において、車体1は、車両のボディを構成している。車体1の下側には、例えば左,右の前輪と左,右の後輪(以下、総称して車輪2という)が設けられている。これらの車輪2は、タイヤ3を含んで構成されている。タイヤ3は、路面の細かい凹凸を吸収するばねとして作用する。車体1と車輪2は、車両を構成している。
【0011】
サスペンション装置4は、車体1と車輪2との間に介装して設けられている。サスペンション装置4は、懸架ばね5(以下、スプリング5という)と、スプリング5と並列関係をなして車体1と車輪2との間に介装して設けられた減衰力調整式緩衝器(以下、可変ダンパ6という)とにより構成される。
【0012】
サスペンション装置4の可変ダンパ6は、車両の車体1と車輪2との間に設けられ、車体1と車輪2間の相対変位を抑制する力を可変するアクチュエータである。また、可変ダンパ6は、車両の車体1と車輪2との間の力を調整する力発生機構でもある。
【0013】
可変ダンパ6は、減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成されている。図2に示すように、可変ダンパ6には、発生減衰力の特性(即ち、減衰力特性)をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力調整バルブ等からなる減衰力可変アクチュエータ7が付設されている。減衰力可変アクチュエータ7は、供給される電流(駆動電流)に応じて減衰力が調整される減衰力調整部である。
【0014】
なお、減衰力可変アクチュエータ7は、減衰力特性を必ずしも連続的に調整する構成でなくてもよく、例えば2段階以上の複数段階で減衰力を調整可能なものであってもよい。また、可変ダンパ6は、圧力制御タイプでもよく、流量制御タイプであってもよい。
【0015】
CAN8(controller area network)は、車体1に搭載されたシリアル通信部である。CAN8は、車両に搭載された多数の電子機器と車両状態コントロールユニット11(以下、車両状態ECU11という)との間で車載向けの多重通信を行う。CAN8は、シリアル信号からなるCAN信号によって車両運転情報を伝送する。この場合、CAN8を伝送する車両運転情報には、例えば操舵角、車速、横加速度、前後加速度、ブレーキ液圧、エンジントルク等が含まれる。
【0016】
自動運転コントロールユニット9(以下、自動運転ECU9という)は、例えばGPS受信機、地図データベース、路車間通信装置、カメラ、レーダー等から得られる各種情報に基づいて、車両を自動運転させるための指令を演算する。自動運転ECU9は、例えば国際公開第2021/153622号の自動運転コントロールユニットと同様に構成されている。自動運転ECU9は、マイクロコンピュータ(図示せず)と、ROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶部(図示せず)を備えている。自動運転ECU9のマイクロコンピュータは、記憶部に格納されたプログラムを実行することによって、自動運転用の指令として、例えば車両の計画経路、計画車速等を出力する。車両運転コントロールユニット(図示せず)は、計画経路、計画車速等に従って走行するように、エンジン、ブレーキ、ステアリング等を制御する。なお、自動運転コントロールユニット9は、計画経路に代えて、計画横加速度、曲率、曲率半径、タイヤ角度、ステアリング角度等を出力してもよい。
【0017】
車両状態ECU11は、サスペンション装置4を制御する。車両状態ECU11は、車体1と車輪2との間の相対変位を抑制する力を可変する可変ダンパ6を制御する。ここで、車両状態ECU11は、可変ダンパ6(力発生機構)の発生力を制御するコントローラである。
【0018】
図2に示すように、車両状態ECU11は、コントロール部としてのプロセッサ12を備えている。プロセッサ12は、マイクロコンピュータ等によって構成されている。車両状態ECU11は、ROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶部(図示せず)を備えている。プロセッサ12は、記憶部に格納されたプログラムを実行することによって、可変ダンパ6の減衰力を制御する。
【0019】
車両状態ECU11は、入力側がCAN8等に接続され、出力側は可変ダンパ6の減衰力可変アクチュエータ7等に接続されている。プロセッサ12は、CAN8から車両運転情報をシリアル通信により読込む。
【0020】
図3に示すように、車両状態ECU11は、車両の状態を推定する車両状態推定部13と、ゲインスケジューリングパラメータ(GSP)を算出するGSP算出部14と、CAN信号、車両状態、GSPに基づいて車両状態を制御する車両状態制御部15とを備えている。
【0021】
図4に示すように、車両状態推定部13は、第1横方向運動推定部13Aと第2横方向運動推定部13Bとを備えている。第1横方向運動推定部13Aおよび第2横方向運動推定部13Bは、例えば車両モデルに基づいて構成されている。第1横方向運動推定部13Aは、CAN信号から得られる情報(車両運転情報)に基づいて車両の横加速度を推定する。具体的には、第1横方向運動推定部13Aは、CAN信号から得られた操舵角と車速に基づいて第1横加速度を推定する。このとき、第1横加速度は、車両動特性を考慮して操舵角から推定した横加速度(操舵角推定横加速度)である。一方、第2横方向運動推定部13Bは、自動運転ECU9から得られた計画経路と計画車速に基づいて、第2横加速度を推定する。このとき、第2横加速度は、計画横加速度である。
【0022】
図3に示すように、GSP算出部14(ゲインスケジューリングパラメータ算出部)は、車両状態推定部13の推定値に基づく実目標減衰力を、予め求めた目標減衰力と近い値に近付ける重み係数を算出する重み係数算出手段を構成している。GSP算出部14は、例えばCAN8から取得する車速に基づいて、車両の上下方向(ヒーブ方向)、ロール方向、ピッチ方向等の運動を抑制するための各種のGSPを算出する。
【0023】
車両状態制御部15は、車両状態推定部13が推定した車両状態の推定結果と、GSP算出部14から出力されるGSPと、CAN信号から得られる各種の車両情報とに基づいて、所望の車両状態となるように、可変ダンパ6を制御する。図5に示すように、車両状態制御部15は、例えば、ばね上上下制振BLQ16、アンチダイブ・スクオット制御部17、ロール制御部18、制御指令演算部22を備えている。
【0024】
ばね上上下制振BLQ16には、車両状態推定部13から出力される車両状態と、GSP算出部14から出力されるばね上制振用のGSPと、CAN信号から得られる各種の車両情報とが入力される。ばね上上下制振BLQ16は、双線形最適制御理論に基づいて指令値となる指令電流(制御信号)を算出する。具体的には、ばね上上下制振BLQ16は、例えば、ばね上-ばね下間相対速度、車体絶対上下速度、ばね下-路面間相対速度、ばね下絶対上下速度と、GSP算出部14から出力されるばね上上下制振用のGSPとに基づいて、上下振動を低減するためのばね上制振制御指令を算出する。なお、ばね上制振制御指令は、双線形最適制御に限らず、例えば、スカイフック制御、H∞制御等に基づいて算出してもよい。
【0025】
アンチダイブ・スクオット制御部17には、車両状態推定部13から出力される車両状態と、GSP算出部14から出力されるアンチダイブ・スクオット制御用のGSPと、CAN信号から得られる各種の車両情報とが入力される。アンチダイブ・スクオット制御部17は、前後加速度等に基づいて、車両の加速または減速による車両のピッチ挙動を抑制するためのアンチダイブ・スクオット制御指令を算出する。
【0026】
なお、アンチダイブ・スクオット制御部17は、車両のピッチ挙動を抑制し、ピッチ量を低減するためのアンチダイブ・スクオット制御指令を算出するものとしたが、本発明はこれに限らない。アンチダイブ・スクオット制御部17は、逆ピッチとなるアンチダイブ・スクオット制御指令を算出してもよい。即ち、アンチダイブ・スクオット制御指令は、所望のピッチ運動に応じて適宜設定される。
【0027】
ロール制御部18には、車両状態推定部13から出力される車両状態と、GSP算出部14から出力されるロール制御用のGSPと、CAN信号から得られる各種の車両情報とが入力される。ロール制御部18は、横加速度等に基づいて、車両のロール挙動を抑制するためのロール制御指令を出力する。図6に示すように、ロール制御部18は、通常ロール制御部19、計画ロール制御部20、ロール制御指令選択部21を備えている。
【0028】
通常ロール制御部19は、車両の状態量から車両の挙動を求め、第2指令値としての通常ロール制御指令値を演算する。具体的には、通常ロール制御部19は、第1横加速度、車速、カーモード、車両非線形指標、GSP、FB制御指令に基づいて、通常ロール制御指令値を算出する。カーモードは、例えば通常モード(Normal)、スポーツモード(Sport)、快適モード(Comfort)の3種類のモードを含んでいる。カーモードは、例えば車両に設けられたモード選択スイッチ(図示せず)によって選択されている。ロール制御用のGSPは、例えば車両の質量に応じて異なる値が設定される。車両非線形指標は、車両の非線形挙動に応じた指標である。FB制御指令は、可変ダンパ6に対する減衰力の制御指令であり、可変ダンパ6の現在の減衰力に対応している。
【0029】
通常ロール制御部19は、第1横加速度等に基づいて、車両の横方向の加加速度である横加加速度を算出する。このとき、横加加速度は、車両の挙動であり、車両のロール方向の運動(ロールレイト)に応じた値となっている。このため、通常ロール制御部19は、第1横加速度等に基づく横加加速度を用いて、通常ロール制御指令値を算出する。このとき、通常ロール制御指令値は、車両のロール挙動を抑制するための第2指令値である。
なお、本明細書中における加加速度というベクトル量は、位置の変化量である速度の変化量である加速度の変化量である。言い換えれば、それぞれ位置の三階微分値、速度の二階微分値、加速度の一階微分値であり、躍度またはジャークと言い換えることができるベクトル量である。
【0030】
計画ロール制御部20は、車両の軌道予測から車両の挙動を求め、第1指令値としての計画ロール制御指令値を演算する。具体的には、計画ロール制御部20は、第2横加速度、計画車速、カーモード、車両非線形指標、GSP、FB制御指令に基づいて、計画ロール制御指令を算出する。計画ロール制御部20は、第2横加速度等に基づいて、車両の横加加速度を算出する。計画ロール制御部20は、第2横加速度等に基づく横加加速度を用いて、計画ロール制御指令値を算出する。このとき、計画ロール制御指令値は、車両のロール挙動を抑制するための第1指令値である。
【0031】
ロール制御指令選択部21は、通常ロール制御指令と計画ロール制御指令とに基づいて、通常ロール制御指令と計画ロール制御指令とのうちいずれか一方を選択し、最終的なロール制御指令として出力する。図7に示すように、ロール制御指令選択部21は、最大値抽出部21A、関係演算子21B、スイッチ部21Cを備えている。
【0032】
最大値抽出部21Aは、4輪の通常ロール制御指令の値(通常ロール制御指令値)のうち最大値を抽出する。関係演算子21Bは、通常ロール制御指令値の最大値が予め設定された閾値よりも大きい否かを比較する。このとき、閾値は、通常ロール制御指令値が0(ゼロ)か否かを判定する値であり、例えば通常ロール制御指令値の最小値になっている。関係演算子21Bは、通常ロール制御指令値の最大値が所定の閾値よりも大きいときには、「1」を出力する。関係演算子21Bは、通常ロール制御指令値の最大値が閾値以下のときには、「0」を出力する。スイッチ部21Cは、関係演算子21Bから入力される値が所定の判定値(例えば、0.5)よりも大きいときには、通常ロール制御指令値を選択する。このとき、判定値は、0よりも大きく、1よりも小さい値に設定されている。スイッチ部21Cは、関係演算子21Bから入力される値が判定値以下のときには、計画ロール制御指令値を選択する。
【0033】
これにより、ロール制御指令選択部21は、通常ロール制御指令値が0のときには、計画ロール制御指令値を選択する。ロール制御指令選択部21は、通常ロール制御指令値が最小値よりも大きいときには、通常ロール制御指令値を選択する。この結果、ロール制御部18は、第2指令値(通常ロール制御指令値)が入力されるよりも前の状況において、第1指令値(計画ロール制御指令値)に基づいて、可変ダンパ6を制御するためのロール制御指令を出力する。
【0034】
なお、ロール制御部18は、車両のロール挙動を抑制し、ロール量を低減するためのロール制御指令を算出するものとしたが、本発明はこれに限らない。ロール制御部18は、逆ロールとなるロール制御指令を算出してもよい。即ち、ロール制御指令は、所望のロール運動に応じて適宜設定される。
【0035】
図5に示すように、制御指令演算部22は、ばね上制振制御指令、アンチダイブ・スクオット制御指令、ロール制御指令に基づいて、最終的な制御指令を算出する。即ち、制御指令演算部22は、ばね上制振制御指令、アンチダイブ・スクオット制御指令、ロール制御指令に基づいて、制御指令となる指令電流(制御信号)を出力する。車両状態ECU11は、指令電流に基づいて可変ダンパ6の減衰力を制御する。
【0036】
第1の実施形態による車両制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0037】
車両の走行中、車両状態ECU11には、車両状態推定部13から出力される車両状態と、GSP算出部14から出力されるGSPと、CAN信号から得られる各種の車両情報とが入力される。車両状態ECU11は、車両状態、車両情報およびGSPに基づいて、指令電流となる制御指令を算出する。車両状態ECU11は、車両姿勢が所望の状態となるように、指令電流に基づいて可変ダンパ6の減衰力を制御する。
【0038】
ここで、例えば車両がカーブに進入するときや車線変更を行うときには、運転者はステアリングホイールを操作して前輪の操舵角を変化させる。この操舵角に応じて、車両には横方向の加速度(横加速度)が作用し、ロール方向の姿勢変化や振動が発生する。このとき、車両状態推定部13は、操舵角と車速に基づいて第1横加速度を推定する。これに加えて、車両状態推定部13は、自動運転ECU9から出力された計画経路と計画車速に基づいて第2横加速度を推定する。
【0039】
車両状態ECU11の通常ロール制御部19は、第1横加速度等に基づいて、車両のロール挙動を抑制するための通常ロール制御指令を算出する。ここで、僅かな操舵角の変化でロール制御を実施した場合には、車両に対して過剰な姿勢制御を行う可能性がある。このような過制御を防ぐために、通常ロール制御指令には、制御開始の閾値が設けられている。即ち、第1横加速度(操舵角推定横加速度)に基づく通常ロール制御には、不感帯が存在する。しかしながら、この不感帯によって、ロール制御の開始時期が遅れる傾向がある。
【0040】
一方、計画ロール制御部20は、第2横加速度等に基づいて、車両のロール挙動を抑制するための計画ロール制御指令を算出する。このとき、第2横加速度は、自動運転用の計画経路と計画車速に基づいて算出されている。このため、第2横加速度に基づく計画ロール制御指令には、開始時期の遅延が発生しない。そこで、ロール制御指令選択部21は、通常ロール制御指令が0のときには、計画ロール制御指令を選択する。このとき、ロール制御部18は、計画ロール制御指令となったロール制御指令として出力する。この結果、通常ロール制御指令による制御開始時期の遅れを、計画ロール制御指令によって補うことができるから、可変ダンパ6を速やかに動作させることができる。これにより、制御タイミングの遅れを抑制して、適切な車体姿勢の制御が行うことができる。
【0041】
かくして、第1の実施形態による車両制御装置は、車両の軌道予測から車両の挙動を求め、第1指令値(計画ロール制御指令値)を演算する第1制御部(計画ロール制御部20)と、前記車両の状態量から前記車両の挙動を求め、第2指令値(通常ロール制御指令値)を演算する第2制御部(通常ロール制御部19)と、前記第2指令値が入力されるよりも前の状況において前記第1指令値に基づき制御され、前記車両の挙動を制御する緩衝器(可変ダンパ6)と、を備えている。
【0042】
計画ロール制御指令は、未来の計画された情報を用いて算出される。このため、通常ロール制御指令による制御開始時期の遅れを、計画ロール制御指令によって補うことができるから、制御タイミングの遅れを抑制して、可変ダンパ6を速やかに動作させることができる。この結果、制御タイミングのずれを低減して、適切な車体姿勢の制御が行うことができる。
【0043】
一方、計画経路等の計画値のみを用いた計画ロール制御では、外乱のようなリアルタイムに変化する車両挙動の制御が行えず、車両制振性が悪化する可能性がある。これに対し、通常ロール制御は、フィードバック制御であることから、外乱に対応可能である。この点を考慮して、第1の実施形態では、リアルタイムのフィードバック制御である通常ロール制御と、計画経路等の計画値を用いたフィードフォワード制御である計画ロール制御とを組み合わせる。このため、計画外の外乱が生じる場合でも、通常ロール制御によって対応することができる。即ち、予見制御である計画ロール制御と、フィードバック制御である通常ロール制御とを組み合わせることで、遅れがなく、かつ計画外の変化に対応した理想の制御が可能になる。
【0044】
さらに、自動運転ECU9が車載カメラ、レーダー等から得られる各種情報に基づいて、自動運転用の計画経路、計画車速等を出力する場合には、計画車速等に基づく計画ロール制御指令値は、外部サーバー等と通信することなく、車両自身が得た情報から算出することができる。この場合、例えば通信状況が悪いときでも、第1の実施形態による車両制御装置は使用可能である。
【0045】
また、通常ロール制御は、リアルタイム制御であるため、制御開始後の制御は正確性が高い。そこで、第1の実施形態による可変ダンパ6は、第2指令値である通常ロール制御指令値が入力された後は、通常ロール制御指令値が所定値以下になるまで通常ロール制御指令値に基づいて車両の挙動を制御する。この結果、可変ダンパ6は、リアルタイムの路面状況や車両状態に応じて正確に制御されるため、所望の車体姿勢となるように、車両の挙動を制御することができる。
【0046】
第1制御部としての計画ロール制御部20が求める車両の挙動は、横方向の速度の二階微分値である横加加速度である。このとき、横加加速度は、車両のロール方向の運動に応じた値になっている。このため、計画ロール制御部20は、横加加速度を用いることによって、車両のロール挙動を抑制するための計画ロール制御指令を算出することができる。
【0047】
なお、計画ロール制御部20は、車両の挙動として、横方向の速度の二階微分値(横加加速度)に限らず、横方向の速度を求めてもよく、横方向の1階微分値を求めてもよい。
【0048】
第1制御部としての計画ロール制御部20は、少なくとも横方向の速度の二階微分値である横加加速度を少なくとも求め、可変ダンパ6は、横加加速度が入力された場合に車両の挙動の制御を開始する。このため、横加加速度に対応したロール方向の振動が発生したときには、制御タイミングが遅れることなく、可変ダンパ6の動作を開始することができ、ロール振動を速やかに低減することができる。
【0049】
次に、図5図8および図9は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、ロール制御部は、通常ロール制御指令値と計画ロール制御指令値のうち大きい値となる方を選択し、ロール制御指令を出力することにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
第2の実施形態によるロール制御部31は、第1の実施形態によるロール制御部18とほぼ同様に構成されている。ロール制御部31は、横加速度等に基づいて、車両のロール挙動を抑制するためのロール制御指令を出力する。図8に示すように、ロール制御部31は、通常ロール制御部19、計画ロール制御部20、ロール制御指令選択部32を備えている。
【0051】
ロール制御指令選択部32は、通常ロール制御指令と計画ロール制御指令とに基づいて、通常ロール制御指令と計画ロール制御指令とのうちいずれか一方を選択し、最終的なロール制御指令として出力する。ロール制御指令選択部32は、通常ロール制御指令値と計画ロール制御指令値を比較して、大きい値となる方を選択する。ロール制御指令選択部32は、通常ロール制御指令と計画ロール制御指令とのうち選択した方を、ロール制御指令として出力する。
【0052】
次に、車両状態ECU11によるロール挙動の抑制効果を確認するために、比較例として通常ロール制御指令のみに基づく制御を行う場合と、第2の実施形態として通常ロール制御指令と計画ロール制御指令とに基づく制御を行う場合とについて、車両のシミュレーションによって制振性能等を比較した。シミュレーション結果を、図9に示す。図9に示すように、第2の実施形態では、比較例に比べて、4輪の可変ダンパ6に供給される指令電流の電流値が素早く立ち上がる。これにより、第2の実施形態では、比較例に比べてロールレイトのピーク値の減少とロールレイトの変化が緩やかになることが確認できた。
【0053】
かくして、このように構成される第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、ロール制御部は、通常ロール制御指令値と計画ロール制御指令値のうち大きい値となる方を選択し、ロール制御指令を出力する。このため、通常ロール制御指令と計画ロール制御指令とのうちいずれか一方を選択するときに複雑な演算処理がなく、ソースコードを軽量化することができる。
【0054】
次に、図1図2図3図5図10ないし図13は本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、アンチダイブ・スクオット制御部が、第1制御部となる計画アンチダイブ・スクオット制御部と、第2制御部となる通常アンチダイブ・スクオット制御部とを備えることにある。なお、第3の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
第3の実施形態による車両状態コントロールユニット41(以下、車両状態ECU41という)は、サスペンション装置4を制御する。車両状態ECU41は、可変ダンパ6(力発生機構)の発生力を制御するコントローラである。図1図2図3図5に示すように、車両状態ECU41は、第1の実施形態による車両状態ECU11と同様に構成されている。図2に示すように、車両状態ECU41は、コントロール部としてのプロセッサ42を備えている。プロセッサ42は、車両状態ECU41の記憶部(図示せず)に格納されたプログラムを実行することによって、可変ダンパ6の減衰力を制御する。
【0056】
車両状態ECU41は、入力側がCAN8等に接続され、出力側は可変ダンパ6の減衰力可変アクチュエータ7等に接続されている。プロセッサ42は、CAN8から車両運転情報をシリアル通信により読込む。
【0057】
図3に示すように、車両状態ECU41は、車両の状態を推定する車両状態推定部43と、ゲインスケジューリングパラメータ(GSP)を算出するGSP算出部14と、CAN信号、車両状態、GSPに基づいて車両状態を制御する車両状態制御部44とを備えている。
【0058】
図10に示すように、車両状態推定部43は、第1前後方向運動推定部43A、第2前後方向運動推定部43B、第3前後方向運動推定部43Cを備えている。第1前後方向運動推定部43Aおよび第2前後方向運動推定部43Bは、例えば車両モデルに基づいて構成され、CAN信号から得られる情報(車両運転情報)に基づいて車両の前後加速度を推定する。具体的には、第1前後方向運動推定部43Aは、CAN信号から得られたエンジントルクとブレーキ液圧に基づいて制駆動推定前後加速度を推定する。第2前後方向運動推定部43Bは、CAN信号から得られた車速に基づいて車速推定前後加速度を推定する。このとき、第2前後方向運動推定部43Bは、例えば車速を微分することによって、車速推定前後加速度を算出する。一方、第3前後方向運動推定部43Cは、自動運転ECU9から得られた計画車速に基づいて、計画前後加速度を推定する。このとき、第3前後方向運動推定部43Cは、例えば計画車速を微分することによって、計画前後加速度を算出する。
【0059】
第3の実施形態による車両状態制御部44は、第1の実施形態による車両状態制御部15と同様に構成されている。車両状態制御部44は、車両状態推定部43が推定した車両状態の推定結果と、GSP算出部14から出力されるGSPと、CAN信号から得られる各種の車両情報とに基づいて、所望の車両状態となるように、可変ダンパ6を制御する。図5に示すように、車両状態制御部44は、例えば、ばね上上下制振BLQ16、アンチダイブ・スクオット制御部45、ロール制御部18、制御指令演算部22を備えている。
【0060】
第3の実施形態によるアンチダイブ・スクオット制御部45には、車両状態推定部43から出力される車両状態と、GSP算出部14から出力されるアンチダイブ・スクオット制御用のGSPと、CAN信号から得られる各種の車両情報とが入力される。アンチダイブ・スクオット制御部45は、前後加速度等に基づいて、車両の加速または減速による車両の前後方向の傾きを抑制するためのアンチダイブ・スクオット制御指令を算出する。図11に示すように、アンチダイブ・スクオット制御部45は、通常アンチダイブ・スクオット制御部46、計画アンチダイブ・スクオット制御部47、アンチダイブ・スクオット制御指令選択部48を備えている。
【0061】
通常アンチダイブ・スクオット制御部46は、車両の状態量から車両の挙動を求め、第2指令値としての通常アンチダイブ・スクオット制御指令値を演算する。具体的には、通常アンチダイブ・スクオット制御部46は、制駆動推定前後加速度、車速推定前後加速度、センサ前後加速度、LPF付き推定車速、カーモード、GSPに基づいて、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値を算出する。アンチダイブ・スクオット制御用のGSPは、例えば車両の質量に応じて異なる値が設定される。
【0062】
通常アンチダイブ・スクオット制御部46は、制駆動推定前後加速度、車速推定前後加速度、センサ前後加速度、LPF付き推定車速等に基づいて、車両の前後方向の加加速度である前後加加速度を算出する。このとき、前後加加速度は、車両の挙動であり、車両のピッチ方向の運動(ピッチレイト)に応じた値となっている。このため、通常アンチダイブ・スクオット制御部46は、制駆動推定前後加速度等に基づく前後加加速度を用いて、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値を算出する。このとき、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値は、車両のピッチ挙動を抑制するための第2指令値である。
【0063】
計画アンチダイブ・スクオット制御部47は、車両の軌道予測から車両の挙動を求め、第1指令値としての計画アンチダイブ・スクオット制御指令値を演算する。具体的には、計画アンチダイブ・スクオット制御部47は、計画前後加速度、制駆動推定前後加速度、車速推定前後加速度、センサ前後加速度、LPF付き推定車速、カーモード、GSPに基づいて、計画アンチダイブ・スクオット制御指令を算出する。計画アンチダイブ・スクオット制御部47は、計画前後加速度等に基づいて、車両の前後加加速度を推定する。計画アンチダイブ・スクオット制御部47は、計画前後加速度等に基づく前後加加速度を用いて、計画アンチダイブ・スクオット制御指令値を算出する。このとき、計画アンチダイブ・スクオット制御指令値は、車両のピッチ挙動を抑制するための第1指令値である。
【0064】
計画アンチダイブ・スクオット制御部47は、例えば推定前後加加速度とLPF付き制駆動推定前後加加速度を算出する推定前後加加速度算出部50を備えている。図12に示すように、推定前後加加速度算出部50は、LPF処理部51、微分処理部52、符号化処理部53、混成処理部54を備えている。LPF処理部51は、ルックアップテーブル51Aと1次LPF51Bによって構成されている。ルックアップテーブル51Aは、LPF付き推定車速に基づく出力を、1次LPF51Bに入力する。1次LPF51Bは、ルックアップテーブル51Aの出力に基づいて、センサ前後加速度のLPF処理(低域通過フィルタ処理)を行う。微分処理部52は、制駆動推定前後加速度、車速推定前後加速度、計画前後加速度、LPF処理部51の出力を微分する。符号化処理部53は、LPF53A、符号チェック部53Bを備えている。LPF53Aは、制駆動推定前後加速度の微分値に対してLPF処理を行う。LPF53Aは、LPF付き制駆動推定前後加加速度を出力する。符号チェック部53Bは、LPF付き制駆動推定前後加加速度が正である場合には、「1」を出力し、それ以外の場合には、「-1」を出力する。混成処理部54は、絶対値演算部54A、最大値選択部54B、乗算部54Cを備えている。絶対値演算部54Aは、微分処理部52から出力された4つの前後加加速度の絶対値を算出する。最大値選択部54Bは、絶対値演算部54Aから出力された4つの絶対値のうち最大値を選択する。乗算部54Cは、最大値選択部54Bから出力された最大値に、符号チェック部53Bの出力を乗算する。これにより、乗算部54Cは、推定前後加加速度を出力する。
【0065】
図12は、計画アンチダイブ・スクオット制御部47の推定前後加加速度算出部50を示した。推定前後加加速度算出部50から計画前後加速度に関する部分を省くと、通常アンチダイブ・スクオット制御部46の推定前後加加速度を算出する構成になる。また、前後加速度を横加速度に変更することによって、通常ロール制御部19、計画ロール制御部20が推定横加加速度を算出する構成にも、同様に適用することができる。
【0066】
アンチダイブ・スクオット制御指令選択部48は、通常アンチダイブ・スクオット制御指令と計画アンチダイブ・スクオット制御指令とに基づいて、通常アンチダイブ・スクオット制御指令と計画アンチダイブ・スクオット制御指令とのうちいずれか一方を選択し、最終的なアンチダイブ・スクオット制御指令として出力する。アンチダイブ・スクオット制御指令選択部48は、第1の実施形態によるロール制御指令選択部21と同様に構成されている。このため、アンチダイブ・スクオット制御指令選択部48は、最大値抽出部48A、関係演算子48B、スイッチ部48Cを備えている(図13参照)。
【0067】
最大値抽出部48Aは、4輪の通常アンチダイブ・スクオット制御指令の値(通常アンチダイブ・スクオット制御指令値)のうち最大値を抽出する。関係演算子48Bは、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値の最大値が予め設定された閾値よりも大きいか否かを比較する。このとき、閾値は、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値が0(ゼロ)か否かを判定する値であり、例えば通常アンチダイブ・スクオット制御指令値の最小値になっている。関係演算子48Bは、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値の最大値が所定の閾値よりも大きいときには、「1」を出力する。関係演算子48Bは、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値の最大値が閾値以下のときには、「0」を出力する。スイッチ部48Cは、関係演算子48Bから入力される値が所定の判定値(例えば、0.5)よりも大きいときには、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値を選択する。このとき、判定値は、0よりも大きく、1よりも小さい値に設定されている。スイッチ部48Cは、関係演算子48Bから入力される値が判定値以下のときには、計画アンチダイブ・スクオット制御指令値を選択する。
【0068】
これにより、アンチダイブ・スクオット制御指令選択部48は、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値が0のときには、計画アンチダイブ・スクオット制御指令値を選択する。アンチダイブ・スクオット制御指令選択部48は、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値が最小値よりも大きいときには、通常アンチダイブ・スクオット制御指令値を選択する。この結果、アンチダイブ・スクオット制御部45は、第2指令値(通常アンチダイブ・スクオット制御指令値)が入力されるよりも前の状況において、第1指令値(計画アンチダイブ・スクオット制御指令値)に基づいて、可変ダンパ6を制御するためのアンチダイブ・スクオット制御指令を出力する。
【0069】
かくして、このように構成される第3の実施形態でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第1制御部としての計画アンチダイブ・スクオット制御部47が求める車両の挙動は、前後方向の速度の二階微分値である前後加加速度である。このとき、前後加加速度は、車両のピッチ方向の運動に応じた値になっている。このため、計画アンチダイブ・スクオット制御部47は、前後加加速度を用いることによって、車両のピッチ挙動を抑制するための計画アンチダイブ・スクオット制御指令を算出することができる。
【0070】
なお、計画アンチダイブ・スクオット制御部47は、車両の挙動として、前後方向の速度の二階微分値(前後加加速度)に限らず、前後方向の速度を求めてもよく、前後方向の1階微分値を求めてもよい。
【0071】
第1制御部としての計画アンチダイブ・スクオット制御部47は、少なくとも前後方向の速度の二階微分値である前後加加速度を少なくとも求め、可変ダンパ6は、前後加加速度が入力された場合に車両の挙動の制御を開始する。このため、前後加加速度に対応したピッチ方向の振動が発生したときには、制御タイミングが遅れることなく、可変ダンパ6の動作を開始することができ、ピッチ振動を速やかに低減することができる。
【0072】
なお、第3の実施形態では、アンチダイブ・スクオット制御指令選択部48は、第1の実施形態によるロール制御指令選択部21と同様に構成されるものとしたが、本発明はこれに限らない。アンチダイブ・スクオット制御指令選択部は、第2の実施形態によるロール制御指令選択部32と同様に構成してもよい。この場合、アンチダイブ・スクオット制御指令選択部は、通常アンチダイブ・スクオット制御指令と計画アンチダイブ・スクオット制御指令のうち最大値となる方を選択し、アンチダイブ・スクオット制御指令として出力する。
【0073】
前記各実施形態では、アクチュエータ(力発生機構)である可変ダンパ6によってセミアクティブサスペンションを構成した場合を例に説明した。本発明はこれに限らず、アクチュエータは、車体と車輪との間に上下方向の力を発生させるアクティブサスペンションを構成してもよい。具体的には、アクチュエータは、車体と車輪との間に伸長方向または縮小方向の力を発生させる電気アクチュエータ、油圧アクチュエータ等によって構成される。
【0074】
前記各実施形態では、車体1と車輪2との間で調整可能な力を発生するアクチュエータ(力発生機構)を、減衰力調整式の可変ダンパ6により構成する場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えばアクチュエータを液圧緩衝器の他に、エアサスペンション、電磁サスペンション、電気粘性流体を用いたアクチュエータ、磁性流体を用いたアクチュエータ等により構成してもよい。
【0075】
前記第1の実施形態では、車両状態制御部15は、ばね上上下制振BLQ16、アンチダイブ・スクオット制御部17、ロール制御部18を備えるものとした。本発明はこれに限らず、車両状態制御部15は、ばね上上下制振BLQ16、アンチダイブ・スクオット制御部17のいずれか一方を省いてもよく、両方を省いてもよい。
【0076】
前記第3の実施形態では、車両状態制御部44は、ばね上上下制振BLQ16、アンチダイブ・スクオット制御部45、ロール制御部18を備えるものとした。本発明はこれに限らず、車両状態制御部44は、ばね上上下制振BLQ16、ロール制御部18のいずれか一方を省いてもよく、両方を省いてもよい。また、車両状態制御部44は、第1の実施形態によるロール制御部18に代えて、第2の実施形態によるロール制御部31を備えてもよい。
【0077】
前記各実施形態では、ロール制御またはアンチダイブ・スクオット制御を行う車両制御装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、ばね上上下方向制御(ヒーブ制御)を行う車両制御装置に適用してもよい。
【0078】
前記各実施形態では、4輪自動車に用いるサスペンションシステムを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば2輪、3輪自動車、または作業車両、運搬車両であるトラック、バス等にも適用できる。
【0079】
前記各実施形態は例示であり、異なる実施形態や変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1:車体、2:車輪、4:サスペンション装置、6:可変ダンパ(減衰力調整式緩衝器)、7:減衰力可変アクチュエータ、8:CAN、9:自動運転コントロールユニット(自動運転ECU)、11,41:車両状態コントロールユニット(車両状態ECU)、13,43:車両状態推定部、15,44:車両状態制御部、17,45:アンチダイブ・スクオット制御部、18,31:ロール制御部、19:通常ロール制御部、20:計画ロール制御部、21,32:ロール制御指令選択部、46:通常アンチダイブ・スクオット制御部、47:計画アンチダイブ・スクオット制御部、48:アンチダイブ・スクオット制御指令選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13