(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169012
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】シールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/05 20060101AFI20241128BHJP
H01R 24/38 20110101ALI20241128BHJP
H01R 24/40 20110101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R13/05 Z
H01R24/38
H01R24/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086178
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雅美
(72)【発明者】
【氏名】田中 真二
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】康 麗萍
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄之
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB59
5E223AC50
5E223BA12
5E223BA15
5E223CB22
5E223CB26
5E223CB38
5E223CC09
5E223DA42
5E223EB04
5E223EB12
5E223EB23
5E223GA08
5E223GA53
(57)【要約】
【課題】シールド性能の安定化を図る。
【解決手段】シールドコネクタは、周方向両端縁の突き合わせ面22同士を突き合わせた筒形状の第1外導体14と、第1外導体14に形成されて径方向へ弾性変形可能な第1バネ部31及び第2バネ部33と、第1外導体14のうち第2バネ部33よりも突き合わせ面22に近い位置に配置された固定接点部45と、第1外導体14のうち突き合わせ面22に沿う領域に形成された固定側補強部46と、第1バネ部31の第1可動接点部32と第2バネ部33の第2可動接点部34と固定接点部45とに対して径方向に弾性接触する筒状の第2外導体50とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向両端縁の突き合わせ面同士を突き合わせた筒形状の第1外導体と、
前記第1外導体に形成されて径方向へ弾性変形可能なバネ部と、
前記第1外導体のうち前記バネ部よりも前記突き合わせ面に近い位置に配置された固定接点部と、
前記第1外導体のうち前記突き合わせ面に沿う領域に形成された補強部と、
前記バネ部の可動接点部と前記固定接点部とに対して径方向に弾性接触する筒状の第2外導体とを備えているシールドコネクタ。
【請求項2】
前記第1外導体は、周方向に間隔を空けた一対のサイドスリットによって区画された弧状支持部を有し、
前記弧状支持部は、前記突き合わせ面によって周方向に分割された一対の支持領域によって構成され、
前記補強部は、前記一対の支持領域の各々に形成しつつ周方向に連ねた一対の補強用突部によって構成されている請求項1に記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記固定接点部は、前記一対の支持領域の各々に配置されている請求項2に記載のシールドコネクタ。
【請求項4】
前記一対の支持領域の各々において、前記固定接点部の少なくとも一部は、前記補強用突部の形成領域から周方向へ外れた領域に配置されている請求項3に記載のシールドコネクタ。
【請求項5】
前記弧状支持部は、幅狭部と、前記幅狭部よりも周方向の幅寸法の大きい幅広部とを有し、
前記幅広部に前記固定接点部が配置され、
前記幅狭部に前記補強部が配置されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールドコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同軸コネクタが開示されている。このものは、同軸ケーブルの外部導体に基端部が圧着される円筒状のシェルを有している。シェルは、複数のバネ部が形成された平板状の金属板材を曲げ加工することによって円筒形に成形される。金属板材の周方向における両端縁部の突き合わせ面同士は、隙間が空かないように周方向に突き合わされている。
【0003】
シェルの先端部には、軸方向に延びるスリットが周方向に等間隔に並んで形成されている。シェルのうちスリットの間の部位が、弾性変形可能なバネ部として機能する。シェルを接続対象であるリセプタクルに挿入すると、複数のバネ部が、リセプタクルの内面に対して周方向において均等に弾性接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のものは、シェルとリセプタクルとの接触が、複数のバネ部のみによって行われるため、径方向の振動を受けた場合には、シェルとリセプタクルが径方向に相対変位する。シェルとリセプタクルが径方向に相対変位すると、バネ部とリセプタクルとの間の接触抵抗が不安定になる。この対策としては、シェルにおける周方向の一部に、弾性変形しない形態の複数の固定接点部を形成することが考えられる。複数の固定接点部をリセプタクルに当接させることによって、リセプタクルに対してシェルが径方向に位置決めされる。
【0006】
シェルのうち弾性変形するバネ部の近傍では応力が高くなるため、バネ部の位置は、突き合わせ面から遠い位置が好ましい。したがって、固定接点部は、突き合わせ面に近い位置に配置することになる。しかしながら、固定接点部の近傍においても、バネ部の弾性復元力によってリセプタクル側からの反力が作用する。固定接点部は、突き合わせ面の近傍に位置するので、シェルが、突き合わせ面同士を相対変位させるように変形することが懸念される。シェルが変形すると、シェルとリセプタクルとの位置関係が安定しない。
【0007】
本開示のシールドコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シールド性能の安定化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のシールドコネクタは、
周方向両端縁の突き合わせ面同士を突き合わせた筒形状の第1外導体と、
前記第1外導体に形成されて径方向へ弾性変形可能なバネ部と、
前記第1外導体のうち前記バネ部よりも前記突き合わせ面に近い位置に配置された固定接点部と、
前記第1外導体のうち前記突き合わせ面に沿う領域に形成された補強部と、
前記バネ部の可動接点部と前記固定接点部とに対して径方向に弾性接触する筒状の第2外導体とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、シールド性能の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1の第1コネクタを斜め上前方から視た斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す第1コネクタを斜め下前方から視た斜視図である。
【
図3】
図3は、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合した状態をあわす側断面図である。
【
図7】
図7は、接続状態の第1外導体と第2外導体を接点部において切断した正断面図である。
【
図8】
図8は、接続状態の第1外導体と第2外導体をバネ部の補強部において切断した正断面図である。
【
図9】
図9は、第1外導体を円筒形に成形する前の展開状態をあらわす平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の実施形態を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
本開示のシールドコネクタは、
(1)周方向両端縁の突き合わせ面同士を突き合わせた筒形状の第1外導体と、前記第1外導体に形成されて径方向へ弾性変形可能なバネ部と、前記第1外導体のうち前記バネ部よりも前記突き合わせ面に近い位置に配置された固定接点部と、前記第1外導体のうち前記突き合わせ面に沿う領域に形成された補強部と、前記バネ部の可動接点部と前記固定接点部とに対して径方向に弾性接触する筒状の第2外導体とを備えている。本開示の構成によれば、可動接点部と固定接点部に対して第2外導体が弾性接触すると、バネ部の弾性復元力によって固定接点部と突き合わせ面に対して径方向の力が作用する。このとき、第1外導体のうち突き合わせ面に沿った領域には、補強部が形成されているので、突き合わせ面同士が相対変位することを防止できる。第1外導体と第2外導体の位置関係が安定するので、シールド性能が安定する。
【0012】
(2)(1)において、前記第1外導体は、周方向に間隔を空けた一対のサイドスリットによって区画された弧状支持部を有し、前記弧状支持部は、前記突き合わせ面によって周方向に分割された一対の支持領域によって構成され、前記補強部は、前記一対の支持領域の各々に形成しつつ周方向に連ねた一対の補強用突部によって構成されていることが好ましい。この構成によれば、一対の支持領域が相対変位することを防止できる。
【0013】
(3)(2)において、前記固定接点部は、前記一対の支持領域の各々に配置されていることが好ましい。この構成によれば、第2外導体が一対の固定接点部に当接した状態では、一対の固定接点部が第2外導体に対して一定の位置関係を保つので、突き合わせ面同士が径方向へ相対変位する虞がない。
【0014】
(4)(3)において、前記一対の支持領域の各々において、前記固定接点部の少なくとも一部は、前記補強用突部の形成領域から周方向へ外れた領域に配置されていることが好ましい。この構成によれば、固定接点部と補強部との間隔が最短となる最短直線経路の向きは、第1外導体の軸線に対して斜め方向である。これにより、固定接点部と補強部との間の最短直線経路が第1外導体の軸線と平行である場合に比べると、軸線方向において、固定接点部と補強部とを接近させて配置することができる。
【0015】
(5)(1)~(4)において、前記弧状支持部は、幅狭部と、前記幅狭部よりも周方向の幅寸法の大きい幅広部とを有し、前記幅広部に前記固定接点部が配置され、前記幅狭部に前記補強部が配置されていることが好ましい。この構成によれば、幅広部に比べて剛性の低い幅狭部の剛性を、補強部によって高めることができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1のシールドコネクタを、
図1~
図9を参照して説明する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施例1において、前後の方向については、
図1~6,9におけるF方向を前方と定義する。上下の方向については、
図1~3,5,7,8におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、
図1,2,4,6~8におけるR方向を右方と定義する。
【0017】
シールドコネクタは、前後方向に嵌合及び離脱することが可能な第1コネクタ10と第2コネクタ50とを備えている。第1コネクタ10は、全体として前後方向に細長い形状をなす。
図3に示すように、第1コネクタ10は、第1内導体11と、第1誘電体12と、第1外導体14とを組み付けて構成されている。第1内導体11は、筒状をなす雌形の端子である。第1内導体11の後端部には、同軸ケーブル56の芯線57が接続されている。第1内導体11は、第1誘電体12の内部に収容されている。
【0018】
第1外導体14は第1誘電体12の全体を包囲する筒状の部材である。第1外導体14は、筒状をなす金属製のフロント部材15と、筒状をなす金属製のリヤ部材16とを合体させて構成されている。フロント部材15は、円筒形をなす大径部17と、大径部17よりも小径の筒状本体部18とを有する単一部品である。大径部17は、フロント部材15の後端側部位を構成する部位であり、リヤ部材16の前端部に固着されている。リヤ部材16の後端部は、同軸ケーブル56のシールド部材(図示省略)に対して導通可能に固着されている。
【0019】
フロント部材15は、プレス加工により所定形状に打ち抜いた平板状の金属板材19(
図9参照)に、曲げ加工を施すことによって円筒形に成形された部品である。
図7,8に示すように、フロント部材15(第1外導体14)を前方から視た正面視において、フロント部材15の円の中心を、第1外導体14の軸心Cと定義する。軸心Cを通り、且つ前後方向(両コネクタ10,50の嵌合方向と平行な方向)に延びる直線を、第1外導体14(フロント部材15)の軸線(図示省略)と定義する。正面視において軸心Cを中心とする円に沿った方向を、周方向と定義する。正面視において軸心Cを通る直線に沿った方向を、径方向と定義する。
【0020】
図9に示すように、金属板材19の周方向における両端縁部19Eのうち一方の端縁部19Eには、台形状の突起部20が形成され、他方の端縁部19Eには、台形状の凹部21が形成されている。
図2,6に示すように、突起部20と凹部21とが嵌合することによって、フロント部材15(筒状本体部18)は円筒形を維持している。突起部20と凹部21との嵌合によって、金属板材19の両端縁部19Eの周方向への離隔と軸線方向への位置ずれが防止されている。
【0021】
金属板材19の打ち抜きにより露出した破断面のうち、周方向における両端縁部19Eの破断面を、突き合わせ面22と定義する。一対の突き合わせ面22は、周方向及び軸線方向において互いに突き合わされているので、突き合わせ面22同士の間には、シールド性能に影響を及ぼす隙間は存在しない。
【0022】
筒状本体部18は、大径部17から前方へ同軸状に延出した筒状の部位であり、第1外導体14の前端側部位を構成する。筒状本体部18は、筒状支持部24と保護部25と接点構成部26とによって構成されている。筒状支持部24は、筒状本体部18の後端部を構成する筒状の部位である。保護部25は、筒状本体部18の前端部を構成する筒状の部位である。第1外導体14(筒状本体部18)を前方から視た正面視において、筒状支持部24と保護部25は円形をなす。筒状支持部24と保護部25は、正面視において軸心Cを一致させるように配置されている。
【0023】
接点構成部26は、軸線方向において筒状支持部24と保護部25との間に位置する部位である。接点構成部26は、後述する固定接点部45と可動接点部32,34を構成する部位である。接点構成部26には、5本のサイドスリット27,28,29と1本のエンドスリット30とが形成されている。サイドスリット27,28,29とエンドスリット30は、筒状本体部18の内周面から外周面まで貫通している。5本のサイドスリット27,28,29は、周方向に間隔を空けて配置され、全体として軸線に沿うように前後方向に延びている。エンドスリット30は、保護部25の後端に沿って周方向に延びるように配置され、5本のサイドスリット27,28,29の前端同士を連通させている。
【0024】
5本のサイドスリット27,28,29は、1本の第1サイドスリット27と、左右対称な一対の第2サイドスリット28と、左右対称な一対の第3サイドスリット29とによって構成されている。
図7に示すように、正面視において、第1サイドスリット27は、筒状本体部18の最上端に位置し、軸線と平行に直線状に延びている。第1サイドスリット27の前端は、エンドスリット30と連通している。第1サイドスリット27の後端(基端)は、筒状支持部24の前端縁に臨んでいる。
【0025】
一対の第2サイドスリット28は、第1サイドスリット27に対して左右両側に隣り合うように配置されている。第2サイドスリット28を径方向に視たときに、第2サイドスリット28は僅かに屈曲した形状をなしている。第2サイドスリット28の前端(延出端)は、エンドスリット30と連通している。第2サイドスリット28の後端(基端)は、筒状支持部24の前端縁に臨んでいる。
【0026】
一対の第3サイドスリット29は、第2サイドスリット28を挟んで第1サイドスリット27とは反対側に配置されている。第3サイドスリット29を径方向に視たときに、第3サイドスリット29は僅かに屈曲した形状をなす。第3サイドスリット29の前端(延出端)は、エンドスリット30と連通している。第3サイドスリット29の後端(基端)は、筒状支持部24の前端縁に臨んでいる。
【0027】
接点構成部26のうち第1サイドスリット27と一対の第2サイドスリット28とエンドスリット30とによって区画された部位は、一対の第1バネ部31を構成している。第1バネ部31は、筒状支持部24の前端から前方へ片持ち状に延出した形状をなし、径方向へ弾性変形し得るようになっている。
図7,8に示すように、正面視において、軸心Cを通る上下方向の直線を、対称軸Sと定義する。一対の第1バネ部31の形状と位置は、対称軸Sに関して左右対称である。第1バネ部31の後端部の幅寸法(周方向の寸法)は、第1バネ部31の前端部の最大幅寸法よりも小さい。第1バネ部31の前端部には、第1可動接点部32が形成されている。第1可動接点部32は、第1バネ部31に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、第1バネ部31の外周面から径方向外方へ突出している。
【0028】
接点構成部26のうち一対の第2サイドスリット28と一対の第3サイドスリット29とエンドスリット30とによって区画された部位は、一対の第2バネ部33を構成している。第2バネ部33は、筒状支持部24の前端から前方へ片持ち状に延出した形状をなし、径方向へ弾性変形し得るようになっている。一対の第2バネ部33の形状と位置は、対称軸Sに関して左右対称である。第2バネ部33の後端部の幅寸法は、第2バネ部33の前端部の最大幅寸法よりも小さい。第2バネ部33の前端部には、第2可動接点部34が形成されている。第2可動接点部34は、第2バネ部33に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、第2バネ部33の外周面から径方向外方へ突出している。
【0029】
筒状本体部18には、第1バネ部31の弾力を高めるための第1可動側補強部35が形成されている。第1可動側補強部35は、筒状本体部18を叩き出し加工することによって形成され、径方向外方へ突出している。径方向に視たときの第1可動側補強部35の形状は、長辺を軸線方向と平行に向けた長方形である。第1可動側補強部35は、第1バネ部31の後端部から筒状支持部24の前端部に亘って形成されている。
【0030】
筒状本体部18には、第2バネ部33の弾力を高めるための第2可動側補強部36が形成されている。第2可動側補強部36は、筒状本体部18を叩き出し加工することによって形成され、径方向外方へ突出している。径方向に視たときの第2可動側補強部36の形状は、長辺を軸線方向と平行に向けた長方形である。第2可動側補強部36は、第2バネ部33の後端部から筒状支持部24の前端部に亘って形成されている。
【0031】
接点構成部26のうち一対の第3サイドスリット29の間の部位を、弧状支持部40と定義する。弧状支持部40は、筒状支持部24の前端縁の下端部と、保護部25の後端縁の下端部とを繋ぐ部位である。正面視において、弧状支持部40は円弧形をなす。弧状支持部40の周方向の形成範囲は、50°よりも大きい。弧状支持部40は、金属板材19の一対の端縁部19Eを周方向に並ぶように合体させた形態である。突き合わせ面22を境界として区画された一対の端縁部19Eは、後述する固定接点部45と固定側補強部46とを支持するための一対の支持領域41としての機能を有する。
【0032】
弧状支持部40は、幅狭部42と、台形部43と、幅広部44とによって構成されている。幅狭部42は、筒状支持部24の前端縁から前方へ延出した部位である。幅狭部42の周方向の幅寸法は、幅狭部42の前端から後端に亘って一定である。台形部43は、幅狭部42の前端から前方へ延出した部位である。台形部43を径方向に視た形状は、等脚台形である。台形部43の幅寸法は、台形部43の後端から前端に向かって次第に小さくなっている。幅広部44は、台形部43の前端から前方へ延出した部位である。幅広部44の幅寸法は、幅広部44の前端から後端に至るまで一定である。
【0033】
弧状支持部40には、対称軸Sに関して左右対称な一対の固定接点部45が形成されている。一対の固定接点部45は、周方向において50°の角度をなし、一対の支持領域41に個別に配置されている。固定接点部45は、弧状支持部40に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、弧状支持部40の外周面から径方向外方へ突出している。固定接点部45は、接点構成部26(筒状本体部18)に対して相対変位しない部位である。固定接点部45は、軸線方向に細長く延びた形状をなす。固定接点部45は、幅広部44と台形部43とに亘って形成されている。
【0034】
接点構成部26には、固定側補強部46が形成されている。固定側補強部46は、幅狭部42と弧状支持部40の前端部とに亘る部分に叩き出し加工を施すことによって形成されている。固定側補強部46は、径方向外方へ突出している。径方向に視たときの固定側補強部46の形状は、長辺を軸線方向に向けた長方形である。軸線方向において、固定側補強部46の形成範囲は、可動側補強部の形成範囲と同じ範囲である。軸線方向(前後方向)において、固定側補強部46の前端は、幅狭部42の前端に位置する。固定側補強部46の後端は、弧状支持部40の前端よりも後方に位置する。
【0035】
固定側補強部46は、一対の支持領域41に個別に形成された一対の補強用突部47によって構成されている。補強用突部47は、支持領域41の一部を叩き出すことによって形成されている。周方向における補強用突部47の形成範囲は、突き合わせ面22から、第3サイドスリット29よりも突き合わせ面22側の位置に至る領域である。支持領域41のうち、第3サイドスリット29と補強用突部47の軸線方向の側縁との間には、補強用突部47を叩き出し加工する際に治具(図示省略)によって保持される平板状の被保持部48が確保されている。一対の補強用突部47は、その突き合わせ面22同士を突き合わせた状態で、周方向に連なるように配置されている。
【0036】
周方向において、固定接点部45の少なくとも一部又は全体は、固定側補強部46の長辺に沿って前後方向に延びる両側縁よりも第3サイドスリット29側に位置している。換言すると、固定接点部45の少なくとも一部又は全体は、周方向において被保持部48と同じ領域に配置されている。
図9に示すように、固定接点部45と固定側補強部46との間隔が最短となる最短直線経路Lは、筒状本体部18の軸線に対して斜め方向である。したがって、固定接点部45の後端と固定側補強部46の前端との間の軸線方向における最短距離に比べると、最短直線経路Lは長く確保されている。最短直線経路Lが長く確保されていることにより、固定接点部45や固定側補強部46を叩き出し加工する際に、治具によって弧状支持部40(固定接点部45と固定側補強部46との間の部位)を支持し易くなっている。
【0037】
第2コネクタ50は、全体として前後方向に細長い形状をなす。
図3に示すように、第2コネクタ50は、第2内導体51と、第2誘電体53と、第2外導体54とを組み付けて構成されている。第2内導体51は、タブ52を有する雄形の端子である。第2内導体51には、同軸ケーブル(図示省略)の芯線(図示省略)が接続されている。第2内導体51は、第2誘電体53の内部に収容されている。
【0038】
第2外導体54は、第2誘電体53の全体を包囲する筒状の部材である。第2外導体54の先端部は、円筒形をなす嵌合部55として機能する。嵌合部55の内径は、第1バネ部31と第2バネ部33が弾性変形していない自由状態において、2つの固定接点部45と4つの可動接点部32,34とのうち少なくとも3つの接点部32,34,45に外接する仮想円(図示省略)の内径よりも小さい寸法に設定されている。
【0039】
第1コネクタ10と第2コネクタ50を嵌合すると、第1内導体11と第2内導体51が接続されるとともに、第2外導体54の嵌合部55が、第1外導体14の接点構成部26に外嵌される。第1外導体14と第2外導体54が嵌合すると、4つのバネ部31,33が径方向内側へ弾性変形した状態で、6つの接点部(一対の固定接点部45と一対の第1可動接点部32と一対の第2可動接点部34)が嵌合部55の内周面に接触する。このとき、4つのバネ部31,33の弾性復元力によって、嵌合部55から4つのバネ部31,33に対して径方向内向きの反力が作用する。これらの反力によって、6つの接点部32,34,45と嵌合部55とが、所定の接触圧によって接続される。
【0040】
本実施例1のシールドコネクタは、第1外導体14と、第2外導体54とを有する。第1外導体14は、周方向両端縁の突き合わせ面22同士を突き合わせた筒形状をなす。第1外導体14には、径方向へ弾性変形可能な第1バネ部31と第2バネ部33が形成されている。第1外導体14のうち第1バネ部31及び第2バネ部33よりも突き合わせ面22に近い位置には、固定接点部45が配置されている。第1外導体14のうち前記突き合わせ面22に沿う領域には、固定側補強部46が形成されている。第2外導体54は、筒状をなし、第1バネ部31の第1可動接点部32と第2バネ部33の第2可動接点部34と固定接点部45とに対して径方向に弾性接触する。
【0041】
この構成によれば、第1可動接点部32と第2可動接点部34と固定接点部45に対して第2外導体54が弾性接触すると、第1バネ部31と第2バネ部33の弾性復元力によって、固定接点部45と突き合わせ面22には径方向の力が作用する。このとき、第1外導体14のうち突き合わせ面22に沿った領域には、固定側補強部46が形成されているので、突き合わせ面22同士が相対変位することを防止できる。第1外導体14と第2外導体54の位置関係が安定するので、シールド性能が安定する。
【0042】
第1外導体14は、周方向に間隔を空けた一対の第3サイドスリット29によって区画された弧状支持部40を有している。弧状支持部40は、突き合わせ面22によって周方向に分割された一対の支持領域41によって構成されている。固定側補強部46は、一対の支持領域41の各々に形成しつつ周方向に連ねた一対の補強用突部47によって構成されている。この構成によれば、一対の支持領域41が相対変位することを防止できる。
【0043】
固定接点部45は、一対の支持領域41の各々に配置されている。この構成によれば、第2外導体54が一対の固定接点部45に当接した状態では、一対の固定接点部45が第2外導体54に対して一定の位置関係を保つ。したがって、一対の突き合わせ面22同士が径方向へ相対変位する虞がない。
【0044】
一対の支持領域41の各々において、固定接点部45の少なくとも一部は、補強用突部47の形成領域から周方向へ外れた領域に配置されている。この構成によれば、固定接点部45と固定側補強部46との間隔が最短となる最短直線経路Lの向きは、第1外導体14の軸線に対して斜め方向である。固定接点部45と固定側補強部46との間の最短直線経路Lが第1外導体14の軸線と平行である場合に比べると、本実施例1のシールドコネクタは、軸線方向において、固定接点部45と固定側補強部46とを接近させて配置することができる。
【0045】
弧状支持部40は、幅狭部42と、幅狭部42よりも周方向の幅寸法の大きい幅広部44とを有している。幅広部44には固定接点部45が配置されている。幅狭部42には固定側補強部46が配置されている。この構成によれば、幅広部44に比べて剛性の低い幅狭部42の剛性を、補強部によって高めることができる。
【0046】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
固定側補強部は、一対の支持領域のうち一方の支持領域のみに配置してもよい。
固定接点部は、2つの支持領域のうち一方の支持領域のみに配置してもよい。
補強部は、幅広部に配置してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…第1コネクタ(シールドコネクタ)
11…第1内導体
12…第1誘電体
14…第1外導体
15…フロント部材
16…リヤ部材
17…大径部
18…筒状本体部
19…金属板材
19E…金属板材の端縁部
20…突起部
21…凹部
22…突き合わせ面
24…筒状支持部
25…保護部
26…接点構成部
27…第1サイドスリット
28…第2サイドスリット
29…第3サイドスリット(サイドスリット)
30…エンドスリット
31…第1バネ部(バネ部)
32…第1可動接点部(可動接点部)
33…第2バネ部(バネ部)
34…第2可動接点部(可動接点部)
35…第1可動側補強部
36…第2可動側補強部
40…弧状支持部
41…支持領域
42…幅狭部
43…台形部
44…幅広部
45…固定接点部
46…固定側補強部(補強部)
47…補強用突部
48…被保持部
50…第2コネクタ
51…第2内導体
52…タブ
53…第2誘電体
54…第2外導体
55…嵌合部
56…同軸ケーブル
57…芯線
C…第1外導体の軸心
L…固定接点部と固定側補強部との間の最短直線経路
S…対称軸
【手続補正書】
【提出日】2024-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
接点構成部26のうち第1サイドスリット27と一対の第2サイドスリット28とエンドスリット30とによって区画された部位は、一対の第1バネ部31を構成している。第1バネ部31は、筒状支持部24の前端から前方へ片持ち状に延出した形状をなし、径方向へ弾性変形し得るようになっている。
図7,8に示すように、正面視において、軸心Cを通る上下方向の直線を、対称軸Sと定義する。一対の第1バネ部31の形状と位置は、対称軸Sに関して左右対称である。第1バネ部31の後端部の幅寸法(周方向の寸法)は、第1バネ部31の前端部の最大幅寸法よりも
大きい。第1バネ部31の前端部には、第1可動接点部32が形成されている。第1可動接点部32は、第1バネ部31に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、第1バネ部31の外周面から径方向外方へ突出している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
接点構成部26のうち一対の第2サイドスリット28と一対の第3サイドスリット29とエンドスリット30とによって区画された部位は、一対の第2バネ部33を構成している。第2バネ部33は、筒状支持部24の前端から前方へ片持ち状に延出した形状をなし、径方向へ弾性変形し得るようになっている。一対の第2バネ部33の形状と位置は、対称軸Sに関して左右対称である。第2バネ部33の後端部の幅寸法は、第2バネ部33の前端部の最大幅寸法よりも大きい。第2バネ部33の前端部には、第2可動接点部34が形成されている。第2可動接点部34は、第2バネ部33に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、第2バネ部33の外周面から径方向外方へ突出している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
弧状支持部40は、幅狭部42と、台形部43と、幅広部44とによって構成されている。幅狭部42は、筒状支持部24の前端縁から前方へ延出した部位である。幅狭部42の周方向の幅寸法は、幅狭部42の前端から後端に亘って一定である。台形部43は、幅狭部42の前端から前方へ延出した部位である。台形部43を径方向に視た形状は、等脚台形である。台形部43の幅寸法は、台形部43の後端から前端に向かって次第に大きくなっている。幅広部44は、台形部43の前端から前方へ延出した部位である。幅広部44の幅寸法は、幅広部44の前端から後端に至るまで一定である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
弧状支持部40には、対称軸Sに関して左右対称な一対の固定接点部45が形成されている。一対の固定接点部45は、周方向において60°の角度をなし、一対の支持領域41に個別に配置されている。固定接点部45は、弧状支持部40に叩き出し加工を施すことによって形成された部位であり、弧状支持部40の外周面から径方向外方へ突出している。固定接点部45は、接点構成部26(筒状本体部18)に対して相対変位しない部位である。固定接点部45は、軸線方向に細長く延びた形状をなす。固定接点部45は、幅広部44と台形部43とに亘って形成されている。