(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169009
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/05 20060101AFI20241128BHJP
H01R 24/38 20110101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R13/05 Z
H01R24/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086175
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雅美
(72)【発明者】
【氏名】田中 真二
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】康 麗萍
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄之
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB59
5E223AC50
5E223BA12
5E223BA15
5E223CB22
5E223CB26
5E223CB38
5E223CC09
5E223DA42
5E223EB04
5E223EB12
5E223EB23
5E223GA08
5E223GA53
(57)【要約】
【課題】シールド性能の向上を図る。
【解決手段】シールドコネクタは、径方向への弾性変形が可能な第1バネ部31と第2バネ部32を有する筒状の第1外導体14と、第1バネ部31及び第2バネ部32に対して径方向に接触する筒状の第2外導体54とを備え、第1バネ部31と第2バネ部32は、第1外導体14に形成した軸線方向の第1サイドスリット24,第2サイドスリット25及び第3サイドスリット26によって区画された部位であり、第1バネ部31には、第1バネ部31の曲げ剛性を高める第1可動側補強部35が形成され、第2バネ部32には、第1バネ部32の曲げ剛性を高める第2可動側補強部38が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向への弾性変形が可能なバネ部を有する筒状の第1外導体と、
前記バネ部に対して径方向に接触する筒状の第2外導体とを備え、
前記バネ部は、前記第1外導体に形成した軸線方向のサイドスリットによって区画された部位であり、
前記バネ部には、前記バネ部の曲げ剛性を高める補強部が形成されているシールドコネクタ。
【請求項2】
前記バネ部は、前記第1外導体を構成する筒状支持部から前記軸線方向へ片持ち状に延出した形状をなし、
前記バネ部の先端部に、前記第2外導体に接触する接点部が形成されており、
前記補強部は、前記バネ部のうち前記筒状支持部に繋がる基端部を含む領域に配置されている請求項1に記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記補強部は、前記軸線方向において、前記基端部から、前記筒状支持部における前記バネ部との境界部に亘って形成されている請求項2に記載のシールドコネクタ。
【請求項4】
前記バネ部は、前記基端部の幅寸法が前記先端部の幅寸法よりも大きく設定された形態である請求項2又は請求項3に記載のシールドコネクタ。
【請求項5】
前記補強部は、前記第1外導体の外周面から径方向外方へ突出した形状である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシールドコネクタ。
【請求項6】
前記補強部は、前記基端部の幅方向中央部を径方向に突出させた形状であり、
前記基端部のうち前記サイドスリットに沿った側縁部は、前記補強部を叩き出し加工するときに補強用被保持部として機能し、
前記サイドスリットのうち前記基端部を区画する基端スリットが、前記第1外導体の軸線と平行に延びている請求項2又は請求項3に記載のシールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールドコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同軸コネクタが開示されている。このものは、同軸ケーブルの外部導体に基端部が圧着される円筒状のシェルを有している。シェルの先端部には、軸方向に延びるスリットが周方向に等間隔に並んで形成されている。シェルのうちスリットの間の部位が、弾性変形可能なバネ部として機能する。シェルを接続対象であるリセプタクルに挿入すると、バネ部がリセプタクルの内面に対して弾性接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の同軸コネクタにおいて、シールド性能を高めるためには、バネ部の数を増やし、シェルとリセプタクルとの間に流れる電流の総和量を増大させることが考えられる。しかし、バネ部の数を増やすと、各バネ部の周方向の幅寸法が小さくなり、1つのバネの弾力が低下するので、各接点における接触抵抗が増大する。そのため、バネ部の数を増やしても、接触抵抗を効果的に低減することは困難である。
【0005】
本開示のシールドコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シールド性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のシールドコネクタは、
径方向への弾性変形が可能なバネ部を有する筒状の第1外導体と、
前記バネ部に対して径方向に接触する筒状の第2外導体とを備え、
前記バネ部は、前記第1外導体に形成した軸線方向のサイドスリットによって区画された部位であり、
前記バネ部には、前記バネ部の曲げ剛性を高める補強部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シールド性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の第1コネクタを斜め上前方から視た斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す第1コネクタを斜め下前方から視た斜視図である。
【
図3】
図3は、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合した状態をあわす側断面図である。
【
図7】
図7は、接続状態の第1外導体と第2外導体を接点部において切断した正断面図である。
【
図8】
図8は、接続状態の第1外導体と第2外導体を補強部において切断した正断面図である。
【
図9】
図9は、第1外導体を円筒形に成形する前の展開状態をあらわす平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の形態例を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
本開示のシールドコネクタは、
(1)径方向への弾性変形が可能なバネ部を有する筒状の第1外導体と、前記バネ部に対して径方向に接触する筒状の第2外導体とを備え、前記バネ部は、前記第1外導体に形成した軸線方向のサイドスリットによって区画された部位であり、前記バネ部には、前記バネ部の曲げ剛性を高める補強部が形成されている。この構成によれば、バネ部の曲げ剛性が補強部によって高められているので、バネ部が径方向へ弾性変形したときにバネ部に生じる応力が大きい。これにより、第1外導体と第2外導体との間の接触抵抗が低減されるので、シールド性能を向上させることができる。
【0010】
(2)(1)において、前記バネ部は、前記第1外導体を構成する筒状支持部から前記軸線方向へ片持ち状に延出した形状をなし、前記バネ部の先端部に、前記第2外導体に接触する接点部が形成されており、前記補強部は、前記バネ部のうち前記筒状支持部に繋がる基端部を含む領域に配置されていることが好ましい。この構成によれば、バネ部の弾性変形時の支点となる基端部を、補強部によって補強したので、バネ部の弾力を効果的に高めることができる。
【0011】
(3)(2)において、前記補強部は、前記軸線方向において、前記基端部から、前記筒状支持部における前記バネ部との境界部に亘って形成されていることが好ましい。バネ部が弾性変形するときには、バネ部の基端部だけでなく、筒状支持部におけるバネ部との境界部も撓む。補強部は、バネ部の基端部だけでなく筒状支持部の境界部の剛性も高めているので、バネ部の弾力を効果的に高めることができる。
【0012】
(4)(2)又は(3)において、前記バネ部は、前記基端部の幅寸法が前記先端部の幅寸法よりも大きく設定された形態であることが好ましい。この構成によれば、バネ部の弾力を効果的に高めることができる。
【0013】
(5)(1)~(3)において、前記補強部は、前記第1外導体の外周面から径方向外方へ突出した形状であることが好ましい。第1外導体は、バネ部と補強部が形成されている平板状の金属板材を、円柱形の芯金に巻き付けることによって成形される。補強部は径方向外方へ突出しているので、芯金には、補強部との干渉を回避するための凹部を形成する必要がない。
【0014】
(6)(2)又は(3)において、前記補強部は、前記基端部の幅方向中央部を径方向に突出させた形状であり、前記基端部のうち前記サイドスリットに沿った側縁部は、前記補強部を叩き出し加工するときに補強用被保持部として機能し、前記サイドスリットのうち前記基端部を区画する基端スリットが、前記第1外導体の軸線と平行に延びていることが好ましい。この構成によれば、補強用被保持部の側縁が軸線と平行をなすので、補強部を叩き出し加工する工程において、補強用被保持部を治具によって保持し易い。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1のシールドコネクタを、
図1~
図9を参照して説明する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施例1において、前後の方向については、
図1~6,9におけるF方向を前方と定義する。上下の方向については、
図1~3,5,7,8におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、
図1,2,4,6~8におけるR方向を右方と定義する。
【0016】
シールドコネクタは、前後方向に嵌合及び離脱することが可能な第1コネクタ10と第2コネクタ50とを備えている。第1コネクタ10は、全体として前後方向に細長い形状をなす。
図3に示すように、第1コネクタ10は、第1内導体11と、第1誘電体12と、第1外導体14とを組み付けて構成されている。第1内導体11は、筒状をなす雌形の端子である。第1内導体11の後端部には、同軸ケーブル56の芯線57が接続されている。第1内導体11は、第1誘電体12の内部に収容されている。
【0017】
第1外導体14は第1誘電体12の全体を包囲する筒状の部材である。第1外導体14は、筒状をなす金属製のフロント部材15と、筒状をなす金属製のリヤ部材16とを合体させて構成されている。フロント部材15は、円筒形をなす大径部17と、大径部17よりも小径の筒状本体部18とを有する単一部品である。大径部17は、フロント部材15の後端側部位を構成する部位であり、リヤ部材16の前端部に固着されている。リヤ部材16の後端部は、同軸ケーブル56のシールド部材(編組線)に対して導通可能に固着されている。
【0018】
筒状本体部18は、大径部17から前方へ同軸状に延出した筒状の部位であり、フロント部材15及び第1外導体14の前端側部位を構成する。筒状本体部18は、筒状支持部19と保護部20と接点構成部21とによって構成されている。筒状支持部19は、筒状本体部18の後端部を構成する筒状の部位である。保護部20は、筒状本体部18の前端部を構成する筒状の部位である。第1外導体14(筒状本体部18)を前方から視た正面視において、筒状支持部19と保護部20は円形をなす。正面視における筒状支持部19及び保護部20の円の中心を、軸心22と定義する(
図7,8参照)。筒状支持部19と保護部20は、正面視において軸心22を一致させるように配置されている。
【0019】
以下の説明において、軸心22を通り、且つ前後方向(両コネクタ10,50の嵌合方向と平行な方向)に延びる直線を、第1外導体14及び筒状本体部18の軸線と定義する。正面視において軸心22を中心とする円に沿った方向を、周方向と定義する。正面視において軸心22を通る直線に沿った方向を、径方向と定義する。
【0020】
接点構成部21は、軸線方向において筒状支持部19と保護部20との間に位置する部位である。接点構成部21は、後述する固定接点部40Pと可動接点部31P,32Pを構成する部位である。接点構成部21には、5本のサイドスリット24,25,26と1本のエンドスリット27とが形成されている。サイドスリット24,25,26とエンドスリット27は、筒状本体部18の内周面から外周面まで貫通している。5本のサイドスリット24,25,26は、周方向に間隔を空けて配置され、全体として軸線に沿うように前後方向に延びている。エンドスリット27は、保護部20の後端に沿って周方向に延びており、5本のサイドスリット24,25,26の前端同士を連通させるように配置されている。
【0021】
5本のサイドスリット24,25,26は、1本の第1サイドスリット24と、左右対称な一対の第2サイドスリット25と、左右対称な一対の第3サイドスリット26とによって構成されている。
図7,8に示すように、正面視において、第1サイドスリット24は、筒状本体部18の最上端に位置し、軸線と平行に直線状に延びている。第1サイドスリット24の前端は、エンドスリット27と連通している。第1サイドスリット24の第1基端スリット24Rの基端(後端)は、筒状支持部19の前端縁に臨んでいる。
【0022】
一対の第2サイドスリット25は、第1サイドスリット24に対して左右両側に隣り合うように配置されている。第2サイドスリットを径方向に視たときに、第2サイドスリット25は僅かに屈曲した形状をなしている。第2サイドスリット25の前端は、エンドスリット27と連通している。第2サイドスリット25の基端(後端)は、筒状支持部19の前端縁に臨んでいる。第2サイドスリット25のうち筒状支持部19の前端に臨む第2基端スリット25Rは、軸線と平行に延びている。
【0023】
一対の第3サイドスリット26は、第2サイドスリット25を挟んで第1サイドスリット24とは反対側に配置されている。第3サイドスリット26を径方向に視たときに、第3サイドスリット26は僅かに屈曲した形状をなす。第3サイドスリット26の前端は、エンドスリット27と連通している。第3サイドスリット26の基端(後端)は、筒状支持部19の前端縁に臨んでいる。第3サイドスリット26のうち筒状支持部19の前端に臨む第3基端スリット26Rは、軸線と平行に延びている。
【0024】
接点構成部21のうち第1サイドスリット24と一対の第2サイドスリット25とエンドスリット27とによって区画された部位は、一対の第1バネ部31を構成している。1本の第1サイドスリット24は、一対の第1バネ部31の形成に寄与する共用の空間である。一対の第1バネ部31は、筒状支持部19の前端から前方へ片持ち状に延出した形状である。第1バネ部31は、径方向へ変位するように弾性変形し得る部位である。
図7に示すように、正面視において、軸心22を通る上下方向の直線を、対称軸28と定義する。一対の第1バネ部31の形状と位置は、対称軸28に関して左右対称である。
【0025】
図9に示すように、第1バネ部31は、第1基端部31Rと、第1中間部31Cと、第1先端部31Fとを有する。第1基端部31Rは、筒状支持部19の前端縁から前方へ延出した部位である。第1基端部31Rの周方向の幅寸法31RWは、第1基端部31Rの後端から前端まで一定である。第1中間部31Cは、第1基端部31Rの前端から前方へ延出した部位であり、後端から前端に向かって次第に幅狭となる台形をなしている。第1先端部31Fは、第1中間部31Cの前端から前方へ延出した部位である。第1先端部31Fの周方向における最大幅寸法31FWは、第1基端部31Rの幅寸法31RWよりも小さい。第1先端部31Fには、第1可動接点部31Pが形成されている。第1可動接点部31Pは、第1バネ部31に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、第1バネ部31の外周面から径方向外方へ突出している。第1可動接点部31Pは、第1バネ部31と一体的に弾性変位する。
【0026】
接点構成部21のうち第2サイドスリット25と第3サイドスリット26とエンドスリット27とによって区画された部位は、第2バネ部32を構成している。1本の第2サイドスリット25は、第1バネ部31と第2バネ部32の形成に寄与する共用の空間である。1本の第3サイドスリット26は、第2バネ部32と後述する弧状支持部40の形成に寄与する共用の空間である。一対の第2バネ部32は、筒状支持部19の前端から前方へ片持ち状に延出した形状である。第2バネ部32は、径方向へ変位するように弾性変形し得る部位である。一対の第2バネ部32の形状と位置は、対称軸28に関して左右対称である。
【0027】
図9に示すように、第2バネ部32は、第2基端部32Rと、第2中間部32Cと、第2先端部32Fとを有する。第2基端部32Rは、筒状支持部19の前端縁から前方へ延出した部位である。第2基端部32Rの周方向の幅寸法32RWは、第2基端部32Rの後端から前端まで一定である。第2中間部32Cは、第2基端部32Rの前端から前方へ延出した部位であり、後端から前端に向かって次第に幅狭となる台形をなしている。第2先端部32Fは、第2中間部32Cの前端から前方へ延出した部位である。第2先端部32Fの周方向における最大幅寸法32FWは、第2基端部32Rの幅寸法32RWよりも小さい。第2バネ部32の先端部には、第2可動接点部32Pが形成されている。第2可動接点部32Pは、第2バネ部32に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、第2バネ部32の外周面から径方向外方へ突出している。第2可動接点部32Pは第2バネ部32と一体的に弾性変位する。
【0028】
筒状支持部19のうち第1バネ部31の第1基端部31Rに繋がる部位を、第1境界部34と定義する。筒状本体部18には、第1バネ部31の弾力を高めるための第1可動側補強部35が形成されている。第1可動側補強部35は、径方向外方へ突出している。径方向に視たときの第1可動側補強部35の形状は、長辺を軸線方向と平行に向けた長方形である。第1可動側補強部35は、第1基端部31Rの前端から後端に亘って形成されている。第1基端部31Rにおける第1可動側補強部35の軸線方向の形成範囲は、第1境界部34における第1可動側補強部35の軸線方向の形成範囲よりも大きい。
【0029】
第1可動側補強部35は、第1基端部31Rと第1境界部34とに亘る部分に叩き出し加工を施すことによって形成されている。第1基端部31Rのうち第1可動側補強部35の長辺、第1基端スリット24R及び第2基端スリット25Rに沿った側縁部は、一対の第1補強用被保持部36として機能する。第1補強用被保持部36は、長辺を軸線方向と平行に向けた長方形をなす。
【0030】
筒状支持部19のうち第2バネ部32の第2基端部32Rに繋がる部位を、第2境界部37と定義する。筒状本体部18には、第2バネ部32の弾力を高めるための第2可動側補強部38が形成されている。第2可動側補強部38は、径方向外方へ突出している。径方向に視たときの第2可動側補強部38の形状は、長辺を軸線方向と平行に向けた長方形である。第2可動側補強部38は、第2基端部32Rの前端から後端に亘って形成されている。第2基端部32Rにおける第2可動側補強部38の軸線方向の形成範囲は、第2境界部37における第2可動側補強部38の軸線方向の形成範囲よりも大きい。
【0031】
第2可動側補強部38は、第2基端部32Rと第2境界部37とに亘る部分に叩き出し加工を施すことによって形成されている。第2基端部32Rのうち第2可動側補強部38の長辺、第2基端スリット25R及び第3スリットに沿った側縁部は、一対の第2補強用被保持部39として機能する。第2補強用被保持部39は、長辺を軸線方向と平行に向けた長方形をなす。
【0032】
接点構成部21のうち一対の第3サイドスリット26の間の部位を、弧状支持部40と定義する。弧状支持部40は、筒状支持部19の前端縁の下端部と、保護部20の後端縁の下端部とを繋ぐ部位である。正面視において、弧状支持部40は円弧形をなす。弧状支持部40の周方向の形成範囲は、60°よりも大きい。
【0033】
弧状支持部40は、幅狭部41と、台形部42と、幅広部43とによって構成されている。幅狭部41は、筒状支持部19の前端縁から前方へ延出した部位である。幅狭部41の周方向の幅寸法は、幅狭部41の前端から後端に亘って一定である。軸線方向における幅狭部41の形成領域は、第1バネ部31及び第2基端部32Rと同じ領域である。台形部42は、幅狭部41の前端から前方へ延出した部位である。台形部42を径方向に視た形状は、等脚台形である。台形部42の幅寸法は、台形部42の後端から前端に向かって次第に小さくなっている。軸線方向における台形部42の形成領域は、第1中間部31C及び第2中間部32Cと同じ領域である。幅広部43は、台形部42の前端から前方へ延出した部位である。幅広部43の幅寸法は、幅広部43の前端から後端に至るまで一定である。軸線方向における幅広部43の形成領域は、第1先端部31F及び第2先端部32Fと同じ領域である。
【0034】
弧状支持部40には、対称軸28に関して左右対称な一対の固定接点部40Pが形成されている。一対の固定接点部40Pは、周方向において60°の角度をなすように配置されている。固定接点部40Pは、弧状支持部40に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、弧状支持部40の外周面から径方向外方へ突出している。固定接点部40Pは、接点構成部21(筒状本体部18)に対して相対変位しない部位である。固定接点部40Pは、軸線方向に細長く延びた形状をなす。固定接点部40Pは、幅広部43と台形部42とに亘って形成されている。
【0035】
接点構成部21には、固定側補強部44が形成されている。固定側補強部44は、幅狭部41と弧状支持部40の前端部とに亘る部分に叩き出し加工を施すことによって形成されている。固定側補強部44は、径方向外方へ突出している。径方向に視たときの固定側補強部44の形状は、長辺を軸線方向に向けた長方形である。軸線方向において、固定側補強部44の形成範囲は、可動側補強部の形成範囲と同じ範囲である。固定側補強部44は、第1可動側補強部35及び第2可動側補強部38と同様、第1基端スリット24Rの後端、第2基端スリット25Rの後端及び第3基端スリット26Rの後端を結ぶ周方向の仮想線(図示省略)を横切るように配置されている。
【0036】
周方向において、上記した一対の固定接点部40Pの少なくとも一部又は全体は、固定側補強部44の長辺に沿って前後方向に延びる両側縁よりも第3サイドスリット26側に位置している。
図9に示すように、固定接点部40Pと固定側補強部44との間隔が最短となる最短直線経路45は、筒状本体部18の軸線に対して斜め方向である。したがって、固定接点部40Pの後端と固定側補強部44の前端との間の軸線方向における最短距離に比べると、最短直線経路45は長く確保されている。最短直線経路45が長く確保されていることにより、固定接点部40Pや固定側補強部44を叩き出し加工する際に、治具によって弧状支持部40を支持し易くなっている。
【0037】
第2コネクタ50は、全体として前後方向に細長い形状をなす。
図3に示すように、第2コネクタ50は、第2内導体51と、第2誘電体53と、第2外導体54とを組み付けて構成されている。第2内導体51は、タブ52を有する雄形の端子である。第2内導体51には、同軸ケーブル(図示省略)の芯線(図示省略)が接続されている。第2内導体51は、第2誘電体53の内部に収容されている。
【0038】
第2外導体54は、第2誘電体53の全体を包囲する筒状の部材である。第2外導体54の先端部は、円筒形をなす嵌合部55として機能する。嵌合部55の内径は、第1バネ部31と第2バネ部32が弾性変形していない自由状態において、2つの固定接点部40Pと4つの可動接点部31P,32Pのうち少なくとも3つの接点部31P,32P,40Pに外接する仮想円(図示省略)の内径よりも小さい寸法に設定されている。
【0039】
第1コネクタ10と第2コネクタ50を嵌合すると、第1内導体11と第2内導体51が接続されるとともに、第2外導体54の嵌合部55が、第1外導体14の接点構成部21に外嵌される。第1外導体14と第2外導体54が嵌合すると、4つのバネ部31,32が径方向内側へ弾性変形した状態で、6つの接点部(一対の固定接点部40Pと一対の第1可動接点部31Pと一対の第2可動接点部32P)が嵌合部55の内周面に接触する。このとき、4つのバネ部31,32の弾性復元力によって、嵌合部55から4つのバネ部31,32に対して径方向内向きの反力が作用する。これらの反力によって、6つの接点部31P,32P,40Pと嵌合部55とが、所定の接触圧によって接続される。
【0040】
第1バネ部31の第1基端部31Rと第1境界部34は、第1バネ部31が径方向へ弾性変形するときの撓みの支点となる部位である。この第1基端部31Rと第1境界部34は、第1可動側補強部35によって曲げ剛性が高められている。第1バネ部31が径方向に弾性変形したときに、第1可動接点部31Pと第2外導体54が高い接触圧で当接する。第2バネ部32の第2基端部32Rと第2境界部37は、第2バネ部32が径方向へ弾性変形するときの撓みの支点となる部位である。この第2基端部32Rと第2境界部37は、第2可動側補強部38によって曲げ剛性が高められている。第2バネ部32が径方向に弾性変形したときに、第2可動接点部32Pと第2外導体54が高い接触圧で当接する。これにより、第1外導体14と第2外導体54との間の接触抵抗が低減されるので、シールド性能が良好となる。
【0041】
本実施例1のシールドコネクタは、筒状の第1外導体14と筒状の第2外導体54とを備えている。第1外導体14は、径方向への弾性変形が可能な第1バネ部31と第2バネ部32を有している。第2外導体54は、第1バネ部31と第2バネ部32に対して径方向に接触する。第1バネ部31は、第1外導体14に形成した軸線方向の第1サイドスリット24と第2サイドスリット25によって区画された部位である。第1バネ部31には、第1バネ部31の曲げ剛性を高める第1可動側補強部35が形成されている。第2バネ部32は、第1外導体14に形成した軸線方向の第2サイドスリット25及び第3サイドスリット26によって区画された部位である。第2バネ部32には、第2バネ部32の曲げ剛性を高める第2可動側補強部38が形成されている。
【0042】
この構成によれば、第1バネ部31の曲げ剛性が第1可動側補強部35によって高められ、第2バネ部32の曲げ剛性が第2可動側補強部38によって高められている。第1バネ部31と第2バネ部32が径方向へ弾性変形したときに、第1バネ部31と第2バネ部32に生じる応力が大きい。これにより、第1外導体14と第2外導体54との間の接触抵抗が低減されるので、シールド性能を向上させることができる。
【0043】
第1バネ部31と第2バネ部32は、第1外導体14を構成する筒状支持部19から軸線方向へ片持ち状に延出した形状をなす。第1バネ部31の第1先端部31Fには、第2外導体54に接触する第1可動接点部31Pが形成されている。第1可動側補強部35は、第1バネ部31のうち筒状支持部19に繋がる第1基端部31Rを含む領域に配置されている。第1バネ部31の弾性変形時の支点となる第1基端部31Rを、第1可動側補強部35によって補強したので、第1バネ部31の弾力を効果的に高めることができる。第2バネ部32の第2先端部32Fには、第2外導体54に接触する第2可動接点部32Pが形成されている。第2可動側補強部38は、第2バネ部32のうち筒状支持部19に繋がる第2基端部32Rを含む領域に配置されている。第2バネ部32の弾性変形時の支点となる第2基端部32Rを、第2可動側補強部38によって補強したので、第2バネ部32の弾力を効果的に高めることができる。
【0044】
第1可動側補強部35は、軸線方向において、第1基端部31Rから、筒状支持部19における第1バネ部31との境界部である第1境界部34に亘って形成されている。第1バネ部31が弾性変形するときには、第1基端部31Rだけでなく、筒状支持部19における第1境界部34も撓む。第1可動側補強部35は、第1基端部31Rだけでなく第1境界部34の剛性も高めているので、第1バネの弾力を効果的に高めることができる。
【0045】
第2可動側補強部38は、軸線方向において、第2基端部32Rから、筒状支持部19における第2バネ部32との境界部である第2境界部37に亘って形成されている。第2バネ部32が弾性変形するときには、第2基端部32Rだけでなく、筒状支持部19における第2境界部37も撓む。第2可動側補強部38は、第2基端部32Rだけでなく第2境界部37の剛性も高めているので、第2バネ部32の弾力を効果的に高めることができる。
【0046】
第1基端部31Rの幅寸法31RWは、第1先端部31Fの幅寸法31FWよりも大きく設定されているので、第1バネ部31の弾力が効果的に高められている。第2基端部32Rの幅寸法32RWは、第2先端部32Fの幅寸法32FWよりも大きく設定されているので、第2バネ部32の弾力が効果的に高められている。
【0047】
第1可動側補強部35と第2可動側補強部38は、第1外導体14の外周面から径方向外方へ突出した形状である。第1外導体14は、第1バネ部31と第2バネ部32と第1可動側補強部35と第2可動側補強部38が形成されている平板状の金属板材を、円柱形の芯金(図示省略)に巻き付けることによって成形される。第1可動側補強部35と第2可動側補強部38は径方向外方へ突出しているので、芯金には、第1可動側補強部35及び第2可動側補強部38との干渉を回避するための凹部を形成する必要がない。
【0048】
第1可動側補強部35は、第1基端部31Rの幅方向中央部を径方向に突出させた形状である。第1基端部31Rのうち第1サイドスリット24と第2サイドスリット25沿った側縁部は、第1可動側補強部35を叩き出し加工するときに第1補強用被保持部36として機能する。第1サイドスリット24のうち第1基端部31Rを区画する第1基端スリット24Rと、第2サイドスリット25のうち第1基端部31Rを区画する第2基端スリット25Rが、第1外導体14の軸線と平行に延びている。第1補強用被保持部36の側縁が軸線と平行をなすので、第1可動側補強部35を叩き出し加工する工程において、第1補強用被保持部36を治具によって保持し易い。
【0049】
第2可動側補強部38は、第2基端部32Rの幅方向中央部を径方向に突出させた形状である。第2基端部32Rのうち第2サイドスリット25と第3サイドスリット26沿った側縁部は、第2可動側補強部38を叩き出し加工するときに第2補強用被保持部39として機能する。第2サイドスリット25のうち第2基端部32Rを区画する第2基端スリット25Rと、第3サイドスリット26のうち第2基端部32Rを区画する第3基端スリット26Rが、第1外導体14の軸線と平行に延びている。第2補強用被保持部39の側縁が軸線と平行をなすので、第2可動側補強部38を叩き出し加工する工程において、第2補強用被保持部39を治具によって保持し易い。
【0050】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
補強部は、バネ部の基端部を含まない領域のみに配置してもよい。
軸線方向における補強部の形成範囲は、筒状支持部におけるバネ部との境界部を含まない範囲であってもよい。
補強部は、筒状支持部の内面よりも径方向内方へ突出した形状であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…第1コネクタ
11…第1内導体
12…第1誘電体
14…第1外導体
15…フロント部材
16…リヤ部材
17…大径部
18…筒状本体部
19…筒状支持部
20…保護部
21…接点構成部
22…軸心
24…第1サイドスリット(サイドスリット)
24R…第1基端スリット(基端スリット)
25…第2サイドスリット(サイドスリット)
25R…第2基端スリット(基端スリット)
26…第3サイドスリット(サイドスリット)
26R…第3基端スリット(基端スリット)
27…エンドスリット
28…対称軸
31…第1バネ部(バネ部)
31C…第1中間部
31F…第1先端部(先端部)
31FW…第1先端部の最大幅寸法
31P…第1可動接点部(接点部)
31R…第1基端部(基端部)
31RW…第1基端部の幅寸法
32…第2バネ部(バネ部)
32C…第2中間部
32F…第2先端部(先端部)
32FW…第2先端部の最大幅寸法
32P…第2可動接点部(接点部)
32R…第2基端部(基端部)
32RW…第2基端部の幅寸法
34…第1境界部(境界部)
35…第1可動側補強部(補強部)
36…第1補強用被保持部(補強用被保持部)
37…第2境界部(境界部)
38…第2可動側補強部(補強部)
39…第2補強用被保持部(補強用被保持部)
40…弧状支持部
40P…固定接点部
41…幅狭部
42…台形部
43…幅広部
44…固定側補強部
45…最短直線経路
50…第2コネクタ
51…第2内導体
52…タブ
53…第2誘電体
54…第2外導体
55…嵌合部
56…同軸ケーブル
57…芯線
【手続補正書】
【提出日】2024-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
弧状支持部40は、幅狭部41と、台形部42と、幅広部43とによって構成されている。幅狭部41は、筒状支持部19の前端縁から前方へ延出した部位である。幅狭部41の周方向の幅寸法は、幅狭部41の前端から後端に亘って一定である。軸線方向における幅狭部41の形成領域は、第1バネ部31及び第2基端部32Rと同じ領域である。台形部42は、幅狭部41の前端から前方へ延出した部位である。台形部42を径方向に視た形状は、等脚台形である。台形部42の幅寸法は、台形部42の後端から前端に向かって次第に大きくなっている。軸線方向における台形部42の形成領域は、第1中間部31C及び第2中間部32Cと同じ領域である。幅広部43は、台形部42の前端から前方へ延出した部位である。幅広部43の幅寸法は、幅広部43の前端から後端に至るまで一定である。軸線方向における幅広部43の形成領域は、第1先端部31F及び第2先端部32Fと同じ領域である。