(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168932
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】非接触液面計
(51)【国際特許分類】
G01F 23/292 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01F23/292 B
G01F23/292 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086001
(22)【出願日】2023-05-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・集会名、開催場所:35th International Symposium on Superconductivity(ISS2022)オンライン 開催日:2022年11月29日~12月1日(abstractのweb公開日:2022年11月22日)「All-optical non-contact level sensor for liquid hydrogen」AP9-4 ・集会名、開催場所:2022年度秋季 第104回 低温工学・超電導学会研究発表会 岐阜県岐阜市 開催日:2022年12月7日~12月9日(概要のweb公開日:2022年12月2日)「完全非接触型液体水素用液面計の開発」1P-p04(ポスター) ・集会名、開催場所:BICON 2022-23,Biyani Colleges,Jaipur,Rajasthan 302039,India オンライン 開催日:2023年1月21日~1月25日(オンライン発表は2023年1月21日)「Prospects of Renewable Energy in Akita,Japan」 ・集会名、開催場所:秋田県立大学本荘由利テクノネットワーク 学生×企業学生パネル発表、公立大学法人秋田県立大学、秋田県 開催日:2023年2月22日 「完全非接触型液体水素用液面計」N-41a ・集会名、開催場所:秋田県立大学システム科学技術学部知能メカトロニクス学科卒業研究発表会、公立大学法人秋田県立大学 秋田県 開催日:2023年2月13日「完全非接触型液体水素用液面計」B21N003
(71)【出願人】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】岡本 洋
(72)【発明者】
【氏名】二村 宗男
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AB02
2F014AC02
2F014FA01
2F014FA04
(57)【要約】
【課題】熱流入を抑制しつつ液面の高さを測定できる小型の液面計を得る。
【解決手段】
図3(a)においては液体200の表面がヘッド部10から近い場合、
図3(b)においては液体200の表面がヘッド部10から遠い場合が、それぞれ示されている。結像レンズ12によって得られる画像の画角はFV1とFV2の間の範囲で共通とされ、この範囲内を撮像した画像が光ファイバー束13の入射側(下側)の端面となる焦点面FPに結像される。この画像は、点光源11A1、11B1で照射された液体200の表面の画像である。各反射点に対応した反射像11A2、11B2、11C2は、光ファイバー束13の出射側の端面の画像13A中において、
図3(a)(b)の上側に示されるような位置関係となって現れる。解析部は、画像中における隣接する反射像の間隔より、液面の高さを算出することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の表面である液面の高さを測定する非接触液面計であって、
前記液面を上側から撮像して焦点面で結像させる結像部と、
水平面内において前記結像部の外側における互いに異なる位置に配置され、前記液面を上側から照明光で照射する複数の光源と、
を有するヘッド部と、
前記焦点面における、複数の前記光源の各々の前記液面における反射像を含む画像を撮影する撮像部と、
前記画像中において前記反射像を認識し、隣接する2つの前記反射像の間隔から前記液面の高さを算出する解析部と、
を具備することを特徴とする非接触液面計。
【請求項2】
前記光源は、前記照明光を伝搬させる光ファイバーにおける出射側の端部で構成されたことを特徴とする請求項1に記載の非接触液面計。
【請求項3】
複数の光ファイバーが束ねられた光ファイバー束が前記ヘッド部に固定され、
前記結像部は、前記光ファイバー束の入射側の端面を前記焦点面とし、
前記撮像部は、前記光ファイバー束の出射側の端面を前記ヘッド部の外部において撮影することを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触液面計。
【請求項4】
複数の前記光源は、水平面内において前記結像部を中心とした対称な位置に配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触液面計。
【請求項5】
前記液体を収容する容器に前記ヘッド部が装着された後で、複数の前記光ファイバーの出射側の端部が移動することにより、前記光源の位置が定められることを特徴とする請求項2に記載の非接触液面計。
【請求項6】
平面視において、3つの前記光源が前記結像部を中心とした正三角形の頂点上に配置されたことを特徴とする請求項4に記載の非接触液面計。
【請求項7】
前記照明光は前記光源からパルス状に発せられ、
前記光源から前記照明光が発せられるタイミングと前記撮像部が前記画像を撮影するタイミングとが同期して制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触液面計。
【請求項8】
前記照明光は複数の前記光源からパルス状に順次発せられることを特徴とする請求項7に記載の非接触液面計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で液面の高さを測定する非接触液面計に関する。
【背景技術】
【0002】
液体(水等)の液面の高さ(水位)を測定する技術として、様々なものが知られている。例えば、特許文献1には、浮力によって液体表面で浮遊するフロートの高さを機械的に測定することによって液面の高さを認識する液面計が記載されている。また、特許文献2には、1対の電極が部分的に液体に浸漬するように設けられ、液面の高さに応じて電極と液体との間の接触面積が変化することによって電極間のインピーダンスが変化することを用いて、電気的に液面の高さを認識する液面計が記載されている。これらの液面計は、特に容器内における液面の測定に特に適している。
【0003】
また、特許文献3には、液体(水)の斜め上側から一定のパターンでレーザ光を照射し、水面におけるこのレーザ光の反射の形状を撮像して認識し、この形状から水位を認識する装置が記載されている。この技術は、特にマンホール内の水(水面)に対する測定に適している。特許文献1に記載の技術においてはフロートが、特許文献2に記載の技術においては電極が、それぞれ直接液体と接するのに対し、この技術においては測定のために液体と直接接する構造物は存在せず、代わりに液体はレーザ光で照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-81318号公報
【特許文献2】特開2018-155578号公報
【特許文献3】特開2020-8422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定の対象となる液体が例えば水である場合には、特許文献1~3に記載の技術は非常に有効である。一方、測定の対象となる液体としては、様々なものがあり、例えばその中には、沸点が低いために低温に維持される液体水素(-253℃)、液体窒素(-196℃)、液化アンモニア(-33℃)、液化天然ガス(-162℃)等がある。これらの液体はいずれもタンク内に収容されて用いられ、この際にその残量の管理のためにその液面の高さを認識することが望まれる。
【0006】
特許文献1、2に記載の技術は、このようなタンク内における液面の測定には適しているものの、このために用いられるフロート(特許文献1)、電極(特許文献2)が液体と直接接し、これらを介した低温の液体に対する熱流入が問題となった。すなわち、これらによって液面を高精度で測定できる一方で、この熱流入によって液体が気化しやすくなった。また、フロートや電極に関わる構造を予め容器内に設ける必要があり、これらの構造や、電気的配線を介しても容器内への熱流入が発生するため、この観点からも低温の液体に対しては適用が困難であった。また、電極間に電流を流す特許文献2に記載の技術においては、液体の種類によっては、液体が単に気化しやすいだけでなく、過電流や火花放電による火災や爆発の可能性もある。
【0007】
特許文献3に記載の技術においては、このように液体と直接接する構成要素は用いられないため、これによる熱流入は発生しない。しかしながら、一定の強度のレーザ光を一定パターンで走査して照射することにより、やはり液体に対する熱流入が発生し、これにより液体が気化しやすくなった。また、このようにレーザ光を走査し、かつその反射像を撮像するための撮像装置を設けることが必要となるため、装置が大規模となり、例えば小型の容器内の液体に対する測定は困難であった。このため、熱流入を抑制しつつ液面の高さを測定できる小型の液面計が望まれた。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明は、液体の表面である液面の高さを測定する非接触液面計であって、前記液面を上側から撮像して焦点面で結像させる結像部と、水平面内において前記結像部の外側における互いに異なる位置に配置され、前記液面を上側から照明光で照射する複数の光源と、を有するヘッド部と、前記焦点面における、複数の前記光源の各々の前記液面における反射像を含む画像を撮影する撮像部と、前記画像中において前記反射像を認識し、隣接する2つの前記反射像の間隔から前記液面の高さを算出する解析部と、を具備することを特徴とする。
本発明において、前記光源は、前記照明光を伝搬させる光ファイバーにおける出射側の端部で構成されたことを特徴とする。
本発明において、複数の光ファイバーが束ねられた光ファイバー束が前記ヘッド部に固定され、前記結像部は、前記光ファイバー束の入射側の端面を前記焦点面とし、前記撮像部は、前記光ファイバー束の出射側の端面を前記ヘッド部の外部において撮影することを特徴とする。
本発明において、複数の前記光源は、水平面内において前記結像部を中心とした対称な位置に配置されたことを特徴とする。
本発明は、前記液体を収容する容器に前記ヘッド部が装着された後で、複数の前記光ファイバーの出射側の端部が移動することにより、前記光源の位置が定められることを特徴とする。
本発明は、平面視において、3つの前記光源が前記結像部を中心とした正三角形の頂点上に配置されたことを特徴とする。
本発明において、前記照明光は前記光源からパルス状に発せられ、前記光源から前記照明光が発せられるタイミングと前記撮像部が前記画像を撮影するタイミングとが同期して制御されることを特徴とする。
本発明において、前記照明光は複数の前記光源からパルス状に順次発せられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように構成されているので、熱流入を抑制しつつ液面の高さを測定できる小型の液面計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る非接触液面計が使用される際の形態を示す透視斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る非接触液面計の構造を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る非接触液面計における、液面が高い場合(a)、低い場合(b)の状況を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施例となる非接触液面計において得られた、液面が高い場合(a)、低い場合(b)の実際の画像の例である。
【
図5】本発明の実施例となる非接触液面計において、画像中における光源の反射像間の距離をs、ヘッド部と液面との間の距離をLとした場合における、s
-1とLの関係を実測した結果である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る非接触液面計の変形例の構造を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る非接触液面計の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る非接触液面計について説明する。
図1は、この液面計(非接触液面計)1が容器100内の液体200に対して適用される際の形態を示す透視斜視図である。この液面計1は、測定対象となる液体200が収容された容器100の上部に蓋として設置されるヘッド部10を具備する。容器100における液体200が存在する部分は、中心軸を鉛直方向とする略円筒形状とされる。なお、後述するように、蓋とは別にヘッド部10が設けられていてもよい。
【0013】
ヘッド部10には、液体200の表面を照明光で照射する光源(点光源)として、3つの光ファイバー(照射用光ファイバー11A~11C)が設けられる。また、これにより照射された液体200の表面をヘッド10側から撮像するための結像レンズ(結像部)12と、その結像面(焦点面)を入射側の端面とする光ファイバー束13が設けられる。結像レンズ12、光ファイバー束13の水平方向における外径は容器100の内径よりも小さく、実際にはヘッド部10を容器100の蓋の一部とすることができる。
【0014】
光ファイバー束13は屈曲可能であるが、ヘッド部10の下側においては中心軸に沿って設けられる。照射用光ファイバー11A~11Cも同様に屈曲可能であるが、ヘッド部10の下側においては、鉛直方向からみて中心軸(光ファイバー束13)の周りの角度差を120°として、周方向で等間隔に設けられる。このため、平面視において、照射用光ファイバー11A~11Cの下端(出射側の端部)は、結像レンズ12を中心とした正三角形の頂点に位置する。照射用光ファイバー11A~11C、結像レンズ12、光ファイバー束13は、容器100の蓋としての機能をもつヘッド部本体10A中に固定される。ヘッド部本体10Aは、例えば容器100の上端部側と螺合されることによって、容器100の上側を封止する。
【0015】
照射用光ファイバー11A~11Cの入射側(上側)の端部には、照射光を発するLEDを具備する光源ユニット20が接続され、この照射光が同時にこれらに入射して液体200の表面に照射される。この際、照射用光ファイバー11A~11Cの径は液体200の表面の大きさ(容器100内部の大きさ)よりも充分に小さいため、照射用光ファイバー11A~11Cの出射側(下側)の端部をそれぞれ点光源とみなすことができる。また、照射用光ファイバー11A~11Cの出射側の端部は、同一の高さとなるように設定される。光源ユニット20(LED)が発する照明光の波長は、液体200の表面におけるその反射光が認識しやすい可視光の波長に設定される。
【0016】
結像レンズ12は、その上にある光ファイバー束13の入射側(下端)の端面を焦点面とする単焦点レンズである。光ファイバー束13は、例えば12μmΦのガラスファイバーが多数(例えば5×104)束ねられて構成され、単体のガラスファイバーを単一の画素に対応させた撮像をすることができる。このため、光ファイバー束13の出射側の端面をカメラ(撮像部)30で撮像すれば、照射用光ファイバー11A~11Cが発した照明光で照射された液体200の表面を画像として認識することができる。この画像には、液体200の表面と、これに反射された照射用光ファイバー11A~11Cの下端(3つの点光源)の反射像が含まれる。
【0017】
このようにカメラ30で得られた画像より液体200の高さ(あるいはヘッド部10と液体200の液面までの距離)を認識するコンピュータ40が、カメラ30に接続されている。コンピュータ40においては、カメラ30で得られた画像中における3つの点光源の反射像を適正に認識するための画像処理を行う画像処理部41と、これによって画像中におけるこの3つの反射像の位置、間隔等を認識することによって、3つの点光源が発した光の反射面としての液面200の表面とヘッド部10との間の距離を算出する解析部42が設けられる。この際、この画像や算出されたこの距離等を表示させるディスプレイである表示部43も設けられる。なお、コンピュータ40は、実際には通常のパーソナルコンピュータ等を用いて実現することができ、これを操作するための他の構成要素(キーボード等)も設けられるが、その記載は
図1では省略されている。
【0018】
図2は、ヘッド部10と容器100内の液体200との間の関係をより詳細に示す鉛直方向(中心軸C)に沿った断面図である。なお、
図1の配置においては、中心軸C(光ファイバー束13)と照射用光ファイバー11A、11Bは実際には同一の鉛直面上には存在しないが、ここでは便宜上これらが同一の鉛直面内にあるように記載されている。
【0019】
ここで、左側の照射用光ファイバー11A、右側の照射用光ファイバー11Bの下端はそれぞれ点光源(光源)11A1、11B1とみなされ、ここから照明光は発散光として発せられ、その一部が液体200の表面で反射し、結像レンズ12を介して光ファイバー束13の下側の端面となる焦点面FPに達する。この際の照射用光ファイバー11A、照射用光ファイバー11Bから発せられた照明光の経路は、LA、LBとなる。ここで、経路LAの液体200の表面における鉛直方向を基準とした入射角をθ
1、出射角をθ
2とすると、θ
1=θ
2となる。同様に、経路LBの液体200の表面における入射角をθ
3、出射角をθ
4とすると、θ
3=θ
4となり、
図2において照射用光ファイバー11Aと照射用光ファイバー11Bの位置が中心軸Cに対して対称ならばこれらはθ
1(θ
2)と等しい。また、前記のθ
1等をθとすると、結像レンズ(結像部)12への経路LA、LBの中心軸Cからみた入射角もθとなる。
【0020】
図3は、
図2の状態において液体200の表面(液面)の高さが異なる2種類の状況と、この場合における前記の反射点の像(反射像)を含む画像をその上側において模式的に示す。
図3(a)においては液体200の表面がヘッド部10から近い場合(液面が高い場合)、
図3(b)においては液体200の表面がヘッド部10から遠い場合(液面が低い場合)が、それぞれ示されている。
【0021】
図3(a)(b)においては、結像レンズ12によって得られる画像の画角はFV1とFV2の間の範囲で共通とされ、この範囲内を撮像した画像が光ファイバー束13の入射側(下側)の端面となる焦点面FPに結像される。この画像は、点光源(光源)11A1、11B1で照射された液体200の表面の画像である。この画角範囲に入る液体200の表面の実際の範囲は、
図3(a)のように液面が高い場合には狭く、
図3(b)のように液面が低い場合には広くなる。一方、経路LA、LBの液体200の表面における反射点RA、RBの水平方向の位置は、
図2におけるθ
1~θ
4が全て等しくなるという条件があるため、それぞれ中心軸Cと照射用光ファイバー11A、11Bの中間付近となり、この状況は液体200の表面の高さには依存しない。このため、
図3(a)と
図3(b)では、反射点RA、RBの水平方向における実際の位置は、変わらない。
【0022】
このため、照射用光ファイバー11Cによる反射点も含めると、
図3(a)(b)において得られる画像中における、各反射点に対応した反射像11A2、11B2、11C2は、光ファイバー束13の出射側の端面の画像13A中において、
図3(a)(b)の上側に示されるような位置関係となって現れる。照射用光ファイバー11A~11Cが前記のように正三角形を構成するように配置されれば、反射像11A2、11B2、11C2もこの画像中で正三角形を構成するが、その大きさが
図3(a)と
図3(b)では大きく異なる。解析部42は、この正三角形の1辺の長さ(反射点の間隔)をこの大きさの指標とすることができる。すなわち、画像中における隣接する2つの反射像の間隔により、液面の高さを算出することができる。
【0023】
上記の測定における測定精度について説明する。上記の測定原理においては、液面の高さに応じた
図2における反射光の入射角θの変化が検知される。この際、
図2における照射用光ファイバー11A、11B間の水平方向における間隔(実際には正三角形の1辺の長さ)をdとし、結像レンズ12と液面までの間隔をLとすると、粗い近似ではθ(rad)~d/L程度となる。dは一定であるため、θの変化δθとLの変化δLの関係は、δθ~d・δL/L
2となる。ここで、Lを100cm程度としてδL/L~10
-2の精度とした場合、δL≦1cmとなる。ヘッド部10(容器100の蓋)において実際に設定可能な値として、例えばd=26mm、θ=0.1radとし、結像レンズ12の焦点距離fを20mmとすると、δθ~10
-3となり、このδθに対応する焦点面FPにおける反射像11A2、11B2間の距離の変化δxは、δx~f・δθ=20μm程度となる。前記のようにこの画像の取得のために光ファイバー束13を用いた場合、画素の大きさは光ファイバー束13における光ファイバー単体の径に対応するが、このδxよりも小さな径の光ファイバーを用いた光ファイバー束13は容易に得ることができる。すなわち、上記の構成により、充分な精度で液面の高さを測定することができる。
【0024】
この際、上記の測定は液体200に対しては非接触で行われる。更に、液体200が光で照射される点については特許文献3と同様であるが、この場合には、光としては3つの点光源から発せられた低出力のもののみが用いられるため、これによる熱流入は無視できる程度となる。
【0025】
更に、照明光は測定時(画像の取得時)においてのみオンとすればよく、カメラ14の撮像タイミングと照明光のオンのタイミングを同期させることにより、照明光による熱流入を更に低下させることができる。このためには、例えば光源ユニット20は照明光をパルス状に発する設定とし、コンピュータ40は、この制御とカメラ30の撮像タイミングとを制御する設定とすることが好ましい。この場合、照明光が発せられるタイミングと撮像のタイミングを同期させることによって、照明光の不要な照射を抑制することができる。こうした構成は、ヘッド部10側の構成を前記と同様とし、ヘッド部10外の光源ユニット20、カメラ30、コンピュータ40の構成のみを変えることによって、容易に実現することができる。
【0026】
また、前記の例では、3つの点光源が同時に発光する設定とされたが、このように発光をパルス状とする場合、3つの点光源における発光が順次行われるようにし、各時点においては一つの点光源のみが発光するようにすることができる。これにより、各点光源の反射像を一つずつ確実に認識するようにすることもできる。この場合、例えば、液面に波、泡立ち、迷光等があるような場合において、この発光が持続する時間内における反射像を統計的に認識し、その平均位置を上記の反射像の位置とすることができる。これにより、少なくとも認識された反射像がどの点光源のものであるかについての誤認識は確実に除去され、前記の波等がある場合においても、高精度の測定が可能となる。あるいは、一つの点光源に対する撮像期間中において、より短期間で発光が繰り返される(点滅する)ようにすれば、映像中における反射像をパターン認識により特に容易に認識することもできる。
【0027】
また、照明光用光ファイバー11A~11C、光ファイバー束13は液体200とは直接接さない上に、金属等で構成される電気的な配線とは異なり、これらは一般的には樹脂材料やガラス等の熱伝導率の低い材料で構成されるため、これらを介した容器100内への熱流入も無視できる。また、照明光用光ファイバー11A~11C、光ファイバー束13を用いた場合には、測定に際しての容器100内への通電が全く行われないため、例えば液体200が引火性(可燃性)である場合でも、火花放電等による液体200成分の爆発は発生せず、安全性が確保される。
【0028】
また、
図1の構成要素において、ヘッド部10に直接設けられるのは、照射用光ファイバー11A~11C、光ファイバー束13、結像レンズ12のみであり、他はヘッド部10から離間させて設けることができる。このため、容器100の蓋をヘッド部10とする、あるいは蓋の一部をヘッド部10とすることが容易である、あるいは、ヘッド部10の交換、メインテナンス等も容易である。逆に、蓋とは別に小型のヘッド部10を容器100に設けることも容易である。
【0029】
上記の構成の実施例による結果について説明する。ここでは、照射用光ファイバー11A~11Cとしては1.5mmΦのプラスチックファイバー(商品目:エスカCK60、三菱ケミカル(株))を、光ファイバー束13としては、1.2μmΦのファイバーが5×104束ねられた外径3.2mmΦのもの(商品番号#38-302、Edmund Optics)が用いられた。ヘッド部本体10Aの外径は40mmΦとされ、この中で照射用光ファイバー11A~11Cは、30mmΦの円周上に正三角形で配置された。
【0030】
結像レンズ12としては、f=20mm、10mmΦ、N-BK7製のもの(商品番号#63-473、Edmund Optics)が用いられた。光源ユニット20としては、波長532nmのLED(RX-7G、(株)サクラクレパス)が、カメラ14としては2592×2048画素の1インチCMOSセンサを用いたもの(HAS-U2、DITECT社)が用いられた。
【0031】
また、容器100としては、容量10Lのクライオスタット(DC-10、(株)クライオワン社)、が用いられ、液体200としては、液体窒素(-196℃)が用いられた。
【0032】
図4は、ヘッド部10と液面までの距離Lを120mm(a)、210mm(b)とした場合においてカメラ30によって得られた実際の画像である。ここでは、3つの点光源を同時に発光させた場合における光ファイバー束13の出射側の端面が撮像されている。どちらにおいても、正三角形を形成する3つの反射像が、光ファイバー束13の出射側の円形の端面中において、矢印で示されるように認識でき、Lが小さな(液面が高い)場合(a)においてこの正三角形が大きく、Lが大きな(液面が低い)場合(b)においてこの正三角形が小さくなっている。液面の傾斜等によって反射像の位置自身は中心からずれ、特にLが大きくθが小さな場合(b)にはこの影響が大きくなっているが、この場合でも正三角形の形自身は保たれている。
【0033】
このような画像中における反射像の間隔(正三角形の1辺の長さ)をsとし、1/sのL依存性を測定した結果を、
図5に示す。これらは良好な直線関係にあり、その回帰式は以下のとおりとなる。
【0034】
【0035】
解析部42は、周知のパターン認識手法により画像中において3つの反射像を認識してその間隔sを認識し、この式より、ヘッド部10を基準とした液面の高さLを算出することができる。前記の回帰式は単純であり、かつ実測値との間の誤差は小さいため、Lを高精度で算出することができる。上記の回帰式は上記の条件に対応したものであるが、実際にはこの回帰式はヘッド部10における幾何学的構成に応じて定まる。
【0036】
液面の傾斜(振動)、泡等の影響によりこの正三角形の形状が歪んで認識された場合には、例えば3つの辺の長さの平均値をその代表値として用いることができる。逆に、この歪によって液面の傾斜等を認識し、これを考慮した補正を行ってより測定精度を高めることができる。あるいは、実際には容器100内の液体200の収容量に時間変化がないと考えられる場合には、これらの値の時間平均を採用することによって、精度を高めることもできる。また、迷光や容器100の底面からの反射も上記の反射像の認識に影響を及ぼすが、周知の画像処理技術(例えばコントラスト調整やエッジ強調等)によって、画像処理部41は、反射像を認識しやすくするような処理を適宜施すことができる。なお、前記のように各点光源からの発光をパルス状とすることにより、画像中の反射像の認識をより正確に行うことができる。
【0037】
上記の例においては、照明光の光源(点光源)として3つの照射用光ファイバーが用いられたが、
図3の構成より、中心軸(結像部)を中心として対称な構成の2つの点光源を用いてもよいことは明らかである。逆に、中心軸(結像部)を中心として対称な位置に配置された4つ以上の点光源を用いてもよい。この場合、点光源は正方形(4つの場合)、正5角形(5つの場合)等の頂点に配置される。これらの場合には、各辺の平均値を前記のsの代わりに用いることもできる。ただし、装置構成を単純化するためにはこの数は少ないことが好ましい。一方、この数が2つである場合には、反射像の歪から液面の傾斜等を認識することは困難であるため、3つ以上の点光源を用いることが好ましい。更に、隣接する点光源の反射像の間隔を適正に評価することができ、この距離と液面の高さとの間の関係が明確である限りにおいて、複数の点光源が中心軸の周りで対称である必要はない。ただし、上記のように、構成を簡易としつつ正確な測定も容易であるため、正三角形を構成する3つの点光源を用いた上記の構成が最も好ましい。
【0038】
また、上記の例では、照明光を発する点光源として、光ファイバーではなく他の光源(LED等)を用いることもできる。ただし、光ファイバーを用いた場合には、
図1に示されるように、ヘッド部10側には光ファイバーのみを固定し、離間させて設けられた光源ユニット20をこの光ファイバーで連結することが容易であり、ヘッド部10の構成を単純化することができる。前記のように、液体の種類に応じて照明光の波長を設定することが好ましいが、この場合には、同一のヘッド部を用いて光源ユニットのみを変えることによって、この調整を行うこともできる。なお、ここで、点光源とは、Lが測定される範囲内において常に液面を照射でき、かつ画像中における反射像の位置を容易に認識できるような光源であることを意味し、厳密に点状の光源である必要はない。
【0039】
更に、光源として屈曲自在の光ファイバー(照射用光ファイバー)を用いた場合には、ヘッド部を容器に固定してから照射用光ファイバーの位置を適正に設定することも可能となる。これにより、ヘッド部の容器への装着を特に容易とすることができる。
図6は、このような前記のヘッド部10の変形例となるヘッド部110の構造を示す断面図(
図2に対応)であり、
図7は、これに対応した平面図である。
図6においては、
図2の場合と同様に、便宜上照射用光ファイバー11A、11Bが同一の鉛直面内にあるように記載されている。
【0040】
ここでは、特に照射用光ファイバーの下端側が装着後に容器100内で展開可能とされる。
図6(a)、
図7(a)においては、この展開前(ヘッド部110の容器100への装着直後)の状態が示されている。照射用光ファイバー11A~11Cは、ヘッド部本体10A中に形成された、これを上下方向で貫通する小さな孔部(照射用光ファイバー貫通孔14)内を通過する。
図2の例では照射用光ファイバー11A~11Cの下端は結像レンズ12と同一の高さとされたが、ここでは、これらの下端は結像レンズ12よりも下側に位置する。照射用光ファイバー貫通孔14は、光ファイバー束13(中心軸)の近くに形成される。
【0041】
その後、
図6(b)、
図7(b)に示されるように、容器100の内部において、照射用光ファイバー11A~11Cが屈曲し、その下端(点光源11A1~11C1)が
図2と同様に位置となり正三角形を構成するように展開される。図示は省略されているが、ヘッド部110には、各照射用光ファイバーをこのように展開するためのガイドとなる構造(支持部材や溝構造等)を適宜設けることにより、点光源11A1~11C1の位置を正確に定めることができる。これにより、その後に前記と同様の測定を行うことができる。
【0042】
前記のような液面の高さの測定を高精度に行うためには、点光源11A1~11C1の間隔(正三角形の一辺の長さ)が一定以上あることが要求される。これに対して、
図2のようにヘッド部10の装着時において各点光源がヘッド部本体10Aの端部近くにある場合には、装着が容易ではない場合がある。これに対して、このヘッド部110の場合には、ヘッド部110を装着する状態(
図6(a)、
図7(b))では照射用光ファイバー11A~11Cの下端は中心軸付近に位置し、かつこの場合におけるこれらの下端の位置精度は重要ではないため、ヘッド部110の装着は容易である。一方、その後に容器100内で照射用光ファイバー11A~11Cを展開することにより点光源11A1~11C1の位置が
図7(b)に示されるようにすれば、その後に前記のヘッド部10を用いた場合と同様の測定が可能である。すなわち、このヘッド部110を用いれば、前記のヘッド部10を用いた場合と同様の測定が可能であり、かつその装着が容易である。あるいは、前記のガイドを、点光源11A1~11C1の位置が、
図7(b)における点線矢印に沿って移動可能なように形成することにより、これらの位置を調整可能とすることもできる。この際、点光源11A1~11C1の高さを調整可能とすることもできる。
【0043】
なお、画像を得るために、光ファイバー束13を介する必要はなく、例えば光ファイバー束の代わりに小型の撮像素子を焦点面に設けてもよい。ただし、この場合には撮像素子を駆動する駆動回路、その電源、あるいはこれらの接続部分もヘッド部に設けることが必要となるため、ヘッド部の構造が複雑となる。このため、光ファイバー束をヘッド部に設ける上記の構成が特に好ましい。あるいは、点光源としてのLED等や撮像素子をヘッド部に設けた場合には、容器内に通電が行われることになるため、容器内に通電が全く行われないような、点光源としての照射用光ファイバー、撮像のための光ファイバー束を用いた上記の構成が特に好ましい。
【0044】
また、前記のように、測定対象となる液体が収容される容器の蓋自身として上記のヘッド部を特定の容器に適合させて形成する必要はない。特に、前記のヘッド部110のように、点光源の位置を調整可能とした場合には、これを各種の容器に装着できる汎用のものとして用いることができる。
【0045】
なお、前記のように、上記の液面計においては、液面の傾斜がある場合においても、これを考慮した測定が可能である。逆に、前記のような画像解析から、液面(容器)の傾斜を認識することができるため、解析部がこれによって地震の震度等を認識することもできる。あるいは、液面の撮像が行われるため、液面に影響を及ぼすその他の各種の状況を解析部が認識することができる。すなわち、液面の計測だけでなく、解析部は、この液体の各種の状態(例えば色彩の変化等)のモニターをすることもできる。
【0046】
また、上記の実施例では液体窒素の液面が測定されたが、表面での反射光が認識できる限りにおいて、他の液体(低温の液体、水等の常温の液体を含む)に対しても同様の測定をすることができることは明らかである。いずれの場合でも、上記のヘッド部を小型化することは容易であり、この小型のヘッド部を用いて、この容器内の液体の液面の高さを非接触で容易に測定することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 液面計(非接触液面計)
10、110 ヘッド部
10A ヘッド部本体
11A~11C 照射用光ファイバー
11A1、11B1、11C1 点光源(光源)
11A2、11B2、11C2 反射像
12 結像レンズ(結像部)
13 光ファイバー束
13A 光ファイバー束の出射側の端面の画像
14 照射用光ファイバー貫通孔
20 光源ユニット
30 カメラ(撮像部)
40 コンピュータ
41 画像処理部
42 解析部
43 表示部
100 容器
200 液体
C 中心軸
FP 焦点面
RA、RB 反射点