(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168916
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 17/03 20060101AFI20241128BHJP
F16C 33/10 20060101ALI20241128BHJP
F16C 37/00 20060101ALI20241128BHJP
F01D 25/16 20060101ALN20241128BHJP
F02C 7/06 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
F16C17/03
F16C33/10 Z
F16C37/00 A
F01D25/16 A
F02C7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085970
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 拓造
(72)【発明者】
【氏名】亀山 裕樹
【テーマコード(参考)】
3J011
3J117
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011AA09
3J011BA16
3J011CA05
3J011JA02
3J011KA02
3J011LA06
3J011MA12
3J011PA10
3J011QA03
3J011RA03
3J011SB02
3J011SB03
3J011SB05
3J117EA01
3J117FA01
3J117GA02
3J117GA03
(57)【要約】
【課題】軸受パッドの冷却性能の更なる向上を図る。
【解決手段】回転軸を回転支持する摺動面を有する複数の軸受パッドと、複数の軸受パッドを周方向に配列して保持する環状のハウジングと、を備える。複数の軸受パッドの少なくとも1つは、内部に形成された中空部と、中空部に連通する潤滑油供給路と、中空部に連通する排出開口と、を有するパッド本体を含む。中空部は、摺動面側の第1壁面と、摺動面とは反対側の第2壁面とを有し、潤滑油供給路と連通する供給開口が第2壁面に形成され、供給開口の非形成領域において、第1壁面と第2壁面とを接続する支持構造体を有するとともに、供給開口の形成領域において、供給開口から第1壁面まで延ばした直線空間であって、支持構造体が形成されていない空間部を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転支持する摺動面を有する複数の軸受パッドと、
複数の軸受パッドを周方向に配列して保持する環状のハウジングと、を備え、
複数の軸受パッドの少なくとも1つは、内部に形成された中空部と、前記中空部に連通する潤滑油供給路と、前記中空部に連通する排出開口と、を有するパッド本体を含み、
前記中空部は、
摺動面側の第1壁面と、前記摺動面とは反対側の第2壁面とを有し、前記潤滑油供給路と連通する供給開口が前記第2壁面に形成され、
前記供給開口の非形成領域において、前記第1壁面と前記第2壁面とを接続する支持構造体を有するとともに、
前記供給開口の形成領域において、前記供給開口から前記第1壁面まで延ばした直線空間であって、前記支持構造体が形成されていない空間部を有する、
軸受装置。
【請求項2】
前記複数の軸受パッドの間に設けられ、前記パッド本体の外部から前記摺動面へ潤滑油を供給するノズルをさらに備え、
前記排出開口は、前記パッド本体のうち、前記摺動面以外の他の外表面に形成されている、
請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記排出開口は、前記パッド本体の幅方向の側面に形成され、
前記中空部は、前記パッド本体の幅方向に延びて前記排出開口に接続し、
前記支持構造体は、前記中空部のうち、前記空間部に隣接する位置から前記排出開口までの前記非形成領域に、設けられている、
請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記支持構造体は、隙間を隔てて配置された、柱状または板状の複数の支持部を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記支持構造体は、前記複数の支持部により構成されたラティス構造体を含む、
請求項4に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記パッド本体は、前記摺動面とは反対側の背面に入口開口を有し、
前記潤滑油供給路は、前記入口開口と前記供給開口とを直線状に接続している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記パッド本体は、前記第2壁面に複数の前記供給開口を有し、
前記支持構造体は、前記中空部のうち、複数の前記供給開口の各々に対応する前記空間部を除く、複数の前記供給開口の間の前記非形成領域に設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記中空部は、前記パッド本体の周方向のうち、前記パッド本体における前記回転軸の回転方向側に偏った領域に形成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機やギヤード圧縮機などの圧縮機、蒸気タービンやガスタービンなどの駆動用タービンなどの各種の回転機械に適用される軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械の性能向上のため、高周速、高面圧条件で使用可能な軸受装置が求められている。軸受装置の使用条件が高周速化、高面圧化すると、軸受パッド温度が高温となるため、軸受パッドを効率的に冷却する必要が生じる。軸受装置の軸受パッドを効率的に冷却する技術として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1では、軸受パッドに、内部チャネル網を形成し、内部チャネル網に冷却用の油を供給する。内部チャネル網は、冷却用開口部に流体連通する少なくとも1つのチャネル節点と、チャネル節点に流体連通する少なくとも2つの通路とを含む分岐流路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、軸受パッドの内部に冷却用の油を流通させることで軸受パッドの冷却を促進するが、軸受パッドの冷却性能の更なる向上が求められる。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、軸受パッドの冷却性能の更なる向上を図ることが可能な軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の軸受装置は、回転軸を回転支持する摺動面を有する複数の軸受パッドと、複数の軸受パッドを周方向に配列して保持する環状のハウジングと、を備え、複数の軸受パッドの少なくとも1つは、内部に形成された中空部と、前記中空部に連通する潤滑油供給路と、前記中空部に連通する排出開口と、を有するパッド本体を含み、前記中空部は、摺動面側の第1壁面と、前記摺動面とは反対側の第2壁面とを有し、前記潤滑油供給路と連通する供給開口が前記第2壁面に形成され、前記供給開口の非形成領域において、前記第1壁面と前記第2壁面とを接続する支持構造体を有するとともに、前記供給開口の形成領域において、前記供給開口から前記第1壁面まで延ばした直線空間であって、前記支持構造体が形成されていない空間部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の軸受装置によれば、軸受パッドの冷却性能の更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の軸受装置を軸方向から見た概略図である。
【
図2】
図2は、軸受装置の概略断面を表す
図1のII-II断面図である。
【
図3】
図3は、比較例の軸受パッドの周方向に沿った温度分布を示す図である。
【
図4】
図4は、軸受パッドの概略構造を説明するための模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、軸受パッドの中空部を説明するための模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、支持構造体の単位構造の第1例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、支持構造体の単位構造の第2例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、支持構造体の単位構造の第3例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、支持構造体の単位構造の第4例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、支持構造体の単位構造の第5例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、支持構造体の単位構造の第6例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、支持構造体の単位構造の第7例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、支持構造体の単位構造の第8例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、支持構造体の単位構造の第9例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る軸受装置の軸受パッドの構造を表す概略図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の変形例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
<軸受装置の構成>
図1は、第1実施形態の軸受装置を軸方向から見た概略図、
図2は、軸受装置の概略断面を表す
図1のII-II断面図である。なお、以下の実施形態の説明にて、軸受装置の軸方向をDa方向(
図2参照)、軸受装置の径方向をDr方向、軸受装置の周方向をDc方向と称して説明する。
【0012】
軸受装置10は、回転体を回転自在に支持する。第1実施形態では、回転体は、例えば、回転機械の回転軸100である。回転機械は、遠心圧縮機やギヤード圧縮機などの圧縮機や、蒸気タービン、ガスタービンなどの駆動用タービンなどである。第1実施形態では、軸受装置10は、滑り軸受であって、回転軸100の径方向Drの荷重(ラジアル荷重)を支持するジャーナル軸受である。軸受装置10は、Da方向に延びる円柱形状の回転軸100を、回転軸100の軸心を中心に、回転自在に支持する。
【0013】
軸受装置10は、例えば、ティルティングパッド軸受である。軸受装置10は、ハウジング20と、複数(本実施形態では、5個)の軸受パッド30と、を備える。また、軸受装置10は、複数(本実施形態では、5個)のノズル11を備える。なお、軸受パッド30およびノズル11は、5個に限らず、4個以下や6個以上であってもよい。
【0014】
ハウジング20は、円環形状をなす。ハウジング20は、複数(5個)の軸受パッド30を周方向Dcに配列して保持する。ハウジング20は、
図2に示すように、ハウジング本体21と、端面板22と、を有する。
【0015】
ハウジング本体21は、円環形状を有する。ハウジング本体21は、各軸受パッド30の背面32を支持している。ハウジング本体21は、軸方向Daの一方端部に、径方向内向きに突出する環状のフランジ部24を有する。フランジ部24は、各軸受パッド30と軸方向Daに対向する。フランジ部24の内周側端部は、回転軸100とわずかな隙間を隔てて径方向Drに対向する。ハウジング本体21の軸方向Daの他方端部には、フランジ部24は設けられておらず、端面板22が取り付けられている。端面板22は、フランジ部24とほぼ同等の形状を有する環状の平板部材である。端面板22は、各軸受パッド30と軸方向Daに対向する。端面板22の内周側端部は、回転軸100とわずかな隙間を隔てて径方向Drに対向する。ハウジング20は、回転軸100が挿通された状態で、回転軸100の外周面とハウジング20の内周面とによって、各軸受パッド30を収容し、かつ潤滑油を保持する空間を形成する。
【0016】
5個の軸受パッド30は、
図1に示すように、回転軸100を全周に亘って取り囲むように周方向Dcに配列されている。5個の軸受パッド30は、それぞれ、回転軸100と所定間隔を隔てて径方向Drに対向し、回転軸100を支持する。
【0017】
軸受パッド30は、円弧形状をなす。軸受パッド30は、回転軸100の外表面と対向し、回転軸100を回転支持する摺動面31と、摺動面31とは反対側の背面32と、幅方向(軸方向Da)の一対の側面33a、33b(
図2参照)と、周方向Dcの一対の端面34a、34bと、を有する。なお、
図1および
図2に示すように、各軸受パッド30の幅方向は、軸受装置10(回転軸100)の軸方向Daに一致し、各軸受パッド30の厚み方向は、軸受装置10(回転軸100)の径方向Drに一致し、各軸受パッド30の長さ方向は、軸受装置10(回転軸100)の周方向Dcと一致する。
【0018】
摺動面31は、軸受パッド30の内周面であり、曲率半径が回転軸100の外周面の曲率半径と同様またはわずかに大きい湾曲面である。背面32は、軸受パッド30の外周面であり、ハウジング本体21の内周面に沿った湾曲面である。一方の側面33aおよび他方の側面33bは、平面であり、それぞれ、フランジ部24および端面板22と、軸方向Daに対向する。周方向Dcの一対の端面34a、34bは、平面である。5個の軸受パッド30は、実質的に同一形状をなす。
【0019】
軸受パッド30は、背面32の中央部において、ピボット23を支点として、Da方向に平行な軸周りに揺動自在に設けられている。つまり、軸受パッド30は、ピボット23を支点として、回転軸100の外周面に対して所定角度範囲内で僅かに傾斜することができる。
【0020】
5個のノズル11は、周方向Dcにおいて、5個の軸受パッド30の間に1つずつ設けられている。ノズル11は、ハウジング20を径方向Drに貫通している。ノズル11は、給油装置110(
図2参照)に給油流路を介して接続されている。ノズル11は、ハウジング20内で、径方向Drの中央(つまり、回転軸100)に向けて潤滑油を吐出する。これにより、各ノズル11は、軸受パッド30(後述するパッド本体40)の外部から摺動面31へ潤滑油を供給する。各ノズル11は、吐出した潤滑油により、各軸受パッド30の摺動面31と回転軸100の外周面との間の隙間に、潤滑油の油膜を形成する。軸受装置10は、回転軸100の回転に伴って、回転軸100の外周面と摺動面31との間の油膜に流体圧力を生じさせ、この流体圧力によってラジアル荷重の支持力を発生する。
【0021】
<軸受パッドの加熱現象の説明>
ここで、軸受パッド30は、摺動面31と回転軸100との間の油膜のせん断発熱により加熱されて、特に摺動面31が温度上昇する。
図3は、比較例の軸受パッドの周方向Dcに沿った温度分布を示す図であって、軸受パッドの断面と対応させたグラフを示している。比較例の軸受パッドは、軸受パッド30と外形形状が同一であるが、後述する冷却構造を備えていない。
【0022】
図3において、グラフの縦軸は軸受パッドの摺動面温度であり、横軸は軸受パッドの周方向Dcの位置である。端面34aから端面34bに向かう方向(反時計方向)が、回転軸100の回転方向である。回転方向側に向かう(端面34b側に向かう)に従って、軸受パッドの発熱量が増大して温度が上昇する。温度(発熱量)は、回転方向側の端面34bの直前のピーク位置Pkで、最大となる。
【0023】
油膜のせん断発熱は、回転軸100の周速が高くなり、摺動面31に対する面圧が高くなる程大きくなる。そこで、第1実施形態では、複数の軸受パッド30の少なくとも1つは、以下に説明する冷却構造を有する。なお、第1実施形態では、複数(5つ)の軸受パッド30の全てが、冷却構造を有している例を説明する。
【0024】
<軸受パッドの冷却構造>
図4は、軸受パッドの概略構造を説明するための模式的な斜視図である。
図5は、軸受パッドの中空部を説明するための模式的な断面図である。
【0025】
第1実施形態では、軸受パッド30は、
図4および
図5に示すように、中空部50と、潤滑油供給路60(
図5参照)と、を有するパッド本体40を含む。パッド本体40は、外表面に、排出開口41a、41bと、入口開口42とを有する。
【0026】
パッド本体40は、軸受パッド30の外形をなす構造部分であり、金属材料(例えばFe材など)により形成されている。パッド本体40の内周側表面に、摺動材(ホワイトメタルなど)からなる摺動材層43(
図5参照)が設けられている。この摺動材層43の表面が、摺動面31を構成する。パッド本体40の他の外表面が、それぞれ、上述した軸受パッド30の背面32、側面33a、33b、端面34a、34bを構成する。
【0027】
中空部50は、パッド本体40の内部に形成された空洞である。中空部50は、パッド本体40の上述した外表面(摺動面31、背面32、側面33a、33b、端面34a、34b)よりも内側に形成された内壁面によって区画されている。
【0028】
具体的には、中空部50は、少なくとも、摺動面31側の第1壁面51と、摺動面31とは反対側(つまり、背面32側)の第2壁面52と、周方向に対向する一対の第3壁面53a、53bと、を有する。第1壁面51と第2壁面52とは、パッド本体40の厚み方向(径方向Dr)に対向する内表面である。第1壁面51および第2壁面52は、平坦面であるが、摺動面31および背面32の湾曲に対応して湾曲していてもよい。。第3壁面53aは、端面34a側の内表面であり、第3壁面53bは、端面34b側の内表面である。第3壁面53aおよび第3壁面53bは、平坦面である。
【0029】
中空部50は、パッド本体40の周方向Dcのうち、パッド本体40における回転軸100の回転方向側(つまり、端面34b側)に偏った領域に形成されている。中空部50は、周方向Dcにおいて、端面34bから全長の1/2の範囲内に設けられている。また、中空部50は、周方向Dcにおいて、
図3のピーク位置Pkを含む範囲に形成されている。なお、ピーク位置Pkは、中空部50が形成されていない試験用の軸受パッド(
図3参照)を用いて実験的に取得できるほか、シミュレーションによって解析的に決定することができる。
【0030】
中空部50は、冷却用の潤滑油を流通させるためのパッド本体40の内部空間である。中空部50は、
図5に示すように、潤滑油供給路60と連通する供給開口52aが第2壁面52に形成されている。中空部50は、排出開口41a、41bを介してパッド本体40の外部と連通している。
【0031】
中空部50は、パッド本体40の幅方向(軸方向Da)に延びる概略直方体状の空間である。第1実施形態では、中空部50は、パッド本体40を幅方向に貫通している。つまり、中空部50は、幅方向の両端が、それぞれパッド本体40の外表面である側面33aおよび33bに達し、側面33aおよび33bにおける排出開口41a、41bに直接(他の流路を介さずに)接続している。このように、パッド本体40は、摺動面31以外の他の外表面(側面33a、33b)に開口し、中空部50に連通する排出開口41a、41bを有する。
【0032】
潤滑油供給路60は、パッド本体40の内部に形成された流路であり、中空部50に連通する。潤滑油供給路60は、一端が供給開口52aと接続し、他端が入口開口42と接続している。入口開口42は、パッド本体40(軸受パッド30)の背面32に形成された開口部である。入口開口42は、
図1に示すように、軸受パッド30に隣接するノズル11から分岐した支流路12と接続されている。これにより、パッド本体40の入口開口42は、近傍のノズル11と並列的に、給油装置110(
図2参照)から供給される潤滑油を受け入れる。そのため、
図5に示すように、入口開口42を通じて潤滑油供給路60から供給される潤滑油が、供給開口52aから中空部50内に流入し、中空部50を通過して、排出開口41a、41bからパッド本体40の外部へ排出される。
【0033】
供給開口52aは、パッド本体40の幅方向(軸方向Da)において、パッド本体40の略中央に形成されている。供給開口52aは、入口開口42と、パッド本体40の厚み方向(径方向Dr)に沿って直線状に並んでいる。そして、潤滑油供給路60は、入口開口42と供給開口52aとを直線状に接続している。
【0034】
<中空部の内部構造>
中空部50は、内部に、支持構造体70と、空間部55と、を含む。
【0035】
支持構造体70は、中空部50の内部において、第1壁面51と第2壁面52とを接続する。これにより、支持構造体70は、中空部50におけるパッド本体40の機械的強度を補強する機能を有する。支持構造体70は、中空部50内で隙間を隔てて配置された、柱状または板状の複数の支持部71を含む。このため、支持構造体70は、複数の支持部71の隙間により中空部50内で潤滑油を流通可能としつつ、複数の支持部71の表面を潤滑油に対する伝熱面として機能させる。すなわち、支持構造体70は、摺動面31からの熱を第1壁面51を介して中空部50内に伝達し、潤滑油との接触により潤滑油へ放熱する冷却部材としての機能を有する。なお、
図5では便宜的に、複数の支持部71を斜めに交差する格子状に図示しているが、支持構造体70(支持部71)の具体的な構造例は、後述する。
【0036】
支持構造体70は、中空部50のうち、供給開口52aの非形成領域NEに設けられている。
図5において、供給開口52aの非形成領域NEは、供給開口52aの周縁部から、排出開口41a(側面33a)までに亘る領域と、供給開口52aの周縁部から、排出開口41b(側面33b)までに亘る領域と、が該当する。支持構造体70は、非形成領域NEの一部のみに設けられていてもよい。
図5では、支持構造体70は、中空部50のうち、空間部55に隣接する位置から各排出開口41a、41bまでの各非形成領域NEに亘って、設けられている。
【0037】
空間部55は、供給開口52aの形成領域EAにおいて、供給開口52aから第1壁面51まで延ばした直線空間であって、支持構造体70が形成されていない空間である。空間部55は、供給開口52aの開口断面形状を、そのまま第1壁面51まで伸ばした柱状形状の空間として形成されている。つまり、空間部55は、例えば供給開口52aが円形状の場合、円柱状空間である。また、空間部55は、供給開口52aに接続する潤滑油供給路60の中心軸線(一点鎖線参照)に沿って、第1壁面51まで直線状に延びる。
図5の例では、潤滑油供給路60の中心軸線は、供給開口52aと向かい合う第1壁面51と略直交する。
【0038】
空間部55は、支持構造体70のみならず、支持構造体70以外の他の構造が形成されていない空間である。つまり、空間部55には、供給開口52aから中空部50内に流入する潤滑油と接触する構造が実質的に存在しない。そのため、空間部55は、供給開口52aから流入する潤滑油を、そのまま直進させて、供給開口52aと向かい合う第1壁面51の対向箇所に、直接衝突させる。
【0039】
<支持構造体の構造例>
図6~
図14は、支持構造体70の単位構造の例を示す説明図である。中空部50内に設けられる支持構造体70は、これらの
図6~
図14に示した構造のいずれか、または複数の組み合わせの構造でありうる。
【0040】
支持構造体70を構成する各支持部71は、中実構造を有する。つまり、各支持部71の内側には、潤滑油を流通させる通路が形成されていない。支持構造体70は、複数の支持部71の間の隙間に、潤滑油を流通させる。
図6~
図10では、支持構造体70は、複数の支持部71により構成されたラティス構造体を含む。本明細書において、ラティス構造とは、内部に空間を包含しながら中空部50内における径方向Drの荷重を負担することが可能な三次元格子構造である。支持構造体70は、
図6に示すように、複数の支持部71からなる単位構造を、中空部50の内壁面に沿って複数配列することで形成されている。
【0041】
図6の例では、、支持構造体70の単位構造72Aは、一端が頂点73で互いに接続された3つの柱状の支持部71により構成されている。つまり、単位構造72Aは、四面体の辺部のみで構成されている。頂点73(一端側)が第1壁面51と接続していてもよいし、他端側が第1壁面51と接続していてもよい。
【0042】
図7に示す単位構造72Bは、中間部で互いに交差する3つの柱状の支持部71によって構成されている。支持部71の各端部は、隣接する他の単位構造72Bの支持部71の端部と接続されうる。
【0043】
図8に示す単位構造72Cは、アーチ状に湾曲した2つの板状の支持部71が頂部と底部との間の部位で互いに接続された構造を有する。
図9に示す単位構造72Dは、一端が1つの頂点73で互いに接続された、4つの直線板状の支持部71を有する。つまり、単位構造72Dは、四角錐の辺部のみで構成されている。
図10に示す単位構造72Eは、多面体の辺部を構成する複数の柱状の支持部71を有する。単位構造72Eの配列において、互いに隣接する単位構造72Eは、一部の支持部71を共有しうる。図示しないが、ポーラスラティス構造と呼ばれる三次元構造を用いて支持構造体70を形成することも可能である。
【0044】
支持構造体70は、ラティス構造体以外の単位構造により構成されてもよい。
図11の単位構造72Fは、ピン状の支持部71を複数配列したピン列からなる。
図12の単位構造72Gは、それぞれ面内方向に湾曲しつつ径方向Drに延びる複数の柱状の支持部71を有し、全体として樹木状構造(密集した枝のような形状)をなす。
【0045】
図13の単位構造72Hは、径方向Drに延びる複数の平板状(フィン状)の支持部71が、面内方向に中央から放射状に延びるように配列された構造を有する。単位構造72Hの中央部は、上記の空間部55に相当する。
図14の単位構造72Iは、径方向Drに延びる複数の平板状の支持部71が、面内方向に間隔をあけて平行に配列された構造(平行平板構造)を有する。単位構造72Iの支持部71は、中空部50に沿ってパッド本体40の幅方向に延びる。
【0046】
これらの単位構造72A~72Iなどの配列から構成された支持構造体70は、中空部50における構造的強度を向上させつつ、表面積(伝熱面積)を効果的に増大させ、その結果、潤滑油への放熱を促進する。第1実施形態では、パッド本体40は、中空部50、潤滑油供給路60、支持構造体70を含む全体が、付加製造法(AM;additive manufacturing)により一体形成された一体造形品である。
【0047】
<軸受装置の作用>
第1実施形態に係る軸受装置10の作用を説明する。
図3に示したように、回転軸100の回転に伴う油膜のせん断発熱によって、軸受パッド30の発熱量は、回転軸100の回転方向側(端面34b側)の後縁部付近のピーク位置Pkで最大になる。つまり、軸受パッド30は、
図5における中空部50の直上の摺動面31の位置で、最大の発熱量となる。軸受パッド30は、潤滑油供給路60を介して中空部50内に供給される潤滑油により、摺動面31側に生じた熱を冷却する。
【0048】
ここで、摺動面31側に生じた熱は、摺動材層43を介して、中空部50の第1壁面51に伝わる。第1実施形態では、供給開口52aから中空部50内に流入した低温の潤滑油が、空間部55を直進して、第1壁面51に直接衝突する。軸受パッド30は、低温の潤滑油を、摺動面31の裏面に相当する第1壁面51に直接衝突させることにより、第1壁面51(パッド本体40)から潤滑油へ効果的に放熱させる。
【0049】
なお、この空間部55の部分に支持構造体70のような構造部分が存在する場合、伝熱面積は増大するものの、潤滑油は、第1壁面51へ衝突する前に、当該構造部分と衝突して流速が低下する。第1実施形態は、空間部55に構造部分が存在する場合と比較して、低温の潤滑油が高い流速を維持して第1壁面51へ衝突することにより、摺動面31のピーク温度の低減効果を向上させる。また、空間部55における構造部分の存在は流路抵抗の増大をもたらす。そのため、第1実施形態は、空間部55に構造部分が存在する場合と比較すると、ピーク位置Pkにおける摺動面31の温度を効果的に低下させつつ中空部50の圧力損失を低減する効果をもたらす。
【0050】
第1壁面51に衝突した潤滑油は、中空部50内を幅方向の一方側と他方側とに分かれて、支持構造体70が形成された領域を各排出開口41a、41bへ向けて流れる。軸受パッド30は、第1壁面51に衝突した後の潤滑油を、中空部50内の支持構造体70の外表面と衝突させることによって、第1壁面51から支持構造体70に伝達した熱を効率的に放出させる。
【0051】
中空部50内を通過して温度上昇(吸熱)した潤滑油は、軸受パッド30の側面33a、33bの各排出開口41a、41bから、軸受パッド30の外部(つまり、ハウジング20の内部空間)へ排出される。排出開口41a、41bが、摺動面31以外の側面33a、33bに形成されているため、温度上昇した潤滑油が回転軸100と摺動面31との間の空間に供給されることが抑制される。第1実施形態では、中空部50内で温度上昇(吸熱)した潤滑油ではなく、ノズル11からの低温の潤滑油が回転軸100と摺動面31との間の空間に積極的に供給されるため、軸受パッド30の外表面側の冷却性能を確保できる。
【0052】
なお、回転軸100と摺動面31との間の空間から排出された潤滑油、および、排出開口41a、41bから排出された潤滑油は、
図2に示すように、フランジ部24と回転軸100との間の隙間、および、端面板22と回転軸100との間の隙間から、軸受装置10の外部に排出される。
【0053】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態に係る軸受装置の軸受パッドの構造を表す概略図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】
上記第1実施形態では、パッド本体40の中空部50に、1つの供給開口52aを設けた例を示したが、この第2実施形態による軸受パッド30Aのパッド本体40は、第2壁面52に複数(3つ)の供給開口52a、52bおよび52cを有する。なお、供給開口の数は、3つには限られず、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0055】
供給開口52a、52bおよび52cは、第2壁面52において、パッド本体40の幅方向(Da方向)に沿って、間隔をあけて並んでいる。幅方向において、供給開口52aおよび供給開口52bの間と、供給開口52bおよび供給開口52cの間とには、それぞれ、供給開口52aが形成されていない非形成領域NE1、NE2が存在する。
【0056】
各供給開口52a、52bおよび52cは、同一の潤滑油供給路60と接続している。すなわち、潤滑油供給路60は、入口開口42に接続する1つの一方端部と、供給開口52a、52bおよび52cにそれぞれ接続する3つの他方端部と、を有する分岐路である。
【0057】
具体的には、潤滑油供給路60は、入口開口42と供給開口52bとの間の分岐点61から、それぞれ延びた通路62a~62cを含む。なお、入口開口42は、供給開口52bとパッド本体40の厚み方向に並んでいる。通路62aは、分岐点61から側面33a側へ幅方向に延びた後、直角に屈曲して供給開口52aに接続している。通路62bは、分岐点61から厚み方向に直進して供給開口52bに接続している。通路62cは、分岐点61から側面33b側へ幅方向に延びた後、直角に屈曲して供給開口52cに接続している。各通路62a~62cは、いずれも、第2壁面52(供給開口52a~52c)に対して垂直に接続している。
【0058】
第2実施形態では、供給開口52a、52bおよび52cの各々に、対応する空間部55a、55bおよび55cが設けられている。通路62a~62cの各中心軸線は、軸受パッド30の厚み方向(径方向Dr)に沿っているため、空間部55a、55bおよび55cは、対応する供給開口52a、52bおよび52cから、第1壁面51まで厚み方向に延びる直線空間である。
【0059】
支持構造体70は、中空部50のうち、複数の供給開口52a~52cの各々に対応する空間部55a~55cを除く、供給開口52a~52cの間の非形成領域NE1、NE2に設けられている。また、第2実施形態では、支持構造体70は、中空部50のうち、供給開口52aと隣接する位置から排出開口41a(側面33a)までの非形成領域NE3、および、供給開口52cと隣接する位置から排出開口41b(側面33b)までの非形成領域NE4にも、それぞれ設けられている。
【0060】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0061】
<第2実施形態の作用>
第2実施形態では、中空部50に複数(3つ)の供給開口52a~52cが形成され、それに対応して複数(3つ)の空間部55a~55cが設けられているので、各供給開口52a~52cから中空部50内に流入した潤滑油が、それぞれ対向する第1壁面51に直接衝突する。第1壁面51において、低温の潤滑油が直接衝突する領域の面積が増大するので、低温の潤滑油を第1壁面51に衝突させることによる摺動面31のピーク温度の低減効果が向上する。そして、潤滑油が各供給開口52a~52cの間を通過する際には、支持構造体70との熱交換により軸受パッド30Aが冷却される。
【0062】
<第2実施形態の変形例>
図15では、潤滑油供給路60の各通路62a~62cが、いずれも、第2壁面52(供給開口52a~52c)に対して垂直に接続する例を示したが、これに限られない。
図16は、第2実施形態の変形例を示す模式的な断面図である。
図16に示す変形例による軸受パッド30Bでは、通路62aおよび通路62cが、それぞれ、第2壁面52(供給開口52a、52c)に対して、斜めに傾斜して接続している。
【0063】
このように、潤滑油供給路60が第2壁面52(供給開口52a)に対して斜めに接続する場合、空間部55a、55cも、斜めに傾斜した直線空間として設けられる。つまり、空間部55aは、供給開口52aから、通路62aの中心軸線Ax1に沿って、第1壁面51まで延びる直線状空間として形成される。空間部55cは、供給開口52cから、通路62cの中心軸線Ax3に沿って、第1壁面51まで延びる直線空間として形成される。そのため、供給開口52aおよび供給開口52cから中空部50内に流入する潤滑油は、空間部55a、55cを直進して、そのまま第1壁面51の対応箇所に衝突する。このように、潤滑油が第1壁面51に対して斜めに衝突する場合でも、衝突による冷却効果は十分に得ることができる。なお、通路62bの中心軸線Ax2は、第2壁面52(供給開口52b)に対して垂直である。上記第1実施形態の潤滑油供給路60(
図5参照)についても、斜めに傾斜していてもよい。この他、第1壁面51と第2壁面52とが非平行であってもよい。
【0064】
[作用効果]
第1の態様に係る軸受装置は、回転軸100を回転支持する摺動面31を有する複数の軸受パッド30と、複数の軸受パッド30を周方向Dcに配列して保持する環状のハウジング20と、を備え、複数の軸受パッド30の少なくとも1つは、内部に形成された中空部50と、中空部50に連通する潤滑油供給路60と、中空部50に連通する排出開口41a、41bと、を有するパッド本体40を含み、中空部50は、摺動面31側の第1壁面51と、摺動面31とは反対側の第2壁面52とを有し、潤滑油供給路60と連通する供給開口52aが第2壁面52に形成され、供給開口52aの非形成領域NEにおいて、第1壁面51と第2壁面52とを接続する支持構造体70を有するとともに、供給開口52aの形成領域EAにおいて、供給開口52aから第1壁面51まで延ばした直線空間であって、支持構造体70が形成されていない空間部55を有する。
【0065】
第1の態様に係る軸受装置は、潤滑油供給路60を介して供給開口52aから中空部50内に流入した低温の潤滑油を、空間部55により、第1壁面51に直接衝突させることができる。これにより、摺動面31の熱を、摺動面31の裏面に相当する中空部50の第1壁面51から、低温の潤滑油へ効果的に放出することができる。また、第1壁面51に衝突した潤滑油が排出開口41a、41bへ流れる間に、潤滑油を支持構造体70の外表面と衝突させることによって、第1壁面51から支持構造体70に伝導した熱を効率よく放出させることができる。そのため、たとえば単に軸受パッド30の内部に潤滑油を流通させる構造と比べて、軸受パッド30の冷却性能の更なる向上を図ることができる。その結果、軸受装置10を高周速、高面圧条件で使用する場合でも、摺動面31の温度が過度に上昇することを抑制できる(つまり、軸受装置10を使用可能な周速、面圧条件の上限を引き上げることができる)。
【0066】
第2の態様に係る軸受装置は、複数の軸受パッド30の間に設けられ、パッド本体40の外部から摺動面31へ潤滑油を供給するノズル11をさらに備え、排出開口41a、41bは、パッド本体40のうち、摺動面31以外の他の外表面に形成されている。これにより、中空部50内を通過して熱を吸収した高温の潤滑油を摺動面31以外の外表面から排出しつつ、摺動面31(摺動面31と回転軸100との間の空間)には、ノズル11から低温の潤滑油を供給することで、摺動面31の発熱を外表面側から吸収できる。そのため、摺動面31の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0067】
第3の態様に係る軸受装置では、排出開口41a、41bは、パッド本体40の幅方向の側面33a、33bに形成され、中空部50は、パッド本体40の幅方向に延びて排出開口41a、41bに接続し、支持構造体70は、中空部50のうち、空間部55に隣接する位置から排出開口41a、41bまでの非形成領域NEに、設けられている。これにより、パッド本体40の全幅に亘る範囲を、中空部50内を通過する潤滑油によって効果的に冷却できる。また、中空部50がそのまま排出開口41a、41bに接続するので、中空部50と排出開口41a、41bとを細い流路で接続する場合と比べて、流路抵抗(すなわち、圧力損失)を低減することができる。
【0068】
第4の態様に係る軸受装置では、支持構造体70は、隙間を隔てて配置された、柱状または板状の複数の支持部71を含む。これにより、中空部50における構造的強度を向上させつつ、支持構造体70の表面積(伝熱面積)を効果的に増大させ、それにより潤滑油への放熱を促進することができる。
【0069】
第5の態様に係る軸受装置では、支持構造体70は、複数の支持部71により構成されたラティス構造体を含む。これにより、より小さい体積(重量と言い換えてもよい)で、高い構造的強度と大きな表面積(伝熱面積)とを有する支持構造体70を得ることができる。
【0070】
第6の態様に係る軸受装置は、パッド本体40は、摺動面31とは反対側の背面32に入口開口42を有し、潤滑油供給路60は、入口開口42と供給開口52aとを直線状に接続している。これにより、入口開口42から、潤滑油供給路60、供給開口52aおよび空間部55を通って、第1壁面51に至る経路を、直線状に形成できる。そのため、容易に、高い流速で潤滑油を第1壁面51に衝突させることができるので、軸受パッド30の冷却性能を効果的に向上させることができる。
【0071】
第7の態様に係る軸受装置では、パッド本体40は、第2壁面52に複数の供給開口52a~52cを有し、支持構造体70は、中空部50のうち、複数の供給開口52a~52cの各々に対応する空間部55a~55cを除く、複数の供給開口52a~52cの間の非形成領域NE1、NE2に設けられている。第1壁面51において、低温の潤滑油が直接衝突する領域の面積を増大させることができるので、低温の潤滑油を第1壁面51に衝突させることによる冷却効果をさらに向上させることができる。そして、潤滑油が各供給開口52a~52cの間を通過する際には、支持構造体70との熱交換による冷却効果が得られる。
【0072】
第8の態様に係る軸受装置では、中空部50は、パッド本体40の周方向Dcのうち、パッド本体40における回転軸100の回転方向側に偏った領域に形成されている。これにより、中空部50を、摺動面31のうちで特に発熱が大きくなる箇所(
図3のピーク位置Pk参照)の直下に配置することができる。つまり、ピーク位置Pkの摺動面31を、その裏側に相当する箇所への低温の潤滑油の衝突によって直接冷却できる。その結果、稼働時の摺動面31の温度ピークを効果的に低減することができる。言い換えると、摺動面31の許容上限温度に到達しにくくなるので、その分、軸受装置の使用条件をさらに緩和(高周速化、高面圧化)できる。
【0073】
[変形例]
なお、上述した第1および第2実施形態では、2つの排出開口41a、41bが、パッド本体40の各側面33a、33bに形成された例を示したが、これに限られない。パッド本体40の側面33a、33bの一方のみに、排出開口が形成されていてもよい。また、排出開口は、側面33a、33b以外の、摺動面31、背面32、端面34aまたは34bに形成されていてもよい。排出開口が3か所以上に形成されていてもよい。
【0074】
また、第1および第2実施形態では、入口開口42が、パッド本体40の背面32に形成された例を示したが、これに限られない。入口開口42は、パッド本体40の背面32以外の、側面33aまたは33bに形成されてもよい。入口開口42が複数個所に形成されていてもよい。
【0075】
また、第1および第2実施形態では、中空部50が、パッド本体40を幅方向に貫通して、排出開口41a、41bに直接接続する例を示したが、これに限られない。中空部50は、幅方向の両端が一対の第4壁面(図示せず)によって区画された空間であってもよい。この場合、第4壁面の一部に形成された開口と排出開口41a、41bを、排出用の流路で接続してもよい。
【0076】
また、第1および第2実施形態では、軸受装置10が、ジャーナル軸受である例を示したが、軸受装置は、スラスト軸受であってもよい。この場合、各軸受パッド30は、摺動面31が回転軸の対向面(スラストカラー)と軸方向Daに対向する向きで、周方向Dcに沿って配列される。また、第1および第2実施形態では、軸受装置10が、ティルティングパッド軸受である例を示したが、軸受装置は、軸受パッド30が固定された固定パッド軸受でもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 軸受装置
11 ノズル
20 ハウジング
30、30A 軸受パッド
31 摺動面
32 背面
33a、33b 側面
40 パッド本体
41a、41b 排出開口
42 入口開口
50 中空部
51 第1壁面
52 第2壁面
52a、52b、52c 供給開口
55、55a、55b、55c 空間部
60 潤滑油供給路
70 支持構造体
71 支持部
100 回転軸
EA 形成領域
NE、NE1、NE2、NE3、NE4 非形成領域