(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169013
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】励起用光ファイバおよび光増幅器
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20241128BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20241128BHJP
G02B 6/024 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01S3/10 D
G02B6/02 376Z
G02B6/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086181
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】太田 順一
【テーマコード(参考)】
2H250
5F172
【Fターム(参考)】
2H250AC46
2H250AD15
2H250AH33
5F172AF03
5F172AF05
5F172AF06
5F172AM04
5F172AM08
5F172BB13
5F172BB44
5F172BB65
5F172BB94
(57)【要約】
【課題】長期間使用し続けた場合であっても励起効率が低下することを抑制できる励起用光ファイバおよび光増幅器を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る励起用光ファイバは、励起光を吸収する希土類元素が添加されたコアと、コアを覆うクラッドとを有する励起用光ファイバである。励起用光ファイバが延在する方向に直交する断面において、コアは、長軸および短軸を有する。クラッドの偏波軸が延びる方向である偏波方向がコアの長軸が延びる方向である長軸方向と一致している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を吸収する希土類元素が添加されたコアと、前記コアを覆うクラッドとを有する励起用光ファイバであって、
前記励起用光ファイバが延在する方向に直交する断面において、
前記コアは、長軸および短軸を有する形状を呈しており、
前記クラッドの偏波軸が延びる方向である偏波方向が前記コアの前記長軸が延びる方向である長軸方向と一致している、
励起用光ファイバ。
【請求項2】
前記断面において、前記クラッドは、偶数多角形の角部が前記長軸方向に延びた形状を呈する、
請求項1に記載の励起用光ファイバ。
【請求項3】
前記断面において、前記コアは、楕円形状を呈する、
請求項1または請求項2に記載の励起用光ファイバ。
【請求項4】
前記励起光のパワー密度が24(mW/(μm2))以上である、
請求項1または請求項2に記載の励起用光ファイバ。
【請求項5】
希土類元素が添加されたコア、および前記コアを覆うクラッドを有し、前記コアの偏波面が前記クラッドの偏波面に一致する励起用光ファイバと、
前記励起用光ファイバに入力する励起光を出力する励起光源と、
前記励起用光ファイバからの出力光の一部を検出する光検出器と、
前記光検出器の検出結果が所定範囲内になるように前記励起光源を駆動する駆動電流を制御する制御部と、
を備える、
光増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、励起用光ファイバおよび光増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光増幅媒体を有する光増幅器が記載されている。光増幅媒体は、励起光が供給されているときに入力した信号光を増幅して出力する。光増幅媒体としては、希土類元素であるEr(エルビウム)元素がコア領域に添加された光ファイバ(EDF:Erbium-Doped Fiber)が用いられる。
【0003】
特許文献2には、光増幅器を備えた多段増幅光伝送システムが記載されている。この光増幅器は、励起光が供給される増幅用光ファイバを有する。増幅用光ファイバでは、励起光の強度に応じた信号光の増幅率、および、増幅率と雑音光発生パワーレベルとの関係が既知とされている。
【0004】
非特許文献1には、ダブルクラッドファイバーが記載されている。ダブルクラッドファイバーは、レーザーの媒質となる希土類元素が添加されたコアと、コアの周囲に設けられており励起光が伝搬するポンプガイドと、ポンプガイドの周囲に設けられており励起光を閉じ込めるクラッドとを有する。このダブルクラッドファイバーでは、ポンプガイドの断面形状が小判型とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-68572号公報
【特許文献2】特開平10-98229号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ファイバーレーザー用ダブルクラッドファイバーの開発(応用物理第73巻第11号(2004))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、励起用光ファイバにおいて、コアの断面形状が円形である場合、コアは偏波軸を有しないこととなる。しかしながら、励起用光ファイバを長期間使用し続けた場合には、熱応力によってコアに偏波軸が生じうる。コアに偏波軸が生じ、当該コアの偏波軸がクラッドの偏波軸からずれている場合、コアを進む信号光の偏波方向がクラッドを進む励起光の偏波方向からずれることによって励起効率が低下するということが生じうる。
【0008】
本開示は、長期間使用し続けた場合であっても励起効率が低下することを抑制できる励起用光ファイバおよび光増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る励起用光ファイバは、励起光を吸収する希土類元素が添加されたコアと、コアを覆うクラッドとを有する励起用光ファイバである。励起用光ファイバが延在する方向に直交する断面において、コアは、長軸および短軸を有する。クラッドの偏波軸が延びる方向である偏波方向がコアの長軸が延びる方向である長軸方向と一致している。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、長期間使用し続けた場合であっても励起効率が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る光増幅器の概略構成を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る励起用光ファイバを示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1変形例に係る励起用光ファイバを示す断面図である。
【
図4】
図4は、第2変形例に係る励起用光ファイバを示す断面図である。
【
図5】
図5は、第3変形例に係る励起用光ファイバを示す断面図である。
【
図6】
図6は、第4変形例に係る励起用光ファイバを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。(1)一実施形態に係る励起用光ファイバは、励起光を吸収する希土類元素が添加されたコアと、コアを覆うクラッドとを有する励起用光ファイバである。励起用光ファイバが延在する方向に直交する断面において、コアは、長軸および短軸を有する形状を呈する。クラッドの偏波軸が延びる方向である偏波方向がコアの長軸が延びる方向である長軸方向と一致している。
【0013】
上記(1)の励起用光ファイバは、励起光を吸収する希土類元素が添加されたコアと、コアを覆うクラッドとを有し、励起用光ファイバが延在する方向に直交する断面において、コアは長軸および短軸を有する形状を呈する。さらに、当該断面において、クラッドの偏波軸が延びる方向である偏波方向がコアの長軸が延びる方向である長軸方向と一致している。したがって、励起用光ファイバを使用し続けてコアに熱応力が生じた場合であっても、クラッドの偏波方向に対するコアの長軸方向のずれを抑制できる。すなわち、コアの長軸方向がクラッドの偏波方向と一致しているので、コアに熱応力が生じた場合であっても、クラッドの偏波軸に対してコアの偏波軸がずれにくい。よって、コアを進む信号光の偏波方向をクラッドを進む励起光の偏波方向からずれにくくできるので、励起用光ファイバを長期間使用し続けた場合であっても励起効率が低下することを抑制できる。
【0014】
(2)上記(1)では、断面において、クラッドは、偶数多角形の角部が長軸方向に延びた形状を呈してもよい。この場合、クラッドの偏波面を安定させることができるので、クラッドにおける偏波をランダムになりにくくすることができる。
【0015】
(3)上記(1)または(2)では、断面において、コアは、楕円形状を呈してもよい。この場合、クラッドを通る励起光の偏波方向とコアを通る信号光の偏波方向が一致しないモードを低減できる。したがって、余分な偏波モードの発生を抑制できる。
【0016】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、励起光のパワー密度が24(mW/(μm2))以上であってもよい。
【0017】
(5)一実施形態に係る光増幅器は、希土類元素が添加されたコア、およびコアを覆うクラッドを有し、コアの偏波面がクラッドの偏波面に一致する励起用光ファイバと、励起用光ファイバに入力する励起光を出力する励起光源と、励起用光ファイバからの出力光の一部を検出する光検出器と、光検出器の検出結果が所定範囲内になるように励起光源を駆動する駆動電流を制御する制御部と、を備える。
【0018】
上記(5)の光増幅器では、励起光源が出力した励起光が励起用光ファイバに入力し、光検出器が励起用光ファイバからの出力光の一部を検出する。制御部は、光検出器の検出結果が所定範囲内になるように励起光源を駆動する駆動電流を制御する。励起用光ファイバは希土類元素が添加されたコアとクラッドとを有し、コアの偏波面がクラッドの偏波面に一致している。したがって、励起用光ファイバを使用し続けてコアに熱応力が生じた場合であっても、クラッドの偏波方向に対するコアの長軸方向のずれを抑制できる。すなわち、コアが偏波軸を有し、コアの偏波面がクラッドの偏波面と一致していることにより、コアに熱応力が生じた場合であっても、クラッドの偏波軸からコアの偏波軸をずれにくくすることができる。よって、前述した励起用光ファイバと同様、励起用光ファイバを長期間使用し続けた場合であっても励起効率が低下することを抑制できる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下で図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明において同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
図1は、一実施形態に係る光増幅器1の概略構成を示す図である。光増幅器1は、信号光L1が入力される入力ポート2bと、増幅光L2を出力する出力ポート2cとに接続されている。光増幅器1は、入力ポート2bに入力された信号光L1を増幅して信号光L1を増幅光L2とし、増幅光L2を出力ポート2cから出力する。増幅光L2は、励起用光ファイバ10からの出力光を示している。例えば、光増幅器1は、光ファイバを有する光通信ネットワークに設けられる。
【0021】
例えば、光増幅器1は、偏波コントローラ3と、光分波器4と、光アイソレータ5と、光合波器6と、残留光放出ファイバ7と、光アイソレータ8と、光分波器9と、励起用光ファイバ10とを有する。偏波コントローラ3、光分波器4、光アイソレータ5、光合波器6、励起用光ファイバ10、残留光放出ファイバ7、光アイソレータ8および光分波器9は、この順で入力ポート2bから出力ポート2cへ向かって並んでいる。
【0022】
さらに、光増幅器1は、信号光L1を検出する光検出器21、増幅光L2を検出する光検出器22、励起光L3を出力する励起光源23、および制御部24を有する。光増幅器1が有する各要素における光の伝播には光ファイバが用いられている。
図1中の黒丸は、光増幅器1が有する要素間の接続箇所を示している。例えば、光増幅器1の複数の要素は光コネクタを介して当該接続箇所において互いに接続されている。
【0023】
入力ポート2bは、信号光L1を受け付ける部分である。例えば、入力ポート2bは光コネクタである。入力ポート2bには、信号光L1が伝播する入力用光ファイバ(または光ファイバケーブル)を含む信号光伝送部31が接続される。例えば、信号光伝送部31は光コネクタ31bを有し、光コネクタ31bが入力ポート2bに接続される。本実施形態において、入力ポート2bへの信号光伝送部31の接続が維持された状態では、入力ポート2bから偏波コントローラ3に伝播される信号光L1の偏波状態は一定である。
【0024】
信号光L1は、信号成分(一例としてテレビ信号成分)が重畳された光である。例えば、信号光L1は、レーザーダイオード(LD:Laser Diode)から出力され、かつ信号成分を含むように変調されたレーザ光である。信号光L1の波長は、例えば、Cバンド帯(1530nm以上かつ1565nm以下)の波長である。
【0025】
偏波コントローラ3は、信号光L1の偏波状態を調整するための偏波調整部である。偏波コントローラ3は、励起用光ファイバ10に入力される前の信号光L1の偏波状態を調整可能な位置に配置されている。偏波コントローラ3の構成は、信号光L1の偏波状態を調整できれば特に限定されない。
【0026】
偏波コントローラ3は、励起用光ファイバ10に入力される前の信号光L1の偏波状態を選択的に調整する観点から、入力ポート2bと光合波器6との間に配置されていてもよい。本実施形態では、偏波コントローラ3は、入力ポート2bと光分波器4との間に配置されている。この場合、偏波コントローラ3からの信号光L1は光分波器4に入力する。本実施形態において、偏波状態を調整することは偏波軸を調整することを示しており、偏波軸は信号光または励起光の偏波面の長軸を示している。偏波軸が延びる方向は、偏波方向とも称される。
【0027】
偏波コントローラ3は、例えば、信号光L1の伝播方向に沿って同軸に配置された1つまたは複数の波長板と、1つまたは複数の波長板を信号光L1の伝播方向の周りに回転駆動する駆動部とを有する。偏波コントローラ3が1つの波長板を有する場合、波長板は半波長板であってもよい。偏波コントローラ3が複数の波長板を有する場合、偏波コントローラ3は半波長板と1/4波長板とが組み合わされたものであってもよい。
【0028】
光分波器4は、偏波コントローラ3と光アイソレータ5との間に配置されている。光分波器4は、例えば、光ファイバカプラである。光分波器4は、入力された信号光L1の一部を分岐し、分岐した信号光L1の一部を光検出器21に導くとともに分岐した信号光L1の残部を光アイソレータ5に導く。光分波器4は、例えば、信号光L1の1%を光検出器21に導き、信号光L1の残りの99%を光アイソレータ5に導く。
【0029】
光検出器21は、信号光L1を検出する。光検出器21は、例えば、フォトダイオード(PD:Photo Diode)である。光検出器21は、検出した信号光L1の結果(検出結果)を制御部24に入力する。
【0030】
光アイソレータ5は、入力ポート2bから出力ポート2cに向かう方向である順方向に信号光L1を伝播させるとともに、当該順方向の逆方向には信号光L1を伝播させないための部品である。光アイソレータ5は、伝播した信号光L1を光合波器6に導く。
【0031】
光合波器6は、光アイソレータ5と励起用光ファイバ10との間に配置されている。例えば、光合波器6は、光ファイバ型波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)カプラである。光合波器6は、光アイソレータ5からの信号光L1と励起光源23からの励起光L3を合波する。光合波器6は、信号光L1と励起光L3との合波光を励起用光ファイバ10に入力する。
【0032】
励起光源23は、励起用光ファイバ10に入力する励起光L3を出力する。励起光源23は、例えば、励起レーザダイオード(励起LD)23bと、励起LD23bを駆動する駆動回路23cとを含む。例えば、励起光L3の波長は、0.98μmまたは1.48μmである。
【0033】
残留光放出ファイバ7は、励起用光ファイバ10と光アイソレータ8との間に配置されている。残留光放出ファイバ7は、残留している励起光L3を除去するための光ファイバである。残留光放出ファイバ7は、例えば、増幅光L2を伝播させるとともに励起光L3が漏れ出るように構成されている。この場合、励起光L3は残留光放出ファイバ7の側方から放出される。
【0034】
光アイソレータ8は、順方向に増幅光L2を伝播させるとともに逆方向には増幅光L2を伝播させないための部品である。光アイソレータ8は伝播した増幅光L2を光分波器9に入力する。
【0035】
光分波器9は、光アイソレータ8と出力ポート2cとの間に配置されている。光分波器9は、例えば、光ファイバカプラである。光分波器9は、入力された増幅光L2の一部を分岐し、分岐した増幅光L2の一部を光検出器22に導くとともに分岐した増幅光L2の残部を出力ポート2cに導く。光分波器9は、例えば、増幅光L2の1%を光検出器22に導き、増幅光L2の残りの99%を出力ポート2cに導く。
【0036】
光検出器22は、励起用光ファイバ10からの増幅光L2の一部を検出する。光検出器22は、例えば、PDである。光検出器22は、検出した増幅光L2の結果(検出結果)を制御部24に入力する。
【0037】
出力ポート2cは、増幅光L2を光増幅器1の外部に出力する部分である。例えば、出力ポート2cは、光コネクタである。出力ポート2cには、増幅光L2を伝播する光ファイバを含む増幅光伝送部32が接続される。例えば、増幅光伝送部32は光コネクタ32bを有し、光コネクタ32bが出力ポート2cに接続されている。
【0038】
制御部24は、偏波コントローラ3、光検出器21、光検出器22および励起光源23に電気的に接続されている。例えば、制御部24は、信号光L1をモニタする機能と、励起光源23の駆動電流を制御する機能と、励起LD23bに流れている電流をモニタする機能とを有する。
【0039】
例えば、制御部24は、光検出器21による信号光L1の検出結果をモニタするモニタ回路を有する。一実施形態において、制御部24は、信号光L1が入力ポート2bに入力されたか否か、および入力された信号光L1が一定レベルであるか否かを判定する。例えば、制御部24は、入力された信号光L1の信号レベル(強さ)が一定レベルに達していない場合、光増幅器1のユーザに信号光L1が一定レベルに達していないことを報知してもよい。
【0040】
制御部24は、光検出器22の検出結果が所定範囲内になるように励起光源23を駆動する駆動電流を制御する。すなわち、制御部24は、光検出器22による増幅光L2の検出結果をモニタするとともに、当該モニタの結果が一定範囲(例えば、増幅光L2の出力レベルが一定範囲)内となるように励起光源23を制御する。例えば、制御部24は、上記の検出結果が一定範囲内であるか否かを判定する判定回路と、当該判定回路における判定結果(モニタの結果)に応じて駆動電流をフィードバック制御する電流制御回路とを有してもよい。
【0041】
制御部24は、例えば、励起光源23が有する励起LD23bに実際に流れている駆動電流をモニタする。この場合、制御部24は、励起LD23bに流れている駆動電流が基準値から上昇しているか否かを判定する。制御部24は、駆動電流が基準値から上昇していると判定した場合、信号光L1の偏波状態を制御する旨の制御信号を偏波コントローラ3に出力する。制御部24は、上記の駆動電流が予め設定している上限値を超えているか否かを判定してもよい。
【0042】
次に、励起用光ファイバ10について詳細に説明する。励起用光ファイバ10は、入力ポート2bから入力された信号光L1を増幅して増幅光L2を生成し、増幅光L2を出力ポート2cに向けて出力する光増幅ファイバである。本実施形態において、励起用光ファイバ10は、光合波器6と残留光放出ファイバ7との間に配置されている。励起用光ファイバ10は、光合波器6から入力される信号光L1と励起光L3との合波光を伝播しながら当該合波光に含まれる信号光L1を増幅する。
【0043】
図2は、励起用光ファイバ10が延在する方向Dに直交する断面(以下では、単に断面と称する場合もある)を示している。すなわち、
図2は、励起用光ファイバ10の断面構成の例を示す図である。
図2に示されるように、励起用光ファイバ10は、励起光L3を吸収する希土類元素が添加されたコア11と、コア11を覆うクラッド領域12とを有する。
【0044】
クラッド領域12には励起光L3が供給され、コア11には信号光L1が供給される。例えば、励起光L3のパワー密度は、24(mW/(μm2))以上かつ300(mW/(μm2))以下である。励起光L3のパワー密度が24(mW/(μm2))以上であることにより、光増幅器1において所望の増幅効率を得ることができる。さらに、クラッド領域12を通る励起光L3の偏波方向がコア11を通る信号光L1の偏波方向からずれることを抑制でき、励起効率の低下を抑制できる。励起光L3のパワー密度が300(mW/(μm2))以下であることにより、励起用光ファイバ10の温度が高くなりすぎることを抑制できる。
【0045】
励起用光ファイバ10に励起光L3が供給されると、コア11に添加された希土類元素が励起されるとともに信号光L1が増幅する。例えば、コア11に添加されている希土類元素は、エルビウム(Er)、イットリビウム(Yb)またはツリウム(Tm)である。以下では、当該希土類元素がエルビウムである例について説明する。例えば、励起用光ファイバ10は、希土類元素イオンとしてエルビウム(Er)イオンが添加された希土類ドープファイバである。すなわち、励起用光ファイバ10は、希土類添加光ファイバである。例えば、励起用光ファイバ10は、ホスト材料であるガラスに希土類イオンとしてErがドープされた光ファイバである。この場合、光増幅器1は、エルビウムドープ光ファイバアンプ(EDFA:Erbium Doped optical Fiber Amplifier)である。
【0046】
例えば、クラッド領域12は、励起光源23からの励起光L3が伝播するクラッド13と、クラッド13を囲む外側クラッド14とを含む。この場合、励起用光ファイバ10は、二重クラッド構造を有する。しかしながら、励起用光ファイバ10は、外側クラッド14に代えて被覆を有していてもよい。
【0047】
励起用光ファイバ10が二重クラッド構造を有する場合、クラッド励起方式を有する光増幅器1とすることができる。コア11の屈折率をn1、クラッド13の屈折率をn2、外側クラッド14の屈折率をn3(n1、n2およびn3は正の実数)とすると、n1>n2>n3を満たす。
【0048】
コア11の中心部における励起光L3の電界強度を高めたり、コア11の周りを周回するスキュー成分の発生を抑制したりする観点から、クラッド13の断面は非円形状を呈する。断面におけるクラッド13の第1方向A1の長さX1は、断面におけるクラッド13の第1方向A1に直交する第2方向A2の長さX2よりも長い。第1方向A1は断面におけるクラッド13の長手方向であり、第2方向A2は断面におけるクラッド13の短手方向である。
【0049】
断面において、コア11は、長軸11bおよび短軸11cを有する形状を呈する。例えば、短軸11cの長さをa、長軸11bの長さをbとしたときに、(a/b)の値は0.1以上かつ0.7以下である。(a/b)の値が0.1以上であることにより、コア11の作製を容易に行える。(a/b)の値が0.7以下であることにより、コア11およびクラッド13における励起に寄与しない部分を低減できる。長軸11bは第1方向A1に沿って延びており、短軸11cは第2方向A2に沿って延びている。一例として、断面において、コア11は、楕円形状を呈する。この場合、上記の(a/b)の値はコア11の楕円率に相当する。第1方向A1はコア11の長軸11bが延びる長軸方向であり、第2方向A2はコア11の短軸11cが延びる短軸方向である。
【0050】
例えば、断面において、クラッド13は、偶数多角形の角部13bが長軸方向(第1方向A1)に延びた形状を呈する。「偶数多角形の角部が長軸方向に延びた形状」とは、偶数多角形の対角線上に位置する2つの角部(例えば2つの角部13b)の間の距離が偶数正多角形の場合よりも離された形状を示している。本実施形態において、クラッド13の断面は、星形12角形の角部13bが第1方向A1に延びた形状を呈する。すなわち、クラッド13の断面は、第2方向A2の長さよりも第1方向A1の長さが長い六芒星状(星形12角形状)を呈する。
【0051】
例えば、クラッド13の断面は、励起用光ファイバ10の外周面10bに向かって突出する複数の角部13bと、互いに隣接する2つの角部13bの間において外周面10bから離隔するように窪む複数の角部13cとを有する。一例として、角部13bの数、および角部13cの数は6である。なお、外側クラッド14の断面は円形状を呈する。
【0052】
例えば、クラッド13の断面に外接する図形15は、長軸15bおよび短軸15cを有する形状を呈する。例えばコア11と同様、短軸15cの長さをc、長軸15bの長さをdとしたときに、(c/d)の値が0.1以上かつ0.7以下であってもよい。一例として、図形15は、第1方向A1に沿って延びる長軸15b、および第2方向A2に沿って延びる短軸15cを有する長円形状を呈する。
【0053】
クラッド13は偏波軸13dを有し、偏波軸13dは第1方向A1に沿って延びている。第1方向A1はクラッド13の偏波方向である。コア11は偏波軸11dを有し、偏波軸11dは第1方向A1に沿って延びている。よって、第1方向A1はコア11の偏波方向であり、コア11の偏波方向はクラッド13の偏波方向と一致している。クラッド13の偏波方向はコア11の長軸11bが延びる方向(長軸方向)と一致している。すなわち、コア11の偏波面がクラッド13の偏波面に一致している。
【0054】
本開示において、「一致」とは、厳密に一致する場合に限られない。「偏波方向がコアの長軸が延びる方向である長軸方向と一致している」ことには、当該偏波方向が当該長軸方向に厳密には一致しないものの、当該偏波方向が当該長軸方向に対して若干ずれている場合(当該偏波方向が当該長軸方向と略一致している場合、一例として、当該長軸方向に対する当該偏波方向の角度が10°以下である場合)も含まれる。「偏波方向がコアの長軸が延びる方向である長軸方向と一致している」ことには、当該偏波方向が当該長軸方向に厳密には一致しないものの、厳密に一致する場合と同様の作用効果をもたらす場合も含まれる。
【0055】
次に、本実施形態に係る励起用光ファイバ10および光増幅器1から得られる作用効果について説明する。光増幅器1は励起用光ファイバ10を有し、励起用光ファイバ10は、励起光L3を吸収する希土類元素が添加されたコア11と、コア11を覆うクラッド13とを有する。励起用光ファイバ10が延在する方向Dに直交する断面において、コア11は長軸11bおよび短軸11cを有する形状を呈する。さらに、当該断面において、クラッド13の偏波軸13dが延びる方向である偏波方向がコア11の長軸11bが延びる方向である長軸方向と一致している。
【0056】
したがって、励起用光ファイバ10を使用し続けてコア11に熱応力が生じた場合であっても、クラッド13の偏波方向に対するコア11の長軸方向のずれを抑制できる。すなわち、コア11の長軸方向がクラッド13の偏波方向と一致しているので、コア11に熱応力が生じた場合であっても、クラッド13の偏波軸13dに対するコア11の偏波軸11dのずれが生じにくい。よって、コア11を進む信号光L1の偏波方向をクラッド13を進む励起光L3の偏波方向からずれにくくできるので、励起用光ファイバ10を長期間使用し続けた場合であっても励起効率が低下することを抑制できる。
【0057】
前述したように、断面において、クラッド13は、偶数多角形の角部13bが長軸方向に延びた形状を呈してもよい。この場合、クラッド13の偏波面を安定させることができるので、クラッド13における偏波をランダムになりにくくすることができる。前述したように、断面において、コア11は、楕円形状を呈してもよい。この場合、クラッド13を通る励起光L3の偏波方向がコア11を通る信号光L1の偏波方向に一致しないモードを低減できる。したがって、余分な偏波モードの発生を抑制できる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0059】
本開示において、励起用光ファイバの構成は適宜変更可能である。以下では、変形例に係る励起用光ファイバについて説明する。変形例に係る励起用光ファイバの一部の構成および機能は、前述した励起用光ファイバ10の一部の構成および機能と同一である。よって、以下では、励起用光ファイバ10の説明と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。
【0060】
図3は、第1変形例に係る励起用光ファイバ10Aの断面を示す図である。励起用光ファイバ10Aは、クラッド13とは異なる形状とされたクラッド13Aを有する。断面において、クラッド13Aは4つの角部13fを有する四角形状を呈する。断面において、クラッド13は、四角形(一例として正方形)の角部13fが長軸方向(第1方向A1)に延びた形状を呈する。断面において、クラッド13は、第1方向A1に沿って延びる長軸13g、および第2方向A2に沿って延びる短軸13hを有する菱形状を呈する。クラッド13Aの長軸13gはクラッド13Aの偏波軸に相当し、長軸13gは第1方向A1に沿って延びている。第1方向A1はコア11の偏波方向であり、コア11の偏波方向はクラッド13Aの偏波方向と一致している。励起用光ファイバ10Aからは前述した励起用光ファイバ10と同様の作用効果が得られる。
【0061】
図4は、第2変形例に係る励起用光ファイバ10Bの断面を示す図である。
図5は、第3変形例に係る励起用光ファイバ10Cを示す図である。励起用光ファイバ10Bのクラッド13Bは、6つの角部13jを有する六角形状を呈する。励起用光ファイバ10Cのクラッド13Cは、8つの角部13kを有する八角形状を呈する。断面において、クラッド13Bは六角形(一例として正六角形)の角部13jが第1方向A1に延びた形状を呈しており、クラッド13Cは八角形(一例として正八角形)の角部13kが第1方向A1に延びた形状を呈する。クラッド13Bを有する励起用光ファイバ10B、およびクラッド13Cを有する励起用光ファイバ10Cからも励起用光ファイバ10と同様の作用効果が得られる。
【0062】
図6は、第4変形例に係る励起用光ファイバ10Dの断面を示す図である。断面において、励起用光ファイバ10Dのクラッド13Dは、第1方向A1に沿って延びる長軸13p、および第2方向A2に沿って延びる短軸13qを有する隅丸長方形状を呈する。断面において、励起用光ファイバ10Dのコア11Dは、第1方向A1に沿って延びる長軸11p、および第2方向A2に沿って延びる短軸11qを有する隅丸長方形状を呈する。この励起用光ファイバ10Dからも励起用光ファイバ10と同様の作用効果が得られる。
【0063】
以上のように、励起用光ファイバのコアおよびクラッドの形状は特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。さらに、光増幅器についても当該要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0064】
例えば、光増幅器1において、偏波コントローラ3を用いた信号光L1の偏波状態の調整は、手動で実施されてもよい。例えば、信号光伝送部31が入力ポート2bに接続されたときに、駆動電流の検出結果に応じて偏波コントローラ3を手動で操作しながら、信号光L1の偏波状態を調整してもよい。光増幅器1を稼働した後においても、例えば、光増幅器1の定期点検のときであって変換効率が所望の値から低下しているときに、偏波コントローラ3を手動で操作しながら、信号光L1の偏波状態を調整してもよい。
【0065】
前述した実施形態では、光分波器4、光アイソレータ5、残留光放出ファイバ7および光アイソレータ8を有する光増幅器1について説明した。しかしながら、光増幅器は、光分波器4、光アイソレータ5、残留光放出ファイバ7および光アイソレータ8の少なくともいずれかを有しないものであってもよい。さらに、光増幅器は、複数の出力ポートを有していてもよい。この場合、励起用光ファイバからの増幅光を光分波器を介して複数の出力ポートに出力してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…光増幅器
2b…入力ポート
2c…出力ポート
3…偏波コントローラ
4…光分波器
5…光アイソレータ
6…光合波器
7…残留光放出ファイバ
8…光アイソレータ
9…光分波器
10,10A,10B,10C,10D…励起用光ファイバ
10b…外周面
11…コア
11b…長軸
11c…短軸
11d…偏波軸
11D…コア
11p…長軸
11q…短軸
12…クラッド領域
13,13A,13B,13C,13D…クラッド
13b,13c…角部
13d…偏波軸
13f…角部
13g…長軸
13h…短軸
13j,13k…角部
13k…角部
13p…長軸
13q…短軸
14…外側クラッド
15…図形
15b…長軸
15c…短軸
21,22…光検出器
23…励起光源
23b…励起レーザダイオード
23c…駆動回路
24…制御部
31…信号光伝送部
31b…光コネクタ
32…増幅光伝送部
32b…光コネクタ
L1…信号光
L2…増幅光
L3…励起光