(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168934
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ブレーキ負圧制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20241128BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20241128BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20241128BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20241128BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20241128BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60T17/00 C
B60K6/46 ZHV
B60W10/30 900
B60W20/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086004
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久々江 勇斗
【テーマコード(参考)】
3D049
3D202
【Fターム(参考)】
3D049CC02
3D049HH08
3D049KK09
3D049QQ04
3D049RR04
3D202AA07
3D202BB11
3D202BB43
3D202DD00
3D202DD01
3D202DD06
(57)【要約】
【課題】NVH性能が低下することを抑制することができるブレーキ負圧制御装置を提供すること。
【解決手段】ブレーキブースタの負圧室内の負圧が所定負圧よりも低くなると、MG1を駆動させることによってエンジンのクランクシャフトを回転させて負圧室内の負圧を回復させる制御部を備え、制御部は、車両から車室内に伝わっている音の大きさが大きくなるに連れて高くなるように所定負圧を設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンと連動するモータと、
ブレーキ装置と、
前記ブレーキ装置による制動力を前記エンジンの吸気負圧によって増強させるブレーキブースタと、とを有する車両に設けられ、
前記ブレーキブースタの負圧室内の負圧が所定負圧よりも低くなると、前記モータを駆動させることによって前記エンジンを回転させて前記負圧室内の負圧を回復させる制御部を備えたブレーキ負圧制御装置であって、
前記制御部は、前記車両から車室内に伝わっている音の大きさが大きくなるに連れて高くなるように前記所定負圧を設定することを特徴とするブレーキ負圧制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、車速が高くなるに連れて高くなるように前記所定負圧を設定することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ負圧制御装置。
【請求項3】
前記車両には、車室内に空気を送り出す空調ファンが設けられ、
前記制御部は、前記空調ファンの出力が高くなるに連れて高くなるように前記所定負圧を設定することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ負圧制御装置。
【請求項4】
前記車両には、雨量を検出する雨量センサが設けられ、
前記制御部は、前記雨量センサによって検出された雨量が多くなるに連れて高くなるように前記所定負圧を設定することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ負圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ負圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキブースタに蓄えている負圧が下限閾値を下回ったときに、モータリング用電動機により内燃機関を回転させるモータリングを行い、ブレーキブースタに蓄えている負圧が下限閾値よりも高い上限閾値以上に回復するまでそのモータリングを継続する技術が特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の技術は、モータリングによる騒音によって、NVH性能が低下してしまうといった課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、NVH性能が低下することを抑制することができるブレーキ負圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るブレーキ負圧制御装置は、エンジンと、前記エンジンと連動するモータと、ブレーキ装置と、前記ブレーキ装置による制動力を前記エンジンの吸気負圧によって増強させるブレーキブースタと、とを有する車両に設けられ、前記ブレーキブースタの負圧室内の負圧が所定負圧よりも低くなると、前記モータを駆動させることによって前記エンジンを回転させて前記負圧室内の負圧を回復させる制御部を備えたブレーキ負圧制御装置であって、前記制御部は、前記車両から車室内に伝わっている音の大きさが大きくなるに連れて高くなるように前記所定負圧を設定する構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、NVH性能が低下することを抑制することができるブレーキ負圧制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係るブレーキ負圧制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係るブレーキ負圧制御装置の負圧閾値マップを示す概念図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係るブレーキ負圧制御装置の負圧確保動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係るブレーキ負圧制御装置は、エンジンと、エンジンと連動するモータと、ブレーキ装置と、ブレーキ装置による制動力をエンジンの吸気負圧によって増強させるブレーキブースタと、とを有する車両に設けられ、ブレーキブースタの負圧室内の負圧が所定負圧よりも低くなると、モータを駆動させることによってエンジンを回転させて負圧室内の負圧を回復させる制御部を備えたブレーキ負圧制御装置であって、制御部は、車両から車室内に伝わっている音の大きさが大きくなるに連れて高くなるように所定負圧を設定することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るブレーキ負圧制御装置は、NVH性能が低下することを抑制することができる。
【実施例0010】
以下、本発明の実施例に係るブレーキ負圧制御装置を搭載した車両について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、バッテリ3と、第1モータ4(以下、「MG1」ともいう)と、第1インバータ5と、第2モータ6(以下、「MG2」ともいう)と、第2インバータ7と、昇圧コンバータ8と、駆動輪9と、エアーコンディショナ(以下、「A/C」ともいう)10と、ブレーキ装置11と、ブレーキブースタ12と、ハイブリッドコントローラ(以下、単に「HCU」と記す)13と、を含んで構成されている。
【0012】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行うことによって、動力を生成する。
【0013】
バッテリ3は、充電可能な二次電池によって構成され、例えば、48Vの出力電圧を発生させることができるリチウムイオン電池からなる。バッテリ3は、MG1及びMG2によって発電された電力を蓄積し、MG1及びMG2を駆動させる電力を供給する。
【0014】
MG1は、エンジン2のクランクシャフトと連動するように設けられている。MG1は、第1インバータ5及び昇圧コンバータ8を介してバッテリ3に接続されている。MG1は、バッテリ3から電力が供給されることにより回転することでエンジン2のクランクシャフトを回転させる電動機の機能と、エンジン2が生成した動力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0015】
MG2は、ギア機構等の動力伝達部材を介して駆動輪9と連動するように設けられている。MG2は、第2インバータ7及び昇圧コンバータ8を介してバッテリ3に接続されている。
【0016】
MG2は、バッテリ3及びMG1から電力が供給されることにより回転することで駆動輪9を回転させる電動機の機能と、駆動輪9の回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0017】
昇圧コンバータ8は、バッテリ3と第1インバータ5及び第2インバータ7との間に設けられ、バッテリ3から第1インバータ5及び第2インバータ7に供給される電力の電圧を昇圧し、第1インバータ5及び第2インバータ7からバッテリ3に供給される電力の電圧を降圧する。
【0018】
A/C10は、バッテリ3から供給される電力によって作動し、車室内の温度を調整する。A/C10には、A/C10から車室内に空気を送り出す空調ファン15が設けられている。
【0019】
ブレーキ装置11は、ブレーキペダル16に与えられた操作力に応じた制動力を駆動輪9などの車輪に与える。ブレーキ装置11は、ブレーキ11aと、ブレーキ11aを作動させる油圧回路11bとを含んで構成される。本実施例におけるブレーキ11aは、ディスクブレーキによって構成される。
【0020】
ブレーキブースタ12は、ブレーキペダル16の操作力を増強する。ブレーキブースタ12によって増強されたブレーキペダル16の操作力は、油圧回路11bによって更に増強されてブレーキ11aに伝達される。
【0021】
ブレーキブースタ12には、負圧を蓄える負圧室12aと、大気圧が加わる大気圧室12bとが形成されている。ブレーキブースタ12は、負圧室12a内の圧力と大気圧室12b内の圧力との差圧によってブレーキペダル16に与えられた操作力を増強する。
【0022】
負圧室12aは、逆止弁17を介してエンジン2の吸気通路に連通している。逆止弁17は、エンジン2の吸気通路から負圧室12aに空気が流れることを阻止し、負圧室12aからエンジン2の吸気通路に空気が流れることを許容するように設けられている。
【0023】
負圧室12aと大気圧室12bとは、ブレーキペダル16が操作されている状態(以下、単に「操作状態」ともいう)で遮断され、ブレーキペダル16が操作されていない状態(以下、単に「非操作状態」ともいう)で連通する。
【0024】
大気圧室12bは、ブレーキペダル16が操作状態になると大気を取り込むことができる状態になり、ブレーキペダル16が非操作状態になると大気を取り込むことができない状態となる。
【0025】
ブレーキペダル16が非操作状態から操作状態になると、大気圧室12bの容積が増加し、負圧室12aの容積が減少する。このため、ブレーキペダル16が非操作状態から操作状態になると、負圧室12aの負圧が低下する。なお、本発明において、負圧が低下することは圧力が高くなることを意味し、逆に、負圧が高くなることは圧力が低下することを意味する。
【0026】
ブレーキペダル16が操作状態から非操作状態になると、負圧室12aと大気圧室12bとが連通するため、大気圧室12b内の空気が負圧室12a内に流入する。これにより、大気圧室12bと負圧室12aとの容積は、ブレーキペダル16が非操作状態であったときの元の容積に戻るが、負圧室12aの負圧が低下する。
【0027】
ブレーキペダル16が非操作状態から操作状態になったことにより低下した負圧室12aの負圧と、ブレーキペダル16が操作状態から非操作状態になったことにより低下した負圧室12aの負圧とは、エンジン2の吸気負圧によって回復する。
【0028】
HCU13は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0029】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをHCU13として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、このコンピュータユニットは、本実施例におけるHCU13として機能する。
【0030】
HCU13の入力ポートには、車速を検出する車速センサ21と、雨量を検出する雨量センサ22と、負圧室12aの負圧を検出する負圧センサ23と、を含む各種センサ類が接続されている。
【0031】
HCU13の出力ポートには、第1インバータ5と、第2インバータ7と、昇圧コンバータ8と、A/C10と、を含む各種制御対象類が接続されている。HCU13は、入力ポートに接続された各種センサ類から得られる情報に基づき、出力ポートに接続された各種制御対象類を制御する。
【0032】
本実施例において、HCU13は、負圧センサ23によって検出された負圧が所定負圧よりも低くなると、第1インバータ5を制御してMG1を駆動させることによってエンジン2のクランクシャフトを回転させて負圧室12a内の負圧を回復させる制御部30としての機能を有する。
【0033】
HCU13は、車両1から車室内に伝わっている音の大きさが大きくなるに連れて高くなるように所定負圧を設定する。車両1から車室内に伝わる音には、例えば、走行風による風切り音及びロードノイズ、空調ファン15による風切り音、並びに、天井から伝わる雨音が含まれる。
【0034】
本実施例において、HCU13は、車速センサ21によって検出された車速が高くなるに連れて高くなるように所定負圧を設定する。また、HCU13は、空調ファン15の出力(以下、「空調ファン出力」ともいう)が高くなるに連れて高くなるように所定負圧を設定する。また、HCU13は、雨量センサ22によって検出された雨量が多くなるに連れて高くなるように所定負圧を設定する。
【0035】
例えば、
図2に示すように、HCU13のROMには、車速と、空調ファン出力と、雨量とに対して、所定負圧が対応付けられた4次元の負圧閾値マップが格納されている。HCU13は、負圧閾値マップを参照して所定負圧を設定する。
【0036】
以上のように構成されたHCU13の負圧確保動作について
図3を参照して説明する。なお、以下に説明する負圧確保動作は、エンジン2が停止してからエンジン2を始動するまでの間、繰り返し実行される。
【0037】
まず、S1において、HCU13は、負圧閾値マップを参照し、所定負圧を設定する。S1の処理を実行した後、HCU13は、S2の処理を実行する。S2において、HCU13は、負圧センサ23によって検出された負圧(以下、「ブレーキ負圧」ともいう)が所定負圧より低いか否かを判断する。
【0038】
S2において、ブレーキ負圧が所定負圧より低くないと判断した場合には、HCU13は、負圧確保動作を終了する。S2において、ブレーキ負圧が所定負圧より低いと判断した場合には、HCU13は、S3の処理を実行する。
【0039】
S3において、HCU13は、第1インバータ5を制御してMG1の駆動を開始することによってエンジン2のクランクシャフトを回転させて負圧室12a内の負圧を回復させる。S3の処理を実行した後、HCU13は、負圧確保動作を終了する。
【0040】
以上のように、本実施例に係るブレーキ負圧制御装置は、車両1から車室内に伝わっている音の大きさが大きくなるに連れて高くなるように所定負圧を設定することによって、車両1から車室内に伝わっている音の大きさが大きいときにMG1が駆動されやすくする。
【0041】
これにより、本実施例に係るブレーキ負圧制御装置は、MG1を駆動することで生じる作動音を車室内に伝わっている音でマスクさせることができる状態で、MG1を駆動するため、MG1を駆動することで生じる作動音によってNVH性能が低下することを抑制することができる。
【0042】
また、本実施例に係るブレーキ負圧制御装置は、車両1から車室内に伝わっている音の大きさが大きいときにMG1が駆動されやすくすることによって、車両1から車室内に伝わっている音の大きさが小さいときにMG1が駆動される頻度を低くするため、MG1を駆動することで生じる作動音によってNVH性能が低下することを抑制することができる。
【0043】
なお、本実施例では、負圧閾値マップによって、車速と、空調ファン出力と、雨量とに対して、所定負圧が対応付けられている例について説明した。これに対し、負圧閾値マップによって、車速と、空調ファン出力と、雨量とのいずれか1つに対して、所定負圧が対応付けられていてもよい。また、負圧閾値マップによって、車速と、空調ファン出力と、雨量とのいずれか2つに対して、所定負圧が対応付けられていてもよい。
【0044】
また、本実施例では、本発明に係るブレーキ負圧制御装置をエンジン2が発電用に設けられた車両1に搭載した例について説明した。これに対し、本発明に係るブレーキ負圧制御装置は、車両1と異なる構成の車両であっても、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路を切断した状態でモータによってエンジンのクランクシャフトを回転させることができる車両であれば搭載することができる。
【0045】
以上、本発明の実施例について開示したが、本発明の範囲を逸脱することなく本実施例に変更を加えられ得ることは明白である。本発明の実施例は、このような変更が加えられた等価物が特許請求の範囲に記載された発明に含まれることを前提として開示されている。