(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169022
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】鉄道レール冷却システム
(51)【国際特許分類】
B61K 3/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B61K3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086191
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 正浩
(57)【要約】
【課題】鉄道車両に設けられるレール冷却システムを提供する。
【解決手段】本発明に係るレール冷却システムは、鉄道車両に設けられるレール冷却システムであって、貯水タンクと、貯水タンクと給水管を介して接続され、鉄道車両の車輪または走行レールに向けて水を噴出するように設置されたノズルとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に設けられるレール冷却システムであって、
貯水タンクと、
前記貯水タンクと給水管を介して接続され、前記鉄道車両の車輪または走行レールに向けて水を噴出するように設置されたノズルと
を備えるレール冷却システム。
【請求項2】
前記鉄道車両は空調装置を備え、
前記貯水タンクは、前記空調装置から排出される排水を貯めるためのタンクである
ことを特徴とする、請求項1に記載のレール冷却システム。
【請求項3】
前記給水管に設けられ、前記貯水タンクから前記ノズルへの水の供給を制御する開閉装置と、
前記開閉装置の開閉を制御するための制御装置と
をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のレール冷却システム。
【請求項4】
温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記温度センサにより計測された温度が所定の温度以上である場合に、前記開閉装置を開放する
ことを特徴とする、請求項3に記載のレール冷却システム。
【請求項5】
測位センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記測位センサにより計測された位置が所定のエリアに含まれる場合に、前記開閉装置を開放する
ことを特徴とする、請求項3に記載のレール冷却システム。
【請求項6】
制御切替スイッチをさらに備え、
前記制御装置は、前記制御切替スイッチにより開制御が指示された場合に、前記開閉装置を開放する
ことを特徴とする、請求項3に記載のレール冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道レールを冷却するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道レールは太陽光の直射により熱膨張することで、伸びや歪みが生じてしまう。このような伸びや歪みは、最悪の場合、車両の脱線を引き起こしてしまう。そのため、鉄道レールの熱膨張を防止するための技術が従来提案されている。例えば、特許文献1には、レール冷却システムが記載されている。このレール冷却システムは、鉄道車両の走行用のレールを冷却するレール冷却システムであって、レールの側面に向かって水を噴射する複数のノズルを備え、複数のノズルのそれぞれは、レール側面の冷却対象領域の形状に合わせた噴射パターンで水を噴射する噴射口を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のレール冷却システムは、レール側に固定的に設けられるシステムである。これに対して本発明は、鉄道車両に設けられるレール冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明に係るレール冷却システムは、鉄道車両に設けられるレール冷却システムであって、貯水タンクと、前記貯水タンクと給水管を介して接続され、前記鉄道車両の車輪または走行レールに向けて水を噴出するように設置されたノズルとを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、鉄道車両に設けられるレール冷却システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図2は、レール冷却システム200の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施例
本発明の一実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施例の概要を示す。同図に示す鉄道車両101は、本実施例に係るレール冷却システム200が設けられる対象の一例である。
【0009】
鉄道車両101は、その屋根上に空調装置102を備えている。この空調装置102は、具体的には、熱交換器(図示略)を備える冷房装置である。この空調装置102は、鉄道車両101の車内から空気を取り入れ、熱交換器で冷却した上で車内に吹き戻す。その過程で、車内の空気中の水蒸気が熱交換器上で凝縮して結露水(言い換えると、排水)が発生する。
【0010】
図1の矢印103は、この排水の流路を示している。空調装置102で発生した排水は、空調装置102から鉄道車両101の台車付近へと案内され、当該車両の車輪104とレール105に散水される。この結果、レール105が冷却され、当該レールの熱膨張が抑制される。加えて、本実施例によれば、空調装置102の排水を有効活用できる。
【0011】
図2は、本実施例に係るレール冷却システム200の構成例を示す。同図に示すレール冷却システム200は、排水管201、貯水タンク202、オーバーフロー管203、給水管204、開閉装置205、ノズル206、制御装置207、温度センサ208、測位センサ209および制御切替スイッチ210を備える。以下、各構成要素について説明する。
【0012】
排水管201は、その一端が空調装置102に接続され、その他端が貯水タンク202の天井面に接続されている。この排水管201は、空調装置102で発生した排水を貯水タンク202に案内する。
なお、排水管201の他端は、オーバーフロー管203の接続箇所よりも上に接続されていれば、貯水タンク202の天井面以外に接続されてもよい。
【0013】
貯水タンク202は、排水管201に案内されて流れてきた空調装置102の排水を貯めるためのタンクである。
【0014】
オーバーフロー管203は、その一端が貯水タンク202の側壁上部に接続され、その他端がレール105に向くように固定されている。このオーバーフロー管203は、貯水タンク202内の排水が所定の水位を超えないように設けられている。
なお、オーバーフロー管203の他端は、必ずしもレール105の方を向いていなくてもよい。
【0015】
給水管204は、その一端が貯水タンク202の底面に接続され、その他端がノズル206に接続されている。この給水管204は、貯水タンク202に貯められた排水をノズル206に案内する。
【0016】
開閉装置205は、給水管204に設けられた装置であり、貯水タンク202からノズル206への排水の供給を制御するための装置である。この開閉装置205は、例えば電磁弁である。
【0017】
ノズル206は、給水管204を介して貯水タンク202と接続され、鉄道車両101の車輪104またはレール105に向けて水を噴出するように設置されている。このノズル206は、ミストノズルであってもよい。
【0018】
制御装置207は、例えばマイクロコンピュータである。この制御装置207は、開閉装置205と電気的に接続されており、開閉装置205の開閉を制御する。また、制御装置207は、温度センサ208、測位センサ209および制御切替スイッチ210と電気的に接続されている。このうち、温度センサ208は、気温を計測するためのセンサである。測位センサ209は、鉄道車両101の位置を計測するためのセンサである。この測位センサ209は、例えばGPSセンサである。制御切替スイッチ210は、開閉装置205の制御状態を操作するための手動スイッチである。開閉装置205の制御状態には、「開制御(強制開放)」、「自動制御」、「閉制御(強制停止)」の3つがある。この制御切替スイッチ210は、例えば乗務員室に設置され、鉄道乗務員により操作される。
【0019】
以下、制御装置207の開閉制御について説明する。
制御装置207は、制御切替スイッチ210で開制御(強制開放)が選択されると、開閉装置205を開放する。この結果、貯水タンク202からノズル206へ排水が供給され、ノズル206から車輪104またはレール105に対して排水が散水される。
一方、制御切替スイッチ210で閉制御(強制停止)が選択されると、制御装置207は開閉装置205を閉鎖する。この結果、貯水タンク202からノズル206への排水の供給が停止され、ノズル206からの散水が停止される。
【0020】
制御装置207は、制御切替スイッチ210で自動制御が選択されている場合に、温度センサ208の計測値が所定値(例えば、摂氏30度)以上となり、かつ、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれるときに、開閉装置205を開放する。この結果、貯水タンク202からノズル206へ排水が供給され、ノズル206から車輪104またはレール105に対して排水が散水される。
【0021】
なお、開閉装置205が解放される所定のエリアとは、レール105の熱膨張の影響が懸念されるエリアとして、利用者により予め設定されたエリアである。
【0022】
一方、温度センサ208の計測値が所定値未満であるか、または、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれないときには、制御装置207は開閉装置205を閉鎖する。この結果、貯水タンク202からノズル206への排水の供給が停止され、ノズル206からの散水が停止される。
【0023】
以上説明したレール冷却システム200によれば、空調装置102の排水をレール105等に散水することで、レール105の熱膨張を抑制することができる。加えて、空調装置102の排水を有効活用することができる。さらに、気温と場所を指定して、自動的にレール105等に散水することができる。
【0024】
2.変形例
上記の実施例を下記のように変形してもよい。以下の変形例は互いに組み合わせてもよい。
【0025】
(1)上記の実施例の制御装置207は、レール105の熱膨張の影響が懸念されるエリアで散水するように設定されている。しかし、散水場所はこのようなエリアに限られない。制御装置207は、別の散水場所として、火災予防の観点から、ゴミが溜まりやすい分岐器レールや、レール105の連結部分で散水するように設定されてもよい。この場合、制御装置207は、温度条件を満たしていなくても、位置条件を満たしたことを以って、開閉装置205を開放してもよい。
【0026】
(2)上記の実施例では、空調装置102の排水がレール105等に散水されている。しかし、レール105等に散水する水は空調装置102の排水に限られない。別の方法として、水道水や雨水を貯水タンク202に予め貯めておき、これらの水をレール105等に散水してもよい。
【0027】
(3)上記の実施例では、制御切替スイッチ210で自動制御が選択されている場合に、温度センサ208の計測値が所定値以上となり、かつ、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれるときに、開閉装置205を開放している。すなわち、温度条件と位置条件がAND条件になっている。しかし、この制御方法はあくまで一例であり、温度条件と位置条件をOR条件としてもよい。
【0028】
(4)上記の実施例では、気温を計測する温度センサ208を使って鉄道車両101の走行環境を検出している。しかし、この温度センサ208に代えて、レール105の温度を計測する温度センサ(例えば、赤外線温度センサ)を使って鉄道車両101の走行環境を検出してもよい。その場合、制御装置207は、制御切替スイッチ210が「自動」に設定されている場合に、例えば赤外線温度センサの計測値が所定値以上となり、かつ、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれるときに、開閉装置205を開放する。一方、赤外線温度センサの計測値が所定値未満であるか、または、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれないときには、制御装置207は開閉装置205を閉鎖する。
なお、開閉装置205を開放する際の温度条件と位置条件をOR条件としてもよい。
【0029】
また別の例として、日射センサを使って鉄道車両101の走行環境を検出してもよい。その場合、制御装置207は、制御切替スイッチ210が「自動」に設定されている場合に、日射センサにより計測された日射量が所定値以上となり、かつ、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれるときに、開閉装置205を開放する。一方、日射センサにより計測された日射量が所定値未満であるか、または、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれないときには、制御装置207は開閉装置205を閉鎖する。
なお、開閉装置205を開放する際の日射条件と位置条件をOR条件としてもよい。
【0030】
また別の例として、降雨センサ(言い換えると、感雨センサ)を使って鉄道車両101の走行環境を検出してもよい。その場合、制御装置207は、制御切替スイッチ210が「自動」に設定されている場合に、降雨センサにより降雨が検知されておらず、かつ、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれるときに、開閉装置205を開放する。一方、降雨センサにより降雨が検知されているか、または、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれないときには、制御装置207は開閉装置205を閉鎖する。
なお、開閉装置205を開放する際の降雨条件と位置条件をOR条件としてもよい。
【0031】
(5)上記の実施例では、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれることが、開閉装置205の開放の条件になっている。しかし、これに代えて、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれないことを、開閉装置205の開放の条件としてもよい。この場合、濡らしたくないエリアを所定のエリアとして設定することで、当該エリアへの散水を回避することができる。
なお、この場合は、測位センサ209により計測された位置が所定のエリアに含まれることが、開閉装置205の閉鎖の条件となる。
【0032】
(6)本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0033】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0034】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【符号の説明】
【0035】
101…鉄道車両、102…空調装置、103…矢印、104…車輪、105…レール、200…レール冷却システム、201…排水管、202…貯水タンク、203…オーバーフロー管、204…給水管、205…開閉装置、206…ノズル、207…制御装置、208…温度センサ、209…測位センサ、210…制御切替スイッチ