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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169000
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電力調整システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20241128BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241128BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/00 170
H02J3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086161
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綱分 智則
(72)【発明者】
【氏名】小藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩坪 晃平
(72)【発明者】
【氏名】岩田 英範
(72)【発明者】
【氏名】小城 元
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE09
5G066HB01
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】経済性を勘案した複数の計画値、その優先度情報、調整力指令値等に基づいて作成した電力指令値に従って各リソースを運転することで、運用計画の作成に要する時間や煩雑さを解消しつつ連系点電力を計画値に維持可能とした電力調整システムを提供する。
【解決手段】系統40との間で交流電力を授受するリソースAと、系統40からの供給電力を用いて所定量のパラメータを生産するリソースBとを備え、連系点41の電力を連系点電力計画値に維持するようにリソースA、Bの電力を調整する電力調整システムにおいて、コントローラ30は、リソースA、Bの制約を満たす範囲で、連系点電力計画値と、リソースAの充放電量計画値と、リソースBによる生産量相当計画値と、補助的電力指令値と、に基づいて、経済性を考慮した優先度に従って各計画値を達成するためのリソースA、B用の電力指令値を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統との間で交流電力を授受可能なリソース、又は前記電力系統から供給された交流電力を用いてパラメータを生産可能なリソース、を含む複数のリソースを備え、
前記複数のリソースと前記電力系統との連系点における電力を、連系点電力計画値、前記計画値を作成する段階で未定である前記連系点の電力指令値である補助的電力指令値、又はこれらの合計値に維持するように、前記複数のリソースの電力を調整する電力調整システムにおいて、
前記複数のリソースのそれぞれに設定された制約を満たす範囲で、前記連系点電力計画値と、前記複数のリソースの授受電力計画値と、前記補助的電力指令値と、に基づいて、経済性を考慮した優先度に従って各計画値及び指令値を達成するための前記複数のリソースのそれぞれの電力指令値を決定するコントローラ
を備えたことを特徴とする電力調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載した電力調整システムにおいて、
前記コントローラは、
前記優先度の高い順に前記複数のリソース及び連系点電力の優先順位を決定し、
最も優先順位が低いリソース以外のリソースの電力指令値を、前記最も優先順位が低いリソース以外のリソースの授受電力計画値を達成するために必要な電力とする機能と、
最も優先順位が低いリソースの電力指令値を、前記連系点電力計画値を達成するために必要な電力と前記補助的電力指令値の追従に必要な電力を足したものから、前記最も優先順位が低いリソース以外の全てのリソースの各計画値を達成するために必要な電力の合計を引いたもの、とする機能と、
を備えたことを特徴とする電力調整システム。
【請求項3】
請求項2に記載した電力調整システムにおいて、
前記コントローラは、
前記複数のリソースのうち何れかのリソースであるリソースCの電力指令値が前記リソースCの授受電力の調整可能な範囲外であった場合、前記調整可能な範囲から前記リソースCの電力指令値が超過した分の電力を、前記リソースCよりも優先順位が一つ高いリソースの電力指令値に加算する機能
を備えたことを特徴とする電力調整システム。
【請求項4】
請求項2に記載した電力調整システムにおいて、
前記コントローラは、
前記複数のリソースの電力指令値の合計値が、前記連系点の設備容量を超過した場合、前記連系点の設備容量から前記合計値が超過した分の電力を、連系点電力よりも優先順位が一つ高いリソースの電力指令値から減算する機能
を備えたことを特徴とする電力調整システム。
【請求項5】
請求項4に記載した電力調整システムにおいて、
前記コントローラは、
前記複数のリソースのうち何れかのリソースの授受電力と電力指令値との差分、及び、前記リソースの電力指令値と前記リソースの即応性を勘案して変化率リミッタ又はローパスフィルタを介した前記リソースの電力指令値との差分、の何れかを、前記リソースの次に即応性が低いリソースの電力指令値に加算する機能
を備えたことを特徴とする電力調整システム。
【請求項6】
請求項5に記載した電力調整システムにおいて、
前記複数のリソースは、前記電力系統との間で交流電力を授受可能なリソースAと、前記電力系統から供給された交流電力を用いてパラメータを生産可能なリソースBとを含み、
前記コントローラは、
前記連系点電力計画値、リソースAの前記授受電力計画値である充放電量計画値、及びリソースBの前記授受電力計画値である生産量相当計画値のうち、優先度が高い二つの計画値を選択し、前記充放電量計画値の達成に必要な瞬時電力をPBreq、前記生産量相当計画値の達成に必要な瞬時電力をPHreq、前記連系点の電力指令値をPTreqとした時に、
前記充放電量計画値及び前記連系点電力計画値の優先度が高い時に、前記リソースB用電力指令値をPTreq-PBreqとし、かつ、リソースA用電力指令値を、前記PTreqから前記リソースB用電力指令値を減算した値とする機能と、
前記生産量相当計画値及び前記連系点電力計画値の優先度が高い時に、前記リソースB用電力指令値を前記PHreqとし、かつ、リソースA用電力指令値を、前記PTreqから前記リソースB用電力指令値を減算した値とする機能と、
前記充放電量計画値及び前記生産量相当計画値の優先度が高い時に、前記リソースB用電力指令値を前記PHreqとし、かつ、リソースA用電力指令値を前記PBreqとする機能と、
を備えたことを特徴とする電力調整システム。
【請求項7】
請求項1から5の何れかに記載した電力調整システムにおいて、
前記コントローラは、
前記複数のリソースの設備上の制約から計算した優先度と、経済性を勘案して計算した優先度と、に基づいて、前記複数のリソースの前記授受電力計画値及び前記連系点電力計画値の優先度を決定することを特徴とする電力調整システム。
【請求項8】
請求項1から5の何れかに記載した電力調整システムにおいて、
前記コントローラは、前記複数のリソースのうち何れかのリソースであるリソースDの充電量と複数の閾値、あるいは前記リソースDによる生産量又は貯蔵量と複数の閾値、との比較結果に応じて、優先順位があらかじめ定められた順位以上となるように前記リソースDの授受電力計画値の優先度が設定されるリソースD優先モードに移行し、前記リソースDを除いたリソースの少なくとも一つのリソースの電力指令値が、前記リソースDの前記授受電力計画値が達成されるように決定することを特徴とする電力調整システム。
【請求項9】
請求項1から5の何れかに記載した電力調整システムにおいて、
前記コントローラは、前記連系点電力計画値あるいは前記複数のリソースの前記授受電力計画値うち少なくとも一つの計画値とその実績値との偏差、あるいは計画値を達成すべき時間までの残り時間に応じて、前記各計画値のうち少なくとも一つの計画値の優先度を変更させることを特徴とする電力調整システム。
【請求項10】
請求項1に記載した電力調整システムにおいて、
前記コントローラは、前記連系点電力計画値の優先度が高い場合に、前記複数のリソースの各授受電力計画値の達成に必要な各電力量と、前記複数のリソースの各授受電力計画値の優先度に相当する各数値データと、を用いて前記連系点電力計画値の達成に必要な電力を按分することにより前記複数のリソースのうち最も即応性が高いリソースではないリソース用電力指令値を算出すると共に、算出した前記複数のリソースのうち最も即応性が高いリソースではないリソース用電力指令値の総和を前記連系点電力計画値の達成に必要な電力から減算して前記複数のリソースのうち最も即応性が高いリソース用電力指令値を算出することを特徴とする電力調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリソースが連系されている電力系統において、電力需給市場や調整力市場における経済性を考慮しながら、所定の連系点電力計画値のもとで各リソースの最適な電力指令値を決定する電力調整システムに関する。ここで、上記リソースには、電力系統との間で交流電力を授受可能な装置・回路・手段・設備と、電力系統から供給される交流電力を利用して各種の物質やエネルギーを生産する装置・回路・手段・設備と、が含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、風力発電装置が連系された電力系統において、風力発電装置の出力に応じて変動する連系点電力をその目標値に追従させるように、電力調整器及び蓄電池を用いた水素製造器への供給電力と風力発電装置の出力との配分を管理し、又は、製造した水素が供給される燃料電池の電力系統への注入出力を管理するようにした電力供給システム及びその制御方法が開示されている。
また、特許文献1には、風力発電装置の出力と連系点電力の目標値との過不足に応じて、水素製造器への供給電力の目標値又は燃料電池から電力系統への注入出力の目標値を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-225273号公報([0010],[0011]、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力系統に接続された風力発電装置や水素製造装置、燃料電池等の複数のリソースが電力を発生(発電)又は消費する場合、連系点電力の目標値を含む運用計画は、電力の需給バランスを維持するための調整力のように系統運用者の指示に従うよりも、主として電力需給市場における売電価格に基づいて任意に決定されている。
【0005】
上記運用計画は、AI(Artificial Intelligence)技術等を駆使することで実現可能であるが、計算量の多さに起因して計画を頻繁に作成できないため、ある程度の長さの計算周期を見込まざるを得ない。
しかし、いわゆるガバナフリー制御等を行う発電設備等のリソースでは出力が時々刻々変化し、また、短いスパンで出力指令が変化するようなデマンドレスポンス制御等に対応していたリソースでは、計算周期が長いことに起因して電力系統との間で授受する電力量が計画値とずれてしまい、経済性が低下する可能性があった。一方で、計画値とずれるたびに経済性を勘案した計画を再度作成するには、多くの時間や費用が必要になる。
【0006】
そこで、本発明の解決課題は、経済性を勘案した複数の計画値、その優先度情報、調整力指令値等に基づいて作成した電力指令値に従って各リソースを運転することで、運用計画の作成に要する時間や煩雑さを解消しつつ連系点電力を計画値に維持可能とした電力調整システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、電力系統との間で交流電力を授受可能なリソース、又は前記電力系統から供給された交流電力を用いてパラメータを生産可能なリソース、を含む複数のリソースを備え、前記複数のリソースと前記電力系統との連系点における電力を、連系点電力計画値、前記計画値を作成する段階で未定である前記連系点の電力指令値である補助的電力指令値、又はこれらの合計値に維持するように、前記複数のリソースの電力を調整する電力調整システムにおいて、前記複数のリソースのそれぞれに設定された制約を満たす範囲で、前記連系点電力計画値と、前記複数のリソースの授受電力計画値と、前記補助的電力指令値と、に基づいて、経済性を考慮した優先度に従って各計画値及び指令値を達成するための前記複数のリソースのそれぞれの電力指令値を決定するコントローラを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、運用計画の作成頻度や計算頻度を増やさずに、各リソースが電力系統との間で授受する電力を適切に調整して連系点電力を計画値通りに維持することができる。
【0008】
なお、補助的電力指令値は、例えば、各計画値を作成する段階で未定である調整力指令値である。この調整力指令値は、ガバナフリー制御、負荷周波数制御、経済負荷配分制御等に活用する電力の指令値であり、この調整力指令値を反映させた連系点電力指令値に基づいて各リソース用の電力指令値を決定することで、実際の運転時に不定期に発生する調整力に対して迅速に対応可能な電力調整システムを構築することができる。
【0009】
また、コントローラは、更に、リソースA用の充放電量計画値に基づいて、経済性を考慮した優先度に従って各計画値を達成するためのリソースA用電力指令値及びリソースB用電力指令値を決定するように動作しても良い。
ここで、リソースBとしては、例えば水素製造装置のように、その動作原理上、連系点電力の指令値及び補助的電力指令値に即応できない特性を有する場合もあり得る。
これらの発明によれば、リソースBによる応答遅れを打ち消して連系点電力計画値を達成するようなリソースA用の電力指令値を作成することができる。
【0010】
また、コントローラは、前記優先度の高い順に前記複数のリソース及び連系点電力の優先順位を決定し、最も優先順位が低いリソース以外のリソースの電力指令値を、前記最も優先順位が低いリソース以外のリソースの授受電力計画値を達成するために必要な電力とする機能と、最も優先順位が低いリソースの電力指令値を、前記連系点電力計画値を達成するために必要な電力と前記補助的電力指令値の追従に必要な電力を足したものから、前記最も優先順位が低いリソース以外の全てのリソースの各計画値を達成するために必要な電力の合計を引いたもの、とする機能を備えていても良い。
以上の構成によれば、最も優先順位の低いリソースをバッファとすることで、その他のリソースの授受電力計画値、連系点電力計画値、および補助的電力指令値が達成するように動作させることができる。また、連系点電力の優先順位が最も低い場合は、全てのリソースの授受電力計画値が達成するように動作させることができる。
【0011】
また、コントローラは、前記複数のリソースのうち何れかのリソースであるリソースCの電力指令値が前記リソースCの授受電力の調整可能な範囲外であった場合、前記調整可能な範囲から前記リソースCの電力指令値が超過した分の電力を、前記リソースCよりも優先順位が一つ高いリソースまたは連系点電力の電力指令値に加算する機能を備えていても良い。
以上の構成によれば、最も優先順位の低いリソースをバッファとするだけでは、その他のリソースの授受電力計画値や連系点電力計画値、補助的電力指令値を達成させることが困難な場合に、優先度の低いリソースから順にバッファとなるように動作させることで、より優先度の高い計画値が達成するように動作させることができる。なお、前記リソースCよりも優先順位が一つ高いものが複数のリソースの何れかではなくて連系点電力である場合、特段の動作は実行されない。
【0012】
また、コントローラは、前記複数のリソースの電力指令値の合計値が、前記連系点の設備容量を超過した場合、前記連系点の設備容量から前記合計値が超過した分の電力を、連系点電力よりも優先順位が一つ高いリソースの電力指令値から減算する機能を備えていても良い。
以上の構成によれば、より優先順位が高いリソースの授受電力計画値を達成するために連系点電授受すべき電力が設備容量の制約で授受できない場合に、連系点電力より優先度が一つ高いリソースがバッファとなるように動作させることで、より優先度の高い計画値が達成するように動作させることができる。
【0013】
また、コントローラは、前記複数のリソースのうち何れかのリソースの授受電力と電力指令値との差分、及び、前記リソースの電力指令値と前記リソースの即応性を勘案して変化率リミッタ又はローパスフィルタを介した前記リソースの電力指令値との差分、の何れかを、前記リソースの次に即応性が低いリソースの電力指令値に加算する機能を備えていても良い。
以上の構成によれば、即応性が低いリソースが追従できなかった電力指令値を、即応性が高いリソースに負担させることで,各リソースの即応性を考慮しつつより優先度の高い計画値が達成するように動作させることができる。
【0014】
また、複数のリソースが、前記電力系統との間で交流電力を授受可能なリソースAと、前記電力系統から供給された交流電力を用いてパラメータを生産可能なリソースBとを含む態様において、コントローラは、連系点電力計画値、リソースAの前記授受電力計画値である充放電量計画値、及びリソースBの前記授受電力計画値である生産量相当計画値のうち、優先度が高い二つの計画値を選択し、充放電量計画値の達成に必要な瞬時電力をPBreq、生産量相当計画値の達成に必要な瞬時電力をPHreq、連系点の電力指令値をPTreqとした時に、
(a)充放電量計画値及び連系点電力計画値の優先度が高い時に、リソースB用電力指令値をPTreq-PBreqとし、かつ、リソースA用電力指令値を、PTreqからリソースB用電力指令値を減算した値とする機能、
(b)生産量相当計画値及び連系点電力計画値の優先度が高い時に、リソースB用電力指令値をPHreqとし、かつ、リソースA用電力指令値を、PTreqからリソースB用電力指令値を減算した値とする機能、
(c)充放電量計画値及び生産量相当計画値の優先度が高い時に、リソースB用電力指令値をPHreqとし、かつ、リソースA用電力指令値をPBreqとする機能、
を備えていても良い。
これにより、各計画値のうち優先度の高い二つの計画値を達成するように制御することができる。また、上記(a),(b)のように連系点電力計画値の優先度が高い場合には、即応性の低いリソースBが電力指令値に瞬時に対応できなかった時でも、生産量相当計画値と実績値との偏差を打ち消して連系点電力の指令値を達成させるような電力指令値を、即応性の高いリソースAに出力することができる。なお、「即応性」は、指令値に対してリソースが対応する速度(応答性)を意味する。
【0015】
なお、充放電量計画値、生産量相当計画値及び連系点電力計画値の優先度は、リソースA及びリソースBの設備上の制約から計算した優先度と、経済性を勘案して計算した優先度と、に基づいて決定することが望ましい。
【0016】
また、コントローラは、リソース情報としてのリソースAの充電量と複数の閾値との比較結果に応じて、優先順位があらかじめ定められた順位以上となるように前記リソースA用の充放電量計画値の優先度が設定されるリソースA優先モードに移行しても良い。
更に、コントローラは、リソース情報としてのリソースBによる生産量又は貯蔵量と複数の閾値との比較結果に応じて、優先順位があらかじめ定められた順位以上となるように前記リソースB用の充放電量計画値の優先度が設定されるリソースB優先モードに移行しても良い。
これらの発明によれば、リソースAの充電量やリソースBによる生産量又は貯蔵量が所定の閾値を超えないように各リソースへの供給電力を調整することができる。また、リソースAの充電量については、上下限閾値を複数組設定することで、リソースAへの供給電力が振動するのを防止することができる。
【0017】
また、コントローラは、前記各計画値うち一つの計画値とその実績値との偏差に応じて各計画値のうち少なくとも二つの計画値の優先度を変更させるように動作しても良い。
この発明によれば、一つの計画値とその実績値との偏差がなくなるか、又は上記偏差がある程度小さくなった場合には、その計画値についての優先度を低くして他の計画値の優先度を高くすることにより、連系点電力及びリソースA又はBについての制御量の変化に応じた適切な優先度の下で各計画値の達成を目指すことができる。
【0018】
また、コントローラは、連系点電力計画値の優先度が高い場合に、リソースA用の充放電量計画値の達成に必要な電力量と、充放電量計画値の優先度に相当する数値データと、リソースB用の生産量相当計画値の達成に必要な電力量と、生産量相当計画値の優先度に相当する数値データと、を用いて連系点電力計画値の達成に必要な電力を按分することによりリソースB用電力指令値を算出すると共に、算出したリソースB用電力指令値を連系点電力計画値の達成に必要な電力から減算してリソースA用電力指令値を算出しても良い。
これにより、必要とする電力が大きく、しかも計画値の優先度が高いリソースほど、大きな消費電力が割り当てられることになり、例えば優先度が最も高い連系点電力計画値を達成しつつ、リソースAの充電量やリソースBによる生産量等が計画値に近付く順番を制御することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、運用計画の作成頻度や計算頻度を増やさずに、複数のリソースが電力系統との間で授受する電力を適切に調整して連系点電力を計画値通りに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る電力調整システムの全体構成図である。
図2図1におけるコントローラの第1実施例を示すブロック図である。
図3】連系点電力を蓄電装置の消費電力と水素製造装置の消費電力とによって按分した状態の説明図である。
図4】本発明の第1実施形態における蓄電池SOCの上下限閾値の説明図である。
図5図2における優先信号作成部の内部構成図である。
図6】本発明の第1実施形態における優先スコアを計算する関数の説明図である。
図7】本発明の第1実施形態における各計画値の優先度の説明図である。
図8図1におけるコントローラの第2実施例を示すブロック図である。
図9図8における水素製造指令計算部の内部構成図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る電力調整システムの全体構成図である。
図11図10におけるコントローラのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A:第1実施形態
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力調整システムの全体構成図である。図1において、リソースAとリソースBとは並列に接続され、その並列接続点は連系点41を介して交流の電力系統40に接続されている。
【0022】
リソースAは、例えば蓄電装置であり、PCS(Power Conditioning System)11の動作により蓄電池12を充放電させ、連系点41とPCS11との間で交流電力を授受する。
リソースBは、電力系統40から供給された交流電力を消費して種々のパラメータ(気体・液体等の物質や熱・電力等のエネルギー)を生産する各種の装置・回路・手段・設備であり、例えば、気体発生装置(水素製造装置,オゾン発生装置等)、発電装置(燃料電池,バイオマス発電装置等)、加熱装置(電気炉,焼却炉等)を含む。
【0023】
コントローラ30は、CPU等の演算装置、入出力装置、記憶装置、通信インターフェイス等を備えた情報処理装置である。このコントローラ30は、例えばEMS(Energy Management System)等の上位又は外部の制御装置から受信し、あるいはオペレータの操作によって入力される計画指令と、電力系統40の系統周波数と、ガバナフリー制御や負荷周波数制御等を行うために不定期に発生する調整力指令値(請求項における補助的電力指令値)と、連系点電力及びリソースA,Bからのフィードバック値と、に基づいて、リソースA,Bに対する運転指令を作成して出力する。
コントローラ30の具体的構成・機能については、後述する。
【0024】
コントローラ30が受信する計画指令には、電力や調整力の売電価格、リソースBによる各種生産物の販売価格、系統運用者が立案した一定時間ごとの連系点電力計画値、この計画値が未達である場合に各リソースA,Bを保有する需要者に課される経済的損失(ペナルティや機会損失)等が含まれている。
また、計画指令には、リソースA用の充放電量計画値とリソースBによる物質やエネルギーの生産量に対応する生産量相当計画値が含まれる。リソースA用の充放電量計画値は、蓄電池12のSOC(充電量又は充電率)又は入出力電力値の計画値でも良い。リソースB用の生産量相当計画値は、リソースBにより生産される物質やエネルギーの量の計画値、又は、その生産に必要な電力(消費電力)の計画値でも良い。
【0025】
リソースA用の充放電量計画値とリソースBによる生産量相当計画値は、リソースAの充放電電力やリソースBの生産物の利用計画・利用目的に応じてEMSあるいはシステムのオペレータにより決定される。
連系点電力計画値は、例えば需給調整市場で取引した調整力やアグリゲータの指令値について電力需給計画の立案段階で既に明らかになっている連系点電力の要求量であっても良いし、まだ明らかになっていない連系点電力の要求量の予測値が含まれたものであっても良い。また、連系点電力計画値には、事前にアグリゲータに通知されたベースラインや系統運用者に通知された基準値計画あるいは発電計画値(需給調整市場で取引した調整力やアグリゲータの指令値とは別に売買する電力の計画値)が含まれていても良い。
【0026】
また、上記計画指令には、三種類の計画値(連系点電力計画値とリソースA用の充放電量計画値とリソースB用の生産量相当計画値)が未達である時の経済的損失又は調整力の計画逸脱時における経済的損失等に基づいて決定される、各計画値の優先度情報が含まれていても良い。
コントローラ30では、上記優先度情報と各制御量の偏差や計画を達成すべき時間までの残り時間とに基づいて、各計画値について後述する優先スコア(優先度に相当する数値データ)を計算し、各優先スコアを比較することによって蓄電装置優先信号A及び水素製造装置優先信号Bが作成されるが、詳しくは図2図5等により後述する。
【0027】
周知のように、調整力は、電力系統全体の需給バランスを調整する目的で、ガバナフリー制御、負荷周波数制御、経済負荷配分制御に活用する電力である。この調整力は、指令値までの応答時間(応動時間)が早く出力継続時間が短い順に、一次調整力(ガバナフリー制御)、二次調整力(負荷周波数制御)、三次調整力(経済負荷配分制御)等に分けられている。
コントローラ30に入力される調整力指令値は、系統周波数に応じてリソースAをガバナフリー制御する場合のように、計画指令の作成段階では明らかであるとは限らない。このため、コントローラ30は、本システムの実際の運用時に不定期に発生する調整力指令値も反映させてリソースA,Bの運転指令(それぞれに対する電力指令値を含む)を作成し、出力する。
【0028】
なお、リソースAは、連系点電力指令値及び調整力指令値に対して、一般的に即応性が高いのに対し、リソースBには、例えば水素製造装置や燃料電池の如く、その動作原理上、連系点電力指令値及び調整力指令値に即応できないものも存在し得る。
【0029】
A-1:第1実施例
次に、図2は、コントローラ30の第1実施例(符号30A)を示すブロック図であり、図1のリソースAを蓄電装置、リソースBを水素製造装置とした場合のものである。
図2において、コントローラ30Aは、各種の電力指令値作成部31,32,33、変化率リミッタ34、優先信号作成部35、加減算手段36a~36g、及びスイッチ手段SW,SW,SWを備えている。
【0030】
連系点電力指令値作成部31は、連系点電力計画値と調整力指令値と系統周波数とに基づいて連系点電力指令値(瞬時値)PTreqを作成し、加減算手段36a,36b,36cに出力する。
蓄電池充電電力指令値作成部32は、蓄電池12のSOCの計画値とフィードバック値とに基づいて蓄電池12の充電に必要な電力指令値(瞬時値)PBreqを作成し、スイッチ手段SW及び加減算手段36dに出力する。
水素製造電力指令値作成部33は、水素製造量の計画値と水素製造量のフィードバック値とに基づいて水素製造に必要な電力指令値(瞬時値)PHreqを作成し、加減算手段36d,36eに出力する。
【0031】
加減算手段36a,36d,36cは図示の符号で入力信号を加減算し、加減算手段36cの出力はスイッチ手段SWを介して加減算手段36bに入力されている。
また、加減算手段36eは図示の符号で入力信号を加減算し、その出力信号はスイッチ手段SW及び加減算手段36fを介して変化率リミッタ34に入力されている。
変化率リミッタ34の出力信号は水素製造装置(リソースB)の電力指令値Pになると共に、加減算手段36gに入力されて加減算手段36bの出力信号と加減算され、蓄電装置(リソースA)の電力指令値Pとなっている。図2では、水素製造装置の電力指令値Pを蓄電装置の電力指令値Pの算出に用いているが、水素製造装置の電力実績値(消費電力値)を用いて蓄電装置の電力指令値Pを算出しても良い。
変化率リミッタ34は、前述した如く水素製造装置は即応性が低いことを勘案して、水素製造装置に対する電力指令値Pを水素製造装置にとって応答可能な速さで変化させるために設けられている。
【0032】
優先信号作成部35は、連系点電力計画値、リソースA用の充放電量計画値(蓄電池12のSOC計画値)、及びリソースB用の生産量相当計画値(水素製造量計画値)からなる三つの計画値の優先度情報と、蓄電池SOC及び水素製造量の各フィードバック値と、蓄電池SOC・水素製造量・連系点電力の各フィードバック値と各計画値との偏差と、に基づいて、蓄電装置優先信号A及び水素製造装置優先信号Bを作成して出力する。
具体的には、蓄電池SOC・水素製造量・連系点電力の各フィードバック値と各計画値との偏差を変数とした関数(各計画値の優先度情報に含まれる関数)を用いて、各計画値の優先度に相当する優先スコア(数値データ)が計算される。ここで、優先スコアが大きいほど優先度が高いと規定すると、各計画値のうち優先スコアが大きい二つの計画値(すなわち優先度が高い二つの計画値)を優先度1,2とした場合、これらの優先度1,2に対応する二つの計画値の組み合わせに基づいて、表1のように蓄電装置優先信号A及び水素製造装置優先信号Bのオン・オフが決定される。
【表1】
【0033】
表1から明らかなように、蓄電装置優先信号Aがオンとなる場合には、優先度の高い二つの計画値には必ず蓄電装置の充放電量計画値(蓄電池12のSOC計画値)が含まれ、水素製造装置優先信号Bがオンとなる場合には、優先度の高い二つの計画値には必ず水素製造装置の生産量相当計画値(水素製造量計画値)が含まれることになる。
【0034】
各計画値の優先度情報は、各計画値を電力量換算した場合に、計画値が未達である時に想定される実績値との間の乖離した電力量の単位当たりの経済的損失、又は、実績値が計画値周辺の一定範囲から逸脱した時に受ける経済的損失の少なくとも一方に基づいて決定すれば良い。このように優先度情報を決定する理由は、計画値と実績値との乖離量に比例して経済的損失が増える場合もあるし、実績値が計画値周辺の一定範囲から逸脱することによって経済的損失が一気に増える場合もあるためであり、経済的損失が大きい計画値ほど優先度を高く設定して経済的損失を減少させることが望ましい。
【0035】
図2のスイッチ手段SW,SW,SWは、表1に示した優先信号A,Bのオン・オフ論理に従ってオン・オフする。すなわち、スイッチ手段SWは優先信号Aのオン時にオンし、スイッチ手段SWは優先信号Bのオン時にオンし、スイッチ手段SWは優先信号A,Bが何れもオンの時にオンする。
【0036】
この結果、優先信号A,Bのオン・オフに応じて図2のコントローラ30Aから出力される水素製造装置の電力指令値、蓄電装置の電力指令値は、次のようになる。なお、簡略化のために、各電力指令値は変化率リミッタ34によって制限されていないものとする。
(1)優先信号Aがオン、優先信号Bがオフ
・水素製造装置の電力指令値P=PTreq-PBreq
・蓄電装置の電力指令値P=PTreq-P=PBreq
(2)優先信号Aがオフ、優先信号Bがオン
・水素製造装置の電力指令値P=PTreq+(PHreq-PTreq)=PHreq
・蓄電装置の電力指令値P=PTreq-P=PTreq-PHreq
(3)優先信号A,Bが共にオン
・水素製造装置の電力指令値P=PTreq-PBreq+{PHreq-(PTreq-PBreq)}=PHreq
・蓄電装置の電力指令値P=PTreq+(PBreq+PHreq-PTreq)-P=PBreq
【0037】
上記のように、(1)優先信号Aがオン、優先信号Bがオフの場合、及び、(2)優先信号Aがオフ,優先信号Bがオンの場合(表1において、連系点電力計画値の優先度が高く、優先度1又は2の場合)は、連系点電力指令値PTreqから水素製造装置の電力指令値Pを減算した値(PTreq-PHreq)を蓄電装置の電力指令値Pとしている。
これにより、即応性の低い水素製造装置が瞬時に指令値に応答できなかった場合でも、その遅れを打ち消して連系点電力指令値PTreqを達成させるような蓄電装置の電力指令値Pを得ることができる。
また、(3)優先信号A,Bが共にオンの場合には、水素製造装置の電力指令値PはPHreqがそのまま出力され、蓄電装置の電力指令値PはPBreqがそのまま出力されることになる。
【0038】
蓄電装置の電力指令値Pは、図1における運転指令の一部として蓄電装置(リソースA)内のPCS11に送信される。PCS11は電力指令値Pに従って蓄電池12を充放電させると同時に、連系点41の電力を、ガバナフリー制御等による調整力指令値も反映させた連系点電力指令値PTreqに即応させるように電力変換を行う。
一方、水素製造装置の電力指令値Pは、図1における運転指令の一部として水素製造装置(リソースB)に送信され、純水を電気分解して水素を製造するための交流電力が連系点41から供給される。この電力指令値Pも、蓄電装置と相まって連系点41の電力をその指令値PTreqに追従させる機能を有するが、前述したように水素製造装置は指令値に対する即応性が低いことを考慮して、変化率リミッタ34を介して水素製造装置に与えている。
ここで、電力指令値P,Pは、蓄電装置や水素製造装置の定格容量や定格出力等の制約を満たす範囲の値であることは言うまでもない。
【0039】
なお、連系点電力計画値の優先度が高い場合(前述したように(1)優先信号Aがオン、優先信号Bがオフの場合、及び、(2)優先信号Aがオフ、優先信号Bがオンの場合)において、蓄電池SOC計画値の達成に必要な電力量をW、その計画値の優先度に相当する数値データ(後述する優先スコア)をk、水素製造量計画値の達成に必要な電力量をW、その計画値の優先度に相当する数値データ(同じく優先スコア)をk、連系点電力計画値の達成に必要な電力(受電方向を正)をPtideとした場合、コントローラ30Aは、水素製造装置に対して、その消費電力が{W/(W+W)}Ptideとなるような電力指令値Pを与え、蓄電装置には、Ptideから上記の{W/(W+W)}Ptideを引いた値の、PTreq-{W/(W+W)}Ptide={W/(W+W)}Ptideを電力指令値Pとして与えても良い。
【0040】
つまり、図3に示す如く、連系点電力計画値を達成するために必要な電力Ptideを、(水素製造量計画値の達成に必要な電力):(蓄電池SOC計画値の達成に必要な電力)=(W):(W)という比率により按分(内分)して各リソースの電力指令値を生成する。
これにより、消費電力が大きく、かつ、計画値の優先度が高いリソースほど、連系点電力Ptideの範囲内で大きい消費電力に見合った電力指令値を作成することができ、結果として、優先度が高い連系点電力計画値を達成しつつ、水素製造量と蓄電池SOCとの両方についてそれぞれの計画値にできるだけ近付けるように電力を調整することができる。この場合、水素製造量と蓄電池SOCとのどちらを優先させて計画値に近付けるかは、両者の優先度に応じて決定すれば良い。
【0041】
図2に示した優先信号作成部35には、リソース情報として蓄電池12のSOCがフィードバックされており、優先信号作成部35は、このフィードバック値を図4に示す第1,第2の上下限閾値と比較して蓄電装置優先信号Aを作成すると良い。
図4における第1の上限閾値は、蓄電池12のSOCがこれを超えた時に強制的に蓄電池SOCの計画値を最優先させる(蓄電装置優先モードとする)ための閾値である。第2の上限閾値は、蓄電装置優先モード中にSOCがこれを下回ると蓄電装置優先モードを解除し、各優先スコア計算部35a~35cから出力される優先度が最も高い計画値を達成する制御モードに移行させるための閾値である。
第1の下限閾値は、SOCがこれを下回った時に強制的に蓄電池SOCの計画値を最優先させる(蓄電装置優先モードとする)ための閾値である。第2の下限閾値は、蓄電装置優先モード中にSOCがこれを超えると蓄電装置優先モードを解除し、各優先スコア計算部35a~35cから出力される優先度が最も高い計画値を達成する制御モードに移行させるための閾値である。
【0042】
蓄電装置優先モードでは、コントローラ30Aに入力される各計画値の優先度情報に関わらず、蓄電池SOCの計画値を最優先と見なす。この蓄電装置優先モードは、表1における優先信号Aがオンの場合(前述した(1)優先信号Aがオン、優先信号Bがオフの場合、及び、(3)優先信号A,Bが共にオンの場合)に相当しており、蓄電装置の電力指令値はP=PBreqである。
【0043】
このように、蓄電池12のSOCに応じて蓄電装置優先モードに強制的に移行させれば、蓄電装置の充放電計画値を最優先で達成することができる。なお、図4に示すように第2の上下限閾値を第1の上下限閾値の内側に設定すると、蓄電装置優先モードになってから当該モードが解除されるまでにSOCが変化するだけの電力量及び時間が必要になるが、このように第1,第2の上下限閾値を設定することにより、蓄電装置優先モードの頻繁な入り切りによって電力が振動してしまう問題を回避することができる。第2の上下限閾値を設ける代わりに、SOCが第1の上限閾値を下回るか第1の下限閾値を上回る状態が一定時間継続した後に、蓄電装置優先モードを解除する仕様であっても良い。
【0044】
また、優先信号作成部35には、図2に示した如く、リソース情報として水素貯蔵量がフィードバックされており、優先信号作成部35は、このフィードバック値を第1,第2の上限閾値(第1の上限閾値>第2の上限閾値)と比較して水素製造装置優先信号Bを作成すると良い。
第1の上限閾値は、水素貯蔵量がこれを超えた時に強制的に水素製造量の計画値を最優先させる(水素製造装置優先モードとする)ための閾値である。第2の上限閾値は、水素製造装置優先モード中に水素貯蔵量がこれを下回った時に水素製造装置優先モードを解除し、各優先スコア計算部35a~35cから出力される優先度が最も高い計画値を達成する制御モードに移行させるための閾値である。
これにより、例えば、タンクの容量の制約等からこれ以上、水素を貯蔵させたくない閾値が存在する場合、この閾値を下回るように第1の上限閾値を設定しておけば、水素貯蔵量が第1の上限閾値付近、もしくは、水素製造量の計画値による増量分を超えないように制御することができる。
ちなみに、この実施形態では製造した水素を消費する装置等は制御対象に含めていないため、図4に示したような第1,第2の下限閾値は不要である。
【0045】
図5は、優先信号作成部35の内部構成図である。
水素製造量計画値、蓄電池SOC計画値、連系点電力計画値の優先度は、計画値と実績値との偏差に応じて変わり得る値であるという知見に基づき、図5では、優先スコア計算部35a,35b,35c、水素製造装置優先モード判定部35f、蓄電装置優先モード判定部35g、及び比較部35hの動作により、各フィードバック値と各計画値との偏差に応じて各計画値の適切な優先スコアをそれぞれ計算し、これらの優先スコアに基づいて優先信号A,Bを作成するようにした。
【0046】
図5において、水素製造量計画値の優先スコア計算部35aには、水素製造量計画値の優先度情報と、水素製造量のフィードバック値(実績値)と計画値との偏差と、が入力されており、優先度情報としての所定の関数に上記偏差を代入して水素製造量計画値の優先スコアを計算する。
連系点電力計画値の優先スコア計算部35bには、連系点電力計画値の優先度情報と、連系点電力のフィードバック値(実績値)と計画値との偏差と、が入力されており、優先度情報としての所定の関数に上記偏差を代入して連系点電力計画値の優先スコアを計算し、比較部35hに出力する。
蓄電池SOC計画値の優先スコア計算部35cには、蓄電池SOC計画値の優先度情報と、蓄電池SOCのフィードバック値(実績値)と計画値との偏差と、が入力されており、優先度情報としての所定の関数に上記偏差を代入して蓄電池SOC計画値の優先スコアを計算する。
【0047】
例えば、図6(a)に示すように、水素製造量の元の計画値と実績値との偏差xが大きいほど水素製造量計画値の優先スコアが大きくなるような関数f(x)を、優先度情報として上位システムから優先信号作成部35内の優先スコア計算部35aに送る。そして、現在の偏差Xを上記関数f(x)に代入することにより、一意的な数値としての優先スコアf(X)を計算し、その値を優先スコアkとして出力する。なお、図6(a)に示した関数f(x)におけるCは傾き、Yは切片である。
上述した優先スコアの計算処理は、他の計画値の優先スコア計算部35b,35cについても基本的に同様である。
【0048】
図5に戻って、水素製造装置優先モード判定部35fは、前述したように水素貯蔵量のフィードバック値が第1の上限閾値を超えた場合に水素製造装置優先モードになったことを判定し、水素製造装置の計画値が優先されるように、大きな数値を出力する。この数値は、優先スコア計算部35a,35b,35cから出力される優先スコアの最大値(例えば100)より大きい値であれば、いかなる値(101以上の値)でも良い。
また、蓄電装置優先モード判定部35gは、図4に示したように蓄電池SOCのフィードバック値が第1の上限閾値を超えた場合等に蓄電装置優先モードになったことを判定し、蓄電装置が優先されるように、大きな数値を出力する。この数値は、上記と同様に、優先スコア計算部35a,35b,35cが出力可能な優先スコアより十分に大きい値であれば、いかなる値でも良い。
【0049】
このため、水素製造装置優先モードでは、加減算手段35dを介して優先スコアkより十分大きな数値データが比較部35hに入力され、また、蓄電装置優先モードでは、加減算手段35eを介して、優先スコアkより十分大きな数値データが比較部35hに入力される。
比較部35hでは、加減算手段35d,35eの出力と連系点電力計画値の優先スコア計算部35bの出力(優先スコアk)とからなる三つの入力信号の大小を比較し、前述した表1における優先度の高い二つの計画値(優先度1又は2の計画値)を決定すると共に、その二つの計画値に基づいて優先信号A,Bのオン・オフ論理を決定して出力する。
【0050】
以上の動作により、比較部35hにおいては、水素製造量のフィードバック値と計画値との偏差が大きい場合、及び、水素製造装置優先モードの場合には、水素製造装置の計画値が、優先度の高い二つの計画値に少なくとも含まれ、蓄電池SOCのフィードバック値と計画値との偏差が大きい場合、及び、蓄電装置優先モードの場合には、蓄電装置の計画値が、優先度の高い二つの計画値に少なくとも含まれるようになる。
このため、各制御量のフィードバック値と計画値との偏差や、優先モードの種類に応じて適切に決定された優先度に従って連系点電力、水素製造量、及び蓄電池SOCを調整することが可能になる。
【0051】
なお、蓄電装置優先モードでは蓄電装置の計画値が、あるいは水素製造装置優先モードでは水素製造の計画値が、必ずしも最優先でなくても良い。例えば、蓄電装置優先モード中は蓄電池の計画値が優先度2以上(優先度1又は2)となるように、水素製造装置優先モード中は水素製造の計画値が優先度2以上(優先度1又は2)となるように、優先信号作成部35が優先信号を作成しても良い。
この方法によれば、より優先度の低い計画値を有するリソースに優先モードとなったリソースの計画を達成させるように動作させつつ、最優先としたい計画値や指令値の優先度を変えずに運用することができる。最優先としたい計画又は指令値以外の計画値が優先モードとなった場合に最優先としたい計画又は指令値の優先度が自動的に最も低くなる可能性があるが、そもそも少なくとも何れかのリソースの優先モードが解除されるような状況にならない限り、最優先としたい計画又は指令値への追従は不可能なため、問題にはならない。
【0052】
なお、各制御量のフィードバック値と計画値との偏差は、正の値(不足する場合)だけでなく、負の値(過剰である場合)も採り得る。従って、上位システムから送る優先度情報には、図6(b)に示すf(x)のように、偏差の正負(不足又は過剰)に対応した関数を含ませても良い。
これにより、蓄電池SOCや連系点電力が目標値から乖離しないように充放電(順潮/逆潮)させることができる。また、本実施形態では、製造された水素を消費する手段を備えていないが、水素が過剰に製造されないように、製造停止又は水素製造装置への出力電力を最小化することが可能である。
また、図6(a),(b)では、各制御量のフィードバック値と計画値との偏差xの関数f(x),f(x)により優先スコアを計算しているが、上記の関数は、他の制御量におけるフィードバック値と計画値との偏差の関数でも良い。例えば、蓄電池の優先スコアが、水素製造量のフィードバック値と計画の偏差の関数であっても良いし、連系点電力のフィードバック値と計画値の偏差の関数であっても良い。また、蓄電池の優先スコアは、計画値を達成すべき時間までの残り時間の関数であっても良い。
【0053】
次に、図7は、優先信号作成部35が、各制御量のフィードバック値(実績値)と計画値との偏差に応じて各計画値の優先度を変更する例を示している。ここでは、一例として、水素製造量の実績値が計画値近くのaに達するまでは連系点電力、水素製造量、蓄電池SOCの各計画値を順に優先度1,2,3とし、水素製造量の実績値がaを超えたら、水素製造量計画値の優先度を3に低下させて蓄電池SOCの計画値と入れ替えている。なお、所定値aの大きさや水素製造量の傾きは、計画値未達による経済的損失等を考慮して決定すればよい。
各計画値は、厳密に達成できなくても、ある程度近似値に到達すれば十分な場合もある。このため、水素製造量等の実績値が計画値に近付いたら、当該計画値の優先度を低下させて他の計画値を優先させることにより、全体として各計画値の達成に寄与することができる。
上述したような各計画値の優先度の変更動作は、前述した図5において各優先スコア計算部35a,35b,35cにより計算される優先スコアk,k,kを優先度の決定に反映させることにより、実現可能である。
【0054】
A-2:第2実施例
図8は、コントローラ30の第2実施例(符号30B)を示すブロック図であり、この第2実施例も、図1におけるリソースAを蓄電装置、リソースBを水素製造装置とした場合のものである。
【0055】
図8のコントローラ30Bが図2のコントローラ30Aと異なる主な点は、図2におけるスイッチ手段SWが除去されている点、図2の変化率リミッタ34の代わりに水素製造指令計算部37が設けられている点、及び、スイッチ手段SWは優先信号A,Bが共にオンである場合にオンする点である。
水素製造指令計算部37には、水素製造量及び蓄電池SOCのフィードバック値、計画値及び優先度情報が入力されると共に、優先信号A,Bの両方がオンである時にオンとなる信号(A∩B)が入力されている。この信号(A∩B)は、優先度が高い二つの計画値に連系点電力計画値が含まれている場合に、オフとなる。
更に、水素製造指令計算部37には、加減算手段36fの出力がPinとして入力されている。
【0056】
上記構成において、水素製造量及び蓄電池SOCの計画値の優先度が何れも高い場合(何れも優先度1又は2である場合)、表1に従って優先信号A,Bは何れもオンになり、スイッチ手段SW,SWは何れもオンになる。水素製造指令計算部37の入力はPin=PHreqとなり、水素製造指令計算部37は図2の変化率リミッタ34と同様に動作してPHreqがそのまま電力指令値Pとして出力され、蓄電装置の電力指令値PはPBreqとなる。
【0057】
また、水素製造量及び蓄電池SOCの計画値の何れかの優先度が3である場合(連系点電力計画値の優先度が1又は2である場合)、スイッチ手段SW,SWは何れもオフとなる。これにより、水素製造指令計算部37の入力はPin=PTreqとなって水素製造装置の電力指令値Pが計算される。また、蓄電装置の電力指令値Pは、連系点電力指令値PTreqから水素製造装置の電力指令値Pを減算した値となる。
なお、図8では、水素製造装置の電力指令値Pを蓄電装置の電力指令値Pの算出に用いているが、第1実施例と同様に、水素製造装置の電力実績値(消費電力値)を用いて蓄電装置の電力指令値Pを算出しても良い。
【0058】
図9は、図8における水素製造指令計算部37の内部構成図である。
水素製造量計画値の優先スコア計算部37aは、図5における優先スコア計算部35aと同様の動作により水素製造量計画値の優先スコアkを計算し、蓄電池SOC計画値の優先スコア計算部37bは、図5における優先スコア計算部35cと同様の動作により蓄電池SOC計画値の優先スコアkを計算する。これらの優先スコアk,kは、水素製造指令分配部37cに入力されている。
また、外部から入力されるPinが、連系点電力計画値の達成に必要な電力Ptideとして水素製造指令分配部37cに入力されている。
【0059】
一方、水素製造量の計画値とフィードバック値との偏差が加減算手段37dにより算出され、この偏差が電力量換算部37fに入力されて水素製造量計画値の達成に必要な電力量Wが算出される。また、蓄電池SOCの計画値とフィードバック値との偏差が加減算手段37eにより算出され、この偏差が電力量換算部37gに入力されて蓄電池SOC計画値の達成に必要な電力量Wが算出される。
これらの電力量W,Wは、水素製造指令分配部37cに入力されている。
【0060】
水素製造指令分配部37cは、上述した各種の入力信号を用いて、水素製造装置の消費電力の{W/(W+W)}Ptideを計算し、この消費電力が信号xとして指令選択部37hに入力される。また、指令選択部37hには、信号(A∩B)が入力され、かつ、電力Pinが信号yとして入力されている。
指令選択部37hは、信号(A∩B)がオフである時に信号xを出力するが、この時、Ptide=Pin=PTreqであるから、指令選択部37hからは、水素製造装置の消費電力として{W/(W+W)}PTreqが出力される。
また、信号(A∩B)がオンである時には、指令選択部37hの入力信号yすなわち電力PinはPHreqとなり、このPHreqがそのまま出力される。以上の動作は、水素製造指令計算部37に図2の変化率リミッタ34と同じ働きをさせるためである。
指令選択部37hに後続する変化率リミッタ37iは、電力指令値Pの変化を応答可能な速さに調整して水素製造装置に与えるように機能している。
【0061】
この第2実施例に係るコントローラ30Bによれば、優先度が高い(優先度1又は2の)二つの計画値に連系点電力計画値が含まれている場合、請求項10に記載した動作が可能になり、優先度が高い二つの計画値に連系点電力計画値が含まれていない場合には、請求項7に記載した動作が可能になる。なお、連系点電力計画値の優先度が最も高い場合(優先度が1である場合)にのみ請求項10に記載した動作を行わせ、それ以外の場合には請求項7に記載した動作を行わせるようにしても良い。
【0062】
B:第2実施形態
次に、図10は、本発明の第2実施形態に係る電力調整システムの全体構成図である。図10において、複数のリソースA~Dは並列に接続され、その並列接続点は連系点41を介して交流の電力系統40に接続されている。
【0063】
リソースA~Dは、第1実施形態におけるリソースA,Bと同様に、電力系統40から供給された交流電力を授受して種々のパラメータ(気体・液体等の物質や熱・電力等のエネルギー)を生産する各種の装置・回路・手段・設備であり、例えば、蓄電池,気体発生装置(水素製造装置,オゾン発生装置等)、発電装置(燃料電池,バイオマス発電装置等)、加熱装置(電気炉,焼却炉等)を含む。
リソースA~Dの中で、リソースAは最も即応性が高いリソースであり、リソースBはリソースAの次に即応性が高いリソースであり、リソースCはリソースBの次に即応性が高いリソースであり、リソースDは最も即応性が低いリソースである。
【0064】
コントローラ30Cは、第1実施形態におけるコントローラ30A又は30Bと同様に、CPU等の演算装置、入出力装置、記憶装置、通信インターフェイス等を備えた情報処理装置であり、例えばEMS等の上位又は外部の制御装置から受信し、あるいはオペレータの操作によって入力される計画指令と、電力系統40の系統周波数と、ガバナフリー制御や負荷周波数制御等を行うために不定期に発生する調整力指令値(請求項における補助的電力指令値)と、連系点電力及びリソースA~Dからのフィードバック値と、に基づいて、リソースA~Dに対する運転指令を作成して出力する。
コントローラ30Cの具体的構成・機能については、後述する。
【0065】
コントローラ30Cが受信する計画指令には、電力や調整力の売電価格、リソースA~Dによる生産物がある場合はそれらの販売価格、系統運用者が立案した一定時間ごとの連系点電力計画値、この計画値が未達である場合に各リソースA~Dを保有する需要者に課される経済的損失(ペナルティ)等が含まれている。
また、計画指令には、リソースA~Dの充放電量計画値又は物質やエネルギーの生産量に対応する生産量相当計画値が含まれる。充放電量計画値の場合は、充電電力量又は入出力電力値の計画値でも良いし、生産量相当計画値の場合は、生産される物質やエネルギーの量の計画値、又は、その生産に必要な電力(消費電力)の計画値でも良い。
【0066】
リソースA~Dの充放電量計画値又は生産量相当計画値は、リソースの充放電電力あるいは生産物の利用計画・利用目的に応じてEMSあるいはシステムのオペレータにより決定される。
連系点電力計画値は、例えばデマンドレスポンス制御を行う場合のように電力需給計画の立案段階で明らかになっている連系点電力の要求量であり、予測値であっても良い。また、連系点電力計画値には、事前に系統運用者に通知された基準値計画(デマンドレスポンスとは別に売買する電力の計画値)が含まれていても良い。
【0067】
また、上記計画指令には、五種類の計画値(連系点電力計画値とリソースA~D用の充放電量計画値又は生産量相当計画値)が未達である時の経済的損失又は調整力の計画逸脱時における経済的損失等に基づいて決定される、各計画値の優先度情報が含まれていても良い。
【0068】
コントローラ30Cに入力される調整力指令値は、第1実施形態におけるコントローラ30A又は30Bと同様に、系統周波数に応じてガバナフリー制御する場合のように、計画指令の作成段階では明らかであるとは限らない。このため、コントローラ30Cは、本システムの実際の運用時に不定期に発生する調整力指令値も反映させてリソースA~Dの運転指令(それぞれに対する電力指令値を含む)を作成し、出力する。
【0069】
なお、リソースA~Dの中で最も即応性が高いリソースAは、連系点電力指令値及び調整力指令値に即応できる性能を有しているのに対し、リソースB~Dには、例えば水素製造装置や燃料電池の如く、その動作原理上、連系点電力指令値及び調整力指令値に即応できないものも存在し得る。
【0070】
図11は、コントローラ30Cを示すブロック図である。
図11において、コントローラ30Cは、要求電力指令値作成部38、変化率リミッタ38a~38c、加減算手段39a~39fを備えている。
【0071】
要求電力指令値作成部38は、連系点電力計画値,調整力指令値,系統周波数,リソースA~Dのそれぞれの計画指令であるリソースA~Dの稼働計画,リソースA~Dのフィードバック値,各計画値の優先度情報に基づいてリソースA~Dの要求電力指令値PAreq~PDreqを作成する。
要求電力指令値作成部38は、上記優先度情報と各制御量の偏差とに基づいて、各計画値の優先順位を決定する。例えば、要求電力指令値作成部38は、第1実施形態におけるコントローラ30A又は30Bと同様に、上記優先度情報と各制御量の偏差とに基づいて優先スコア(優先度に相当する数値データ)を計算し、これが大きい計画値の順に優先順位を決定して良い。
また、これに加えて、第1実施形態におけるコントローラ30A又は30Bと同様に、各リソース情報としての充電量あるいは生産物の貯蔵量が一定の閾値を上回るか或いは下回った場合に、優先順位があらかじめ定められた順位以上となるリソース優先モードによって計画値の優先順位が決定されても良い。
【0072】
要求電力指令値作成部38は、下記の(1)~(3)に従って、各リソースの要求電力指令値PAreq~PDreqを決定する。
(1)連系点電力より優先順位が高い計画値を持つリソースの場合
各リソースの計画値を達成するために必要な電力(瞬時値)が、そのリソースの要求電力指令値となる。たとえば、現時点から計画を達成すべき時間までに必要な電力量を、計画を達成すべき時間までの時間で除したものである。
(2)最も優先順位が低い計画値を持つリソースの場合
連系点電計画値及び調整力指令値の追従に必要な電力(瞬時値)から、その他のリソースの計画値を達成するために必要な電力(瞬時値)の合計を引いたものが、そのリソースの要求電力指令値となる。
(3)その他のリソースの場合
各リソースの計画値を達成するために必要な電力(瞬時値)が、そのリソースの要求電力指令値となる。ただし、優先順位が一つ下のリソースの要求電力指令値が、同じく優先順位が一つ下のリソースの最大容量を上回るか、最小容量を下回っていた場合は、その超過分を更に加えたものが、そのリソースの要求電力指令値となる。
【0073】
以上の形態によれば、より優先順位が低い計画値を有するリソースから順に、より優先順位が高い計画値を達成させるような電力指令値を、そのリソースの要求電力指令値とすることができる。
【0074】
なお、コントローラ30Cは、上記の動作により、連系点電力となる各リソースの要求電力指令値の総和が連系点電力の設備容量を上回った場合は、その超過分を連系点電力よりも優先順位が1つ上のリソースの要求電力指令値から減算し、かつ連系点電力よりも優先順位が2つ以上高いリソースは上記(3)に従ってリソースの要求電力指令値を決めても良い。
これにより、連系点電力の設備容量の制約も考慮したうえで、より優先順位が低い計画値を有するリソースから順に、より優先順位が高い計画値を達成させるような電力指令値を、そのリソースの要求電力指令値とすることができる。
【0075】
コントローラ30Cは、リソースDの要求電力指令値PDreqを変化率リミッタ38cに入力し、変化率リミッタ38cの出力をリソースDの電力指令値Pとして出力する。
変化率リミッタ38cは、リソースDの即応性が低いことを勘案して、リソースDに対する電力指令値PをリソースDにとって応答可能な速さで変化させるために設けられている。
【0076】
また、コントローラ30Cは、加減算手段39eを介してリソースCの要求電力指令値PCreqにリソースDの要求電力指令値PDreqを加算し、さらに加減算手段39fを介してリソースDの電力指令値Pを減算したものを変化率リミッタ38bに入力する。このとき、加減算手段39fで減算するリソースDの電力指令値Pは、リソースDで授受した電力のフィードバック値であっても良い。そして、変化率リミッタ38bの出力をリソースCの電力指令値Pとして出力する。
変化率リミッタ38bは、リソースCの即応性が低いことを勘案して、リソースCに対する電力指令値PをリソースCにとって応答可能な速さで変化させるために設けられている。
上記の構成によれば、変化率リミッタ38cの入力と出力の差分がリソースCの要求電力指令値PCreqに足されているため、リソースDの要求電力指令値PDreqのうちリソースDが追従できないために変化率リミッタ38cでカットされた成分をリソースCに負担させることができる。
【0077】
また、コントローラ30Cは、加減算手段39cを介してリソースBの要求電力指令値PBreqにリソースCの要求電力指令値PCreqを加算し、さらに加減算手段39dを介してリソースCの電力指令値Pを減算したものを変化率リミッタ38aに入力する。このとき、加減算手段39dで減算するリソースCの電力指令値Pは、リソースCで授受した電力のフィードバック値であっても良い。そして、変化率リミッタ38aの出力をリソースBの電力指令値Pとして出力する。
変化率リミッタ38aは、リソースBの即応性が低いことを勘案して、リソースBに対する電力指令値PをリソースBにとって応答可能な速さで変化させるために設けられている。
上記の構成によれば、変化率リミッタ38bの入力と出力の差分がリソースBの要求電力指令値PBreqに足されているため、リソースCの要求電力指令値PCreqのうちリソースCが追従できないために変化率リミッタ38bでカットされた成分をリソースBに負担させることができる。
【0078】
また、コントローラ30Cは、加減算手段39aを介してリソースAの要求電力指令値PAreqにリソースBの要求電力指令値PBreqを加算し、さらに加減算手段39bを介してリソースBの電力指令値Pを減算したものをリソースAの電力指令値Pとして出力する。このとき、加減算手段39bで減算するリソースBの電力指令値Pは、リソースBで授受した電力の実績のフィードバック値であっても良い。
上記の構成によれば、変化率リミッタ38aの入力と出力の差分がリソースAの要求電力指令値PAreqに足されているため、リソースBの要求電力指令値PBreqのうちリソースBが追従できないために変化率リミッタ38aでカットされた成分をリソースAに負担させることができる。
【0079】
前述したように、各リソースの要求電力指令値PAreq~PDreqは、より優先順位が高い計画値や指令値の追従を達成させるような電力指令値となっている場合があり、そのリソースの計画値を達成させるような電力指令値となっているとは限らない。そのため、各リソースが要求電力指令値PAreq~PDreq通りに追従できなかった場合、より優先順位が高い計画値や指令値の追従が達成されない可能性がある。
コントローラ30Cによれば、最も即応性が高いリソースAを除く各リソースの要求電力指令値PBreq~PDreqに、それぞれのリソースが追従できない速さで変化する指令値が入力された場合に、追従できなかった分の電力をより即応性が高いリソースの指令値に重畳させることができる。そのため、各リソースの要求電力指令値PAreq~PDreqに追従しやすくなるため、より優先順位が高い計画値が達成しやすくなる。
【0080】
例えば、連系点電力の優先順位が最も高い場合、各リソースの要求電力指令値PAreq~PDreqは、総和が連系点電力計画値及び調整力指令値への追従に必要な電力値(瞬時値)と一致するように、要求電力指令値作成部38から出力される。コントローラ30Cによれば、リソースの即応性の低さに起因してリソースB~Dがそれぞれ要求電力指令値PBreq~PDreqに追従できなかった場合においても、追従できなかった分の電力値をより即応性が高いリソースが補償するため、全リソースの出力の総和は各リソースの要求電力指令値PAreq~PDreqの総和と一致する。これにより、最も優先順位の高い連系点電力の計画値及び調整力指令値に追従することができる。
【0081】
さらに、コントローラ30Cによれば、最も即応性が高いリソースAを除く各リソースの要求電力指令値PBreq~PDreqにそれぞれのリソースが追従できない速さで変化する指令値が入力された場合に、追従できなかった分の電力をそのリソースの次に即応性が高いリソースの指令値に重畳させることができる。
これにより、即応性の低いリソースB~Dが追従できなかった分の電力を、即応性が最も早いリソースAのみに負担させることなく、応答できるリソースの中で最も遅いリソースから順に負担させることができる。これにより、リソースAの電力指令値PがリソースAの設備容量を上回ることにより各リソースの要求電力指令値PBreq~PDreqが達成されなくなる状況を、回避することができる。
【0082】
第2実施形態においては、リソースが4つある場合についてのみ説明したが、リソースの数は2以上であればいくつであってもよい。この場合、要求電力指令値作成部38は、前述した方法によって全てのリソースの要求電力指令値を作成すれば良い。
また、最も即応性が低いリソースの要求電力指令値は、そのままそのリソースの電力指令値とすればよい。
さらに、最も即応性が高いリソースの要求電力指令値は、次に即応性が高いリソースの要求電力指令値を減算した後に、同じく次に即応性が高いリソースの電力指令値あるいは電力のフィードバック値を加算したものをそのリソースの電力指令値とすれば良い。
また、それ以外のリソースの要求電力指令値は、そのリソースの次に即応性が高いリソースの要求電力指令値を減算した後に、同じくそのリソースの次に即応性が高いリソースの電力指令値あるいは電力のフィードバック値を加算したものをそのリソースの電力指令値とすれば良い。
さらに、各リソースの要求電力指令値は、上記の演算を行った上で、更にそのリソースが応答できるような指令値に変換するための変化率リミッタもしくはローパスフィルタを介したものを、それぞれのリソースの電力指令値としても良い。変化率リミッタ及びローパスフィルタは、指令値の時間的な変動を抑制(すなわち平滑化)する平滑手段として包括的に表現される。
【0083】
第2実施形態において、要求電力指令値作成部38により作成された要求電力指令値PAreq~PDreqが、そのまま電力指令値P~Pとして各リソースA~Dに出力されてもよい。すなわち、要求電力指令値PAreq~PDreqを修正する要素は省略されてもよい。例えば、図11における変化率リミッタ38a~38cおよび加減算手段39a~39fは省略されてよい。以上に例示した要求電力指令値PAreq~PDreqを修正する要素の少なくとも一部が、要求電力指令値作成部38に包含されてもよい。
【0084】
第1及び第2実施形態においては、それぞれのリソースの計画値に基づいて電力指令値を作成していたが、リソースの充放電や生産物の臨時的な要求に基づいて作成されても良い。
【0085】
以上説明したように、本発明に係る電力調整システムにおいては、経済性を勘案した各種の計画値の優先度に従うことを基本としつつ、さらに各リソースの即応性や制約を勘案しつつ、計画値の達成状況に応じて優先度を柔軟に変更して各リソースの電力指令値を決定することにより、連系点電力及び各リソースへの供給電力を計画値通りに維持するようにシステム全体の電力を調整することができる。
【符号の説明】
【0086】
A,B,C,D:リソース
11:PCS
12:蓄電池
30,30A,30B,30C:コントローラ
31:連系点電力指令値作成部
32:蓄電池充電電力指令値作成部
33:水素製造電力指令値作成部
34:変化率リミッタ
35:優先信号作成部
35a:水素製造量計画値の優先スコア計算部
35b:連系点電力計画値の優先スコア計算部
35c:蓄電池SOC計画値の優先スコア計算部
35f:水素製造装置優先モード判定部
35g:蓄電装置優先モード判定部
35h:比較部
36a,36b,36c,36d,36e,36f,36g:加減算手段
37:水素製造指令計算部
37a:水素製造量計画値の優先スコア計算部
37b:蓄電池SOC計画値の優先スコア計算部
37c:水素製造指令分配部
37d,37e:加減算手段
37f,37g:電力量換算部
37h:指令選択部
37i:変化率リミッタ
38:要求電力指令値作成部
38a,38b,38c:変化率リミッタ
39a,39b,39c,39d,39e,39f:加減算手段
40:電力系統
41:連系点
図1
図2
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図5
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図10
図11