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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168992
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】センサ装置、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01D 3/00 20060101AFI20241128BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20241128BHJP
   G01K 7/00 20060101ALI20241128BHJP
   H02P 29/60 20160101ALI20241128BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20241128BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241128BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20241128BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01D3/00 C
G01D5/244 B
G01K7/00 321C
H02P29/60
B60L1/00 L
B60L3/00 J
B60L15/20 J
G01D5/20 110Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086151
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今林 拓也
【テーマコード(参考)】
2F075
2F077
5H125
5H501
【Fターム(参考)】
2F075AA02
2F075EE16
2F075EE18
2F077AA11
2F077CC02
2F077PP05
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB00
5H125BB05
5H125BB09
5H125BC25
5H125CD04
5H125EE03
5H125EE07
5H125EE15
5H501AA20
5H501CC04
5H501HB07
5H501LL34
5H501LL38
(57)【要約】
【課題】被検出部の状態の誤検出を回避可能なセンサ装置を提供する。
【解決手段】制御ユニット30は、降圧回路31と、内部電源41、42と、制御部50と、を備える。降圧回路31は、補機バッテリ7からの電力を降圧する。内部電源41、42は、降圧回路31にて降圧された電力を供給する。制御部50は、駆動信号生成部51、温度演算部53を有する。駆動信号生成部51は、降圧回路31を駆動する降圧回路駆動信号を生成する。温度演算部53は、第2内部電源42を用いて生成されるセンサ信号に基づいて被検出部の状態に応じた値を演算可能である。制御部50は、降圧回路駆動信号をオフすることで降圧回路31の駆動を停止させているとき、制御部50における被検出部の状態に係る内部認識値を、センサ信号に基づく演算値に替えて代替値とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(7)からの電力を降圧する降圧回路(31)と、
前記降圧回路にて降圧された電力を供給する内部電源(41、42)と、
前記降圧回路を駆動する降圧回路駆動信号を生成する駆動信号生成部(51)、および、前記内部電源を用いて生成されるセンサ信号に基づいて被検出部(10、21、45)の状態に応じた値を演算可能な演算部(52、53、55)を有する制御部(50)と、
を備え、
前記制御部は、前記降圧回路駆動信号をオフすることで前記降圧回路の駆動を停止させているとき、前記制御部における前記被検出部の状態に係る内部認識値を、前記センサ信号に基づく演算値に替えて代替値とするセンサ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記降圧回路駆動信号をオフからオンにし、前記降圧回路の駆動を開始した場合、復帰条件が成立した後、前記内部認識値を前記代替値から前記演算値に復帰させる請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記被検出部は、インバータ(21)であって、
前記演算部である温度演算部(53)は、前記インバータにゲート信号を出力するゲート駆動回路(47)から、インバータ素子の温度に応じた温度検出信号を前記センサ信号として取得し、前記インバータ素子の温度を前記演算値として演算し、
前記制御部は、前記降圧回路を停止させているとき、前記インバータ素子の温度に係る前記内部認識値を前記演算値に替えて前記代替値とする請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記被検出部は、モータ(10)の回転位置を検出するレゾルバ(15)に励磁信号を出力するレゾルバ励磁回路(45)であって、
前記演算部である電圧監視部(55)は、前記レゾルバ励磁回路の電源電圧に係る信号を前記センサ信号として取得し、前記電源電圧を前記演算値として演算し、
前記制御部は、前記降圧回路を停止させているとき、前記電源電圧に係る前記内部認識値を前記演算値に替えて前記代替値とする請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記被検出部は、モータ(10)であって、
前記演算部である角度演算部(52)は、前記モータの回転位置を検出するレゾルバ(15)から前記回転位置に応じた信号を前記センサ信号として取得し、前記モータの回転状態に係る値を前記演算値として演算し、
前記制御部は、前記降圧回路を停止させているとき、前記モータの回転状態に係る前記内部認識値を前記演算値に替えて前記代替値とする請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項6】
センサ装置に用いられるプログラムであって、
少なくとも1つの制御部(50)に、
バッテリ(7)からの電力を降圧する降圧回路(31)を駆動する降圧回路駆動信号を生成させ、
前記降圧回路にて降圧された電力を供給する内部電源(41、42)を用いて生成されるセンサ信号に基づいて被検出部(10、21、45)の状態に応じた値を演算させ、
前記降圧回路駆動信号をオフにすることで前記降圧回路の駆動を停止させているとき、前記被検出部の状態に係る内部認識値を、前記センサ信号に基づく演算値に替えて代替値とさせるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータ素子の温度を検出する温度検出装置が知られている。例えば特許文献1では、温度センサで検出された温度に応じたパルス信号を集積回路側に伝達するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-106931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、素子温度が正常使用範囲外となった場合、パルス信号がハイまたはロー固着となり、正しい温度検出ができないため、フェイル信号を出力して温度検出を停止する。
【0005】
ここで、温度センサが正常であっても、温度センサの検出値の出力に係る装置の電源が停止されている場合、温度センサが正常であるにも拘わらずフェイル信号が出力されると、素子温度が正常使用範囲外と認識され、インバータ等の通常制御が継続できない虞がある。また、温度センサ以外のセンサについても同様の状況が生じ得る。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検出部の状態の誤検出を回避可能なセンサ装置、および、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセンサ装置は、降圧回路(31)と、内部電源(41、42)と、制御部(50)と、を備える。降圧回路は、バッテリ(7)からの電力を降圧する。内部電源は、降圧回路にて降圧された電力を供給する。
【0008】
制御部は、降圧回路を駆動する降圧回路駆動信号を生成する駆動信号生成部(51)、および、内部電源を用いて生成されるセンサ信号に基づいて被検出部(52、53、55)の状態に応じた値を演算可能な演算部(52、53、55)を有する。制御部は、降圧回路駆動信号をオフすることで降圧回路の駆動を停止させているとき、制御部における被検出部の状態に係る内部認識値を、センサ信号に基づく演算値に替えて代替値とする。これにより、被検出部の状態の誤検出を避けることができる。
【0009】
また本発明は、センサ装置に用いられるプログラムであって、少なくとも1つの制御部(50)に、バッテリ(7)からの電力を降圧する降圧回路(31)を駆動する降圧回路駆動信号を生成させ、降圧回路にて降圧された電力を供給する内部電源(41、42)を用いて生成されるセンサ信号に基づいて被検出部(10、21、45)の状態に応じた値を演算させ、降圧回路駆動信号をオフにすることで降圧回路の駆動を停止させているとき、被検出部の状態に係る内部認識値を、センサ信号に基づく演算値に替えて代替値とさせるプログラムとしても提供される。これにより、センサ装置と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による車両駆動システムの構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態による制御ユニットの構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態によるセンサ値演算処理を説明するフローチャートである。
図4】一実施形態によるセンサ値演算処理を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一実施形態)
以下、本発明によるセンサ装置、および、プログラムを図面に基づいて説明する。一実施形態を図1図4に示す。図1に示すように、車両駆動システム1は、主機バッテリ5、補機バッテリ7、主機モータ10、および、パワーコントロールユニット20等を備える。
【0012】
主機バッテリ5は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の充放電可能な二次電池により構成される直流電源である。主機バッテリ5の電力は、主にブリッジ回路22を経由して主機モータ10に供給され、主機モータ10の駆動に用いられる。また、主機バッテリ5は、主機モータ10の回生により生じた電力により充電される。また、主機バッテリ5は、図示しない外部電源により充電可能である。補機バッテリ7は、例えば鉛蓄電池等の二次電池であって、制御ユニット30および図示しない補機類に電力を供給する。
【0013】
主機モータ10は、永久磁石式同期型の三相交流の回転電機であって、電動機としての機能と発電機としての機能を併せ持つ、いわゆる「モータジェネレータ」である。主機モータ10は、車両の駆動源として用いられる。車両は、主機モータ10の駆動力により走行するEV車両であってもよいし、主機モータ10および図示しないエンジンの駆動力により走行するハイブリッド車両であってもよい。主機モータ10には、回転角を検出する回転角センサであるレゾルバ15が設けられている。
【0014】
図1および図2に示すように、パワーコントロールユニット20は、インバータ21、および、制御ユニット30等を有する。インバータ21は、ブリッジ回路22、および、温度センサ25を有する。ブリッジ回路22は、例えばIGBT等のインバータ素子がブリッジ接続されており、主機バッテリ5から供給される直流電力を三相交流電力に変換し、主機モータ10に出力する。温度センサ25は、ブリッジ回路22を構成するインバータ素子の温度を検出する。図中、パワーコントロールユニットを「PCU」、制御ユニットを「ECU」と記載する。
【0015】
図2に示すように、制御ユニット30は、降圧回路31、第1内部電源41、第2内部電源42、レゾルバ励磁回路45、ゲート駆動IC47、および、制御部50等を備え、補機バッテリ7の電力により作動する。降圧回路31は、IGBT等である降圧素子を有し、降圧素子をスイッチングすることで補機バッテリ7の電圧(例えば48[V])を降圧し、第1内部電源41および第2内部電源42の降圧電圧を生成する。本実施形態では、第1内部電源41は例えば30V電源であり、第2内部電源は例えば17V電源であるが、内部電源の個数や降圧電圧は異なっていてもよい。
【0016】
レゾルバ励磁回路45は、第1内部電源41から供給される電力により、レゾルバ励磁信号を生成する。生成されたレゾルバ励磁信号は、レゾルバ15に出力される。レゾルバ15は、レゾルバ励磁信号を用い、主機モータ10の回転位置に応じた角度信号であるsin信号およびcos信号を制御部50に出力する。また、RDC(レゾルバデジタルコンバータ)16は、レゾルバ15から出力されるsin信号およびcos信号に基づく角度演算を行い、角度演算信号をデジタル信号にて制御部50に出力する。以下適宜、レゾルバ15から出力されるsin信号およびcos信号をレゾルバ信号とする。
【0017】
ゲート駆動IC47は、第2内部電源42から電力が供給され、ゲート信号をインバータ21に出力する。また、ゲート駆動IC47は、温度センサ25の検出値、および、図示しない電流センサの検出値等をインバータ素子情報として取得する。ゲート駆動IC47は、インバータ素子温度に応じてデューティを変化させたパルス信号である温度検出信号を制御部50に出力する。
【0018】
制御部50は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部50における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。制御部50には、降圧回路31を経由せず、図示しないレギュレータ等を経由した電力が補機バッテリ7から供給される。
【0019】
制御部50は、機能ブロックとして、駆動信号生成部51、角度演算部52、温度演算部53、および、電圧監視部55等を有する。駆動信号生成部51は、降圧回路31の駆動に係る降圧回路駆動信号を生成し、降圧回路31に出力する。
【0020】
角度演算部52は、レゾルバ15から出力されたsin信号およびcos信号のAD変換値を取得し、atan演算等により主機モータ10の回転位置に係る情報を演算する。主機モータ10の回転位置に係る情報には、回転数、レゾルバ角および電気角が含まれる。
【0021】
温度演算部53は、インバータ素子温度に係る温度検出信号をゲート駆動IC47から取得し、取得された温度検出信号のデューティに基づき、インバータ素子温度を演算する。電圧監視部55は、レゾルバ励磁回路45の電源である第1内部電源41の電源電圧を所定範囲内(例えば0[V]~5[V])に変換した電圧を取得し、第1内部電源41が正常動作範囲内か否かをモニタしている。
【0022】
レゾルバ励磁回路45やゲート駆動IC47は、補機バッテリ7の電圧より低い電圧が必要であるため、降圧回路31を用いて生成された内部電源41、42を経由して電力が供給される。
【0023】
降圧回路31では、降圧電圧を生成する際、降圧素子をスイッチングするため、ノイズが発生する。また、車両の電動化により、EMC(電磁両立性、Electromagnetic Compatibility)要件が厳しくなる傾向にあり、例えば、外部電源により主機バッテリ5を充電するときに降圧回路31が駆動していると、スイッチングノイズによりEMC要件を満たさなくなる可能性がある。
【0024】
そのため、本実施形態では、主機バッテリ5を充電しているとき、降圧回路31の駆動を停止する。降圧回路31の駆動を停止すると、内部電源41、42から電力供給が供給されて作動するレゾルバ励磁回路45およびゲート駆動IC47等の作動が停止する。
【0025】
一方、制御部50には、降圧回路31を経由せずに電力が供給されているため、降圧回路31が停止している場合であっても、動作が継続される。ここで、例えばゲート駆動IC47からの温度検出信号に基づくインバータ素子温度検出を継続すると、インバータ素子温度が正常範囲内であるにも拘わらず、正常範囲外であると誤検出する虞がある。
【0026】
そこで本実施形態では、主機バッテリ5の充電時等、制御部50からの指令により正常に降圧回路31を停止させている場合、マイコン内部での認識値を、内部電源41、42を用いて生成されるセンサ信号に基づく演算値に替えて、代替値に持ち替える。ここで、「内部電源を用いて生成されるセンサ信号」とは、センサそのものに内部電源41、42の電力を用いている場合に限らず、センサから制御部50への信号出力に内部電源41、42の電力を用いている場合も含まれる。以下、センサ信号の生成に内部電源41、42の電力を用いているセンサを、「内部電源使用センサ」とする。なお、内部電源使用センサ以外の検出信号に基づく検出値の演算は、降圧回路31を停止させている間も継続していて差し支えない。
【0027】
本実施形態のセンサ値演算処理を図3のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、制御部50にて所定の周期で実行される。以下、ステップS101等の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。
【0028】
S101では、制御部50は、車両システム側から主機バッテリ5の充電状態に係る充電情報を取得する。S102では、制御部50は、主機バッテリ5が外部電源による充電中か否か判断する。主機バッテリ5が充電中であると判断された場合(S102:YES)、S103へ移行する。なお、ここでは、回生による充電ではなく、主機モータ10は停止している状態であることを補足しておく。主機バッテリ5が充電中でないと判断された場合(S102:NO)、S105へ移行する。
【0029】
S103では、駆動信号生成部51は、降圧回路駆動信号をオフにし、降圧回路31を停止する。S104では、制御部50は、内部電源使用センサに係るマイコン内部での認識値を代替値とする。
【0030】
具体的には、降圧回路31が停止している場合、ゲート駆動IC47から取得される温度検出信号が停止されるため、インバータ素子温度が正常範囲内であるにも拘わらず正常範囲外であると誤認識される虞がある。そこで、インバータ素子温度の誤検出を防ぐべく、降圧回路31が停止している場合、制御部50は、ゲート駆動IC47からの温度検出信号に基づく演算値に替えて、内部認識値として前回値を保持する。
【0031】
降圧回路31が停止している場合、レゾルバ励磁回路45の電源である第1内部電源41の電圧が0[V]となり、正常動作範囲外と誤認識される虞がある。そこで、レゾルバ励磁回路45の電源電圧の誤検出を防ぐべく、降圧回路31が停止している場合、制御部50は、内部電源電圧の検出値に替えて、代替値を内部認識値とする。
【0032】
また、降圧回路31が停止している場合、レゾルバ励磁信号が停止し、レゾルバ信号が不定となるため、主機モータ10の回転位置が不定になる虞がある。そこで、主機モータ10の回転位置の誤検出を防ぐべく、降圧回路31が停止している場合、制御部50は、レゾルバ信号に基づく演算値に替えて、代替値(例えば0等)を内部認識値とする。なお、ここで示したものは例示であって、認識値を前回値とするか予め設定された所定値とするかは、適宜選択可能である。
【0033】
主機バッテリ5が充電中ではないと判断された場合(S102:NO)に移行するS105では、制御部50は、降圧回路31が駆動中か否か判断する。降圧回路31が駆動中であると判断された場合(S105:YES)、S106以降の処理をスキップし、降圧回路31の駆動を継続する。降圧回路31が停止していると判断された場合(S105:NO)、S106へ移行する。S106では、駆動信号生成部51は、降圧回路駆動信号をオンにし、降圧回路31の駆動を開始する。
【0034】
S107では、制御部50は、内部電源使用センサの復帰条件が成立したか否か判断する。ここでは、降圧回路31の駆動開始から待機時間Xwが経過した場合、復帰条件が成立したと判定する。待機時間Xwは、降圧回路31の駆動開始から内部電源41、42の電圧が安定するのに要する時間に応じて設定される。
【0035】
また、降圧回路31の駆動後に起動する機能が動作した旨の通知を受け取ることで、復帰条件が成立したと判定してもよい。降圧回路31の駆動後に起動する機能として、例えば第1内部電源41の電圧が正常範囲内となることで、復帰条件が成立したと判定してもよい。さらにまた、レゾルバ励磁回路45から取得される励磁周期信号が正常な振幅、周期となった場合、復帰条件が成立したと判定してもよい。
【0036】
内部電源使用センサの復帰条件が成立していないと判断された場合(S107:NO)、この判断処理を繰り返す。復帰条件が成立したと判断された場合(S107:YES)、S108へ移行し、センサ信号を用いた検出値の演算を開始し、内部認識値を演算値とする。詳細には、ゲート駆動IC47からの温度検出信号に基づくインバータ素子温度演算、レゾルバ励磁回路45の電源電圧検出、および、レゾルバ信号に基づく主機モータ10の角度演算を開始する。なお、演算自体は継続あるいは事前に開始しておき、復帰条件が成立したタイミングでマイコン内部での認識値として反映させるようにしてもよい。
【0037】
本実施形態のセンサ値演算処理を図4のタイムチャートに基づいて説明する。図4では、共通時間軸を横軸とし、上段から、主機バッテリ5の充電実施状態、降圧回路31の駆動状態、ゲート駆動IC47の電源電圧、マイコン内におけるインバータ素子温度の内部認識値、実際のインバータ素子温度、ゲート駆動IC47からのパルス信号を示す。なお、図4では、内部電源使用センサのセンサ値演算の一例として、ゲート駆動IC47からの温度検出信号に基づく素子温度演算を示した。
【0038】
時刻x10以前において、主機バッテリ5が充電中ではなく、降圧回路31が正常に駆動しているので、温度演算部53は、ゲート駆動IC47から出力される温度検出信号のデューティに基づき、インバータ素子温度を演算する。演算されるインバータ素子温度は、実際のインバータ素子温度と概ね一致する。
【0039】
時刻x10にて、主機バッテリ5の充電が開始されると、駆動信号生成部51は、降圧回路駆動信号をオフとし、降圧回路31の駆動を停止する。降圧回路31が停止すると、ゲート駆動IC47の電源である第2内部電源42が停止するため、ゲート駆動IC47からの温度検出信号も停止する。そのため、ゲート駆動IC47からの信号に基づく素子温度演算を継続すると、実際のインバータ素子温度が正常であるにも拘わらず、正常範囲外であると誤認識してしまう。
【0040】
そこで本実施形態では、主機バッテリ5の充電中は、温度演算部53は、ゲート駆動IC47からの温度検出信号に基づく温度演算を停止し、インバータ素子温度の内部認識値を代替値に持ち替える。詳細には、降圧回路駆動信号がオフされた時刻x11以降、代替値として、前回値を保持する。これにより、マイコン内部において、インバータ素子温度が正常範囲内と認識されるので、主機バッテリ5の充電終了後、主機モータ10を駆動する際、インバータ21が正常であるものとして制御を継続することができる。
【0041】
時刻x12にて、主機バッテリ5の充電が終了すると、時刻x13にて、駆動信号生成部51は、降圧回路駆動信号をオンにし、降圧回路31の駆動が開始される。降圧回路31の駆動が開始されると、第2内部電源42が立ち上がり、ゲート駆動IC47の電源が復帰する。降圧回路31を駆動させてから、ゲート駆動IC47が正常な温度検出信号を出力可能となるまでには遅れが生じる。本実施形態では、降圧回路31の駆動開始からの遅れを考慮し、降圧回路駆動信号をオンにしてから、待機時間Xwが経過した時刻x14にて、温度演算部53による温度演算を開始し、内部認識値を代替値からセンサ信号に基づく演算値に復帰させる。これにより、降圧回路31の駆動開始からパルス信号が安定するまでの遅れにより実際とは異なる温度が演算されるのを避けることができる。
【0042】
以上説明したように、制御ユニット30は、降圧回路31と、内部電源41、42と、制御部50と、を備える。降圧回路31は、補機バッテリ7からの電力を降圧する。内部電源41、42は、降圧回路31にて降圧された電力を供給する。
【0043】
制御部50は、駆動信号生成部51、演算部を有する。駆動信号生成部51は、降圧回路31を駆動する降圧回路駆動信号を生成する。演算部は、内部電源41、42を用いて生成されるセンサ信号に基づいて被検出部の状態に応じた値を演算可能である。制御部50は、降圧回路駆動信号をオフすることで降圧回路31の駆動を正常に停止させているとき、制御部50における被検出部の状態に係る内部認識値を、センサ信号に基づく演算値に替えて代替値とする。これにより、降圧回路31の停止により正常時と挙動が異なっている信号に基づく被検出部の状態の誤検出を避けることができる。
【0044】
制御部50は、降圧回路駆動信号をオフからオンにし、降圧回路31の駆動を開始した場合、復帰条件が成立した後、内部認識値を代替値からセンサ信号に基づく演算値に復帰させる。これにより、降圧回路31が起動してからセンサ信号が正常となるまでの遅れによる被検出部の状態の誤検出を避けることができる。
【0045】
被検出部は、インバータ21であって、温度演算部53は、インバータ21にゲート信号を出力するゲート駆動IC47から、インバータ21を構成するインバータ素子の温度に応じた温度検出信号をセンサ信号として取得し、インバータ素子の温度を演算する。制御部50は、降圧回路31を正常に停止させているとき、インバータ素子の温度に係る内部認識値を演算値に替えて代替値とする。これにより、インバータ素子温度の誤検出を避けることができる。
【0046】
被検出部は、主機モータ10の回転位置を検出するレゾルバ15に励磁信号を出力するレゾルバ励磁回路45であって、電圧監視部55は、レゾルバ励磁回路45の電源電圧に係る信号をセンサ信号として取得し、電源電圧を演算する。本実施形態では、レゾルバ励磁回路45の電源電圧は、第1内部電源41の電圧である。制御部50は、降圧回路31を正常に停止させているとき、レゾルバ励磁回路45の電源電圧に係る内部認識値を演算値に替えて代替値とする。これにより、レゾルバ励磁回路45の電源電圧の誤検出を避けることができる。
【0047】
被検出部は、主機モータ10であって、角度演算部52は、主機モータ10の回転位置を検出するレゾルバ15から回転位置に応じた信号をセンサ信号として取得し、主機モータ10の回転状態に係る値を演算する。本実施形態では、主機モータ10の回転数、レゾルバ角および電気角が「主機モータ10の回転状態に係る値」に含まれる。制御部50は、降圧回路31を正常に停止させているとき、主機モータ10の回転状態に係る内部認識値を演算値に替えて代替値とする。これにより、主機モータ10の回転状態に係る値の誤検出を避けることができる。
【0048】
本実施形態の制御ユニット30に用いられるプログラムは、少なくとも1つの制御部50に、補機バッテリ7からの電力を降圧する降圧回路31を駆動する降圧回路駆動信号を生成させ、降圧回路31にて降圧された電力を供給する内部電源41、42を用いて生成されるセンサ信号に基づいて被検出部の状態に応じた値を演算させ、降圧回路駆動信号をオフにすることで降圧回路の駆動を停止させているとき、被検出部の状態に係る内部認識値を、センサ信号に基づく演算値に替えて代替値とさせる。このようなプログラムにおいても、降圧回路31の停止により正常時と挙動が異なっている信号に基づく被検出部の状態の誤検出を避けることができる。
【0049】
実施形態では、制御ユニット30が「センサ装置」、補機バッテリ7が「バッテリ」、主機モータ10が「モータ」および「被検出部」、レゾルバ励磁回路45およびインバータ21が「被検出部」、ゲート駆動IC47が「ゲート駆動回路」、角度演算部52、温度演算部53および電圧監視部55が「演算部」に対応する。
【0050】
(他の実施形態)
上記実施形態では、主機バッテリの充電中に降圧回路が停止しているとき、インバータ素子温度、レゾルバ励磁回路の電源電圧および主機モータの回転位置に係る値を、代替値に読み替えている。他の実施形態では、降圧回路停止時に代替値に読み替える値の一部を省略してもよいし、内部電源使用センサに係る他の演算値を代替値に読み替えるようにしてもよい。
【0051】
上記実施形態では、被検出部は、モータ、インバータおよびレゾルバ励磁回路である。他の実施形態では、被検出部は、モータ、インバータおよびレゾルバ励磁回路以外の装置であってもよい。
【0052】
上記実施形態では、主機バッテリの充電中に降圧回路を停止させる場合、内部電源使用センサに係る検出値を代替値に読み替える。他の実施形態では、主機バッテリの充電中以外において、制御部への電力供給が継続されており、制御部からの指令にて正常に降圧回路を停止させている場合に、内部電源使用センサに係る検出値を代替値に読み替えるようにしてもよい。
【0053】
上記実施形態では、制御部は、レゾルバおよびRDCを経由してモータ回転位置に係る情報を取得している。他の実施形態では、RDCを省略してもよい。また、例えばレゾルバ以外の回転角センサを用いる等、制御ユニットの構成等は上記実施形態とは異なっていてもよい。
【0054】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0055】
7・・・補機バッテリ(バッテリ)
10・・・主機モータ(モータ、被検出部) 15・・・レゾルバ
30・・・制御ユニット(センサ装置)
31・・・降圧回路 41、42・・・内部電源
45・・・レゾルバ励磁回路(被検出部)
47・・・ゲート駆動IC(ゲート駆動回路)
50・・・制御部
52・・・角度演算部(演算部)
53・・・温度演算部(演算部)
55・・・電圧監視部(演算部)
図1
図2
図3
図4