(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169020
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】チャック付き包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/25 20060101AFI20241128BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241128BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B65D33/25 A
B65D65/40 D
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086189
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】本田 聡志
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA17
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064HM01
3E064HN13
3E086AC05
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB15
3E086CA01
3E086DA07
(57)【要約】
【課題】心地よい開封感を実現しながら、チャックの密閉性を維持でき、使用時の損傷(チャックの割れや剥がれ、袋の破れ等)を防止しつつ、実質的に単一の素材で構成された(すなわち、モノマテリアル化された)チャック付き包装袋を提供する。
【解決手段】ヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を含む包材10と、嵌合部21と土台部22とを有し、包材10に溶着可能なポリエステル系樹脂を含むチャックテープ20と、を備えたチャック付き包装袋100であって、嵌合部21を除いて、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を実質的に含まないように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を含む包材と、
嵌合部と土台部とを有し、前記包材に溶着可能なポリエステル系樹脂を含むチャックテープと、
を備えたチャック付き包装袋であって、
前記嵌合部を除いて、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を実質的に含まないように構成されているチャック付き包装袋。
【請求項2】
包装袋全体におけるポリエステル系樹脂の含有量をa1(質量部)とし、前記嵌合部におけるポリエステル系樹脂以外の樹脂の含有量をa2(質量部)としたとき、以下の式(1):
M = a1/(a1+a2) × 100 ・・・(1)
で表されるモノマテリアル率Mが、70%以上となるように構成されている請求項1に記載のチャック付き包装袋。
【請求項3】
前記包材は、アルミニウム及び/又はシリカ含有層を有する請求項1又は2に記載のチャック付き包装袋。
【請求項4】
前記嵌合部は、ポリオレフィン系樹脂を含む請求項1又は2に記載のチャック付き包装袋。
【請求項5】
前記嵌合部及び前記土台部は、接着層を介して接合されている請求項1又は2に記載のチャック付き包装袋。
【請求項6】
前記チャックテープを強く押圧したとき、前記嵌合部に含まれるポリエステル系樹脂以外の樹脂と、前記土台部に含まれるポリエステル系樹脂とが、前記接着層からはみ出して接触することにより形成される潰し部は、幅が0~350μm、厚みが0~400μmのサイズを有する請求項5に記載のチャック付き包装袋。
【請求項7】
揮散性物質を包装袋に封入した場合において、
前記包材における前記揮散性物質及び類縁物質の吸着量をb1(質量部)とし、対照として初期の前記揮散性物質の質量をb2(質量部)としたとき、以下の式(2):
A = b1/b2 ・・・(2)
で表される吸着比Aが、0.3以下となるように構成されている請求項1又は2に記載のチャック付き包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口を開閉可能なチャック付き包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
口にチャックを設けて開閉可能にしたチャック付き包装袋は、その手軽さから、例えば、化粧品、食品、サプリメント、工業薬品、香料、医薬品などを封入する用途において広く利用されている。チャック付き包装袋は、従来、ポリエチレン(PE)樹脂等のポリオレフィン系樹脂を用いたものが主流であった。ところが、ポリオレフィン系樹脂は、揮散性物質(香気成分、香辛料等)やその類縁物質を吸着し易く、保香性が劣るという欠点がある。そのため、従来のポリオレフィン系樹脂製の包装袋に、化粧品や食品等の揮散性物質を含むものを封入した場合、包装袋への揮散性物質の吸着や、包装袋からの揮散性物質の透過(匂い漏れ)が問題となることがあった。
【0003】
そこで、このような問題に対処するため、袋体の内側(最内層)にヒートシール性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層を設けたジッパー(チャック)付き袋体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1に記載のジッパー付き袋体は、表面に商品名や内容説明等を印刷したPETフィルムにヒートシール性PET樹脂層を積層してPETフィルム/インキ層/ヒートシール性PET樹脂層からなる袋体用積層材を形成し、次いで当該袋体積層材のヒートシール性PET樹脂層の側にジッパーテープを配置し、これらをヒートシール(加熱処理)することにより作製される。
【0005】
ヒートシール性PET樹脂層に用いられるPET樹脂は、揮散性物質やその類縁物質を吸着し難く、遮蔽性にも優れているため、特許文献1に記載のジッパー付き袋体では、包装袋(袋体)への揮散性物質の吸着や、包装袋からの揮散性物質の透過(匂い漏れ)の問題は幾分解消されていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のジッパー付き袋体のように、袋体の素材としてPET樹脂を用いた場合、従来のポリオレフィン系樹脂製のチャックを接着(溶着)することが困難になるという新たな問題が生じる。この問題への対処法としては、チャックについても袋体と同様にPET樹脂製のものを使用することが考えられるが、PET樹脂はポリオレフィン系樹脂と比べて硬く剛性が大きい素材のため、チャックを封鎖したとき密閉性が甘くなり、さらには、包装袋の使用時(チャックの開閉時)にチャックの割れや剥がれ、袋の破れ等の損傷が生じ易くなる。また、心地よい開封感も得られ難い。
【0008】
そこで、特許文献1に記載のジッパー付き袋体では、チャックに柔軟性を付与するべく、チャックの素材としてPET樹脂に他の樹脂を混合した混合樹脂を使用している。具体的には、PET樹脂にポリエステル系熱可塑性エラストマーを混合した第1の混合樹脂、又はPET樹脂に低密度ポリエチレン(LDPE)若しくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を混合した第2の混合樹脂を使用している(特許文献1の明細書第0049段落~第0051段落)。
【0009】
ところが、特許文献1のようにPET樹脂に他の樹脂を混合する方法は、チャックの製造工程が煩雑なものとなるうえ、チャックを最適な硬さにするための樹脂の配合を定めるには多くの試行錯誤を要する。さらに、昨今、樹脂のリサイクル率の向上が求められているところ、PET樹脂に他の樹脂を混合した混合樹脂を元の樹脂(単一樹脂)に戻すことは容易ではない。脱炭素化や環境問題が注目される中、今後、リサイクルを容易なものとするべく、素材のモノマテリアル化が益々求められることが予想される。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、心地よい開封感を実現しながら、チャックの密閉性を維持でき、使用時の損傷(チャックの割れや剥がれ、袋の破れ等)を防止しつつ、実質的に単一の素材で構成された(すなわち、モノマテリアル化された)チャック付き包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係るチャック付き包装袋の特徴構成は、
ヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を含む包材と、
嵌合部と土台部とを有し、前記包材に溶着可能なポリエステル系樹脂を含むチャックテープと、
を備えたチャック付き包装袋であって、
前記嵌合部を除いて、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を実質的に含まないように構成されていることにある。
【0012】
チャック付き包装袋は、ヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を含む包材に、嵌合部と土台部とを有するポリエステル系樹脂を含むチャックテープを溶着することにより得られるが、本構成のチャック付き包装袋によれば、チャックテープの嵌合部を除いて、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を実質的に含まないように構成されているため、口の開閉に直接関わる嵌合部には、ポリエステル系樹脂に縛られることなく、使用目的や求められる性能等に応じて適切な種類の樹脂を選択することができる。そして、嵌合部の素材として比較的柔軟な樹脂を使用した場合、心地よい開封感を実現しながら、チャックの密閉性を維持でき、使用時の損傷(チャックの割れや剥がれ、袋の破れ等)を防止することができる。また、チャック付き包装袋において、嵌合部が占める割合は僅かであるため、嵌合部を除いて、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を実質的に含まないように構成すれば、嵌合部にポリエステル系樹脂以外の樹脂を使用したとしても、チャック付き包装袋全体としては、その殆どにポリエステル系樹脂が含まれることになる。このようなチャック付き包装袋は、実質的に単一の素材で構成されたモノマテリアル化された製品であり、使用後のリサイクルが容易なものとなる。
【0013】
本発明に係るチャック付き包装袋において、
包装袋全体におけるポリエステル系樹脂の含有量をa1(質量部)とし、前記嵌合部におけるポリエステル系樹脂以外の樹脂の含有量をa2(質量部)としたとき、以下の式(1):
M = a1/(a1+a2) × 100 ・・・(1)
で表されるモノマテリアル率Mが、70%以上となるように構成されていることが好ましい。
【0014】
チャック付き包装袋において、上記の式(1)で表されるモノマテリアル率Mが、70%以上であれば、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を実質的に含まないものと見なすことができる。このようなチャック付き包装袋は、リサイクルに供することが容易なものとなる。従って、本構成のチャック付き包装袋によれば、70%以上のモノマテリアル率Mを達成することで、ポリエステル系樹脂のリサイクルが容易となり、脱炭素化や環境問題に貢献し得る。
【0015】
本発明に係るチャック付き包装袋において、
前記包材は、アルミニウム及び/又はシリカ含有層を有することが好ましい。
【0016】
本構成のチャック付き包装袋によれば、包材が、アルミニウム及び/又はシリカ含有層を有することにより、包装袋にバリア性、保香性、及び遮光性が付与される。従って、本構成のチャック付き包装袋は、化粧品や食品等の揮散性物質を含むものを封入する用途において好適な製品となり得る。
【0017】
本発明に係るチャック付き包装袋において、
前記嵌合部は、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
【0018】
チャック付き包装袋は、嵌合部を除いて、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を実質的に含まないように構成されているため、嵌合部は、ポリエステル系樹脂に縛られることなく適宜樹脂を選択できるが、本構成のチャック付き包装袋によれば、嵌合部がポリオレフィン系樹脂を含むように構成することで、嵌合部に適度な柔軟性を持たせることができる。その結果、ポリエステル系樹脂によるチャック付き包装袋全体のモノマテリアル化を達成しながら、チャックの密閉性を維持でき、使用時の損傷(チャックの割れや剥がれ、袋の破れ等)を防止することができる。
【0019】
本発明に係るチャック付き包装袋において、
前記嵌合部及び前記土台部は、接着層を介して接合されていることが好ましい。
【0020】
チャック付き包装袋は、嵌合部を除いて、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を実質的に含まないように構成されているため、嵌合部と土台部とで樹脂の種類が異なる場合がある。一般に、種類が異なる樹脂をそのまま接合しただけでは強度が不十分となり剥離が起こり易いが、本構成のチャック付き包装袋によれば、嵌合部及び土台部が接着層を介して接合されているため、嵌合部と土台部とが強固に一体化される。その結果、チャックの繰り返し使用による嵌合部の土台部からの剥離を防止することができる。
【0021】
本発明に係るチャック付き包装袋において、
前記チャックテープを強く押圧したとき、前記嵌合部に含まれるポリエステル系樹脂以外の樹脂と、前記土台部に含まれるポリエステル系樹脂とが、前記接着層からはみ出して接触することにより形成される潰し部は、幅が0~350μm、厚みが0~400μmのサイズを有することが好ましい。
【0022】
チャック付き包装袋を封鎖するにあたり、チャックの部分を強く押圧すると、嵌合部と土台部とが互いに押し付けられることに伴い、嵌合部に含まれるポリエステル系樹脂以外の樹脂と、土台部に含まれるポリエステル系樹脂とが接着層からはみ出して接触し、潰し部が形成される。この潰し部は、接着層を介して嵌合部と土台部とが接合されたものではなく、嵌合部と土台部とが擬似的に接着している領域であり、本来は不要なものである。このような潰し部が存在すると、チャック付き包装袋を無理に屈曲させた場合、潰し部から内容物がリークする虞もある。したがって、潰し部の形成は、最小限に抑えることが望ましい。本構成のチャック付き包装袋によれば、潰し部のサイズとして、幅が0~350μm、厚みが0~400μmであることにより、チャックテープが適切に嵌合している状態を維持できるため、包装袋の密閉性が確保され、使用時の損傷(チャックの割れや剥がれ、袋の破れ等)を防止することができる。
【0023】
本発明に係るチャック付き包装袋において、
揮散性物質を包装袋に封入した場合において、
前記包材における前記揮散性物質及び類縁物質の吸着量をb1(質量部)とし、対照として初期の前記揮散性物質の質量をb2(質量部)としたとき、以下の式(2):
A = b1/b2 ・・・(2)
で表される吸着比Aが、0.3以下となるように構成されていることが好ましい。
【0024】
本構成のチャック付き包装袋によれば、上記の式(2)で表される吸着比Aが、0.3以下であることにより、包材に対する揮散性物質及び類縁物質の吸着や透過が十分に抑えられるので、化粧品や食品等の揮散性物質を含むものを封入する用途において特に好適な製品となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るチャック付き包装袋の説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したチャック付き包装袋の断面図である。
【
図3】
図3は、チャック付き包装袋のチャックを両側から押圧することにより形成される潰し部を模式的に示した断面図である。
【
図4】
図4は、チャック付き包装袋の製造装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るチャック付き包装袋の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態や図面の記載に限定されることを意図しない。
【0027】
<チャック付き包装袋の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るチャック付き包装袋100の説明図である。
図1(a)は、チャック付き包装袋100の開口部10Aを開いた状態の斜視図である。
図1(b)は、チャック付き包装袋100の開口部10Aを閉じた状態の斜視図である。
図1では、チャック付き包装袋100の細部の構成は省略してある。
図2は、
図1に示したチャック付き包装袋100の断面図である。
図2(a)は、
図1(a)のチャック付き包装袋100のS1-S1位置における断面図である。
図2(b)は、
図1(b)のチャック付き包装袋100のS2-S2位置における断面図である。
図2では、チャック付き包装袋100の層構造を模式的に示しているが、実際の各層の厚み関係を正確に反映させたものとは限らない。
【0028】
チャック付き包装袋100は、基本的構成として、包材10と、チャックテープ20とを備える。
図1(a)に示すように、包材10には、開口部(口)10Aが設けられ、当該開口部10Aを介して内部に物品Xを出し入れ可能に構成される。物品Xとしては、例えば、化粧品、食品、サプリメント、工業薬品、香料、医薬品などが想定される。チャックテープ20は、包材10の開口部10A付近に設けられ、これにより、包材10の口がチャックの操作で開閉可能となる。以下、チャック付き包装袋100を構成する包材10、及びチャックテープ20について説明する。
【0029】
[包材]
包材10は、
図1(b)に示すように、矩形のフィルムを袋状に成形したものであり、側方から見ると、一方向(上方)の端部に開口部10Aが設けられる。上方以外の三方向の端部は、接着、溶着、ラミネート加工、ガゼット加工等の方法により封止されている。包材10は、
図2に示すように、複数の層構造を有しており、少なくとも第一層11と第二層12とを有する。第一層11は、包材10の内側に配され、ヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を含むように構成される(ヒートシール性ポリエステル系樹脂含有層)。第二層12は、包材10の外側に配され、ポリエステル系樹脂を含むように構成される(ポリエステル系樹脂含有層)。ここで、「ヒートシール性」とは、熱を加えることにより、接着性が発現する性質である。したがって、ヒートシール性があれば、接着剤を使用せずとも異種の素材どうしを接合し、一体化することができる。本実施形態の場合、第一層11としてヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を含むフィルムを使用することで、第一層11に別の部材(後述のチャックテープ20)を接着(溶着)することができる。また、第一層11と第二層12とを直接積層して接合する場合においても、接着剤の使用は必須ではなくなる。
【0030】
第一層11に使用されるポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、及びポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂、並びにこれらの樹脂の誘導体又は変性物等が挙げられる。好ましいポリエステル系樹脂は、PET樹脂である。なお、これらの樹脂(誘導体等を含む)は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。また、これらの樹脂は、バージン原料として供給されるものであってもよいし、使用済みプラスチック製容器(代表的には、PETボトル)等から得られたリサイクル原料として供給されるものであってもよい。
【0031】
第一層11に使用されるポリエステル系樹脂は、ヒートシール性を発現させるため、添加剤を配合したり、あるいは、ポリエステル系樹脂自体がヒートシール性を有するための処理が行われる。ポリエステル系樹脂にヒートシール性を発現させるための添加剤としては、例えば、改質剤、柔軟化剤、成形助剤、分散助剤、相溶化剤等が挙げられる。ポリエステル系樹脂自体がヒートシール性を有するための処理としては、ポリエステル系樹脂と他の樹脂等とのブレンド化、組成物化、又は共重合化等が挙げられる。ヒートシール性を有するポリエステル系樹脂は、市販品としても入手可能であり、例えば、タマポリ株式会社より販売されているPET系シーラントフィルム(商品名:ハイトロンPG)、東洋紡株式会社より販売されている二軸延伸ポリエステル系シーラントフィルム(商品名:オリエステル(登録商標)SS、エコシアール(登録商標)SS)などが挙げられる。なお、第一層11に使用されるポリエステル系樹脂には、上記の添加剤の他に、充填剤、アンチブロッキング剤、滑剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウィルス剤、消臭剤、紫外線防止剤、着色料、及び顔料等を配合することも可能である。
【0032】
第二層12に使用されるポリエステル系樹脂は、ヒートシール性を有することは必須ではないが、基本的には第一層11に使用されるポリエステル系樹脂と同じものを使用することができる。第二層12に使用されるポリエステル系樹脂に配合可能な添加剤についても、第一層11に使用されるポリエステル系樹脂に配合される添加剤と同じものを用いることができる。
【0033】
包材10には、様々な機能を付与するため、第一層11及び第二層12に加えて、さらなる層を設けることができる。
図2では、第一層11と第二層12との間に、第三層13としてアルミニウム及び/又はシリカ含有層を設けた例を示している。この場合、第一層11及び第二層12は、接着剤(接着層)やアンカーコート剤(アンカーコート層)を介して第三層13に接合される。接着剤及びアンカーコート剤は、公知のものを使用することができる。包材10にアルミニウム及び/又はシリカ含有層を設けることにより、チャック付き包装袋100にバリア性、保香性、及び遮光性等の機能性を付与することができる。第三層13を構成するアルミニウム及び/又はシリカ含有層の形態としては、代表的にはアルミニウム薄膜等の金属膜(箔)が挙げられるが、アルミニウム、アルミナ、又はシリカの微粒子を樹脂に分散もしくは蒸着させた金属微粒子含有フィルムを用いることも可能である。金属微粒子含有フィルムは、金属膜と比べて包材10の透明性が損なわれないため、チャック付き包装袋100に封入した物品Xの確認が容易となる点で使い勝手に優れたものとなる。金属微粒子含有フィルムとしては、例えば、本出願人(凸版印刷株式会社)が製造販売している、ベースとなる樹脂フィルムの上にバリアコート層とアルミナもしくはシリカ蒸着層とを積層してなる透明バリアフィルム(商品名:GL BARRIER(登録商標))や、東レフィルム加工株式会社が製造販売している、PETフィルムにアルミニウムを蒸着したアルミ蒸着バリアフィルム等が挙げられる。なお、後述の実施例では、上記の透明バリアフィルムを「GL FILM」と称し、アルミ蒸着バリアフィルムを「VM-PET」と称する。
【0034】
[チャックテープ]
チャックテープ20は、包材10の開口部10A付近に溶着され、チャック付き包装袋100のチャックを構成する。チャックテープ20は、
図2に示すように、嵌合部21と土台部22とを有する。嵌合部21は、オス部材21aと、メス部材21bとから構成される。土台部22は、オス部材21aの土台となる第一部材22aと、メス部材21bの土台となる第二部材22bとから構成される。
図1(a)に示す開状態にあるチャック付き包装袋100において、チャックテープ20を両側から押圧すると、
図2(b)に示すように、嵌合部21のオス部材21aとメス部材21bとが嵌合し、チャック付き包装袋100は閉状態となる。この閉状態から、チャック付き包装袋100の開口部(口)10Aの対向する位置を夫々摘みながら外方向に開くと、
図2(a)に示すように、オス部材21aとメス部材21bとの嵌合が解除され、チャック付き包装袋100は開状態となる。
【0035】
チャックテープ20には、心地よい開封感を実現しながら、嵌合部21の嵌合による密閉性を維持でき、さらにチャックに割れや剥がれが発生しないことが求められる。また、チャックテープ20は、包材10に対して土台部22を十分な強度で接着(溶着)させる必要がある。本実施形態では、これらの条件を考慮したうえで、チャックテープ20の素材を選定している。以下、チャックテープ20の素材について説明する。
【0036】
チャック付き包装袋100は、リサイクル性を高めるため、素材として主にポリエステル系樹脂を使用している。ところが、ポリエステル系樹脂は、一般に硬く剛性が大きい素材であるがゆえ、密閉性を維持するために適度な柔軟性が求められるチャックテープ20の嵌合部21においては、ポリエステル系樹脂をそのまま用いることが望ましくない場合がある。そこで、本実施形態では、チャックテープ20の土台部22はポリエステル系樹脂を含み、一方、チャックテープ20の嵌合部21はポリエステル系樹脂以外の樹脂(以下、「非ポリエステル系樹脂」と称する場合がある。)を含むように、樹脂の種類が選定される。土台部22に使用されるポリエステル系樹脂は、包材10に使用されるポリエステル系樹脂と同じものが挙げられる。したがって、包材10がポリエステル系樹脂を含むこととあわせると、チャック付き包装袋100は、嵌合部21を除いて、ポリエステル系樹脂以外の樹脂(非ポリエステル系樹脂)を実質的に含まないように構成される。このようなチャック付き包装袋100は、実質的に単一の素材(ポリエステル系樹脂)で構成されたモノマテリアル化された製品であり、使用後のリサイクルが容易なものとなる。また、嵌合部21に適度な柔軟性を有する非ポリエステル系樹脂を使用することで、心地よい開封感を実現しながら、チャックの密閉性を維持でき、使用時の損傷(チャックの割れや剥がれ、袋の破れ等)を防止することができる。
【0037】
チャックテープ20の嵌合部21に用いられる非ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、及びポリアクリレート系樹脂等が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂の中でもポリエチレン(PE)樹脂、及びポリプロピレン(PP)樹脂がより好ましく、ポリエチレン(PE)樹脂が特に好ましい。PE樹脂は、PET樹脂などのポリエステル系樹脂と比較して優れた柔軟性を有することから、密閉性が求められる嵌合部21として好ましい素材である。
【0038】
チャックテープ20において、嵌合部21(オス部材21a又はメス部材21b)及び土台部22(第一部材22a又は第二部材22b)は、繰り返し開閉操作を行っても剥離しないように十分な強度を有する必要がある。ところが、上述したように、嵌合部21が非ポリエステル系樹脂(例えば、PE樹脂)から構成され、土台部22がポリエステル系樹脂(例えば、PET樹脂)から構成されているものでは、嵌合部21と土台部22とで樹脂の種類が異なるため、両者をそのまま接合しただけでは強度が不十分となり、嵌合部21が土台部22から剥離する虞がある。そこで、
図2に示すように、嵌合部21及び土台部22は、接着層23を介して接合されることが好ましい。これにより、嵌合部21と土台部22とが強固に一体化される。その結果、チャック付き包装袋100の開閉操作を繰り返し行っても、嵌合部21は土台部22から剥離することなく、その機能を維持することができる。
【0039】
接着層23の素材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン-プロピレンゴム、エポキシ基含有モノマー-エチレン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステルとジカルボン酸無水物モノマーとの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-イソブチルアクリレート共重合体などの共重合体、熱可塑性ポリエステルなどのポリエステル系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などの脂環族系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、並びにこれらの樹脂の誘導体又は変性物等が挙げられる。これらの樹脂(誘導体等を含む)は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、接着層23として、ポリエステル系樹脂以外の樹脂を使用すると、後述するチャック付き包装袋100のモノマテリアル率が低下することになるが、チャック付き包装袋100全体からすれば、接着層23が占める割合はごく僅かであるため、チャック付き包装袋100のモノマテリアル化には実質的に影響しない。
【0040】
<チャック付き包装袋の密閉性>
図3は、チャック付き包装袋100のチャックを両側から押圧することにより形成される潰し部24を模式的に示した断面図である。同図において、潰し部24を拡大した断面を一点鎖線で囲んだ楕円内に示す。チャック付き包装袋100は、開口部10Aの付近をチャックテープ20に沿って両側から指等で押さえながら摩擦することにより、
図2(b)に示すように、嵌合部21のオス部材21aとメス部材21bとが嵌合し、チャック付き包装袋100が封鎖される。このとき、チャックテープ20に作用する圧力が過大(例えば、0.1MPa以上)であると、嵌合部21と土台部22とが強い力で互いに押し付けられることに伴い、嵌合部21に含まれる非ポリエステル系樹脂と、土台部22に含まれるポリエステル系樹脂とが接着層23からはみ出して接触し、潰し部24が形成される。この潰し部24は、接着層23を介して嵌合部21と土台部22とが接合されたものではなく、嵌合部21と土台部22とが擬似的に接着している領域であり、本来は不要なものである。このような潰し部24が存在すると、チャック付き包装袋100を無理に屈曲させた場合、潰し部24から内容物がリークする虞もある。したがって、潰し部24の形成は、最小限に抑えることが望ましい。そこで、本実施形態では、
図3に示す潰し部24が接着層23からはみ出している部位の幅をLとし、厚みをDとしたとき、嵌合部21及び/又は土台部22の形状を工夫するなどして、潰し部24の幅Lを0~350μm、厚みDを0~400μmに収まるように、好ましくは幅Lを0~200μm、厚みDを0~300μmに収まるようにように調整している。これにより、チャックテープ20が適切に嵌合している状態を維持できるため、チャック付き包装袋100の密閉性が確保され、使用時の損傷(チャックの割れや剥がれ、袋の破れ等)を防止することができる。
【0041】
<チャック付き包装袋のモノマテリアル化>
チャック付き包装袋100をリサイクルに供するには、チャック付き包装袋100が実質的に単一の素材で構成されていること、すなわちモノマテリアル化されていることが望ましいが、チャックテープ20の嵌合部21に非ポリエステル系樹脂を使用すると、包材10はポリエステル系樹脂を主原料としているため、チャック付き包装袋100全体から見ると、ポリエステル系樹脂の中に少量の非ポリエステル系樹脂が混入することになる。そこで、リサイクルにあたっては、チャック付き包装袋100におけるポリエステル系樹脂の含有率(使用率)を把握することが肝要である。
【0042】
ここで、樹脂製品における特定の単一樹脂の含有率を「モノマテリアル率」と定義すると、チャック付き包装袋100におけるポリエステル系樹脂のモノマテリアル率Mは、以下の式(1)で表される。
M = a1/(a1+a2) × 100 ・・・(1)
a1:包装袋全体におけるポリエステル系樹脂の含有量(質量部)
a2:嵌合部におけるポリエステル系樹脂以外の樹脂の含有量(質量部)
【0043】
モノマテリアル率Mがどの程度であれば、リサイクルに供することが可能なモノマテリアル化されたものと評価し得るかについては、樹脂の種類やリサイクル法によって異なるため一概に決めることは難しいが、少なくともポリエステル系樹脂のモノマテリアル率Mとして70%以上、好ましくは90%以上であれば、ポリエステル系樹脂以外の樹脂(非ポリエステル系樹脂)を実質的に含まないものと見なすことができ、リサイクルに供することが容易となる。なお、チャック付き包装袋100には、樹脂以外の素材(金属等)が含まれる場合があるが、樹脂以外の素材については、モノマテリアル率Mには含めないものとする。また、包材10を構成する各層が接着剤やアンカーコート剤を介して接合される場合があるが、この場合における接着剤及びアンカーコート剤の使用量は少量であるため、モノマテリアル率Mの算出において、接着剤等の質量を考慮に入れなかったとしても大きな影響はない。
【0044】
チャック付き包装袋100においては、包装袋100全体に対して嵌合部21が占める割合は僅か(質量で10%以下)であるため、嵌合部21を除いて、非ポリエステル系樹脂を実質的に含まないように構成すれば、嵌合部に非ポリエステル系樹脂を使用したとしても、チャック付き包装袋100全体としては、モノマテリアル率Mは90%以上を達成することができる。したがって、本実施形態のチャック付き包装袋100の構成であれば、ポリエステル系樹脂によるモノマテリアル化を達成することができ、リサイクルが容易となる。そして、このようなモノマテリアル化されたチャック付き包装袋100は、脱炭素化や環境問題にも貢献し得るものといえる。
【0045】
<チャック付き包装袋の吸着性>
チャック付き包装袋100は、主にポリエステル系樹脂から構成されるが、嵌合部21を除いて、ポリエステル系樹脂以外の樹脂(本実施形態では、ポリオレフィン系樹脂)を実質的に含まないように構成される。ポリエステル系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂と比較して揮散性物質やその類縁物質を吸着し難いため、チャック付き包装袋100は、化粧品や食品等の揮散性物質を含むものを封入する用途に適したものとなり得る。揮散性物質(又は揮散性物質を含むもの)を例示すると、リモネン、カルボン、リナロール、ゲラニオール、ネロール、ヒノキチオール等の香気成分、カプサイシン、ターメリック、ナツメグ、ショウガ、ワサビ、カラシ、ハーブ等の香辛料、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の短鎖脂肪酸、サラダ油、バター、ラード等の油脂類などが挙げられる。また、入浴剤、石鹸、シャンプー、酸・アルカリ洗剤等の生活用品にも揮散性物質を含むものがある。類縁物質は、上記の揮散性物質の誘導体等である。
【0046】
ここで、揮散性物質をチャック付き包装袋100に封入した場合、包材10への当該揮散性物質の吸着の程度は、以下の式(2)で表される吸着比Aによって評価される。
A = b1/b2 ・・・(2)
b1:包材における揮散性物質及び類縁物質の吸着量(質量部)
b2:初期の揮散性物質の質量(質量部)
【0047】
上記の吸着比Aは、例えば、以下の手順により求めることができる。
(1)ポリエステル系樹脂を含む包材で作製したチャック付き包装袋を秤量する(d1)。
(2)サンプル品(例えば、化粧品)に含まれる揮散性物質の含有量を求め(あるいはパッケージに記載されている説明等から確認し)、これを初期の揮散性物質の質量b2とする。
(3)上記(1)のチャック付き包装袋に(2)のサンプル品を入れ、チャックテープを封鎖する。
(4)所定時間経過後、チャックテープを開けてチャック付き包装袋からサンプル品を取り出し、内部を空気で置換して再びチャックテープを封鎖する。
(5)上記(4)のチャック付き包装袋を秤量する(d2)。
(6)d2とd1との差分(d2-d1)を求め、これを包材における揮散性物質及び類縁物質の吸着量b1とする。
(7)吸着量b1と質量b2との比から、吸着比A(b1/b2)を算出する。
【0048】
なお、上記の手順で求めた吸着比A(b1/b2)は、質量比として表わされるものであるが、質量「mg」は濃度「ppm」と相関関係があることから、例えば、ガスクロマトグラフィーを用いてサンプル品に含まれる揮散性物質の濃度b2´、及び包材が吸着した揮散性物質及び類縁物質の濃度b1´を測定し、濃度比A´(b1´/b2´)を吸着比A(b1/b2)とみなしてもよい。
【0049】
チャック付き包装袋100において、上記の手順により求められた吸着比Aが、0.3以下、好ましくは0.2以下であれば、包材10に対する揮散性物質及び類縁物質の吸着や透過が十分に抑えられていると評価することができる。
【0050】
<チャック付き包装袋の製造装置>
図4は、チャック付き包装袋の製造装置200の概略構成を示す説明図である。
図4(a)は、チャックテープ20が嵌合状態で供給される実施形態の説明図である。
図4(b)は、チャックテープ20が分離状態で供給される実施形態の説明図である。チャック付き包装袋の製造装置200は、包材10及びチャックテープ20を供給する供給部210と、包材10にチャックテープ20を溶着する溶着部220と、チャックテープ20が溶着された包材10を包装袋に加工する製袋部230とを備えている。
【0051】
[供給部]
供給部210は、包材10が巻回された第一供給ローラ211及び第二供給ローラ212と、チャックテープ20が巻回された第三供給ローラ213とを有する。第一供給ローラ211及び第二供給ローラ212に巻回される包材10は、ヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を含む第一層11とポリエステル系樹脂を含む第二層12とが予め積層されたもの、さらに必要に応じて第一層11と第二層12との間にアルミニウム及び/又はシリカ含有層を有する第三層13が予め積層されたものである。第一供給ローラ211及び第二供給ローラ212は、何れも第一層11が内側となるように包材10が巻回される。
【0052】
供給部210は、第一供給ローラ211及び第二供給ローラ212に各層を予め積層した包材10を巻回し、第一供給ローラ211及び第二供給ローラ212から積層体を繰り出す構成には限定されず、例えば、別々の供給ローラ(図示せず)から第一層11、第二層12、必要に応じて第三層13を夫々繰り出し、これらを第一供給ローラ211及び第二供給ローラ212に集結して積層する構成としてもよい。
【0053】
第三供給ローラ213は、
図4(a)に示す実施形態では、嵌合した状態のチャックテープ20が巻回されている。後段の溶着部220において、チャックテープ20を包材10に溶着するには、チャックテープ20の嵌合状態を一旦解除する必要がある。そこで、この実施形態では、第三供給ローラ213の下流側にチャックテープ20をオス部材21a側とメス部材21b側とに分離する分離部材214が設けられる。
【0054】
第三供給ローラ213は、
図4(b)に示す実施形態では、二つのサブ供給ローラ213a,213bで構成されている。チャックテープ20は、予めオス部材21a側とメス部材21b側とに分離され、サブ供給ローラ213a,213bに夫々巻回されている。この実施形態では、サブ供給ローラ213aがオス部材21a側のチャックテープ20を供給し、サブ供給ローラ213bがメス部材21b側のチャックテープ20を供給するように構成される。
【0055】
[溶着部]
溶着部220は、一対の第一圧着ローラ221及び第一加熱部材222と、一対の第二圧着ローラ223及び第二加熱部材224とを有する。
【0056】
第一圧着ローラ221と第一加熱部材222との間には周回する無端ベルト225が配されており、第一供給ローラ211から繰り出された包材10、及び第三供給ローラ213(213a)から繰り出されたオス部材21a側のチャックテープ20は、下流に進行しながら無端ベルト225を介して第一加熱部材222により加熱され、同時に第一圧着ローラ221により加圧される。これにより、包材10にオス部材21a側のチャックテープ20が溶着される。
【0057】
第二圧着ローラ223と第二加熱部材224との間には周回する無端ベルト226が配されており、第二供給ローラ212から繰り出された包材10、及び第三供給ローラ213(213b)から繰り出されたメス部材21b側のチャックテープ20は、下流に進行しながら無端ベルト226を介して第二加熱部材224により加熱され、同時に第二圧着ローラ223により加圧される。これにより、包材10にメス部材21b側のチャックテープ20が溶着される。
【0058】
溶着部220は、無端ベルト225(無端ベルト226)を介して包材10及びチャックテープ20を第一加熱部材222(第二加熱部材224)により加熱する構成には限定されず、例えば、第一圧着ローラ221(第二圧着ローラ223)に対向する加熱ローラ(図示せず)を設け、当該加熱ローラと第一圧着ローラ221(第二圧着ローラ223)とで包材10及びチャックテープ20を挟みながら加熱及び加圧し、包材10にチャックテープ20を溶着する構成としてもよい。
【0059】
オス部材21a側のチャックテープ20が溶着された包材10と、メス部材21b側のチャックテープ20が溶着された包材10とは、次工程(製袋)に供される前に合流部材227に沿って流れることで合わされ、チャックテープ20が嵌合状態となる。
【0060】
[製袋部]
製袋部230は、加工部231を有する。加工部231では、チャックテープ20が溶着された包材10に対して、成型、切断、折り曲げ、接着、溶着等の各種加工が行われ、チャック付き包装袋100に仕上げられる。加工部231で行われる工程は、従来公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
<別実施形態>
上記実施形態にて説明したチャック付き包装袋100は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、様々な改変が可能である。以下、そのような改変例を別実施形態として説明する。
【0062】
〔1〕上記実施形態のチャック付き包装袋100に使用するチャックテープ20は、嵌合部21を構成するオス部材21a及びメス部材21bの双方が非ポリエステル系樹脂を含むものであったが、オス部材21a又はメス部材21bの一方が非ポリエステル系樹脂を含み、他方がポリエステル系樹脂を含むように構成することも可能である。オス部材21a又はメス部材21bの一方が非ポリエステル系樹脂を含むものであれば、相手方の部材が硬い素材(ポリエステル系樹脂)で構成されたものであっても、適度な柔軟性を有する一方の部材が相手方の部材を受け入れて嵌合状態を達成することができる。
【0063】
〔2〕上記実施形態のチャック付き包装袋100は、包材10にチャックテープ20を溶着させるため、包材10の最内層にヒートシール性ポリエステル系樹脂含有層を設けるものとしたが、チャックテープ20の土台部22がヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を含むように構成することも可能である。この場合、包材10側にヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を使用しなくても、チャックテープ20の土台部22を溶融させて包材10の最内層に接着することができる。その結果、チャック付き包装袋100全体としてヒートシール性を有するポリエステル系樹脂の使用量を低減することが可能となる。
【実施例0064】
〔チャック付き包装袋の構成例〕
上記実施形態のチャック付き包装袋100に使用する包材10は、
図2に示すように、内側から(1)ヒートシール性ポリエステル系樹脂含有層、(2)アルミニウム及び/又はシリカ含有層、(3)ポリエステル系樹脂含有層を積層したものであったが、包材10は4層以上に構成することも可能である。以下、本発明のチャック付き包装袋の構成例(層構成)について、実施例を挙げてより具体的に説明する。
【0065】
<実施例1>
初めに(1)ヒートシール性ポリエステル系樹脂含有層としてヒートシール性PETフィルム(30μm)、(2)ウレタン樹脂系接着剤、(3)アルミニウム及び/又はシリカ含有層としてアルミニウム薄膜(7μm)、(4)ポリオレフィン系樹脂含有層としてPEフィルム(15μm)、(5)アンカーコート層、(6)インク層、(7)ポリエステル系樹脂含有層としてPETフィルム(16μm)を積層した積層体を作製した。この積層体を適宜のサイズに切断して矩形の包材とし、包材の内側となる(1)ヒートシール性PETフィルムの表面の一方向の端部付近にPET樹脂を含むチャックテープを溶着し、残りの三方向の端部を封止することにより、実施例1のチャック付き包装袋を得た。
【0066】
<実施例2>
積層体の構成を(1)ヒートシール性PETフィルム(30μm)、(2)ウレタン樹脂系接着剤、(3)インク層、(4)PETフィルム(12μm)とした。この積層体から実施例1と同様の手順により、実施例2のチャック付き包装袋を得た。
【0067】
<実施例3>
積層体の構成を(1)ヒートシール性PETフィルム(30μm)、(2)ウレタン樹脂系接着剤、(3)透明バリアフィルム(12μm)、(4)ウレタン樹脂系接着剤、(5)インク層、(6)PETフィルム(12μm)とした。この積層体から実施例1と同様の手順により、実施例3のチャック付き包装袋を得た。
【0068】
<実施例4>
積層体の構成を(1)ヒートシール性PETフィルム(30μm)、(2)ウレタン樹脂系接着剤、(3)アルミニウム蒸着PETフィルム(12μm)、(4)PEフィルム(15μm)、(5)アンカーコート層、(6)インク層、(7)PETフィルム(12μm)とした。この積層体から実施例1と同様の手順により、実施例4のチャック付き包装袋を得た。
【0069】
<実施例5>
積層体の構成を(1)ヒートシール性PETフィルム(30μm)、(2)ウレタン樹脂系接着剤、(3)透明バリアフィルム(12μm)、(4)PEフィルム(15μm)、(5)PETフィルム(12μm)とした。この積層体から実施例1と同様の手順により、実施例5のチャック付き包装袋を得た。
【0070】
<実施例6>
積層体の構成を(1)ヒートシール性PETフィルム(30μm)、(2)ウレタン樹脂系接着剤、(3)アルミニウム蒸着PETフィルム(12μm)、(4)ウレタン樹脂系接着剤、(5)PETフィルム(12μm)とした。この積層体から実施例1と同様の手順により、実施例6のチャック付き包装袋を得た。
【0071】
<比較例1>
積層体の構成を(1)PEフィルム(30μm)、(2)アルミニウム薄膜(7μm)、(3)PEフィルム(15μm)、(4)PETフィルム(12μm)とした。この積層体から実施例1と同様の手順により、比較例1のチャック付き包装袋を得た。比較例1のチャック付き包装袋は、ヒートシール性を有するポリエステル系樹脂を含まないものである。
【0072】
〔チャック付き包装袋の評価〕
実施例1~6及び比較例1のチャック付き包装袋について、(a)モノマテリアル化を評価した。また、実施例1のチャック付き包装袋について、異なる条件で潰し部を形成し、(b)密閉性を評価した。さらに、実施例1及び比較例1のチャック付き包装袋について、(c)吸着性を評価した。
【0073】
(a)モノマテリアル化
上記実施形態で説明した式(1)から、実施例1~6及び比較例1のチャック付き包装袋におけるPET樹脂のモノマテリアル率Mを算出した。モノマテリアル率Mが70%以上であれば、実質的に単一の素材で構成されたものと見なせるためモノマテリアル化が達成できたと評価でき、使用後のリサイクルが容易なものとなる。モノマテリアル率Mの算出結果及び評価を表1に示す。モノマテリアル化が達成されたと評価し得るものを「○」とし、そうでないものを「×」とした。
【0074】
【0075】
表1より、実施例1~6のチャック付き包装袋は、何れもモノマテリアル率Mが70%以上であり、モノマテリアル化が達成されたと評価された。これに対し、比較例1のチャック付き包装袋は、モノマテリアル率Mが70%を大きく下回っており、モノマテリアル化が達成されなかったと評価された。
【0076】
(b)密閉性
チャック付き包装袋の密閉性は、チャックを両側から押圧したときに形成される潰し部の状態(サイズ)によって評価することができる。そして、チャック付き包装袋の密閉性が良好であれば、心地よい開封感が得られるとともに、使用時の損傷(チャックの割れや剥がれ、袋の破れ等)を防止することができる。本実施例では、実施例1のチャック付き包装袋のチャック部分に両側から0~0.1MPaの範囲で4段階の力を付与することにより4つの状態の潰し部を形成した(これらを実施例1-1~1-4とする)。そして、各チャック付き包装袋をナイフで切断し、切断面を光学顕微鏡で観察し、潰し部の幅L及び厚みDを計測した。計測結果及び評価を表2に示す。密閉性が良好であると評価し得るものを「○」とした。
【0077】
【0078】
表2より、実施例1(実施例1-1~1-4)のチャック付き包装袋は、潰し部のサイズが規定範囲内(幅L:0~350μm、厚みD:0~400μm)であり、密閉性が良好であると評価された。なお、実施例2~6のチャック付き包装袋については、密閉性に関する直接の評価は行っていないが、表1に示すとおり、実施例2~6は実施例1よりもモノマテリアル率が高いため、実施例1と同等以上の良好な密閉性が得られるものと推認される。
【0079】
(c)吸着性
上記実施形態で説明した式(2)から、実施例1及び比較例1のチャック付き包装袋について、包材に対する揮散性物質の吸着比Aを求めた。吸着比Aが0.3以下であれば、包材に対する揮散性物質及び類縁物質の吸着や透過が十分に抑えられるものと評価でき、化粧品や食品等の包装袋として好適なものとなる。本実施例では、チャック付き包装袋に入れるサンプル品を化粧品とし、揮散性物質として化粧品に含まれる香気成分の吸着比Aを求めた。吸着比Aの算出結果及び評価を表3に示す。吸着性が良好であると評価し得るものを「○」とし、そうでないものを「×」とした。
【0080】
【0081】
表3より、実施例1のチャック付き包装袋は、吸着比Aが0.3以下であり、吸着性が良好であると評価された。比較例1のチャック付き袋は、吸着比Aが0.3を大きく超えおり、吸着性に問題があると評価された。なお、実施例2~6のチャック付き包装袋については、吸着性に関する直接の評価は行っていないが、表1に示すとおり、実施例2~6は実施例1よりもモノマテリアル率が高いため、実施例1と同等以上の良好な吸着性が得られるものと推認される。
本発明のチャック付き包装袋は、化粧品、食品、サプリメント、工業薬品、香料、医薬品などの物品を封入する資材として用いられるものであるが、当該物品の搬送、保管、陳列、販売、譲渡、貸与、小分け等を行う際に使用する袋として利用可能である。