(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168937
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】連結部材、バンドおよび時計
(51)【国際特許分類】
A44C 5/00 20060101AFI20241128BHJP
A44C 5/14 20060101ALI20241128BHJP
A44C 5/18 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A44C5/00 E
A44C5/14 B
A44C5/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086011
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【弁理士】
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 善弘
(72)【発明者】
【氏名】天野 正男
(57)【要約】
【課題】 耐食性を高めて、腐食を防ぐことができる連結部材、それを備えたバンド、およびそのバンドを備えた時計を提供する。
【解決手段】 筒状部材15と、この筒状部材15の少なくとも一端部に挿入される連結部である連結ピン16と、筒状部材15内に配置され、連結ピン16を筒状部材15の外部に向けて付勢するばね部材17と、を備え、ばね部材17が耐食性材料によって形成されている。従って、ばね部材17の耐食性を高めることができ、これによりばね部材17の腐食を良好に防ぐことができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材と、
前記筒状部材の少なくとも一端部に挿入される連結部と、
前記筒状部材内に配置され、前記連結部を前記筒状部材の外部に向けて付勢するばね部材と、
を備え、
前記ばね部材は耐食性材料によって形成されている、ことを特徴とする連結部材。
【請求項2】
請求項1に記載の連結部材において、
引張強さ、耐力、および硬度の少なくとも何れかは、前記連結部と前記筒状部材とが同じであり、前記ばね部材は前記連結部および前記筒状部材より小さい、または大きい方から前記連結部、前記ばね部材、前記筒状部材の順である
ことを特徴とする連結部材。
【請求項3】
請求項1に記載の連結部材において、
熱伝導率および伸びの少なくとも何れかは、前記連結部と前記筒状部材とが同じであり、前記ばね部材は前記連結部および前記筒状部材より大きい、または大きい方から前記筒状部材、前記ばね部材、前記連結部の順である
ことを特徴とする連結部材。
【請求項4】
請求項1に記載の連結部材において、
前記ばね部材は、ばね性を有するチタン合金によって形成されている
ことを特徴とする連結部材。
【請求項5】
請求項1または請求項4に記載の連結部材において、
前記ばね部材は、結晶構造が体心立方構造のチタン合金によって形成されている
ことを特徴とする連結部材。
【請求項6】
請求項1に記載の連結部材において、
前記筒状部材の前記一端部には、前記連結部が挿入されており、
前記筒状部材の他端部には、連結突起部が設けられている
ことを特徴とする連結部材。
【請求項7】
請求項6に記載の連結部材において、
前記筒状部材の前記他端部側には、前記連結突起部を識別する目印が設けられている
ことを特徴とする連結部材。
【請求項8】
請求項6に記載の連結部材において、
前記連結突起部が設けられた前記筒状部材と前記連結部とは、強度の高いチタン合金によって形成されている
ことを特徴とする連結部材。
【請求項9】
請求項1に記載の連結部材において、
前記筒状部材の両端部には、前記連結部が挿入されている
ことを特徴とする連結部材。
【請求項10】
請求項9に記載の連結部材において、
前記筒状部材は、純度の高い純チタンによって形成されており、
前記連結部は、強度の高いチタン合金によって形成されている
ことを特徴とする連結部材。
【請求項11】
請求項1に記載された連結部材を備えていることを特徴とするバンド。
【請求項12】
請求項11に記載されたバンドを備えていることを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計、洋服、鞄、バッグなどに用いられる連結部材、それを備えたバンド、およびそのバンドを備えた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計においては、特許文献1に記載されているように、腕時計ケースの12時側と6時側とにそれぞれ設けられたバンド取付部にバンドをばね棒と称する連結部材によって取り付けるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
このような腕時計に用いられる連結部材は、パイプ部の両端部に連結ピンを挿入させると共に、パイプ部の内部にコイル状のばね部材を配置し、このばね部材のばね力によって連結ピンをパイプ部の外部に向けて付勢するように構成されている。このような連結部材のばね部材は、腕時計に組み込まれた磁気センサに影響を与えないように、非磁性材料であるコバルト・ニッケル合金で形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような腕時計に用いられている連結部材では、ばね部材が非磁性材料としてコバルト・ニッケル合金で形成されているため、腕時計を海中などで使用する際に、ばね部材が海水などによって腐食しやすいという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、耐食性を高めて、腐食を防ぐことができる連結部材、それを備えたバンド、およびそのバンドを備えた時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、筒状部材と、前記筒状部材の少なくとも一端部に挿入される連結部と、前記筒状部材内に配置され、前記連結部を前記筒状部材の外部に向けて付勢するばね部材と、を備え、前記ばね部材は耐食性材料によって形成されている、ことを特徴とする連結部材である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ばね部材の耐食性を高めることができ、これによりばね部材の腐食を良好に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明を適用した腕時計の第1実施形態を示した斜視図である。
【
図2】
図1に示された腕時計における12時側の第1バンド本体を示した拡大正面図である。
【
図3】
図2に示された第1バンド本体に取り付けられた連結部材のA-A矢視における拡大断面図である。
【
図4】この発明を適用した腕時計の第2実施形態において、第1バンド本体に取り付けられた連結部材の拡大断面図である。
【
図5】この発明を適用した腕時計の変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図3を参照して、この発明を適用した腕時計の第1実施形態について説明する。
この腕時計は、
図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の2時側、3時側、4時側、8時側、および10時側には、スイッチ部2がそれぞれ設けられている。
【0011】
この腕時計ケース1の12時側と6時側との箇所には、
図1に示すように、バンド3が取り付けられるバンド取付部4がそれぞれ設けられている。この場合、バンド3は、12時側のバンド取付部4に取り付けられる第1バンド本体5と、6時側のバンド取付部4に取り付けられる第2バンド本体6と、を備えている。これら第1バンド本体5と第2バンド本体6とのそれぞれは、合成皮革やウレタン樹脂などの合成樹脂によって形成されている。
【0012】
12時側のバンド取付部4における第1バンド本体5の長手方向と直交する短手方向の中間部には、
図1に示すように、取付突起部4aが設けられている。この12時側の取付突起部4aは、腕時計ケース1から突出する突出長さが第1バンド本体5の短手方向の両側に位置する各取付側部4bの突出長さよりも長く形成されている。
【0013】
同様に、6時側のバンド取付部4における第2バンド本体6の長手方向と直交する短手方向の中間部には、
図1に示すように、取付突起部4aが設けられている。この6時側の取付突起部4aは、腕時計ケース1から突出する突出長さが第2バンド本体6の短手方向の両側に位置する各取付側部4bの突出長さよりも長く形成されている。
【0014】
12時側の第1バンド本体5の一端部5a、つまり12時側のバンド取付部4に取り付けられる第1バンド本体5の一端部5aには、
図1および
図2に示すように、12時側のバンド取付部4の取付突起部4aが挿入して配置される取付凹部7が設けられている。これにより、12時側の第1バンド本体5は、その一端部5aの取付凹部7にバンド取付部4の取付突起部4aが挿入されて配置された状態で、ねじ部材9によってバンド取付部4に取り付けられる。すなわち、12時側の第1バンド本体5は、取付凹部7の両側に位置する各バンド側部7aが12時側のバンド取付部4の取付突起部4aにねじ部材9によって取り付けられる。
【0015】
同様に、6時側の第2バンド本体6の一端部6a、つまり6時側のバンド取付部4に取り付けられる第2バンド本体6の一端部6aには、
図1に示すように、6時側のバンド取付部4の取付突起部4aが挿入して配置される取付凹部8が設けられている。これにより、6時側の第2バンド本体6は、一端部6aの取付凹部8にバンド取付部4の取付突起部4aが挿入されて配置された状態で、ねじ部材9によってバンド取付部4に取り付けられる。すなわち、6時側の第2バンド本体6は、取付凹部8の両側に位置する各バンド側部8aが6時側のバンド取付部4の取付突起部4aにねじ部材9によって取り付けられる。
【0016】
この場合、ねじ部材9は、図示ないが、雄ねじ部を有する第1ねじ部と、雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有する第2ねじ部とを有している。これにより、12時側のねじ部材9は、
図1に示すように、第1ねじ部が12時側の第1バンド本体5の取付凹部7における両側のバンド側部7aの一方から12時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入され、第2ねじ部が12時側の第1バンド本体5の取付凹部7における両側のバンド側部7aの他方から12時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入されるように構成されている。
【0017】
また、この12時側のねじ部材9は、
図1に示すように、第1ねじ部の雄ねじ部と第2ねじ部の雌ねじ部とが12時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入された状態で、第1ねじ部の雄ねじ部が第2ねじ部の雌ねじ部に螺合するように構成されている。これにより、12時側のねじ部材9は、12時側の第1バンド本体5の取付凹部7の両側に位置するバンド側部7aを腕時計ケース1の12時側のバンド取付部4の取付突起部4aに取り付ける。
【0018】
同様に、6時側のねじ部材9は、
図1に示すように、第1ねじ部が6時側の第2バンド本体6の取付凹部8における両側のバンド側部8aの一方から6時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入され、第2ねじ部が6時側の第2バンド本体6の取付凹部8における両側のバンド側部8aの他方から6時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入されるように構成されている。
【0019】
また、この6時側のねじ部材9は、
図1に示すように、第1ねじ部の雄ねじ部と第2ねじ部の雌ねじ部とが6時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入された状態で、第1ねじ部の雄ねじ部が第2ねじ部の雌ねじ部に螺合するように構成されている。これにより、6時側のねじ部材9は、6時側の第2バンド本体6の取付凹部8の両側に位置するバンド側部8aを腕時計ケース1の6時側のバンド取付部4の取付突起部4aに取り付ける。
【0020】
ところで、12時側の第1バンド本体5の他端部5b、つまり取付凹部7が設けられた12時側の第1バンド本体5の一端部5aと反対側に位置する他端部5bには、
図1および
図2に示すように、尾錠10と遊環11とが取り付けられている。尾錠10は、12時側の第1バンド本体5の他端部5bと、6時側の第2バンド本体6の他端部6b側と、を連結する金具である。
【0021】
すなわち、この尾錠10は、
図2に示すように、12時側の第1バンド本体5の他端部5bにばね棒と称する連結部材12によって取り付けられる尾錠本体13と、連結部材12に取り付けられる係止ピン14と、を備えている。尾錠本体13は、6時側の第2バンド本体6の他端部6bが12時側の第1バンド本体5の他端部5bに重なって挿入する金具である。この尾錠本体13は、棒状部材の両側部を同じ方向に向けてコ字形状に折り曲げたものであり、錠本体部13aとその両側の各錠側部13bとを備えている。
【0022】
この尾錠本体13は、
図2および
図3に示すように、両側の各錠側部13bが12時側の第1バンド本体5の他端部5bにおける短手方向の両端に連結部材12によって取り付けられるように構成されている。すなわち、この尾錠本体13は、両側の各錠側部13bが第1バンド本体5の他端部5bに配置されるように構成されている。この場合、尾錠本体13の両側の各錠側部13bには、連結部材12の後述する連結ピン16のピン部16bと連結突起部18とが挿入する錠取付孔13cがそれぞれ設けられている。
【0023】
これにより、尾錠本体13は、
図2および
図3に示すように、両側の各錠側部13bが12時側の第1バンド本体5の他端部5bに配置された状態で、第1バンド本体5の他端部5bに取り付けられた連結部材12の連結ピン16のピン部16bと連結突起部18とが尾錠本体13の両側の各錠側部13bに設けられた各錠取付孔13cにそれぞれ挿入されて、第1バンド本体5の他端部5bに取り付けられるように構成されている。
【0024】
係止ピン14は、
図2に示すように、2本のピン錠部14aを連結片14bでほぼH字状に連結させたものである。これら2本のピン錠部14aは、
図1および
図2に示すように、腕時計ケース1の6時側の第2バンド本体6に2列で設けられた複数のバンド孔6cのうち、第2バンド本体6の短手方向のいずれか2つのバンド孔6cに挿入するように構成されている。
【0025】
これにより、係止ピン14は、
図2および
図3に示すように、2本のピン錠部14aの各一端部である各先端部14cと反対側の2本のピン錠部14aの他端部に設けられた各錠取付輪部14dが連結部材12の後述する筒状部材15に取り付けられた状態で、2本のピン錠部14aの各先端部14cが尾錠本体13の錠本体部13aに当接して係止されるように構成されている。この場合、ピン錠部14aの他端部の錠取付輪部14dは、
図3に示すように、連結部材12の筒状部材15が挿入するリング状に形成されている。
【0026】
これにより、尾錠10は、
図1および
図2に示すように、腕時計ケース1の6時側の第2バンド本体6の他端部6bが尾錠本体13の枠状内に挿入され、この状態で係止ピン14の2本のピン錠部14aが6時側の第2バンド本体6に設けられた複数のバンド孔6cのうちの第2バンド本体6の短手方向のいずれか2つのバンド孔6cに挿入された際に、腕時計ケース1の12時側の第1バンド本体5の他端部5b側と6時側の第2バンド本体6の他端部6b側とを重ね合わせて連結するように構成されている。
【0027】
一方、遊環11は、
図2に示すように、腕時計ケース1の6時側の第2バンド本体6の他端部6bのふら付きなどの遊びを防ぐものであり、12時側の第1バンド本体5にその長手方向に沿って移動可能に取り付けられている。この遊環11は、腕時計ケース1の6時側の第2バンド本体6の他端部6bが尾錠10によって12時側の第1バンド本体5の他端部5bに重なり合って取り付けられた際に、6時側の第2バンド本体6の他端部6bが挿入するように構成されている。
【0028】
ところで、連結部材12は、
図3に示すように、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに第1バンド本体5の短手方向に沿って取り付けられる筒状部材15と、この筒状部材15の一端部に挿入される連結部である連結ピン16と、筒状部材15内に配置されて連結ピン16を筒状部材15の外部に向けて付勢するばね部材17と、を備えている。筒状部材15は、第1バンド本体5の他端部5bに第1バンド本体5の短手方向に沿って設けられた筒取付孔5cに挿入されて取り付けられる。
【0029】
この筒状部材15は、
図3に示すように、丸棒状の筒本体部15aを備えている。この筒本体部15aの一端部側には、連結ピン16およびばね部材17を収容する収容穴15bが軸方向に沿って設けられている。すなわち、この収容穴15bは、筒本体部15aの一端部から軸方向の中間部に亘って設けられている。これにより、収容穴15bは、筒本体部15aの軸方向の長さの半分程度の長さで形成されている。また、この筒本体部15aの他端部には、ピン状の連結突起部18が一体に設けられている。
【0030】
連結ピン16は、
図3に示すように、筒状部材15の筒本体部15aの収容穴15b内にスライド可能に挿入するスライド部16aと、このスライド部16aの一端部に設けられて筒本体部15aの外部に出没可能に突出するピン部16bと、を備えている。スライド部16aは、その外径が収容穴15bの内径とほぼ同じ大きさに形成され、軸方向の長さが収容穴15bの内径の長さよりも少し短い長さで形成されている。
【0031】
ピン部16bは、
図3に示すように、その外径が筒状部材15の外径の半分程度の大きさで、軸方向の長さがスライド部16aの軸方向の長さよりも長く、筒状部材15の外径の長さとほぼ同じ長さで形成されている。この場合、筒本体部15aの一端部、つまり収容穴15bの開放側に位置する筒本体部15aの端部には、リング状の抜止め部15cがカシメ加工によって収容穴15bの内側に向けて設けられている。
【0032】
これにより、連結ピン16は、
図3に示すように、ピン部16bがばね部材17のばね力によってリング状の抜止め部15c内を通して筒本体部15aの外部に向けて押し出された際に、スライド部16aの外側面が抜止め部15cの内面に当接して、スライド部16aが筒本体部15aの収容穴15bから抜け出さないように構成されている。
【0033】
また、筒本体部15aのピン状の連結突起部18は、
図3に示すように、その外径が連結ピン16のピン部16bの外径と同じ大きさで形成されている。また、このピン状の連結突起部18は、その軸方向の長さが筒本体部15aから突出した連結ピン16のピン部16bの軸方向の長さと同じ長さに形成されている。
【0034】
この場合、筒本体部15aの他端部の外周面には、
図3に示すように、ピン状の連結突起部18を識別する目印19が設けられている。この目印19は、V字状の溝であり、筒本体部15aの外周に沿って環状に設けられている。また、この目印19は、第1バンド本体5の他端部5bに設けられた筒取付孔5cに筒本体部15aが挿入された状態で、第1バンド本体5の他端部5bに尾錠本体13が筒状部材15によって取り付けられた際に、外部から見えないように隠される。
【0035】
ばね部材17は、
図3に示すように、コイルばねであり、外径が筒状部材15の筒本体部15a内に設けられた収容穴15bの内径とほぼ同じ大きさに形成されている。また、このばね部材17は、自由状態のときに、軸方向の長さが収容穴15bの軸方向の長さと同じか、それよりも長く形成されている。これにより、ばね部材17は、圧縮された状態で収容穴15b内に配置され、この状態でばね部材17のばね力によって連結ピン16のスライド部16aを筒本体部15aの外部に向けて付勢して、ピン部16bを筒本体部15aの外部に押し出す。
【0036】
この場合、ばね部材17は、耐食性材料によって形成されている。すなわち、このばね部材17は、ばね性を有するチタン合金、つまりβ相と呼ばれる結晶構造が体心立方構造のβチタン合金によって形成されている。このβチタン合金は、チタン合金の中で最も強度が高く、耐食性に優れ、かつ加工性にも優れた素材である。この場合、チタンは、素材の表面に酸化チタンの被膜が形成され、この酸化チタンの被膜が強固であることにより、優れた耐食性を発揮する。
【0037】
また、筒本体部15aに連結突起部18が設けられた筒状部材15と連結ピン16とは、強度の高いチタン合金によって形成されている。すなわち、これら筒状部材15と連結ピン16とは、アルミニウム(Al)とバナジウム(V)とがほぼ6対4の比率で含有されたα-βチタン合金(JIS60種)によって形成されている。このα-βチタン合金は、64チタン合金であり、αチタン合金とβチタン合金との両方の特性をもち、特に延性と強度とをバランスよく組み合わせた二相系である。この場合、αチタン合金とは、α相と呼ばれる結晶構造が稠密六方構造のチタン合金である。
【0038】
次に、チタニウムの機械的性質、および物理的性質を見てみる。まず、引張強さ(MPa)は大きい方から順に、α-βチタン合金(64チタン合金、JIS60種)≧895、βチタン合金≧800、純チタン(JIS2種)≧340となる。次に、耐力(MPa)は大きい方から順に、α-βチタン合金(64チタン合金、JIS60種)≧828、βチタン合金≧690、純チタン(JIS2種)≧210となる。次に、硬度(Hv)は大きい方から順に、α-βチタン合金(64チタン合金、JIS60種)≧320、βチタン合金≧270、純チタン(JIS2種)≧130となる。
【0039】
このように、引張強さ(MPa)、耐力(MPa)、硬度(Hv)は何れにおいても大きい方から順に、α-βチタン合金(64チタン合金)、βチタン合金、純チタンとなる。従って、連結ピン16および筒状部材15として64チタン合金を用い、ばね部材17としてβチタン合金を用いた場合、引張強さ(MPa)、耐力(MPa)、硬度(Hv)は、連結ピン16と筒状部材15とが同じであり、ばね部材17が小さい。
【0040】
次に、熱伝導率[W/(m・K)]は大きい方から順に、純チタン(JIS2種)17.0、βチタン合金8.1、α-βチタン合金(64チタン合金、JIS60種)7.5となる。次に、伸び(%)は大きい方から順に、純チタン(JIS2種)≧23、βチタン合金≧12、α-βチタン合金(64チタン合金、JIS60種)≧10となる。
【0041】
このように、熱伝導率[W/(m・K)]、および伸び(%)は何れも大きい方から順に、純チタン、βチタン合金、α-βチタン合金(64チタン合金)となる。従って、ばね材料17としてβチタン合金を用い、連結ピン16および筒状部材15として64チタン合金を用いた場合、熱伝導率[W/(m・K)]、および伸び(%)は、ばね部材17が大きく、連結ピン16と筒状部材15とが同じである。
【0042】
次に、このような腕時計ケース1にバンド3を取り付ける場合について説明する。
この場合には、まず、12時側の第1バンド本体5の他端部5b側に遊環11を挿入させて、第1バンド本体5の他端部5bに尾錠10を連結部材12によって取り付ける。このときには、予め、連結部材12を組み立てる。この連結部材12を組み立てる際には、まず、筒本体部15aの一端部側に設けられた収容穴15b内にコイル状のばね部材17を配置させる。
【0043】
そして、ばね部材17を圧縮させながら連結ピン16のスライド部16aを筒本体部15aの収容穴15b内に挿入させる。この状態で、収容穴15bの開放側に位置する筒本体部15aの一端部をカシメ加工して、筒本体部15aの一端部にリング状の抜止め部15cを設ける。これにより、連結ピン16のスライド部16aがばね部材17のばね力によって抜止め部15cに押し当れて、筒本体部15aの一端部から連結ピン16のピン部16bが押し出される。この状態で、連結部材12が組み立てられる。
【0044】
このように組み立てられた連結部材12によって12時側の第1バンド本体5の他端部5bに尾錠10を取り付ける。このときには、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに第1バンド本体5の短手方向に沿って設けられた筒取付孔5cに連結部材12を取り付けると共に、この連結部材12に尾錠10の係止ピン14を取り付ける。この場合には、予め、
図3に示すように、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに筒取付孔5cを横切って設けられた切欠き部5dに、係止ピン14の2本のピン錠部14aに設けられたリング状の錠取付輪部14dを配置させる。
【0045】
この状態で、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに設けられた筒取付孔5cに連結部材12の筒本体部15aを挿入させる。このときには、12時側の第1バンド本体5の他端部5bの切欠き部5dに配置された係止ピン14の2本のピン錠部14aの各錠取付輪部14dに筒本体部15aを挿入させる。これにより、筒状部材15が12時側の第1バンド本体5の他端部5bに設けられた筒取付孔5cに挿入されると共に、係止ピン14が筒状部材15の筒本体部15aに回転可能な状態で取り付けられる。
【0046】
このときには、筒状部材15の筒本体部15aの一端部から突出した連結ピン16のピン部16bが12時側の第1バンド本体5の他端部5bに設けられた筒取付孔5cの一方から突出して配置される。また、これと同時に、筒状部材15の筒本体部15aの他端部に設けられたピン状の連結突起部18が12時側の第1バンド本体5の他端部5bに設けられた筒取付孔5cの他方から突出して配置される。
【0047】
この状態で、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに尾錠10の尾錠本体13を取り付ける。このときには、まず、
図3に示すように、尾錠本体13の両側の各錠側部13bのうち、一方の錠側部13bに設けられた錠取付孔13cに、12時側の第1バンド本体5の他端部5bの筒取付孔5cの他方から突出した筒本体部15aの他端部の連結突起部18を挿入させる。
【0048】
この状態で、12時側の第1バンド本体5の他端部5bの筒取付孔5cの一方から突出した連結部材12の連結ピン16のピン部16bをばね部材17のばね力に抗して筒本体部15aの収容穴15b内に向けて押し込む。そして、尾錠本体13の両側の各錠側部13bのうち、他方の錠側部13bに設けられた錠取付孔13cに、筒本体部15aの収容穴15b内に向けて押し込まれた連結部材12の連結ピン16のピン部16bを対応させる。
【0049】
すると、連結部材12の連結ピン16のピン部16bが、ばね部材17のばね力によって筒本体部15aの収容穴15b内から外部に向けて押し出される。これにより、押し出された連結ピン16のピン部16bが、
図3に示すように、尾錠本体13の両側の各錠側部13bのうちの他方の錠側部13bに設けられた錠取付孔13cに挿入される。
【0050】
これにより、
図3に示すように、尾錠本体13の一方の錠側部13bの錠取付孔13cに連結部材12のピン状の連結突起部18が挿入し、尾錠本体13の他方の錠側部13bの錠取付孔13cに連結部材12の連結ピン16のピン部16bが挿入する。このため、尾錠本体13が連結部材12によって12時側の第1バンド本体5の他端部5bに取り付けられる。
【0051】
そして、尾錠10および遊環11が取り付けられた12時側の第1バンド本体5を腕時計ケース1の12側のバンド取付部4に取り付ける。このときには、12時側の第1バンド本体5の一端部5aに設けられた取付凹部7を12時側のバンド取付部4の取付突起部4aに対応させて、12時側のバンド取付部4の取付突起部4aを第1バンド本体5の取付凹部7に配置させる。この状態で、ねじ部材9によって第1バンド本体5を12時側のバンド取付部4に取り付ける。
【0052】
このときには、12時側のねじ部材9の第1ねじ部を第1バンド本体5の取付凹部7における両側のバンド側部7aの一方から12時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入させると共に、第2ねじ部を12時側の第1バンド本体5の取付凹部7における両側のバンド側部7aの他方から12時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入させる。
【0053】
そして、12時側のねじ部材9の第1ねじ部の雄ねじ部と第2ねじ部の雌ねじ部とを12時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入させた状態で、第1ねじ部の雄ねじ部を第2ねじ部の雌ねじ部に螺合させる。これにより、12時側のねじ部材9によって、12時側の第1バンド本体5の取付凹部7の両側に位置するバンド側部7aが腕時計ケース1の12時側のバンド取付部4の取付突起部4aに取り付けられる。
【0054】
同様、6時側の第2バンド本体6を腕時計ケース1の6時側のバンド取付部4に取り付ける。このときには、予め、6時側の第2バンド本体6に尾錠10の係止ピン14の2本のピン錠部14aの各先端部14cが挿入するバンド孔6cを第2バンド本体6の長手方向に沿って2列で設ける。そして、6時側の第2バンド本体6の一端部6aに設けられた取付凹部8を6時側のバンド取付部4の取付突起部4aに対応させる。
【0055】
この状態で、6時側のバンド取付部4の取付突起部4aを6時側の第2バンド本体6の取付凹部8に配置させる。そして、6時側の第2バンド本体6を6時側のバンド取付部4にねじ部材9によって取り付ける。このときには、6時側のねじ部材9の第1ねじ部を6時側の第2バンド本体6の取付凹部8における両側のバンド側部8aの一方から6時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入させると共に、第2ねじ部を6時側の第2バンド本体6の取付凹部8における両側のバンド側部8aの他方から6時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入させる。
【0056】
そして、6時側のねじ部材9の第1ねじ部の雄ねじ部と第2ねじ部の雌ねじ部とを6時側のバンド取付部4の取付突起部4a内に挿入させた状態で、第1ねじ部の雄ねじ部を第2ねじ部の雌ねじ部に螺合させる。これにより、6時側のねじ部材9によって、6時側の第2バンド本体6の取付凹部8の両側に位置するバンド側部8aが腕時計ケース1の6時側のバンド取付部4の取付突起部4aに取り付けられる。
【0057】
次に、このような腕時計を使用する場合について説明する。
この場合には、まず、腕時計ケース1をバンド3によって腕に取り付ける。このときには、腕時計ケース1を腕に配置させた状態で、6時側の第2バンド本体6の他端部6bを12時側の第1バンド本体5の他端部5bに取り付けられた尾錠10の尾錠本体13の枠状内に挿入させて、6時側の第2バンド本体6の他端部6b側を12時側の第1バンド本体5の他端部5b側に重ね合わせる。
【0058】
この状態で、6時側の第2バンド本体6の他端部6bを腕時計ケース1の12時側に向けて引っ張り、腕時計ケース1を腕に密着させる。そして、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに設けられた尾錠10の係止ピン14の2本のピン錠部14aの各先端部14cを尾錠本体13の枠状内に挿入された6時側の第2バンド本体6に設けられた複数のバンド孔6cのうち、第2バンド本体6の短手方向におけるいずれか2つのバンド孔6cに挿入させる。
【0059】
そして、6時側の第2バンド本体6の他端部6b側が12時側の第1バンド本体5の他端部5b側に重ね合わされた状態で、尾錠10の係止ピン14の2本のピン錠部14aの各先端部14cを尾錠本体13の錠本体部13aに押し当てる。これにより、6時側の第2バンド本体6の他端部6b側と12時側の第1バンド本体5の他端部5b側とが連結される。この状態で、6時側の第2バンド本体6の他端部6bを12時側の第1バンド本体5に設けられた遊環11に挿入させて、6時側の第2バンド本体6の他端部6bのふら付きなどの遊びを防ぐ。これにより、腕時計ケース1がバンド3によって腕に取り付けられる。
【0060】
このような腕時計では、腕に取り付けられた状態で、海中に潜っても腕時計を良好に使用することができる。すなわち、この腕時計における12時側の第1バンド本体5の他端部5bに尾錠10を取り付ける連結部材12のばね部材17が、耐食性材料によって形成されているため、ばね部材17の耐食性が高く、海水などによるばね部材17の腐食を良好に防ぐことができる。
【0061】
この場合、ばね部材17は、ばね性を有するチタン合金、つまりβ相と呼ばれる結晶構造が体心立方構造のβチタン合金によって形成されていることにより、チタン合金の中で最も強度が高く、耐食性が高められるほか、加工性にも優れている。この場合、チタンは、素材の表面に酸化チタンの被膜が形成され、この酸化チタンの被膜が強固であることにより、優れた耐食性が発揮される。
【0062】
また、この連結部材12は、筒本体部15aに連結突起部18が設けられた筒状部材15と連結ピン16とが、強度の高いチタン合金によって形成されているため、高い強度をもって耐食性が高められる。すなわち、これら筒状部材15と連結ピン16とは、アルミニウム(AI)とバナジウム(V)とがほぼ6対4の比率で含有されたα-βチタン合金(64チタン合金)によって形成されているため、より一層、強度が高められて耐食性も高められる。
【0063】
このように、この腕時計の連結部材12によれば、筒状部材15と、この筒状部材15の少なくとも一端部に挿入される連結部である連結ピン16と、筒状部材15内に配置され、連結ピン16を筒状部材15の外部に向けて付勢するばね部材17と、を備え、ばね部材17が耐食性材料によって形成されていることにより、ばね部材17の耐食性を高めることができ、これによりばね部材17の腐食を確実にかつ良好に防ぐことができる。
【0064】
すなわち、この腕時計の連結部材12では、ばね部材17がばね性を有するチタン合金によって形成されていることにより、ばね部材17にばね性を確実にもたせることができると共に、ばね部材17がチタン合金で形成されていることにより、ばね部材17の耐食性を確実に高めることができ、ばね部材17の腐食を確実に防ぐことができる。この場合、チタンは、素材の表面に酸化チタンの被膜が形成され、この酸化チタンの被膜が強固であることにより、優れた耐食性を発揮できる。
【0065】
また、この腕時計の連結部材12では、結晶構造が体心立方構造のチタン合金によってばね部材17が形成されていることにより、より一層、ばね部材17の耐食性を高めることができると共に、加工性にも優れているので、ばね部材17を容易にかつ良好に製作することができる。
【0066】
また、この腕時計の連結部材12では、筒状部材15の一端部に連結ピン16が挿入されており、筒状部材15の他端部に連結突起部18が設けられていることにより、筒状部材15の一端部に収容穴15bを設け、この収容穴15b内に連結ピン16およびばね部材17を挿入させるだけで良いので、構造が簡単で、部品点数が少なく、容易に製作することができると共に、一端部の連結ピン16を操作するだけで良いので、組立作業の簡素化を図ることができる。
【0067】
この場合、この腕時計の連結部材12では、筒状部材15の他端部側に連結突起部18を識別する目印19が設けられていることにより、可動側の連結ピン16のピン部16bと固定側の連結突起部18とが同じ形状であっても、目印19によっていずれが固定側であるかを容易に見分けることができるので、取付作業性を向上させることができる。また、この目印19は、筒状部材15が第1バンド本体5の他端部5bに設けられた筒取付孔5cに挿入された際に、外部から見えないように隠すことができるので、デザイン的にも好ましいものを得ることができる。
【0068】
また、この腕時計の連結部材12では、筒本体部15aに連結突起部18が設けられた筒状部材15と連結ピン16とが強度の高いチタン合金によって形成されていることにより、耐食性を高めることができるほか、筒状部材15と連結ピン16との強度を高めることができ、筒状部材15と連結ピン16との強度を確保することができる。
【0069】
この場合、この腕時計の連結部材12では、筒本体部15aに連結突起部18が設けられた筒状部材15と連結ピン16とがアルミニウムとバナジウムとをほぼ6対4の比率で含有させたα-βチタン合金(64チタン合金)によって形成されていることにより、αチタン合金とβチタン合金との両方の特性をもち、特に延性と強度とをバランスよく組み合わせることができるので、より一層、強度を高めることができると共に、耐食性をも高めることができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、
図4を参照して、この発明を適用した腕時計の第2実施形態について説明する。なお、
図1~
図3に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この腕時計は、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに取り付けられる連結部材20が第1実施形態の連結部材12と異なる構造であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構造になっている。
【0071】
すなわち、連結部材20は、
図4に示すように、パイプ状に形成された筒状部材21と、この筒状部材21の両端部それぞれに挿入される連結部である連結ピン16と、筒状部材21内に配置されて両端部の連結ピン16を筒状部材21の両側から外部に向けて付勢するばね部材22と、を備えている。
【0072】
この場合、筒状部材は、
図4に示すように、円筒状に形成された筒本体部21aを備えており、この筒本体部21aの両端部には、第1実施形態と同様、抜止め部21bがそれぞれ設けられている。これにより、連結部材20は、筒本体部21aの内部に配置されたばね部材22のばね力によって、筒本体部21aの両端部に挿入された連結ピン16がそれぞれ外部に向けて押し出される方向に付勢されても、筒本体部21aの両端部に設けられた抜止め部21bによって筒本体部21aの両端部から各連結ピン16が抜け出さないように構成されている。
【0073】
ばね部材22は、
図4に示すように、その外径が筒本体部21aの内径とほぼ同じ大きさで形成されている。また、このばね部材22は、自由状態のときに、軸方向の長さが筒本体部21aの軸方向の長さと同じか、それよりも長く形成されている。これにより、ばね部材22は、筒本体部21a内に配置される際に、圧縮された状態で配置されることにより、ばね部材22のばね力によって両側の連結ピン16を外部に向けて押し出す方向に付勢する。
【0074】
ところで、連結部材20のばね部材22は、第1実施形態と同様、耐食性材料によって形成されている。すなわち、このばね部材22は、ばね性を有するチタン合金、つまりβ相と呼ばれる結晶構造が体心立方構造のβチタン合金によって形成されている。これにより、このばね部材22は、チタン合金の中で最も強度が高く、耐食性が高められるほか、加工性にも優れている。この場合にも、チタンは、素材の表面に酸化チタンの被膜が形成され、この酸化チタンの被膜が強固であることにより、優れた耐食性が発揮される。
【0075】
また、連結ピン16は、第1実施形態と同様、強度の高いチタン合金によって形成されているため、高い強度をもって耐食性が高められる。すなわち、連結ピン16は、アルミニウム(AI)とバナジウム(V)とがほぼ6対4の比率で含有されたα-βチタン合金(64チタン合金)によって形成されているため、αチタン合金とβチタン合金との両方の特性をもち、特に延性と強度とがバランスよく組み合わせされ、より一層、強度が高められて耐食性も高められる。
【0076】
一方、筒状部材21は、純度の高いチタン、つまり純チタン(JIS2種)によって形成されている。この純チタンは、α相単一のものであり、α相と呼ばれる結晶構造が稠密六方構造である。このような純チタンによって形成された筒状部材21は、安価で、高い強度をもって耐食性が高められる。
【0077】
従って、連結ピン16として64チタン合金を用い、ばね部材22としてβチタン合金を用い、筒状部材21として純チタンを用いた場合、引張強さ(MPa)、耐力(MPa)、硬度(Hv)は、大きい方から、連結ピン16、ばね部材22、筒状部材21の順である。また、熱伝導率[W/(m・K)]、および伸び(%)は何れも大きい方から順に、筒状部材21、ばね部材22、連結ピン16となる。
【0078】
次に、このような腕時計ケース1にバンド3を取り付ける場合について説明する。
この場合には、第1実施形態と同様、12時側の第1バンド本体5の他端部5b側に遊環11を挿入させて、第1バンド本体5の他端部5bに尾錠10を連結部材20によって取り付ける。このときには、予め、連結部材20を組み立てる。この連結部材20を組み立てる際には、まず、筒状部材21の筒本体部21a内にコイル状のばね部材22を配置させる。
【0079】
そして、ばね部材22を圧縮させながら2つの連結ピン16の各スライド部16aを筒本体部21aの両端部に挿入させる。この状態で、筒本体部21aの開放された両端部をカシメ加工して、筒本体部21aの両端部にリング状の抜止め部21bを設ける。これにより、2つの連結ピン16の各スライド部16aがばね部材22のばね力によって筒本体部21aの両端部の各抜止め部21bにそれぞれ押し当てられて、筒本体部21aの両端部から各連結ピン16の各ピン部16bが押し出される。この状態で、連結部材20が組み立てられる。
【0080】
このように組み立てられた連結部材20によって12時側の第1バンド本体5の他端部5bに尾錠10を取り付ける。このときには、第1実施形態と同様、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに第1バンド本体5の短手方向に沿って設けられた筒取付孔5cに連結部材20を取り付けると共に、この連結部材20に尾錠10の係止ピン14を取り付ける。この場合にも、予め、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに筒取付孔5cを横切って設けられた切欠き部5dに、係止ピン14の2本のピン錠部14aに設けられたリング状の各錠取付輪部14dをそれぞれ配置させる。
【0081】
この状態で、第1実施形態と同様、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに設けられた筒取付孔5cに連結部材20の筒本体部21aを挿入させる。このときには、係止ピン14の2本のピン錠部14aの各錠取付輪部14dに筒本体部21aを挿入させる。これにより、筒状部材21が12時側の第1バンド本体5の他端部5bに設けられた筒取付孔5cに挿入されると共に、係止ピン14が筒状部材21の筒本体部21aに回転可能な状態で取り付けられる。
【0082】
このときには、筒本体部21aの両端部から突出した各連結ピン16の各ピン部16bが12時側の第1バンド本体5の他端部5bに設けられた筒取付孔5cの両側から突出して配置される。この状態で、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに尾錠10の尾錠本体13を取り付ける。このときには、12時側の第1バンド本体5の他端部5bの筒取付孔5cの両側から突出した連結部材20の各連結ピン16の各ピン部16bをばね部材22のばね力に抗して筒本体部21a内に向けて押し込む。
【0083】
この状態で、尾錠本体13の両側の各錠側部13bに設けられた錠取付孔13cに、筒本体部21a内に向けて押し込まれた連結部材20の各連結ピン16の各ピン部16bを対応させる。すると、連結部材20の各連結ピン16の各ピン部16bが、ばね部材22のばね力によって筒本体部21a内から外部に向けて押し出される。これにより、押し出された各連結ピン16の各ピン部16bが、尾錠本体13の両側の各錠側部13bにそれぞれ設けられた各錠取付孔13cに挿入される。
【0084】
このため、尾錠本体13が連結部材20各連結ピン16によって12時側の第1バンド本体5の他端部5bに取り付けられる。そして、尾錠10および遊環11が取り付けられた12時側の第1バンド本体5を腕時計ケース1の12側のバンド取付部4に、第1実施形態と同様に、取り付ける。同様に、6時側のバンド本体6を腕時計ケース1の6時側のバンド取付部4に、第1実施形態と同様に、取り付ける。このように腕時計ケース1にバンド3が取り付けられた腕時計は、第1実施形態と同様に、使用することができる。
【0085】
このように、この腕時計の連結部材20によれば、筒状部材21と、この筒状部材21の両端部にそれぞれ挿入される連結部である連結ピン16と、筒状部材21内に配置され、両端部の各連結ピン16を筒状部材21の外部に向けて付勢するばね部材22と、を備え、ばね部材22が耐食性材料によって形成されていることにより、第1実施形態と同様、ばね部材22の耐食性を高めることができ、ばね部材22の腐食を良好に防ぐことができる。
【0086】
すなわち、この腕時計の連結部材20では、ばね部材22がばね性を有するチタン合金によって形成されていることにより、第1実施形態と同様、ばね部材22にばね性を確実にもたせることができると共に、ばね部材22がチタン合金で形成されていることにより、ばね部材22の耐食性を確実に高めることができ、ばね部材22の腐食を確実に防ぐことができる。この場合にも、チタンは、素材の表面に酸化チタンの被膜が形成され、この酸化チタンの被膜が強固であることにより、優れた耐食性を発揮できる。
【0087】
また、この腕時計の連結部材20では、結晶構造が体心立方構造のチタン合金によってばね部材22が形成されていることにより、第1実施形態と同様、より一層、ばね部材22の耐食性を高めることができると共に、加工性にも優れているので、ばね部材22を容易にかつ良好に製作することができる。この場合、ばね部材22は、軸方向の長さが筒状部材21の軸方向の長さと同じか、それよりも長い長さで形成されているので、軸方向の長さが短い場合に比べて、設計が容易にでき、製作が容易にできる。
【0088】
また、この腕時計の連結部材20では、筒状部材21の両端部に連結ピン16がそれぞれ挿入されていることにより、筒状部材21の両端部に挿入される各連結ピン16における部品の共通化を図ることができ、これにより構造の簡素化を図ることができると共に、組立作業の簡素化を図ることができる。
【0089】
また、この腕時計の連結部材20では、筒状部材21が純度の高いチタン、つまり純チタンによって形成されていることにより、高い強度をもって耐食性を高めることができる。すなわち、筒状部材21は、純度の高いチタン、つまりα相単一のものであり、α相と呼ばれる結晶構造が稠密六方構造の純チタンによって形成されていることにより、筒状部材21が安価で、筒状部材21の強度が高く、かつ筒状部材21の耐食性を高めることができる。
【0090】
さらに、この腕時計の連結部材20では、連結ピン16が強度の高いチタン合金によって形成されていることにより、第1実施形態と同様、耐食性を高めることができるほか、連結ピン16の強度を高めることができ、これにより連結ピン16の強度を確保することができる。
【0091】
この場合にも、この腕時計の連結部材20では、連結ピン16がアルミニウムとバナジウムとをほぼ6対4の比率で含有させたα-βチタン合金(64チタン合金)によって形成されていることにより、第1実施形態と同様、αチタン合金とβチタン合金との両方の特性をもち、特に延性と強度とをバランスよく組み合わせることができ、これにより、より一層、強度を高めることができると共に、耐食性をも高めることができる。
【0092】
なお、上述した第1実施形態および第2実施形態では、12時側の第1バンド本体5の他端部5bに尾錠10を連結部材12、20によって取り付ける場合について述べたが、この発明は、これに限らず、12時側の第1バンド本体5を腕時計ケース1の12時側のバンド取付部4に取り付ける12時側のねじ部材9、または6時側の第2バンド本体6を腕時計ケース1の6時側のバンド取付部4に取り付ける6時側のねじ部材9に替えて、第1実施形態の連結部材12または第2実施形態の連結部材20を用いても良い。
【0093】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態では、第1バンド本体5と第2バンド本体6とが合成皮革やウレタン樹脂などの合成樹脂で形成されている場合について述べたが、この発明は、これに限らず、
図5に示す変形例のよう第1バンド本体25と第2バンド本体26とを金属で形成したバンド24であっても良い。
【0094】
この変形例では、
図5に示すように、第1バンド本体25と第2バンド本体26とが、金属製の複数のバンド駒27を第1実施形態の連結部材12または第2実施形態の連結部材20によって順次連結した構造になっている。この変形例においても、第1バンド本体25の端部と第2バンド本体26の端部とを連結する連結金具28を第1実施形態の連結部材12または第2実施形態の連結部材20によって第1バンド本体25と第2バンド本体26とに取り付けても良い。
【0095】
また、この変形例においても、12時側の第1バンド本体25を腕時計ケース1の12時側のバンド取付部4に取り付ける12時側のねじ部材9、または6時側の第2バンド本体26を腕時計ケース1の6時側のバンド取付部4に取り付ける6時側のねじ部材9に替えて、第1実施形態の連結部材12または第2実施形態の連結部材20を用いても良い。
【0096】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態では、尾錠10の係止ピン14が2本のピン錠部14aを備え、第2バンド本体6に2本のピン錠部14aが挿入する複数のバンド孔6cを長手方向に沿って2列で設けた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば尾錠10の係止ピンが1本のピン錠部を備え、第2バンド本体6に1本のピン錠部が挿入する複数のバンド孔6cを長手方向に沿って1列で設けた構造であっても良い。
【0097】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態では、第1実施形態の筒状部材15の外形または第2実施形態の筒状部材21の外形が円形状に形成されている場合について述べたが、この発明は、必ずしも円形状である必要はなく、四角形、五角形、六角形などの多角形状に形成されていても良い。
【0098】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態では、ばね部材17、22としてβチタン合金によって形成されている場合について述べたが、この発明は、これに限らず、耐食性に優れた材料であれば良く、金、白金、クロムなどで形成されていても良い。
【0099】
さらに、上述した第1実施形態、第2実施形態、およびその変形例では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は必ずしも腕時計である必要はなく、例えば洋服、鞄、バッグなどに用いられるバンドにも適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 腕時計ケース
2 スイッチ部
3、24 バンド
4 バンド取付部
4a 取付突起部
4b 取付側部
5、25 第1バンド本体
5a、6a 一端部
5b、6b 他端部
5c 筒取付孔
5d 切欠き部
6、26 第2バンド本体
6c バンド孔
7、8 取付凹部
7a、8a バンド側部
9 ねじ部材
10 尾錠
11 遊環
12、20 連結部材
13 尾錠本体
13a 錠本体部
13b 錠側部
13c 錠取付孔
14 係止ピン
14a ピン錠部
14b 連結片
14c 先端部
14d 錠取付輪部
15、21 筒状部材
15a、21a 筒本体部
15b 収容穴
15c、21b 抜止め部
16 連結ピン
16a スライド部
16b ピン部
17、22 ばね部材
18 連結突起部
19 目印
27 バンド駒
28 連結金具