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特開2024-168991運行計画作成システムおよび運行計画作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168991
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】運行計画作成システムおよび運行計画作成方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/12 20220101AFI20241128BHJP
   B61L 27/16 20220101ALI20241128BHJP
【FI】
B61L27/12
B61L27/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086150
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北井 瑳佳
(72)【発明者】
【氏名】牧 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】三田寺 剛
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ01
5H161JJ23
5H161JJ24
5H161JJ26
5H161JJ27
(57)【要約】
【課題】既定の駅停車時分よりも乗降時分が短い場合の乗降完了タイミングを検知して乗降時分を算出し運行計画に反映させる。
【解決手段】運行計画作成システムとして、時刻情報、列車が停車する駅情報、当該列車の乗客重量に関連するパラメータ、列車速度およびドアの開閉状態を取得するデータ取得部と、パラメータから乗客重量を算出する乗客重量算出部と、列車速度、ドアの開閉状態および乗客重量を用いて、ドアの開状態から閉状態への変化時点から列車速度が0より大きくなるまでの時間における乗降後基準重量を算出する基準重量算出部と、ドアの開閉状態、乗客重量および乗降後基準重量を用いて、ドアが開状態から閉状態になるまでの時間における乗客重量と乗降後基準重量との比較から乗降時分を推定する乗降時分推定部とを有する乗降時分推定装置と、乗降時分推定装置から各駅の乗降時分を取得して運行計画を作成する運行計画作成装置とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻情報、列車が停車する駅情報、当該列車の乗客重量に関連するパラメータ、当該列車の列車速度および当該列車のドアの開閉状態を取得するデータ取得部と、
前記パラメータから前記乗客重量を算出する乗客重量算出部と、
前記列車速度、前記ドアの開閉状態および前記乗客重量を用いて、前記ドアの開状態から閉状態への変化時点から前記列車速度が0より大きくなるまでの時間における乗降後基準重量を算出する基準重量算出部と、
前記ドアの開閉状態、前記乗客重量および前記乗降後基準重量を用いて、前記ドアが開状態から閉状態になるまでの時間における前記乗客重量と前記乗降後基準重量との比較から乗降時分を推定する乗降時分推定部と
を有する乗降時分推定装置と、
前記乗降時分推定装置から前記列車が停車する各駅の前記乗降時分を取得して前記列車の運行計画を作成する運行計画作成装置と
を備える運行計画作成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運行計画作成システムであって、
前記パラメータは、前記列車に搭載された空気ばね装置の圧力値であり、
前記乗客重量算出部は、前記列車の運行時の前記圧力値と当該列車の空車時の前記圧力値との差分から前記乗客重量を算出する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項3】
請求項1に記載の運行計画作成システムであって、
前記基準重量算出部は、前記ドアの開状態から閉状態への変化時点から前記列車速度が0より大きくなるまでの時間における前記乗客重量の平均値を、前記乗降後基準重量として算出する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項4】
請求項3に記載の運行計画作成システムであって、
前記基準重量算出部は、前記ドアが開状態から閉状態に変化後に前記列車速度が0より大きくなるまでの時間における前記乗客重量の振れ幅の最大値を、前記乗降後基準重量に対する重量閾値として算出する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項5】
請求項4に記載の運行計画作成システムであって、
前記乗降時分推定部は、前記ドアが開状態から閉状態に変化した時点から当該ドアが閉状態から開状態に変化した時点へ向かって時間的に遡ることで、前記乗客重量が前記乗降後基準重量から前記重量閾値以上外れた時点を乗降完了時刻として抽出する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項6】
請求項5に記載の運行計画作成システムであって、
前記乗降時分推定部は、前記列車が複数の車両から構成される場合に、抽出した前記乗降完了時刻が最も遅い車両の乗降完了時刻を、当該列車の乗降完了時刻として抽出する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項7】
請求項6に記載の運行計画作成システムであって、
前記乗降時分推定部は、前記ドアが閉状態から開状態に変化した時点を乗降開始時刻とし、当該乗降開始時刻と前記乗降完了時刻との差分を乗降時分として推定する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の運行計画作成システムであって、
前記運行計画作成装置は、列車番号、始発駅から終着駅までの全ての駅の情報、当該駅ごとの駅到着時刻および駅発車時刻の情報を含む運行計画を作成する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項9】
請求項8に記載の運行計画作成システムであって、
前記運行計画作成装置は、前記乗降時分、当該乗降時分を算出した停車駅、日付、前記乗降開始時刻および前記乗降完了時刻の各情報を乗降時分情報として記憶する記憶部を有する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項10】
請求項9に記載の運行計画作成システムであって、
前記運行計画作成装置は、前記記憶部が記憶する前記乗降時分情報から、更新対象とする運行計画に係わる駅と同一の駅の前記乗降時分情報の集合に含まれる前記乗降時分を統計処理した結果に基づいて、当該駅ごとの駅到着時刻または駅発車時刻を調整して前記運行計画を更新する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項11】
請求項10に記載の運行計画作成システムであって、
前記運行計画作成装置は、前記駅到着時刻を調整する際に、前記乗降時分情報の集合を、前記駅到着時刻から所定の時間幅に前記乗降開始時刻が含まれる乗降時分情報に限定することを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項12】
請求項10に記載の運行計画作成システムであって、
前記運行計画作成装置は、前記駅到着時刻を調整する際に、前記乗降時分情報の集合を、任意の日数を定めた日付の条件と一致する日付が含まれる乗降時分情報に限定する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項13】
請求項10に記載の運行計画作成システムであって、
前記運行計画作成装置は、更新対象とする運行計画に係わる駅に対して、前記乗降時分情報の集合に含まれる前記乗降時分の平均値を当該駅の乗降時分として規定し、規定した当該乗降時分に基づいて当該駅の駅到着時刻または駅発車時刻を調整する
ことを特徴とする運行計画作成システム。
【請求項14】
時刻情報、列車が停車する駅情報、当該列車の乗客重量に関連するパラメータ、当該列車の列車速度および当該列車のドアの開閉状態を取得し、
前記パラメータから前記乗客重量を算出し、
前記列車速度、前記ドアの開閉状態および前記乗客重量を用いて、前記ドアの開状態から閉状態への変化時点から前記列車速度が0より大きくなるまでの時間における乗降後基準重量を算出し、
前記ドアの開閉状態、前記乗客重量および前記乗降後基準重量を用いて、前記ドアが開状態から閉状態になるまでの時間における前記乗客重量と前記乗降後基準重量との比較から乗降時分を推定し、
前記列車が停車する各駅に対して推定した前記乗降時分を用いて、前記列車の運行計画を作成する
ことを特徴とする運行計画作成方法。
【請求項15】
請求項14に記載の運行計画作成方法であって、
前記パラメータは、前記列車に搭載された空気ばね装置の圧力値であり、
前記列車の運行時の前記圧力値と当該列車の空車時の前記圧力値との差分から前記乗客重量を算出する
ことを特徴とする運行計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の運行計画作成システムおよび運行計画作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的エネルギー使用効率の良い鉄道分野においても、更なる省エネ化が必要とされ、また、鉄道事業における運行コストの低減や利便性向上の観点からも、駅停車時における乗客の乗降時間を考慮した運行計画の策定が求められている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、特許文献1には、駅停車時間として駅における乗降に必要な時間(以降、「乗降時分」という)に加えて確認時分も考慮し、先行列車の駅発車時刻の推定精度を向上させることで、後続列車の駅間走行に関して省エネ効果を安定的に発揮可能な列車運転支援システムが開示されている。
【0004】
このシステムでは、あらかじめ駅停車時分が定められている運行計画に沿って走行する列車において、混雑時などで先行列車の出発が遅れることが予測される場合に、後続列車の駅到着時分を調整することで、機外停止や計画外のブレーキを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-42138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、特許文献1では、現状の運行計画における駅停車時間は、混雑時と閑散時で分けて調整している程度で、駅毎に、また時間帯毎に、細かく調整しているわけではない。そのため、計画した駅停車時間よりも乗客の乗降に時間を要した場合には、遅延が発生する。逆に、閑散時では、駅によっては計画された駅停車時分よりも短い時間で乗客の乗降が終わり、出発まで列車が待機している場合がある。
【0007】
運行計画において、計画された駅停車時分よりも乗降時分が短い場合の余裕時分(以降、「待機時間」という)を短縮し、その分だけ駅間の走行時分を伸ばすことで、駅間走行中の列車の最高速度を低下させてより省エネに走行することが可能になる。
また、短縮した待機時間分を、出発が頻繁に遅れる他駅の駅停車時分に加えておくことで、ダイヤの乱れを低減させ、利便性を向上することができる。
【0008】
ここで、乗降時分を算出するためには、乗降開始タイミングおよび乗降完了タイミングを検知する必要がある。乗降開始タイミングは、一般的にドアが開いたタイミングと同一と見なせる。しかし、乗降完了タイミングは、混雑時には列車のドアが閉じたタイミングと同一とみなせるものの、待機時間が生じる場合には、ドアが閉じたタイミングより早い可能性が高い。
【0009】
従って、列車からドアの開閉状態示す情報を取得するだけでは、乗降完了時刻を正確に検知できず乗降時分を算出できない場合がある。
【0010】
そこで、本発明では、あらかじめ運行計画で規定された駅停車時分よりも乗降時分が短い場合の乗降完了タイミングを、列車から取得可能なデータを用いて検知可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の運行計画作成システムの一つは、時刻情報、列車が停車する駅情報、当該列車の乗客重量に関連するパラメータ、当該列車の列車速度および当該列車のドアの開閉状態を取得するデータ取得部と、パラメータから乗客重量を算出する乗客重量算出部と、列車速度、ドアの開閉状態および乗客重量を用いて、ドアの開状態から閉状態への変化時点から列車速度が0より大きくなるまでの時間における乗降後基準重量を算出する基準重量算出部と、ドアの開閉状態、乗客重量および乗降後基準重量を用いて、ドアが開状態から閉状態になるまでの時間における乗客重量と乗降後基準重量との比較から乗降時分を推定する乗降時分推定部とを有する乗降時分推定装置と、乗降時分推定装置から列車が停車する各駅の乗降時分を取得して列車の運行計画を作成する運行計画作成装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、あらかじめ運行計画で規定された駅停車時分よりも乗降時分が短い場合の乗降完了タイミングを検知して乗降時分を算出し当該乗降時分を反映した運行計画を作成することにより、より省エネ化に優れ利便性の向上を図ることができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例に係る運行計画作成システムのブロック構成の一例を示す図である。
図2】推定乗降完了時刻の検知方法の例を示す図である。
図3】実施例に係る運行計画作成システムのブロック構成の別例を示す図である。
図4】運行計画のデータ構成の一例を示す図である。
図5】車両データのデータ構成の一例を示す図である。
図6】データ入力部の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。
図7】走行状態の定義を説明する図である。
図8】乗客重量算出部の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。
図9】基準重量算出部の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。
図10】乗降時分推定部の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。
図11】記憶部の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。
図12】運行計画作成部の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態として実施例について説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0015】
以下、図1図12を参照して、本発明を実施するための形態として実施例について説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。また、この実施例では、乗客重量関連パラメータとして、列車の空気ばね装置の圧力情報(以降、「AS圧」という)を用いている。
【実施例0016】
まず、本発明に係る運行計画作成システムでは、あらかじめ運行計画において規定された駅停車時間よりも短い時間で乗客の乗降が完了した場合にも、乗降完了時刻を検知することが可能となる。その考え方を、図2を使って説明するに示す。図2は、推定乗降完了時刻の検知方法の例を示す図である。
【0017】
図2に示すように、列車のドアが開から閉に変化した時点から列車速度が0より大きくなる時点までの時間をTとし、この時間Tにおける乗客重量から、乗降後基準重量および乗降後基準重量に対する重量閾値を算出する。次に、列車のドアが開から閉に変化した時点から、列車のドアが閉から開に変化した時点まで時間的に遡って乗客重量を確認する。これにより、乗客重量が、乗降後基準重量に対して重量閾値より外れた値を示した時点を推定乗降完了時刻として検知する。
【0018】
また、実施例に係る運行計画作成システムは、以下の(1)から(4)に記す機能を備えることで、あらかじめ運行計画において規定された駅停車時間よりも短い時間で乗客の乗降が完了した場合にも、乗降完了時刻を検知することが可能となっている。
【0019】
(1)列車から乗客重量関連パラメータとして空気ばね装置の圧力値を取得し、取得した圧力値から乗客重量を算出する機能
【0020】
(2)駅停車中に、ドアが閉状態に遷移してから列車速度が0より大きくなるまでの時間Tにおける乗客重量から、乗降完了時刻を判別するための乗降後基準重量を算出する機能
【0021】
(3)車内の乗客の移動による空気ばね装置の振動でAS圧が変化し乗客重量が変化した場合でも、乗降完了時刻を誤検知しないために、乗降後基準重量算出時の乗客重量の振れ幅から重量閾値を算出する機能
【0022】
(4)ドアが開状態から閉状態に変化した時点から、ドアが閉状態から開状態に変化した時点まで時間的に遡って乗客重量を確認し、乗客重量が乗降後基準重量に対して重量閾値より外れた値を示した時点を推定乗降完了時刻として検知することで、ドアが開状態から閉状態に遷移する前に乗降が完了した場合の乗降完了時刻を推定する機能
【0023】
さらに、実施例に係る運行計画作成システムは、以下の(5)から(8)に記す機能を備えることで、遅延の低減による利便性を向上させ、また、駅間走行時分の延長による列車の最高速度の低減で省エネ化が可能な運行計画を作成することができる。
【0024】
(5)ドアが閉状態から開状態に変化した時刻を推定乗降開始時刻とし、推定乗降完了時刻との差分から推定乗降時分を算出する機能
【0025】
(6)日付と時間の条件により、運行計画の更新に用いる乗降時分情報を選定する機能
【0026】
(7)選定した乗降時分情報の推定乗降時分を統計処理することで、想定乗降時分を算出する機能
【0027】
(8)想定乗降時分を用いて、運行計画の計画到着時刻または計画発車時刻を更新する機能
【0028】
なお、各駅間には最短で走行できる走行時分の限界があるため、運行計画の更新に当たっては、当該走行時分の限界や遅延リスクも加味し、総合的に安定した運行計画となるように留意する必要がある。
【0029】
図1は、実施例に係る運行計画作成システム100のブロック構成の一例を示す図である。運行計画作成システム100は、乗降時分推定装置200および運行計画作成装置300を備える。ここで、乗降時分推定装置200および運行計画作成装置300は、それぞれ個別の装置として実装してもよいし、同一の装置内に個別の機能部として実装してもよい。図1では、別々の装置として実装した場合について説明する。
【0030】
乗降時分推定装置200は、データ入力部210、乗客重量算出部220、基準重量算出部230および乗降時分推定部240を備える。また、乗降時分推定装置200は、内部にメモリ、ハードディスク、SSDなどの記憶領域を備え、その記憶領域内に、データ入力部210で取得した情報を一時的に保存しておくための車両データ記憶領域211を有する。
【0031】
ただし、車両データ記憶領域211の構成は、図1に示す構成に限られるものではなく、乗降時分推定装置200が有線または無線通信等を介して外部のサーバやクラウド環境上などに構築された記憶領域に接続可能な場合には、その記憶領域内に車両データ記憶領域211を備えてもよい。例えば、図3は、実施例に係る運行計画作成システム100のブロック構成の別例を示す図で、運行計画作成システム100の外に、外部記憶領域を設けた例である。
【0032】
運行計画作成装置300は、記憶部310および運行計画作成部320を備える。また、運行計画作成装置300は、内部にメモリ、ハードディスク、SSDなどの記憶領域を備え、その記憶領域内に、記憶部310で取得した運行計画や乗降時分情報などを保存する運行計画記憶領域311を備える。
【0033】
ただし、運行計画記憶領域311の構成は、図1に示す構成に限られるものではなく、運行計画作成装置300が、有線または無線通信等を介して外部のサーバやクラウド環境上などに構築された記憶領域に接続可能な場合には、その記憶領域内に運行計画記憶領域311を備えてもよい。例えば、図3に示すように、外部記憶領域に運行計画記憶領域311を備えてもよい。
【0034】
列車400は、車両情報制御装置410、速度発電機420、ドア装置430、空気ばね装置440およびデータ出力部450を備える。ここで、図1および図3では、一路線内で走行する複数の列車の内、ある運行計画に沿って走行する1つの列車400を例示するが、実際の適用においては、様々な路線の複数列車が、乗降時分推定装置200および運行計画装置300と情報を授受する構成となる。
【0035】
次に、各装置間の入出力方法および各装置の動作タイミングを示す。
列車400内部の入出力および動作は、走行中に逐次実行され、データ出力部450を通じて、乗降時分推定装置200のデータ入力部210へ逐次車両データが送信される。また、乗降時分推定装置200は、列車400から取得した車両データを逐次処理し、算出した乗降時分情報を運行計画作成装置300の記憶部310へ出力する。
【0036】
運行計画作成装置300の記憶部310は、乗降時分情報を取得するか、運行計画作成部320が起動する度に逐次処理を実行する。この運行計画作成部320は、運行計画(図示せず)を作成する事業者(鉄道事業者など)が任意のタイミングで起動し、記憶部310に蓄積された乗降時分情報を用いて運行計画を更新する。また、更新後の運行計画に関しては、運転士が、列車400の営業運転開始前に、運行計画作成部320からICカードやUSBメモリなどの情報記憶媒体へこの運行計画を記録する。その後、運転士が列車400へ乗り込んだ際に、この情報記録媒体を列車400の車両情報制御装置410と接続することで運行計画を出力する方法などが考えられる。
【0037】
ただし、各装置間の入出力態様や動作タイミングは、実施例として記載したものに限られるものではなく、例えば、図3に示すように、列車400の車両情報制御装置410が、メモリ、ハードディスク、SSDなどの記憶領域を備え、この記憶領域上に生成した車両データを一時的に保存する車上記憶領域411を備える場合は、走行中は車上記憶領域411に車両データを蓄積する。営業運転終了後に車両基地などに帰還したタイミングで、データ出力部450へハードディスクやSSDなどの情報記録媒体を接続して一括で蓄積した車両データを取得する。次いで、この情報記録媒体を乗降時分推定装置200のデータ入力部210へ接続して車両データを入力してもよい。
【0038】
また、図3に示すように、車両データ記憶領域211が外部のサーバやクラウド上の記録領域に存在する場合、乗降時分推定装置200は、鉄道事業者が、任意のタイミングで乗降時分推定装置200を起動し、車両データ記憶領域211に蓄積された車両データを取得することで、乗降時分を算出してもよい。また、運行計画作成装置300は、乗降時分推定装置200から乗降時分情報を記憶部310へ入力する毎に起動し、運行計画を更新してもよい。
【0039】
先ず、列車400が備える構成要素の入出力態様について説明する。
車両情報制御装置410は、運行計画作成装置300から運行計画を取得し、運転士に対して、または、ドライバレス列車などの運転士が存在しない車両では、列車走行を制御する装置に対して、運行計画を出力する。
【0040】
ここで、運行計画に関するデータは、例えば、図4に示すように、少なくとも列車番号毎に、始発駅(A駅)から終着駅(Z駅)までの全ての駅、これら全ての駅に対する計画到着時刻および計画発車時刻が記載されたテーブルデータである。ここで、図4は、運行計画のデータ構成の一例を示す図である。
【0041】
車両情報制御装置410は、速度発電機420から列車速度の情報、乗客重量関連パラメータとして空気ばね装置440から空気ばねの圧力の情報(以降、「AS圧」(エアサスペンション圧)と呼ぶ)およびドア装置430からドアの状態を表す、開または閉の二値の情報(以降、「ドア状態」と呼ぶ)を取得する。これら情報に加えて、車両情報制御装置410内部で保有する日時情報および運行計画から取得した駅の情報から、図5に示すように、時系列の車両データを生成して、データ出力部450へ出力する。ここで、図5は、車両データのデータ構成の一例を示す図である。
【0042】
データ出力部450は、車両情報制御装置410から上述の車両データを取得し、乗降時分推定装置200のデータ入力部210へ出力する。
【0043】
次に、乗降時分推定装置200が備える構成要素の入出力態様および動作態様について説明する。
データ入力部210は、列車400のデータ出力部450から車両データを入力し、駅停車中における車両データのみを抽出して、車両データ記憶領域211に保存する。また、保存した車両データを、乗客重量算出部220、基準重量算出部230および乗降時分推定部240へ出力する。データ入力部210の動作態様の詳細は、後述する。
【0044】
乗客重量算出部220は、データ入力部210から車両データ(時刻とAS圧)を取得する。取得したAS圧を用いて駅停車中における乗客重量の時系列データを算出し、基準重量算出部230と乗降時分推定部240へ当該データを出力する。乗客重量算出部220の動作態様の詳細は、後述する。
【0045】
基準重量算出部230は、データ入力部210から車両データ(列車速度とドア状態)を、乗客重量算出部220から乗客重量を取得する。取得したドア状態、列車速度および乗客重量から、乗降後基準重量と重量閾値を算出し、これらを乗降時分推定部240へ出力する。基準重量算出部230の動作態様の詳細は、後述する。
【0046】
ここで、図2に示すように、乗降後基準重量は、駅停車中においてドアが開状態から閉状態に遷移し、列車400内の乗客数が確定した状態における乗客重量を表す指標である。また、重量閾値は、図2に示すように、乗降時分推定部240において、乗降後基準重量に対して、乗客重量がどれくらい外れたら乗降完了と検知するかを表す指標である。
【0047】
乗降時分推定部240は、データ入力部210から車両データ(時刻、現在駅、ドア状態)を、乗客重量算出部220から乗客重量を、基準重量算出部230から乗降後基準重量と重量閾値を、それぞれ取得する。取得した、時刻、現在駅、ドア状態、乗客重量、乗降後基準重量および重量閾値を用いて、推定乗降開始時刻と停車駅と推定乗降時分を算出して乗降時分情報を生成する。生成した乗降時分情報は、運行計画作成装置300の記憶部310へ出力される。乗降時分推定部240の動作態様の詳細は、後述する。
【0048】
図6は、データ入力部210の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。データ入力部210の処理は、車両データが入力される度に実行される。以下の各ステップの実行主体は、データ入力部210であるが、以下ではその実行主体の記載を省略する。
【0049】
ステップS1001では、列車400のデータ出力部450から車両データ(時刻、現在駅、列車速度、AS圧およびドア状態)を取得し、車両データ記憶領域211へ保存し、ステップS1002へ進む。
【0050】
以下のステップS1002からステップS1012までの一連の処理は、ステップS1001で保存した車両データのタイムステップ数分だけループ処理を行う。
【0051】
ステップS1002では、車両データ記憶領域211から、ステップS1001で保存した車両データを1ステップ分読み込み、ステップS1003へ進む。
【0052】
ステップS1003では、ドア状態の前回値が閉かつ今回値が開であるかを判定する。判定結果が、Yesであれば、ステップS1004に、Noであれば、ステップS1005へ進む。
【0053】
ステップS1004では、内部変数である走行状態を0から1にして、ステップS1004へ進む。ここで、走行状態とは、データ入力部210の内部で保有する、列車400がどの走行状態にいるかを監視するための変数である。
図7は、走行状態の定義を説明する図である。図示のように、0が走行中の状態、1が駅停車中かつドアが開いている状態、2が駅停車中でドアが閉じて出発時刻まで待機している状態、である。
【0054】
ステップS1005では、走行状態の前回値が1かつドア状態の前回値が開かつ今回値が閉であるかを判定する。判定結果が、Yesであれば、ステップS1006へ、Noであれば、ステップS1007へ進む。
【0055】
ステップS1006では、走行状態を1から2にして、ステップS1007へ進む。
【0056】
ステップS1007では、走行状態の前回値が2かつ列車速度が0より大きいかを判定する。判定結果が、Yesであれば、ステップS1008へ、Noであれば、ステップS1011へ進む。
【0057】
ステップS1008では、車両データ記憶領域211に保存した送信用車両データを取得し、取得した送信用車両データを、乗客重量算出部220、基準重量算出部230および乗降時分推定部240に出力し、ステップS1009へ進む。
【0058】
ここで、送信用車両データとは、ステップS1001で取得した車両データから、走行状態が1または2のデータのみを抽出したデータであり、初期状態は空のデータで、ステップS1012で追加保存により蓄積される。
【0059】
ステップS1009では、車両データ記憶領域211の送信用車両データを削除して、ステップS1010へ進む。
【0060】
ステップS1010では、走行状態を2から0にして、ステップS1011へ進む。
【0061】
ステップS1011では、走行状態が0より大きいかを判定する。判定結果が、Yesであれば、ステップS1012に進み、Noであれば、ループ処理の次のステップへ進む。ステップS1001で保存した車両データのタイムステップ数分の処理を実行した後、ループ処理を終了する。
【0062】
ステップS1012では、送信用車両データに現在ステップの車両データを追加し、車両データ記憶領域211に保存し、ループ処理の次のステップへ進む。ステップS1001で保存した車両データのタイムステップ数分の処理を実行した後、ループ処理を終了する。
【0063】
図8は、乗客重量算出部220の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。乗客重量算出部220の処理は、データ入力部から車両データを取得する度に実行される。以下の各ステップの実行主体は、乗客重量算出部220であるが、以下ではその実行主体の記載を省略する。
【0064】
ステップS2001では、データ入力部210から車両データ(時刻、AS圧)を取得し、ステップS2002へ進む。
【0065】
ステップS2002とステップS2003の処理は、ステップS2001で取得した車両データのタイムステップ数分だけループする。
【0066】
ステップS2002では、列車400の車両毎に、以下の式で乗客重量を算出し、ステップS2003へ進む。
乗客重量=(AS圧-空車時AS圧)×空気ばねの表面積÷重力加速度
ここで、空車時AS圧は、列車400の車両毎に固有の値であり、列車400の製造時や営業運転前などにあらかじめ計測した値を設定しておく。
【0067】
また、車両毎に空気ばね装置が複数台設置されており、AS圧のデータも複数ある場合には、各空気ばね装置に対して空車時AS圧を設定しておく。ここで、車両毎の乗客重量は、各空気ばねに対して乗客重量を算出した値の平均値を用いる。
【0068】
なお、実施例では、乗客重量関連パラメータとして、AS圧を用いた場合の乗客重量の算出手法を示したが、乗客重量の算出手段は、この手法に限られるものではなく、他に、列車400における乗客重量を検知する仕組みが存在する場合は、その計測結果を用いてもよい。
【0069】
ステップS2003では、乗客重量を算出する際のAS圧の時刻と、算出した各車両の乗客重量とを、乗客重量情報として1つの時系列データにまとめ、ループ処理内の次のステップへ進む。入力したデータのタイムステップ数分の処理を実行した後、ループ処理を終了してステップS2004へ進む。
【0070】
ステップS2004では、乗客重量情報を、基準重量算出部230と、乗降時分推定部240へ出力して、処理を終了する。
【0071】
図9は、基準重量算出部230の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。基準重量算出部230は、乗客重量算出部220から乗客重量情報を入力する度に実行する。以下の各ステップの実行主体は、基準重量算出部230であるが、以下ではその実行主体の記載を省略する。
【0072】
ステップS3001では、データ入力部210から車両データ(列車速度、ドア状態)を、乗客重量算出部220から乗客重量情報をそれぞれ取得し、ステップS3002へ進む。
【0073】
ステップS3002からステップS3006までの処理は、列車400を構成する車両数分だけ実行する。また、ステップS3002からステップS3004までの処理は、入力した車両データのタイムステップ数分だけループ処理を行う。
【0074】
ステップS3002では、ドア状態が開から閉に変化したか判定する。判定結果が、Yesであれば、ステップS3003へ進み、Noであれば、ループ処理内の次のステップへ進む。
【0075】
ステップS3003では、合計重量に乗客重量を加算し、また、合計重量データ数に1を加算し、ステップS3004へ進む。ここで、合計重量および合計重量データ数は、乗客重量の平均値を算出するための変数であり、どちらも初期値は0である。
【0076】
ステップS3004では、最大重量より乗客重量が大きければ、最大重量を乗客重量に更新する。また、最小重量より乗客重量が小さければ、最小重量を乗客重量に更新する。そして、ループ処理内の次のステップへ進む。
【0077】
入力した車両データのタイムステップ数分の処理を実行した後、ループ処理を終了し、ステップS3005へ進む。ここで、最大重量と最小重量は、乗降後基準重量の算出時に参照した乗客重量の最大値と最小値を算出するための変数であり、どちらも初期値は0である。
【0078】
ステップS3005では、以下の式で、処理中の車両の乗降後基準重量(乗客重量の平均値)を算出し、ステップS3006へ進む。
乗降後基準重量=合計重量÷合計重量データ数
【0079】
ステップS3006では、乗降後基準重量と最大重量との差分の絶対値と、乗降後基準重量と最小重量との差分の絶対値の大きい方の値を、処理中の車両の重量閾値として算出し、次のループ処理のステップへ進む。
車両数分の処理を実行した後、ループ処理を終了して、ステップS3007へ進む。
【0080】
ここで、重量閾値とは、乗降時分推定部240において、乗降後基準重量に対して、どれくらい乗客重量が外れた場合に、乗降完了として検知するかを表す指標である。
【0081】
なお、実施例では、最大値と最小値を基に重量閾値を算出しているが、重量閾値の算出方法は、乗降後基準重量と乗客重量とを用いて乗客重量の標準偏差を算出して、閾値として設定してもよい。
【0082】
ステップS3007では、各車両の乗降後基準重量と重量閾値を、乗降時分推定部240へ出力し、処理を終了する。
【0083】
図10は、乗降時分推定部240の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。乗降時分推定部240の処理は、基準重量算出部230から乗降後基準重量と重量閾値を取得する度に実行する。以下の各ステップの実行主体は、乗降時分推定部240であるが、以下ではその実行主体の記載を省略する。
【0084】
ステップS4001では、データ入力部210から車両データ(日付、時刻、ドア状態、現在駅)を、乗客重量算出部220から乗客重量情報を、基準重量算出部230から乗降後基準重量と重量閾値をそれぞれ取得し、ステップS4002へ進む。
【0085】
ステップS4002では、車両データにおける先頭データの時刻を推定乗降開始時刻に、また、そのタイミングにおける現在駅のデータを停車駅に、それぞれ設定して、ステップS4003へ進む。
【0086】
ステップS4003からステップS4005までの処理は、列車400の車両数分だけループする。また、ステップS4003とステップS4004の処理は、ドア状態が開から閉に変化した時点からデータの先頭に向かって時間的に遡り、車両データのタイムステップ数分だけループする。
【0087】
ステップS4003では、乗降後基準重量と乗客重量との差分の絶対値が、重量閾値以下であるか(|乗降後基準重量-乗客重量|≦重量閾値)を判定する。判定結果が、Yesであれば、ループ処理の次のステップへ進み、先頭データまでの処理が完了した後、ループ処理を終了してステップS4005へ進む。判定結果が、Noであれば、ステップS4004へ進む。
【0088】
ステップS4004では、現在ループにおける車両データの時刻を、推定乗降完了時刻に設定し、ステップS4005へ進む。
【0089】
ステップS4005では、以下の式で、処理中の車両の推定乗降時分を算出し、ループ処理の次のステップへ進む。車両数分の処理を実行した後、ループ処理を終了し、ステップS4006へ進む。
推定乗降時分=推定乗降完了時刻-推定乗降開始時刻
【0090】
ステップS4006では、列車400を構成する各車両の推定乗降時分の中で最大の値を、停車駅における推定乗降時分として算出し、ステップS4007へ進む。
【0091】
ステップS4007では、日付、停車駅、推定乗降開始時刻および推定乗降時分から、乗降時分情報を生成し、この乗降時分情報を運行計画作成装置300の記憶部310に出力して処理を終了する。
【0092】
次に、運行計画作成装置300が備える構成要素の入出力態様および動作態様について説明する。
記憶部310は、乗降時分推定装置200の乗降時分推定部240から乗降時分情報を取得し、運行計画記憶領域311に保存する。
【0093】
また、記憶部310は、運行計画作成部320から運行計画検索条件(列車番号)を取得し、運行計画記憶領域311からこの運行計画検索条件に合致する運行計画を取得し、この運行計画内の各停車駅に関する乗降時分情報を、運行計画作成部320へ出力する。併せて、運行計画作成部320から更新後の運行計画を取得して、運行計画記憶領域311に保存する。記憶部310の動作態様の詳細は、後述する。
【0094】
ここで、運行計画検索条件は、運行計画を作成する事業者(鉄道事業者など)において、運行計画を変更したい列車番号に合わせて任意に設定する。例えば、通勤などで遅延が頻繁に発生する列車番号のみを選択する、または、ある路線全体の運行計画を更新したい場合には、その路線全ての列車番号を選択する。なお、列車番号とは、鉄道事業者において使用され、運行計画において各列車を区別するために、一つの行路(始発駅から終着駅まで)毎に固有に与える番号のことである。
【0095】
また、実施例では、列車番号を検索条件としたが、検索条件は列車番号に限られるものではなく、例えば、始発駅と始発駅の計画発車時刻との組み合わせなど、特定の運行計画を選択できる情報としてもよい。
【0096】
運行計画作成部320は、運行計画(図示せず)を変更したい事業者により設定された運行計画検索条件(列車番号)を記憶部310へ出力し、記憶部310から運行計画と乗降時分情報を取得する。例えば、運行計画(図示せず)を変更したい事業者により乗降時分選定条件(日付、時間範囲)が設定され、この乗降時分選定条件を基にして乗降時分情報を取得する。取得した乗降時分情報から選定した乗降時分情報の推定乗降時分を統計処理することで想定乗降時分を算出する。その上で、算出した想定乗降時分を用いて運行計画を更新する。更新後の運行計画は、記憶部310および列車400へ出力する。運行計画作成部320の動作態様の詳細は、後述する。
【0097】
ここで、乗降時分選定条件とは、想定乗降時分を算出するための統計処理に用いる乗降時分情報を選定するための条件であって、運行計画を作成する事業者が任意に設定する。
【0098】
日付の条件としては、例えば、通勤により混雑が発生しやすい平日の日付のみを設定してもよいし、特定の曜日になるように設定してもよい。また、日付に拘らず対象の列車番号の運行計画を更新したい場合には、あえて設定しなくてもよい。
【0099】
時間範囲の条件としては、列車毎に細かく運行計画を設定したい場合は、±1~2分など列車の走行間隔よりも短い値で設定してもよいし、数本の列車毎に運行計画を設定する場合は、±10~15分などで設定してもよい。
【0100】
また、想定乗降時分とは、更新対象の駅のある日付および時間範囲において想定される乗降時分のことである。
【0101】
乗降時分選定条件で選定した推定乗降時分に対して統計処理を実行し、運行計画を更新する事業者における運行計画の更新の方針を満たす結果を用いる。例えば、平均的に発生する乗降時分に合わせて運行計画を更新したい場合は、平均値を用いればよい。また、最も頻度高く発生する乗降時分に合わせて運行計画を更新したい場合は、最頻値を用いればよい。他方、遅延を極力発生させないように運行計画を更新したい場合は、最大値などを用いればよい。実施例では、後述するが上記した平均値を用いる。
【0102】
図11は、記憶部310の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。記憶部310は、乗降時分推定装置200の乗降時分推定部240から乗降時分情報を取得するか、運行計画作成部320から検索条件を取得する度に処理を実行する。以下の各ステップの実行主体は、記憶部310であるが、以下ではその実行主体の記載を省略する。
【0103】
ステップS5001では、乗降時分推定装置200の乗降時分推定部240から乗降時分情報を取得し、運行計画記憶領域311に保存して、ステップS5002へ進む。
【0104】
ステップS5002では、運行計画作成部320から運行計画検索条件(列車番号)を取得したかを判定する。判定結果が、Yesであれば、ステップS5003へ進み、Noであれば、処理を終了する。
【0105】
ステップS5003では、運行計画検索条件に記載の列車番号に合致する運行計画および当該運行計画に記載の駅と合致する停車駅を含んだ全ての乗降時分情報を、運行計画記憶領域311から取得し運行計画作成部320へ出力して、ステップS5004へ進む。
【0106】
ステップS5004では、運行計画作成部320から更新後の運行計画を取得し、運行計画記憶領域311の更新前の運行計画を上書き保存して、処理を終了する。
【0107】
図12は、運行計画作成部320の処理フローの一例をフローチャートで示す図である。運行計画作成部320は、運行計画を作成する事業者が運行計画検索条件および乗降時分選定条件を設定した場合に処理を実行する。以下の各ステップの実行主体は、運行計画作成部320であるが、以下ではその実行主体の記載を省略する。
【0108】
ステップS6001では、記憶部310に運行計画検索条件(列車番号)を出力し、ステップS6002へ進む。
【0109】
ステップS6002では、記憶部310から運行計画および乗降時分情報を取得し、ステップS6003へ進む。
【0110】
ステップS6003からステップS6005までの処理は、運行計画検索条件で指定した列車番号の数だけループ処理を実行し、さらに、このループ処理の中で、処理中の運行計画に記載の駅の数だけループ処理を行う。
【0111】
ステップS6003では、乗降時分情報の日付、停車駅および推定乗降開始時刻を参照し、停車駅が処理中の駅であって、日付が乗降時分選定条件の日付に合致するものの中から、推定乗降開始時刻が、処理中の駅の計画到着時分に対して乗降時分選定条件の時間範囲以内のものを選出し、ステップS6004へ進む。
【0112】
ステップS6004では、選出した乗降時分情報の推定乗降時分の平均値を算出して、想定乗降時分として設定し、ステップS6005へ進む。
【0113】
ステップS6005では、処理中の駅の計画到着時刻を以下の式で更新し、ループ処理の次のステップへ進む。また、処理中の運行計画に記載の全ての駅に対して処理が完了した場合は、ループ処理を終了し、次の列車番号のループ処理へ進む。全ての列車番号の運行計画に対して処理が完了した後、ループ処理を終了し、ステップS6006へ進む。
更新後の計画到着時刻=計画発車時刻-想定乗降時分
【0114】
ステップS6006では、更新後の運行計画を記憶部310と列車400へ出力し、処理を終了する。
【0115】
また、運行計画の更新方法は、図12に示すフローチャートによる処理方法に限定されるものではなく、上述した実施例で推定した想定乗降時分を参考にして、従前の運行計画を更新する方法であればよい。
【0116】
上述した実施例によれば、少なくとも以下の各技術態様が包含されることになる。
<技術態様1>
運行計画作成システムとして、時刻情報、列車が停車する駅情報、当該列車の乗客重量に関連するパラメータ、当該列車の列車速度および当該列車のドアの開閉状態を取得するデータ取得部と、上記パラメータから乗客重量を算出する乗客重量算出部と、列車速度、ドアの開閉状態および前記乗客重量を用いて、ドアの開状態から閉状態への変化時点から列車速度が0より大きくなるまでの時間における乗降後基準重量を算出する基準重量算出部と、ドアの開閉状態、乗客重量および乗降後基準重量を用いて、ドアが開状態から閉状態になるまでの時間における乗客重量と乗降後基準重量との比較から乗降時分を推定する乗降時分推定部とを有する乗降時分推定装置と、乗降時分推定装置から列車が停車する各駅の乗降時分を取得して列車の運行計画を作成する運行計画作成装置とを備える。
【0117】
<技術態様2>
上記技術態様1に記載した運行計画作成システムであって、上記パラメータは、列車に搭載された空気ばね装置の圧力値であり、乗客重量算出部は、列車の運行時の圧力値と当該列車の空車時の圧力値との差分から乗客重量を算出する。
【0118】
<技術態様3>
上記技術態様1または上記技術態様2に記載した運行計画作成システムであって、基準重量算出部は、ドアの開状態から閉状態への変化時点から列車速度が0より大きくなるまでの時間における乗客重量の平均値を、乗降後基準重量として算出する。
【0119】
<技術態様4>
上記技術態様3に記載した運行計画作成システムであって、基準重量算出部は、ドアが開状態から閉状態に変化後に列車速度が0より大きくなるまでの時間における乗客重量の振れ幅の最大値を、乗降後基準重量に対する重量閾値として算出する。
【0120】
<技術態様5>
上記技術態様4に記載した運行計画作成システムであって、乗降時分推定部は、ドアが開状態から閉状態に変化した時点から当該ドアが閉状態から開状態に変化した時点へ向かって時間的に遡ることで、乗客重量が乗降後基準重量から重量閾値以上外れた時点を乗降完了時刻として抽出する。
【0121】
<技術態様6>
上記技術態様5に記載した運行計画作成システムであって、乗降時分推定部は、列車が複数の車両から構成される場合に、抽出した乗降完了時刻が最も遅い車両の乗降完了時刻を、当該列車の乗降完了時刻として抽出する。
【0122】
<技術態様7>
上記技術態様5または上記技術態様6に記載した運行計画作成システムであって、乗降時分推定部は、ドアが閉状態から開状態に変化した時点を乗降開始時刻とし、当該乗降開始時刻と乗降完了時刻との差分を乗降時分として推定する。
【0123】
<技術態様8>
上記技術態様1から上記技術事項7のいずれかに記載した運行計画作成システムであって、運行計画作成装置は、列車番号、始発駅から終着駅までの全ての駅の情報、当該駅ごとの駅到着時刻および駅発車時刻の情報を含む運行計画を作成する。
【0124】
<技術態様9>
上記技術態様8に記載した運行計画作成システムであって、運行計画作成装置は、乗降時分、当該乗降時分を算出した停車駅、日付、乗降開始時刻および乗降完了時刻の各情報を乗降時分情報として記憶する記憶部を有する。
【0125】
<技術態様10>
上記技術態様9に記載した運行計画作成システムであって、運行計画作成装置は、記憶部が記憶する乗降時分情報から、更新対象とする運行計画に係わる駅と同一の駅の乗降時分情報の集合に含まれる乗降時分を統計処理した結果に基づいて、当該駅ごとの駅到着時刻または駅発車時刻を調整して運行計画を更新する。
【0126】
<技術態様11>
上記技術態様10に記載した運行計画作成システムであって、運行計画作成装置は、駅到着時刻を調整する際に、乗降時分情報の集合を、駅到着時刻から所定の時間幅に乗降開始時刻が含まれる乗降時分情報に限定する。
【0127】
<技術態様12>
上記技術態様10に記載した運行計画作成システムであって、運行計画作成装置は、駅到着時刻を調整する際に、乗降時分情報の集合を、任意の日数を定めた日付の条件と一致する日付が含まれる乗降時分情報に限定する
【0128】
<技術態様13>
上記技術態様10から上記技術態様12のいずれかに記載した運行計画作成システムであって、運行計画作成装置は、更新対象とする運行計画に係わる駅に対して、乗降時分情報の集合に含まれる乗降時分の平均値を当該駅の乗降時分として規定し、規定した当該乗降時分に基づいて当該駅の駅到着時刻または駅発車時刻を調整する。
【0129】
<技術態様14>
運行計画作成方法として、時刻情報、列車が停車する駅情報、当該列車の乗客重量に関連するパラメータ、当該列車の列車速度および当該列車のドアの開閉状態を取得し、上記パラメータから乗客重量を算出し、列車速度、ドアの開閉状態および乗客重量を用いて、ドアの開状態から閉状態への変化時点から列車速度が0より大きくなるまでの時間における乗降後基準重量を算出し、ドアの開閉状態、乗客重量および乗降後基準重量を用いて、ドアが開状態から閉状態になるまでの時間における乗客重量と乗降後基準重量との比較から乗降時分を推定し、列車が停車する各駅に対して推定した乗降時分を用いて、列車の運行計画を作成する。
【0130】
<技術態様15>
上記技術態様14に記載した運行計画作成方法であって、上記パラメータは、列車に搭載された空気ばね装置の圧力値であり、乗客重量算出部は、列車の運行時の圧力値と当該列車の空車時の圧力値との差分から乗客重量を算出する。
【0131】
以上のとおり、本発明に係る運行計画作成システムにより、あらかじめ運行計画において規定された駅停車時間よりも短い時間で乗客の乗降が完了した場合にも、乗降完了時刻を検知することが可能となり、さらに、遅延の低減による利便性向上や、駅間走行時分の延長による列車の最高速度の低減で省エネ化が可能となる。
【0132】
ただし、各駅間には最短で走行できる走行時分の限界があるため、運行計画の更新に当たっては、当該走行時分の限界や遅延リスクも加味して、総合的に安定した運行計画となるように留意する必要がある。
【0133】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
100…運行計画作成システム、200…乗降時分推定装置、210…データ入力部、
211…車両データ記憶領域、220…乗客重量算出部、230…基準重量算出部、
240…乗降時分推定部、300…運行計画作成装置、310…記憶部、
311…運行計画記憶領域、320…運行計画作成部、400…列車、
410…車両情報制御装置、411…車上記憶領域、420…速度発電機、
430…ドア装置、440…空気ばね装置、450…データ出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12