(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168986
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086139
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】平塚 良秋
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB23
5H730DD03
5H730DD04
5H730ZZ04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】制御部の動作を安定させつつ、二次側回路から放射されるノイズを低減するモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置10は、モータ90に電力を供給する電源回路15を備える。電源回路は、1次巻線41及び2次巻線42を有する変圧器40と、1次巻線に接続される第1回路部20と、2次巻線に接続される第2回路部30と、を有する。第1回路部は、スイッチング素子22と、1次巻線と電気的に接続される制御部23と、を含む複数の電気素子21と、接地され、且つ、1次巻線と電気的に接続される第1グランドパターン24と、を有する。第2回路部は、複数の電気素子31と、接地され、且つ、2次巻線と電気的に接続される第2グランドパターン32と、を有する。第2グランドパターンは、直列に接続されたフィルタライン51、インダクタ53及びキャパシタ52からなるノイズフィルタ50を介して第1グランドパターンに接続される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに電力を供給する電源回路を備え、
前記電源回路は、1次巻線および2次巻線を有する変圧器と、前記1次巻線に接続される第1回路部と、前記2次巻線に接続される第2回路部と、を有し、
前記第1回路部は、
スイッチング素子と、前記1次巻線と電気的に接続される制御部と、を含む複数の電気素子と、
接地され、且つ、前記1次巻線と電気的に接続される第1グランドパターンと、
を有し、
前記第2回路部は、複数の電気素子と、接地され、且つ、前記2次巻線と電気的に接続される第2グランドパターンと、を有し、
前記第2グランドパターンは、直列に接続されたインダクタおよびキャパシタを介して前記第1グランドパターンに接続される、モータ制御装置。
【請求項2】
前記第1回路部は、低電圧電源であり、前記第2回路部は、高電圧電源である、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記制御部の制御周波数は、前記スイッチング素子のスイッチング周波数よりも大きく、
前記スイッチング周波数以下の周波数帯域における前記インダクタのインピーダンスは、前記スイッチング周波数よりも大きな周波数帯域における前記インダクタのインピーダンスよりも小さい、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記スイッチング周波数は、1MHz以上である、請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記第2回路部は、絶縁層と、前記絶縁層を介して前記第2グランドパターンと対向するダミーパターンと、を有し、
前記キャパシタは、前記第2グランドパターンと前記ダミーパターンとによって構成される、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記第2回路部は、前記第2グランドパターンと絶縁され、且つ、前記ダミーパターンと前記インダクタとを接続するビアを有する、請求項5に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記電源回路は、電源ICを有し、
前記電源ICは、前記変圧器および前記スイッチング素子を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源に用いられるトランスの一次コイルから二次コイルに伝達されるノイズを、コンデンサを介して二次側から一次側に戻して、二次側から放射されるノイズを低減するプリントコイル型トランスが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなプリントコイル型トランスを備えるスイッチング電源において、一次側に戻されるノイズの周波数と、一次側に設けられるマイコン等の制御部の動作周波数とが近い周波数の場合、一次側に戻されるノイズによって制御部の動作が不安定になる虞がある。
【0005】
本発明の一つの態様は、制御部の動作を安定させつつ、二次側回路から放射されるノイズを低減できるモータ制御装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータ制御装置の一つの態様は、モータに電力を供給する電源回路を備える。前記電源回路は、1次巻線および2次巻線を有する変圧器と、前記1次巻線に接続される第1回路部と、前記2次巻線に接続される第2回路部と、を有する。前記第1回路部は、スイッチング素子と、前記1次巻線と電気的に接続される制御部と、を含む複数の電気素子と、接地され、且つ、前記1次巻線と電気的に接続される第1グランドパターンと、を有する。前記第2回路部は、複数の電気素子と、接地され、且つ、前記2次巻線と電気的に接続される第2グランドパターンと、を有する。前記第2グランドパターンは、直列に接続されたインダクタおよびキャパシタを介して前記第1グランドパターンに接続される。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態のモータ制御装置によれば、制御部の動作を安定させつつ、二次側回路から放射されるノイズを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータ制御装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のモータ制御装置におけるノイズを示す模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のインダクタのインピーダンス特性を示す図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の変形例のモータ制御装置の一部を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータ制御装置について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面では、各構成をわかり易くするために、実際の構造と縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0010】
以下の説明において、各図には適宜、板厚方向Dtを示す。板厚方向Dtは、以下に説明する実施形態のモータ制御装置において、基板の板面が向く方向である。以下の説明では、板厚方向Dtの矢印が向く側(+Dt側)を「板厚方向Dtの一方側」と呼ぶ。板厚方向Dtの矢印が向く側と反対側(-Dt側)を「板厚方向Dtの他方側」と呼ぶ。また、モータ制御装置を構成する各部材等の外側面のうち板厚方向Dtの一方側を向く面を「表面」と呼び、板厚方向Dtの他方側を向く面を「裏面」と呼ぶ場合がある。
【0011】
<実施形態>
図1は、本実施形態のモータ制御装置10を示す模式図である。
モータ制御装置10は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などの車両に搭載され、当該車両を駆動するモータ90を制御する制御装置である。モータ制御装置10は、モータ90と接続される。本実施形態において、モータ制御装置10は、車両に搭載される電源91から供給される直流電流から交流電流である供給電流を生成するとともに、供給電流をモータ90に供給してモータ90を制御する。
【0012】
モータ制御装置10は、電源回路15と、ノイズフィルタ50と、を備える。電源回路15は、電源91から供給される電流から供給電流を生成し、モータ90に供給電流を供給する。電源回路15は、基板11と、第1回路部20と、第2回路部30と、電源IC18と、を有する。
【0013】
基板11は、絶縁性を有する板状である。基板11の板面は、板厚方向Dtを向く。基板11には、第1回路部20、第2回路部30、電源IC18、およびノイズフィルタ50が実装される。図示は省略するが、基板11には、配線パターンが設けられている。配線パターンは、第1回路部20、第2回路部30、電源IC18、およびノイズフィルタ50のそれぞれを構成する各電気素子同士を接続する。基板11は、第1基板12と、第2基板13と、を有する。第1基板12および第2基板13は、互いに間隔をあけて並んで配置される。第1基板12には、第1回路部20が実装される。第2基板13には、第2回路部30が実装される。
【0014】
第1回路部20は、電源91から供給される直流電流から交流電流を生成する。本実施形態において、第1回路部20は、低電圧電源である。第1回路部20は、第1基板12の表面12fに実装される。第1回路部20は、モータ制御装置10の一次側の回路部である。なお、以下の説明では、第1基板12および第1回路部20によって構成される回路を「一次側回路C1」と呼ぶ場合がある。第1回路部20は、複数の電気素子21と、第1グランドパターン24と、を有する。
【0015】
複数の電気素子21は、第1基板12の表面12fに実装される。複数の電気素子21は、スイッチング素子22と、制御部23と、を有する。複数の電気素子21は、コンデンサ等のその他の電気素子を含んでいてもよい。スイッチング素子22は、第1ケーブル26を介して、電源91と電気的に接続される。スイッチング素子22は、後述する変圧器40の1次巻線41と接続される。スイッチング素子22は、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、およびMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)等のパワー半導体素子である。第1回路部20は、複数のスイッチング素子22を有してもよい。
【0016】
スイッチング素子22は、第1基板12の表面12fに実装される。スイッチング素子22は、電源91から供給される直流電流から交流電流を生成する。本実施形態において、スイッチング素子22のオン/オフの切り替え周波数であるスイッチング周波数Fsは、1MHz以上である。本実施形態において、スイッチング周波数Fsは、16MHzである。スイッチング周波数Fsは、16MHz未満であってもよいし、16MHzより大きくてもよい。スイッチング素子22によって生成される交流電流は、後述する変圧器40の1次巻線41に流れ込む。本実施形態において、スイッチング素子22は、電源IC18の一部を構成する。
【0017】
制御部23は、スイッチング素子22の動作を制御する。これにより、スイッチング素子22が生成する交流電流の周波数および振幅を所望の周波数および振幅にできる。制御部23は、第1基板12の表面12fに実装される。本実施形態において、制御部23は、マイコンである。制御部23は、第1信号線25を介して、スイッチング素子22と電気的に接続される。本実施形態において、制御部23がスイッチング素子22に制御信号を送信する周波数である制御周波数Fcは、24MHz以上、100MHz以下の範囲である。本実施形態において、制御部23の制御周波数Fcは、スイッチング素子22のスイッチング周波数Fsよりも大きい。
【0018】
第1グランドパターン24は、複数の電気素子21を接地する。第1グランドパターン24は、第1基板12の表面12fに形成される導電性を有するパターンである。本実施形態において、第1グランドパターン24は、銅箔によって構成される。第1グランドパターン24は、第1接地ライン28を介して、スイッチング素子22と接続される。第1グランドパターン24は、接地される。
【0019】
第2回路部30は、電源IC18を介して第1回路部20から流れこむ交流電流から供給電流を生成し、供給電流をモータ90に供給する。本実施形態において、第2回路部30は、高電圧電源である。第2回路部30は、第2基板13の表面13fに実装される。本実施形態において、第2回路部30は、モータ制御装置10の二次側の回路部である。以下の説明では、第2基板13および第2回路部30によって構成される回路を「二次側回路C2」と呼ぶ場合がある。第2回路部30は、複数の電気素子31と、第2グランドパターン32と、を有する。
【0020】
複数の電気素子31は、第2基板13の表面13fに実装される。複数の電気素子31は、コンデンサおよびダイオード等の電気素子を含む。複数の電気素子31は、電源IC18を介して第1回路部20から流れ込む交流電流を平滑化して、供給電流を生成する。複数の電気素子31は、第2ケーブル33を介して、モータ90と電気的に接続される。複数の電気素子31がモータ90に供給電流を供給すると、モータ90は動作する。
【0021】
第2グランドパターン32は、複数の電気素子31を接地する。第2グランドパターン32は、第2基板13の表面13fに設けられる導電性を有するパターンである。本実施形態において、第2グランドパターン32は、銅箔によって構成される。第2グランドパターン32は、第2接地ライン35を介して、複数の電気素子31と接続される。第2グランドパターン32は、接地される。
【0022】
電源IC18は、第1回路部20で生成した交流電流を、第2回路部30に供給する。電源IC18は、第1基板12および第2基板13に跨って配置される。電源IC18は、第1基板12の表面12fおよび第2基板13の表面13fに実装される。本実施形態において、電源IC18は、変圧器40と、スイッチング素子22と、を有する。すなわち、電源回路15は、変圧器40を有する。本実施形態において、電源IC18は、変圧器40およびスイッチング素子22によって構成される一体型のインバータICである。電源IC18は、スイッチング素子22を有していなくてもよい。
【0023】
変圧器40は、第1回路部20で生成された交流電流を変圧して第2回路部30に供給する。変圧器40は、第1基板12および第2基板13に跨って配置される。変圧器40は、第1回路部20および第2回路部30のそれぞれと接続される。変圧器40は、1次巻線41と、2次巻線42と、を有する。1次巻線41および2次巻線42のそれぞれは、コイルである。
【0024】
1次巻線41は、第1基板12に配置される。1次巻線41は、スイッチング素子22に接続される。これにより、1次巻線41は、第1回路部20に接続される。制御部23は、スイッチング素子22を介して1次巻線41と電気的に接続される。また、第1グランドパターン24は、スイッチング素子22を介して1次巻線41と電気的に接続される。
【0025】
2次巻線42は、第2基板13に配置される。2次巻線42は、複数の電気素子31に接続される。これにより、2次巻線42は、第2回路部30に接続される。第2グランドパターン32は、複数の電気素子31を介して、2次巻線42と電気的に接続される。2次巻線42は、1次巻線41と間隔をあけて配置される。2次巻線42と1次巻線41とは絶縁される。これにより、変圧器40は、第1回路部20と第2回路部30とを絶縁する。
【0026】
図2に示すように、スイッチング素子22が交流電流を生成する際には、ノイズNが発生する。ノイズNは、基本ノイズNbと、高調波ノイズNhと、を含む。基本ノイズNbは、スイッチング周波数Fsと同じ周波数のノイズである。高調波ノイズNhは、基本ノイズNbの整数倍の周波数のノイズである。したがって、ノイズNは、スイッチング周波数Fs以上の互いに異なる周波数を有するノイズが足し合わされたノイズである。スイッチング素子22で発生したノイズNは、変圧器40を介して、第2回路部30に伝搬する。第2回路部30に伝搬したノイズが、例えば、モータ90に放射されると、モータ90の動作が不安定になる場合がある。本実施形態において、ノイズNは、スイッチング素子22において発生し、変圧器40、第2回路部30、およびノイズフィルタ50を介して、スイッチング素子22に戻るノーマルモードノイズである。
【0027】
以下の説明において、「所定周波数」は、制御周波数Fcとスイッチング周波数Fsとの間の周波数である。本実施形態において、「所定周波数」は20MHzである。
本明細書では、所定周波数未満の周波数帯域を「低周波数帯域」と呼ぶ。本実施形態において、「低周波数帯域」は、20MHz未満の周波数帯域である。スイッチング周波数Fsおよび基本ノイズNbの周波数は、低周波数帯域に含まれる。また、所定周波数以上の周波数帯域を「高周波数帯域」と呼ぶ。本実施形態において、「高周波数帯域」は、20MHz以上の周波数帯域である。制御周波数Fcおよび高調波ノイズNhの周波数は、高周波数帯域に含まれる。
【0028】
ノイズフィルタ50は、第2回路部30に伝搬したノイズNのうち基本ノイズNbのみを通過させる。これにより、基本ノイズNbのみを、第1回路部20のスイッチング素子22に戻すことができる。ノイズフィルタ50は、第1基板12および第2基板13に跨って配置される。ノイズフィルタ50は、第1回路部20と第2回路部30とを電気的に接続する。ノイズフィルタ50は、フィルタライン51と、キャパシタ52と、インダクタ53と、を有する。
【0029】
図1に示すように、フィルタライン51は、第2グランドパターン32と第1グランドパターン24とを繋ぐ。フィルタライン51には、キャパシタ52と、インダクタ53と、が設けられる。
【0030】
キャパシタ52は、フィルタライン51に設けられる。キャパシタ52の一端は、第2グランドパターン32と接続される。本実施形態において、キャパシタ52は、積層コンデンサである。キャパシタ52は、電解コンデンサ等の他の構成のコンデンサであってもよい。本実施形態において、キャパシタ52は、第2基板13に実装される。キャパシタ52は、第1基板12に実装されてもよい。
【0031】
インダクタ53は、フィルタライン51に設けられる。インダクタ53の一端は、キャパシタ52の他端と接続される。インダクタ53の他端は、第1グランドパターン24と接続される。これにより、第2グランドパターン32は、直列に接続されたインダクタ53およびキャパシタ52を介して、第1グランドパターン24に接続される。本実施形態において、インダクタ53は、フェライトビーズである。インダクタ53は、チョークコイルであってもよい。なお、ノイズフィルタ50の構成は、本実施形態に限定されず、インダクタ53が、第2グランドパターン32とキャパシタ52との間に配置されてもよい。すなわち、インダクタ53が第2グランドパターン32と接続され、キャパシタ52が第1グランドパターン24と接続されてもよい。
【0032】
図3に、インダクタ53のインピーダンス特性を示す。インダクタ53のインピーダンスは、周波数が50MHz程度までは周波数が大きくなるにしたがって増加し、周波数が50MHz程度を超えると周波数が大きくなるにしたがって減少する。スイッチング周波数Fs以下の周波数帯域におけるインダクタ53のインピーダンスは、スイッチング周波数Fsよりも大きな周波数帯域におけるインダクタ53のインピーダンスよりも小さい。インダクタ53は、高周波数帯域(20MHz以上の周波数帯)において、100Ωから350Ω程度の大きなインピーダンスを有する。すなわち、インダクタ53は、制御周波数Fcよりも大きな周波数帯域において、大きなインピーダンスを有する。また、インダクタ53は、低周波数帯域(20MHz未満の周波数帯域)において、100Ω以下の小さなインピーダンスを有する。すなわち、インダクタ53は、スイッチング周波数Fsおよび基本ノイズNbの周波数において、小さなインピーダンスを有する。
【0033】
次に、本実施形態のノイズフィルタ50における、ノイズNの除去性能について説明する。上述のように、インダクタ53は、高周波数帯域において、100Ωから350Ω程度の大きなインピーダンスを有する。そのため、
図2に示すように、インダクタ53によって、ノイズNのうち高調波ノイズNhがノイズフィルタ50を通過することを抑制できる。したがって、インダクタ53によって、高調波ノイズNhが第1回路部20に伝搬することを抑制できる。これにより、制御部23に高調波ノイズNhが伝搬することを抑制できる。
【0034】
上述のように、インダクタ53は、低周波数帯域において、100Ω以下の小さなインピーダンスを有する(
図3参照)。そのため、ノイズフィルタ50において、基本ノイズNbは減衰しつつ、第1回路部20に伝搬する。第1回路部20に伝搬した基本ノイズNbは、スイッチング素子22に戻る。したがって、本実施形態では、ノイズフィルタ50によって、基本ノイズNbをスイッチング素子22に戻すことができる。そのため、基本ノイズNbがモータ90に放射されることを抑制できる。また、上述のように、基本ノイズNbをスイッチング素子22に戻すことができるため、基本ノイズNbの強度が増大することを抑制できる。さらに、基本ノイズNbの強度が増大することを抑制できるため、基本ノイズNbの高調波ノイズNhの強度が増大することを抑制できる。
【0035】
本実施形態によれば、モータ制御装置10は、モータ90に電力を供給する電源回路15を備え、電源回路15は、1次巻線41および2次巻線42を有する変圧器40と、1次巻線41に接続される第1回路部20と、2次巻線42に接続される第2回路部30と、を有する。第1回路部20は、スイッチング素子22と、1次巻線41と電気的に接続される制御部23と、を含む複数の電気素子21と、接地され、且つ、1次巻線41と電気的に接続される第1グランドパターン24と、を有する。第2回路部30は、複数の電気素子31と、接地され、且つ、2次巻線42と電気的に接続される第2グランドパターン32と、を有し、第2グランドパターン32は、直列に接続されたインダクタ53およびキャパシタ52を介して第1グランドパターン24に接続される。よって、インダクタ53のインピーダンス特性を適宜設定することにより、
図2に示すように、第2回路部30に伝搬したノイズNのうち、スイッチング周波数Fsと同じ周波数のノイズである基本ノイズNbのみを、キャパシタ52およびインダクタ53を有するノイズフィルタ50を介して、第1回路部20のスイッチング素子22に戻すことができる。そのため、基本ノイズNbの周波数と制御部23の制御周波数Fcとを互いに異なる周波数とすることによって、第1回路部20に戻された基本ノイズNbによって、制御部23の動作が不安定になることを抑制できる。これにより、モータ制御装置10およびモータ90の動作の安定化を図ることができる。また、上述のように、基本ノイズNbの強度が増大することを抑制できるとともに、高調波ノイズNhの強度が増大することを抑制できる。したがって、制御部23の動作を安定させつつ、二次側回路C2から放射されるノイズを低減できる。
【0036】
本実施形態によれば、第1回路部20は、低電圧電源であり、第2回路部30は、高電圧電源である。上述のように、本実施形態では、制御部23の動作を安定させることで、電源回路15全体の動作を安定させることができる。よって、電源回路15は、電源91から供給される直流電流から所望の波形の供給電流を生成できるとともに、所望の波形の供給電流をモータ90に供給できる。したがって、モータ90の動作の安定化を図ることができる。
【0037】
本実施形態によれば、制御部23の制御周波数Fcは、スイッチング素子22のスイッチング周波数Fsよりも大きく、スイッチング周波数Fs以下の周波数帯域におけるインダクタ53のインピーダンスは、スイッチング周波数Fsよりも大きな周波数帯域におけるインダクタ53のインピーダンスよりも小さい。よって、上述のように、スイッチング素子22から第2回路部30に伝搬したノイズNのうち、制御部23の制御周波数Fcと異なる周波数帯域のノイズである基本ノイズNbのみを、第1回路部20のスイッチング素子22に戻すことができる。そのため、第1回路部20に戻された基本ノイズNbによって、制御部23の動作が不安定になることをより好適に抑制できる。また、基本ノイズNbを、スイッチング素子22に戻すことができるため、上述のように基本ノイズNbおよび高調波ノイズNhの強度が増大することを抑制できる。したがって、制御部23の動作を安定させつつ、二次側回路C2から放射されるノイズを低減できる。
【0038】
本実施形態によれば、スイッチング周波数Fsは、1MHz以上である。よって、スイッチング周波数Fsを高めることができるため、第1回路部20において生成される交流電流の周波数を高めることができる。これにより、第1回路部20から第2回路部30に供給される交流電流の周波数を高めることができる。そのため、第2回路部30に実装される複数の電気素子31のうち、交流電流の平滑化を行う複数のコンデンサの容量を小さくし易い。よって、係る複数のコンデンサの小型化を図り易くなるとともに、係る複数のコンデンサの製造コストを低減し易い。したがって、モータ制御装置10を小型化できるとともに、モータ制御装置10の製造コストを低減できる。
【0039】
本実施形態によれば、電源回路15は、電源IC18を有し、電源IC18は、変圧器40およびスイッチング素子22を有する。よって、変圧器40およびスイッチング素子22の両方が電源IC18に内蔵されるため、電源回路15が変圧器40とスイッチング素子22とを別個に有する場合と比較して、基板11に実装する部品点数を低減できる。したがって、モータ制御装置10の製造工数および製造コストが増大することを抑制できる。
【0040】
また、本実施形態では、上述のように、スイッチング素子22のスイッチング周波数Fsを高めることができるため、スイッチング素子22において生成される交流電流の周波数を高めることができる。よって、変圧器40の1次巻線41および2次巻線42それぞれの容量を低減できるため、1次巻線41および2次巻線42それぞれを小型化できる。これにより、電源IC18を小型化できるため、モータ制御装置10を小型化できる。
【0041】
<変形例>
図4は、本実施形態の変形例のモータ制御装置110の一部を示す断面模式図である。以下の説明において、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
本変形例のモータ制御装置110の電源回路115の第2回路部130は、複数の電気素子31と、第2グランドパターン32と、絶縁層113aと、ダミーパターン137と、ビア138と、を有する。本変形例の複数の電気素子31および第2グランドパターン32それぞれの構成等は、上述の実施形態の複数の電気素子31および第2グランドパターン32それぞれの構成等と同一である。
【0043】
絶縁層113aは、絶縁性を有する。本変形例において、絶縁層113aは、第2基板13の一部である。絶縁層113aは、板厚方向Dtと直交する方向に広がる板状である。絶縁層113aは、第2基板13の一部でなくてもよく、この場合、絶縁層113aは、第2基板13と別個に配置される基板等であってもよい。
【0044】
ダミーパターン137は、第2基板13の裏面13gに設けられる。より詳細には、ダミーパターン137は、絶縁層113aの裏面113gに設けられる。ダミーパターン137は、導電性を有するパターンである。本変形例において、ダミーパターン137は、銅箔によって構成される。上述の実施形態と同様に、本変形例の第2グランドパターン32は、第2基板13の表面13fに設けられる。より詳細には、第2グランドパターン32は、絶縁層113aの表面113fに設けられる。ダミーパターン137は、絶縁層113aを介して、第2グランドパターン32と板厚方向Dtに対向する。板厚方向Dtから見て、ダミーパターン137および第2グランドパターン32それぞれの一部は、複数の電気素子31および変圧器40と重なる。
【0045】
本変形例において、ノイズフィルタ150のキャパシタ152は、第2グランドパターン32とダミーパターン137とによって構成される。より詳細には、キャパシタ152の一方の電極は第2グランドパターン32であり、キャパシタ152の他方の電極はダミーパターン137である。第2グランドパターン32とダミーパターン137とは、絶縁層113aによって絶縁される。
【0046】
ビア138は、第2基板13を板厚方向Dtに貫通し、内周面に銅鍍金が構成された孔である。ビア138の板厚方向Dtの他方側(-Dt側)の端部は、ダミーパターン137と接続される。ビア138の板厚方向Dtの一方側(+Dt側)の端部には、インダクタ53が接続される。これらにより、ビア138は、ダミーパターン137とインダクタ53とを接続する。ビア138は、第2グランドパターン32と絶縁される。よって、インダクタ53およびダミーパターン137は、第2グランドパターン32と絶縁される。これにより、第2グランドパターン32は、直列に接続されたインダクタ53およびキャパシタ152を介して第1グランドパターン24に接続される。本変形例の第2回路部130およびノイズフィルタ150それぞれのその他の構成等は、上述の実施形態の第2回路部30およびノイズフィルタ50それぞれのその他の構成等と同一である。
【0047】
本変形例によれば、第2回路部130は、絶縁層113aと、絶縁層113a介して第2グランドパターン32と対向するダミーパターン137と、を有し、キャパシタ152は、第2グランドパターン32とダミーパターン137とによって構成される。よって、キャパシタ152として、積層コンデンサおよび電解コンデンサ等の電気素子を使用する場合と比較して、モータ制御装置110の部品点数を低減できる。したがって、モータ制御装置110の製造工数および製造コストが増大することを抑制できる。
【0048】
また、本変形例では、上述のように、板厚方向Dtから見て、ダミーパターン137および第2グランドパターン32それぞれの一部は、複数の電気素子31および変圧器40と重なる。よって、板厚方向Dtから見て、ダミーパターン137および第2グランドパターン32それぞれの一部が、複数の電気素子31および変圧器40と重ならない位置に配置される場合と比較して、第2回路部130の実装面積を小さくできる。したがって、第2基板13の面積を小さくできるため、モータ制御装置110を小型化できる。
【0049】
また、本変形例では、キャパシタ152が、第2グランドパターン32とダミーパターン137によって構成されるため、キャパシタ152として、積層コンデンサおよび電解コンデンサ等の電気素子を使用する場合と比較して、第2回路部130の実装面積をより小さくできる。したがって、第2基板13の面積をより小さくできるため、モータ制御装置110をより好適に小型化できる。
【0050】
また、本変形例では、上述のように、第2基板13の一部を絶縁層113aとして利用するため、絶縁層113aとして別個の基板等の部材を設ける構成と比較して、モータ制御装置110の部品点数が増大することを抑制できる。したがって、モータ制御装置110の製造工数および製造コストが増大することを抑制できる。
【0051】
本変形例によれば、第2回路部130は、第2グランドパターン32と絶縁され、且つ、ダミーパターン137とインダクタ53とを接続するビア138を有する。よって、複数の電気素子31、変圧器40、およびインダクタ53等の板厚方向Dtの寸法が大きな電気素子を第2基板13の表面13fに実装し、板厚方向Dtの寸法が小さいダミーパターン137を第2基板13の裏面13gに実装できる。よって、係る電気素子の一部が第2基板13の表面13fに実装され、係る電気素子の他の一部が第2基板13の裏面13gに実装される場合と比較して、板厚方向Dtにおける二次側回路C2の寸法が大きくなることを抑制できる。したがって、モータ制御装置110が大型化することを好適に抑制できる。
【0052】
また、本変形例では、上述のように、第2グランドパターン32は、直列に接続されたインダクタ53およびキャパシタ152を介して第1グランドパターン24に接続される。よって、上述の実施形態と同様に、スイッチング素子22から第2回路部130に伝搬したノイズNのうち基本ノイズNbのみを、ノイズフィルタ150を介して、スイッチング素子22に戻すことができる。そのため、第1回路部20に戻された基本ノイズNbによって、制御部23の動作が不安定になることを抑制できる。また、基本ノイズNbを、スイッチング素子22に戻すことができるため、基本ノイズNbおよび高調波ノイズNhの強度が増大することを抑制できる。したがって、制御部23の動作を安定させつつ、二次側回路C2から放射されるノイズを低減できる。
【0053】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。第2回路に伝搬したノイズのうち基本ノイズのみをノイズフィルタを介してスイッチング素子に戻すことができるならば、インダクタのインピーダンス特性は本実施形態に限定されず、スイッチング周波数および制御周波数それぞれの周波数帯域等に基づいて、適宜定めることができる。また、フィルタラインには、2個以上のキャパシタおよび2個以上のインダクタが設けられてもよい。また、ノイズフィルタは、複数本のフィルタラインを有していてもよく、この場合、各フィルタラインは、直列に接続されてもよいし、並列に接続されてもよい。また、各フィルタラインに設けられるインダクタのインピーダンス特性は、互いに異なってもよい。
【0054】
制御部の制御周波数およびスイッチング素子のスイッチング周波数は、本実施形態の周波数に限定されず。電気回路で生成する供給電流の周波数等によって適宜定めることができる。
【0055】
本実施形態のノイズフィルタが設けられる制御ユニットは、モータの駆動を制御するモータ制御装置に限定されず、電化製品等の動作を制御する制御ユニットであってもよい。
【0056】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0057】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) モータに電力を供給する電源回路を備え、前記電源回路は、1次巻線および2次巻線を有する変圧器と、前記1次巻線に接続される第1回路部と、前記2次巻線に接続される第2回路部と、を有し、前記第1回路部は、スイッチング素子と、前記1次巻線と電気的に接続される制御部と、を含む複数の電気素子と、接地され、且つ、前記1次巻線と電気的に接続される第1グランドパターンと、を有し、前記第2回路部は、複数の電気素子と、接地され、且つ、前記2次巻線と電気的に接続される第2グランドパターンと、を有し、前記第2グランドパターンは、直列に接続されたインダクタおよびキャパシタを介して前記第1グランドパターンに接続される、モータ制御装置。
(2) 前記第1回路部は、低電圧電源であり、前記第2回路部は、高電圧電源である、(1)に記載のモータ制御装置。
(3) 前記制御部の制御周波数は、前記スイッチング素子のスイッチング周波数よりも大きく、前記スイッチング周波数以下の周波数帯域における前記インダクタのインピーダンスは、前記スイッチング周波数よりも大きな周波数帯域における前記インダクタのインピーダンスよりも小さい、(1)または(2)に記載のモータ制御装置。
(4) 前記スイッチング周波数は、1MHz以上である、(3)に記載のモータ制御装置。
(5) 前記第2回路部は、絶縁層と、前記絶縁層を介して前記第2グランドパターンと対向するダミーパターンと、を有し、前記キャパシタは、前記第2グランドパターンと前記ダミーパターンとによって構成される、(1)から(4)のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
(6) 前記第2回路部は、前記第2グランドパターンと絶縁され、且つ、前記ダミーパターンと前記インダクタとを接続するビアを有する、(5)に記載のモータ制御装置。
(7) 前記電源回路は、電源ICを有し、前記電源ICは、前記変圧器および前記スイッチング素子を有する、(1)から(6)のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【符号の説明】
【0058】
10,110…モータ制御装置、15,115…電源回路、18…電源IC、20…第1回路部、21…電気素子、22…スイッチング素子、23…制御部、24…第1グランドパターン、30,130…第2回路部、31…電気素子、32…第2グランドパターン、40…変圧器、41…1次巻線、42…2次巻線、52,152…キャパシタ、53…インダクタ、90…モータ、137…ダミーパターン、138…ビア、Fc…制御周波数、Fs…スイッチング周波数