(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168939
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】アクアポニックスシステム
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20241128BHJP
A01K 61/10 20170101ALI20241128BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
A01K63/04 F
A01K61/10
A01G31/00 601A
A01G31/00 601B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086014
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】岡村 信弥
【テーマコード(参考)】
2B104
2B314
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CA07
2B104EA01
2B104EF01
2B314MA17
2B314MA52
2B314MA62
(57)【要約】
【課題】飼育水に含まれる硝酸等の濃度を適切に管理することが可能なアクアポニックスシステムを提供する。
【解決手段】飼育水Wによって魚F21を養殖すると共に、当該飼育水Wに含まれるアンモニアを酸化させることで硝酸等を含む飼育水Wを生成して植物Pに供給するアクアポニックスエリア20と、アクアポニックスエリア20において、飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度に関する濃度情報を取得するセンサ40と、飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を調整可能な調整エリア30と、アクアポニックスエリア20及び調整エリア30を接続する接続経路と、センサ40によって測定された濃度情報に基づいて、接続経路における飼育水Wの流通可否を切り替える制御装置50と、を具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼育水によって魚を養殖すると共に、当該飼育水に含まれるアンモニアを酸化させることで窒素化合物を含む飼育水を生成して植物に供給する第1エリアと、
前記第1エリアにおいて、飼育水に含まれる前記窒素化合物の濃度に関する濃度情報を取得する取得部と、
飼育水に含まれる前記窒素化合物の濃度を調整可能な調整部と、
前記第1エリア及び前記調整部を接続する接続経路と、
前記取得部によって取得された濃度情報に基づいて、前記接続経路における飼育水の流通可否を切り替える切替部と、
を具備する、
アクアポニックスシステム。
【請求項2】
前記取得部は、
前記濃度情報として、前記窒素化合物の濃度を取得するものであり、
前記切替部は、
前記取得部の取得結果が前記規定値を超える場合に、前記接続経路における飼育水の流通を許可することによって、飼育水に含まれる前記窒素化合物の濃度を低下させる、
請求項1に記載のアクアポニックスシステム。
【請求項3】
前記第1エリアは、
飼育水によって魚を養殖する第1養殖槽、及び前記第1養殖槽から排出される飼育水に含まれるアンモニアを酸化させることで生成された前記窒素化合物を含む飼育水によって植物を栽培する栽培槽を具備し、
前記接続経路は、
前記栽培槽から前記調整部へ飼育水を流通可能に前記栽培槽と前記調整部とを接続する第1経路、及び前記調整部から前記第1養殖槽へ飼育水を流通可能に前記調整部と前記第1養殖槽とを接続する第2経路を含む、
請求項2に記載のアクアポニックスシステム。
【請求項4】
前記取得部は、
前記濃度情報として、前記窒素化合物の濃度を取得するものであり、
前記切替部は、
前記取得部の取得結果が前記規定値未満の場合に、前記接続経路における飼育水の流通を許可することによって、飼育水に含まれる前記窒素化合物の濃度を上昇させる、
請求項1に記載のアクアポニックスシステム。
【請求項5】
前記調整部は、
飼育水によって魚を養殖すると共に、当該飼育水に含まれるアンモニアを酸化させることで窒素化合物を含む飼育水を生成可能な第2エリアを具備する、
請求項4に記載のアクアポニックスシステム。
【請求項6】
前記第1エリアは、
飼育水によって魚を養殖する第1養殖槽、及び前記第1養殖槽から排出される飼育水に含まれるアンモニアを酸化させることで生成された前記窒素化合物を含む飼育水によって植物を栽培する栽培槽を具備し、
前記第2エリアは、
飼育水によって魚を養殖する第2養殖槽、及び前記第2養殖槽から排出された飼育水に含まれるアンモニアを酸化させる硝化槽を具備し、
前記接続経路は、
前記硝化槽から前記栽培槽へ飼育水を流通可能に前記硝化槽と前記栽培槽とを接続する第3経路を含む、
請求項5に記載のアクアポニックスシステム。
【請求項7】
前記第1エリアは、
前記第1養殖槽と前記栽培槽との間を飼育水が流通する経路に設けられ、飼育水を貯留可能な貯留部をさらに具備する、
請求項6に記載のアクアポニックスシステム。
【請求項8】
前記接続経路は、
前記栽培槽から前記第2養殖槽へ飼育水を流通可能に、前記栽培槽と前記第2養殖槽とを接続する第4経路をさらに含む、
請求項6又は請求項7に記載のアクアポニックスシステム。
【請求項9】
前記第2エリアは、
前記硝化槽から排出された飼育水に含まれる硝酸を脱窒する脱窒槽をさらに具備し、
前記接続経路は、
前記栽培槽から前記脱窒槽へ飼育水を流通可能に前記栽培槽と前記脱窒槽とを接続する第1経路、及び前記脱窒槽から前記第1養殖槽へ飼育水を流通可能に前記脱窒槽と前記第1養殖槽とを接続する第2経路を含み、
前記切替部は、
前記取得部の取得結果が前記規定値を超える場合に、前記第1経路及び前記第2経路における飼育水の流通を許可する、
請求項6又は請求項7に記載のアクアポニックスシステム。
【請求項10】
前記第2養殖槽では、
稚魚が養殖される、
請求項9に記載のアクアポニックスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の養殖と植物の栽培とを組み合わせたアクアポニックスシステムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚の養殖と植物の栽培とを組み合わせたアクアポニックスシステムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のアクアポニックスシステムは、魚を育成する飼育水槽、植物を栽培する植物容器、及び飼育水槽から植物容器に原水を送るポンプを具備する。前記ポンプにより飼育水槽から植物容器に送られた原水は、植物容器内の濾床で浄化される。これによって魚の排泄物等が分解され、植物の栄養素を含む処理水が植物容器で生成される。例えば、硝酸、亜硝酸等の窒素化合物を含む処理水が生成される。前記アクアポニックスシステムでは、この栄養素を植物が吸収すると共に、処理水が飼育水槽に戻されることで、魚の養殖及び植物の栽培を同時に行うことができる。
【0004】
特許文献1にあるようなアクアポニックスシステムでは、魚及び植物の生育に悪影響が出るのを抑制するために、魚の養殖で生じる窒素化合物(硝酸、亜硝酸等)の発生量と、植物による窒素化合物の吸収量とを釣り合わせる必要がある。しかし、魚や植物の生育状態に応じて前記発生量及び吸収量は変化する。こうして前記発生量等が変化したとしても発生量と吸収量とのバランスを保てるように、飼育水に含まれる窒素化合物の濃度を適切に管理可能な技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、飼育水に含まれる窒素化合物の濃度を適切に管理することが可能なアクアポニックスシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、飼育水によって魚を養殖すると共に、当該飼育水に含まれるアンモニアを酸化させることで窒素化合物を含む飼育水を生成して植物に供給する第1エリアと、前記第1エリアにおいて、飼育水に含まれる前記窒素化合物の濃度に関する濃度情報を取得する取得部と、飼育水に含まれる前記窒素化合物の濃度を調整可能な調整部と、前記第1エリア及び前記調整部を接続する接続経路と、前記取得部によって取得された濃度情報に基づいて、前記接続経路における飼育水の流通可否を切り替える切替部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記取得部は、前記濃度情報として、前記窒素化合物の濃度を取得するものであり、前記切替部は、前記取得部の取得結果が前記規定値を超える場合に、前記接続経路における飼育水の流通を許可することによって、飼育水に含まれる前記窒素化合物の濃度を低下させるものである。
【0010】
請求項3においては、前記第1エリアは、飼育水によって魚を養殖する第1養殖槽、及び前記第1養殖槽から排出される飼育水に含まれるアンモニアを酸化させることで生成された前記窒素化合物を含む飼育水によって植物を栽培する栽培槽を具備し、前記接続経路は、前記栽培槽から前記調整部へ飼育水を流通可能に前記栽培槽と前記調整部とを接続する第1経路、及び前記調整部から前記第1養殖槽へ飼育水を流通可能に前記調整部と前記第1養殖槽とを接続する第2経路を含むものである。
【0011】
請求項4においては、前記取得部は、前記濃度情報として、前記窒素化合物の濃度を取得するものであり、前記切替部は、前記取得部の取得結果が前記規定値未満の場合に、前記接続経路における飼育水の流通を許可することによって、飼育水に含まれる前記窒素化合物の濃度を上昇させるものである。
【0012】
請求項5においては、前記調整部は、飼育水によって魚を養殖すると共に、当該飼育水に含まれるアンモニアを酸化させることで窒素化合物を含む飼育水を生成可能な第2エリアを具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記第1エリアは、飼育水によって魚を養殖する第1養殖槽、及び前記第1養殖槽から排出される飼育水に含まれるアンモニアを酸化させることで生成された前記窒素化合物を含む飼育水によって植物を栽培する栽培槽を具備し、前記第2エリアは、飼育水によって魚を養殖する第2養殖槽、及び前記第2養殖槽から排出された飼育水に含まれるアンモニアを酸化させる硝化槽を具備し、前記接続経路は、前記硝化槽から前記栽培槽へ飼育水を流通可能に前記硝化槽と前記栽培槽とを接続する第3経路を含むものである。
【0014】
請求項7においては、前記第1エリアは、前記第1養殖槽と前記栽培槽との間を飼育水が流通する経路に設けられ、飼育水を貯留可能な貯留部をさらに具備するものである。
【0015】
請求項8においては、前記接続経路は、前記栽培槽から前記第2養殖槽へ飼育水を流通可能に、前記栽培槽と前記第2養殖槽とを接続する第4経路をさらに含むものである。
【0016】
請求項9においては、前記第2エリアは、前記硝化槽から排出された飼育水に含まれる硝酸を脱窒する脱窒槽をさらに具備し、前記接続経路は、前記栽培槽から前記脱窒槽へ飼育水を流通可能に前記栽培槽と前記脱窒槽とを接続する第1経路、及び前記脱窒槽から前記第1養殖槽へ飼育水を流通可能に前記脱窒槽と前記第1養殖槽とを接続する第2経路を含み、前記切替部は、前記取得部の取得結果が前記規定値を超える場合に、前記第1経路及び前記第2経路における飼育水の流通を許可するものである。
【0017】
請求項10においては、前記第2養殖槽では、稚魚が養殖されるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、濃度情報に応じて飼育水に含まれる窒素酸化物の濃度を適宜調整することができるため、飼育水に含まれる窒素化合物の濃度を適切に管理することができる。
【0020】
請求項2においては、取得部の取得結果が規定値を超える場合に、飼育水に含まれる窒素化合物の濃度を低下させることにより、飼育水に含まれる窒素化合物の濃度を適切に管理することができる。
【0021】
請求項3においては、栽培槽から排出される飼育水を調整部に投入し、窒素化合物の濃度を下げてから第1養殖槽へ戻すことができるため、魚の生育に悪影響が出るのを効果的に抑制することができる。
【0022】
請求項4においては、取得部の取得結果が規定値未満の場合に、飼育水に含まれる窒素化合物の濃度を上昇させることにより、飼育水に含まれる窒素化合物の濃度を適切に管理することができる。
【0023】
請求項5においては、魚の養殖を利用して飼育水に含まれる窒素化合物の濃度を上昇させることができる。
【0024】
請求項6においては、第2エリアの硝化槽で生成された窒素化合物を第1エリアに融通し、第2エリアにおける脱窒を第1エリアでの植物の栽培に置き換えることができる。
【0025】
請求項7においては、第1エリアを流通する飼育水が溢れるのを抑制することができる。
【0026】
請求項8においては、第1エリアを流通する窒素化合物の濃度が低い飼育水を第2エリアに融通し、第2エリアの魚を適切に養殖することができる。
【0027】
請求項9においては、第2養殖槽の魚の生育に悪影響が出るのを抑制することができると共に、第1エリアを流通する飼育水が溢れるのを抑制することができる。
【0028】
請求項10においては、脱窒槽を利用して稚魚を適切に養殖しながら、第1エリアを流通する飼育水に含まれる窒素化合物の濃度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアクアポニックスシステムを示す説明図。
【
図2】硝酸濃度の測定結果が規定値を外れていない場合における、飼育水の流通経路を示す説明図。
【
図3】硝酸濃度の測定結果が規定値を超える場合における、飼育水の流通経路を示す説明図。
【
図4】硝酸濃度の測定結果が規定値未満の場合における、飼育水の流通経路を示す説明図。
【
図5】飼育水の流通経路を制御する流通経路制御処理を示すフローチャート。
【
図6】変形例に係るアクアポニックスシステムを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の第一実施形態に係るアクアポニックスシステム10について説明する。アクアポニックスシステム10は、魚F21の養殖及び植物Pの栽培を同時に行うものである。まず、アクアポニックスシステム10の概要について説明する。
【0031】
魚F21を養殖する場合、魚F21の排泄物等に含まれるアンモニアが魚F21にとって有害であるため、魚F21の養殖で使用する水を浄化する必要がある。具体的には前記水に含まれるアンモニアを硝酸や亜硝酸に酸化させ、この硝酸や亜硝酸を脱窒する必要がある。
【0032】
なお本実施形態では、後述するアクアポニックスエリア20及び調整エリア30で魚F21・F31を育てるための水を「飼育水W」と称する。また本実施形態では、飼育水W中のアンモニアを酸化させることによって生成される硝酸や亜硝酸等の窒素化合物を、「硝酸等」と称する。
【0033】
硝酸等は魚F21にとっては弱毒性の物質であるが、植物Pにとっては栄養素となる。アクアポニックスシステム10は、この点に着目し、上述した脱窒を植物Pの栽培に置き換えることで、魚F21の養殖で汚れた飼育水Wを浄化(脱窒)しながら、魚F21の養殖及び植物Pの栽培を同時に行うものである。以下、アクアポニックスシステム10の構成を説明する。
【0034】
図1に示すように、アクアポニックスシステム10は、アクアポニックスエリア20、調整エリア30、センサ40及び制御装置50を具備する。
【0035】
アクアポニックスエリア20は、上述したアクアポニックスシステム10の概要にあるような技術を利用して、魚F21の養殖及び植物Pの栽培を同時に行うための場所である。アクアポニックスエリア20は、第1養殖槽21、第1硝化槽22、栽培槽23及び調整槽24を具備する。
【0036】
第1養殖槽21は、飼育水Wによって魚F21を養殖するためのものである。なお、第1養殖槽21で養殖される魚F21の種類は特に限定されるものではなく、適宜の種類の魚F21を養殖可能である。例えば第1養殖槽21では、チョウザメ等の淡水魚が養殖されてもよいし、トラフグ等の海水魚が養殖されてもよい。こうして第1養殖槽21で消費者ニーズの比較的高い魚を養殖することで、収益性を向上させることができる。
【0037】
第1養殖槽21には、魚F21を育てるのに適した水が、飼育水Wとして貯留される。例えば第1養殖槽21で淡水魚が養殖される場合、第1養殖槽21には、飼育水Wとして井水や水道水等が貯留される。また例えば第1養殖槽21で海水魚が養殖される場合、第1養殖槽21には、飼育水Wとして、天然海水よりも塩分濃度が低い人工海水等が貯留される。なお人工海水等によって海水魚を養殖する場合、ナトリウム、カルシウム及びカリウム等のミネラル成分(対象成分)の濃度管理を行う濃度管理機構を設けることも可能である。
【0038】
第1硝化槽22は、第1養殖槽21で養殖される魚F21の排泄物等に含まれるアンモニアを酸化させるためのものである。第1硝化槽22は、第1配管K21を介して第1養殖槽21と接続される。第1硝化槽22では、硝化細菌の活動により、飼育水Wに含まれるアンモニアを硝酸、亜硝酸等に酸化させることができる。これによって第1硝化槽22では、硝酸等を含む飼育水Wが生成される。
【0039】
栽培槽23は、硝酸等を含む飼育水Wによって植物Pを栽培するためのものである。このように、アクアポニックスエリア20では、魚F21だけではなく、植物Pも飼育水Wで育てるため、魚F21及び植物Pを育てるのに適した水(井水、水道水、人工海水等)が、飼育水Wとして用いられる。栽培槽23では、当該飼育水Wを用いた水耕栽培によって植物Pを栽培することができる。また栽培槽23では、飼育水Wに含まれる硝酸等が植物Pに吸収されることで、飼育水Wの脱窒を行うことができる。栽培槽23は、第2配管K22を介して第1硝化槽22と接続される。
【0040】
なお、栽培槽23で栽培される植物Pは特に限定されるものではないが、水耕栽培に適し、かつ、消費者ニーズが比較的高い植物であることが望ましい。例えば栽培槽23で栽培される植物Pは、葉菜類、ハーブ類、トマト等であることが望ましい。こうした植物Pを栽培することで、収益性を向上させることができる。
【0041】
調整槽24は、アクアポニックスエリア20を流通する飼育水Wの量を調整するためのものである。調整槽24は、飼育水Wを貯留可能に構成される。調整槽24は、第3配管K23を介して栽培槽23と接続される。また調整槽24は、第4配管K24を介して第1養殖槽21と接続される。
【0042】
アクアポニックスエリア20では、所定の送水手段によって飼育水Wを流通させることができる。例えばアクアポニックスエリア20では、ポンプによって飼育水Wを圧送したり、流通経路の上流側で溢れた飼育水Wを下流側へ案内したりすることで、飼育水Wを流通させることができる。
【0043】
上記送水手段により飼育水Wは、
図2に示すように、第1配管K21、第2配管K22、第3配管K23及び第4配管K24を介して、アクアポニックスエリア20内を循環することができる。より詳細には、飼育水Wは、第1養殖槽21、第1硝化槽22、栽培槽23、調整槽24を繰り返し循環することができる。
【0044】
これによって第1養殖槽21の魚F21の排泄物等に含まれるアンモニアを第1硝化槽22で酸化させた(硝酸等を含む)飼育水Wを、栽培槽23に供給することができる。また栽培槽23の植物Pに硝酸等を吸収させ、飼育水Wを浄化することができる。また栽培槽23で浄化された飼育水Wを、調整槽24を介して第1養殖槽21に戻すことができる。
【0045】
ここで、アクアポニックスエリア20で魚F21の養殖及び植物Pの栽培を同時に行う場合、魚F21の養殖による硝酸等の発生量と植物Pの栽培による硝酸等の吸収量とを釣り合わせなければ、魚F21及び植物Pの生育に悪影響が出る可能性がある。
【0046】
具体的には、上述の如く、硝酸等は魚F21にとって弱毒性の物質であるため、例えば硝酸等の発生量が吸収量に対して過剰である場合(硝酸過多の場合)、魚F21の生育に悪影響が出る可能性がある。一方、硝酸等は植物Pにとっての栄養素であるため、例えば硝酸等の発生量が吸収量に対して不足する場合(硝酸不足の場合)、植物Pの生育に悪影響が出る可能性がある。したがってアクアポニックスエリア20では、硝酸等の発生量と吸収量とを釣り合わせる必要がある。
【0047】
しかしながら、硝酸等の発生量は魚F21の生育状況によって変化する。また硝酸等の吸収量は、植物Pの生育状況によって変化する。例えば、植物Pが十分に生育して収穫されると、硝酸等の吸収量が低下する。
【0048】
こうした生育状況を考慮して硝酸等の発生量と吸収量とのバランスを保てるように、飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を手動で調整するためには、知識や経験が必要となる。このため、経験の浅い作業者等では前記濃度を適切に管理できない可能性がある。そこで本実施形態では、
図1に示す調整エリア30、センサ40及び制御装置50によって前記濃度を自動的に調整し、前記濃度を適切に管理可能に構成される。以下、具体的に説明する。
【0049】
調整エリア30は、飼育水Wの硝酸等の濃度を調整するための場所である。本実施形態の調整エリア30は、陸上に設けられた設備で魚F31を養殖する陸上養殖により、前記濃度を調整することができる。調整エリア30は、第2養殖槽31、第2硝化槽32及び脱窒槽33を具備する。
【0050】
第2養殖槽31は、飼育水Wによって魚F31を養殖するためのものである。第2養殖槽31には、飼育水Wが貯留される。本実施形態の第2養殖槽31では、第1養殖槽21の魚F21の稚魚(魚F31)が養殖される。
【0051】
第2硝化槽32は、第2養殖槽31で養殖される魚F31の排泄物等に含まれるアンモニアを酸化させるためのものである。第2硝化槽32は、第5配管K25を介して第2養殖槽31と接続される。第2硝化槽32では、硝化細菌の活動により、飼育水Wに含まれるアンモニアを硝酸、亜硝酸等に酸化させることができる。これによって第2硝化槽32では、硝酸等を含む飼育水Wが生成される。
【0052】
脱窒槽33は、第2硝化槽32から排出された飼育水Wに含まれる硝酸等を脱窒するためのものである。脱窒槽33では、脱窒細菌の活動により、飼育水Wに含まれる硝酸等を窒素にする(脱窒する)ことができる。調整エリア30では、当該脱窒槽33により、アクアポニックスエリア20よりも安定して、硝酸等を除去することができる。脱窒槽33は、第6配管K26を介して第2硝化槽32と接続される。また脱窒槽33は、第7配管K27を介して第2養殖槽31と接続される。
【0053】
調整エリア30では、アクアポニックスエリア20と同様に、所定の送水手段(ポンプ等)によって飼育水Wを流通させることができる。上記送水手段により飼育水Wは、
図2に示すように、第5配管K25、第6配管K26及び第7配管K27を介して、調整エリア30内を循環することができる。より詳細には、飼育水Wは、第2養殖槽31、第2硝化槽32、脱窒槽33を繰り返し循環することができる。
【0054】
これによって第2養殖槽31の魚F31の排泄物等に含まれるアンモニアを第2硝化槽32で酸化させると共に、アンモニアの酸化によって生じた硝酸等を脱窒槽33で浄化することができる。また、浄化された飼育水Wを第2養殖槽31に戻すことができる。
【0055】
このように、アクアポニックスシステム10では、アクアポニックスエリア20及び調整エリア30で別々に飼育水Wを循環させ、魚F21・F31及び植物Pを生育することができる。
【0056】
本実施形態のアクアポニックスシステム10には、アクアポニックスエリア20及び調整エリア30の間で飼育水Wが流通可能となるように、各エリア20・30を接続する複数の配管(接続経路)が設けられている。具体的には、
図1に示すように、第1接続配管K31、第2接続配管K32、第3接続配管K33及び第4接続配管K34が設けられている。
【0057】
第1接続配管K31は、調整槽24と第2養殖槽31とを接続する配管である。第1接続配管K31では、上述したような送水手段(ポンプ等)により、調整槽24から第2養殖槽31へ飼育水Wを流通させることができる。
【0058】
第2接続配管K32は、調整槽24と脱窒槽33とを接続する配管である。第2接続配管K32では、前記送水手段により、調整槽24から脱窒槽33へ飼育水Wを流通させることができる。
【0059】
第3接続配管K33は、脱窒槽33と第1養殖槽21とを接続する配管である。第3接続配管K33では、前記送水手段により、脱窒槽33から第1養殖槽21へ飼育水Wを流通させることができる。
【0060】
第4接続配管K34は、第2硝化槽32と栽培槽23とを接続する配管である。第4接続配管K34では、前記送水手段により、第2硝化槽32から栽培槽23へ飼育水Wを流通させることができる。
【0061】
各接続配管K31~K34は、飼育水Wが流通可能な状態と流通不能な状態とを切替可能に構成される。例えば各接続配管K31~K34は、配管電磁弁により、飼育水Wが流通可能な状態と流通不能な状態とを切替可能に構成される。当該構成において、例えば第1接続配管K31に設けられた配管電磁弁が開状態から閉状態に切り替えられた場合、第1接続配管K31を飼育水Wが流通不能となって、調整槽24から第2養殖槽31への飼育水Wの流通が禁止される。なお、各接続配管K31~K34を飼育水Wが流通可能な状態と流通不能な状態とを切り替える方法は、配管電磁弁に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0062】
本実施形態では、アクアポニックスエリア20内の設備を接続する第4配管K24、並びに、調整エリア30内の設備を接続する第6配管K26及び第7配管K27も、各接続配管K31~K34と同様に、飼育水Wが流通可能な状態と流通不能な状態とを切替可能に構成される。
【0063】
センサ40は、アクアポニックスエリア20において飼育水Wの硝酸等の濃度に関する濃度情報を取得するためのものである。
【0064】
なお濃度情報は、アクアポニックスエリア20を流通する飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を判断可能な情報である。濃度情報には、硝酸濃度や亜硝酸濃度といった前記濃度を直接的に示す情報だけではなく、前記濃度を推測可能なその他の情報が含まれる。例えば、第1硝化槽22に投入される飼育水Wのアンモニア濃度が比較的低い場合、第1硝化槽22で比較的少量の硝酸等が生成されるため、飼育水Wの硝酸等の濃度が比較的低いと考えられる。こうした硝酸等の濃度と相関がある情報(例えばアンモニア濃度等)も、濃度情報に含まれる。
【0065】
本実施形態のセンサ40は、調整槽24に設けられ、調整槽24に貯留される飼育水Wの硝酸等の濃度を測定(取得)する。具体的にはセンサ40は、硝酸濃度を測定する。なおセンサ40は、硝酸濃度ではなく、亜硝酸濃度を測定してもよいし、硝酸濃度及び亜硝酸濃度をそれぞれ測定してもよい。このように、センサ40は、硝酸濃度又は亜硝酸濃度の少なくとも一方を測定可能である。
【0066】
なおセンサ40の設置場所は、調整槽24に限定されるものではない。センサ40は、濃度情報を取得可能なその他の場所(調整槽24以外の場所)に設けられてもよい。例えばセンサ40は、第4配管K24、第1養殖槽21等に設けられてもよい。ただしセンサ40は、調整槽24や第1配管K21等のように、魚F21がいない場所に設置されることが望ましい。これによって魚F21が誤ってセンサ40に食いつく等して、センサ40が破損するのを防止できる。
【0067】
制御装置50は、アクアポニックスエリア20及び調整エリア30における飼育水Wの流通経路を制御するためのものである。制御装置50は、演算装置及び記憶装置を具備し、記憶装置に記憶された情報を用いて演算処理を行うことで、アクアポニックスシステム10に関する処理を行うことができる。
【0068】
制御装置50は、センサ40と通信可能に構成される。制御装置50は、センサ40から信号を受信することで、硝酸濃度の測定結果を取得することができる。また制御装置50は、当該測定結果に基づいて、各接続配管K31~K34等における飼育水Wの流通可否を切り替えることができる。例えば制御装置50は、第1接続配管K31に設けられた配管電磁弁に信号を送信することで、当該配管電磁弁を開閉することができる。これによって制御装置50は、飼育水Wの流通経路を制御することができる。
【0069】
以下では
図2から
図5を参照し、飼育水Wの流通経路を制御するための流通経路制御処理について説明する。
図5に示す流通経路制御処理は、制御装置50によって繰り返し実行される。
【0070】
制御装置50は、
図5に示す流通経路制御処理を開始するとステップS110へ移行する。ステップS110において制御装置50は、センサ40により測定された硝酸濃度が規定値を外れているか否か判定する。
【0071】
なおステップS110で用いられる規定値は、飼育水Wの硝酸濃度が正常であるか否かを判定するためのものである。本実施形態の規定値は、アクアポニックスエリア20内を飼育水Wが循環する状態(
図2の状態)であり、かつ、硝酸等の発生量と吸収量とが釣り合う場合の、調整槽24内での飼育水Wの硝酸濃度の範囲を示すものとなっている。本実施形態では当該規定値が実験等により予め算出され、制御装置50の記憶装置に記憶されている。
【0072】
ステップS110において制御装置50は、センサ40から硝酸濃度の測定結果を取得し、当該測定結果と記憶装置に記憶された規定値とを比較することで、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を外れているか否か判定する。制御装置50は、前記測定結果が前記規定値を外れていない場合(ステップS110:No)、
図5に示す流通経路制御処理を終了する。
【0073】
この場合制御装置50は
図2に示すように、各接続配管K31~K34における飼育水Wの流通を禁止すると共に、第4配管K24、第6配管K26及び第7配管K27における飼育水Wの流通を許可する。これによって制御装置50は、アクアポニックスエリア20及び調整エリア30で別々に飼育水Wを循環させる。
【0074】
一方制御装置50は
図5に示すように、ステップS110において硝酸濃度の測定結果が前記規定値を外れている場合(ステップS110:Yes)、ステップS120以降の処理を行う。またこの場合制御装置50は、硝酸濃度の測定結果と前記規定値との大小関係に応じて、適宜処理を行う。具体的には制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を超えている場合(ステップS120)、ステップS130~S190の処理を行う。一方制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値未満の場合(ステップS200)、ステップS210~S290の処理を行う。
【0075】
ここで、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を超えている場合(ステップS120)、飼育水Wに含まれる硝酸等を除去しなければ、魚F21の生育に悪影響が出ることが懸念される。そこで制御装置50は、ステップS130~S190の処理により第2接続配管K32等における飼育水Wの流通を適宜許可し、調整エリア30の脱窒槽33を利用して、飼育水Wから硝酸等を除去する。以下、ステップS130~S190の処理内容を説明する。
【0076】
図3及び
図5に示すように、ステップS130において制御装置50は、第4配管K24における飼育水Wの流通を禁止し、調整槽24から第1養殖槽21への飼育水Wの送水を停止する。ステップS130の処理が終了すると、制御装置50はステップS140へ移行する。
【0077】
ステップS140において制御装置50は、第2接続配管K32における飼育水Wの流通を許可し、調整槽24から脱窒槽33へ飼育水Wを送水させる。これによって、栽培槽23から排出される飼育水Wは、調整槽24及び第2接続配管K32を介して脱窒槽33に投入される。このように、本実施形態の第2接続配管K32は、調整槽24を介して間接的に栽培槽23と脱窒槽33とを接続する。ステップS140の処理が終了すると、制御装置50はステップS150へ移行する。
【0078】
ステップS150において制御装置50は、第3接続配管K33及び第7配管K27における飼育水Wの流通を許可し、脱窒槽33から第1養殖槽21及び第2養殖槽31へ飼育水Wを送水させる。
【0079】
上述したステップS130~S150の処理により、
図3に示すように、栽培槽23から排出された飼育水Wは、調整槽24を介して脱窒槽33に投入される。これによって、栽培槽23の植物Pだけでは吸収しきれない硝酸等を、脱窒槽33で除去することができる。また脱窒槽33で硝酸等が除去された飼育水Wを、第1養殖槽21へ戻すことができる。これによって、飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を脱窒槽33で低下させ、硝酸等の影響で第1養殖槽21の魚F21の生育に悪影響が出るのを抑制することができる。
【0080】
なお
図5に示すステップS130~S150の処理順序は、一例であり、適宜変更可能である。ステップS150の処理が終了すると、制御装置50はステップS160へ移行する。
【0081】
ステップS160において制御装置50は、ステップS110と同様の処理により、センサ40による硝酸濃度の測定結果が前記規定値を超えているか否かを判定する。制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を超えている場合(ステップS160:Yes)、ステップS120へ移行する。一方制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を超えていない場合(ステップS160:No)、ステップS170へ移行する。
【0082】
図2及び
図5に示すように、ステップS170において制御装置50は、第3接続配管K33における飼育水Wの流通を禁止し、脱窒槽33から第1養殖槽21への飼育水Wの送水を停止する。ステップS170の処理が終了すると、制御装置50はステップS180へ移行する。
【0083】
ステップS180において制御装置50は、第2接続配管K32における飼育水Wの流通を禁止し、調整槽24から脱窒槽33への飼育水Wの送水を停止する。ステップS180の処理が終了すると、制御装置50はステップS190へ移行する。
【0084】
ステップS190において制御装置50は、第4配管K24における飼育水Wの流通を許可し、調整槽24から第1養殖槽21への飼育水Wの送水を再開させる。これによって制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を超えなくなるまで下がった場合に(ステップS160:No)、アクアポニックスエリア20及び調整エリア30で別々に飼育水Wを循環させることができる。なおステップS170~S190の処理順序は、一例であり、適宜変更可能である。ステップS190の処理が終了すると、制御装置50は流通経路制御処理を終了する。
【0085】
上述の如く、制御装置50は、ステップS110でセンサ40による硝酸濃度の測定結果が前記規定値未満の場合に(ステップS200)、ステップS210~S290の処理を行う。ここで、硝酸濃度の測定結果が前記規定値未満の場合、飼育水Wに硝酸等を追加しなければ植物Pの栄養素が足りず、植物Pの生育に悪影響が出ることが懸念される。そこで制御装置50は、ステップS210~S290の処理により各接続配管K31~K34における飼育水Wの流通を適宜許可し、調整エリア30で生成された硝酸等を含む飼育水Wをアクアポニックスエリア20に融通する。以下、ステップS210~S290の処理内容を説明する。
【0086】
図4及び
図5に示すように、ステップS210において制御装置50は、第6配管K26における飼育水Wの流通を禁止し、第2硝化槽32から脱窒槽33への飼育水Wの送水を停止する。ステップS210の処理が終了すると、制御装置50はステップS220へ移行する。
【0087】
ステップS220において制御装置50は、第7配管K27における飼育水Wの流通を禁止し、脱窒槽33から第2養殖槽31への飼育水Wの送水を停止する。ステップS220の処理が終了すると、制御装置50はステップS230へ移行する。
【0088】
ステップS230において制御装置50は、第4接続配管K34における飼育水Wの流通を許可し、第2硝化槽32から栽培槽23へ飼育水Wを送水させる。ステップS230の処理が終了すると、制御装置50はステップS240へ移行する。
【0089】
ステップS240において制御装置50は、第4配管K24及び第1接続配管K31における飼育水Wの流通を許可し、調整槽24から第1養殖槽21及び第2養殖槽31へ飼育水Wを送水させる。これによって、栽培槽23から排出される飼育水Wの一部は、調整槽24及び第1接続配管K31を介して第2養殖槽31に投入される。このように、本実施形態の第1接続配管K31は、調整槽24を介して間接的に栽培槽23と第2養殖槽31とを接続する。
【0090】
当該第1接続配管K31を介して調整槽24から第2養殖槽31へ投入された飼育水Wは、
図4に示すように、第2硝化槽32を通って栽培槽23へ供給される。こうして本実施形態では、アクアポニックスエリア20で硝酸等が不足する場合に、調整エリア30の第2硝化槽32で生成された硝酸等がアクアポニックスエリア20に追加(融通)される。
【0091】
当該構成によると、アクアポニックスエリア20だけでは足りない硝酸等を調整エリア30からの硝酸等で補うことができる。これによって飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を第2養殖槽31及び第2硝化槽32で上昇させ、植物Pの生育に悪影響が出るのを抑制することができる。
【0092】
ここで、第2硝化槽32から栽培槽23に飼育水Wが送水されると、アクアポニックスエリア20を流通する飼育水Wの量が増え、飼育水Wが溢れることが懸念される。本実施形態では、アクアポニックスエリア20に調整槽24が設けられているため、飼育水Wの量が増えたとしても、当該飼育水Wを調整槽24で受けることができる。これによって飼育水Wが溢れるのを抑制することができる。
【0093】
また本実施形態では、調整槽24から第2養殖槽31へ飼育水Wの一部を投入することで、調整槽24に貯留される飼育水Wの量を減らすことができる。これによって、調整槽24(アクアポニックスエリア20)で飼育水Wが溢れるのを抑制することができる。また栽培槽23から排出された硝酸等の濃度が低い飼育水Wを第2養殖槽31へ投入し、第2養殖槽31で魚F31を適切に養殖することができる。
【0094】
なお
図5に示すステップS210~S240の処理順序は、一例であり、適宜変更可能である。ステップS240の処理が終了すると、制御装置50はステップS250へ移行する。
【0095】
ステップS250において制御装置50は、ステップS110と同様の処理により、センサ40による硝酸濃度の測定結果が前記規定値未満であるか否かを判定する。制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値未満の場合(ステップS250:Yes)、ステップS200へ移行する。一方制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値以上の場合(ステップS250:No)、ステップS260へ移行する。
【0096】
図2及び
図5に示すように、ステップS260において制御装置50は、第1接続配管K31における飼育水Wの流通を禁止し、調整槽24から第2養殖槽31への飼育水Wの送水を停止する。ステップS260の処理が終了すると、制御装置50はステップS270へ移行する。
【0097】
ステップS270において制御装置50は、第4接続配管K34における飼育水Wの流通を禁止し、第2硝化槽32から栽培槽23への飼育水Wの送水を停止する。ステップS270の処理が終了すると、制御装置50はステップS280へ移行する。
【0098】
ステップS280において制御装置50は、第6配管K26における飼育水Wの流通を許可し、第2硝化槽32から脱窒槽33への飼育水Wの送水を再開する。ステップS280の処理が終了すると、制御装置50はステップS290へ移行する。
【0099】
ステップS290において制御装置50は、第7配管K27における飼育水Wの流通を許可し、脱窒槽33から第2養殖槽31への飼育水Wの送水を再開する。これによって制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値以上となるまで上昇した場合に(ステップS250:No)、アクアポニックスエリア20及び調整エリア30で別々に飼育水Wを循環させることができる。なおステップS260~S270の処理順序は、一例であり、適宜変更可能である。ステップS290の処理が終了すると、制御装置50は流通経路制御処理を終了する。
【0100】
制御装置50は、
図5に示す流通経路制御処理を実行することによって、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を外れている場合に(ステップS110:No)、調整エリア30を利用して飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を適切に管理することができる。
【0101】
例えば植物Pが収穫されて硝酸等を植物Pだけでは吸収しきれない場合に(ステップS120)、調整エリア30を利用して硝酸等を浄化し、飼育水Wの硝酸等の濃度を適切な濃度にまで下げることができる(
図3参照)。これによって、魚F21や植物Pの生育状態の変化によりアクアポニックスエリア20で硝酸等の発生量と吸収量との釣り合いが取れなくなったとしても、魚F31及び植物Pの生育に悪影響が出るのを抑制することができる。
【0102】
特に本実施形態では、調整エリア30で陸上養殖を行うことで、陸上養殖の脱窒槽33を利用して、硝酸等を除去することができる。こうしてアクアポニックスエリア20と調整エリア30とで脱窒槽33を共用することで、脱窒槽33の設置個数や面積を減らすことができる。これによって脱窒槽33の設置費や管理費用を削減することができる。
【0103】
また調整エリア30で陸上養殖を行うことで、アクアポニックスエリア20で硝酸等が不足する場合に(ステップS200)、陸上養殖で生じた硝酸等をアクアポニックスエリア20に融通することができる(
図4参照)。当該構成によると、窒素系肥料をアクアポニックスエリア20に投入する必要がないため、魚F21の養殖で汚れた飼育水Wを用いて植物Pの栽培を行うという、アクアポニックスの目的を満たすことができる。
【0104】
ここで、稚魚を養殖する場合、成魚を養殖する場合よりも硝酸等の発生量が不安定になり易い。また稚魚は、成魚よりも硝酸等による生育の影響を受け易い。このため稚魚は、植物Pよりも硝酸等を安定して除去可能な脱窒槽33を用いた陸上養殖によって養殖されることが一般的である。本実施形態ではこうした稚魚の養殖で一般的に用いられる陸上養殖の設備(脱窒槽33等)を利用して、飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を調整することができるため、調整エリア30の設置費を低減することができる。
【0105】
また本実施形態の制御装置50は、アクアポニックスエリア20と調整エリア30との間だけではなく、アクアポニックスエリア20内での飼育水Wの流通も制御している。具体的には制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を超える場合に(ステップS120)、調整槽24から第1養殖槽21への飼育水Wの流通を禁止している(
図3参照)。これによって、硝酸等を比較的多く含んだ飼育水Wが第1養殖槽21へ直接投入されないようにして、魚F21の生育に悪影響が出るのを効果的に抑制することができる。
【0106】
また本実施形態の制御装置50は、調整エリア30内での飼育水Wの流通も制御している。具体的には制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値未満の場合に(ステップS200)、第2硝化槽32から脱窒槽33への飼育水Wの流通と、脱窒槽33から第2養殖槽31への飼育水Wの流通を禁止している(
図4参照)。これによって、より多くの硝酸等を栽培槽23に供給することができるため、植物Pの生育に悪影響が出るのを効果的に抑制することができる。
【0107】
以上の如く、本実施形態に係るアクアポニックスシステム10は、飼育水Wによって魚F21を養殖すると共に、当該飼育水Wに含まれるアンモニアを酸化させることで硝酸等(窒素化合物)を含む飼育水Wを生成して植物Pに供給するアクアポニックスエリア20(第1エリア)と、前記アクアポニックスエリア20(第1エリア)において、飼育水Wに含まれる前記硝酸等の濃度に関する濃度情報を取得するセンサ40(取得部)と、飼育水Wに含まれる前記硝酸等の濃度を調整可能な調整エリア30(調整部)と、前記アクアポニックスエリア20及び前記調整エリア30を接続する接続経路(各接続配管K31~K34の少なくともいずれか1つ)と、前記センサ40によって測定された濃度情報に基づいて、前記接続経路における飼育水Wの流通可否を切り替える制御装置50(切替部)と、を具備するものである。
【0108】
このように構成することにより、濃度情報に応じて飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を適宜調整することができるため、飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を適切に管理することができる。
【0109】
また、前記センサ40は、前記濃度情報として、前記硝酸等の濃度を取得するものであり、前記制御装置50は、前記センサ40の取得結果が前記規定値を超える場合に(ステップS120)、前記接続経路における飼育水Wの流通を許可することによって、飼育水Wに含まれる前記硝酸等の濃度を低下させるものである(ステップS140・S150)。
【0110】
このように構成することにより、飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を適切に管理することができる。
【0111】
また、前記アクアポニックスエリア20は、飼育水Wによって魚F21を養殖する第1養殖槽21、及び前記第1養殖槽21から排出される飼育水Wに含まれるアンモニアを酸化させることで生成された前記硝酸等を含む飼育水Wによって植物Pを栽培する栽培槽23を具備し、前記接続経路は、前記栽培槽23から前記調整エリア30へ飼育水Wを流通可能に前記栽培槽23と前記調整エリア30とを接続する第2接続配管K32(第1経路)、及び前記調整エリア30から前記第1養殖槽21へ飼育水Wを流通可能に前記調整エリア30と前記第1養殖槽21とを接続する第3接続配管K33(第2経路)を含むものである。
【0112】
このように構成することにより、栽培槽23から排出される飼育水Wを調整エリア30に投入し、硝酸等の濃度を下げてから第1養殖槽21へ戻すことができるため、魚F21の生育に悪影響が出るのを効果的に抑制することができる。
【0113】
また、前記センサ40は、前記濃度情報として、前記硝酸等の濃度を取得するものであり、前記制御装置50は、前記センサ40の取得結果が前記規定値未満の場合に(ステップS200)、前記接続経路における飼育水Wの流通を許可することによって、飼育水Wに含まれる前記窒素化合物の濃度を上昇させるものである(ステップS230・S240)。
【0114】
このように構成することにより、飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を適切に管理することができる。
【0115】
また、前記調整部は、飼育水Wによって魚F31を養殖すると共に、当該飼育水Wに含まれるアンモニアを酸化させることで硝酸等を含む飼育水Wを生成可能な調整エリア30(第2エリア)を具備するものである。
【0116】
このように構成することにより、魚F31の養殖を利用して飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を上昇させることができる。
【0117】
また、前記アクアポニックスエリア20は、飼育水Wによって魚F21を養殖する第1養殖槽21、及び前記第1養殖槽21から排出される飼育水Wに含まれるアンモニアを酸化させることで生成された前記硝酸等を含む飼育水Wによって植物Pを栽培する栽培槽23を具備し、前記調整エリア30は、飼育水Wによって魚F31を養殖する第2養殖槽31、及び前記第2養殖槽31から排出された飼育水Wに含まれるアンモニアを酸化させる第2硝化槽32(硝化槽)を具備し、前記接続経路は、前記第2硝化槽32から前記栽培槽23へ飼育水Wを流通可能に前記第2硝化槽32と前記栽培槽23とを接続する第4接続配管K34(第3経路)を含むものである。
【0118】
このように構成することにより、調整エリア30の第2硝化槽32で生成された硝酸等をアクアポニックスエリア20に融通し、調整エリア30における脱窒をアクアポニックスエリア20での植物Pの栽培に置き換えることができる。
【0119】
また、前記アクアポニックスエリア20は、前記第1養殖槽21と前記栽培槽23との間を飼育水Wが流通する経路に設けられ、飼育水Wを貯留可能な調整槽24(貯留部)をさらに具備するものである。
【0120】
このように構成することにより、アクアポニックスエリア20を流通する飼育水Wが溢れるのを抑制することができる。
【0121】
また、前記接続経路は、前記栽培槽23から前記第2養殖槽31へ飼育水Wを流通可能に、前記栽培槽23と前記第2養殖槽31とを接続する第1接続配管K31(第4経路)をさらに含むものである。
【0122】
このように構成することにより、アクアポニックスエリア20を流通する硝酸等の濃度が低い飼育水Wを調整エリア30に融通し、調整エリア30の魚F31を適切に養殖することができる。
【0123】
また、前記調整エリア30は、前記第2硝化槽32から排出された飼育水Wに含まれる硝酸を脱窒する脱窒槽33をさらに具備し、前記接続経路は、前記栽培槽23から前記脱窒槽33へ飼育水Wを流通可能に前記栽培槽23と前記脱窒槽33とを接続する第2接続配管K32(第1経路)、及び前記脱窒槽33から前記第1養殖槽21へ飼育水Wを流通可能に前記脱窒槽33と前記第1養殖槽21とを接続する第3接続配管K33(第2経路)を含み、前記制御装置50は、前記センサ40の取得結果が前記規定値を超える場合に(ステップS120)、前記第2接続配管K32及び前記第3接続配管K33における飼育水Wの流通を許可するものである(ステップS140・S150)。
【0124】
このように構成することにより、第2養殖槽31の魚F31の生育に悪影響が出るのを抑制することができると共に、アクアポニックスエリア20を流通する飼育水Wが溢れるのを抑制することができる。
【0125】
また、前記第2養殖槽31では、稚魚が飼育されるものである。
【0126】
このように構成することにより、脱窒槽33を利用して稚魚を適切に養殖しながら、アクアポニックスエリア20を流通する飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を調整することができる。
【0127】
なお、本実施形態に係るアクアポニックスエリア20は、本発明に係る第1エリアの実施の一形態である。
また、本実施形態に係るセンサ40は、本発明に係る取得部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る調整エリア30は、本発明に係る調整部及び第2エリアの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る各接続配管K31~K34の少なくともいずれか1つは、本発明に係る接続経路の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御装置50は、本発明に係る切替部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第2接続配管K32は、本発明に係る第1経路の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第3接続配管K33は、本発明に係る第2経路の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第2硝化槽32は、本発明に係る硝化槽の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第4接続配管K34は、本発明に係る第3経路の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る調整槽24は、本発明に係る貯留部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第1接続配管K31は、本発明に係る第4経路の実施の一形態である。
【0128】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0129】
例えば、本実施形態のアクアポニックスエリア20及び調整エリア30には、魚F21・F31の養殖及び植物Pの栽培に有効な各種機構を追加することも可能である。
【0130】
例えば、源水となる淡水中のカルキや不純物等を除去する不純物除去機構、飼育水W中の固形分を除去する固形分除去機構、飼育水Wの消毒や殺菌を行う除菌機構、飼育水Wの水温管理を行う水温管理機構、飼育水W中に酸素を供給する酸素供給機構等を追加することも可能である。
【0131】
前記固形分除去機構は、例えば沈殿ろ過、砂ろ過、膜ろ過、泡沫分離等の物理ろ過によって固形分を除去することができる。また前記除菌機構は、例えば飼育水Wに対する紫外線の照射やオゾンの添加等により、飼育水Wの消毒や殺菌を行うことができる。また前記水温管理機構は、例えばヒーターやチラー等を用いて飼育水Wの加熱及び冷却を行うことができる。また前記酸素供給機構は、例えばばっ気装置や酸素発生装置等を用いて、飼育水Wに酸素を供給することができる。
【0132】
また本実施形態では、調整エリア30により、アクアポニックスエリア20で生じた硝酸等の除去と、アクアポニックスエリア20への硝酸等の追加と、をそれぞれ行うものとした(
図3及び
図4参照)。これは一例であり、アクアポニックスエリア20における硝酸等の濃度変化の傾向等を考慮して、硝酸等の除去又は追加の少なくとも一方を調整エリア30で行うことも可能である。例えば、アクアポニックスエリア20を飼育水Wが循環することで硝酸濃度が高くなり易い場合、調整エリア30は、硝酸等を除去可能、かつ硝酸等を追加不能に構成されていてもよい。これによって硝酸等を追加するための設備、及び当該設備とアクアポニックスエリア20とを接続する配管を省くことができるため、設備の設置費や管理費用を削減することができる。
【0133】
また本実施形態では、陸上養殖(調整エリア30)を利用して飼育水Wに含まれる硝酸等の濃度を調整するものとしたが、これは一例であり、前記濃度を調整する方法は、本実施形態に限定されるものではない。例えば調整エリア30では、飼育水Wを淡水等で希釈することで、前記濃度を低下させることも可能である。また例えば調整エリア30では、アクアポニックスエリア20にあるような栽培槽23を利用して、前記濃度を低下させることも可能である。
【0134】
また制御装置50は、硝酸濃度の測定結果に応じて各エリア20・30間(各接続配管K31~K34)での飼育水Wの流通可否を制御するものであればよい。すなわち本実施形態における飼育水Wの流通経路の制御内容は一例であり、適宜変更可能である。
【0135】
例えば本実施形態では、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を超える場合に(ステップS120)、第4配管K24での飼育水Wの流通を禁止するものとしたが(
図3参照)、当該制御を行わないようにすることも可能である。このように、制御装置50は、アクアポニックスエリア20内での飼育水Wの流通の可否を必ずしも制御する必要はない。
【0136】
また例えば本実施形態では、硝酸濃度の測定結果が前記規定値未満の場合に(ステップS200)、第6配管K26及び第7配管K27での飼育水Wの流通を禁止するものとしたが(
図4参照)、当該制御を行わないようにすることも可能である。このように、制御装置50は、調整エリア30内での飼育水Wの流通の可否を必ずしも制御する必要はない。
【0137】
また本実施形態では、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を外れる場合に(ステップS110:Yes)、アクアポニックスエリア20から調整エリア30へ向かう第1方向と、調整エリア30からアクアポニックスエリア20へ向かう第2方向と、のそれぞれで飼育水Wの流通を許可するものとした。例えば本実施形態では、硝酸濃度の測定結果が前記規定値未満の場合に、調整槽24から第2養殖槽31(第1方向)への飼育水Wの流通と、第2硝化槽32から栽培槽23(第2方向)への飼育水Wの流通と、をそれぞれ許可するものとした(
図4参照)。これは一例であり、制御装置50は、硝酸濃度の測定結果が前記規定値を外れる場合に、前記第1方向又は第2方向のいずれか一方において、飼育水Wの流通を許可することも可能である。
【0138】
また第2養殖槽31では、第1養殖槽21の魚F21の稚魚が養殖されるものとしたが、第2養殖槽31で養殖される魚F31として、本実施形態とは異なる魚を養殖可能である。例えば第2養殖槽31では、第1養殖槽21の魚F21の稚魚ではなく、成魚が養殖されてもよい。また第1養殖槽21及び第2養殖槽31では、必ずしも同じ魚が養殖される必要はなく、互いに異なる魚が養殖されるものであってよい。この場合、第1養殖槽21及び第2養殖槽31では、同じような水質(各エリア20・30での飼育水Wの融通により生育に悪影響が出ないような水質)で生育可能な魚F21・F31が養殖されることが望ましい。
【0139】
また本実施形態の各接続配管K31~K34の構成は一例であり、適宜変更可能である。例えば
図6に示すように、第4接続配管K34は、第2硝化槽32と調整槽24とを接続することも可能である。これによって調整エリア30から飼育水Wをアクアポニックスエリア20に融通する場合に、栽培槽23で飼育水Wが溢れるのを抑制することができる。
【0140】
また本実施形態では、栽培槽23から第1養殖槽21へ飼育水Wが流通する経路上に調整槽24が設置されるものとしたが、調整槽24の設置場所は、アクアポニックスエリア20内を飼育水Wが循環する経路上であれば、本実施形態に限定されるものではない。
【0141】
また本実施形態では、第2硝化槽32から追加される飼育水Wを調整槽24で受けることで、アクアポニックスエリア20で飼育水Wが溢れるのを抑制するものとしたが、調整槽24とは異なる方法により飼育水Wが溢れるのを抑制することも可能である。例えば調整槽24にかえて、アクアポニックスエリア20を流通する飼育水Wを外部に排出可能な排水経路を設けることで、飼育水Wが溢れるのを抑制することも可能である。こうしてアクアポニックスエリア20に調整槽24が設置されない場合、
図1に示す第1接続配管K31は、栽培槽23と第2養殖槽31とを直接接続することも可能である。また第2接続配管K32は、栽培槽23と脱窒槽33とを直接接続することも可能である。
【符号の説明】
【0142】
10 アクアポニックスシステム
20 アクアポニックスエリア
30 調整エリア
40 センサ
50 制御装置
F21 魚
K31 第1接続配管
K32 第2接続配管
K33 第3接続配管
K34 第4接続配管
P 植物
W 飼育水