(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168954
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】垂直搬送装置
(51)【国際特許分類】
B66B 17/16 20060101AFI20241128BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B66B17/16 C
B65G1/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086043
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】392024909
【氏名又は名称】ホクショー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新橋 徹也
(72)【発明者】
【氏名】小林 竜志
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022LL16
3F022MM52
3F022NN12
3F022PP06
3F022QQ01
(57)【要約】
【課題】主に、モータ制御に頼らずに停止時の段差発生などを防止し得るようにする。
【解決手段】
搬送物2を積載して床面4を走行する無人搬送車11を収容して昇降可能なキャレッジ12と、キャレッジ12の昇降を案内する案内フレーム13とを備えた垂直搬送装置1に関する。キャレッジ12の上部に、案内フレーム13へ向けて横に出入可能な可動式の係止爪14を設ける。案内フレーム13に、各階で停止したキャレッジ12の係止爪14を受ける受材15を設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を積載して床面を走行する無人搬送車を収容して昇降可能なキャレッジと、前記キャレッジの昇降を案内する案内フレームとを備えた垂直搬送装置であって、
前記キャレッジの上部に、前記案内フレームへ向けて横に出入可能な可動式の係止爪を設け、前記案内フレームに、各階で停止した前記キャレッジの前記係止爪を受ける受材を設けたことを特徴とする垂直搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の垂直搬送装置であって、
前記キャレッジを別の階へ移動する際に、一時的に前記係止爪を前記キャレッジごと前記受材から持上げる制御部を備えたことを特徴とする垂直搬送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の垂直搬送装置であって、
前記キャレッジには、主索を介してカウンターウェイトが取付けられており、前記キャレッジの各階での停止時に、前記カウンターウェイトを持上げて、前記主索を弛ませる制御部を備えたことを特徴とする垂直搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の垂直搬送装置であって、
キャレッジ重量をWcとし、積載重量をWlとして、
前記カウンターウェイトは、重量Wtが、3/5Wc+3/5Wlとされていることを特徴とする垂直搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、垂直搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場や物流倉庫などの倉庫では、物品を上下方向に移動したり搬送したりするのに、垂直搬送装置が使われている。このような垂直搬送装置は、物品を収容して昇降する箱枠状のキャレッジと、キャレッジの昇降を案内する案内フレームとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、垂直搬送装置には、搬送物(物品)を積載して床面を走行する無人搬送車をキャレッジに乗せて、無人搬送車ごと搬送物をキャレッジで昇降させるようにしたものが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無人搬送車をキャレッジに乗せる場合、無人搬送車は段差に弱いため、床面とキャレッジとの間に段差があると無人搬送車がキャレッジに乗り込めなくなる。
【0006】
そのため、垂直搬送装置は、制御的手段によるモータ制御によって、キャレッジの停止時における、キャレッジと各階の床面との間の段差発生を防止するようにしていた。しかし、モータ制御によるキャレッジの停止精度の確保はシビアである。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、搬送物を積載して床面を走行する無人搬送車を収容して昇降可能なキャレッジと、前記キャレッジの昇降を案内する案内フレームとを備えた垂直搬送装置であって、前記キャレッジの上部に、前記案内フレームへ向けて横に出入可能な可動式の係止爪を設け、前記案内フレームに、各階で停止した前記キャレッジの前記係止爪を受ける受材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、モータ制御に頼らずに停止時の段差発生を防止することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本実施の形態にかかる垂直搬送装置の全体正面図である。
【
図2】無人搬送車がキャレッジに乗降する状態を示す垂直搬送装置の部分的な側面図である。
【
図3A】キャレッジの上部に対する係止爪の設置状態の一例を示す図である。このうち、(a)は平面図、(b)は案内フレームの長辺側から見た側面図である。
【
図3B】(a)は
図3Aの係止爪が出た状態を示す、案内フレームの短辺側から見た側面図、(b)は係止爪を入れた(引込めた)状態を示す(a)と同様の側面図である。
【
図3C】(a)は
図3Aの爪可動機構の拡大平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)の正面図である。
【
図4A】キャレッジの上部に対する係止爪の設置状態の他の例を示す図である。このうち、(a)は平面図、(b)は案内フレームの短辺側から見た部分的な側面図、(c)は係止爪が出た状態を示す案内フレームの長辺側から見た側面図、(d)は係止爪を入れた(引込めた)状態を示す(c)と同様の側面図である。
【
図4B】(a)は
図4Aの爪可動機構の拡大平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)の正面図である。
【
図5】キャレッジの動きを示す図である。このうち、(a)はある階での停止状態、(b)は(a)の階での持上状態、(c)は(b)の位置で係止爪を入れた状態、(d)は(a)の階からキャレッジを下降する状態、(e)はキャレッジが1階の床面に接地した状態である。
【
図7】キャレッジとカウンターウェイトとの重さの関係を示す概略側面図である。
【
図8】キャレッジの移動と、係止爪の出入状態との関係を示す線図である。このうち、(a)は下階から上階への移動、(b)は上階から下階への移動である。
【
図9】キャレッジの移動と、係止爪の出入状態との関係を示す線図である。このうち、(a)は1階から上階への移動、(b)は上階から1階への移動である。
【
図10】比較例にかかる係止爪および受材がない場合における、
図2と同様の無人搬送車のキャレッジへの乗降の状態を示す垂直搬送装置の部分的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態は、
図1~
図10を用いて詳細に説明される。
【実施例0012】
<構成>この実施例の構成は、以下の通りである。
【0013】
工場や倉庫などの建屋内に、
図1A(~
図1C)に示すような垂直搬送装置1を設置する。
【0014】
垂直搬送装置1は、
図2に示すように、物品(搬送物2)を上下方向3に移動したり搬送したりする装置である。上下方向3は、工場や倉庫などのほぼ水平な床面4を基準として、床面4と面直な方向である。垂直搬送装置1は、各階の床面4の間に亘るように上下に長く設けられる。ただし、垂直搬送装置1を設けることができる施設は、工場や倉庫などに限るものではない。また、建屋は、二階以上であれば何階でも良い。
【0015】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、垂直搬送装置1は、以下のような構成を備えても良い。
【0016】
(1)垂直搬送装置1は、搬送物2を積載して床面4を走行する無人搬送車11を収容して昇降可能なキャレッジ12と、キャレッジ12の昇降を案内する案内フレーム13とを備える。そして、キャレッジ12の上部に、案内フレーム13へ向けて横に出入可能な可動式の係止爪14を設け、案内フレーム13に、各階で停止したキャレッジ12の係止爪14を受ける受材15を設ける。
【0017】
ここで、搬送物2は、無人搬送車11で搬送できて、キャレッジ12に乗せることができる物品であれば、何でも良い。搬送物2は、例えば、可動棚2aに乗せた状態で、可動棚2aごと無人搬送車11によって搬送されても良い。
【0018】
床面4は、工場や倉庫の各階に設けられる床の上面のことであり、ほぼ水平な面とされる。床面4は、少なくとも、無人搬送車11が走行する部分(走行範囲)を、可能な限り平らな状態にするのが好ましい。
【0019】
無人搬送車11は、例えば、指定された経路に沿って、障害物を避けながら床面4を自律的に走行する走行体(AGV)である。無人搬送車11は、例えば、搬送物2を乗せた可動棚2aの下へ入り込んで、可動棚2aごと搬送物2を移動する。無人搬送車11は、各階の床面4を走行する水平移動手段として使われると共に、搬送物2と共にキャレッジ12に乗って昇降し、別の階へ移動する。
【0020】
キャレッジ12は、ほぼ直方体状をした荷室であり、無人搬送車11や搬送物2を内部に収容して上下方向3に移動する。キャレッジ12は、無人搬送車11および搬送物2を収容可能な大きさを有する箱状体または箱枠などとされる。キャレッジ12は、少なくとも一つの側面に出入口21を有している。
【0021】
案内フレーム13は、建屋内の1階の床面4に設置された、上へ縦長に延びる鉄塔状の固定構造物である。案内フレーム13は、
図1Cに示すように、4本の柱13aと、4本の柱13aの間を横に連結する前後および左右の横梁13bとで構成されたほぼ直方体状の枠部を有している。案内フレーム13は、ほぼ均一な断面形状を有して1階の床面4から上方へ延び、1階の床面4よりも上の各階の床面4を貫通することで、内部にキャレッジ12を収容すると共に、キャレッジ12の昇降が可能な昇降空間を形成する。これにより、案内フレーム13は垂直搬送装置1の固定部分となり、キャレッジ12は垂直搬送装置1の可動部分となる。
【0022】
図1A(
図1B)に示すように、案内フレーム13は、各階の入口となる部分に、必要に応じて、オートドア22と、案内フレーム13内のキャレッジ12の有無を検知するキャレッジ検知センサー23とが設けられる。オートドア22は、各階の入口部分における荷物の存在を検知する在荷検知エリアセンサーを有しても良い。そして、オートドア22は、キャレッジ検知センサー23によってその階にキャレッジ12が停止したことを検知したときに開閉可能となる。または、オートドア22は、その階にキャレッジ12が停止し、更に在荷検知エリアセンサーによってその階の入口部分に搬送物2や無人搬送車11などの荷物が存在していることを検知したときに開閉可能となる。
【0023】
また、
図1Cに示すように、案内フレーム13の上部には、キャレッジ12を昇降して各階で停止させる昇降駆動機構24が設けられる。昇降駆動機構24については後述する。
【0024】
図2に示すように、係止爪14は、キャレッジ12の上部に取付けられて、キャレッジ12の内外方向へ出入りする可動部材であり、受材15へ係止可能な突出量を有する。
【0025】
係止爪14は、キャレッジ12を案内フレーム13に物理的に引っ掛ける(係止爪14を受材15に係止させる)ことで、キャレッジ12の荷重を案内フレーム13に支持させると共に、キャレッジ12を停止状態に保持する。係止爪14が受材15に係止されることで、キャレッジ12は、その床が、各階の床面4とほぼ面一でほぼ水平な状態に保たれる。これにより、係止爪14および受材15は、各階におけるキャレッジ12の物理的な保持機構を構成する。
【0026】
係止爪14は、キャレッジ12の上部に複数箇所設けられる。例えば、
図3A~
図3Cの例では、係止爪14は、キャレッジ12の上部に、案内フレーム13の長辺の側へ向けて4箇所設けられている。具体的には、係止爪14は、案内フレーム13の長辺と対向する各辺の両側における、キャレッジ12の各コーナー部から若干離れた位置に、案内フレーム13の短辺の方向へ出入可能に、間隔を有して二対設けられている。
【0027】
また、例えば、
図4A、
図4Bの他の例では、係止爪14は、キャレッジ12の上部に、案内フレーム13の短辺の側へ向けて4箇所設けられている。具体的には、係止爪14は、案内フレーム13の短辺と対向する各辺における、キャレッジ12の中央部から若干離れた両側の位置に、案内フレーム13の長辺の方向へ出入可能に、間隔を有して二対設けられている。
【0028】
なお、上記の各例において、キャレッジ12の出入口21は、キャレッジ12の長辺の側に設けても良いし、短辺の側に設けても良い。また、キャレッジ12に対する係止爪14の配置は、上記に限るものではない。
【0029】
係止爪14は、各階で停止したキャレッジ12を支持可能な強度および剛性を有するほぼ水平な長尺の鋼材などとされる。係止爪14は、例えば、上に開いた断面U字状の部材などとしても良い。係止爪14は、例えば、角筒状の部材や断面L字状の部材などとしても良い。
【0030】
係止爪14は、キャレッジ12の上部に、係止爪14の出入りを案内するガイド25を介して取付けられる(
図3C)。ガイド25は、ガイドレールと、ガイドレールに沿って移動するガイド体とで構成される。ガイドレールは係止爪14の出入方向へ向けて延びるようにキャレッジ12の上部に取付けられ、ガイド体は、係止爪14の下面側に、長手方向に間隔を有して複数箇所取付けられる。例えば、ガイドレールは上部に左右両側へ張り出すT字状の部分を有する長尺材とされ、ガイド体は下向きC字状の部材とされて、T字状の部分とC字状の部材とを係止爪14の出入方向に摺接嵌合させることで、上下方向3に外れない状態に組合わされても良い。
【0031】
更に、キャレッジ12は、上部に係止爪14を出入りさせる爪可動機構を備えている。爪可動機構は、駆動源として係止爪14の出入方向に伸縮動可能なシリンダや、モータなどのようなアクチュエータを有している。
【0032】
この実施例では、アクチュエータは、爪駆動モータ27とされており、爪駆動モータ27の駆動力は、駆動力伝達機構28を介して係止爪14に伝えられる。駆動力伝達機構28は、例えば、ラック28bとピニオン28aなどのような直線歯と円形歯車との組み合わせで構成しても良い。ラック28bは、例えば、ピニオン28aの歯と噛み合う間隔を有して係止爪14の出入方向に沿って直線状に離間配置された複数本の軸部材によって構成されても良い。ただし、爪可動機構の構成は、上記に限るものではなく、係止爪14を出入させることができれば何でも良い。例えば、爪可動機構は、係止爪14の出入方向に離間配置された一対のシーブと、シーブ間に架け渡された無端状のベルトとによるベルト機構としても良い。ベルト機構には、一対のタイミングギヤとタイミングベルトとによるタイミングベルト機構や、一対のギヤとチェーンとによるチェーン機構などが含まれる。また、爪可動機構は、係止爪14の出入方向に延びるスクリューと、スクリューに螺着されたナットとによるスクリュー機構などとしても良い。
【0033】
更に、キャレッジ12は、上部に係止爪14の出入りの状態を検知する爪検知センサー29を備えても良い。爪検知センサー29は、係止爪14が最大限に出た状態を検知する出センサー29a(または出限検知センサー)と、係止爪14が最も引っ込んだ状態を検知する入センサー29b(入限検知センサー)とを有しても良い。爪検知センサー29は、例えば、リミットスイッチなどを用いても良い。爪検知センサー29をリミットスイッチとした場合、出センサー29aおよび入センサー29bは、キャレッジ12の上部に、係止爪14の出入り方向に、係止爪14の突出量とほぼ同じ間隔を有して取付けられる。係止爪14には、出センサー29aと入センサー29bとの間の位置に、出センサー29aと入センサー29bとに当たるストライカなどの検知用部材が取付けられる。なお、爪検知センサー29は、上記に限らず、例えば、光学式や超音波式などのセンサーを用いても良い。また、爪検知センサー29は、係止爪14の動きで直接に検知するものの他に、アクチュエータに取付けて、アクチュエータの動きで間接的に検知するようにしても良い。
【0034】
受材15は、案内フレーム13に対し、各階に停止したキャレッジ12の上部とほぼ対向する位置に、キャレッジ12から若干(係止爪14の突出量程度)離して取付けられて、係止爪14を下側から受ける部材である。受材15は、各階で停止したキャレッジ12を、係止爪14を介して支持可能な強度および剛性を有する。
【0035】
受材15は、例えば、横梁13bと同様の横長の長尺部材などとされて、隣接する柱13a間にほぼ水平に架け渡されても良い。なお、案内フレーム13に設けられる横梁13bの設置位置を上下方向3に調整することで、横梁13bを、そのまま受材15として使っても良い。
【0036】
受材15は、係止爪14が係止されたときに、キャレッジ12の床が各階の床面4とほぼ面一なほぼ水平状態となるように、キャレッジ12を精度良く保持させる。そのために、受材15は、キャレッジ12を、各階で段差なく停止可能な精度を有して設置される。ただし、無人搬送車11が通過できる程度の小さな(例えば、±5mm程度未満、好ましくは、±2mm程度またはそれ以下の)段差は、許容される。
【0037】
受材15は、上面における、係止爪14が直接当たる位置に受片15aを設けて、受片15aで係止爪14を受けることで、受材15の損耗を防止し得るようにしても良い。
【0038】
なお、受材15は、基本的には、全ての階に設けられるが、1階については、
図5(e)に示すように、キャレッジ12を床面4に直接接地させて停止させるよう構成しても良く、この場合、1階の部分には受材15を設けなくても良い。
【0039】
(2)上記において、
図5に示すように、垂直搬送装置1は、キャレッジ12を別の階へ移動する際に、一時的に係止爪14をキャレッジ12ごと受材15から持上げる、
図6のような制御部31を備えても良い。
【0040】
ここで、別の階へ移動するとは、現在停止している階(停止階)から、移動しようとする階(移動階)へとキャレッジ12が上昇または下降することである。
【0041】
一時的は、係止爪14を出入りさせる程度の短い時間で良い。ただし、制御部31は、必要に応じて、係止爪14の出入に必要な時間よりも長い時間だけキャレッジ12を持上げた状態にしても良い。
【0042】
キャレッジ12を持上げるとは、停止階で停止する位置よりも僅かに高い位置へキャレッジ12を上昇移動して一時停止させることである。キャレッジ12の持上げによって、係止爪14が受材15から浮くことで、案内フレーム13によるキャレッジ12の荷重支持状態は解除される。
【0043】
キャレッジ12を持上げる量は、最低限、係止爪14が受材15から僅かに離れる程度の僅かな高さで良い(例えば、数mm程度)。ただし、必要に応じて、係止爪14が受材15から確実に離れた状態となるように、少し高目に持上げても良い(例えば、数cm~十数cm程度またはそれ以上)。持上げにより、キャレッジ12は各階での停止位置よりも若干高い位置にて一時的に停止され、停止中に係止爪14の出入りが行われる。なお、係止爪14の出入りは、キャレッジ12の持上げ動作中に並行して行うことも可能である。この場合、一時停止の時間は、短くしたり、なくしたりすることも可能である。
【0044】
制御部31は、垂直搬送装置1を制御するためのコンピュータである。制御部31は、外部からの司令信号32によって、キャレッジ12を各階間で昇降させる昇降制御部33を主に有している。昇降制御部33は、キャレッジ12の位置を検出する位置センサー34(
図1A)からの信号を用いてキャレッジ12の上下方向3の位置を制御する。位置センサー34は、例えば、キャレッジ12などに直接設けても良いし、案内フレーム13に設けても良い。位置センサー34については、後述する。
【0045】
この実施例の制御部31は、更に、キャレッジ12の移動の際に、係止爪14が受材15から離れる程度またはそれ以上にキャレッジ12を持上げる持上制御部36と、持上げ中に、係止爪14の出入りを行わせる爪制御部37と、を有している。
【0046】
持上制御部36は、停止階からの移動開始時と、移動階での停止直前との少なくとも一方に、キャレッジ12の持上げを行う。持上制御部36は、位置センサー34からの信号によってキャレッジ12の持上げの量やタイミングを制御しても良い。
【0047】
爪制御部37は、キャレッジ12の持上げ中に、係止爪14の出入りを行う。爪制御部37は、爪検知センサー29からの信号を用いて係止爪14の出入りを制御する。なお、昇降制御部33がキャレッジ12を別の階へ向けて大きく移動させる際には、爪制御部37は、係止爪14を引込めた状態にする。
【0048】
昇降制御部33、持上制御部36、爪制御部37は、制御部31の内部機能として、プログラムなどのソフトウェアによって形成される。
【0049】
(3)上記において、垂直搬送装置1では、
図7に示すように、キャレッジ12には、主索41を介してカウンターウェイト42が取付けられており、キャレッジ12の各階での停止時に、カウンターウェイト42を持上げて、主索41を弛ませる制御部31を備えても良い。
【0050】
ここで、主索41は、金属製の長尺の索条体であり、例えば、チェーンやワイヤが使用される。主索41は、中間部が案内フレーム13の上部に設けられたスプロケット43に上から巻き掛けられることで、案内フレーム13の上部を通って上下に折り返すように取回される。主索41の下へ向いた両端には、キャレッジ12とカウンターウェイト42とがそれぞれ吊下支持される。
【0051】
そして、主索41には、キャレッジ12およびカウンターウェイト42によって張力が作用される。更に、キャレッジ12への乗車によって、無人搬送車11および搬送物2の重量が加わることで、主索41には、弾性変形による若干の伸びが発生する。反対に、キャレッジ12からの降車によって、キャレッジ12から無人搬送車11および搬送物2の重量がなくなることで、主索41には、弾性変形の復帰による若干の縮みが発生する。このような、弾性変形および復帰による主索41の伸びや縮みは、床面4とキャレッジ12との間の段差発生の原因になる。
【0052】
昇降駆動機構24は、
図1Cに示すように、昇降駆動モータ44と、減速機構45と、スプロケット43とを有しており、案内フレーム13の最上部に設けられた懸架フレーム47(
図1A)などに取付けられる。
【0053】
スプロケット43は、外周部分に主索41の中間部を巻き掛けた状態で回転することによって、主索41を移動するようにした円盤状の機械部品である。昇降駆動モータ44は、昇降駆動機構24の駆動源であり、制御部31によって制御される。減速機構45は、昇降駆動モータ44の回転をスプロケット43に伝達してスプロケット43の回転を調整する歯車機構である。
【0054】
上記した位置センサー34は、例えば、昇降駆動モータ44の回転軸や、スプロケット43の回転軸などに取付けられて、スプロケット43の回転数や回転角度によってキャレッジ12の上下方向3の位置を検出する。位置センサー34には、例えば、非接触式のロータリーエンコーダなどが使用される。位置センサー34からの信号は、制御部31に入力されて、制御部31による昇降駆動モータ44の制御に使用される。
【0055】
制御部31は、内部機能として、重錘制御部48(
図6)を有する。重錘制御部48は、プログラムなどのソフトウェアによって形成される。重錘制御部48は、キャレッジ12の各階での停止時に、
図7に示すように、カウンターウェイト42を僅かに持ち上げて主索41を弛ませる。これにより、重錘制御部48は、停止中の主索41の伸びを防止し、主索41の損耗を防止したり、位置センサー34の検出精度への影響を緩和したりする。重錘制御部48は、キャレッジ12が係止爪14で受材15に係止されて物理的に停止された状態から、更に、キャレッジ12が下降する方向へ主索41を移動することで主索41のキャレッジ12側を弛ませることができる。主索41は、キャレッジ12側が、張力がなくなる程度またはそれ以上に弛まされる。重錘制御部48は、主索41の弛みを制御することから、弛み制御部ということもできる。なお、主索41のカウンターウェイト42の側は、弛まない。
【0056】
カウンターウェイト42は、キャレッジ12と重さのバランスを取るために主索41の反対側に取付けられる重錘である。カウンターウェイト42については、以下に説明する。
【0057】
(4)上記において、垂直搬送装置1では、
図7に示すように、キャレッジ重量をWcとし、積載重量をWlとして、カウンターウェイト42は、重量Wtを、3/5Wc+3/5Wlとしても良い。
【0058】
ここで、キャレッジ重量Wcは、キャレッジ12の単体の重量である。
【0059】
積載重量Wlは、キャレッジ12に積載する物の重量であり、無人搬送車11の重量と、搬送物2の重量とを合計した重量となる。
【0060】
カウンターウェイト42の重量Wtは、カウンターウェイト42の単体の重さであり、キャレッジ重量Wcおよび積載重量Wlに対して、バランスを最適化するために設定・調整される。なお、以下の説明では、主索41の重量の影響は除外している。主索41の重量の影響は、必要に応じて補正すれば良い。
【0061】
この際、xを積載重量影響係数とすると、カウンターウェイト42の重量は、一般的には、x=1/2として、Wt=Wc+Wl/2 の式で求められている。
【0062】
積載重量影響係数xは、カウンターウェイト42の重量Wtに対し、積載重量Wlをどの程度影響させるかを設定・調整するための係数である。この実施例では、一般的な1/2よりもバランスが良くなるように、より最適な積載重量影響係数xにする。より最適となる積載重量影響係数xは、以下のようにして求められる。
【0063】
昇降駆動モータ44が無人搬送車11と、搬送物2とを乗せたキャレッジ12を、各階間で昇降させるときの重量(昇降時重量)W13は、
昇降時重量:W13=Wc+Wl-Wt ・・・(1)
となる。
【0064】
また、係止爪14を使って各階でキャレッジ12停止した後に主索41を弛ませる(カウンターウェイト42のみを持上げる)ときの重量(弛み時重量)W34は、
弛み時重量:W34=Wt ・・・(2)
となる。弛み時重量:W34は、昇降時重量:W13よりも大きくなる。
【0065】
カウンターウェイト42の重量:Wt=Wc+Wl・x ・・・(3)
として、式(1)(2)にそれぞれ式(3)を代入すると、
昇降時重量:W13=Wc+Wl-Wc-Wl・x
=Wl-Wl・x ・・・(4)
となり、
弛み時重量:W34=Wt=Wc+Wl・x ・・・(5)
となる。
【0066】
W13、W34は、ともに、xの1次関数とみることができ、W13は傾きが負、W34は傾きが正となることにより、W13=W34となるときに、それぞれ必要最小限の重量が得られる。
【0067】
ここで、pを昇降駆動モータ44のピークトルク係数とする。キャレッジ12の昇降時は、各階間という長い距離の昇降を行うため、昇降駆動モータ44を定格トルクで駆動するものとする(p=1(100%))。
【0068】
また、弛み時は、2秒程度の短時間であり、移動距離も短いため、昇降駆動モータ44を三相モータで、インバーター駆動とすると、定格トルクの150%までのピークトルクが確保できる(p=3/2(150%))
【0069】
そこで、
W13=W34/p(ピークトルク係数:p=3/2)・・・(6)
として、式(6)に上記の式(4)(5)を代入する。
Wl-Wl・x=(Wc+Wl・x)・2/3
=2/3・Wc+2/3・Wl・x・・・(7)
【0070】
上記式(7)をxでまとめると、
2/3・Wl・x+Wl・x=Wl-2/3・Wc
5/3・Wl・x=Wl-2/3・Wc
となる。
【0071】
更に、両辺に3/5Wlをかけることで
x=3/5-2Wc/5Wl・・・(8)
が得られる。
【0072】
そこで、式(3)のカウンターウェイト42の重量:Wt=Wc+Wl・xに式(8)のxを代入する。すると、
Wt=Wc+3Wl/5-2Wc/5
Wt=3/5・Wc+3/5・Wl・・・(9)
が得られる。
【0073】
この式(9)によって、W13とW34とのバランスを取りつつ、最低限に抑えることができるカウンターウェイト42の重量Wtが得られ、昇降駆動モータ44の小型化、省エネ化、コストダウンが図られる。
【0074】
以下に、具体的な計算例を説明する。
【0075】
例えば、キャレッジ重量Wcを、Wc=600kg、積載重量Wlを、Wl=700kg、昇降最高速度=65m/分、機械効率=0.8(低めに設定)とする。なお、上記した主索41の重量の影響は、例えば、機械効率の値の設定・調整などによってある程度加味することができる。
【0076】
一般的なx=1/2の場合には、
Wt=600c+700・1/2=950(kg)となり、
Wtを上昇させるのに必要なモータ容量Pは、
P=950(kgf)・9.8・65m/分/60秒/0.8/p=8405Wとなる。
【0077】
これに対し、この実施例のようにx=3/5-2Wc/5Wlとした場合には、
Wt=3/5・Wc+3/5・Wl
=3/5・600+3/5・700
=360+420=780(kg)となり、
Wtを上昇させるのに必要なモータ容量Pは、
P=780(kgf)・9.8・65m/分/60秒/0.9/p=6901Wとなる。
【0078】
よって、x=3/5-2Wc/5Wlとすることにより、カウンターウェイト42の重量Wtが軽量化されて、昇降駆動モータ44の小型化、省エネ化、コストダウンが得られることが確認された。
【0079】
以下に、上記の結果に例外が生じないかどうかを検証する。
【0080】
キャレッジ12が空のとき、キャレッジ12よりもカウンターウェイト42の方が重くなる。このとき、昇降駆動モータ44がカウンターウェイト42を持上げる荷重をW13’とし、W13’がW13を上回ることがないかを確認する。
【0081】
空のキャレッジ12を昇降する場合(のカウンターウェイト42を持上げる荷重)、
W13’=Wt-Wc
となり、これに式(3)を代入すると、
W13’=Wc+Wl・x-Wc
=Wl・x・・・(10)
となる。
【0082】
そこで、
W13=Wl-Wl・x・・・(4)
として、
W13’>W13に式(10)(4)を代入すると、
Wl・x>Wl-Wl・x
2・Wl・x>Wl
2x-1>0
となり、x=3/5-2Wc/5Wl・・・(8)より
2(-2/5・Wc/Wl+3/5)-1>0
-4/5・Wc/Wl+1/5>0
1>4・Wc/Wl
Wl>4・Wc
となる。
【0083】
よって、積載重量Wlが、キャレッジ重量Wcの4倍以上となるときに、W13’がW13を上回ることになるが、実際には、積載重量Wlは、キャレッジ重量Wcの2倍未満に抑えられるので、実質的にW13’がW13を上回ることはない。そのため、実際の運用において、例外が生じないことが検証された。
【0084】
<作用>この実施例の作用は、以下の通りである。
【0085】
無人搬送車11は、搬送物2を積載して工場や倉庫などの床面4を走行する。搬送物2を別の階へ搬送する場合、無人搬送車11は、垂直搬送装置1を使用する。
【0086】
無人搬送車11は、搬送物2ごと垂直搬送装置1のキャレッジ12へ乗り込み、垂直搬送装置1は、キャレッジ12に、搬送物2を積載した無人搬送車11を乗せて、キャレッジ12を昇降する。これにより、無人搬送車11は、別の階へ搬送物2を搬送することができる。
【0087】
一方で、無人搬送車11は段差に弱く、例えば、±5mm程度以上の段差があるとキャレッジ12に乗り込めなくなる。そのため、既存の垂直搬送装置1は、制御部31などの制御的手段による昇降駆動モータ44のモータ制御によって、停止時のキャレッジ12と床面4との間の段差の発生を防止するようにしていた。
【0088】
しかし、モータ制御によるキャレッジ12の停止精度の確保はシビアであり、モータ制御だけで段差をなくすのは難しい。また、キャレッジ12は、案内フレーム13の昇降空間内で吊られて宙に浮いている。そのため、
図10に示すように、重量物である搬送物2および無人搬送車11がキャレッジ12に乗り込むときなどに、キャレッジ12が沈んだり、傾いたりして段差が発生する。段差が発生すると、無人搬送車11が動けなくなるおそれがある。そのため、モータ制御には限界がある。
【0089】
そこで、この実施例は、垂直搬送装置1を、上記のような構成にした。これにより、垂直搬送装置1は、モータ制御に頼らずに停止時のキャレッジ12と床面4との間の段差発生などを防止できるようになる。よって、モータ制御によるキャレッジ12の停止精度を低くしても、キャレッジ12を物理的に高精度に停止させることができる。
【0090】
そして、垂直搬送装置1の制御部31は、昇降制御部33が、外部からの司令信号32に基づき、昇降駆動モータ44を制御して、キャレッジ12を指定した階へと移動(昇降)させる。キャレッジ12の位置は、ロータリーエンコーダなどの位置センサー34によって検知され、位置センサー34からの信号は、制御部31へ送られて、制御部31の制御に使用される。
【0091】
制御部31の内部では、持上制御部36は、昇降制御部33によってキャレッジ12を別の階へ移動する際に、一時的にキャレッジ12を持上げる。持上制御部36は、位置センサー34からの信号を使用してキャレッジ12の持上げ量を制御する。
【0092】
そして、制御部31の爪制御部37は、持上制御部36によってキャレッジ12を持上げている間に、係止爪14の出入りを行わせる。
【0093】
更に、制御部31の重錘制御部48は、キャレッジ12の移動階での停止時に、カウンターウェイト42を僅かに持ち上げることで、主索41を僅かに弛ませる。重錘制御部48は、位置センサー34からの信号を使用して主索41の弛み量を制御する。
【0094】
より具体的には、下階(例えば、2階)から上階(例えば、3階)へキャレッジ12を移動する場合、
図8(a)に示すように、制御部31は、時刻t1で爪制御部37が係止爪14を出して2階の受材15に係止させる。これによりキャレッジ12が2階に停止している状態から、時刻t2で係止爪14を出したまま持上制御部36がキャレッジ12を2階より僅かに高い位置まで持上げる。
【0095】
時刻t3で2階より僅かに高い位置にて爪制御部37が係止爪14を引っ込め、時刻t4で係止爪14を引っ込めた状態で、昇降制御部33がキャレッジ12を3階まで上昇させ、更に、持上制御部36が3階を越えて、3階より僅かに高い位置まで一気に持上げる。
【0096】
時刻t5で3階より僅かに高い位置にて爪制御部37が係止爪14を出し、時刻t6で係止爪14を出した状態のまま持上制御部36がキャレッジ12を3階まで僅かに下降させ、係止爪14を3階の受材15に係止させることで3階に停止させる。
【0097】
更に、係止爪14と3階の受材15との間の係止によるキャレッジ12の3階への停止後に、重錘制御部48が昇降駆動モータ44を所定の短い時間だけ動かす。これにより、重錘制御部48は、カウンターウェイト42を僅かに持上げて主索41のキャレッジ12側を弛め、昇降駆動モータ44を停止する。
【0098】
反対に、上階(例えば、3階)から下階(例えば、2階)へキャレッジ12を移動する場合、
図8(b)に示すように、制御部31は、時刻t1で爪制御部37が係止爪14を出して3階の受材15に係止させる。これにより、キャレッジ12が3階に停止している状態から、時刻t2で係止爪14を出したまま持上制御部36がキャレッジ12を3階より僅かに高い位置まで持上げる。
【0099】
時刻t3で3階より僅かに高い位置にて爪制御部37が係止爪14を引っ込め、時刻t4で係止爪14を引っ込めた状態で、昇降制御部33および持上制御部36がキャレッジ12を2階より僅かに高い位置まで下降させる。
【0100】
時刻t5で2階より僅かに高い位置にて爪制御部37が係止爪14を出し、時刻t6で係止爪14を出した状態のまま持上制御部36がキャレッジ12を2階まで僅かに下降させ、係止爪14を2階の受材15に係止させることで2階に停止させる。
【0101】
更に、係止爪14と2階の受材15との間の係止によるキャレッジ12の2階への停止後に、重錘制御部48が昇降駆動モータ44を所定の短い時間だけ動かす。これにより、重錘制御部48は、カウンターウェイト42を僅かに持上げて主索41のキャレッジ12側を弛め、昇降駆動モータ44を停止する。
【0102】
なお、1階については、
図5に示すように、キャレッジ12を床面4に直接接地させて停止するようにした場合には、
図9(a)(b)および1階では係止爪14と受材15とを用いる必要がないので、持上げ動作は必要ない。
【0103】
即ち、1階から上階(例えば、2階)へキャレッジ12を移動する場合、
図9(a)に示すように、時刻t1で爪制御部37が係止爪14を引っ込めてキャレッジ12が1階の床面4の上に停止している状態となっている。この状態から、制御部31は、時刻t2で係止爪14を引っ込めたキャレッジ12を昇降制御部33が2階まで上昇させる。更に、持上制御部36は、2階を越えて、2階より僅かに高い位置まで一気にキャレッジ12を持上げる。
【0104】
後は、上記と同様に、時刻t3で2階より僅かに高い位置にて爪制御部37が係止爪14を出す。時刻t4で係止爪14を出した状態のまま持上制御部36がキャレッジ12を2階まで僅かに下降させ、係止爪14を2階の受材15に係止させることで2階に停止させる。
【0105】
更に、係止爪14と2階の受材15との間の係止によるキャレッジ12の2階への停止後に、重錘制御部48が昇降駆動モータ44を所定の短い時間だけ動かす。これにより、重錘制御部48は、カウンターウェイト42を僅かに持上げて主索41のキャレッジ12側を弛め、昇降駆動モータ44を停止する。
【0106】
反対に、上階(例えば、2階)から1階へキャレッジ12を移動する場合、
図9(b)に示すように、制御部31は、時刻t1で爪制御部37が係止爪14を出して2階の受材15に係止させる。これにより、キャレッジ12が2階に停止している状態から、時刻t2で係止爪14を出したまま持上制御部36がキャレッジ12を2階より僅かに高い位置まで持上げる。
【0107】
時刻t3で2階より僅かに高い位置にて爪制御部37が係止爪14を引っ込め、時刻t4で係止爪14を引っ込めた状態で、昇降制御部33がキャレッジ12を1階まで下降させることで1階の床面4の上に停止させる。
【0108】
更に、床面4にキャレッジ12を直接接地させての1階への停止後に、重錘制御部48が昇降駆動モータ44を所定の短い時間だけ動かす。これにより、重錘制御部48は、カウンターウェイト42を僅かに持上げて主索41のキャレッジ12側を弛め、昇降駆動モータ44を停止する。
【0109】
上記において、キャレッジ12は、カウンターウェイト42によってバランスが取られているので、キャレッジ12の昇降の際には、昇降駆動モータ44は、キャレッジ12とカウンターウェイト42との差分の重量を移動させることになる。
【0110】
これに対し、主索41を弛ませるために、カウンターウェイト42を単体で持上げる際には、昇降駆動モータ44は、キャレッジ12よりも重いカウンターウェイト42のみの移動となるので、大きな駆動力が必要になる。なお、上記した主索41の弛みは、カウンターウェイト42を僅かに下降させることで解消されるが、この場合、カウンターウェイト42の自重を利用できるので、昇降駆動モータ44は、特に大きな駆動力を要しない。
【0111】
<効果>この実施例の効果は、以下の通りである。
【0112】
(効果 1)垂直搬送装置1では、キャレッジ12の上部に設けた係止爪14は、停止する階で、案内フレーム13の側へ横に突き出されて、案内フレーム13のその階の部分に設けられた受材15の上に乗せられる。すると、その階で停止したキャレッジ12は、受材15の上に係止爪14が乗ることで、案内フレーム13によって物理的に支持されて重量を支えられ、水平に保持される。また、キャレッジ12は、その階に精度良く停止される。
【0113】
このように、係止爪14によって案内フレーム13に物理的に支持されたキャレッジ12は、停止時の段差発生や、搬送物2および無人搬送車11のキャレッジ12への乗降による沈みや傾斜が確実に防止される。よって、キャレッジ12は、制御的手段によるモータ制御に頼らずに、高い停止精度を確保できる。
【0114】
また、係止爪14はキャレッジ12の上部に設けられても良い。これにより、キャレッジ12の下部に対する構造的な影響がない。よって、垂直搬送装置1を設置する床面4に、例えば、係止爪14を収容するためのピットなどを掘る必要がない。一方、受材15は、各階(の入口)の上部の係止爪14と対応する位置に設けられる。そのため、案内フレーム13は、受材15を設けることによる影響が小さくて済む。よって、垂直搬送装置1は、設置する床面4に対する案内フレーム13の設置スペースを、受材15を設けるために大きくする必要がない。
【0115】
また、係止爪14などの可動部分は、キャレッジ12のみに設ければ良く、案内フレーム13には受材15を設置するだけで済む。そのため、コストをかけずに段差対策ができる。そして、垂直搬送装置1の階層が高くなっても、案内フレーム13に受材15を追加するだけなので、コストの上昇が抑えられる。
【0116】
(効果 2)垂直搬送装置1では、制御部31が、キャレッジ12を別の階へ移動する際に、一時的に係止爪14をキャレッジ12ごと受材15から持上げるようにした。このキャレッジ12の持上げによって、係止爪14が受材15から離れるため、係止爪14は受材15と擦れずに容易に出入りできるようになる。そのため、係止爪14や爪可動機構の負担を少なくして、少ない力で容易かつ確実に係止爪14を出入りさせることができ、係止爪14や受材15は損傷も防止できる。
【0117】
この際、制御部31に持上制御部36を設けて、持上制御部36が昇降駆動機構24を操作することで、構造的な追加を行うことなく、キャレッジ12を持上げることが可能になる。ただし、キャレッジ12の持上げは、ジャッキやシリンダなどの持上装置を追加することによって機械的に行わせることなども可能である。
【0118】
(効果 3)垂直搬送装置1では、制御部31が、キャレッジ12の各階での停止時にカウンターウェイト42を持上げて主索41を弛ませるようにした。これにより、主索41は、停止中の伸びが防止される。そのため、主索41は、損耗や、伸びによる誤差などが低減される。主索41は、キャレッジ12を、係止爪14と受材15を使って物理的に各階に停止させた場合や、1階の床面4の上に接地させて停止した場合などに、弛めることができる。
【0119】
(効果 4)垂直搬送装置1では、カウンターウェイト42を単体で持上げるのに、昇降駆動モータ44は、大きな力が必要になる。そこで、カウンターウェイト42は、重量Wtを、3/5Wc+3/5Wlにした。これにより、カウンターウェイト42の重量を最小化することができ、カウンターウェイト42単体の持上げに要する昇降モータの容量を小さく抑えて、昇降モータの小型化を図ることが可能になる。これは、カウンターウェイト42のみ持上げて主索41を弛めることができる構成(係止爪14と受材15)とする場合に有効となる。