(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168981
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】アルカリ分散型ホットメルト粘着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 153/02 20060101AFI20241128BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20241128BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241128BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241128BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241128BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J123/00
C09J11/08
C09J11/06
C09J7/38
C09J7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086123
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】高森 愛
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J004AB03
4J004CA01
4J004CB02
4J004EA06
4J004FA01
4J040DA002
4J040DA042
4J040DM011
4J040HB22
4J040JA09
4J040JB01
4J040JB09
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA42
4J040LA01
4J040MA10
4J040NA06
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】アルカリ分散性が高く、ラベルの保持力に優れ、糊残りの問題が生じにくく、糸曳きを低減でき、しかも胴巻きラベル同士の接着力に優れた、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤を提供すること。
【解決手段】(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体、(B)メタロセン系オレフィン重合体、(C)粘着付与樹脂、及び(D)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体、
(B)メタロセン系オレフィン重合体、
(C)粘着付与樹脂、及び
(D)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、
アルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【請求項2】
成分(A)~(D)の総重量100重量部に対し、1~20質量部の(B)メタロセン系オレフィン重合体を含む、請求項1に記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【請求項3】
(B)メタロセン系オレフィン重合体は、12,000以上の重量平均分子量を有する、請求項1または2に記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【請求項4】
請求項1に記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤から成る粘着剤層を有するラベル。
【請求項5】
請求項4に記載のラベルが貼着された容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスビン、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどのラベル用粘着剤として好適なアルカリ分散型ホットメルト粘着剤に関するものであり、特に、炭酸飲料用のPETボトルとラベルとの接着に利用される粘着剤として有効なアルカリ分散型ホットメルト粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬、食品や飲料の容器としては、一般的に、アルミ缶、ガラス瓶、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルが広く流通している。これらの容器表面には、粘着剤によってラベルが手剥がしできない強度で貼られている。飲料容器のラベルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、ポリ乳酸(PLA)フィルムの胴巻ラベル(ロールラベル)が多く利用されている。
【0003】
ラベルが貼られた容器を再利用する際、使用後の容器を工場で回収し、加温されたアルカリ水溶液中に容器を浸漬し、ラベルと容器とを分別する必要がある。従って、容器用ラベルに塗布される粘着剤には、アルカリ水溶液で膨潤、軟化、分散、または可溶することで、ラベルを容器から短時間で剥離させる性質(アルカリ分散性)が要求される。
【0004】
特許文献1~4には、スチレン系ブロックコポリマー、粘着付与樹脂、および油脂を含むアルカリ分散型ホットメルト粘着剤が開示されている。これら文献のホットメルト粘着剤は、変性ロジンを粘着付与樹脂として含み、ヤシ油、米油、ひまわり油、菜種油等を油脂として含んでいる。
【0005】
アルカリ分散型ホットメルト粘着剤には、「アルカリ分散性」だけでなく、ラベルと容器の接着性(保持力)にも優れていることが要求される。特に飲料分野では、「アルカリ分散性」および「保持力」と共に、ラベルを容器から剥した後、容器に糊を残さないこと、すなわち、再剥離性に優れることも要求されている。
【0006】
飲料メーカーでは、炭酸飲料を製造する際、ラベルが貼着されたPETボトルに炭酸飲料を充填する工程がある。炭酸飲料を充填し、PETボトルを放置しておくと、二酸化炭素がPETボトルを僅かに膨張させ、ボトルからラベルが浮き、剥がれるという問題が発生することがある。しかしながら、特許文献1、2に記載のホットメルト粘着剤はラベルの浮きや、剥離の問題を解消するのに不十分であった。飲料業界では、保持力が特に優れたアルカリ分散型ホットメルト粘着剤が望まれている。
【0007】
さらに、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤には、塗工時の糸曳き低減も要求されている。ホットメルト粘着剤を塗布する際には、ホットメルトアプリケーターやラベラー等の専用塗布装置が用いられることが多い。ホットメルト粘着剤は約120~190℃に加熱され、専用塗布装置のヘッドから被着体であるラベルに塗布される。ホットメルト粘着剤がラベルへ塗布される際、ヘッドの先端からラベルまでの間にホットメルト粘着剤の糸状物が発生することがある。また、塗布が完了したラベルと、塗布未完了のラベルの間で、糸状物が発生してしまうこともある。この糸状物は、ホットメルト粘着剤の糸曳き性に起因するものであり、ヘッドまたはラベルを汚してしまう。従って、糸曳きの少ないホットメルト粘着剤の開発は、接着剤メーカーにとって重要な責務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-159563号公報
【特許文献2】特開2016-204588号公報
【特許文献3】特開2021-095443号公報
【特許文献4】特開2021-095448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ホットメルト粘着剤に対する性能向上の要求は、近年厳しさが増している。かかる状況において、特許文献1及び2のホットメルト粘着剤は糸曳き性の改善が未だ不十分である。特許文献3、4のホットメルト粘着剤は、糸曳き性が改善されており、この点では業界の要求に応えている。
【0010】
しかしながら、ボトルの胴巻きラベル(二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等)が運搬時の振動等で剥がれてしまう問題が明らかになり、ボトルの胴巻きラベルのフィルム重なり部分の接着力を増強する要求が生じている。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、アルカリ分散性が高く、ラベルの保持力に優れ、糊残りの問題が生じにくく、糸曳きを低減でき、しかも胴巻きラベル同士の接着力に優れた、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明および本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
【0013】
1.(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体、
(B)メタロセン系オレフィン重合体
(C)粘着付与樹脂、及び
(D)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、
アルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0014】
2.成分(A)~(D)の総重量100重量部に対し、1~20質量部の(B)メタロセン系オレフィン重合体を含む、態様1のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0015】
3.(B)メタロセン系オレフィン重合体は、重量平均分子量が12,000以上の重量平均分子量重合体を有する、態様1または2のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0016】
4.(B)メタロセン系オレフィン重合体は、エチレンと炭素数3~20のオレフィンとの共重合体を含む、態様1~3のいずれかのアルカリ分散ホットメルト粘着剤。
【0017】
5.(A)熱可塑性ブロック共重合体が(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体を含む、態様1~4のいずれかのアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0018】
6.成分(A)~(D)の総重量100重量部に対し、70質量部以上の(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体を含む、態様5のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0019】
7.(C)粘着付与樹脂がロジンエステル及びα-メチルスチレン系樹脂を含む、態様1~6のいずれかのアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0020】
8.さらに、フィッシャートロプシュワックスを含む、態様1~7のいずれかのアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0021】
9.態様1~8のいずれかのアルカリ分散型ホットメルト粘着剤から成る粘着剤層を有するラベル。
【0022】
10.容器の胴体部分に巻回された場合に相互に接着される、フィルム両端の重なり部分に、態様1~8のいずれかのアルカリ分散型ホットメルト粘着剤から成る粘着剤層を有する、胴巻きラベル。
【0023】
11.ポリプロピレンフィルムから成る基材を有する、態様9又は10のラベル。
【0024】
12.態様9~11のいずれかのラベルが貼着された容器。
【発明の効果】
【0025】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、PETボトル、ガラス瓶等の容器にラベルを接着するのに用いることができ、ラベルの保持力に優れる。例えば、炭酸飲料が充填されたPETボトル等の容器に、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤でラベルを容器に貼着すると、容器が膨張してもラベルのずれ及び浮きが発生しにくくなる。
【0026】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、アルカリ分散性が高く、ラベルが貼付された状態で容器をアルカリ水溶液に浸したとき、糊残りがなく、ラベルを綺麗に剥がすことができる。さらに、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、手の力等でラベルを再剥離することができ、ラベルを再剥離した時の糊残りが少ない。
【0027】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、上記性能に優れることによって、リサイクル処理する容器等に用いるのに適している。
【0028】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、専用の塗布装置等を用いてラベル等に塗布されるが、塗布される際に糸曳きが発生するのを抑えることができる。
【0029】
また、本発明のホットメルト粘着剤は胴巻きラベル同士の接着力、特にせん断強度に優れ、容器にラベルを貼着し、このラベル付き容器を長時間運搬しても、胴巻きラベルのフィルム重なり部分が運搬時の振動等で容器から剥離することがない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係るアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体、(B)メタロセン系オレフィン重合体、(C)粘着付与樹脂、及び(D)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の4成分の全て含んでいる。
【0031】
なお、本明細書においては、それぞれ、「成分(A)」、「成分(B)」「成分(C)」および「成分(D)」と記載することもあり、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤のことを、単に「ホットメルト粘着剤」と記載することもある。
【0032】
<(A)熱可塑性ブロック共重合体>
「(A)熱可塑性ブロック共重合体」とは、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とがブロック共重合した共重合体であって、通常、ビニル系芳香族炭化水素ブロックと共役ジエン化合物ブロックを有する樹脂組成物である。
【0033】
ここで、「ビニル系芳香族炭化水素」とは、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物を意味し、具体的には、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、及びビニルアントラセン等を例示できる。特にスチレンが好ましい。これらのビニル系芳香族炭化水素は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0034】
「共役ジエン化合物」とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物を意味する。「共役ジエン化合物」として、具体的には、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(又はイソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンを例示することができる。1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0035】
本発明に用いる(A)熱可塑性ブロック共重合体は、未水素添加物であっても、水素添加物であってもよい。
【0036】
(A)熱可塑性ブロック共重合体の「未水素添加物」とは、具体的には、共役ジエン化合物に基づくブロックが水素添加されていないものを例示できる。また、「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」とは、具体的には、共役ジエン化合物に基づくブロックの全部、または一部が水素添加されたブロック共重合体を例示できる。
【0037】
(A)熱可塑性ブロック共重合体の「水素添加物」の水素添加された割合を、「水素添加率」で示すことができる。「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」の「水素添加率」とは、共役ジエン化合物に基づくブロックに含まれる全脂肪族二重結合を基準とし、その中で、水素添加されて飽和炭化水素結合に転換された二重結合の割合をいう。この「水素添加率」は、赤外分光光度計及び核磁器共鳴装置等によって測定することができる。
【0038】
本発明の一態様として、(A)熱可塑性ブロック共重合体が、スチレン系ブロック共重合体であるのが好ましい。スチレン系ブロック共重合体とは、少なくとも1つのスチレンブロックを有するポリマーを意味する。スチレンブロックとは、スチレンを主モノマーとするセグメントを意味し、実質的にスチレンのみからセグメントであるのが好ましい。
【0039】
「(A)熱可塑性ブロック共重合体の未水素添加物」として、具体的には、例えばスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(「SIS」ともいう)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(「SBS」ともいう)を例示できる。「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」として、具体的には、例えば水素添加されたスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(「SEPS」ともいう)、水素添加されたスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(「SEBS」ともいう)、および、スチレン-ブチレン・ブタジエン-スチレンブロック共重合体(「SBBS」ともいう)を例示できる。
【0040】
本発明において、成分(A)として含まれる化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定はされないが、1.0×104~3.0×105であることが好ましく、5.0×104~2.0×105であることがより好ましい。
【0041】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量を換算して求められる。
【0042】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、(A)熱可塑性ブロック共重合体を含むことによって、凝集力に優れたものとなり、ラベルの保持力と糊残りのバランスに優れ、胴巻きラベル同士の接着部分のせん断強度が向上する。
【0043】
本発明の一態様において、(A)熱可塑性ブロック共重合体(成分(A)は、(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体(「成分(A1)」と記載することもある。)を含むのが好ましい。「スチレン含有率」とは、熱可塑性ブロック共重合体に含まれるスチレンの割合をいう。成分(A1)のスチレン含有率は、好ましくは40質量%未満であり、より好ましくは35質量%未満であり、さらに好ましくは15質量%以上35質量%未満である。
【0044】
本発明のホットメルト粘着剤は、スチレン含有率が上記範囲内にある成分(A1)を含むことにより、ラベルをPETボトル等の容器へ安定して保持できるようになり、ラベルの浮き、ずれ等が起こりにくくなる。
【0045】
本発明のホットメルト粘着剤は、成分(A)の総量100質量部に対し、成分(A1)の含有量が70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、100質量部であってもよい。本発明のホットメルト粘着剤は、成分(A1)の含有量が上記範囲内にあると、保持力がより向上する。
【0046】
(A)熱可塑性ブロック共重合体は、単独で又は複数種類を組み合わせて用いることができ、一実施態様として、(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体と、(A1)に該当しないスチレン系ブロック共重合体とが配合されていても差し支えない。(A1)に該当しないスチレン系ブロック共重合体とは、スチレン含有率が40質量%以上のものを意味する(以下、「(A2)スチレン含有率が40質量%以上のスチレン系ブロック共重合体」、または、「成分(A2)」と記載することもある。)。
【0047】
本発明において、(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体として、市販品を用いることができる。例えば、
旭化成ケミカルズ社(株)製のタフプレンT420(商品名)、タフテックP3000(商品名)、タフテックH1053(商品名);
日本ゼオン社製のQuintac3460(商品名)、Quintac3433N(商品名)、Quintac3520(商品名)、Quintac3270(商品名);
クレイトン社製のD1160(商品名)、Kraton G1650(商品名)、Kraton G1652(商品名)、Kraton G1657(商品名)を例示できる。
【0048】
成分(A)としては、ジブロック含有率が0質量%であるトリブロック型スチレン系ブロック共重合体であることが好ましく、特に、成分(A1)として、ジブロック含有率が0質量%のトリブロック型スチレン系ブロック共重合体を用いると、ホットメルト粘着剤の保持力がより優れたものとなる。
【0049】
本明細書において「ジブロック」とは、二つのブロックを有するブロック共重合体を意味するが、通常「ビニル系芳香族炭化水素ブロック」、好ましくは「スチレンブロック」と、「共役ジエン化合物ブロック(水素添加されていてもよい)」とを一つずつ有するブロック共重合体を意味し、例えば下記式(1)で示すことができる。
【0050】
S-E (1)
(式(1)中、Sはスチレンブロック、Eは共役ジエン化合物ブロックである。)
【0051】
本明細書において、成分(A)の「ジブロック含有率」とは、成分(A)の熱可塑性共重合体に含まれるジブロック共重合体(好ましくは、式(1)で表されるスチレンブロックと共役ジエン化合物ブロックを1つずつ有するブロック共重合体)の割合のことをいう。
【0052】
トリブロック型スチレン系ブロック共重合体は、例えば、下記式(2)で表される構造を有し、それ以外のブロックを含まないスチレン系ブロック共重合体であるのが好ましい。
【0053】
S-E-S (2)
(式(2)中、Sはスチレンブロック、Eは共役ジエン化合物ブロックである。)
【0054】
本明細書では、トリブロック型スチレン系ブロック共重合体はジブロック含有率が0質量%であり、ジブロック型スチレン系ブロック共重合体とは区別される。
【0055】
本発明では、成分(A1)がスチレン―エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)トリブロック共重合体であることが最も望ましい。本発明のホットメルト粘着剤は、スチレン―エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)トリブロック共重合体を含むことによって、凝集力が著しく向上する。これにより、ホットメルト粘着剤を用いてラベルを容器に接着させたとき、長期間にわたって容器からラベルが浮くことなく、かつ、ラベルがずれることもなく、ラベルの接着を保持することができる。
【0056】
(A2)スチレン含有率が40質量%以上のスチレン系ブロック共重合体の市販品としては、旭化成ケミカルズ社製のアサプレンT439(商品名)、タフプレン125(商品名)、タフプレンA(商品名)、タフテックP2000(商品名)、タフテックH1043(商品名)、タフテックH1051(商品名);
JSR社製のTR2000(商品名)、TR2250(商品名);
Enichem社製のSOlT6414(商品名)が挙げられる。これらの市販品は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0057】
<(B)メタロセン系オレフィン重合体>
「(B)メタロセン系オレフィン重合体」とは、メタロセン触媒の存在下でオレフィンが重合したポリマーをいう。メタロセン系オレフィン重合体には、分子中にメタロセン触媒に由来する化学構造が含まれる。メタロセン触媒に由来する化学構造の一例として、下記式(I)に示されるような、メタロセン触媒そのもの、あるいは式(I)の変性体をも含んだ化学構造を挙げることができる。
【0058】
【0059】
式(I)中、Mは金属、またはハロゲン原子等が結合した金属を表す。
【0060】
(B)メタロセン系オレフィン重合体の170℃の粘度は、10,000mPa・s以下であり、1000~10,000mPa・sであることがより好ましく、2000~8000mPa・sであることがさらに好ましい。(B)メタロセン系オレフィン重合体の170℃の粘度は、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)で測定される。
【0061】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤が(B)メタロセン系オレフィン重合体を含む場合、このホットメルト粘着剤でラベルを容器に接着させたとき、長期間にわたって容器からラベルが浮くことなく、かつ、ラベルがずれることもない。また、本発明のホットメルト粘着剤で容器へ貼着された胴巻きラベルは、このラベル付き容器を長時間運搬しても、胴巻きラベルのフィルム重なり部分が運搬時の振動等で容器から剥離することがない。
【0062】
メタロセン触媒を用いてオレフィンを重合すると、(i)結晶性を有し、(ii)非常に分子量分布の狭い(B)メタロセン系オレフィン重合体が合成される。(i)は、完全なアイソタクティック性、シンジオタクティック性を任意に制御できることを意味する。従って、結晶性に偏りを生じさせることが無く、メチル基の並び方や割合等について均一な重合体が得られ、付着力低下の原因となる低結晶性部位が生じる可能性が低い。(ii)については、(B)メタロセン系オレフィン重合体の分子量分布の程度を多分散度(Mw/Mn)で表すと、好ましくは1.0~3.5となる。多分散度1.0~3.5のポリオレフィンを含むホットメルト接着剤は、接着力に優れたものとなる。分子量分布とは、合成高分子の分子量の分布を示す概念であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(多分散度:Mw/Mn)が尺度となる。本発明では、分子量分布の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でなされる。
【0063】
(B)メタロセン系オレフィン重合体は、ホモポリマーであっても、コポリマーであっても差し支えない。ホモポリマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等が挙げられる。
【0064】
本明細書において、コポリマーとは、エチレンと、エチレンと共重合し得る共重合性モノマーとの共重合体のことをいう。共重合性モノマーとしては、プロピレン、1-オクテン、1-ブテン等のα-オレフィン;酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸(エステル);無水マレイン酸、無水フタル酸等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物等を例示できる。これら共重合性モノマーはエチレンと単独で共重合されてもよいし、2種以上の共重合性モノマーが共重合されてもよい。
【0065】
すなわち、本発明において、(B)メタロセン系オレフィン重合体としては、エチレン及びプロピレン等のホモポリマー、エチレン共重合体として、エチレン/α-オレフィンコポリマー、エチレン/エチレン性二重結合を有するカルボン酸共重合体、エチレン/エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル共重合体、エチレン/エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物共重合体を例示できる。なお、本明細書においては、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」といい、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを総称して「(メタ)アクリル酸エステル」という。エチレン/α-オレフィンコポリマーとしては、例えば、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/1-オクテンコポリマー、エチレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/プロピレン/1-ブテンコポリマーが挙げられる。
【0066】
糸曳性及び胴巻きラベル保持性を改善する観点から、(B)メタロセン系オレフィン重合体は、エチレンと炭素数3~20のオレフィンとのコポリマーであることが好ましく、ポリエチレン又はポリプロピレン等をベースとするポリマーであることが更に好ましく、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/オクテンコポリマーであることが特に好ましく、エチレン/プロピレンコポリマーであることが最も望ましい。
【0067】
本発明のホットメルト接着剤は、(B)メタロセン系オレフィン重合体がエチレン/プロピレンコポリマーである場合、特に、塗工性に優れ、糸曳きの少ないものとなる。さらに、本発明のホットメルト粘着剤で容器にラベルを貼着し、このラベル付き容器を長時間運搬しても、胴巻きラベルのフィルム重なり部分が運搬時の振動等で容器から剥離することがなくなる。
【0068】
本発明では、(B)メタロセン系オレフィン重合体の重量平均分子量は12,000以上が好ましく、特に15,000以上が好ましく、20,000~500,000がさらに望ましく、25,000~400,000が最も望ましい。成分(B)の重量平均分子量が上記範囲であることによって、糊残りと保持力のバランスを保ちつつ、ラベル付き容器を長時間運搬しても、ラベルのフィルム重なり部分が容器から剥離し難くなる。
【0069】
重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を意味する。具体的には、下記の装置及び測定方法を用いて値を測定することができる。検出器として、ウォーターズ社製のRIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKGEL GMHHR-H(S)HTを用いる。試料を1,2,4-トリクロロベンゼンに溶解して、流速を1.0ml/min、測定温度を145℃にて流し、ポリプロピレンによる検量線を用いて分子量の換算を行い、重量平均分子量を求める。
【0070】
尚、数平均分子量(Mn)も同方法で求められるので、分子量分布もGPCで算出されることになる。
【0071】
(B)メタロセン系オレフィン重合体の市販品としては、
メタロセン系エチレン/プロピレンコポリマーとして、例えば、エクソンモービル社製のビスタマックス8780(商品名)、ビスタマックス8880(商品名)等;
メタロセン系エチレン/オクテンコポリマーとして、例えば、ダウケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティGA1875(商品名)、アフィニティGA1000R(商品名)、アフィニティEG8185(商品名)、アフィニティEG8200(商品名)、エンゲージ8137(商品名)、エンゲージ8180(商品名)、エンゲージ8400(商品名)等;
メタロセン系エチレン/ヘキセンコポリマーとして、例えば、東ソー社製のニポロンZHM510R、住友化学社製のエクセレンFX402等;
メタロセン系プロピレンホモポリマーとして、例えば、出光興産社製のエルモーデュS400、エルモーデュS600等が挙げられる
【0072】
<(C)粘着付与樹脂>
本発明のホットメルト粘着剤は、(C)粘着付与樹脂(成分(C))を含むことにより、容器に対するラベルの保持力を向上することができる。「粘着付与樹脂」は、ホットメルト粘着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト粘着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。なお、本明細書において、成分(C)は、上記成分(A)として説明した化合物は含まないものとする。
【0073】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、(C)粘着付与樹脂を含むことによって、各成分の相溶性に優れ、ラベルの保持力と糊残りのバランスが向上し、胴巻きラベル同士の接着部分のせん断強度も高まり、糸曳低減性にも優れ、総合的なバランスに優れたものとなる。
【0074】
粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。
【0075】
これらのうち、成分(C)として、酸価が0~300mgKOH/gの粘着付与樹脂を含むことが好ましく、酸価が50~300mgKOH/gのロジン系粘着付与樹脂を含むことがより好ましく、酸価が100~300mgKOH/gのロジン系粘着付与樹脂を含むことがさらに好ましく、酸価が100~250mgKOH/gのロジン系粘着付与樹脂を含むことが最も好ましい。酸価が該範囲内であると、本発明のホットメルト粘着剤のアルカリ分散性がより向上する。
【0076】
本発明の一態様として、(C)粘着付与樹脂が、上記ロジン系粘着付与樹脂に加えてα-メチルスチレン系樹脂を含んでいるのが好ましい。α-メチルスチレン系樹脂は、ホットメルト粘着剤の凝集性を高め、再剥離性および保持力が向上する。α-メチルスチレン系樹脂としては、例えば、α-メチルスチレン単独重合体又はスチレン/α-メチルスチレン共重合体が用いられる。
【0077】
本発明の一実施態様として、成分(C)としてのα-メチルスチレン系樹脂は、スチレン/α-メチルスチレン共重合体が好ましい。また、α-メチルスチレン系樹脂は、軟化点(JIS K2207に規定する環球法で測定)が65℃~160℃のものが好ましく、軟化点が85~160℃のものがより好ましい。具体的には、イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、クリスタレックス3100(商品名)、クリスタレックス1120(商品名)、クリスタレックス5140(商品名)、Endix155、Plastrin290、三井化学社製のFTR-2120(商品名)等の市販品を例示できる。
【0078】
これらの粘着付与樹脂は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色~淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。
【0079】
<(D)脂肪酸およびその誘導体>
本発明のホットメルト粘着剤は、(D)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種(成分(D))を含む。ホットメルト粘着剤が、成分(D)を含むことにより、本発明のホットメルト粘着剤は、アルカリ分散性に優れたものとなる。成分(D)は一種の化合物を単独で含んでもよいし、二種以上を含んでもよい。
【0080】
本明細書において、脂肪酸とは、カルボキシ基を少なくとも1つ有する脂肪族カルボン酸のことをいい、ヒドロキシ基を有していてもよい。脂肪酸は、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸に大別される。飽和脂肪酸とは、炭素鎖に二重結合あるいは三重結合を有さない酸である。不飽和脂肪酸とは、炭素鎖に二重結合あるいは三重結合を有する酸である。
【0081】
飽和脂肪酸としては、本発明のホットメルト粘着剤に悪影響を与えないものであれば差し支えなく、炭素数1~30のものが好ましく、炭素数3~26のものがより好ましく、炭素数8~24のものがより好ましく、炭素数12~22のものがさらに好ましく、炭素数14~22のものがよりさらに好ましい。また、飽和脂肪酸は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状であることが好ましい。鎖状の飽和脂肪酸は、直鎖であっても分岐鎖を有していてもよく、直鎖飽和脂肪酸が好ましい。飽和脂肪酸としては、具体的には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、トリコシル酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が例示される。
【0082】
不飽和脂肪酸としては、本発明のホットメルト粘着剤に悪影響を与えないものであれば差し支えなく、炭素数3~26のものが好ましく、炭素数4~22のものがより好ましく、炭素数14~22のものがさらに好ましい。
【0083】
不飽和脂肪酸の炭素/炭素間の不飽和結合数は、1~6が好ましく、1~3がさらに好ましく、1~2が最も好ましい。
【0084】
不飽和脂肪酸としては、クロトン酸、オレイン酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リシノール酸等が挙げられる。
【0085】
本明細書において、脂肪酸誘導体とは、上記脂肪酸の置換、あるいはその他化学反応によって得られる化合物とする。脂肪酸誘導体としては、油脂、硬化油、脂肪酸アミド、脂肪酸アルキルエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられ、油脂および硬化油が好ましく、硬化油がより好ましい。「油脂」は、脂肪酸とグリセリンとのエステルであるトリグリセリド(トリアシルグリセロール)を主成分とする。
【0086】
本発明のホットメルト粘着剤は、一般に食用または工業用油脂として用いられる油脂を含んでもよい。油脂は、常温(約20~26℃)で液体であっても固体であってもよく、常温で液体のものが好ましく、植物油が好ましい。油脂としては、例えば、コーン油、大豆油、エポキシ化大豆油、ごま油、アマニ油、オリーブオイル、レタス油、魚油、バター、ラード、ヒマシ油、菜種油、ひまわり油、米油、綿実油が挙げられ、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
「硬化油」は、常温で液体である油脂に水素添加を行い、より融点の高い飽和脂肪酸の割合を増加させることで、常温で油脂が固形化されたものである。「硬化油」は、本発明のホットメルト粘着剤に悪影響を与えないものであれば差し支えなく、具体的には、水素添加されたヒマシ油(すなわち、水添ヒマシ油)、水添大豆油、水添サラダ油等が例示される。
【0088】
本発明のホットメルト粘着剤において、(D)脂肪酸またはその誘導体として、(D1)融点40℃以上の脂肪酸誘導体(「成分(D1)」、または、「(D1)脂肪酸誘導体」とも記載する)を含んでいる。(D1)脂肪酸誘導体の融点は、45~120℃であることが好ましく、50~100℃であることがより好ましく、50~90℃であることがさらに好ましい。本発明の一態様において、ホットメルト粘着剤が、融点50~100℃のヒマシ油を含むのが好ましい。成分(D1)は、1種を単独で含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0089】
本発明のホットメルト粘着剤は、(D1)脂肪酸誘導体の融点が上記範囲にあることによって、保持力が向上するので、ラベル用ホットメルト粘着剤に適したものとなる。本発明のホットメルト粘着剤を介し、炭酸飲料用のPETボトルとラベルを接着した場合、PETボトルが炭酸ガスで膨張しても、ラベルはズレや浮きがない状態でPETボトルに長期間保持される。さらに、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、胴巻きラベル同士の接着部分のせん断強度に優れ、糸曳低減性も向上するので、総合的なバランスに優れたものとなる。
【0090】
本明細書において、融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定された値をいう。具体的には、SIIナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名)を用い、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度5℃/minで測定して、融解ピークの頂点の温度を融点という。
【0091】
成分(D)の総量100質量部に対し、成分(D1)の含有量は、40質量部以上であるのが好ましく、50質量部以上であるのがより好ましく、60質量部以上であるのがさらに好ましく、100質量部であってもよい。本発明の一態様においては、成分(D1)に加えて、(D2)融点40℃未満の脂肪酸誘導体(好ましくは融点40℃未満の油脂)を含んでもよい。
【0092】
本発明において、(D1)脂肪酸誘導体として硬化油を含んでいるのが好ましい。成分(D1)としての硬化油の融点は、40℃以上であり、50~100℃が好ましく、50~90℃がより好ましい。融点が40℃以上の硬化油を含むことにより、本発明のホットメルト粘着剤は、高温でも溶融することなく固形化が保たれ、ラベル等の被着体との凝集力が向上し、高い保持力を有するようになる。
【0093】
硬化油としては、例えば、水素添加されたヒマシ油(すなわち、水添ヒマシ油)、水添大豆油、水添サラダ油、水添菜種油、水添パーム油、牛脂硬化油等が挙げられ、特に、水添ヒマシ油、水添大豆油、水添菜種油が好ましく、水添ヒマシ油が最も好ましい。
【0094】
本発明のホットメルト粘着剤は、融点が40℃以上の水添ヒマシ油を含むと、特に保持力に優れたものとなる。本発明の一態様において、ホットメルト粘着剤が、成分(D1)として、融点50~100℃の水素添加されたヒマシ油を含むのが好ましい。
【0095】
本発明では、(D)脂肪酸またはその誘導体としては、市販品を用いることができる。
【0096】
(D1)脂肪酸誘導体の市販品としては、例えば、ヒマシ硬化油A(商品名)、テクノールMH(商品名)、テクノロールML98(商品名)、12-ヒドロキシステアリン酸(商品名)、水添大豆油(商品名)、水添ナタネ種子油(商品名)、水添パーム油(商品名)、ライスワックスSS-1(商品名)が挙げられる。
【0097】
成分(D1)以外の脂肪酸誘導体の市販品としては、例えば、
昭和産業社製のFSオイル(商品名)、プライムテイスト(商品名);
ボーソー油脂社製の米油(商品名)、こめサラダ油(商品名);
岡村油脂社製の綿実油(商品名);
理研ビタミン社製のリケマール(商品名);
日油社製のノニオン(商品名);等が挙げられる。
【0098】
これら市販の脂肪酸誘導体は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0099】
本発明のホットメルト粘着剤は、成分(A)~成分(D)以外に、ワックスを含んでもよい。
【0100】
「ワックス」は、常温で固体、加熱すると液体となる有機物であって、ホットメルト粘着剤に一般的に用いられるワックスであって、本発明が目的とするホットメルト粘着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。ワックスは、一般に、低重合体(即ち、オリゴマー)である。本明細書では、ワックスは、重量平均分子量が12,000未満の低重合体とする。ワックスとしては、具体的に、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)等の合成ワックス系;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス;カスターワックスなどの天然ワックス;等を例示できる。
【0101】
本発明のホットメルト粘着剤がワックスを含むことにより、ラベルを容器から剥がす際、ホットメルト粘着剤の容器への糊残りが少なくなる。
【0102】
本発明の一態様において、ワックスはフィッシャートロプシュワックスを含むのが好ましい。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。フィッシャートロプシュワックスによって、ラベルを容器から剥離する際のホットメルト粘着剤の糊残りがより少なくなる。
【0103】
本発明のホットメルト粘着剤は、可塑剤を含んでもよい。
【0104】
可塑剤は、ホットメルト粘着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、他の成分と相溶し、本発明が目的とするホットメルト粘着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを例示することができる。特にパラフィン系オイル及び/又はナフテン系オイルが好ましく、無色、無臭であるパラフィン系オイルが最も好ましい。
【0105】
可塑剤の市販品の一例として、例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS-32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、ダフニ-オイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エクソン社製のPrimol352(商品名)、出光興産社製のプロセスオイルNS-100(商品名)、ペトロチャイナ社製のDN4010を例示することができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0106】
可塑剤を配合することで、本発明のホットメルト粘着剤に含まれる成分(A)~(C)の相溶性が向上し、さらには、その他成分との相溶性も向上し、結果的に、ホットメルト粘着剤の粘着性、接着性や塗工適正が向上する。
【0107】
本発明に係るホットメルト粘着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、安定化剤、及び微粒子充填剤を例示することができる。
【0108】
「安定化剤」とは、ホットメルト粘着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト粘着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト粘着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」として、例えば酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0109】
「酸化防止剤」として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。「紫外線吸収剤」として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。酸化防止剤の市販品として、以下の製品を使用することができる。
【0110】
具体的には、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、BASF社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、チヌビンP、城北化学社製のJF77(商品名)、ADEKA社製のアデカスタブAO-60(商品名)、アデカスタブAO-412S(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0111】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト粘着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト粘着剤の酸化劣化を防止するために使用される。
【0112】
本発明のホットメルト粘着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト粘着剤を得ることができる限り特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0113】
本発明に係るホットメルト粘着剤は、一般的に知られているホットメルト粘着剤の製造方法を用いて、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)と、好ましくはワックス、可塑剤や安定化剤、更に必要に応じて各種添加剤とを配合して製造することができる。ホットメルト粘着剤は、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト粘着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0114】
本発明のホットメルト粘着剤において、成分(A)の配合量は、特に限定はされないが、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の総質量100質量部に対し、10~30質量部であるのが好ましく、15~30質量部であるのがより好ましく、15~25質量部であるのが更に好ましい。
【0115】
成分(A)の配合量が上記範囲にあることによって、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、凝集力高まり、ラベルをずらすことなく容器へ貼着し易くなり、胴巻きラベル同士(例えば、OPPフィルム同士)の接着部分のせん断強度を向上させる。さらに、(A)熱可塑性ブロック共重合体の配合量は、ホットメルト粘着剤の糸曳低減にも寄与する。
【0116】
本発明のホットメルト粘着剤において、成分(B)の配合量は、特に限定はされないが、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の総質量100質量部に対し、1~20質量部であるのが好ましく、3~15質量部であるのがより好ましく、4~10質量部が更に望ましい。成分(B)の配合量が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト粘着剤は、ラベルの保持力と糊残りのバランスに優れたものとなる。さらに、本発明のホットメルト粘着剤を有するラベル付き容器を長時間運搬しても、胴巻きラベルのフィルム重なり部分が運搬時の振動等で容器から剥離し難くなる。
【0117】
本発明のホットメルト粘着剤において、成分(C)の配合量は、特に限定はされないが、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の総質量100質量部に対し、40~80質量部であるのが好ましく、50~75質量部であるのがより好ましく、60~71質量部が最も望ましい。成分(C)の配合量が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト粘着剤は、粘着剤として安定したものとなり、保持力、糊残り低下、及び糸曳き低減のバランスに優れたものとなる。さらに、本発明のホットメルト粘着剤を有するラベル付き容器を長時間運搬しても、胴巻きラベルのフィルム重なり部分が運搬時の振動等で容器から剥離し難くなる。
【0118】
本発明のホットメルト粘着剤において、成分(D)の配合量は、特に限定はされないが、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の総質量100質量部に対し、5~18質量部であるのが好ましく、7~15質量部であるのがより好ましく、9~13質量部であるのがより好ましい。成分(D)の配合量が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト粘着剤は、アルカリ分散型性が向上し、保持力を維持しつつ、剥離時の被着体への糊残りを少なくすることができ、糸曳低減にも寄与する。さらに、本発明のホットメルト粘着剤を有するラベル付き容器を長時間運搬しても、胴巻きラベルのフィルム重なり部分が運搬時の振動等で容器から剥離し難くなる。
【0119】
本発明のホットメルト粘着剤において、ホットメルト粘着剤の全質量に対する、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計含有量は、特に限定はされないが、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60~85質量部、更に好ましくは65~75質量部である。
【0120】
本発明のホットメルト粘着剤において、ワックスの配合量は、特に限定はされず、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の総質量100質量部に対し、0質量部であってもよいが、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~8質量部であり、更に好ましくは2.5~6質量部である。
【0121】
本発明の一態様において、ホットメルト粘着剤は、フィッシャートロプシュワックスを含むのが好ましく、ワックスの総量に対するフィッシャートロプシュワックスの配合量は、特に限定はされないが、50質量%以上であるのが好ましく、65質量%以上であるのがより好ましく、100質量%であってもよい。
【0122】
本発明の好ましい一態様として、ホットメルト粘着剤は、160℃での粘度(又は溶融粘度)が4000mPa・s以下であることが好ましく、3000mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以下であることが更に好ましい。ホットメルト粘着剤は、160℃での粘度が上記範囲にあることによって、よりいっそう塗工に適したものとなる。本明細書の160℃での粘度(又は溶融粘度)とは、27番ローターを用い、ブルックフィールド粘度計で測定された値を意味する。
【0123】
本発明に係るラベルは、基材と、上記ホットメルト粘着剤から成る粘着剤層とを有するものである。基材として、具体的には、紙、加工紙(アルミ蒸着加工、アルミラミネート加工、ニス加工、樹脂加工等を施された紙)、合成紙等の紙類、有機化合物フィルム、無機化合物フィルム、金属製フィルム等が挙げられる。
【0124】
ラベルの基材は、特に、アルカリ洗浄に供されることの多いポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等の有機化合物のフィルムが好ましい。ポリプロピレンフィルムとしては、特に二軸延伸されたポリプロピレン(OPP)フィルムが好ましい。
【0125】
粘着剤層は、ラベル裏面全体に形成されても、ラベル裏面の一部に形成されても差支えない。例えば、胴巻きラベルにおいては、容器の胴体部分に巻回された場合に相互に接着される、フィルム両端の重なり部分に、粘着剤層が形成されてよい。
【0126】
粘着剤層は、ホットメルト粘着剤を基材の面に塗布して形成することができる。塗布方式としては、オープンホイール方式、クローズガン方式、ダイレクトコート方式などがある。ラベルを剥がした際、PETボトルに糊が残らない方式として、オープンホイール方式、ダイレクトコート方式が好ましい。
【0127】
本発明に係る容器は、その表面に上記ラベルが貼着されたものである。かかる容器としては、清涼飲料水、調味料、洗剤、シャンプー、食用油、化粧品、医薬品などに使用されているガラス瓶などのガラス容器;PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどのプラスチック容器;アルミニウム等の金属缶;が例示される。上述の容器のうち、特にPETボトルが本発明では好ましい。PETボトルに本発明のラベルが貼着されている例としては、PETボトルの胴周りの一部にラベルが貼着されたもの、及びボトルの胴周りを周状に覆うように巻回された「胴巻きラベル」が貼着されたものが、本発明の一実施形態として挙げられる。本発明のホットメルト粘着剤は保持力に優れるため、PETボトル等の容器に炭酸飲料が充填されていること等により容器が膨張しても、ラベルがずれたり浮いたりするのを抑制することができる。
【0128】
本発明のホットメルト粘着剤は、胴巻きラベルの接着に好ましく用いられる。胴巻きラベルの基材としては、二軸延伸されたポリプロピレン(OPP)フィルムを使用してよい。本発明のホットメルト粘着剤が塗布されるラベルは、印刷が施されていてもよいし、施されていなくてもよい。印刷が施されているラベルを用いる場合、本発明のホットメルト粘着剤は、印刷が施されていない面に限らず、印刷が施されている面に塗布されてもよい。
【0129】
本発明のホットメルト粘着剤を用い、PETボトルにラベルを貼付する装置の一種として、オープンホイール方式の装置が挙げられる。オープンホイール方式の装置によって、ホットメルト粘着剤を120~190℃で溶融し、ラベル裏面に塗工する。このラベルをPETボトルに貼付け、本発明の容器が製造される。
【0130】
本発明のホットメルト粘着剤によりラベルが貼着された容器は、熱アルカリ溶液につけると簡単にラベルが容器から剥離するので、容器の再利用等に適している。熱アルカリ溶液によりラベルを剥離する方法としては、特に限定されないが、例えば、ラベルが貼着された容器を裁断し小片化してペレットにし、熱アルカリ水溶液(例えば、温度80℃~90℃、濃度0.5~5.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液)にこのペレットを入れて約1分~20分間撹拌する方法を挙げることができる。
【0131】
また、本発明のホットメルト粘着剤によりラベルが貼着された容器は、通常の容器の使用時にはラベルが容器から剥がれることなく十分な接着性を有する一方、容器の使用後等にラベルを剥がすときは、糊残りなく手で剥がすこともでき、再剥離性に優れる。
【0132】
さらに、このラベル付き容器を長時間運搬しても、胴巻きラベルのフィルム重なり部分が運搬時の振動等で容器から剥離することがない。
【実施例0133】
以下、本発明を、更に詳細に、かつ、具体的に説明することを目的として、実施例を用いて説明するが、これら実施例は、本発明を何ら制限するものではない。
【0134】
実施例および比較例において、ホットメルト粘着剤に配合する成分を以下に示す。
【0135】
(A)熱可塑性ブロック共重合体
(A1)スチレン含有率が40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体
(A1-1)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1652(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量72,000)
(A1-2)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1650(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量92,000)
(A1-3)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1726(商品名)、スチレン含有率31質量%、ジブロック含有率73質量%、重量平均分子量43,000)
(A1-4)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1657(商品名)、スチレン含有率15質量%、ジブロック含有率33質量%、重量平均分子量106,000)
【0136】
(A2)スチレン含有率が40質量%以上のスチレン系ブロック共重合体
(A2-1)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のタフテックH1043(商品名)、スチレン含有率68質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量53,000)
(A2-2)スチレン―ブタジエン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のタフテックP2000(商品名)、スチレン含有率68質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量54,000)
(A2-3)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のアサプレンT-439(商品名)、スチレン含有率46質量%、ジブロック含有率69質量%、重量平均分子量63,000)
(A2-4)スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンD-1162P(商品名)、スチレン含有率41質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量82,000)
【0137】
(B)メタロセン系オレフィン重合体
(B1)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体(エクソンモービル社製のビスタマックス8780(商品名)、重量平均分子量:30,000、エチレン含有量:12質量%)
(B2)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体(エクソンモービル社製のビスタマックス8880(商品名)、重量平均分子量:25,000、エチレン含有量:6.0質量%、融点:97℃、190℃溶融粘度:1200mPa・s)
(B3)メタロセン系エチレン/プロピレン共重合体(ダウケミカル社製のアフィニティGP1570(商品名)、重量平均分子量:35,000、177℃溶融粘度:12500mPa・s、)
(B4)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、重量平均分子量:30,000、1-オクテン含有量:35~37質量%、メルトフローレート:1000g/10min)
(B5)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製のエンゲージ8137(商品名)、重量平均分子量:200,000、1-オクテンの含有量:13重量%、メルトフローレート:13g/10min)
(B6)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製のインフューズ9808(商品名)、 重量平均分子量:200,000、メルトフローレート:15g/10min)
(B7)メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体(日本ポリエチレン社製のカーネルKJ604T(商品名)、重量平均分子量:130,000、メルトフローレート:30g/10min、融点58℃)
(B8)メタロセン系プロピレンホモポリマー(出光興産社製のエルモーデュS400(商品名)、重量平均分子量450,000 融点75℃ 多分散度2.0)
(B9)メタロセン系プロピレンホモポリマー(出光興産社製のエルモーデュS600(商品名)、重量平均分子量70,000 融点80℃ 多分散度2.0)
(B10)メタロセン系エチレン/1-ブテン共重合体(三井化学社製のタフマーDF7350(商品名)、重量平均分子量:120,000、メルトフローレート:35g/10min、融点55℃)
【0138】
(B’11)チグラーナッタ系プロピレンホモポリマー(イーストマンケミカル社製のイーストフレックスP1010PL(商品名)、重量平均分子量:260,000、190℃での溶融粘度:1000mPa・s、軟化点155℃、密度0.87g/cm3)
(B’12)チグラーナッタ系エチレン/プロピレン共重合体(イーストマンケミカル社製のイーストフレックスE1016(商品名)、重量平均分子量:380,000)
(B’13)チグラーナッタ系エチレン/プロピレン/ブテン共重合体(エボニック社製のベストプラスト708(商品名)、重量平均分子量:78,000、メルトフローレート:450g/10min、融点:124℃、190℃での溶融粘度:2700mPa・s)
【0139】
(C)粘着付与樹脂
(C1)水添脂環族/芳香族共重合系炭化水素樹脂(ENEOS社製のT-REZ HC103(商品名)、軟化点103℃)
(C2)水添脂環族系炭化水素樹脂(ENEOS社製のT-REZ HA103(商品名)、軟化点103℃)
(C3)水添脂環族系炭化水素樹脂(ENEOS社製のT-REZ HA125(商品名)、軟化点125℃)
(C4)水素添加ロジンエステル(GUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC KHR75(商品名)、酸価170mgKOH/g 軟化点80℃)
(C5)水素添加ロジンエステル(イーストマンケミカル社製のForalAX-E(商品名)、酸価160mgKOH/g 軟化点80℃)
(C6)水添加ロジンエステル(イーストマンケミカル社製のForal85E(商品名)、酸価9mgKOH/g 軟化点85℃)
(C7)ロジンエステル(GUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC K107(商品名)、酸価155mgKOH/g 軟化点80℃)
(C8)ロジンエステル(GUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC KB90H(商品名)、酸価15mgKOH/g 軟化点90℃)
(C9)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3070(商品名)、軟化点70℃)
(C10)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、軟化点85℃)
(C11)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3100(商品名)、軟化点100℃)
【0140】
(D)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種
(D1)融点40℃以上の脂肪酸誘導体
(D1-1)ヒマシ硬化油(伊藤製油社製のヒマシ硬化油A(商品名)、融点85.5℃)
(D1-2)モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油(横関油脂社製のテクノールMH(商品名)、融点58.0℃)
(D1-3)ラウリン酸水添ヒマシ油(横関油脂社製のテクノールML98(商品名)、融点51.0℃)
(D1-4)ヒマシ硬化脂肪酸(日油社製の12-ヒドロキシステアリン酸(商品名)、融点69.0℃)
(D1-5)牛脂硬化油(日油社製の牛脂51°硬化油HO(商品名)、融点51.0℃)
(D1-6)大豆極度硬化油(山桂産業社製の水添大豆油(商品名)、融点68.2℃)
(D1-7)ライスワックス菜種極度硬化油(ボーソー油脂社製のライスワックスSS-1(商品名)、融点79.0℃)
【0141】
(D2)融点40℃未満の脂肪酸誘導体
(D2-1)ヒマシ油(豊国製油社製の工業用1号ヒマシ油(商品名)、融点なし(凝固点-22℃)
(D2-2)米油(ボーソー油脂製のこめサラダ油(商品名)、融点なし(凝固点-10~-5℃))
(D2-3)ひまわり油(山桂産業社製のハイオレイックヒマワリ油(商品名)、融点なし(凝固点-18~-16℃))
【0142】
(E)ワックス
(E1)フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製のサゾールC80(商品名)、重量平均分子量:620、融点80℃、針入度7)
(E2)フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製のサゾールH1(商品名)、重量平均分子量:880、融点108℃、針入度2)
(E3)エチレン酢酸ビニル共重合体ワックス(Honeywell社製のAC400(商品名)、重量平均分子量:400、融点92℃)
(E4)ポリエチレンワックス(三井化学社製のハイワックス320P(商品名)、重量平均分子量:3000、融点109℃、針入度7)
(E5)ポリプロピレンワックス三井化学社製のハイワックスNP105(商品名)、重量平均分子量:10,000、融点140/148℃、針入度1)
(E6)パラフィンワックス(日本精蝋社製のパラフィンワックス150F(商品名)重量平均分子量:400、融点66℃、針入度12)
(E7)無水マレイン酸変性ポリプロピレンワックス(クラリアント社製のリコセンPPMA6252(商品名)、重量平均分子量:4000、 融点140℃)
【0143】
(F)可塑剤(オイル)
(F1)パラフィンオイル(出光興産社製のダフニーオイル KP-68(商品名))
(F2)パラフィンオイル(出光興産社製のダイアナプロセスオイル PW90(商品名))
(F3)ポリブテン(日本石油社製の日石ポリブテンHV-300(商品名))
(F4)ナフテンオイル(ペトロチャイナ社製のDN4010(商品名))
【0144】
(G)安定化剤(酸化防止剤)
(G1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブAO-60(商品名))
(G2)リン系酸化防止剤(BASFジャパン社製のイルガフォス168(商品名))
【0145】
成分(A)~(G)を表1及び表2に示す配合割合で配合し、約145℃で約3時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1~16、比較例1~4のホットメルト粘着剤を製造した。表1に示されるホットメルト粘着剤の組成(配合)に関する数値の単位は、全て質量部である。
【0146】
実施例及び比較例の各々のホットメルト粘着剤について、アルカリ分散性、保持力、糊残り、糸曳き性、胴巻きラベル同士の接着部分のせん断強度について評価した。以下、各測定方法および評価方法について説明する。
【0147】
<アルカリ分散性>
各実施例及び比較例のホットメルト粘着剤をOPPフィルム上に20~25μmの厚みになるように塗工し、ホットメルト粘着剤付きOPPフィルムのラベル(25mm×50mm)を作製した。このラベルを空のペットボトルに100℃で5秒間押し付けることで接着し、試験サンプルを作製した。この試験サンプルの質量(試験サンプルの洗浄前の質量)を測定後、85℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に入れ、15分間撹拌(洗浄)した。15分後、試験サンプルを取り出して充分に風乾した。風乾後の試験サンプルの質量(試験サンプルの洗浄後の質量)を測定し、洗浄前後の質量からアルカリ分散率を算出した。アルカリ分散率は下記式より算出され、算出された値からアルカリ分散性を評価した。
【0148】
アルカリ分散率(%)={(試験サンプルの洗浄前の質量-試験サンプルの洗浄後の質量)/(使用したホットメルト粘着剤の質量)}×100
【0149】
評価結果を表3に示す。評価基準は以下のとおりである。
◎:アルカリ分散率が90%より高い
○:アルカリ分散率が60%以上、90%以下
×:アルカリ分散率が60%未満、または、フィルムが接着せず試験サンプルが作成できないため測定不可
【0150】
<保持力(PETボトル膨張時のラベルの浮き、ずれ)>
ホットメルト粘着剤をOPPフィルム上に20~25μmの厚みになるように塗工し、ホットメルト粘着剤付きOPPラベル(25mm×50mm)を作製した。そのラベルを空のペットボトルに100℃で5秒間押し付けることで接着し、試験サンプルを作製した。
【0151】
次いで、ペットボトルに炭酸飲料を充填し、その炭酸飲料入りの試験サンプルを40℃雰囲気下で1週間保管した。別の炭酸飲料入りの試験サンプルについても-10℃雰囲気下で3日保管し、各試験サンプルのラベルの浮き、ラベルのずれ幅を確認した。
【0152】
評価結果を表3に示す。評価基準は以下のとおりである。
◎:ラベルの浮きなし、ラベルのずれ幅が2mm未満
〇:ラベルの浮きなし、ラベルのずれ幅が2mm以上、4mm未満
△:ラべルの浮きなし、ラベルのずれ幅が4mm以上、7mm未満
×:ラベルの浮きあり、またはラベルのずれ幅が7mm以上
【0153】
<糊残り>
ホットメルト粘着剤をOPPフィルム上に20~25μmの厚みになるように塗工し、ホットメルト粘着剤付きOPPラベル(25mm×50mm)を作製した。そのラベルを空のペットボトルに100℃で5秒間押し付けることで接着し、試験サンプルを作製した。試験サンプルを0℃で7日間保管後、ラベルをペットボトルから手で剥離し、ペットボトルへのホットメルト粘着剤の付着状態を目視で確認した。別の炭酸飲料入りの試験サンプルについても40℃雰囲気下で7日保管し、ラベルをペットボトルから手で剥離し、ペットボトルへのホットメルト粘着剤の付着状態を目視で確認した。
【0154】
評価結果を表3に示す。評価基準は以下のとおりである。
◎:界面剥離しており、ホットメルト粘着剤の付着なし。
〇:わずかにホットメルト粘着剤の付着あり。
×:凝集破壊、ホットメルト粘着剤の殆どがペットボトルに残っている。
【0155】
<糸曳き性>
ホットメルトガンの先端から20cm離れた被着体に対し、ホットメルト粘着剤を垂直に間欠塗布した。ホットメルトガンと被着体との間の落下物の状態を目視にて観察し、糸曳き性を評価した。尚、測定条件は以下のとおりである。
【0156】
温度設定:タンク内温度、ホース内温度、及びノズル内温度は全て160℃
ノズル径:14/1000インチ
ノズル:シングルノズル
塗出圧力:0.3MPa
塗出ショット数:90ショット/3分間
【0157】
評価結果を表3に示す。評価基準は以下のとおりである。
〇:落下物がノズルから離れて落下する(糸曳きなし)。
×:落下物がノズル周りに付着する(糸曳きあり)。
【0158】
<胴巻きラベル同士の接着部分のせん断強度(OPP/OPP)>
ホットメルト接着剤をOPPフィルム上に20~25μm厚みで塗工した後、OPPフィルムを25mm×50mmにカットした。接着面が25mm×25mmになるように、さらにOPPフィルムを重ねた後、100℃で3秒間プレスしてフィルムを接着し、サンプルを作製した。
【0159】
23℃、55%雰囲気下で1日間保管後、そのフィルムをせん断方向に引張試験を実施し、せん断強度を測定した。
【0160】
評価結果を表3に示す。評価基準は以下のとおりである。
◎:せん断強度が10kg/cm2より大きい
〇:せん断強度が5kg/cm2以上、10kg/cm2以下
△:せん断強度が3kg/cm2以上、5kg/cm2以下
×:せん断強度が3kg/cm2より小さい
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
表1及び表2に示されるように、実施例1~16のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、アルカリ分散性と保持力に優れ、糊残り及び糸曳きを低減でき、胴巻きラベル同士の接着部分のせん断強度も向上させ、いずれの性能も良好であった。
【0165】
一方、比較例1~4のホットメルト粘着剤は、いずれも胴巻きラベル同士の接着部分のせん断強度が×になっており、その他のいずれかの性能にも×があった。
【0166】
これらの結果から、ホットメルト粘着剤が成分(A)、(B)、(C)及び(D)を有することで、アルカリ分散性が高く、ラベルの保持力に優れ、糊残りが少なく、糸曳きを低減でき、胴巻きラベル同士の接着部分のせん断強度に優れることが確認された。