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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168994
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086154
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 駿策
(72)【発明者】
【氏名】徳永 良平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】北林 佑太
(72)【発明者】
【氏名】菊川 里奈
(72)【発明者】
【氏名】川崎 広貴
(72)【発明者】
【氏名】政岡 宥人
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB04
2H033BB12
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB36
2H033BB37
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】非通過領域での過剰な加熱を抑制しつつ、通過領域での適正な熱定着を担保することができる定着装置を提供する。
【解決手段】
定着装置は、軸周りに回転しながら用紙上のトナーを加熱する定着ベルトと、軸周りに回転しながら加圧領域を通過する用紙上のトナーを加圧する加圧ローラーと、定着ベルトの内面に接触し、定着ベルトを加熱するヒーター33と、を備え、定着ベルトには、用紙に接触する通過領域A1と、用紙に接触しない非通過領域A2と、が設定され、ヒーター33は、基板36の一方の面に設けられ、通電されることで発熱する発熱部と、基板36の他方の面に設けられ、発熱部から発せられた熱を吸収して軸方向に移動させる均熱部材38と、を有し、均熱部材38は、通過領域A1に対応する中央領域よりも非通過領域A2に対応する端部領域において熱容量を増加させるように形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、軸周りに回転しながら媒体上のトナーを加熱する定着ベルトと、
軸周りに回転しながら前記定着ベルトとの間に加圧領域を形成し、前記加圧領域を通過する前記媒体上のトナーを加圧する加圧ローラーと、
前記加圧領域に対向した前記定着ベルトの内面に接触し、前記定着ベルトを加熱するヒーターと、を備え、
前記定着ベルトには、軸方向の中央の領域であって前記媒体に接触する通過領域と、軸方向の両側または片側の領域であって前記媒体に接触しない非通過領域と、が設定され、
前記ヒーターは、
前記定着ベルトに対応して軸方向に伸長する基板と、
前記基板の一方の面に設けられ、通電されることで発熱する発熱部と、
前記基板の他方の面に設けられ、前記発熱部から発せられた熱を吸収して軸方向に移動させる均熱部材と、を有し、
前記均熱部材は、前記通過領域に対応する中央領域よりも前記非通過領域に対応する端部領域において熱容量を増加させるように形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記均熱部材は、前記中央領域から前記端部領域に向かって前記媒体の通過方向に幅広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記均熱部材は、前記中央領域から前記端部領域に向かって厚みを増加させるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記均熱部材に接触した状態で設けられ、前記ヒーターの温度を検知する温度検知部を更に備え、
前記均熱部材における前記温度検知部の接触部分は、前記温度検知部の非接触部分よりも前記媒体の通過方向に幅狭く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記均熱部材に接触した状態で設けられ、前記ヒーターの温度を検知する温度検知部を更に備え、
前記均熱部材における前記温度検知部の接触部分は、前記温度検知部の非接触部分よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項1または4に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1に記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、記録材(媒体)上のトナーを熱定着させる定着装置を備えている。例えば、定着装置は、筒状のフィルムと、フィルムの内面に接触するヒーターと、ヒーターに接触する熱伝導部材と、を有している(特許文献1)。熱伝導部材は、反りを抑制してヒーターに対する密着性を高めるために、フィルムの母線方向(軸方向)で複数に分割されている。また、熱伝導部材の1つは、ヒーターの加熱領域の中央部(通紙部)から端部(非通紙部)まで連続してヒーターに接触し、フィルムの非通紙部における過剰な昇温を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-95433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した定着装置の熱伝導部材では、通紙部から非通紙部にかけて全体的に熱を吸収するため、通紙部において熱定着に必要な熱まで奪われる虞があった。その結果、上記した定着装置では、記録材上のトナーを適正に熱定着させることができないことがあった。
【0005】
本発明は、上記問題を考慮し、非通過領域での過剰な加熱を抑制しつつ、通過領域での適正な熱定着を担保することができる定着装置および画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る定着装置は、筒状に形成され、軸周りに回転しながら媒体上のトナーを加熱する定着ベルトと、軸周りに回転しながら前記定着ベルトとの間に加圧領域を形成し、前記加圧領域を通過する前記媒体上のトナーを加圧する加圧ローラーと、前記加圧領域に対向した前記定着ベルトの内面に接触し、前記定着ベルトを加熱するヒーターと、を備え、前記定着ベルトには、軸方向の中央の領域であって前記媒体に接触する通過領域と、軸方向の両側または片側の領域であって前記媒体に接触しない非通過領域と、が設定され、前記ヒーターは、前記定着ベルトに対応して軸方向に伸長する基板と、前記基板の一方の面に設けられ、通電されることで発熱する発熱部と、前記基板の他方の面に設けられ、前記発熱部から発せられた熱を吸収して軸方向に移動させる均熱部材と、を有し、前記均熱部材は、前記通過領域に対応する中央領域よりも前記非通過領域に対応する端部領域において熱容量を増加させるように形成されている。
【0007】
この場合、前記均熱部材は、前記中央領域から前記端部領域に向かって前記媒体の通過方向に幅広くなるように形成されてもよい。
【0008】
この場合、前記均熱部材は、前記中央領域から前記端部領域に向かって厚みを増加させるように形成されてもよい。
【0009】
この場合、前記均熱部材に接触した状態で設けられ、前記ヒーターの温度を検知する温度検知部を更に備え、前記均熱部材における前記温度検知部の接触部分は、前記温度検知部の非接触部分よりも前記媒体の通過方向に幅狭く形成されてもよい。
【0010】
この場合、前記均熱部材に接触した状態で設けられ、前記ヒーターの温度を検知する温度検知部を更に備え、前記均熱部材における前記温度検知部の接触部分は、前記温度検知部の非接触部分よりも薄く形成されてもよい。
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、上記の定着装置を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非通過領域での過剰な加熱を抑制しつつ、通過領域での適正な熱定着を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターを示す概略図(正面図)である。
図2】本発明の第1実施形態に係る定着装置を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る定着装置のヒーターを模式的に示す底面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る定着装置のヒーターを模式的に示す平面図である。
図6】本発明の第1実施形態の変型例に係る定着装置のヒーターを模式的に示す平面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る定着装置のヒーターを模式的に示す側面図である。
図8】本発明の第2実施形態の変型例に係る定着装置のヒーターを模式的に示す側面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る定着装置のヒーターを模式的に示す平面図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る定着装置のヒーターを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0015】
[プリンターの全体構成]
図1を参照して、画像形成装置の一例としてのプリンター1について説明する。図1はプリンター1を示す概略図(正面図)である。
【0016】
プリンター1は、略直方体状の外観を構成する装置本体2を備えている。装置本体2の下部には、用紙P(媒体)を収容する給紙カセット3が設けられている。装置本体2の上面には、排紙トレイ4が設けられている。なお、用紙Pは、紙製に限らず、樹脂製等であってもよい。
【0017】
また、装置本体2の内部には、用紙Pの通路となる搬送路8が形成されている。搬送路8は、給紙カセット3から排紙トレイ4までの間に略S字状に形成されている。搬送路8の上流端部には、給紙カセット3から用紙Pを取り出す給紙装置5が設けられている。搬送路8の中間部には作像装置6が設けられ、搬送路8の下流側には定着装置20が設けられている。
【0018】
作像装置6は、トナーコンテナ10と、ドラムユニット11と、光走査装置12と、を有している。トナーコンテナ10は、例えば、黒色のトナー(現像剤)を収容している。ドラムユニット11は、感光体ドラム13と、帯電装置14と、現像装置15と、転写ローラー16と、を有している。帯電装置14、現像装置15および転写ローラー16は、感光体ドラム13の周囲に画像形成プロセス順に配置されている。転写ローラー16は、下側から感光体ドラム13に接触して転写ニップを形成している。なお、トナーは、トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよいし、磁性トナーから成る一成分現像剤であってもよい。
【0019】
プリンター1の制御装置(図示せず)は各装置を適宜制御し、以下のように画像形成処理を実行する。帯電装置14は、感光体ドラム13の表面を帯電させる。感光体ドラム13は、光走査装置12から出射された走査光を受け、静電潜像を担持する。現像装置15は、トナーコンテナ10から供給されたトナーを用いて感光体ドラム13上の静電潜像をトナー像に現像する。用紙Pは給紙装置5によって給紙カセット3から搬送路8に送り出され、感光体ドラム13上のトナー像は転写ニップを通過する用紙Pに転写される。定着装置20は、トナー像を用紙Pに熱定着させる。その後、用紙Pは、排紙トレイ4に排出される。
【0020】
[第1実施形態:定着装置]
次に、図2ないし図4を参照して、第1実施形態に係る定着装置20について説明する。図2は定着装置20を模式的に示す断面図である。図3はヒーター33を模式的に示す底面図である。図4は、図3のIV-IV断面図である。図5はヒーター33を模式的に示す平面図である。
【0021】
図2に示すように、定着装置20は、定着ベルト31と、加圧ローラー32と、ヒーター33と、を備えている。定着ベルト31および加圧ローラー32は、筐体30(図1参照)の内部に設けられている。ヒーター33は、定着ベルト31を加熱するための熱源である。
【0022】
<定着ベルト>
定着ベルト31は、無端状のベルトであって、前後方向(軸方向)に長い略円筒状に形成されている。定着ベルト31の表層は、例えば、ポリイミド樹脂等の耐熱性および弾性を有する合成樹脂材料等で構成されている。定着ベルト31は、筐体30の内部上方に配置されている。定着ベルト31の軸方向の両端部には、略円筒状の一対のキャップ(図示せず)が装着されている。なお、定着ベルト31の内部には、定着ベルト31の略円筒形状を保持するためのベルトガイド(図示せず)が設けられてもよい。
【0023】
(押圧部材、保持部材)
定着ベルト31の内部には、押圧部材34および保持部材35が設けられている。押圧部材34は、例えば、アルミニウム合金やステンレス等の金属材料によって軸方向に長い略角筒状に形成されている。押圧部材34は定着ベルト31(およびキャップ)を軸方向(前後方向)に貫通し、定着ベルト31から突出した押圧部材34の前後両端部が筐体30に支持されている。上記した定着ベルト31は、押圧部材34に対して回転可能に支持されている。保持部材35は、例えば、耐熱樹脂材料によって軸方向に長い略半円筒状に形成されている。保持部材35は、定着ベルト31よりも軸方向に若干短く形成され、定着ベルト31の内部に配置されている。保持部材35は、押圧部材34の下面に固定され、定着ベルト31の下側内面に沿う湾曲面を有している。保持部材35の下部には、ヒーター33が嵌め込まれる嵌合部35Aが凹設されている。
【0024】
<加圧ローラー>
加圧ローラー32は、前後方向(軸方向)に長い略円筒状に形成されている。加圧ローラー32は、筐体30の内部下方に配置されている。加圧ローラー32は、アルミ合金やステンレス等から成る芯金32Aと、その外周面に積層されたシリコーンスポンジ等から成る弾性層32Bと、を有している。芯金32Aの軸方向の両端部は、筐体30に回転可能に支持されている。芯金32Aにはギア列等を介して駆動モーター(図示せず)が接続され、加圧ローラー32は駆動モーターによって回転駆動される。
【0025】
また、定着装置20は、加圧ローラー32を昇降させて定着ベルト31に対する加圧ローラー32の接触圧を調整する圧力調整部(図示せず)を有している。加圧ローラー32が定着ベルト31に押し付けられることで、定着ベルト31と加圧ローラー32との間に加圧領域Nが形成される。定着ベルト31は、軸周りに回転しながら加圧領域Nを通過する用紙P上のトナーを加熱し、加圧ローラー32は、軸回りに回転しながら加圧領域Nを通過する用紙P上のトナーを加圧する。用紙Pが加圧領域Nを通過することで、用紙P上にトナー像が定着する。なお、加圧領域Nとは、圧力が0Paである用紙Pの搬送方向の上流位置から最大圧力となる位置を経由して再び圧力が0Paとなる用紙Pの搬送方向の下流位置までの領域を指している。また、本明細書では、用紙Pが加圧領域Nを通過する方向を「通過方向」と呼ぶ。通過方向は、用紙Pの搬送方向と同一方向であって、軸方向(前後方向)に直交する方向である。本明細書では、「上流」および「下流」並びにこれらに類する用語は、通過方向または搬送方向における「上流」および「下流」並びにこれらに類する概念を指す。
【0026】
用紙Pは、加圧領域Nの軸方向の中央付近を通過する。詳細には、用紙Pは、自身の前後幅の中央を、加圧領域Nの前後方向(軸方向)の中央に概ね一致させて搬送される。このため、定着ベルト31(または加圧領域N)には、軸方向の中央の領域であって用紙Pに接触する通過領域A1と、軸方向の両側の領域であって用紙Pに接触しない非通過領域A2と、が設定されている(図3参照)。通過領域A1の軸方向の中央付近には、用紙Pのサイズ(前後方向の寸法)に関わらず、常に搬送される用紙Pが接触する。これに対し、通過領域A1の軸方向の両側には、通常サイズ(例えばA4サイズ)の用紙Pは接触するが、小・中サイズ(例えばA5・B5サイズ等)の用紙Pは接触しない。
【0027】
<ヒーター>
図2に示すように、ヒーター33は、定着ベルト31の内部に設けられている。具体的には、ヒーター33は、保持部材35の嵌合部35Aに嵌め込まれ、加圧領域Nに対向した定着ベルト31の内面に接触している。ヒーター33は、定着ベルト31を内側から加熱する。
【0028】
図3および図4に示すように、ヒーター33は、基板36と、発熱部37と、均熱部材38と、を有している。
【0029】
(基板)
基板36は、例えば、セラミック等の電気絶縁性を有する材料で形成されている。基板36は、定着ベルト31に対応して軸方向に伸長した略矩形板状に形成されている。基板36は、定着ベルト31よりも軸方向に若干短く形成され、定着ベルト31の内部に配置されている。
【0030】
(発熱部)
発熱部37は、基板36の下面(一方の面)に設けられている(図4参照)。図3に示すように、発熱部37は、軸方向に一列に並べられた5つの分割発熱部41~45で構成されている。各分割発熱部41~45は、軸方向に隙間を挟んで一列に並べられた複数の抵抗発熱体40で構成されている。各抵抗発熱体40は、電気抵抗値の高い金属材料によって通過方向に細長い略長方形状に形成されている。また、全ての抵抗発熱体40は、略同じ大きさに形成されている。発熱部37は、定着ベルト31の軸方向の全長よりも短く、且つ定着ベルト31の通過領域A1よりも軸方向に長く形成されている。つまり、軸方向の両外側に位置する分割発熱部44,45の幾つかの抵抗発熱体40は、定着ベルト31の非通過領域A2に対向している。
【0031】
なお、軸方向の中央に配置された分割発熱部41は、加圧領域Nを通過する小サイズ(例えばA5サイズ)の用紙Pの前後幅に対応している。分割発熱部41と、これに隣接する2つの分割発熱部42,43とは、加圧領域Nを通過する中サイズ(例えばB5サイズ)の用紙Pの前後幅に対応している。全ての分割発熱部41~45は、加圧領域Nを通過する通常サイズ(例えばA4サイズ)の用紙Pの前後幅に対応している。
【0032】
基板36の下面には、5つの個別電極51~55およびコモン電極56が形成されている(図3および図4参照)。5つの個別電極51~55およびコモン電極56は、例えば、抵抗発熱体40よりも電気抵抗値の低い金属材料によって形成されている。なお、本明細書では、5つの個別電極51~55とコモン電極56とで共通する説明では、単に「電極部51~56」と呼ぶこととする。
【0033】
図3に示すように、個別電極51は、軸方向の中央に位置する分割発熱部41(抵抗発熱体40)の下流端(右端)に接続されている。その他の個別電極52~55は、それぞれ、分割発熱部42~45の下流端に接続されている。コモン電極56は、全ての抵抗発熱体40の上流端(左端)に接続されている。複数の電極部51~56は、それぞれ、発熱部37に接続された部分から発熱部37の軸方向の両外側まで延びている。複数の電極部51~56は、基板36の軸方向の両側において、電源等の外部機器(図示せず)と電気的に接続されている。
【0034】
発熱部37および電極部51~56は、コート層57によって覆われている(図4参照)。コート層57は、例えば、セラミック等の電気絶縁性を有すると共に定着ベルト31に対して滑り摩擦力の小さな材料で形成されている。なお、コート層57および発熱部37並びに電極部51~56は、例えば、スパッタリング等の成膜技術、プリント基板の製造技術、またはスクリーン印刷技術、若しくはこれらの技術の組み合せによって、基板36上に精度良く形成することができる。
【0035】
ヒーター33は、発熱部37(コート層57)を加圧ローラー32に向けた姿勢で保持部材35の嵌合部35Aに嵌め込まれ、コート層57を定着ベルト31の内面に接触させている(図2および図4参照)。ヒーター33が加圧ローラー32に押し付けられた定着ベルト31を受け止めることで、定着ベルト31と加圧ローラー32との接触部分に加圧領域Nが形成されている。
【0036】
[定着装置の作用]
ここで、定着装置20の作用(定着処理)について簡単に説明する。なお、ヒーター33の電極部51~56や駆動モーター等は、各種の駆動回路(図示せず)を介して電源(図示せず)や制御装置に電気的に接続されている。
【0037】
制御装置は、駆動モーターやヒーター33を駆動制御する。加圧ローラー32は駆動モーターの駆動力を受けて回転し、定着ベルト31は加圧ローラー32に従動して回転する(図2の実線細矢印参照)。発熱部37(各抵抗発熱体40)は、電極部51~56を介して通電されることで発熱し、定着ベルト31(加圧領域N)が加熱する。
【0038】
この際、制御装置は、用紙Pのサイズに応じて発熱(通電)させる分割発熱部41~45を変更する。例えば、通常サイズの用紙Pが加圧領域Nを通過する場合、制御装置は、全ての分割発熱部41~45に電力を供給し、全ての分割発熱部41~45を発熱させる。また、例えば、制御装置は、中サイズの用紙Pが加圧領域Nを通過する場合には分割発熱部41~43を発熱させ、小サイズの用紙Pが加圧領域Nを通過する場合には分割発熱部41を発熱させる。これにより、用紙Pのサイズに合せて定着ベルト31(加圧領域N)の必要な部分のみを加熱することができる。その結果、使用する電力を必要最小限に抑えることができる。また、定着ベルト31の軸方向の両端部の過昇温を抑制することもできる。
【0039】
定着ベルト31が設定温度に達すると、既に説明した画像形成処理が開始される。トナー像が転写された用紙Pが加圧領域Nを通過する間に、トナー像が加熱されながら加圧されて用紙Pに定着する。
【0040】
<均熱部材>
ところで、定着ベルト31はローラー等に比べて熱容量が小さいため、定着ベルト31を採用した定着装置20ではウォームアップにかかる時間が短くなるという利点がある。しかし、例えば、小サイズの用紙Pを連続的に定着処理した場合、定着ベルト31の通過領域A1では、用紙P(トナー像)に熱を奪われるため過剰な昇温が抑えられるが、用紙Pが通過しない非通過領域A2では、過剰に昇温した状態になることがある。この定着装置20では、定着ベルト31の非通過領域A2での過昇温を抑制するために、ヒーター33に均熱部材38が設けられている。なお、正確には、小サイズの用紙Pを連続的に定着処理した場合、通過領域A1の軸方向の両側も過剰に昇温するが、均熱部材38によって通過領域A1の軸方向の両側の過昇温も抑制される。
【0041】
図4および図5に示すように、均熱部材38は、基板36の上面(他方の面)に設けられている(接触している)。均熱部材38と基板36との間には、シリコングリス等の潤滑剤(図示せず)が塗布されている。潤滑剤は、均熱部材38と基板36とを密着させると共に、ヒーター33の熱を均熱部材38に移動し易くする。均熱部材38は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料によって軸方向に長い板状に形成されている。均熱部材38は、基板36よりも軸方向に短く、且つ発熱部37(全ての抵抗発熱体40の形成範囲)よりも軸方向に長く形成されている。均熱部材38の軸方向の両側は、定着ベルト31の非通過領域A2に対向している(図5参照)。均熱部材38は、ヒーター33から発せられた熱を吸収して軸方向に移動させる。つまり、均熱部材38は、ヒーター33の温度を軸方向に亘って均一化する。その結果、定着ベルト31の温度も軸方向に亘って均一化され、非通過領域A2の過剰な昇温が抑制される。なお、本明細書において、「均一」との用語は、完全に一定である状態のみを指す意味ではなく、若干の誤差を許容する意味である。
【0042】
なお、定着装置20には、ヒーター33の温度を検知し、その温度が異常温度である場合に、ヒーター33に対する給電を遮断する温度検知部46が設けられている。温度検知部46は、例えば、サーモカット等の感熱素子であり、均熱部材38に接触した状態で設けられている。詳細には、温度検知部46は保持部材35の嵌合部35Aの天面に取り付けられ、温度検知部46の下部を均熱部材38の上面に接触させている(図2も参照)。温度検知部46は、均熱部材38の軸方向の中央よりも若干後方に接している(図5参照)。
【0043】
ここで、仮に、均熱部材38が軸方向に亘って同一幅(非通過領域A2の過昇温を抑制する幅)に形成されている場合、連続的に定着処理が実行されると、連続して通過する用紙P(トナー像)に熱を奪われ、ヒーター33の軸方向の中央領域の温度が下がり過ぎる虞があった。その結果、定着ベルト31の通過領域A1の温度も低下し、用紙P上のトナーを適正に熱定着させることができない虞があった。また、同一幅に形成された均熱部材38を軸方向に均一に加熱するためには、多くの電力が必要になると共に時間がかかるという問題もあった。そこで、第1実施形態に係る定着装置20では、均熱部材38は、通過領域A1に対応する中央領域よりも非通過領域A2に対応する端部領域において熱容量を増加させるように形成されている。
【0044】
具体的には、図5に示すように、均熱部材38は、軸方向の中央領域から軸方向の両側の端部領域に向かって用紙Pの通過方向(左右方向)に幅広くなるように形成されている。均熱部材38は、軸方向の中央から両側に向かって徐々に通過方向に幅広くなり、平面から見て軸方向の中央部で括れた形状とされている。均熱部材38の左右両縁の輪郭は、互いに左右方向の中央に向かって凹むような円弧状に形成されている。均熱部材38の軸方向の中央で最も狭い部分の幅(左右方向の寸法)は約2mm~7mmの範囲で設定され、均熱部材38の軸方向の両端で最も広い部分の幅(左右方向の寸法)は約3mm~8mmの範囲で設定されている。最も幅狭い部分と最も幅広い部分との差は、約1mmとされている。また、均熱部材38は、軸方向に亘って同一厚とされている。均熱部材38の厚みは約0.25mmとされている。なお、上記した均熱部材38の幅や厚みは、一例であって、適宜変更してもよい。
【0045】
以上説明した第1実施形態に係る定着装置20によれば、均熱部材38を幅広くするほど熱容量が大きくなるため、ヒーター33の端部領域の熱を、積極的に均熱部材38に吸収させることができる。これにより、定着ベルト31の非通過領域A2の過昇温を抑えることができ、定着ベルト31を軸方向に亘って均一に加熱することができる。また、均熱部材38を幅狭くするほど熱容量が小さくなるため、均熱部材38がヒーター33の中央領域の熱を吸収し過ぎることを抑制する。これにより、定着ベルト31の通過領域A1の温度が下がり過ぎることを抑えることができる。以上より、非通過領域A2での過剰な加熱を抑制しつつ、通過領域A1での適正な熱定着を担保することができる。さらに、均熱部材38は軸方向の中央で括れた形状であるため、軸方向に同一幅(広い幅)で形成されたものに比べて、少ないエネルギー(電力)で且つ短時間で、均熱部材38を軸方向に均一に加熱することができる。
【0046】
なお、第1実施形態に係る定着装置20では、均熱部材38が、軸方向の中央から両側に向かって徐々に通過方向に広がるように形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6に示すように、均熱部材38の中央領域が、軸方向に亘って第1の幅で形成され、均熱部材38の端部領域が、軸方向に亘って第1の幅よりも広い第2の幅で形成され、平面から見て中央領域と端部領域との間に段差が形成されてもよい。
【0047】
[第2実施形態:定着装置]
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る定着装置21(均熱部材39)について説明する。図7は第2実施形態に係る定着装置21のヒーター33を模式的に示す側面図である。なお、以降の説明では、第1実施形態に係る定着装置20と同一または対応する構成には同一の符号を付し、同一または対応する構成の説明は省略する。
【0048】
第2実施形態に係る定着装置21では、均熱部材39が、軸方向の中央領域から軸方向の両側の端部領域に向かって厚みを増加させるように形成されている。均熱部材39は、軸方向の中央から両側に向かって徐々に厚くなり、側面から見て軸方向の中央部で窪んだ形状とされている。均熱部材39の上面は、軸方向の中央部を凹ませた曲面状に形成されている。均熱部材39の軸方向の中央の厚さ(最薄部)は約0.1mmとされ、均熱部材38の軸方向の両端の厚さ(最厚部)は約0.5mmとされている(最薄部と最厚部との差は約0.4mm)。均熱部材39は、軸方向に亘って同一幅(左右方向の寸法)とされている。均熱部材39の左右方向の幅は約5mmとされている。なお、上記した均熱部材39の幅や厚みは、一例であって、適宜変更してもよい。
【0049】
以上説明した第2実施形態に係る定着装置21によれば、均熱部材39を厚くするほど熱容量が大きくなるため、ヒーター33の端部領域の熱を、積極的に均熱部材38に吸収させることができる。また、均熱部材39を薄くするほど熱容量が小さくなるため、均熱部材39がヒーター33の中央領域の熱を吸収し過ぎることを抑制する。このように定着装置21によれば、非通過領域A2での過剰な加熱を抑制しつつ、通過領域A1での適正な熱定着を担保することができる等、第1実施形態に係る定着装置20と同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、第2実施形態に係る定着装置21では、均熱部材39が、軸方向の中央から両側に向かって徐々に厚くなるように形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図8に示すように、均熱部材38の中央領域が、軸方向に亘って第1の厚みで形成され、均熱部材38の端部領域が、軸方向に亘って第1の厚みよりも厚い第2の厚みで形成され、側面から見て中央領域と端部領域との間に段差が形成されてもよい。
【0051】
また、第2実施形態に係る定着装置21の均熱部材39の特徴が、第1実施形態に係る定着装置21の均熱部材38に組み合わされてもよい。すなわち、均熱部材は、軸方向の中央領域から軸方向の両側の端部領域に向かって、用紙Pの通過方向(左右方向)に幅広く、且つ厚みを増加させるように形成されてもよい(図示せず)。
【0052】
[第3実施形態:定着装置]
次に、図9を参照して、第3実施形態に係る定着装置22(均熱部材38)について説明する。図9は第3実施形態に係る定着装置22のヒーター33を模式的に示す平面図である。
【0053】
温度検知部46には、単位体積当たりの熱容量が均熱部材38と略同等となるものもある。この場合、均熱部材38に接触した温度検知部46は、均熱部材38から熱を奪うことがある。すると、温度検知部46が接触した部分(接触部分)は、温度検知部46が接触していない部分(非接触部分)に比べて低温となり、均熱部材38の温度が軸方向に亘って不均一になる。このため、定着ベルト31(加圧領域N)の温度も不均一になり、適正な熱定着が行えなくなるという問題が考えられる。
【0054】
このような問題に対し、第3実施形態に係る定着装置22では、均熱部材38における温度検知部46の接触部分は、温度検知部46の非接触部分よりも用紙Pの通過方向に幅狭く形成されている。つまり、温度検知部46が接触した均熱部材38の一部分の熱容量を、温度検知部46の熱容量の分だけ低下させる構成としている。具体的には、温度検知部46の接触位置において、均熱部材38には、一対の凹部47が左右方向の両側から中央に向かって凹んでいる。各凹部47は、平面から見て略矩形状(またはU字状でもよい。)の切り欠きであり、温度検知部46の下面は、一対の凹部47の間に残された部分に接触している。
【0055】
以上説明した第3実施形態に係る定着装置22によれば、均熱部材38において温度検知部46との接触部分(一対の凹部47の間)の温度低下を抑制することができ、均熱部材38(定着ベルト31)の温度を軸方向に亘って均一にすることができる。これにより、用紙P上のトナー像を適正に熱定着させることができる。
【0056】
[第4実施形態:定着装置]
次に、図10を参照して、第4実施形態に係る定着装置23(均熱部材38)について説明する。図10は第4実施形態に係る定着装置23のヒーター33を模式的に示す断面図である。
【0057】
第4実施形態に係る定着装置23では、第3実施形態に係る定着装置22と同様の効果を得ることを目的として、均熱部材38における温度検知部46の接触部分が、温度検知部46の非接触部分よりも薄く形成されている。具体的には、温度検知部46の接触位置において、均熱部材38には、有底穴48が上面から下方に向かって凹んでいる。有底穴48は、平面から見て略矩形状(または円形でもよい。)の窪みであり、温度検知部46は、有底穴48の底面に接触している。
【0058】
以上説明した第4実施形態に係る定着装置23によれば、均熱部材38において温度検知部46との接触部分の温度低下を抑制することができ、均熱部材38(定着ベルト31)の温度を軸方向に亘って均一にすることができる。これにより、用紙P上のトナー像を適正に熱定着させることができる。
【0059】
なお、第3~第4実施形態に係る定着装置22,23では、一対の凹部47や有底穴48が、第1実施形態に係る定着装置20の均熱部材38に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。一対の凹部47や有底穴48は、第2実施形態に係る定着装置21の均熱部材39に形成されてもよい(図示せず)。
【0060】
また、第3~第4実施形態に係る定着装置22,23の均熱部材38(39)の特徴(凹部47や有底穴48)が、組み合わされてもよい。すなわち、均熱部材38における温度検知部46の接触部分が、温度検知部46の非接触部分よりも、用紙Pの通過方向に幅狭く、且つ薄く形成されてもよい(図示せず)。
【0061】
なお、第1~第4実施形態に係る定着装置20~23では、発熱部37が3種類の用紙Pのサイズに対応するように5つの分割発熱部41~45に分割されていたが、本発明はこれに限定されない。発熱部37は、2種類以上の用紙Pのサイズに対応するように3つの分割発熱部に分割されてもよいし、分割されなくてもよい(いずれも図示せず)。
【0062】
また、第1~第4実施形態に係る定着装置20~23では、発熱部37(各分割発熱部41~45)が複数の抵抗発熱体40で構成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、発熱部37は、軸方向の一方から他方に向けて延びる1本の抵抗発熱体であってもよいし、軸方向の一方から他方に向けて延びた後、折り返して軸方向の他方から一方に向けて延びたU字状の抵抗発熱体であってもよい(いずれも図示せず)。
【0063】
また、第1~第4実施形態に係る定着装置20~23では、用紙Pが加圧領域Nの軸方向の中央を通過していたが、これに限らず、加圧領域Nの軸方向の片側に寄った位置を通過してもよい。この場合、非通過領域A2は、定着ベルト31(または加圧領域N)の軸方向の片側にのみ設定されることになる。均熱部材38,39は、中央領域から軸方向の片側(1つの端部領域)に向かって通過方向に幅広く(厚く)なるように形成されることになる(図示せず)。
【0064】
また、第1~第4実施形態に係る定着装置20~23では、加圧ローラー32を回転駆動させ、定着ベルト31を従動回転させていたが、これに限らず、定着ベルト31を回転駆動させ、加圧ローラー32を従動回転させてもよい。また、定着ベルト31に対して加圧ローラー32を昇降(接近または離間する方向に移動)させていたが、これに限らず、加圧ローラー32に対して定着ベルト31を接近または離間する方向に移動させる構成としてもよい(図示せず)。
【0065】
また、本実施形態の説明では、一例として、本発明をモノクロのプリンター1に適用した場合を示したが、これに限らず、例えば、カラープリンター、複写機、ファクシミリまたは複合機等に本発明を適用してもよい。
【0066】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る定着装置および画像形成装置における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施態様に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0067】
1 プリンター(画像形成装置)
20,21,22,23 定着装置
31 定着ベルト
32 加圧ローラー
33 ヒーター
36 基板
37 発熱部
38,39 均熱部材
46 温度検知部
A1 通過領域
A2 非通過領域
N 加圧領域
P 用紙(媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10