(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168913
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】着磁ヨーク装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/03 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H02K15/03 H
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085960
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲森 一成
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 春彦
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622QB09
5H622QB10
(57)【要約】
【課題】製品寿命を向上するとともに、故障時に部分的に修理することが可能な着磁ヨーク装置を提供する。
【解決手段】着磁ヨーク装置1は、基台部2と、基台部2に周状に配置されており、径方向内側に開口する凹部51を有する複数の第一の分割コア50と、径方向において互いに対向する一対の壁部を有するインシュレータ5、一対の壁部の間に配置されるエッジワイズコイル80、及び、凹部51に収容される凸部92bを有する第二の分割コア90が一体化されており、第一の分割コア50の径方向内側に配置される複数のカセット式コイル4と、カセット式コイル4を基台部2に対して位置決めする複数の位置決め部40と、を備え、カセット式コイル4は、位置決め部40によって径方向内方への移動を規制されており、基台部2、第一の分割コア50及び位置決め部40の組立体に対して着脱可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部と、
前記基台部に周状に配置されており、当該周状に対応する径方向の内側に開口する凹部を有する複数の第一の分割コアと、
周状に配置された複数の前記第一の分割コアの前記径方向において互いに対向する一対の壁部を有するインシュレータ、前記一対の壁部の間に配置されるコイル、及び、前記凹部に収容される凸部を有する第二の分割コアが一体化されており、前記第一の分割コアの前記径方向における内側に配置される複数のカセット式コイルと、
前記カセット式コイルを前記基台部に対して位置決めする複数の位置決め部と、
を備え、
前記カセット式コイルは、前記位置決め部によって前記径方向における内方への移動を規制されており、前記基台部、前記第一の分割コア及び前記位置決め部の組立体に対して着脱可能である
ことを特徴とする着磁ヨーク装置。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記基台部から立設される軸部を有し、
前記軸部は、前記凸部に形成された孔部に挿通されている
ことを特徴とする請求項1に記載の着磁ヨーク装置。
【請求項3】
前記軸部は、冷却媒体が流通可能な中空形状を呈する
ことを特徴とする請求項2に記載の着磁ヨーク装置。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記軸部の基端部に設けられる台部を有し、
前記台部は、前記第一の分割コアを前記基台部に対して位置決めする
ことを特徴とする請求項2に記載の着磁ヨーク装置。
【請求項5】
前記インシュレータは、前記一対の壁部を繋ぐ筒部を有し、
前記コイルは、前記筒部に環装されており、
前記第二の分割コアは、前記凸部から延設されて前記筒部内に収容されるティース部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の着磁ヨーク装置。
【請求項6】
前記第二の分割コアは、前記ティース部の前記径方向における内端部から延設されるフランジ壁部を有し、
前記フランジ壁部は、前記インシュレータにおける前記径方向における内側の前記壁部の前記径方向における内面と当接し、
前記位置決め部は、前記凸部の前記径方向における内方への移動を規制する
ことを特徴とする請求項5に記載の着磁ヨーク装置。
【請求項7】
前記筒部の角部は、R形状を呈する
ことを特徴とする請求項5に記載の着磁ヨーク装置。
【請求項8】
前記コイルは、エッジワイズコイルである
ことを特徴とする請求項1に記載の着磁ヨーク装置。
【請求項9】
一対の前記壁部の間において、前記コイルは、樹脂によって被覆されている
ことを特徴とする請求項1に記載の着磁ヨーク装置。
【請求項10】
前記コイルの端部に取り付けられる端子部と、
一の前記カセット式コイルの前記端子部及び他の前記カセット式コイルの前記端子部を互いに接続するための回路を有する回路部と、
を備え、
前記端子部は、前記回路部に対してボルトによって着脱可能に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の着磁ヨーク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着磁対象に磁力を付加する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、分割コアのティース側にインシュレータを樹脂成形し、成形済みコイルをティース部に嵌め込み、成形金型を用いて成形済みコイルを樹脂モールドした分割固定子が記載されている。複数の分割固定子は、外筒内に環状に配置されて焼きバメされ、モータの固定子を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した固定子及び外筒を備える装置は、着磁対象に磁力を付加する着磁ヨーク装置として用いられることが考えられる。特許文献1に記載の装置では、パルス電流がコイルに通電されると、径方向内方への力がコイルに作用する。ここで、径方向内方への力に対してコイルを固定するのは樹脂のみであるため、コイルが径方向内方へ飛び出すおそれがあり、製品寿命が短くなるという問題があった。また、分割コアがステーターに圧入されているため、故障(バースト等)時には装置全体を交換する必要があった。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、製品寿命を向上するとともに、故障時に部分的に修理することが可能な着磁ヨーク装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明の着磁ヨーク装置は、基台部と、前記基台部に周状に配置されており、当該周状に対応する径方向の内側に開口する凹部を有する複数の第一の分割コアと、周状に配置された複数の前記第一の分割コアの前記径方向において互いに対向する一対の壁部を有するインシュレータ、前記一対の壁部の間に配置されるコイル、及び、前記凹部に収容される凸部を有する第二の分割コアが一体化されており、前記第一の分割コアの前記径方向における内側に配置される複数のカセット式コイルと、前記カセット式コイルを前記基台部に対して位置決めする複数の位置決め部と、を備え、前記カセット式コイルは、前記位置決め部によって前記径方向における内方への移動を規制されており、前記基台部、前記第一の分割コア及び前記位置決め部の組立体に対して着脱可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、着磁ヨーク装置において、コイルの飛び出しを防止することによって製品寿命を向上するとともに、故障時に部分的に修理することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る着磁ヨーク装置を模式的に示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る着磁ヨーク装置を模式的に示す断面図であり、
図1のII-II線断面図である。
【
図3】カセット式コイルを模式的に示す平面図である。
【
図4】カセット式コイルを模式的に示す断面図であり、
図3のIV-IV線断面図である。
【
図5】インシュレータの内側部材及び外側部材を模式的に示す図である。
【
図6】エッジワイズコイルを模式的に示す斜視図である。
【
図7】第一の分割コアを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、周方向、径方向という方向を示す表現は、基台部を基準、より詳細には、基台部上に配列される複数の位置決め部、第一の分割コア及びカセット式コイルによって構成される円形状を基準とする。また、上下方向は、基台部を床面上に設置し、当該基台部上に各種部材を設置した状態を基準とする。
【0010】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る着磁ヨーク装置1は、着磁対象Xとしてのモータ用のロータ内に配置された磁石に磁力を付加する装置である。すなわち、着磁ヨーク装置1は、常磁性体の状態である着磁対象Xに磁力を付加することによって着磁された対象(強磁性体)を製造する強磁性体製造装置であるともいえる。着磁ヨーク装置1は、基台部2と、対象物設置部3と、複数組の位置決め部40、第一の分割コア50及びカセット式コイル4と、複数の回路部120と、を備える。
【0011】
なお、
図1において、位置決め部40、第一の分割コア50、カセット式コイル4及び回路部120の上側に設けられる部材は、省略されている。また、
図2では、冷却媒体の流路を分かりやすくするために、基台部2の第二の円環部材30及び位置決め部40のみにハッチングを付している。
【0012】
<基台部>
基台部2は、着磁するための第一の分割コア50及びカセット式コイル4が設置されるためのものである。基台部2は、床面G上に設置される金属(SUS等の非磁性体金属)製の部材である。基台部2は、平面視で円板形状を呈する円板部材10と、円板部材10上に同心に配置されており、平面視で円環形状を呈する第一の円環部材20と、第一の円環部材20上に同心に配置されており、平面視で円環形状を呈する第二の円環部材30と、円板部材10の下側に配置されて円板部材10を床面G上で支持する複数の脚部材Fと、を備える。
【0013】
第一の円環部材20は、ボルトBによって円板部材10に対して着脱可能に取り付けられている。本実施形態において、ボルトBは、SUS等の非磁性体金属製である。
第二の円環部材30は、ボルトBによって第一の円環部材20に対して着脱可能に取り付けられている。第二の円環部材30の内径は、第一の円環部材20の内径よりも大きい。第二の円環部材30の内部には、後記する流路40aと連通する環状の流路30aが形成されている。
【0014】
<対象物設置部>
対象物設置部3は、着磁対象Xとしてのモータ用のロータが設置されるためのものである。対象物設置部3は、円板部材10の中心上に配置される金属(SUS等の非磁性体金属)製の部材である。対象物設置部3の形状は、着磁対象Xの形状に応じて適宜設定可能である。
【0015】
<位置決め部>
位置決め部40は、基台部2上において、第一の分割コア50及びカセット式コイル4を位置決めするためのものである。位置決め部40は、第一の円環部材20の径方向内部から立設されている金属(SUS等の非磁性体金属)製の部材である。複数(本実施形態では、12個)の位置決め部40は、周方向に等間隔(本実施形態では、30度ごと)に配置されている。位置決め部40は、第一の円環部材20上に配置される台部41と、台部41から立設される軸部42と、を備える。
【0016】
台部41は、第二の円環部材30の径方向内側に位置しており、第一の分割コア50を位置決めするとともに当該第一の分割コア50の径方向内方及び周方向への移動を規制する部位であり、略直方体形状を呈する。
【0017】
軸部42は、カセット式コイル4を位置決めするとともに当該カセット式コイル4の径方向及び周方向への移動を規制する部位であり、中空形状、本実施形態では円筒形状を呈する。
【0018】
台部41及び軸部42の内部には、冷却媒体(例えば、水)が流通可能な流路40aが形成されている。かかる流路40aは、第二の円環部材30に形成された環状の流路30aと連通している。
【0019】
<第一の分割コア>
第一の分割コア50は、平面視で略扇形形状(本実施形態では、約30度の扇形)を呈する金属(SS4000、SPC等の磁性体金属)製の部材である。第一の分割コア50は、複数の鉄板を上下方向に積層することによって構成されている。複数(本実施形態では、12個)の第一の分割コア50は、周方向に配置されている。第一の分割コア50の径方向内部には、径方向内側に開口する凹部51が形成されている。凹部51の上下端部は、開放されている。凹部51の下端部は、位置決め部40の台部41に倣う形状を呈する被位置決め部51aを構成する。すなわち、第一の分割コア50の径方向内部は、第一の円環部材20上に配置されており、第一の分割コア50の径方向外部は、その下端部が径方向内部の下端部よりも高く設定されており、第二の円環部材30上に配置されている。
【0020】
<カセット式コイル>
カセット式コイル4は、第一の分割コア50の径方向内側に配置されており、第一の分割コア50と協働することによって、着磁対象Xに磁力を付加するためのユニットである。複数(本実施形態では、12個)のカセット式コイル4は、周方向に配置されている。
図3から
図7に示すように、カセット式コイル4は、インシュレータ5と、エッジワイズコイル(コイル)80と、第二の分割コア90と、端子部100,100と、樹脂部110と、を備える。
【0021】
<インシュレータ>
インシュレータ5は、エッジワイズコイル80と第一の分割コア50及び第二の分割コア90とを絶縁させるための樹脂製部材である。
図5に示すように、インシュレータ5は、内側部材(壁部)60と、外側部材70と、を備える。
【0022】
内側部材60は、インシュレータ5の径方向内部の壁部を構成する部材である。内側部材60は、後記する外側部材70の筒部72に倣う形状を呈する孔部60aと、内側部材60の径方向内面において当該孔部60aの周縁部に設けられる凹部60bと、が形成されている。
【0023】
外側部材70は、インシュレータ5の径方向外部を構成する部材である。外側部材70は、径方向外側において内側部材60と対向する壁部71と、当該壁部から径方向内方に延設される筒部72と、を一体に備える。壁部71には、筒部72と連通する孔部71aが形成されている。
【0024】
筒部72は、当該筒部72の軸線視で略矩形状を呈する。筒部72の先端部(径方向内端部)は、内側部材60の孔部60aの周縁部に当接している。筒部72の先端部は、孔部60aに内嵌される構成であってもよい。また、筒部72の先端部は、図示しない接着剤等によって内側部材60に固定されている。筒部72の角部72aは、R形状(本実施形態では、エッジワイズコイル80の隅部80aに倣うR形状)を呈する。かかる構成によると、筒部72の角部における応力集中を回避し、製品寿命を向上することができる。
【0025】
<エッジワイズコイル>
図4に示すように、エッジワイズコイル80は、筒部72に環装されている。
図6に示すように、エッジワイズコイル80は、カセット式コイル4ごとに独立している、いわゆる集中巻きの金属製のコイルである。エッジワイズコイル80は、平角線をエッジワイズ方向に曲げることによって形成されており、丸線コイルと比較して、断面積を確保して大電流を流すことが可能である。エッジワイズコイル80の端部81,81は、後記する端子部100の基端部101に挿通され、カシメ固定されている。
【0026】
<第二の分割コア>
第二の分割コア90は、第一の分割コア50と協働して着磁ヨーク装置1のコアを構成する金属(SS4000、SPC等の磁性体金属)製の部材である。第二の分割コア90は、複数の鉄板を上下方向に積層することによって構成されている。
図7に示すように、第二の分割コア90は、フランジ壁部91と、フランジ壁部91から径方向外方に延設される広義の凸部92と、を一体に備える。
【0027】
フランジ壁部91は、内側部材60の凹部60bに収容されている。
【0028】
凸部92は、当該凸部92の基端部側(径方向内部)を構成するティース部92aと、当該凸部92の先端部側(径方向外部)を構成する狭義の凸部92bと、を備える。
【0029】
ティース部92aは、凸部92のうち、エッジワイズコイル80、すなわち、筒部72に挿通されている部位である。
【0030】
凸部92bは、広義の凸部92のうち、エッジワイズコイル80すなわち筒部72から径方向外側に露出して第一の分割コア50の凹部51に収容されている部位である。凸部92bには、上下方向に貫通する孔部92b1が形成されている。
【0031】
<端子部>
図3に示すように、端子部100は、エッジワイズコイル80及び回路部120を互いに電気的に接続するための金属製の部材である。端子部100の基端部101は、エッジワイズコイル80の端部81が挿通可能な形状を呈する。端子部100の先端部102は、ボルトBが挿通可能な形状(孔部)を呈する。
【0032】
<樹脂部>
図4に示すように、樹脂部110は、インシュレータ5の一対の壁部(内側部材60及び壁部71)間においてエッジワイズコイル80を被覆するように設けられる熱硬化性樹脂である。樹脂部110は、未硬化の状態で高粘度(150Pa・s程度)を有しており、塗布によって設けられた後に加熱されて硬化する。かかる樹脂部110は、インシュレータ5、エッジワイズコイル80及び端子部100を互いに固定するとともに、隣り合うエッジワイズコイル80間の絶縁性を確保する。
【0033】
<回路部>
回路部120は、隣り合う第一の分割コア50上に配置されており、一のカセット式コイル4の端子部100の先端部102と、隣り合う他のカセット式コイル4の端子部100の先端部102と、がボルトBによって着脱可能に固定されている。回路部120は、樹脂及び金属によって形成されており、エッジワイズコイル80の端部に電気的に接続された端子部100同士を電気的に接続するための回路の一部を有する。すなわち、複数の回路部120は、配線等によって互いに電気的に接続されており、エッジワイズコイル80及び配線と協働してパルス電流を流すための回路を構成する。
【0034】
<カセット式コイルの製造手法>
ここで、カセット式コイル4の製造手法について説明する。作業者は、第二の分割コア90の凸部92を内側部材60の孔部60aに挿通させ、第二の分割コア90の壁部91を内側部材60の凹部60bに収容させる。続いて、作業者は、エッジワイズコイル80を凸部92に環装させる。続いて、作業者は、外側部材70の筒部72を凸部92とエッジワイズコイル80との間に挿通させる。ここで、内側部材60及び外側部材70は、接着剤によって互いに固定される。続いて、作業者は、端子部100の基端部101を、エッジワイズコイル80の端部81,81にカシメ固定する。続いて、作業者は、未硬化の熱硬化性樹脂を、エッジワイズコイル80及び端子部100の基端部101を覆うように塗布して硬化させることによって、樹脂部110を形成する。
【0035】
<カセット式コイルの組付手法>
続いて、基台部2、位置決め部40及び第一の分割コア50の組立体に対するカセット式コイル4の組付手法について説明する。作業者は、カセット式コイル4の凸部92bに形成された孔部92b1に位置決め部40の軸部42に挿通させることによって、カセット式コイル4を基台部2の第一の円環部材20上に設置する。ここで、カセット式コイル4のうち、インシュレータ5、エッジワイズコイル80等は、第一の分割コア50の径方向内側に配置され、凸部92bは、第一の分割コア50の凹部51内に配置される。なお、位置決め部40における台部41の径方向内面は、インシュレータ5の内側部材(壁部)60によって被覆されていてもよく、インシュレータ5とは別の樹脂製の壁部材によって被覆されていてもよい。
【0036】
続いて、作業者は、回路部120を第一の分割コア50及びカセット式コイル4の凸部92b上に設置し、当該回路部120をボルトBによって第一の分割コア50に対して固定する。
【0037】
続いて、作業者は、カセット式コイル4の端子部100の先端部102を、ボルトBによって回路部120に対して接続及び固定する。
【0038】
<着磁ヨーク装置による着磁手法>
続いて、着磁ヨーク装置1による着磁対象Xへの着磁手法について説明する。作業者は、対象物設置部3に着磁対象Xを設置する。続いて、作業者が図示しない操作部を操作すると、図示しない制御部は、かかる操作結果に応じて、カセット式コイル4のエッジワイズコイル80にパルス電流を通電するとともに、図示しないポンプを駆動させることによって、位置決め部40の流路40aに冷却媒体を流通させる。これにより、着磁ヨーク装置1は、第一の分割コア50、エッジワイズコイル80及び第二の分割コア90を冷却しつつ、第一の分割コア50、第二の分割コア90及びエッジワイズコイル80に発生した磁界によって、着磁対象Xに磁力を付加することができる。
【0039】
エッジワイズコイル80は、インシュレータ5の内側部材(壁部)60によって、径方向内方への移動が規制されている。本実施形態では、インシュレータ5の内側部材60は、第二の分割コア90の壁部91によって、径方向内方への移動が規制されている。かかる構造によると、エッジワイズコイル80が通電で発生する力によって径方向内方へ移動することを防止することができる。
【0040】
<故障時におけるカセット式コイルの交換手法>
パルス電流の通電によってエッジワイズコイル80及び/又は端子部100が故障(バースト等)した場合には、作業者は、該当するカセット式コイル4の端子部100を回路部120から取り外すとともに凸部92bを位置決め部40の軸部42から取り外すことによって、故障が発生したエッジワイズコイル80及び/又は端子部100を有するカセット式コイル4のみを交換することができる。
【0041】
本発明の実施形態に係る着磁ヨーク装置1は、基台部2と、前記基台部2に周状に配置されており、当該周状に対応する径方向の内側に開口する凹部51を有する複数の第一の分割コア50と、周状に配置された複数の前記第一の分割コア50の前記径方向において互いに対向する一対の壁部を有するインシュレータ5、前記一対の壁部の間に配置されるコイル、及び、前記凹部51に収容される凸部92bを有する第二の分割コア90が一体化されており、前記第一の分割コア50の前記径方向における内側に配置される複数のカセット式コイル4と、前記カセット式コイル4を前記基台部2に対して位置決めする複数の位置決め部40と、を備え、前記カセット式コイル4は、前記位置決め部40によって前記径方向における内方への移動を規制されており、前記基台部2、前記第一の分割コア50及び前記位置決め部40の組立体に対して着脱可能である。
したがって、着磁ヨーク装置1は、コイルの飛び出しを防止することによって製品寿命を向上するとともに、故障時に部分的に修理することを可能にする。
【0042】
また、着磁ヨーク装置1において、前記位置決め部40は、前記基台部2から立設される軸部42を有し、前記軸部42は、前記凸部92に形成された孔部92b1に挿通されている。
したがって、着磁ヨーク装置1は、軸部42及び孔部92b1によって、カセット式コイル4を基台部2及び第一の分割コア50に対して好適に位置決めするとともに、第二の分割コア90(すなわち、エッジワイズコイル80)の径方向内方への移動を好適に規制することができる。
【0043】
また、着磁ヨーク装置1において、前記軸部42は、冷却媒体が流通可能な中空形状を呈する。
したがって、着磁ヨーク装置1は、軸部42によってカセット式コイル4の位置決め機能及び移動規制機能と第一の分割コア50及びカセット式コイル4の冷却機能とを実現するので、部品点数を低減することができる。
【0044】
また、着磁ヨーク装置1において、前記位置決め部40は、前記軸部42の基端部に設けられる台部41を有し、前記台部41は、前記第一の分割コア50を前記基台部2に対して位置決めする。
したがって、着磁ヨーク装置1は、位置決め部40によって第一の分割コア50及びカセット式コイル4を基台部2に対して位置決めするので、部品点数を低減しつつ好適な着磁性能を実現することができる。
【0045】
また、着磁ヨーク装置1において、前記インシュレータ5は、前記一対の壁部を繋ぐ筒部72を有し、前記コイルは、前記筒部72に環装されており、前記第二の分割コア90は、前記凸部92bから延設されて前記筒部72内に収容されるティース部92aを有する。
したがって、着磁ヨーク装置1は、筒部72によってコイル及びティース部92aを絶縁し、好適な着磁性能を実現することができる。
【0046】
また、着磁ヨーク装置1において、前記第二の分割コア90は、前記ティース部92aの前記径方向における内端部から延設されるフランジ壁部91を有し、
前記フランジ壁部91は、前記インシュレータ5における前記径方向における内側の前記壁部の前記径方向における内面と当接し、前記位置決め部40は、前記凸部92bの前記径方向における内方への移動を規制する。
したがって、着磁ヨーク装置1は、第二の分割コア90の壁部91によってコイルの径方向内方への移動を好適に規制することができる。
【0047】
また、着磁ヨーク装置1において、前記筒部72の角部は、R形状を呈する。
したがって、着磁ヨーク装置1は、応力集中を低減することによって製品寿命を向上することができる。また、着磁ヨーク装置1は、筒部72の形状に倣うコイルを筒部72に外嵌させることによってコイルの固定性能を向上することができる。
【0048】
また、着磁ヨーク装置1において、前記コイルは、エッジワイズコイル80である。
したがって、着磁ヨーク装置1は、コイルの断面積を確保して大電流を流すことができるので、好適な着磁性能を実現することができる。
【0049】
また、着磁ヨーク装置1において、一対の前記壁部の間において、前記コイルは、樹脂(樹脂部110)によって被覆されている。
したがって、着磁ヨーク装置1は、隣り合うコイル同士の絶縁性を好適に確保することができる。
【0050】
また、着磁ヨーク装置1は、前記コイルの端部に取り付けられる端子部100と、一の前記カセット式コイル4の前記端子部100及び他の前記カセット式コイル4の前記端子部100を互いに接続するための回路を有する回路部120と、を備え、前記端子部100は、前記回路部120に対してボルトBによって着脱可能に取り付けられている。
したがって、着磁ヨーク装置1は、コイルを繋ぐ回路の形成の容易化と、カセット式コイル4の交換性と、を両立することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、着磁対象Xは、モータ用のロータに限定されない。また、コイルは、エッジワイズコイル80に限定されない。
【符号の説明】
【0052】
1 着磁ヨーク装置
2 基台部
3 対象物設置部
4 カセット式コイル
5 インシュレータ
10 円板部材
40 位置決め部
40a 流路
41 台部
42 軸部
50 第一の分割コア
51 凹部
60 内側部材(壁部)
70 外側部材
71 壁部
72 筒部
72a 角部
80 エッジワイズコイル(コイル)
90 第二の分割コア
91 フランジ壁部
92a ティース部
92b 凸部
92b1 孔部
100 端子部
110 樹脂部
120 回路部