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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169003
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】X線測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2055 20180101AFI20241128BHJP
   G01N 23/207 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
G01N23/2055 320
G01N23/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086166
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】乾 典規
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA25
2G001CA01
2G001DA06
2G001DA08
2G001FA16
2G001GA13
2G001HA01
2G001HA02
2G001JA06
2G001KA07
(57)【要約】
【課題】X線測定にかかる手間を削減できる。
【解決手段】X線測定装置は、被測定物に対してX線を照射する照射部と、被測定物を回折したX線を検出する複数の検出部と、検出部が検出したX線の回折プロフィルの積分強度を算出する積分強度算出部と、積分強度算出部が算出した複数の検出部に関する積分強度に基づいて照射部が照射したX線の被測定物に対する入射角を算出する入射角算出部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に対してX線を照射する照射部と、
前記被測定物を回折したX線を測定する複数の検出部と、
前記検出部が検出したX線の回折プロフィルの積分強度を算出する積分強度算出部と、
前記積分強度算出部が算出した複数の前記検出部に関する積分強度に基づいて、前記照射部が照射したX線の前記被測定物に対する入射角を算出する入射角算出部と、
を備えることを特徴とするX線測定装置。
【請求項2】
前記照射部は、前記複数の検出部の間に配置されていることを特徴とする、
請求項1に記載のX線測定装置。
【請求項3】
前記入射角算出部は、前記積分強度算出部が算出した複数の前記検出部に関する積分強度同士の比を算出し、算出した比に基づいて前記照射部が照射したX線の前記被測定物に対する入射角を算出することを特徴とする、
請求項2に記載のX線測定装置。
【請求項4】
前記複数の検出部が検出したX線の回折プロフィル及び前記入射角算出部が算出した入射角に基づいて、前記被測定物に関するパラメータを算出するパラメータ算出部をさらに備えることを特徴とする、
請求項2又は3に記載のX線測定装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被測定物に対してX線を照射して、被測定物を回折したX線を測定するX線測定装置が知られている。
【0003】
これに関し、特許文献1には、被測定物の傾斜を表す傾斜情報の入力を受け付け、傾斜情報を用いて被測定物の面法線及び散乱ベクトルのズレ量を補正するための補正量を決定し、X線回折測定時に補正量に基づいてX線測定装置のヘッドを駆動させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-96091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、X線測定を行う前に、予め非測定物に対するX線の入射角の算出に用いる情報を取得している必要があった。よって、被測定物ごとに予め情報を取得しておく必要があり、X線測定にかかる手間が増加してしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、X線測定にかかる手間を削減できるX線測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のX線測定装置は、被測定物に対してX線を照射する照射部と、前記被測定物を回折したX線を検出する複数の検出部と、前記検出部が測定したX線の回折プロフィルの積分強度を算出する積分強度算出部と、前記積分強度算出部が算出した複数の前記検出部に関する積分強度に基づいて、前記照射部が照射したX線の前記被測定物に対する入射角を算出する入射角算出部とを備える。
【0008】
また、前記照射部は、前記複数の検出部の間に配置されている。
【0009】
また、前記入射角算出部は、前記積分強度算出部が算出した複数の前記検出部に関する積分強度同士の比を算出し、算出した比に基づいて前記照射部が照射したX線の前記被測定物に対する入射角を算出する。
【0010】
また、本発明のX線測定装置は、前記複数の検出部が検出したX線の回折プロフィル及び前記入射角算出部が算出した入射角に基づいて、前記被測定物に関するパラメータを算出するパラメータ算出部をさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線測定装置は、X線測定にかかる手間を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るX線測定装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2図1に示す制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図1に示す制御装置における機能的構成を動力機構とともに示す図である。
図4A図1に示すX線測定装置における動力機構及びX線の被測定物に対する位置関係を示す斜視図である。
図4B図4Aに示す斜視図をX軸方向から見た図である。
図4C図4Aに示す斜視図をZ軸方向から見た図である。
図5図4Aに示す照射部及び測定部をX線の照射方向から見た図である。
図6A図4Aに示す測定部のうち一の測定部が測定したX線の回折プロフィルを示す図である。
図6B図4Aに示す測定部のうち他の測定部が測定したX線の回折プロフィルを示す図である。
図7図1に示すX線測定装置の一連の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0014】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係るX線測定装置1の全体構成を概略的に示す図である。X線測定装置1は、被測定物30に対してX線を照射し、被測定物30を回折したX線を検出し、検出したX線に基づいて被測定物30に関するパラメータを測定する。図1に示すように、X線測定装置1は、例えば、制御装置10と、動力機構20とを含んで構成される。
【0015】
動力機構20は、例えば、多関節型アームを備えるロボットであり、制御装置10によって動作が制御される。動力機構20は、制御装置10の制御に従って、多関節型アームを駆動する。また、動力機構20は、制御装置10の制御に従って、載置台40に載置された被測定物30に対してX線を照射し、被測定物30を回折したX線を検出する。また、動力機構20は、被測定物30を回折したX測の検出結果や動力機構20に関する種々の情報などを制御装置10に対して既知の手段により送信する。動力機構20は、例えば、基台部25と、多関節型アームと、作業部27とを含んで構成される。また、多関節型アームは、アーム部26A~26Cと、駆動部21A~21Dとを含んで構成される。
【0016】
基台部25は、動力機構20を支えるための基台であり、動力機構20の図示しない設置面に接するように設置され、当該設置面に固定される。基台部25は、駆動部21Aを介してアーム部26Aと接続される。
【0017】
アーム部26A~26Cは、動力機構20に設けられ、駆動部21A~21Dのうちいずれかを介して他の構成要素に対して回動できるように両端が他の構成要素に接続される。具体的には、アーム部26Aは、一端がアーム部26Aの延伸方向に対して水平な軸を回動軸として回動できるように駆動部21Aを介して基台部25に接続され、他端がアーム部26Aの延伸方向に対して垂直な軸を回動軸として回動できるように駆動部21Bを介してアーム部26Bに接続される。
【0018】
アーム部26Bは、一端がアーム部26Bの延伸方向に対して垂直な軸を回動軸として回動できるように駆動部21Bを介してアーム部26Aに接続され、他端がアーム部26Bの延伸方向に対して垂直な軸を回動軸として回動できるように駆動部21Cを介してアーム部26Cに接続される。
【0019】
アーム部26Cは、一端がアーム部26Cの延伸方向に対して垂直な軸を回動軸として回動できるように駆動部21Cを介してアーム部26Bに接続され、他端がアーム部26Cの延伸方向に対して水平な軸を回動軸として回動できるように駆動部21Dを介して作業部27に接続される。
【0020】
駆動部21A~21Dは、動力機構20に設けられ、動力機構20における2つの構成要素が互いに回動できるように、当該2つの構成要素を接続する。具体的には、駆動部21Aは、アーム部26Aの延伸方向に対して水平な軸を回動軸として回動できるように基台部25及びアーム部26Aを接続する。駆動部21Bは、アーム部26Aの延伸方向に対して垂直な軸を回動軸として回動できるようにアーム部26A及び26Bを接続する。また、駆動部21Cは、アーム部26Bの延伸方向に対して垂直な軸を回動軸として回動できるようにアーム部26B及び26Cを接続する。また、駆動部21Dは、アーム部26Cの延伸方向に対して水平な軸を回動軸として回動できるようにアーム部26C及び作業部27を接続する。
【0021】
作業部27は、多関節型アームの先端に設けられており、被測定物30に対するX線の照射、及び被測定物30から回折したX線の検出を行う。作業部27は、アーム部26Cの延伸方向に対して水平な軸を回動軸として回動できるように駆動部21Dを介してアーム部26Cの他端に接続される。作業部27は、照射部22と、検出部23及び24とを含んで構成される。
【0022】
照射部22は、制御装置10の制御に従って、照射口からX線を被測定物30に照射する。照射部22は、作業部27において検出部23及び24の間に設けられる。具体的には、照射部22は、検出部23及び24の検出器の表面によって形成される平面上において、照射口が検出部23及び24の検出範囲の間となるように設けられる。
【0023】
検出部23及び24は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)センサであり、被測定物30を回折して検出器の表面に入射したX線の検出を行う。検出部23及び24は、X線の測定結果を多関節型アームや配線などを介して制御装置10に送信する。また、検出部23及び24は、互いの測定面がほぼ同じ平面上となり、かつ間に照射部22の照射口が配置されるように作業部27に設けられる。
【0024】
制御装置10は、動力機構20と通信可能に構成されており、動力機構20に対して動作を制御するための制御命令を送信する。また、制御装置10は、動力機構20から被測定物30に対するX線による検出結果や動力機構20に関する種々の情報などを取得する。また、制御装置10は、動力機構20から取得した被測定物30に対するX線による検出結果に基づいて、被測定物30に関するパラメータを測定する。制御装置10は、取得又は算出した情報を画面表示や音声出力などによってX線測定装置1の管理者やユーザに知らせたり、動力機構20の動作の制御に反映させたりする。
【0025】
<ハードウェア構成>
図2は、図1に示す制御装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、制御装置10は、例えば、記憶装置11と、CPU(Central Processing Unit)12と、メモリ13と、通信装置14と、入出力装置15とを含んで主要部が構成される。
【0026】
記憶装置11は、ハードディスク等で構成される。この記憶装置11は、CPU12における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。
【0027】
CPU12は、メモリ13或いは記憶装置11等に格納された所定のプログラムを実行することにより、各種の機能手段として機能する。この機能手段の詳細については後述する。
【0028】
メモリ13に、所定のプログラムや、CPU12が所定のプログラムを実行する際に必要なデータなどが一時的に記憶される。
【0029】
通信装置14は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置14は、例えば、動力機構20との間で各種の情報を送受信する。
【0030】
入出力装置15は、制御装置10の操作者が制御装置10に対して操作を行うための入力を受け付けるとともに、制御装置10に関する情報を操作者に対して表示する。具体的には、入出力装置15は、操作者による制御装置10に対する各種命令(被測定物30に対するX線照射の状況など)を受け付ける。また、入出力装置15は、測定したX線に関する情報や測定結果から算出した被測定物30に関するパラメータの値などを操作者に対して表示する。
【0031】
なお、制御装置10は、専用又は汎用のコンピュータなどの情報処理装置を用いて実現することができる。また、制御装置10は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。また、図2は、制御装置10が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、制御装置10は、コンピュータが一般的に備える他の構成を備えても良い。
【0032】
<機能的構成>
図3は、図1に示す制御装置10における機能的構成を動力機構20とともに示す図である。図3に示すように、制御装置10は、機能的構成として、例えば、積分強度算出部110と、入射角算出部120と、パラメータ算出部130と、制御部140と、入出力部150と、記憶部160とを含んで構成される。
【0033】
制御部140は、入出力部150を介して制御装置10の操作者から入力される制御命令や記憶部160に記憶されている制御命令などに基づいて、動力機構20の駆動部21A~21D及び照射部22に対して、動作を制御するための制御命令を送信する。また、制御部140は、動力機構20の検出部23及び24から被測定物30に対するX線による検出結果を取得し、動力機構20の駆動部21A~21Dから動力機構20の状態に関する情報を取得する。また、制御装置10は、動力機構20から取得した情報や記憶部160に記憶されている各種情報、積分強度算出部110、入射角算出部120及びパラメータ算出部130の算出結果などを必要に応じて積分強度算出部110、入射角算出部120及びパラメータ算出部130に伝達するか、記憶部160に記憶するか、又は入出力部150を介して制御装置10の操作者に対して出力する。
【0034】
積分強度算出部110は、検出部23及び24が測定したX線の回折プロフィルを生成し、さらに生成した回折プロフィルの積分強度を算出する。具体的には、積分強度算出部110は、制御部140から伝達される動力機構20の検出部23及び24によるX線の検出結果を参照し、検出部23による検出結果及び検出部24による検出結果のそれぞれに対して回折プロフィルを生成する。さらに、積分強度算出部110は、生成した2つの回折プロフィルのそれぞれについて積分強度を算出する。積分強度算出部110は、制御部140を介して、算出した2つの積分強度を入射角算出部120に伝達する。
【0035】
入射角算出部120は、積分強度算出部110が算出した検出部23及び24に関する積分強度に基づいて、照射部22が照射したX線の被測定物30に対する入射角を算出する。具体的には、入射角算出部120は、制御部140から伝達される検出部23及び24に関する積分強度を参照し、参照した積分強度の比を算出する。続いて、入射角算出部120は、算出した比に基づいて、照射部22が照射したX線の被測定物30に対する入射角を算出する。積分強度算出部110は、制御部140を介して、算出した入射角をパラメータ算出部130に伝達する。
【0036】
なお、入射角の算出方法としては、例えば、算出した積分強度の比を予め定められている対応関係に当てはめることによって入射角を算出する方法や、算出した積分強度の比を予め定められている関係式に代入して関係式の演算結果を入射角として算出する方法などが挙げられる。この場合において、制御装置10は、好適には、被測定物30の表面におけるX線照射範囲が楕円形又は円形となり、さらに被測定物30の表面におけるX線照射範囲の曲率及びX線照射範囲の直径の比が10:1以上となるように、照射部22から被測定物30にX線を照射する。
【0037】
パラメータ算出部130は、検出部23及び24が測定したX線の回折プロフィル及び入射角算出部120が算出したX線の入射角に基づいて、被測定物30に関するパラメータを算出する。具体的には、パラメータ算出部130は、検出部23及び24が測定したX線の回折プロフィル及び入射角算出部120が算出したX線の入射角に基づいて、被測定物30の残留応力など特性に関するパラメータを算出する。パラメータ算出部130は、制御部140を介して、算出したパラメータの値を記憶部160に記憶し、入出力部150に伝達する。なお、パラメータ算出部130は、被測定物30の特性に関するパラメータとして、例えば、被測定物30の残留応力である垂直応力及びせん断応力を算出する。
【0038】
入出力部150は、制御装置10の操作者による制御装置10に対する各種命令を受け付け、受け付けた命令を制御部140に伝達する。また、入出力部150は、制御部140から伝達されるパラメータ算出部130による被測定物30に関するパラメータの算出結果や、動力機構20に関する各種情報を画面表示や音などによって操作者に対して出力する。
【0039】
記憶部160は、動力機構20の動作を制御するための制御プログラムと、入射角算出部120が被測定物30に対するX線の入射角を算出するために用いる対応関係や関係式と、パラメータ算出部130がパラメータを算出するための関係式と、その他、制御装置10が予め記憶して必要がある各種値や情報などを記憶する。
【0040】
<一連の処理の流れの一例>
以上、制御装置10の機能的構成について説明した。次に、X線測定装置1における一連の処理の流れについて詳しく説明する。図7は、図1に示すX線測定装置1の一連の処理の流れを示すフローチャートの一例である。なお、以下の処理の順番及び内容は、適宜変更することができる。
【0041】
(ステップSP10)
制御装置10は、制御部140によって、被測定物30にX線を照射するために動力機構20の動作の制御を行う。具体的には、制御装置10は、制御部140によって、照射部22の照射口Pが被測定物30の測定箇所Oに向かうように、駆動部21A~21Dを駆動させるように動力機構20の動作を制御する。続いて、制御装置10は、照射部22から被測定物30に対してX線を照射するように、動力機構20の動作を制御する。ここで、照射部22と、検出部23及び24と、照射部22から照射されるX線と、被測定物30を回折したX線との間の位置関係について図4A図4C、及び図5を参照しつつ説明する。
【0042】
図4Aは、図1に示すX線測定装置1における動力機構20及びX線の被測定物30に対する位置関係を示す斜視図である。また、図4Bは、図4Aに示す斜視図をX軸方向から見た図である。また、図4Cは、図4Aに示す斜視図をZ軸方向から見た図である。また、図5は、図4Aに示す照射部22並びに検出部23及び24をX線の照射方向から見た図である。
【0043】
図4A~4C及び図5において、被測定物30の測定箇所Oがある測定面に対して垂直な方向に伸びる仮想の軸をZ軸とする。また、図4A~4C及び図5において、Z軸に対して垂直でありかつ被測定物30の測定面に対して水平な方向に伸びる仮想の軸をX軸とする。さらに、図4A~4C及び図5において、Z軸及びX軸に対して垂直でありかつ被測定物30の測定面に対して水平な方向に伸びる仮想の軸をY軸とする。また、図4A~4C及び図5において、検出部23がX線Rを受ける箇所のうちの一点を点Pとする。また、図4A~4C及び図5において、検出部24がX線Rを受ける箇所のうちの一点を点Pとする。また、X線R及びRの間の角度を角度2ηとする。なお、図4A~4C及び図5において、照射部22の照射口P、検出部23及び24の測定面は、ほぼ同一平面C上にある。平面C上において、照射部22の照射口PAからある方向に向かう線分を線分Wとする。また、平面C上において、照射部22の照射口Pから線分Wとは判定側に向かう方向の線分を線分Wとする。
【0044】
図4A~4C及び図5に示すように、照射部22は、照射口PからX線Rを被測定物30の測定箇所Oに対して照射する。具体的には、照射部22は、Z軸に対して角度Ψとなるように、X線Rを被測定物30の測定箇所Oに対して照射する。また、照射部22は、X線測定装置1をZ軸方向から見た場合に、X軸及びY軸からなる平面上において、X軸に対して角度φとなるように、X線Rを被測定物30の測定箇所Oに対して照射する。
【0045】
図7に戻って、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0046】
(ステップSP12)
制御装置10は、検出部23及び24によって、被測定物30を回折したX線を検出する。具体的には、図4A~4C及び図5を参照して、検出部23は、被測定物30を回折したX線Rを検出する。ここで、検出部23は、X線Rの照射方向から平面Cを見た場合、照射口Pを原点として線分Wに対して右回り方向に角度αとなる位置に設けられている。図4A~4C及び図5において、角度αは、0°である。また、検出部24は、被測定物30を回折したX線Rを測定する。ここで、検出部24は、X線Rの照射方向から平面Cを見た場合、照射口Pを原点として線分Wに対して右回り方向に角度αとなる位置に設けられている。図4A~4C及び図5において、角度αは、180°である。
【0047】
図7に戻って、制御装置10は、制御部140によって、検出部23及び24が検出したX線の検出結果を積分強度算出部110に伝達する。そして、処理は、ステップSP14の処理に移行する。
【0048】
(ステップSP14)
制御装置10は、積分強度算出部110によって、検出部23及び24が検出したX線R及びRの検出結果に基づいて、検出部23が検出したX線Rの回折プロフィルの積分強度と、検出部24が検出したX線RCの回折プロフィルの積分強度とを算出する。ここで、X線R及びRの回折プロフィルについて、図6A及び図6Bを参照しつつ説明する。
【0049】
図6Aは、図4Aに示す検出部23及び24のうち一の検出部23が検出したX線Rの回折プロフィルを示す図である。また、図6Bは、図4Aに示す検出部23及び24のうち他の検出部24が測定したX線Rの回折プロフィルを示す図である。図6Aにおいて、横軸は、検出部23における検出箇所を示し、具体的には、平面C上における点Pから点Pを通過して円周に向かう仮想の軸における位置をピクセル数で示している。また、図6Bにおいて、横軸は、検出部24における検出箇所を示し、具体的には、平面C上における点Pから点Pを通過して円周に向かう仮想の軸における位置をピクセル数で示している。また、縦軸は、いずれも測定したX線の強度をcps(count per seconds)で示している。
【0050】
制御装置10は、まず、積分強度算出部110によって、検出部23及び24が検出したX線R及びRの検出結果から、検出箇所毎のX線強度を含むように、回折プロフィルを生成する。続いて、制御装置10は、積分強度算出部110によって、生成した回折プロフィル毎に、検出したX線の測定値の傾きなどから山なりの形状のグラフになっている部分を抽出し、抽出した山なりの形状の部分の幅と高さとを算出する。ここで、幅は、山なりの形状の部分の横軸方向の長さである。また、高さは、山なりの形状の部分の縦軸方向の最大値及び最小値の差である。また、制御装置10は、生成した回折プロフィル毎に、山なりの形状の部分の高さに対して幅を乗算し、乗算結果を回折プロフィルの積分強度として算出する。そして、制御装置10は、制御部140によって、積分強度算出部110が算出した検出部23及び24に関するX線R及びRの回折プロフィルの積分強度を入射角算出部120に伝達する。図7に戻って、処理は、ステップSP16の処理に移行する。
【0051】
(ステップSP16)
制御装置10は、入射角算出部120によって、積分強度算出部110が算出したX線R及びRの回折プロフィルの積分強度に基づいて、照射部22が照射したX線Rの被測定物30に対する入射角Ψを算出する。具体的には、制御装置10は、入射角算出部120によって、X線RBの回折プロフィルの積分強度に対するX線Rの回折プロフィルの積分強度の比を算出する。続いて、制御装置10は、入射角算出部120によって、算出した比を記憶部160が記憶している対応関係に当てはめて、当てはめた結果対応する値を入射角Ψとして算出する。ここで、対応関係は、例えば、算出する入射角Ψの値が1000通り~100000通り程度になるように、積分強度の比及び入射角Ψの組み合わせを含む。制御装置10は、制御部140によって、入射角算出部120が算出した入射角Ψをパラメータ算出部130に伝達する。そして、処理は、ステップSP18の処理に移行する。
【0052】
(ステップSP18)
制御装置10は、パラメータ算出部130によって、入射角算出部120が算出したX線Rの被測定物30に対する入射角Ψに基づいて、被測定物30のパラメータを算出する。具体的には、制御装置10は、パラメータ算出部130によって、入射角算出部120が算出した入射角Ψを次の関係式に代入することによって、被測定物30の垂直応力σ及びせん断応力τを算出する。垂直応力σは、σ=-{E/(1+ν)}×{1/sin2η}×{1/sin2Ψ}×∂a(0)/∂cosα[式1]で表される。また、せん断応力τは、τ=-[E/{2(1+ν)}]×{1/sin2η}×{1/sinΨ}×∂a(0)/∂sinα[式2]で表される。ここで、X線的ヤング率は、Eである。また、X線的ポアソン比は、νである。また、測定ひずみの第1ひずみパラメータは、a(0)である。また、測定ひずみの第2ひずみパラメータは、a(0)である。また、回折したX線によって検出部23及び24の検出器の表面に形成される像(すなわち回折環)の中心角は、αである。制御装置10は、制御部140によって、パラメータ算出部130が算出した被測定物30のパラメータを記憶部160に記憶するとともに、入出力部150を介して制御装置10の操作者に被測定物30のパラメータの値を出力する。そして、図7に示す一連の処理は、終了する。
【0053】
<効果>
以上、本実施形態では、X線測定装置1は、被測定物30に対してX線Rを照射する照射部22と、被測定物30を回折したX線R及びRを検出する複数の検出部23及び24とを備える。また、X線測定装置1は、検出部23及び24が検出したX線R及びRの回折プロフィルの積分強度を算出する積分強度算出部110と、積分強度算出部110が算出した検出部23及び24に関する積分強度に基づいて、照射部22が照射したX線Rの被測定物30に対する入射角Ψを算出する入射角算出部120とを備える。
【0054】
したがって、X線測定装置1は、照射部22が照射したX線Rの被測定物30に対する入射角Ψを算出するため、入射角Ψを予め算出しておく必要がなく、X線測定にかかる手間を削減できる。
【0055】
また、照射部22は、複数の検出部23及び24の間に配置されている。したがって、X線測定装置1は、被測定物30を回折したX線を検出する箇所が検出部23及び24によって異なるため、X線の回折プロフィルの積分強度の違いによって、高精度でX線を測定できる。
【0056】
また、入射角算出部120は、積分強度算出部110が算出した複数の検出部23及び24に関する積分強度同士の比を算出し、算出した比に基づいて照射部22が照射したX線Rの被測定物30に対する入射角Ψを算出する。したがって、X線測定装置1は、積分強度同士の比によって入射角Ψを算出するため、X線の強度の絶対値によらず高精度でX線を測定できる。
【0057】
また、X線測定装置1は、複数の検出部23及び24が検出したX線R及びRの回折プロフィル及び入射角算出部120が算出した入射角Ψに基づいて、被測定物30に関するパラメータを算出するパラメータ算出部130をさらに備える。したがって、X線測定装置1は、入射角Ψを予め算出しておく必要がなく、被測定物30のパラメータの測定にかかる手間を削減できる。
【0058】
また、パラメータ算出部130は、複数の検出部23及び24が検出したX線R及びRの回折プロフィル及び入射角算出部120が算出した入射角Ψに基づいて、被測定物30のパラメータとして、被測定物30の垂直応力σ及びせん断応力τを算出する。したがって、X線測定装置1は、入射角Ψを予め算出しておく必要がなく、被測定物30の垂直応力σ及びせん断応力をτの測定にかかる手間を削減できる。
【0059】
<変形例>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0060】
例えば、本実施形態では、入射角算出部120は、入射角Ψの算出にあたって、検出部23及び24が検出したX線R及びRの回折プロフィルの積分強度を用いるが、これに限られるものではない。入射角算出部120は、検出部23及び24が検出したX線R及びRの回折プロフィルの山なりの形状の部分の高さ及び幅の組み合わせを用いて、入射角Ψを算出しても良い。入射角算出部120は、例えば、記憶部160に記憶されているX線の回折プロフィルの山なりの形状の部分の高さ及び幅の組み合わせと、入射角Ψとの対応関係を参照し、検出部23及び24が測定したX線R及びRの回折プロフィルの山なりの形状の部分の高さ及び幅を当該対応関係に当てはめることによって、入射角Ψを算出する。
【0061】
この構成によれば、制御装置10は、積分強度の算出元となる回折プロフィルの山なりの形状の部分の高さ及び幅の組み合わせによって、入射角Ψを算出するため、X線測定にかかる手間を削減しつつ、X線測定の精度を向上できる。
【0062】
また、制御装置10は、照射部22が照射するX線Rの被測定物30に対する入射角Ψの変動を検知する異常検知部をさらに備えていても良い。異常検知部は、入射角算出部120によって入射角Ψが算出された場合、前回算出された入射角Ψと今回算出された入射角Ψの差を算出する。異常検知部は、算出した差が予め定められている閾値以上である場合、入射角Ψの変動が異常であると判定して、入出力部150を介して、入射角Ψの変動が異常であることを示す通知をX線測定装置1の操作者に出力する。さらに、異常検知部は、入射角Ψの変動が異常であると判定した場合、動力機構20を停止するように駆動部21A~21Dの動作を制御しても良い。
【0063】
この構成によれば、制御装置10は、入射角Ψの急激な変動をX線測定装置1の操作者に通知するため、被測定物30やX線測定装置1に異常があるかもしれないことを操作者に知らせることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…X線測定装置、22…照射部、23…検出部、24…検出部、30…被測定物、110…積分強度算出部、120…入射角算出部、130…パラメータ算出部

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7