(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169007
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/05 20060101AFI20241128BHJP
H01R 24/38 20110101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R13/05 Z
H01R24/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086173
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雅美
(72)【発明者】
【氏名】田中 真二
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】康 麗萍
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄之
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB59
5E223AC50
5E223BA12
5E223BA15
5E223CB22
5E223CB26
5E223CB38
5E223CC09
5E223DA42
5E223EB04
5E223EB12
5E223EB23
5E223GA08
5E223GA53
(57)【要約】
【課題】シールド性能の安定化を図る。
【解決手段】第1外導体17は、複数のバネ部29,30に個別に形成された複数の可動接点部31,32と、筒状本体部17に対して相対移動を規制された固定接点部27とを有し、第2外導体54は、複数の接点部27,31,32に対して径方向に接触し、固定接点部27の数は2つのみであり、複数のバネ部29,30の弾力に起因して両外導体13,54の間に生じる径方向内向きの複数の押圧力41,42の合力を、1本の合力ベクトル43としてあらわし、合力ベクトル43を両外導体13,54の軸心21が起点となるように配置したときに、合力ベクトル43が、軸心21を起点として2つの固定接点部27を通る2本の線分35によって区画された劣弧側領域37内に位置する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の筒状本体部と、前記筒状本体部に支持された状態で周方向に間隔を空けて配置された複数の接点部とを有する第1外導体と、
前記第1外導体に対して同心状に配置され、前記複数の接点部に対して径方向に接触する円筒形の第2外導体とを備え、
前記複数の接点部は、
前記筒状本体部に対して径方向へ弾性変形可能な複数のバネ部に個別に形成された複数の可動接点部と、
前記筒状本体部に対して相対移動を規制された固定接点部とによって構成され、
前記固定接点部の数は、2つのみであり、
前記複数のバネ部の弾力に起因して前記第1外導体と前記第2外導体との間に生じる径方向内向きの複数の押圧力の合力を、1本の合力ベクトルとしてあらわし、前記合力ベクトルを前記第1外導体及び前記第2外導体の軸心が起点となるように配置したときに、前記合力ベクトルが、前記軸心を起点として2つの前記固定接点部を通る2本の線分によって区画された劣弧側領域内に位置するシールドコネクタ。
【請求項2】
前記筒状本体部には、周方向に間隔を空けた複数本のサイドスリットが形成され、
前記筒状本体部のうち周方向に隣り合う一対の前記サイドスリットの間の部位が、前記バネ部として機能し、
周方向に隣り合う2つの前記バネ部の間に形成された前記サイドスリットの数は、1本のみである請求項1に記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記筒状本体部を、周方向において、前記劣弧側領域を含む第1領域と、前記劣弧側領域を含まない第2領域とに区画した上で、
前記第1領域には、前記固定接点部と前記可動接点部のうち前記固定接点部のみが配置され、
前記第2領域には、前記固定接点部と前記可動接点部のうち前記可動接点部のみが配置されている請求項2に記載のシールドコネクタ。
【請求項4】
前記バネ部が、前記第1外導体の軸線方向における先端側へ片持ち状に延出した形態であり、
前記筒状本体部のうち前記バネ部の延出端よりも先端側の位置には、全周に亘って繋がった円形の保護部が形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシールドコネクタ。
【請求項5】
前記筒状本体部は、
前記バネ部の基端部を支持する円筒形の支持部と、
前記保護部と、
前記支持部と前記保護部とを繋げた形態の連結部とを有しており、
前記連結部に、2つの前記固定接点部が形成されている請求項4に記載のシールドコネクタ。
【請求項6】
前記第1外導体を前記第1外導体の軸線と平行に視た正面視において、2つの前記固定接点部を対称な位置関係とする対称軸を設定したときに、
複数の前記可動接点部が、前記対称軸に関して対称に配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールドコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同軸コネクタが開示されている。このものは、同軸ケーブルの外部導体に基端部が圧着される円筒状のシェルを有している。シェルの先端部には、軸方向に延びるスリットが周方向に等間隔に並んで形成されている。シェルのうちスリットの間の部位が、弾性変形可能なバネ部として機能する。シェルを接続対象であるリセプタクルに挿入すると、バネ部がリセプタクルの内面に対して弾性接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものは、シェルとリセプタクルとの接触が、複数のバネ部のみによって行われるため、シェルとリセプタクルとが径方向に相対変位し得る状態となる。シェルとリセプタクルとが径方向に相対変位すると、バネ部とリセプタクルとの間の接触抵抗が不安定になる。
【0005】
本開示のシールドコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シールド性能の安定化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のシールドコネクタは、
円筒形の筒状本体部と、前記筒状本体部に支持された状態で周方向に間隔を空けて配置された複数の接点部とを有する第1外導体と、
前記第1外導体に対して同心状に配置され、前記複数の接点部に対して径方向に接触する円筒形の第2外導体とを備え、
前記複数の接点部は、
前記筒状本体部に対して径方向へ弾性変形可能な複数のバネ部に個別に形成された複数の可動接点部と、
前記筒状本体部に対して相対移動を規制された固定接点部とによって構成され、
前記固定接点部の数は、2つのみであり、
前記複数のバネ部の弾力に起因して前記第1外導体と前記第2外導体との間に生じる径方向内向きの複数の押圧力の合力を、1本の合力ベクトルとしてあらわし、前記合力ベクトルを前記第1外導体及び前記第2外導体の軸心が起点となるように配置したときに、前記合力ベクトルが、前記軸心を起点として2つの前記固定接点部を通る2本の線分によって区画された劣弧側領域内に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シールド性能の安定化を図ることがてきる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の第1コネクタを斜め上前方から視た斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す第1コネクタを斜め下前方から視た斜視図である。
【
図3】
図3は、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合した状態をあわす側断面図である。
【
図7】
図7は、接続状態の第1外導体と第2外導体を接点部において切断した正断面図である。
【
図8】
図8は、複数の可動接点部による押圧力の合力ベクトルと、固定接点部との位置関係をあらわした正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の形態例を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
本開示のシールドコネクタは、
(1)円筒形の筒状本体部と、前記筒状本体部に支持された状態で周方向に間隔を空けて配置された複数の接点部とを有する第1外導体と、前記第1外導体に対して同心状に配置され、前記複数の接点部に対して径方向に接触する円筒形の第2外導体とを備え、前記複数の接点部は、前記筒状本体部に対して径方向へ弾性変形可能な複数のバネ部に個別に形成された複数の可動接点部と、前記筒状本体部に対して相対移動を規制された固定接点部とによって構成され、前記固定接点部の数は、2つのみであり、前記複数のバネ部の弾力に起因して前記第1外導体と前記第2外導体との間に生じる径方向内向きの複数の押圧力の合力を、1本の合力ベクトルとしてあらわし、前記合力ベクトルを前記第1外導体及び前記第2外導体の軸心が起点となるように配置したときに、前記合力ベクトルが、前記軸心を起点として2つの前記固定接点部を通る2本の線分によって区画された劣弧側領域内に位置する。本開示の構成によれば、2つの固定接点部が、複数のバネ部の弾力に起因する合力ベクトルであらわした径方向の押圧力によって、第2外導体に対して確実に当接した状態に保たれる。これにより、第1外導体と第2外導体とを径方向において安定して位置決めすることができるので、全ての可動接点部と第2外導体との間の接触抵抗が安定し、シールド性能も安定する。
【0010】
(2)前記筒状本体部には、周方向に間隔を空けた複数本のサイドスリットが形成され、前記筒状本体部のうち周方向に隣り合う一対の前記サイドスリットの間の部位が、前記バネ部として機能し、周方向に隣り合う2つの前記バネ部の間に形成された前記サイドスリットの数は、1本のみであることが好ましい。この構成によれば、1本のサイドスリットが、周方向に隣り合う2つのバネ部を形成するための共用空間として機能するので、サイドスリットの本数は、バネ部の数よりも1つ多い数で済む。これにより、全てのサイドスリットの開口面積を合わせた総開口面積が小さく抑えられるので、サイドスリットを通過する電磁ノイズを低減することができる。
【0011】
(3)(2)において、前記筒状本体部を、周方向において、前記劣弧側領域を含む第1領域と、前記劣弧側領域を含まない第2領域とに区画した上で、前記第1領域には、前記固定接点部と前記可動接点部のうち前記固定接点部のみが配置され、前記第2領域には、前記固定接点部と前記可動接点部のうち前記可動接点部のみが配置されていることが好ましい。この構成によれば、劣弧側領域に可動接点部を配置していないので、サイドスリットの本数を最小数に抑えることができる。
【0012】
(4)(1)~(3)において、前記バネ部が、前記第1外導体の軸線方向における先端側へ片持ち状に延出した形態であり、前記筒状本体部のうち前記バネ部の延出端よりも先端側の位置には、全周に亘って繋がった円形の保護部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、バネ部に対して筒状本体部の先端側から異物が接近しても、バネ部に対する異物の干渉を、保護部によって抑制することができる。
【0013】
(5)(4)において、前記筒状本体部は、前記バネ部の基端部を支持する円筒形の支持部と、前記保護部と、前記支持部と前記保護部とを繋げた形態の連結部とを有しており、前記連結部に、2つの前記固定接点部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、連結部は、保護部を支持部に支持する機能と、固定接点部の形成母体としての機能とを兼ね備えているので、保護部を支持部に支持するための部位と、固定接点部の形成母体としての部位とを、別々に設けるものに比べると、筒状本体部の形状の簡素化を図ることができる。
【0014】
(6)(1)~(3)において、前記第1外導体を前記第1外導体の軸線と平行に視た正面視において、2つの前記固定接点部を対称な位置関係とする対称軸を設定したときに、複数の前記可動接点部が、前記対称軸に関して対称に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第2外導体に対する可動接点部の弾性押圧力が、対称軸に関して対称であるから、第1外導体と第2外導体に対して対称軸と交差する方向の衝撃が作用したときに、第1外導体と第2外導体との位置ずれが生じ難い。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1のシールドコネクタを、
図1~
図8を参照して説明する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施例1において、前後の方向については、
図1~6におけるF方向を前方と定義する。上下の方向については、
図1~3,5,7,8におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、
図1,2,4,6~8におけるR方向を右方と定義する。
【0016】
シールドコネクタは、前後方向に嵌合及び離脱することが可能な第1コネクタ10と第2コネクタ50とを備えている。第1コネクタ10は、全体として前後方向に細長い形状をなす。
図3に示すように、第1コネクタ10は、第1内導体11と、第1誘電体12と、第1外導体13とを組み付けて構成されている。第1内導体11は、筒状をなす雌形の端子である。第1内導体11の後端部には、同軸ケーブル56の芯線57が接続されている。第1内導体11は、第1誘電体12の内部に収容されている。
【0017】
第1外導体13は第1誘電体12の全体を包囲する筒状の部材である。第1外導体13は、筒状をなす金属製のフロント部材14と、筒状をなす金属製のリヤ部材15とを合体させて構成されている。フロント部材14は、円筒形をなす大径部16と、大径部16よりも小径の筒状本体部17とを有する単一部品である。大径部16は、フロント部材14の後端側部位を構成する。大径部16の後端部には、リヤ部材15の前端部が導通可能に固着されている。リヤ部材15の後端部は、同軸ケーブル56のシールド部材(図示省略)に対して導通可能に固着されている。
【0018】
筒状本体部17は、大径部16の段端から前方へ同軸状に延出した筒状の部位であり、フロント部材14及び第1外導体13の前端側部位を構成する。筒状本体部17は、支持部18と保護部19と中間部20とによって構成されている。支持部18は、筒状本体部17の後端部を構成する筒状の部位である。保護部19は、筒状本体部17の前端部を構成する筒状の部位である。第1外導体13(筒状本体部17)を前方から視た正面視において、支持部18と保護部19は円形をなす。正面視における支持部18及び保護部19の円の中心を、軸心21と定義する(
図7,8参照)。支持部18と保護部19は、正面視において軸心21を一致させるように配置されている。
【0019】
以下の説明において、軸心21を通り、且つ前後方向(両コネクタ10,50の嵌合方向と平行な方向)に延びる直線を、第1外導体13及び筒状本体部17の軸線と定義する。正面視において軸心21を中心とする円に沿った方向を、周方向と定義する。正面視において軸心21を通る直線に沿った方向を、径方向と定義する。
【0020】
中間部20は、軸線方向において支持部18と保護部19との間に位置する部位である。中間部20は、後述する固定接点部27と可動接点部31,32を構成する接点構成部として機能する部位である。中間部20には、5本のサイドスリット22,23,24と1本のエンドスリット25とが形成されている。サイドスリット22,23,24とエンドスリット25は、筒状本体部17の内周面から外周面まで貫通している。5本のサイドスリット22,23,24は、周方向に間隔を空けて配置され、全体として軸線に沿うように前後方向に延びている。5本のサイドスリット22,23,24の後端は、前後方向において支持部18の前端に位置する。エンドスリット25は、保護部19の後端に沿って周方向に延びており、5本のサイドスリット22,23,24の前端同士を連通させるように配置されている。
【0021】
5本のサイドスリット22,23,24は、1本の第1サイドスリット22と、左右対称な一対の第2サイドスリット23と、左右対称な一対の第3サイドスリット24とによって構成されている。
図7,8に示すように、正面視において、第1サイドスリット22は、筒状本体部17の最上端に位置する。
図4に示すように、第1サイドスリット22は、軸線と平行に直線状に延びている。一対の第2サイドスリット23は、第1サイドスリット22に対して左右両側に隣り合うように配置されている。一対の第3サイドスリット24は、第2サイドスリット23を挟んで第1サイドスリット22とは反対側に配置されている。
図5,6に示すように、中間部20を径方向に視たときに、第2サイドスリット23と第3サイドスリット24は、僅かに屈曲した形状をなす。
【0022】
中間部20のうち一対の第3サイドスリット24の間の部位を、連結部26と定義する。連結部26は、支持部18の下端部と保護部19の下端部とを繋ぐ部位である。正面視において、連結部26は円弧形をなす。連結部26の周方向の形成範囲は、60°よりも大きい。連結部26には、左右対称な一対の固定接点部27が形成されている。筒状本体部17に形成されている固定接点部27の数は、2つのみである。一対の固定接点部27は、周方向において60°の角度をなすように配置されている。固定接点部27は、中間部20に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、中間部20の外周面から径方向外方へ突出している。固定接点部27は、中間部20(筒状本体部17)に対して相対変位しない部位である。
図7に示すように、正面視において、軸心21を通る上下方向の直線を、対称軸28と定義する。一対の固定接点部27は、対称軸28に関して左右対称な形状であり、且つ対称軸28に関して左右対称に配置されている。
【0023】
中間部20のうち第1サイドスリット22と一対の第2サイドスリット23とエンドスリット25とによって区画された部位は、一対の第1バネ部29を構成している。1本の第1サイドスリット22は、一対の第1バネ部29の形成に寄与しているので、2つの第1バネ部29における共用の空間である。中間部20のうち第2サイドスリット23と一対の第3サイドスリット24とエンドスリット25とによって区画された部位は、一対の第2バネ部30を構成している。1本の第2サイドスリット23は、第1バネ部29と第2バネ部30の形成に寄与しているので、第1バネ部29と第2バネ部30における共用の空間である。1本の第3サイドスリット24は、第2バネ部30と連結部26の形成に寄与しているので、第2バネ部30と連結部26における共用の空間である。
【0024】
一対の第1バネ部29と一対の第2バネ部30は、いずれも、支持部18の前端から前方へ片持ち状に延出した形状である。第1バネ部29と第2バネ部30は、径方向へ変位するように弾性変形し得る部位である。一対の第1バネ部29は、対称軸28に関して左右対称な形状であり、且つ対称軸28に関して左右対称に配置されている。一対の第2バネ部30は、対称軸28に関して左右対称な形状であり、且つ対称軸28に関して左右対称に配置されている。
【0025】
一対の第1バネ部29の延出端部には、夫々、第1可動接点部31が形成されている。第1可動接点部31は、第1バネ部29に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、第1バネ部29の外周面から径方向外方へ突出している。第1バネ部29が弾性変形すると、第1可動接点部31は、連結部26及び固定接点部27に対して径方向へ相対変位する。一対の第2バネ部30の延出端部には、夫々、第2可動接点部32が形成されている。第2可動接点部32は、第2バネ部30に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、第2バネ部30の外周面から径方向外方へ突出している。第2バネ部30が弾性変形すると、第2可動接点部32は、連結部26及び固定接点部27に対して径方向へ相対変位する。
【0026】
一対の第1可動接点部31と一対の第2可動接点部32は、軸線方向(前後方向)において、一対の固定接点部27と同じ位置に配置されている。一対の第1可動接点部31は、対称軸28に関して左右対称な形状であり、且つ対称軸28に関して左右対称に配置されている。一対の第1可動接点部31は、周方向において60°の角度をなすように配置されている。一対の第2可動接点部32は、対称軸28に関して左右対称な形状であり、且つ対称軸28に関して左右対称に配置されている。周方向において、一対の第2可動接点部32は、周方向に隣り合う第1可動接点部31に対して60°の角度をなし、且つ周方向に隣り合う固定接点部27に対して60°の角度をなすように配置されている。即ち、筒状本体部17に形成されている6つの接点部(一対の固定接点部27と一対の第1可動接点部31と一対の第2可動接点部32)は、周方向において、60°の等角度ピッチで配置されている。
【0027】
図7に示すように、筒状本体部17(中間部20)は、周方向において一対の第3サイドスリット24を境界として、劣弧側の第1領域33と優弧側の第2領域34とに区画することができる。第1領域33には、6つの接点部のうち2つ固定接点部27のみが配置されている。第2領域34には、6つの接点部27,31,32のうち4つの可動接点部31,32のみが配置されている。
【0028】
図8に示すように、2本の線分35を、軸心21から一対の固定接点部27を通るように径方向へ直線状に延ばしたときに、筒状本体部17(中間部20)は、2本の線分35によって優弧側領域36と劣弧側領域37とに区画することができる。優弧側領域36は、周方向において300°の角度範囲に亘る領域である。優弧側領域36には、第2領域34の全体が包含される。劣弧側領域37は、周方向において60°の角度範囲の領域である。第1領域33は、劣弧側領域37の全体を包含する。
【0029】
第2コネクタ50は、全体として前後方向に細長い形状をなす。
図3に示すように、第2コネクタ50は、第2内導体51と、第2誘電体53と、第2外導体54とを組み付けて構成されている。第2内導体51は、タブ52を有する雄形の端子である。第2内導体51には、同軸ケーブル(図示省略)の芯線(図示省略)が接続されている。第2内導体51は、第2誘電体53の内部に収容されている。
【0030】
第2外導体54は、第2誘電体53の全体を包囲する筒状の部材である。第2外導体54の先端部は、円筒形をなす嵌合部55として機能する。嵌合部55の内径は、第1バネ部29と第2バネ部30が弾性変形していない自由状態において、2つの固定接点部27と4つの可動接点部31,32とのうち少なくとも3つの接点部に外接する仮想円(図示省略)の内径よりも小さい寸法に設定されている。
【0031】
第1コネクタ10と第2コネクタ50を嵌合すると、第1内導体11と第2内導体51が接続されるとともに、第2外導体54の嵌合部55が、第1外導体13の中間部20に外嵌される。第1外導体13と第2外導体54が嵌合すると、4つのバネ部29,30が径方向内側へ弾性変形した状態で、6つの接点部(一対の固定接点部27と一対の第1可動接点部31と一対の第2可動接点部32)が嵌合部55の内周面に接触する。このとき、4つのバネ部29,30の弾性復元力によって、嵌合部55から4つのバネ部29,30に対して径方向内向きの反力が作用する。これらの反力によって、6つの接点部27,31,32と嵌合部55とが、所定の接触圧によって接続される。
【0032】
図8に示すように、一対の第1可動接点部31においては、第1バネ部29の弾性復元力によって、第2外導体54から第1外導体13に対して一対の第1押圧力41が作用する。この第1押圧力41は、第1可動接点部31から軸心21に向かう径方向内向きの力である。一対の第1押圧力41は、対称軸28に対して斜めの向きの力であ、且つ対称軸28に関して左右対称な力である。したがって、一対の第1押圧力41は、左右方向(対称軸28と直交する方向)においては相殺されるが、上下方向(対称軸28と平行な方向)においては2倍となる。
【0033】
また、一対の第2可動接点部32においては、第2バネ部30の弾性復元力によって、第2外導体54から第1外導体13に対して一対の第2押圧力42が作用する。この第2押圧力42は、第2可動接点部32から軸心21に向かう径方向内向きの力である。一対の第2押圧力42は、対称軸28と直交する向きの力であり、且つ対称軸28に関して左右対称な力である。したがって、一対の第2押圧力42は、相殺される。
【0034】
一対の第1押圧力41と一対の第2押圧力42の合力を、1本の合力ベクトル43と定義する。この合力ベクトル43を、軸心21が起因として径方向外方を指向するように配置すると、合力ベクトル43は、劣弧側領域37内に位置する。合力ベクトル43は、対称軸28と重なるように配置される。一対の固定接点部27は対称軸28に関して左右対称に配置されているので、合力ベクトル43は、2つの固定接点部27の両方を、第2外導体54の内周面に対して確実に押圧する力として働く。2つの固定接点部27は、第1外導体13に対して径方向に相対変位しないので、第1外導体13と第2外導体54は径方向において位置決めされる。
【0035】
本実施例1のシールドコネクタは。第1外導体13と第2外導体54とを備えている。第1外導体13は、円筒形の筒状本体部17と、筒状本体部17に支持された状態で周方向に間隔を空けて配置された複数の接点部27,31,32とを有する。第2外導体54は、円筒形をなし、第1外導体13に対して同心状に配置される。第2外導体54は、複数の接点部27,31,32に対して径方向に接触する。
【0036】
複数の接点部27,31,32は、一対の固定接点部27と、一対の第1可動接点部31と、一対の第2可動接点部32とによって構成されている。固定接点部27は、筒状本体部17に対して径方向への相対移動を規制されている。筒状本体部17に形成される固定接点部27の数は、2つのみである。一対の第1可動接点部31は、筒状本体部17に対して径方向へ弾性変形可能な一対の第1バネ部29に個別に形成されている。一対の第2可動接点部32は、筒状本体部17に対して径方向へ弾性変形可能な一対の第2バネ部30に個別に形成されている。
【0037】
第1バネ部29と第2バネ部30の弾力に起因して第1外導体13と第2外導体54との間に生じる径方向内向きの複数の押圧力41,42の合力を、1本の合力ベクトル43としてあらわす。軸心21を起点として2つの固定接点部27を通る2本の線分35によって区画された領域を、劣弧側領域37と定義する。合力ベクトル43を、第1外導体13及び第2外導体54の軸心21が起点となるように配置したときに、合力ベクトル43は劣弧側領域37内に位置する。
【0038】
この構成によれば、2つの固定接点部27は、複数のバネ部29,30の弾力に起因する合力ベクトル43であらわした径方向の押圧力によって、第2外導体54に対して確実に当接した状態に保たれる。これにより、第1外導体13と第2外導体54とを径方向において安定して位置決めすることができるので、全ての可動接点部31,32と第2外導体54との間の接触抵抗が安定する。即ち、第1外導体13と第2外導体54との間の接触抵抗が安定するので、第1シールド性能が安定する。
【0039】
筒状本体部17には、周方向に間隔を空けた複数本のサイドスリット22,23,24が形成されている。筒状本体部17のうち周方向に隣り合う第1サイドスリット22と第2サイドスリット23との間の部位は、第1バネ部29として機能する。筒状本体部17のうち周方向に隣り合う第2サイドスリット23と第3サイドスリット24との間の部位が、第2バネ部30として機能する。周方向に隣り合う2つの第1バネ部29の間に形成された第1サイドスリット22の数は、1本のみである。周方向に隣り合う第1バネ部29と第2バネ部30との間に形成された第2サイドスリット23の数は、1本のみである。
【0040】
本実施例1とは異なり、1つのバネ部の両側に、各バネ部に対して専用の一対のサイドスリットを形成した場合には、サイドスリットの本数がバネ部の数の2倍の数になる。この場合、全てのサイドスリットの開口面積を合わせた総開口面積が大きくなるため、サイドスリットを通過する電磁ノイズの量が多くなる。これに対し、本実施例1では、1本の第1サイドスリット22が、周方向に隣り合う2つの第1バネ部29を形成するための共用空間として機能する。同様に、1本の第2サイドスリット23が、周方向に隣り合う第1バネ部29と第2バネ部30とを形成するための共用空間として機能する。したがって、第1サイドスリット22、第2サイドスリット23及び第3サイドスリット24の総本数(5本)は、第1バネ部29及び第2バネ部30の総数(4つ)よりも1つ多い数だけで済む。これにより、第1~第3の全てのサイドスリット22,23,24の開口面積を合わせた総開口面積が小さく抑えられるので、第1~第3サイドスリット22,23,24を通過する電磁ノイズを低減することができる。
【0041】
図8に示すように、筒状本体部17は、周方向において、劣弧側領域37を含む第1領域33と、劣弧側領域37を含まない第2領域34とに区画することができる。第1領域33には、6つの接点部27,31,32のうち一対の固定接点部27のみが配置されており、第1可動接点部31と第2可動接点部32は配置されていない。第2領域34には、6つの接点部27,31,32のうち一対の第1可動接点部31と一対の第2可動接点部32のみが配置されており、固定接点部27は配置されていない。
【0042】
本実施例1とは異なり劣弧側領域37に可動接点部を配置した場合は、全ての可動接点部を第2領域34のみに配置した場合に比べると、サイドスリットの本数が少なくとも1本多くなる。これに対し、本実施例1では、劣弧側領域37に第1可動接点部31と第2可動接点部32を配置していないので、第1~第3サイドスリット22,23,24の総本数を最小数の5本に抑えることができた。
【0043】
第1バネ部29と第2バネ部30は、第1外導体13の軸線方向における先端側へ片持ち状に延出した形態である。筒状本体部17のうち第1バネ部29の延出端及び第2バネ部30の延出端よりも先端側の位置には、全周に亘って繋がった円形の保護部19が形成されている。この構成によれば、第1バネ部29や第2バネ部30に対して筒状本体部17の先端側から異物が接近しても、第1バネ部29及び第2バネ部30に対する異物の干渉を、保護部19によって防止することができる。
【0044】
筒状本体部17は、支持部18と、保護部19と、連結部26とを有する。支持部18は、円筒形をなし、第1バネ部29の基端部と第2バネ部30の基端部を支持する部位である。連結部26は、支持部18と保護部19とを繋げた形態の部位である。連結部26には、2つの固定接点部27が形成されている。この構成によれば、連結部26は、保護部19を支持部18に支持する機能と、固定接点部27の形成母体としての機能とを兼ね備えている。したがって、保護部19を支持部18に支持するための部位と、固定接点部27の形成母体としての部位とを、別々に設けるものに比べると、筒状本体部17の形状の簡素化を図ることができる。
【0045】
第1外導体13を、第1外導体13の軸線と平行に視た正面視において、2つの固定接点部27を対称な位置関係とする対称軸28を設定する。このとき、一対の第1可動接点部31と一対の第2可動接点部32は、対称軸28に関して対称に配置されている。この構成によれば、第2外導体54に対する第1可動接点部31及び第2可動接点部32の弾性押圧力が、対称軸28に関して対称であるから、軸線と直角に視た正面視において、合力ベクトル43が対称軸28と重なる。したがって、第1外導体13と第2外導体54に対して対称軸28と交差する径方向の衝撃が作用したときに、第1外導体13と第2外導体54との位置ずれが生じ難い。
【0046】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
上記実施例1では、第1外導体を第2外導体の内周側に配置したが、第1外導体を第2外導体の内周側に配置し、可動接点部と固定接点部が第2外導体の外周面に接触するようにしてもよい。この場合、径方向内向きの押圧力は、第2外導体に対するバネ部の弾力である。
一部の可動接点部を、劣弧側領域の範囲内に配置してもよい。
可動接点部の数は、3以下でもよく、5つ以上でもよい。
複数の可動接点部は、固定接点部の対称軸に関して、非対称な形態で配置されていてもよい。
1つのバネ部の両側に、各バネ部に対して専用の一対のサイドスリットを形成し、周方向に隣の合うバネ部の間に2本のサイドスリットを配置するようにしてもよい。
バネ部は、軸線方向の両端部が筒状本体部に繋がった形態であってもよい。
筒状本体部の先端部に保護部を形成せず、バネ部の延出端が筒状本体部の先端部に配置されていてもよい。
保護部を支持部に支持するための部位と、固定接点部の形成母体としての部位とを、別々に設けてもよい。
複数の連結部が、周方向に間隔を空けて配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…第1コネクタ
11…第1内導体
12…第1誘電体
13…第1外導体
14…フロント部材
15…リヤ部材
16…大径部
17…筒状本体部
18…支持部
19…保護部
20…中間部
21…軸心
22…第1サイドスリット(サイドスリット)
23…第2サイドスリット(サイドスリット)
24…第3サイドスリット(サイドスリット)
25…エンドスリット
26…連結部
27…固定接点部(接点部)
28…対称軸
29…第1バネ部(バネ部)
30…第2バネ部(バネ部)
31…第1可動接点部(接点部、可動接点部)
32…第2可動接点部(接点部、可動接点部)
33…第1領域
34…第2領域
35…線分
36…優弧側領域
37…劣弧側領域
41…第1押圧力(押圧力)
42…第2押圧力(押圧力)
43…合力ベクトル
50…第2コネクタ
51…第2内導体
52…タブ
53…第2誘電体
54…第2外導体
55…嵌合部
56…同軸ケーブル
57…芯線