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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168906
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】固定体
(51)【国際特許分類】
   F16B 21/04 20060101AFI20241128BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F16B21/04 K
F16B5/10 H
F16B5/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085952
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔平
【テーマコード(参考)】
3J001
3J037
【Fターム(参考)】
3J001FA18
3J001GB01
3J001GC02
3J001HA07
3J001JD16
3J037AA01
3J037BB01
3J037CA07
(57)【要約】
【課題】
本来的に必要な部分を逆回動防止部として機能させることで、構造が簡単な固定体の提供である。
【解決手段】
裏側配置板部1と本体板部2とが、回動軸部3によりダクトDの一対の対向板部54に板厚Tに対応した間隔で連結され、前記裏側配置板部1と前記回動軸部3とを、一対の対向板部54の間の溝部53に挿入して90°回動させることで、当該一対の対向板部54に係合固定される固定体F1 であって、前記本体板部2の内面に一対の易変形凹部6を形成することで、当該本体板部2の各易変形凹部6の外側の部分である表側係合部2aの弾性変形を容易にして、前記係合固定の力を大きくすると共に、係合固定状態で、前記各易変形凹部6における回動軸部3の側の内面を前記一対の対向板部54の先端部に部分対向させることで、当該固定体F1 の逆回動を規制する逆回動規制面7aとして機能させる。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して平行に延びる各対向先端部の間に溝部が形成される一対の対向板部を備えた被固定体に固定される固定体であって、
前記一対の対向板部の表側に配置される本体部と、前記一対の対向板部を挟持して前記本体部を前記被固定体に固定する挟持部と、を備え、
前記挟持部は、
前記本体部から離れる方向に突設された回動軸部と、当該回動軸部の先端から相反する方向に延設され、前記溝部の延びる方向を当該延出方向に沿わせることで、前記溝部に表側から挿入可能な幅を有し、前記回動軸部を軸心とする回動により、前記溝部に表側から挿入可能な位置から、前記一対の対向板部と対向する位置に移動される一対の裏側係合部と、を有する挿入部と、
前記一対の裏側係合部と対向配置され、当該一対の裏側係合部と協働して前記一対の対向板部を挟持するために前記本体部に設けられた一対の表側係合部と、
を備え、
前記本体部における前記一対の表側係合部の間には、前記溝部に挿入された挿入部を前記回動軸部を軸心として回動させて前記被固定体に固定する際に、前記一対の対向板部の少なくとも一方の表面を摺接移動する摺接面が設けられ、
前記一対の裏側係合部と前記一対の表側係合部とで前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の対向板部の先端部に当接して、前記被固定体に対する係合固定のための回動方向と逆方向の回動を規制する逆回動規制面を前記回動軸部側の側部に備えた逆回動規制部が、前記本体部における一対の表側係合部及び前記一対の裏側係合部のいずれか一方の間に設けられ、
前記本体部における前記一対の裏側係合部と前記摺接面との間隔は、前記被固定体に対する回動の際に、当該裏側係合部における先行して前記一対の対向板部と対向する側が、遅れて対向する側よりも広く形成され、
前記一対の対向板部を挟持する際に、前記一対の表側係合部及び前記一対の裏側係合部のうち、前記逆回動規制部が設けられた側が優先的に弾性変形して、前記逆回動規制部を前記溝部内に入り込ませて、前記逆回動規制面を前記対向板部の先端部に当接させることで逆回動を規制したことを特徴とする固定体。
【請求項2】
前記逆回動規制部は、前記本体部における一対の表側係合部の間に設けられ、前記一対の対向板部の双方に対応するように、一対の表側係合部にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の固定体。
【請求項3】
前記逆回動規制部は、前記本体部における一対の表側係合部の間に設けられ、前記回動軸部の軸心方向から見て、少なくとも前記一対の裏側係合部における前記先行して前記一対の対向板部の裏面と対向する部分と重なる位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定体。
【請求項4】
前記逆回動規制部は、前記回動軸部の軸心方向から見て、前記一対の裏側係合部と重ならない位置まで延設されていることを特徴とする請求項3に記載の固定体。
【請求項5】
前記一対の裏側係合部と前記一対の表側係合部とで前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の対向板部の少なくとも一方の対向板部の先端部に当接し、前記被固定体に対する過剰な回動を規制すべく当接する過剰回動規制部が、前記一対の表側係合部及び前記一対の裏側係合部のいずれか一方の間に設けられ、
前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の表側係合部及び前記一対の裏側係合部のうち前記逆回動規制部が設けられた側が優先的に弾性変形して、前記溝部内に入り込んだ前記逆回動規制部と共に前記溝部内に入り込んで、前記一対の対向板部の少なくとも一方の先端部に当接して、過剰回動を規制することを特徴とする請求項1又は2に記載の固定体。
【請求項6】
前記逆回動規制部は、前記本体部の前記摺接面が設けられた面における前記一対の表側係合部の内側の部分に、前記一対の裏側係合部の前記延出方向と直交する方向にそれぞれ設けられた凹部で構成されることを特徴とする請求項1に記載の固定体。
【請求項7】
前記回動軸部の基端側に一体に設けられた前記本体部には、前記溝部の幅よりも狭い狭幅部を備えたブロック部が形成され、
前記ブロック部は、
前記狭幅部を構成する各対向側面に前記表側係合部がそれぞれ設けられ、
前記本体部の裏面には、前記溝部に前記挿入部を挿入した状態で、全体を回動させて前記被固定体に固定する際に、前記一対の対向板部の各表面を摺接移動する摺接面が形成され、
前記狭幅部を構成する各対向側面は、前記一対の裏側係合部と前記一対の表側係合部とで前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の対向板部の先端部に当接して、前記被固定体に全体を固定するための回動方向と逆方向への回動を規制する逆回動規制部と、前記回動方向への過剰な回動を規制すべく前記一対の対向板部の先端部に当接する過剰回動規制部と、を構成しており、
前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の表側係合部が、前記一対の裏側係合部に対して優先的に弾性変形して、前記逆回動規制部と前記過剰回動規制部とを前記溝部内に入り込ませて、前記対向板部の先端部に当接可能にしたことを特徴とする請求項1又は4に記載の固定体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定体の一対の対向板部の間の溝部を利用して、当該被固定体に固定される固定体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被固定体であるベース体Vの溝部45を利用して、固定体F1 の挿入部Bを構成する軸部11及び係合板部12を前記溝部45に挿入した状態で、当該固定体F1 を所定方向に90°回動させて、前記係合板部12の広幅部23を、前記溝部45の溝幅方向に沿わせることで、ベース体Vに対して固定体F1 を係合固定している。
【0003】
また、ベース体Vに係合固定された固定体F1 が逆回動して、当該ベース体Vに対する係合が解除されるのを防止する別体のビス4を、前記ベース体Vの表側に配置される本体部Aに螺着して、固定体F1 の逆回動時に、当該ビス4がベース体Vの一対の対向板部43の一方の対向先端部43aに当接することで、固定体Vの逆回動を防止している。
【0004】
このように、特許文献1に開示の固定体F1 では、別体のビス4を使用することで、当該固定体F1 の逆回動を確実に防止できるが、何らかの原因で、ベース体Vに対して固定体F1 を取り外す必要が生じた場合には、前記ビス4を取り外す必要があって、この操作が面倒であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-58827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、別体の逆回動規制部材を使用したり、又は逆回動規制のための専用の部分を固定体に設けることなく、当該固定体に本来的に必要な部分を逆回動防止部として機能させることで、構造が簡単な固定体の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、
対向して平行に延びる各対向先端部の間に溝部が形成される一対の対向板部を備えた被固定体に固定される固定体であって、
前記一対の対向板部の表側に配置される本体部と、前記一対の対向板部を挟持して前記本体部を前記被固定体に固定する挟持部と、を備え、
前記挟持部は、
前記本体部から離れる方向に突設された回動軸部と、当該回動軸部の先端から相反する方向に延設され、前記溝部の延びる方向を当該延出方向に沿わせることで、前記溝部に表側から挿入可能な幅を有し、前記回動軸部を軸心とする回動により、前記溝部に表側から挿入可能な位置から、前記一対の対向板部と対向する位置に移動される一対の裏側係合部と、を有する挿入部と、
前記一対の裏側係合部と対向配置され、当該一対の裏側係合部と協働して前記一対の対向板部を挟持するために前記本体部に設けられた一対の表側係合部と、
を備え、
前記本体部における前記一対の表側係合部の間には、前記溝部に挿入された挿入部を前記回動軸部を軸心として回動させて前記被固定体に固定する際に、前記一対の対向板部の少なくとも一方の表面を摺接移動する摺接面が設けられ、
前記一対の裏側係合部と前記一対の表側係合部とで前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の対向板部の先端部に当接して、前記被固定体に対する係合固定のための回動方向と逆方向の回動を規制する逆回動規制面を前記回動軸部側の側部に備えた逆回動規制部が、前記本体部における一対の表側係合部及び前記一対の裏側係合部のいずれか一方の間に設けられ、
前記本体部における前記一対の裏側係合部と前記摺接面との間隔は、前記被固定体に対する回動の際に、当該裏側係合部における先行して前記一対の対向板部と対向する側が、遅れて対向する側よりも広く形成され、
前記一対の対向板部を挟持する際に、前記一対の表側係合部及び前記一対の裏側係合部のうち、前記逆回動規制部が設けられた側が優先的に弾性変形して、前記逆回動規制部を前記溝部内に入り込ませて、前記逆回動規制面を前記対向板部の先端部に当接させることで逆回動を規制したことを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明において、固定体の挿入部を被固定体の溝部に挿入した状態で、前記回動軸部を軸心として固定体全体を所定方向に回動させると、一対の裏側係合部と、一対の表側係合部との間に、被固定体の各対向板部が相対的に挿入されて、被固定体に対して固定体が係合固定される。ここで、前記一対の裏側係合部と前記摺接面との間隔は、前記被固定体に対する回動の際に、当該裏側係合部における先行して前記一対の対向板部と対向する側が、遅れて対向する側よりも広く形成されているので、回動当初において一対の裏側係合部と一対の表側係合部との間に、相対的に被固定体の一対の対向板部がスムーズに挿入されると共に、前記一対の対向板部を挟持する際に、前記一対の表側係合部及び前記一対の裏側係合部のうち、前記逆回動規制部が設けられた側が優先的に弾性変形して、前記逆回動規制部を前記溝部内に入り込ませるようになっているので、固定体が90°回動されると、前記一対の表側係合部の弾性復元力により、当該固定体は、被固定体に係合固定される。
【0009】
また、被固定体に対して固定体が係合固定された状態では、本体部における一対の表側係合部及び一対の裏側係合部のいずれか一方の間に設けられた前記逆回動規制部が前記溝部内に入り込んで、当該逆回動規制部の回動軸部の側の側部が逆回動規制面として機能して、前記対向板部の先端部に当接されることで、被固定体に対する固定体の逆回動が規制される。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記逆回動規制部は、前記本体部における一対の表側係合部の間に設けられ、前記一対の対向板部の双方に対応するように、一対の表側係合部にそれぞれ形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、前記逆回動規制部は、一対の表側係合部にそれぞれ形成されているため、逆回動規制部の配置バランスが良好であるのに加えて、固定体の逆回動の規制を一層確実に行える。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記本体部における一対の表側係合部の間に設けられ、前記逆回動規制部は、前記回動軸部の軸心方向から見て、少なくとも前記一対の裏側係合部における前記先行して前記一対の対向板部の裏面と対向する部分と重なる位置に形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、前記逆回動規制部の少なくとも一部は、裏側係合部と重合していて、当該裏側係合部により保護されるため、破損しにくい。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記逆回動規制部は、前記回動軸部の軸心方向から見て、前記一対の裏側係合部と重ならない位置まで延設されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、表側係合部の逆回動規制部に対して離れた位置に、当該固定体が過剰に回動するのを規制する過剰回動規制部を設けることが可能となる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1又は2の発明において、前記一対の裏側係合部と前記一対の表側係合部とで前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の対向板部の少なくとも一方の対向板部の先端部に当接し、前記被固定体に対する過剰な回動を規制すべく当接する過剰回動規制部が、前記一対の表側係合部及び前記一対の裏側係合部のいずれか一方の間に設けられ、
前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の表側係合部及び前記一対の裏側係合部のうち前記逆回動規制部が設けられた側が優先的に弾性変形して、前記溝部内に入り込んだ前記逆回動規制部と共に前記溝部内に入り込んで、前記一対の対向板部の少なくとも一方の先端部に当接して、過剰回動を規制することを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、本体部における一対の表側係合部及び一対の裏側係合部のいずれか一方の間に、固定体の逆回動を規制する逆回動規制部と、逆回動を規制された固定体が、更に過剰に回動するのを規制する過剰回動規制部との双方を設けることが可能となって、被固定体に係合固定された固定体の逆回動と過剰回動との双方を同時に達成できる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記逆回動規制部は、本体部における一対の表側係合部及び一対の裏側係合のいずれか一方の間に設けけられた面における前記一対の表側係合部の内側の部分に、前記一対の裏側係合部の前記延出方向と直交する方向にそれぞれ設けられた凹部で構成されることを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明によれば、前記本体部の前記摺接面が設けられた面に、当該一対の裏側係合部の前記延出方向と直交する方向にそれぞれ凹部を設けるという簡単な構成により、当該凹部における前記回動軸部の側の側面を逆回動規制部として機能させられ、しかも、当該凹部は、本体部に設けられた一対の表側係合部を一対の裏側係合部に対して優先的に弾性変形させるのにも寄与している。従って、前記凹部は、固定体として必要不可欠な2つの機能を果たしている。また、逆回動規制部は、本体部の一対の表側係合部を弾性変形させるために、当該本体部の裏面(内面)側に設けられた一対の凹部の形成により、結果的に形成されるので、別体の逆回動規制部材を設けたり、逆回動規制のための専用の部分を固定体に設ける必要がなくなって、固定体自体の構造が簡単となる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1又は4の発明において、
前記回動軸部の基端側に一体に設けられた前記本体部には、前記溝部の幅よりも狭い狭幅部を備えたブロック部が形成され、
前記ブロック部は、
前記狭幅部を構成する各対向側面に前記表側係合部がそれぞれ設けられ、
前記本体部の裏面には、前記溝部に前記挿入部を挿入した状態で、全体を回動させて前記被固定体に固定する際に、前記一対の対向板部の各表面を摺接移動する摺接面が形成され、
前記狭幅部を構成する各対向側面は、前記一対の裏側係合部と前記一対の表側係合部とで前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の対向板部の先端部に当接して、前記被固定体に全体を固定するための回動方向と逆方向への回動を規制する逆回動規制部と、前記回動方向への過剰な回動を規制すべく前記一対の対向板部の先端部に当接する過剰回動規制部と、を構成しており、
前記一対の対向板部を挟持した際に、前記一対の表側係合部が、前記一対の裏側係合部に対して優先的に弾性変形して、前記逆回動規制部と前記過剰回動規制部とを前記溝部内に入り込ませて、前記対向板部の先端部に当接可能にしたことを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明は、被固定体に固定体が係合固定された状態において、当該固定体の逆回動を規制する逆回動規制部と、当該固定体が更に回動方向に過剰に回動するのを規制する過剰回動規制部との双方を備えているので、被固定体の溝部に固定体の挿入部を挿入した状態から、当該固定体が係合固定されるまでの回動角度を最少にできて、回動固定の操作が容易になると共に、係合固定状態において、被固定体に対する固定体のガタツキが少なくなって、被固定体に対する固定体の係合固定状態が安定化する。
【発明の効果】
【0022】
本発明(請求項1の発明)によれば、被固定体に対して固定体が係合固定された状態では、本体部における一対の表側係合部、及び一対の裏側係合部のいずれか一方の間に設けられた前記逆回動規制部が前記溝部内に入り込んで、当該逆回動規制部の回動軸部の側の側部が逆回動規制面として機能して、前記対向板部の先端部に当接されることで、被固定体に対する固定体の逆回動が規制される。
【0023】
特に、請求項6の発明によれば、前記本体部の前記摺接面が設けられた面に、当接一対の裏側係合部の前記延出方向と直交する方向にそれぞれ凹部を設けるという簡単な構成により、当該凹部の前記回動軸部の側の側面が逆回動規制部として機能すると共に、当該凹部は、本体部に設けられた一対の表側係合部を一対の裏側係合部に対して優先的に弾性変形させる機能も有する。また、逆回動規制部は、本体部の一対の表側係合部を弾性変形させるために、当該本体部に裏面(内面)側に設けられた一対の凹部の形成により、結果的に形成されるので、別体の逆回動規制部材を設けたり、逆回動規制のための専用の部分を固定体に設ける必要がなくなって、固定体自体の構造が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ダクトDと、当該ダクトDに固定基台F0 を介して固定されるボックスBとの分離状態の斜視図である。
図2】固定基台F0 の主要部を抽出した固定体F1 を回動軸部3の部分で破断した状態の斜視図である。
図3】(a),(b)は、それぞれ固定体F1 を斜上方及び斜下方から見た斜視図である。
図4】(a)~(d)は、それぞれ固定体F1 の平面図、正面図、底面図及び右側面図である。
図5】(a)~(d)は、それぞれ図4のX1 -X1 線、X2 -X2 線、X3 -X3 線及びX4 -X4 線の各断面図である。
図6】(a)は、ダクトDの溝部53に、固定体F1 の挿入部4を構成する裏側配置板部1及び回動軸部3を挿入した状態を、当該ダクトDの内部側から見た斜視図であり、(b)は、同様の状態の模式的平面図である。
図7図6(b)のY1 -Y1 線断面矢視図である。
図8】(a)は、図6の状態から固定体F1 を45°だけ回動させた状態の斜視図であり、(b)は、同様の状態の模式的平面図である。
図9図8(b)のY2 -Y2 線断面矢視図である。
図10】(a)は、図6の状態から固定体F1 を90°だけ回動させて、ダクトDの一対の対向板部54に係合固定された状態の斜視図であり、(b)は、同様の状態の模式的平面図である。
図11図10(b)のY3 -Y3 線断面矢視図である。
図12】(a)は、本発明の実施例2の固定体F2 の一部破断斜視図であり、(b),(c)は、一対の対向板部54に対する固定体F2 の回動開始状態及び係合固定状態の各斜視図である。
図13】(a),(b)は、一対の対向板部54に対する固定体F2 の係合固定状態から、更に固定体F2 が90°だけ回動方向に回動させて、これを超える過剰回動が規制された状態を示す模式的平面図である。
図14】(a)は、本発明の実施例3の固定体F3 の一部破断斜視図であり、(b),(c)は、一対の対向板部54に対する固定体F3 の回動開始状態及び係合固定状態の各斜視図である。
図15】(a),(b)は、一対の対向板部54に対する固定体F3 の係合固定状態から、更に固定体F3 を45°だけ回動方向に回動させて、これを超える過剰回動が規制された状態を示す模式的平面図である。
図16】(a)は、本発明の実施例4の固定体F4 の一部破断斜視図であり、(b),(c)は、一対の対向板部54に対する固定体F4 の回動開始状態及び係合固定状態の各斜視図である。
図17】(a),(b)は、それぞれ一対の対向板部54に対して固定体F4 が過剰回動及び逆回動が規制された状態の模式的平面図である。
図18】(a)は、本発明の実施例5の固定体F5 の一部破断斜視図であり、(b)は、一対の対向板部54に対して固定体F5 の逆回動及び過剰回動の双方が規制されて係合固定された状態の模式的平面図である。
図19】(a)は、本発明の実施例6の固定体F6 の一部破断斜視図であり、(b)は、一対の対向板部54に対して固定体F6 の逆回動及び過剰回動の双方が規制されて係合固定された状態の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、図1及び図2に示されるように、対向配置された一対の対向板部54の間に溝部53が形成されたダクトDに対して係合固定される固定基台F0 を介して、例えば配線用のボックスBを取着させる場合において、当該固定基台F0 に特徴を有するものであるが、当該固定基台F0 のうち、前記一対の対向板部54に係合固定される構造に特徴を有するものである。固定基台F0 は、当該ボックスBの底壁部61の貫通孔(図示せず)に挿通される雄ねじ筒部62を備え、当該ボックスBの内部に挿入された前記雄ねじ筒部62に、当該ボックスBの内側に配置されたナット体(図示せず)を螺合させて、固定基台F0 における当該ボックスBの外側に配置された部分と、当該ボックスBの内側の前記ナット体とで、ボックスBの底壁部61を挟持することで、当該固定基台F0 をボックスBに固定している。この状態で、固定基台F0 におけるボックスBの外部に配置されている部分のうち裏側配置板部1及び回動軸部3の部分のみを前記ダクトDの溝部53に挿入し、この状態において、ボックスBと一体となった固定基台F0 を90°所定方向に回動させることで、固定基台F0 をダクトDに係合固定させ、これにより、固定基台F0 を介してダクトDにボックスBを取着させている。このように、固定基台F0 の裏側配置板部1及び回動軸部3をダクトDの溝部53に挿入した状態から、所定方向に90°回動させることで、ダクトDに固定基台F0 を介してボックスBが係合固定される。固定基台F0 を介してダクトDに取着される対象物は、前記ボックスBに限定されるものではなく、種々のものが考えられる。
【0026】
そこで、本発明は、前記固定基台F0 のうち、ダクトDに係合固定される部分である裏側配置板部1、本体板部2及び回動軸部3のみを観念的に抽出して仮想的な「固定体」と定義して、以下の種々の実施例の固定体F1 ~F6 について説明する。なお、当然のことながら、本発明は、以下の各実施例に示される種々の構造の仮想的な固定体F1 ~F6 をダクトDに係合固定する構造に特徴を有するが、現実の実施の場面では、前記固定基台F0 と同様に、仮想的な固定体F1 ~F6 に対して、ダクトDに対象物を取着させるのに必要な部分が付加された「本来の固定体」を介して種々の対象物がダクトDに取着される。
【0027】
ここで、各固定体F1 ~F6 が係合固定される一対の対向板部54を備えた被固定体であるダクトDは、図1に示されるように、所定間隔をおいて互いに平行となるように対向配置された一対の側板部51の高さ方向の一端部は、当該一対の側板部51と直交配置されて、当該ダクトDの全体幅を定める底壁部52で連結され、前記一対の側板部51の高さ方向の他端部は、前記全体幅の幅方向の中央部に溝部53が形成されるように、前記底壁部52と平行に配置された一対の対向板部54が一体に設けられている。一対の対向板部54の先端部は、互いに対向して、各先端部の間に前記溝部53が形成されている。なお、本発明の仮想的な固定体は、上記した一対の対向板部54を備えておれば、上記したダクトDに限られず、如何なるレール状の被固定体に対しても固定可能である。
【0028】
以下、複数の最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。
【実施例0029】
図1図11に、実施例1の固定体F1 が示されている。なお、固定体F1 の本体板部2はダクトDに対して表側に配置されるが、図1図11においては、固定体F1 は、裏側配置板部1の側から見た(ダクトDの内部から見た)方が、本発明の特徴部が分かり易く表示されるので、この表示方法を用いている。固定体F1 は、樹脂の周出成形により形成され、図1図5に示されるように、ダクトDに係合固定された状態で一対の対向板部54の裏側に配置される裏側配置板部1と、当該一対の対向板部54の表側に配置される本体板部2と、当該本体板部2の裏面から前記裏側配置板部1に向けて突出して、当該本体板部2と裏側配置板部1とを一体に連結すると共に、固定体F1 の回動時には、自身の回動軸心Cとして機能する回動軸部3とを備えている。裏側配置板部1と回動軸部3は、ダクトDの溝部53から当該ダクトD内に挿入される挿入部4を形成している。裏側配置板部1及び本体板部2は、いずれも長方形状をなしていて、裏側配置板部1は、一対の対向板部54の間の溝部53に回動軸部3と一緒に挿入された状態で、当該回動軸部3の軸心Cを中心に固定体F1 を90°回動させることで、前記一対の対向板部54の裏側に配置されることが機能上求められるために、当該裏側配置板部1の細長比は、本体板部2のそれよりも大きくなっている。即ち、裏側配置板部1の短辺を形成する狭幅部1aは、前記溝部53の溝幅W0 に対して僅かに小さく(短く)形成され、裏側配置板部1の長辺を形成する広幅部1bは、当該溝部53の溝幅W0 に対して遥かに大きく(長く)形成されている。
【0030】
裏側配置板部1の一方の対角線方向に沿った対向する各コーナー部は、他方の対角線方向に沿った別の各コーナー部に比較して、大きくアール面取りされ、被固定体であるダクトDに対して固定体F1 を回動させて係合固定する際に、裏側配置板部1における大きくアール面取りされた各コーナー部は、一対の対向板部54に対して先行して対向する先行対向部1cを形成していると共に、小さく面取りされた別の各コーナー部は、前記先行対向部1cに対して遅れて一対の対向板部54に対向する遅滞対向部1dを形成している。先行対向部1c及び遅滞対向部1dのアール面取りを、対角線方向の他のコーナー部よりも大きくしたのは、固定体F1 の回動当初において、一対の先行対向部1cとダクトDの一対の対向板部54と干渉することなく、スムーズに挟持を開始可能にするためである。また、裏側配置板部1の長手方向の両端部は、本体板部2の一対の表側係合部2aと協働して、一対の対向板部54を挟持して、一対の対向板部54に対して固定体F1 を係合固定される裏側係合部1eとなっている。なお、回動軸部3の中心部には、裏側配置板部1及び本体板部2を貫通する断面円形の貫通孔5が形成されている。当該貫通孔5は、「本来の固定体」において、当該「本来の固定体」と、当該「本来の固定体」を介して被固定体に取着される対象物とを連結するためのボルト類を挿通するための孔である。
【0031】
本体板部2は、被固定体であるダクトDに対象物を取着させる本体部分であって、現実には、当該対象物を連結させるために必要な各部分が付加され、前記裏側配置板部1との対比では、「表側配置板部」とも表現できる。本体板部2は、一対の対向板部54に対する固定体F1 の回動時において、常に当該一対の対向板部54の上面に位置する必要があるため、その短手方向の寸法は、前記溝部53の幅W0 よりも大きく、その長手方向の寸法は、前記裏側配置板部1の長手方向の寸法と同等となっていて、長手方向の両端部は、前記裏側係合部1eと協働して、ダクトDの一対の対向板部54を挟持する一対の表側係合部2aとなっている。本体板部2における前記一対の表側係合部2aの内面(裏面)には、当該本体板部2の短手方向に沿って易変形凹部6が形成され、当該易変形凹部6における回動軸部3の側の内側面であって、しかも回動軸部3の後述のアール面取り部3aの端部は、当該本体板部2の内面に対して垂直に形成された逆回動規制面7aを形成していると共に、そのアール面取り部3aの側の端部と反対側の端部は、過剰回動規制面7bを形成している。前記易変形凹部6の基本機能は、ダクトDに対して固定体F1 を回動させて係合固定する際に、本体板部2の一対の表側係合部2aの部分を、裏側配置板部1の一対の裏側係合部1eに対して優先的に弾性変形可能にするためである。「優先的に弾性変形可能とする」とは、別の面からは、ダクトDに対して固定体F1 を回動させて、一対の対向板部54に対して固定体F1 を係合固定させた状態で、本体板部2の一対の表側係合部2aの弾性変形量が、裏側配置板部1の一対の裏側係合部1eの弾性変形量よりも大きいことを意味する。本体板部2の内面は、ダクトDに対する固定体F1 の回動時において一対の対向板部54の表面に摺接する摺接面8となっている。当該摺接面8は、前記一対の易変形凹部6の間に形成された第1摺接面8aと、各易変形凹部6の外側に形成された第2摺接面8bとに分離されている。
【0032】
また、図4(d)に示されるように、本体板部2の摺接面8と裏側配置板部1の先行対向部1cとの間隔(S1 )は、本体板部2の摺接面8と裏側配置板部1の遅滞対向部1dとの間隔(S2 )よりも広く形成されている。このため、ダクトDに対する固定体F1 を回動させて係合固定する際に、本体板部2の摺接面8と裏側配置板部1の先行対向部1cとの間に、当該ダクトDの一対の対向板部54が相対的にスムーズに入り込むため、固定体F1 の回動操作が容易となる。
【0033】
裏側配置板部1と本体板部2とが連結された形態となっている極短柱状の回動軸部3は、図5(b),(c)に示されるように、ほぼ正方形の一方の対角線方向の各コーナー部(裏側配置板部1の先行対向部1cに対応するコーナー部)に大きくアール面取りされたアール面取り部3aが設けられた横断面形状を有している。回動軸部3にアール面取り部3aを設けたのは、ダクトDの溝部53に、固定体F1 の挿入部4である裏側配置板部1と回動軸部3とを挿入した状態で、ダクトDの一対の対向板部54の内端部と干渉することなく、当該回動軸部3を回動させられるようにするためである。即ち、ほぼ正方形状の横断面を有する回動軸部3は、各面が裏側配置板部1の短手方向に沿った第1幅部11と、当該第1幅部11と直交して、各面が裏側配置板部1の長手方向に沿った第2幅部12とを有していて、第1及び第2の各幅部11,12の幅W1 ,W2 は、いずれもダクトDの一対の対向板部54の間の溝部53の幅W0 よりも僅かに狭く形成され、しかも第1幅部11の幅W1 は、第2幅部12の幅W2 よりも僅かに広くなっている(W0 >W1 >W2 )。なお、第2幅部12の幅W2 は、裏側配置板部1の狭幅部1aと同一幅となっている。
【0034】
上記のように、第1及び第2の各幅部11,12の各幅W1 ,W2 に僅かに差を設けたので、ダクトDの溝部53に対する挿入部4の挿入を容易にすると共に、ダクトDに対して固定体F1 が回動固定された状態で、当該固定体F1 の「ガタツキ」を可能な限り小さくするためである。第1幅部11を構成する各面には、ダクトDに対して固定体F1 が係合固定された状態で、一対の対向板部54の内端面に圧接させて、当該ダクトDに対する固定体F1 のガタツキを防止する短突条13が、当該回動軸部3の軸心Cの方向に沿って形成されている。回動軸部3の各アール面取り部3aの直径は、前記第2幅部12の幅W2 と同一になっているため、当該各アール面取り部3aと第1幅部11を形成する各面との間に段差部14が形成され、ダクトDに対する固定体F1 の回動の途中において、当該段差部14は、対向板部54の先端部に一時的に圧接され、当該圧接後に更に固定体F1 を回動させると、第1幅部11の各面が、一対の対向板部54の先端部と平行に配置されて、ダクトDに固定体F1 が係合固定される。作業者は、一対の対向板部54の先端部に対する固定体F1 の回動軸部3の段差部14の圧接を感知することで、当該一対の対向板部54に対する当該固定体F1 の回動の程度を感覚的に把握できる。
【0035】
次に、図6図11を参照して、ダクトDに対して前記固定体F1 を係合固定する順序、及び当該ダクトDに係合固定された固定体F1 の逆回動及び過剰回動の双方が規制される作用について説明する。なお、図6(b)、図8(b)及び図10(b)は、ダクトDの溝部53に対する固定体F1 の回動軸部3の係合状態と、固定体F1 の裏側配置板部1及び本体板部2の各係合部1e,2aによる当該ダクトDの一対の対向板部54の挟持状態との双方を同一図面で図示する必要があるため、下側(裏側)に配置される本体板部2の全てを実線表示する模式図法を採用している。同図において、ハッチング表示は、上側の裏側配置板部1の先行対向部1cを示し、ドット表示は、下側に配置された本体板部2の摺接面8を示す。
【0036】
図6及び図7は、ダクトDの外側において、固定体F1 の裏側配置板部1の長手方向を当該ダクトDの溝部53の形成方向に沿わせた状態で、挿入部4を構成する前記裏側配置板部1及び回動軸部3を前記溝部53に挿入された回動開始状態を示している。即ち、回動開始状態では、回動軸部3の第2幅部12を構成する各面が、ダクトDの一対の対向板部54の先端部に対して僅かの隙間を有して対向配置されると共に、本体板部2の摺接面8の第1摺接面8aの大部分と第2摺接面8bの一部が、ダクトDの一対の対向板部54の裏面に対して当接している。
【0037】
上記の回動開始状態では、図7に明瞭に図示されているように、裏側配置板部1の先行対向部1cと本体板部2の摺接面8との間隔S1 は、遅滞対向部1dの部分の間隔S2 よりも広く形成されている。前記間隔S1 は、一対の対向板部54の板厚Tよりも微少量δ1 だけ大きいために、固定体F1 の回動当初において、裏側配置板部1の一方の対角線方向に設けられた各先行対向部1cと本体板部2との間に、各対向板部54がスムーズに入り込んで回動操作を容易にすると共に、前記間隔S2 は、一対の対向板部54の板厚Tよりも微少量δ2 だけ小さいために、固定体F1 を90°回動させて、当該固定体F1 が一対の対向板部54に対して係合固定された状態では、本体板部2の一対の表側係合部2aが裏側配置板部1に対して僅かに離間する方向に弾性変形されることと相俟って、各対向板部54に対する固定体F1 の係合固定力が大きくなって、その係合固定状態が安定化する。
【0038】
固定体F1 を回動開始状態からほぼ45°だけダクトDの内面側から見て反時計方向にほぼ45°(ダクトDの外面側から見て時計方向にほぼ45°)だけ回動させると、図8及び図9に示されるように、固定体F1 は、本体板部2の内面の第1及び第2の各摺接面8a,8bは、各対向板部54の表面を摺接しながら回動されて、裏側配置板部1の各先行対向部1cと本体板部2の一方の対角線方向に沿った各コーナー部との間で、一対の対向板部54が挟持される。また、回動軸部3に設けられた各段差部14が、各対向板部54の内端面に一時的に圧接し、更に回動させるには、固定体F1 に小さな衝撃力を加えて、前記圧接を解除することで、当該固定体F1 は連続して回動される。
【0039】
そして、固定体F1 を回動開始状態から90°回動させると、図10及び図11に示されるように、一対の対向板部54に対して固定体F1 は、逆回動と過剰回動との双方が規制された取着で係合固定される。裏側配置板部1の遅滞対向部1dと本体板部2の摺接面8との間隔S2 は、一対の対向板部54の板厚Tに対して微少量δ2 だけ小さいので、裏側配置板部1の各裏側係合部1eと本体板部2の各表側係合部2aとの間に各対向板部54を相対的に挿入するには、前記各裏側係合部1e又は各表側係合部2aの少なくとも一方が外側に弾性変形する必要がある。本体板部2の各表側係合部2aの内側に易変形凹部6が形成されて、当該易変形凹部6の肉厚が小さくなっているため、固定体F1 の回動時において、本体板部2の各表側係合部2aは、裏側配置板部1の各裏側係合部1eに対して優先的に外側に弾性変形されて、前記挿入を可能にしており、図11に、この状態が明瞭に図示されている。本体板部2の各表側係合部2aの弾性変形により、当該本体板部2の易変形凹部6の回動軸部3の側の端面の長手方向の両端は、それぞれ逆回動規制面7a及び過剰回動規制面7bとなって、各対向板部54の内端面の内側に入り込んで、逆回動規制面7a及び過剰回動規制面7bは、オーバーラップ量δ3 だけ、各対向板部54の内端面に対して部分対向(オーバーラップ)している。この構造により、ダクトDの一対の対向板部54に対して固定体F1 が係合固定された状態では、当該固定体F1 の逆回動と過剰回動との双方が同時に達成される。
【0040】
また、図10及び図11の状態では、回動軸部3の第1幅部11を構成する各平面が、各対向板部54の端部と対向配置されるために、当該第1幅部11を構成する各平面が、固定体F1 の逆回動を規制する機能を果すので、前記過剰回動規制面7bが実質的な機能を果す場面は、回動軸部3の横断面が円形等であって、ダクトDの溝部53内において、固定体F1 が自由に回動できる場合である。
【0041】
なお、上記のようにして、ダクトDの一対の対向板部54に対して固定体F1 が係合固定された状態では、回動軸部3に設けられた各短突条13が、一対の対向板部54の対向する各内端面に圧接することで、当該一対の対向板部54に係合固定された固定体F1 のガタツキを防止している。
【0042】
また、本体板部2における弾性変形する部分は、その長手方向の両端部の一対の表側係合部2a及び薄肉部となっている一対の易変形凹部6の部分であって、当該本体板部2における一対の易変形凹部6の間の部分は、前記弾性変形する部分に比較して厚肉の方形ブロック状のブロック部15〔図3及び図6(a)参照〕が形成されて、逆回動規制面7a及び過剰回動規制面7bが形成されているのは、一対の表側係合部2aに比較して剛性が遥かに高いために弾性変形しない前記ブロック部15における本体板部2の短手方向に沿った端面である。当該ブロック部15における一対の易変形凹部6の間の寸法は、当該一対の易変形凹部6の形成方向に沿った寸法よりも小さくて、狭幅部15a〔図6(a)参照〕を形成しており、当該狭幅部15aの幅(W3 )は、前記裏側配置板部1の第2幅部12の幅(W2 )と同等であって、前記ダクトDの溝部53の幅(W0 )より僅かに狭い(小さい)。なお、当該ブロック部15の狭幅部15aと直交する方向の広幅部15b〔図6(a)参照〕の幅(W4 )は、前記ダクトDの溝部53の幅(W0 )よりも広い(大きい)。図11に示されるように、逆回動規制面7a及び過剰回動規制面7bは、僅少高さδ3 だけ、各対向板部54の内端面に対して部分対向(オーバーラップ)して、その機能を果し、各機能を果す部分は、僅少高さδ3 であるが、弾性変形しないブロック部15の端面で構成されているので、各機能を安定して果すことが可能となる。
【0043】
一対の対向板部54の端部(端面)に対する逆回動規制面7aのオーバーラップ量δ3 は、僅少であるが、その幅は、前記ブロック部15の易変形凹部6の形成方向に沿った長さのほぼ半分を有しているため、一対の対向板部54に対する係合固定されている固定体F1 の逆回動を規制できる。また、前記ブロック部15の易変形凹部6に面する端面における逆回動規制面7aを除く部分は、過剰回動規制面7bとなっていて、実施例1では、固定体F1 の90°を超える回動が規制される。なお、何らかの原因で、一対の対向板部54に係合固定されている固定体F1 を取り外したい場合には、当該固定体F1 に前記回動方向と逆の方向に衝撃力を加えると、一対の対向板部54の端部(端面)に対する逆回動規制面7aのオーバーラップ量δ3 が僅少であるため、一対の対向板部54に対する固定体F1 の係合固定が解除される。
【0044】
実施例1の固定体F1 は、本体板部2のブロック部15における裏側配置板部1と対向する全面に第1摺接面8aが設けられた構成であるが、当該第1摺接面8aの形成部分を限定することで、固定体F2 ,F3 の過剰回動範囲を広くしたり、固定体F6 の逆回動及び過剰回動の双方の規制範囲を広くしたり、更に、必要な部分のみに第1摺接面8aを設けることで、実施例1の固定体F1 と同一の機能を果すことができる。以下、上記した実施例2~6の各固定体F2 ~F6 について、重複説明を回避して、実施例1の固定体F1 と異なる部分についてのみ簡潔に説明する。
【実施例0045】
図12及び図13に示される実施例2の固定体F2 は、実施例1の固定体F1 に対して、回動軸部3’の横断面が円形になっている点、及び本体板部2のブロック部15内面の第1摺接面8aは、部分的に設けられている点が異なる。即ち、ブロック部15における本体板部2の短手方向に沿った両端部は、その長手方向の全長に亘って薄肉に形成されて第1非摺接面21となっていると共に、実施例1の固定体F1 において過剰回動規制面7bとなっている部分は、前記第1非摺接面21に接続する第2非摺接面22が形成されて、残った部分のみに、一対の第1摺接面8aが形成されている。
【0046】
よって、図12(b)に示される固定体F2 の回動開始状態において、当該固定体F2 を90°所定方向に回動させると、図12(c)及び図13(a)に示されるように、一対の第1摺接面8aの一方の端面に設けられた各逆回動規制面7aが、ダクトDの溝部53内に入り込んで、各対向板部54の先端部に当接することで、逆回動が規制される。この状態で、固定体F2 を更に同一方向に回動させると、一対の第1摺接面8aの他端面に設けられた過剰回動規制面7bが各対向板部54の先端部に当接することで、これを超える回動が規制される。固定体F2 の過剰回動許容範囲の角度(θ1 )は、90°である。
【実施例0047】
図14及び図15に示される実施例3の固定体F3 は、実施例1の固定体F1 に対して、回動軸部3’の横断面が円形になっている点、及び本体板部2のブロック部15の内面の第1摺接面8aは、部分的に設けられている点が異なる。即ち、ブロック部15における一方の対角線方向に沿った端部は薄肉に形成されて、非摺接面23となっていると共に、他方の対角線方向に沿った端部は、そのまま三角形状の第1摺接面8aが残存している。この結果、三角形状の各第1摺接面8aにおける各易変形凹部6の側にそれぞれ逆回動規制面7aが残存していると共に、三角形状の各第1摺接面8aにおける前記非摺接面23と接続する部分に各過剰回動規制面7bが形成されている。
【0048】
よって、図14(b)に示される固定体F3 の回動開始状態において、当該固定体F3 を90°所定方向に回動させると、図14(c)及び図15(a)に示されるように、一対の第1摺接面8aの易変形凹部6の側の端面に設けられた各逆回動規制面7aが、ダクトDの溝部53の内部に入り込んで、各対向板部54の先端部に当接することで、逆回動が規制される。この状態で、固定体F3 を更に同一方向に回動させると、一対の第1摺接面8aの非摺接面23の側に設けられた過剰回動規制面7bが各対向板部54の先端部に当接することで、これを超える回動が規制される。固定体F3 の過剰回動許容範囲の角度(θ2 )は、45°である。
【実施例0049】
図16及び図17に示される実施例4の固定体F4 は、実施例1の固定体F1 に対して、前記実施例3の第1摺接面8aが形成されている部分を薄肉にして、当該部分の第1摺接面8aを無くして非摺接面24にして、残った部分のみに、本体板部2の長手方向に沿って長方形状をした第1摺接面8aを部分的に形成している。当該第1摺接面8aの本体板部2の長手方向に沿った長さは、ブロック部15の同方向の長さの半分である。
【0050】
よって、図16(b)に示される固定体F4 の回動初期状態において、当該固定体F4 を90°所定方向に回動させると、図16(c)及び図17(a)に示されるように、一対の第1摺接面8aの易変形凹部6の側の端面に設けられた各過剰回動規制面7bが、各対向板部54の先端部に当接することで、これを超える同一方向の回動が規制される。この状態で、固定体F4 を逆方向に45°回動させると、一対の第1摺接面8aの非摺接面24の側に設けられた逆回動規制面7aが各対向板部54の先端部に当接することで、これを超える逆方向の回動が規制される。固定体F4 の逆回動許容範囲の角度(θ3 )は、45°である。
【実施例0051】
図18に示される実施例5の固定体F5 は、実施例1の固定体F1 において、本体板部2のブロック部15の第1摺接面8aにおける当該本体板部2の幅方向の両端部のみに、当該本体板部2の長手方向の全長に亘って長方形状の部分を残存させて、前記ブロック部15の一方の対角線方向に沿った両端部に、三角形状の非摺接面25を形成したものである。当該一対の非摺接面25を形成しても、前記ブロック部15の一方の対角線方向に沿った各端部に逆回動規制面7aがそれぞれ形成されると共に、他方の対角線方向に沿った各端部に過剰回動規制面7bがそれぞれ形成されて、一対の対向板部54に係合固定された固定体F5 の逆回動と過剰回動との双方を規制できる。
【実施例0052】
図19に示される実施例6の固定体F6 は、実施例1の固定体F1 において、ブロック部15の計4箇所の各コーナー部のみに第1摺接面8aを残存させて、他の部分を非摺接面26としたものであり、実施例5の固定体F5 と同様に、一対の逆回動規制面7aと一対の過剰回動規制面7bが形成される。
【0053】
ここで、実施例1の固定体F1 は、逆回動規制面7aと過剰回動規制面7bとが連続する面により構成されているが、実施例5及び同6の各固定体F5 ,F6 は、逆回動規制面7aと過剰回動規制面7bとが、互いに独立した面により構成されており、この点において、実施例1の固定体F1 とは異なる。
【0054】
上記した実施例1~6の各固定体F1 ~F6 は、いずれも本体部における一対の表側係合部の間に、逆回動規制部及び過剰回動規制部が設けられているが、これらを一対の裏側係合部の間に設けることも可能である。この場合には、一対の裏側係合部が一対の表側係合部に対して弾性変形し易くする(優先的に弾性変形する)ことが必要である。
【符号の説明】
【0055】
C:固定体の回動軸心
D:ダクト(被固定体)
1 ~F6 :固定体
1 :本体板部の摺接面と先行対向部との間隔
2 :本体板部の摺接面と遅滞対向部との間隔
T:ダクトの対向板部の板厚
0 :ダクトの溝部の幅
1 :第1幅部の幅
2 :裏側配置板部の第2幅部の幅
3 :ブロック部の狭幅部の幅
4 :ブロック部の広幅部の幅
1:裏側配置板部
1a:裏側配置板部の狭幅部
1b:裏側配置板部の広幅部
1c:裏側配置板部の先行対向部
1d:裏側配置板部の遅滞対向部
1e:裏側係合部
2:本体板部(本体部)
2a:表側係合部
3:回動軸部
4:挿入部
6:易変形凹部(凹部)
7a:逆回動規制面(逆回動規制部)
7b:過剰回動規制面
8:摺接面
8a:第1摺接面
8b:第2摺接面
11:裏側配置板部の第1幅部
12:裏側配置板部の第2幅部
15:本体板部のブロック部
15a:ブロック部の狭幅部
15b:ブロック部の広幅部
53:ダクトの溝部
54:ダクトの対向板部
図1
図2
図3
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