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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168921
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】筆記板用水性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20241128BHJP
【FI】
C09D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085981
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(72)【発明者】
【氏名】牛山 嘉美
(72)【発明者】
【氏名】中田 有亮
(72)【発明者】
【氏名】溝口 達也
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD03
4J039AD09
4J039AD14
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE02
4J039CA03
4J039CA06
4J039EA42
4J039GA26
4J039GA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非吸収面に筆記しても、消去性がありながら、低温高湿度環境下に晒された場合でも描線品位と筆記性に優れた筆記板用水性インク組成物を提供する。
【解決手段】本発明の筆記板用水性インク組成物は、少なくとも、色材と、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルジョンと、トレハロース、ペンタエリスリトール、ソルビトールから選ばれる少なくとも1種と、水とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、色材と、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルジョンと、トレハロース、ペンタエリスリトール、ソルビトールから選ばれる少なくとも1種と、水とを含むことを特徴とする、筆記板用水性インク組成物。
【請求項2】
変性ポリビニルアルコール又はけん化度が40~84mol%のポリビニルアルコールを含むことを特徴とする、請求項1記載の筆記板用水性インク組成物。
【請求項3】
温度25℃における静的表面張力の測定値が、15~50(mN/m)であることを特徴とする請求項1または2の筆記板用水性インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記板用水性インク組成物に関し、ガラス面やホワイトボード、あるいはブラックボードなどの非吸収面、特にはガラス面などの筆記板に対して利用可能であり、水拭きによる描線の消去性が容易であり、低温高湿度環境下であっても、良好な描線品位と筆記性を両立する、筆記板用水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における、消去性、耐水固着性などを良好としてなる筆記具用などの水性インク組成物として、例えば、
〔1〕水、着色剤及び樹脂を含有するマーキングペン用インキ組成物において、前記樹脂が、水溶性ポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とするマーキングペン用インキ組成物(例えば、特許文献1参照)
〔2〕店頭の看板等としてホワイトボード又はブラックボードを利用した場合、非吸収面に筆記した際に、その描線が、適切な耐水固着性に優れるにもかかわらず、水拭きにより、容易に消去することができ、更に、残像の残らない水性顔料インク組成物を提供することを目的とした水性顔料組成物(例えば、特許文献2参照)
〔3〕水を主成分とする溶剤中に必須の成分として、着色剤としての顔料、樹脂および剥離剤を含有し、該剥離剤は一般式が化1で表されるリン酸エステル化合物であることを特徴とする筆記板用水性マーキングペンインキ組成物(例えば、特許文献3参照)
〔4〕少なくとも、顔料と、顔料分散樹脂と、隠蔽剤と、変性ポリビニルアルコール又はけん化度が40~84%のポリビニルアルコールとを含有することを特徴とする筆記板用水性インク組成物(例えば、特許文献4参照)
などが知られている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1~4に記載の筆記具用水性インク組成物では、近年の需要にあるような店頭の窓ガラス面等に水性マーキングペンにより装飾を行う窓ガラスペイント等での用途において、の、水拭きによる消去性がありながら、冬場の結露などの低温高湿度環境における描線品位と筆記性が優れているとはいえないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-171092号公報 (特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2015-48437号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開平6-184486公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2021-91815公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、店頭の窓ガラス面等に水性マーキングペンにより装飾を行う窓ガラスペイント等を行うことがあるが、描線が乾いた状態では、水拭きによる描線の消去性が容易であることが求められている一方で、冬場には窓ガラス面の結露などにより、筆記描線が低温高湿度環境に晒されるため、非吸収面、特にはガラス面に筆記した描線の亀裂、剥がれ落ちが発生し、良好な描線品位を維持することが困難であった。さらには、結露で濡れたガラス面に筆記した場合、描線が滲みやすくなったり、ペン先でインクが固まることで擦れやすくなる等、筆記性に悪影響を及ぼすという問題があった。
本発明は、上記した従来技術の開発の経過及びその課題、現状等に鑑み、これらを解消しようとするものであり、非吸収面、特にはガラス面に筆記した際にも消去性に優れながら、低温高湿度環境であっても描線品位と筆記性が良好な筆記板用水性インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、色材と、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルジョンと、トレハロース、ペンタエリスリトール、ソルビトールから選ばれる少なくとも1種と、水とを含むことにより、上記目的の筆記板用水性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明の筆記板用水性インク組成物は、少なくとも、色材と、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルジョンと、トレハロース、ペンタエリスリトール、ソルビトールから選ばれる少なくとも1種と、水とを含むことを特徴とする。
前記筆記板用水性インク組成物は、変性ポリビニルアルコール又はけん化度が40~84mol%のポリビニルアルコールを含むことが好ましい。
前記筆記板用水性インク組成物は、温度25℃における静的表面張力の測定値が、15~50(mN/m)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非吸収面、特にはガラス面に筆記した描線の消去性が十分であり、さらに低温高湿度環境下であっても、描線品位と筆記性に優れた筆記板用水性インク組成物が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0010】
〈筆記板用水性インク組成物〉
本発明の筆記板用水性インク組成物は、少なくとも、色材と、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルジョンと、トレハロース、ペンタエリスリトール、ソルビトールから選ばれる少なくとも1種と、水とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
<色材>
本発明に用いる色材としては、水に溶解もしくは分散する全ての染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、中空樹脂顔料(粒子)、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、アルミニウム顔料などの光輝性顔料、熱変色性顔料(粒子)、光変色性顔料(粒子)等、およびこれらの複合顔料(粒子)を制限なく使用することができる。用いることができるアルミニウム顔料としては、市販品では、例えば、アルミニウム表面をリン系化合物により防錆処理したWXMシリーズ、アルミニウム表面をモリブテン化合物により防錆処理したWLシリーズ、アルミニウムフレークの表面を密度の高いシリカでコーティングしたEMRシリーズ〔以上、東洋アルミニウム社製〕、SW-120PM〔以上、旭化成ケミカルズ社製〕等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、酸化チタンを添加する場合においては、例えば、アルミナまたはシリカ、またはジルコニアまたは亜鉛処理されたものを用いることが望ましく、ルチル型またはアナターゼ型の酸化チタンを用いることが好ましい。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6-C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154,ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBB等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
【0012】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0013】
熱変色性顔料(粒子)としては、発色剤として機能するロイコ色素と、該ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となる顕色剤及び上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールすることができる変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば 、0.1~10μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された熱変色性顔料などを挙げることができる。
光変色性顔料(粒子)としては、例えば、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などから選択される1種以上と、テルペンフェノール樹脂などの樹脂とにより構成される光変色性粒子や、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などから選択される1種以上と、有機溶媒と、酸化防止剤、光安定剤、増感剤などの添加剤とを含む光変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~10μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された光変色性顔料(粒子)などを挙げることができる。
なお、本発明(実施例等含む)において、「平均粒子径」は、レーザー回析または動的光散乱法により測定した値であり、レーザー回折法においては体積基準により算出されたD50の値であり、この測定は、例えば日機装株式会社の粒子径分布解析装置HRA9320-X100を用いることができ、動的光散乱法を用いた平均粒子径とは、例えば、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子社製)を用いて算出された、散乱強度分布におけるキュムラント法解析の平均粒子径の値である。
【0014】
これらの色材は、各単独で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)使用することができる。
また、これらの色材において、描線の消去性の点から、顔料の使用、すなわち、上記無機顔料、有機顔料、顔料を含有した樹脂粒子顔料または樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料などの着色樹脂顔料、白色系プラスチック顔料、中空樹脂顔料(粒子)、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、アルミニウム顔料などの光輝性顔料、熱変色性顔料(粒子)、光変色性顔料(粒子)等、およびこれらの複合顔料(粒子)の使用が望ましい。
【0015】
これらの色材の(合計)含有量は、筆記板用水性インク組成物全量(以下、単に「インク組成物全量」という)に対して、好ましくは、0.5~50質量%、更に好ましくは、2~40質量%、特に好ましくは、5~30質量%とすることが望ましい。
この色材の含有量を0.5質量%以上とすることにより、低温高湿度環境であっても描線品位をより良好とし、描線の亀裂、剥がれ落ちが発生しない良好な描線の形成を実現とすることができ、一方、50質量%以下とすることにより、消去性が良好であり、粘度上昇を抑制し、インクの流動性が良好となる点で好ましい。
【0016】
本発明に用いるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物は、イソブチレンと無水マレイン酸の共重合物の中和物であり、本発明においては後述する水溶性樹脂(樹脂エマルジョンを含む)との併用により、描線の消去性と、低温高湿度環境での描線品位と筆記性を良好とする機能を発揮せしめる成分となるものである。
用いるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物において、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の基本構造は下記式(I)で示されるものであり、下記式(II)は、本発明において好ましく用いることができるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物のアンモニア中和物(変性物)である。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
本発明では、上記式(II)のアンモニア中和物の他、水酸化ナトリウム中和物、アミン中和物であってもよいものである。また、上記式(I)中のn、(II)中のlとm、下記式(III)中のjとkなどの数値は、後述する重量平均分子量などにより変動し、好適な範囲が定まるものである。
また、本発明では、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物をイミド化(イミド変性)した下記式(III)で示されるイミド化イソブチレン・無水マレイン酸共重合物をアンモニア、水酸化ナトリウム、アミンなどで中和した各中和物であってもよいものである。
【化3】
【0020】
上記式(II)、式(III)などのイソブチレン・無水マレイン酸共重合物を中和した各中和物の重量平均分子量は、3,000~400,000が好ましく、5,000~200,000が更に好ましく、30,000~100,000、特に好ましくは,50,000~70,000が最も好ましい。この重量平均分子量は、水系ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の値である。
上記イソブチレン・無水マレイン酸共重合物やその中和物は、市販品を使用することができ、例えば、クラレ社製の「イソバン」等を挙げることができ、例えば、イソバン-04,06,10,18の中和物、イソバン-104,110は上記式(II)におけるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物のアンモニア中和物(変性物)の市販品などが挙げられ、更に、イソバン-304,306,310の中和物などが挙げられる。なお、用いるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物〔上記式(I)等から〕の中和物を調製する場合は、例えば、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の全てのカルボキシル基が中和された場合、中和度1とし、中和に用いるアンモニア、水酸化ナトリウム、アミンなどの必要量を算出して調製することなどにより各中和物を得ることができる。
【0021】
これらのイソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物の含有量は、インク組成物全量に対して、0.01~4質量%が好ましく、更に好ましくは、0.05~3質量%、特に好ましくは0.1~2質量%である。
このイソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物の含有量が0.01質量%未満であると、低温高湿度環境下での描線品位が低下し、描線の亀裂、剥がれ落ちが発生しやすくなり、一方、4質量%を超えた場合は、粘度が上昇してインク吐出性が低下し筆記性に悪影響を及ぼしたり、消去性の低下に繋がることとなる。
【0022】
本発明に用いる水溶性樹脂、樹脂エマルジョンは、定着剤、分散剤、安定化剤として機能するものであり、例えば、ポリアクリル酸、アクリル系樹脂、水溶性スチレン-アクリル樹脂、水溶性スチレン-マレイン酸樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性マレイン酸樹脂、水溶性スチレン樹脂、水溶性エステル-アクリル樹脂、エチレン-マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性ウレタン樹脂等の分子内に疎水部を持つ水溶性樹脂、また、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョン、スチレン-ブタジエンエマルジョン、スチレン-アクリロニトリルエマルジョン、シリコーンレジンエマルジョン、シリコーンアクリル共重合体エマルションなどの樹脂エマルジョンなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0023】
好ましくは、色材の分散性、粘度調整、並びに、定着力向上の点から、酸価が240以下となるアクリル系樹脂、水溶性スチレン-アクリル樹脂、スチレンマレイン酸、ウレタン樹脂の水溶性樹脂、または、アクリル系樹脂エマルジョン、スチレンアクリル系、スチレンマレイン酸系、ウレタン系の各樹脂エマルジョンの使用が望ましい。なお、酸価の下限は、インクの保存安定性の点から、10以上が望ましい。
上記樹脂の酸価を240以下とすることにより、均一な描線塗膜を形成し、消去性を良好にすることができ、さらには低温高湿度環境であっても良好な描線品位を維持することができる。
【0024】
また、上記酸価を240以下の樹脂の質量平均分子量は、2,000以上とすることが好ましく、更に好ましくは、3,000~300,000、特に好ましくは、5,000~200,000が望ましい。この質量平均分子量2,000以上のものを用いることにより、強固な描線塗膜を形成し、低温高湿度環境においても亀裂や剥がれのない良好な描線品位とすることができる。
本発明において、「樹脂の酸価」は、樹脂1gを中和するのに要するKOHのmg数を表し、例えばJIS-K3054に従って測定する値である。
【0025】
上記樹脂の酸価を240以下の水溶性樹脂、樹脂エマルジョンは、市販品を使用することができ、例えば、水溶性樹脂では、BASF 社製のPDX6157(酸価;205)、同JDX6500(酸価;85)、同PDX-6137A 酸価;240、星光PMC社製のM―30(酸価;155)などが使用でき、樹脂エマルジョンでは、BASF社製のPDX―7741(酸価;52)、同PDX―7787(酸価;100)、同PDX―7158(酸価;54)大成ファインケミカル社製のWBR-016(酸価;7)、三井化学エムシー社製のタケラックW-5661(酸価;48)などが使用できる。
【0026】
これらの特性の水溶性樹脂、樹脂エマルジョンの(合計:固形分)含有量は、前記イソブチレン・無水マレイン酸共重合体の中和物とは別に、インク組成物全量に対して、0.1~20質量%を含有することが好ましく、更に好ましくは、0.5~15質量%である。
この特性の水溶性樹脂、樹脂エマルジョンの含有量が0.1質量%未満であると、低温高湿度環境での描線品位が低下するため、好ましくなく、一方、20質量%を超えた場合は、粘度が高くなり、インク吐出性に悪影響を及ぼすため、好ましくない。
【0027】
本発明で用いるペンタエリスリトール〔C(CH2OH)4〕は、非吸収面、特にはガラス面に筆記した描線が結露等よっても亀裂や剥がれの抑制剤として用いるものであり、筆記板用水性インク組成物中に配合してもインク性能の低下等を招くことなどがないものである。このペンタエリスリトールの含有量は、筆記板用インク組成物全量に対して、0.1~5%、好ましくは、0.5~4%とすることが望ましい。
この含有量の含有量が0.1%未満であると、低温高湿度環境での描線の亀裂、剥がれ抑制剤としての効果が低く、好ましくなく、一方、5%を超える場合は、筆記板用水性インク組成物としての粘度が高くなったり、低温時等にペン先や描線表面から結晶の析出が発生し、筆記描線品位の低下や、インクの保存安定性に問題が出てくることとなり、好ましくない。
【0028】
本発明で用いるトレハロースは、結露等による描線の亀裂や剥がれの抑制剤として用いるものであり、筆記板水性インク組成物中に配合してもインク性能の低下等を招くことなどがないものである。
このトレハロースの含有量は、インク組成物全量に対して、0.1~15%、好ましくは、0.5~8%とすることが望ましい。
この含有量が0.1%未満であると、描線の亀裂、剥がれ抑制剤としての効果が低く、好ましくなく、一方、15%を超える場合は、筆記板用水性インク組成物としての粘度が高くなったり、低温時等にペン先や描線表面から結晶の析出が起こり筆記描線品位の低下や、インクの保存安定性に問題が出てくることとなり、好ましくない。
【0029】
本発明で用いるソルビトールは、結露等による描線の亀裂や剥がれの抑制剤として用いるものであり、筆記板水性インク組成物中に配合してもインク性能の低下等を招くことなどがないものである。
このソルビトールの含有量は、インク組成物全量に対して、0.1~15%、好ましくは、0.5~8%とすることが望ましい。
【0030】
本発明で用いるペンタエリスリトール、トレハロース、ソルビトールは、発明の効果を発揮する範囲において、筆記板用水性インク組成物に対し、各単独で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)で使用することができる。
【0031】
本発明に用いる変性ポリビニルアルコール、けん化度が40~84mol%であるポリビニルアルコールは、本発明の効果を発揮せしめる成分となるものであり、描線の消去性に影響を及ぼすことがなく、低温高湿度下においても、強固な描線塗膜を形成し、筆記した描線の亀裂や剥がれのない良好な描線品位を維持し、さらに結露等の水に濡れた面であっても、描線の滲みやペン先でインクが固まることによる擦れのない良好な筆記性となる。
【0032】
本発明の筆記板用水性インク組成物で用いるポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」と略記する)は、一般式、-〔CH2-CH(OH)〕m-〔CH2-CH(OCOCH3〕n-で表されるものであり、本発明では、そのケン化度{〔m/(m+n)〕×100}は、40~84mol%のものを用いるものであり、好ましくは、60~80mol%、特に70~80mol%であるものが望ましい。
PVAのけん化度において、けん化度が40mol%未満のPVAであると、インクが不安定となり筆記性に悪影響を及ぼし、一方、けん化度が84mol%超過のPVAであると、消去性の向上の効果が不十分となり、好ましくない。
【0033】
具体的に用いることができるPVAとしては、市販の日本合成化学工業社製のA型ゴーセノールシリーズ、G型ゴーセノールシリーズ、K型ゴーセノールシリーズ(日本合成化学工業社製の商品名)、日本酢ビ・ポバール社製のJポバールシリーズ(日本酢ビ・ポバール社製の商品名)、クラレ社製のKURARAYポバールPVAシリーズ(クラレ社製の商品名)等の中から上記範囲となるけん化度の好適なものが選択される。これらのケン化度を有するPVAは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
また、本発明では、上記特性のPVAの他、変性PVAを単独で、又は上記特性のPVAと併用して用いることができる。
用いることができる変性PVAとしては、PVAの水酸基、酢酸基をカルボキシル基、スルホン酸基、アセチル基、エチレンオキサイド基などの変性基に変性したもの、または、PVAの側鎖に上記の変性基を有するものが挙げられる。また、部分けん化PVAにアクリル酸とメタクリル酸メチルを共重合したPVA・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体も本発明の変性PVAとして使用することができる。
【0035】
好ましくは、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、上記けん化度(40~84mol%)の変性PVAを用いることが望ましい。
具体的に用いることができる変性PVAとしては、市販の三菱化学社製のゴーセネックスLシリーズ、ゴーセネックスWOシリーズ(日本合成化学工業社製の商品名)、日本酢ビ・ポバール社製のアニオン変性PVA(Aシリーズ)(日本酢ビ・ポバール社製の商品名)、クラレ社製のエクセバール1713(クラレ社製の商品名)等の中からケン化度、重合度の好適なものが選択される。また、PVA・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重体としては、大同化成工業社製のPOVACOAT(大同化成工業社製の商品名)等の中から好適なものが選択される。
これらの変性PVAは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
用いる変性PVAは、低温高湿度環境で結露したガラス面への筆記に対し、滲みやペン先の擦れのない筆記性に対し、有効である。特に、カルボキシル基変性、スルホン酸基変性、アセチル基変性タイプが安定性に優れているので望ましい。
【0036】
このようなPVA、変性PVAの合計含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは、0.05~5%、更に好ましくは、0.1~3%とすることが望ましい。
これらの含有量が0.05%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、ガラス面等の非吸収面への筆記が不十分となり描線が滲みやすく、一方、5%超えると、インクの安定性が不安定となり、好ましくない。
【0037】
本発明の筆記板用水性インク組成物は、温度25℃における静的表面張力の測定値が、15~50(mN/m)とすれば、ガラス面へ均一な描線を形成しやすくなるため、低温高湿度環境であっても描線の亀裂や剥がれが起きにくく、良好な筆記性を得られるという点でより好ましい。本発明の筆記板用インク組成物の静的表面張力(25℃)は、協和界面科学社製、表面張力測定装置:CBVP-Zにて測定した値をいう。
【0038】
さらに本発明の筆記板用水性インク組成物は発明の効果を損なわない範囲において、中空粒子を含むことが好ましく、例えば、市販品でいえば、ローペイクOP-62(平均粒径450nm、中空率33%)、ローペイクOP-91、ローペイクHP-1055(平均粒径1000nm、中空率55%)、ローペイクHP-91(平均粒径1000nm、中空率50%)、ローペイクULTRA(平均粒径380nm、中空率45%)、ローペイクULTRA E(平均粒径380nm、中空率45%)、ローペイクULTRA DUAL(平均粒径380nm、中空率45%)(以上、BASF社製)、SX-863(A)、SX-864(B)、SX-866(A)、SX-866(B)(平均粒径300nm、中空率30%)、SX-868(平均粒径500nm)(以上、JSR社製)、Nipol MH5055(平均粒径500nm)、Nipol MH8101(平均粒径1μm)(以上、日本ゼオン社製)等の少なくとも1種を使用することができる。
これらの中空粒子の含有量は、筆記板用水性インク組成物全量に対して、好ましくは、固形分濃度で0.1~10%、更に好ましくは、0.5~8%であり、柔軟な描線塗膜を形成できることから、消去性がより良好となる点で好ましい。
【0039】
本発明の筆記板用水性インク組成物には、少なくとも、上述の色材とイソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルジョンと、トレハロース、ペンタエリスリトール、ソルビトールから選ばれる少なくとも1種、の他に、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、本発明の効果を損なわない範囲で、分散剤、潤滑剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤、増粘剤などを適宜含有することができる。
【0040】
用いることができる分散剤としては、ノニオン、アニオン界面活性剤や前記した水溶性樹脂以外の水溶性樹脂が用いられる。好ましくは水溶性高分子が用いられる。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、アセチレン系活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。これらのなかでも、筆記性および描線塗膜の定着性の点から、アセチレン系活性剤を用いることが好ましく、市販品では例えば、サーフィノールシリーズ、たとえばサーフィノール104H(日信化学工業社製)等が挙げられ、本発明の筆記板用水性インク組成物全量に対し、0.01~2質量%を含有することがより好ましい。
【0041】
pH調整剤としては、アンモニア、尿素、モノエタノーアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンや、トリポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなとの炭酸やリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水和物などが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
増粘剤としては、例えばセルロース誘導体を用いることができ、ヒドロキシエチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、発酵セルロース、結晶セルロース、多糖類などが挙げられる。用いることができる多糖類としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、HMペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガムなどが挙げられる。
合成高分子としては、たとえば、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ビスアクリルアミドメチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリジオキソラン、ポリスチレンスルホン酸、ポリプロピレンオキサイドなどが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの市販品があればそれを使用することができる。
【0042】
本発明の筆記板用水性インク組成物は、少なくとも、上記色材、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルジョンと、トレハロース、ペンタエリスリトール、ソルビトールから選ばれる少なくとも1種と、水、その他の各成分を筆記板用(ボールペン用、マーキングペン用等)インクの用途に応じて適宜組み合わせて、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の撹拌機により撹拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって発色性に優れた筆記板用水性インク組成物が得られる。
また、本発明の筆記板用水性インク組成物のpH(25℃)は、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6~9.5とすることが望ましい。
【0043】
このように構成される本発明の筆記板用水性インク組成物は、少なくとも、上記色材、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルジョンと、トレハロース、ペンタエリスリトール、ソルビトールから選ばれる少なくとも1種と、水を含有するものであり、描線の優れた消去性と、低温高湿度環境下での描線品位を良好とするものであり、さらに変性ポリビニルアルコール又はけん化度が40~84mol%のポリビニルアルコールを含有することで、消去性がありながらも、低温高湿度環境下での良好な描線品位を保ちながら、結露で水に濡れたガラス面への筆記に対して、描線の滲みや擦れを発生させることがなく、良好な筆記性を両立させることができる。
【0044】
〈筆記具〉
本発明の筆記具は、上記特性の筆記板用水性インク組成物を搭載したものであり、非吸収面、特にはガラス面に筆記しても、耐擦過性、発色性、消去性などに優れた筆記具が得られることとなる。
筆記具としては、例えば、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、繊維芯、多孔質芯などのペン先部を備えたボールペン、マーキングペン等に搭載される。
【0045】
本発明において、「マーキングペン」とは、インク貯蔵部に貯蔵されているインクを、毛細管現象により樹脂製の筆記部に供給する機構を有するペンを意味し、「サインペン」として言及されるペンをも包含する。また、「ボールペン」とは、筆記部に備えられているボールの回転によって、インク貯蔵部に貯蔵されているインクを滲出させる機構を有するペンを意味する。
ボールペンとしては、前記組成の筆記板用水性インク組成物を直径が0.18~2.0mmのボールを備えたボールペン用インク収容体(リフィール)に収容すると共に、インク追従体を追加する。インク追従体には、インク収容体内に収容された上記特性の筆記板用水性インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インク組成物に対して比重が小さい液体、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等が使用される。
なお、ボールペン、マーキングペン等の構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に前記構成の筆記板用水性インク組成物を充填したコレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式のボールペン、マーキングペンであってもよいが、
本発明の筆記板用水性インク組成物においては、ペン芯が繊維芯である直液式マーキングペンの構造が好ましく、ガラス板(縦15cm×横30cm×厚さ1cm、普通板ガラス)表面への筆記流量が20~400mg/m(直線書き)であることが、容易に消去できる点、低温高湿度環境下であっても、良好な描線品位と筆記性を両立できる点から好ましい。
【実施例0046】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0047】
〔実施例1~8及び比較例1~5〕
下記表1に示す配合組成により、常法により、各筆記板用水性インク組成物を調製した。各筆記板用水性インク組成物の室温(25℃)下のpHをpH測定計(HORIBA社製)で測定したところ、7.9~8.2の範囲内であった。
上記で得られた各筆記板用水性インク組成物について、下記方法により筆記具(マーキングペン)を作製して、下記各評価方法で描線の耐擦過性、発色性、消去性の評価を行った。試験に用いたガラス板は、縦15cm×横30cm×厚さ1cmの大きさの普通板ガラスを用いた。
これらの結果を下記表1に示す。
【0048】
(マーキングペンの作製)
上記で得られた各インク組成物を用いてマーキングペンを作製した。具体的には、マーキングペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:PXW-200-5M、軸材質:再生PP樹脂、ペン芯:PET繊維〕の軸を使用し、筆記板用インク組成物を装填して各直液式マーキングペンを作製した。各マーキングペンはガラス板(縦15cm×横30cm×厚さ1cm、普通板ガラス)表面への筆記流量 が20~400mg/mの範囲内であることを確認した。
以上によって、得られた実施例1~8及び比較例1~5のマーキングペンを用いて、各評価を行った。
【0049】
(消去性の評価方法)
各ペン体を、ガラス板に、直径約2cmの円を螺旋状に3行筆記し、得られた描線を1時間乾燥させたのち、その描線を水に濡らしたティッシュにて消去し、下記の基準で評価した。
評価基準:
○:筆記した描線が綺麗に消去される。
△:上記○に較べ描線が僅かに残る部分がある。
&#10005;:上記○に較べ描線が大部分で残る。
【0050】
(描線品位の評価方法)
各ペン体を、温度25℃の環境下で直径約30mmの螺旋を5つ、ガラス板上に筆記し、十分に乾燥させた描線を、さらに温度5℃、相対湿度85%の試験環境下に24時間保存した場合の、描線の様子を目視にて観察した。
下記評価基準で評価した。
評価基準:
〇:描線の亀裂や剥がれがなく良好であった。
△:若干の描線の亀裂や剥がれがみられる。
&#10005;:顕著な描線の亀裂、剥がれがみられる。
【0051】
(筆記性の評価方法)
各ペン体を、温度5℃、相対湿度85%の試験環境下において、ガラス板の表面上に水滴(結露)が発生し、濡れていることを確認したのち、このガラス板上に対し、直径約30mmの螺旋を5つ筆記した。このときの描線の様子を目視で観察し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
〇:描線には滲みや擦れがみられず、良好であった。
△:描線に若干の滲みや擦れがみられた。
&#10005;:描線に顕著な滲みや擦れがみられた。
【0052】
【表1】
【0053】
上記表1の結果から明らかなように、本発明となる実施例1~8の各筆記板用水性インク組成物は、本発明の範囲外となる比較例1~5の筆記板用水性インク組成物に較べて、消去性がありながら、低温高湿度下に晒された場合でも、良好な描線品位と筆記性に優れることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
ボールペン、マーキングペンなどの筆記板用水性インク組成物に好適に用いることができる。