(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169023
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】動力源判別システム
(51)【国際特許分類】
A62C 37/36 20060101AFI20241128BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20241128BHJP
A62C 3/07 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A62C37/36
A62C3/00 J
A62C3/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086192
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 忠
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189GA01
(57)【要約】
【課題】火災車両の動力源を判別可能なシステムを提供する。
【解決手段】本発明に係る動力源判別システムは、火災車両または火災車両候補を撮影した画像を解析して、火災車両または火災車両候補のナンバープレート情報または車名を特定する車両特定部と、車両特定部により特定されたナンバープレート情報または車名に対応する動力源を特定する動力源特定部と、動力源特定部により特定された動力源、または、当該動力源に対応する消火剤の情報を出力する情報出力部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災車両または火災車両候補を撮影した画像を解析して、前記火災車両または前記火災車両候補のナンバープレート情報または車名を特定する車両特定部と、
前記車両特定部により特定されたナンバープレート情報または車名に対応する動力源を特定する動力源特定部と、
前記動力源特定部により特定された動力源、または、当該動力源に対応する消火剤の情報を出力する情報出力部と
を備える動力源判別システム。
【請求項2】
前記動力源特定部により特定された動力源に対応する消火剤を特定する消火剤特定部と、
前記消火剤特定部により特定された消火剤を、放水ヘッドから放出させる放水制御部と
をさらに備える、請求項1に記載の動力源判別システム。
【請求項3】
前記車両特定部は、前記画像を解析して前記火災車両または前記火災車両候補のナンバープレート情報を特定できない場合に、当該ナンバープレート情報に代えて、前記火災車両または前記火災車両候補の車名を特定することを特徴とする、請求項1に記載の動力源判別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災車両の動力源を判別するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内で発生した火災を消火するための水噴霧設備が知られている。例えば、特許文献1~3に記載の水噴霧設備では、トンネル内の所定区画毎に、複数の放水ヘッドと、当該放水ヘッドに水を供給する自動弁が設けられており、トンネル内に設置された火災感知器が車両火災を感知すると、当該火災を感知した火災感知器と同区画又は対応する区画の放水ヘッドから水が散布される。この水噴霧設備では、消火剤として水が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-059648号公報
【特許文献2】特開平5-184693号公報
【特許文献3】特開平6-223279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、様々な動力源の車両が存在する。一例を挙げると、ガソリン車、電気自動車、燃料電池車が存在する。これらの車両において火災が発生した場合には、それぞれの動力源に応じた消火剤を選択することが望ましい。例えば、電気自動車には消火剤として水を使用し、ガソリン車と燃料電池車には消火剤として泡水溶液を使用することが望ましい。しかし、消火剤を適切に使い分けるには、火災車両の動力源を判別する必要がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、火災車両の動力源を判別可能なシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明に係る動力源判別システムは、火災車両または火災車両候補を撮影した画像を解析して、前記火災車両または前記火災車両候補のナンバープレート情報または車名を特定する車両特定部と、前記車両特定部により特定されたナンバープレート情報または車名に対応する動力源を特定する動力源特定部と、前記動力源特定部により特定された動力源、または、当該動力源に対応する消火剤の情報を出力する情報出力部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、火災車両の動力源を判別可能なシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】
図4は、車両情報-動力源テーブル321の一例を示す。
【
図5】
図5は、動力源-消火剤テーブル322の一例を示す。
【
図7】
図7は、車名-動力源テーブル700の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施例
本発明の一実施例について、図面を参照して説明する。
1-1.構成
図1は、本発明の一実施例に係る消火設備の一例を示す。
同図に示す消火設備100は、トンネル106に設置されている。このトンネル106は、A~Eの5つの区画に分けられている。
【0009】
消火設備100は、複数の火災検知器101、複数のカメラ102、複数の放水ヘッド103、複数の自動弁104、制御装置105により構成されている。
【0010】
火災検知器101は、トンネル106の区画ごとに1台ずつ設置されている。この火災検知器101は、制御装置105と電気的に接続されており、火災を検知すると、制御装置105に火災信号を送信する。この火災検知器101は、例えば、赤外線3波長式の炎検知器である。
【0011】
カメラ102は、可視光カメラであり、トンネル106の区画ごとに1台ずつ設置されている。このカメラ102は、制御装置105と電気的に接続されており、撮影したカメラ画像を制御装置105に送信する。
【0012】
放水ヘッド103は、トンネル106の区画ごとに複数設置されている。この放水ヘッド103からは消火剤が放出される。放出される消火剤には、水と泡水溶液がある。
【0013】
自動弁104は、トンネル106の区画ごとに1個ずつ設置されている。この自動弁104は、放水ヘッド103への消火剤の供給を制御するための弁である。特に、この自動弁104は、放水ヘッド103に消火剤として水を供給するか、それとも、水に泡原液を混合した泡水溶液を供給するかを制御可能となっている。この自動弁104は、制御装置105と電気的に接続されており、制御装置105による開閉制御が可能となっている。
【0014】
制御装置105は、トンネル106内で発生した車両火災を消火するための処理を制御する。この制御装置105は、トンネル106で車両火災が発生すると、火災を検知した火災検知器101から火災信号を受信する。制御装置105は、火災信号を受信すると、火災検知区画のカメラ102からカメラ画像を取得する。そして制御装置105は、取得したカメラ画像を解析して、火災車両の動力源を特定する。制御装置105は、動力源を特定後、特定した動力源に対応する消火剤を特定する。そして制御装置105は、火災検知区画の自動弁104を制御して、同区画の放水ヘッド103から、特定した消火剤を放出させる。
【0015】
1-1-1.自動弁104
次に、自動弁104の詳細について、
図2を参照して説明する。
図2は、自動弁104の構成例を示す。
自動弁104は、消火剤供給ライン201と、泡原液供給ライン202と、加圧水供給ライン203を備える。このうち、消火剤供給ライン201は、放水ヘッド103に消火剤を供給するためのラインである。泡原液供給ライン202は、消火剤供給ライン201に泡原液を供給するためのラインである。加圧水供給ライン203は、消火剤供給ライン201に設けられた本弁204と、泡原液供給ライン202に設けられた泡原液阻止弁205を加圧開放するための水を供給するためのラインである。
【0016】
まず、消火剤供給ライン201について説明する。
消火剤供給ライン201は、その一端が、水を貯留する貯水槽(図示略)から水を送水する加圧送水装置(図示略)に接続され、その他端が放水ヘッド103に接続されている。消火剤供給ライン201には加圧開放型の本弁204が設けられており、警戒時において、本弁204の一次側の配管は、上記貯水槽から供給された水が充満した状態となっている。
【0017】
本弁204の二次側には、圧力スイッチ206と、二次圧調整パイロット弁207が設けられている。このうち、圧力スイッチ206は、制御装置105と電気的に接続されており、消火剤供給ライン201における本弁204の二次側の圧力が所定圧力に達したときにこれを検知し、検知信号を制御装置105に送信する。二次圧調整パイロット弁207は、消火剤供給ライン201における本弁204の二次側の圧力を検知し、検知した圧力に応じて本弁204の開度を調整する。この二次圧調整パイロット弁207により、本弁17の二次側は所定の圧力になるように制御される。
【0018】
次に、泡原液供給ライン202について説明する。
泡原液供給ライン202は、その一端が、泡原液を貯留する泡原液槽(図示略)から泡原液を送水する加圧送水装置(図示略)と接続され、その他端が、消火剤供給ライン201における本弁204の二次側に接続されている。泡原液供給ライン202には加圧開放型の泡原液阻止弁205が設けられており、警戒時において、泡原液阻止弁205の一次側の配管は、上記泡原液槽から供給された泡原液が充満した状態となっている。
【0019】
泡原液供給ライン202には、泡原液阻止弁205の一次側に泡原液抜き弁208と泡原液戻し弁209が設けられている。これらの弁は、メンテナンス時に配管内の泡原液を排出したり、メンテナンス後に泡原液を配管内に戻したりするための弁である。
一方、泡原液阻止弁205の二次側には定流量弁210が設けられている。この弁は、泡原液の流量を所定の流量に調整するためのものである。また、この弁が調整する流量は、複数の放水ヘッド103の総放出量に基づいて予め設定されている。
【0020】
次に、加圧水供給ライン203について説明する。
加圧水供給ライン203は、本弁204に加圧水を供給する本弁側加圧水供給ライン211と、泡原液阻止弁205に加圧水を供給する泡原液阻止弁側加圧水供給ライン212を有している。
【0021】
このうち、本弁側加圧水供給ライン211は、本弁204の一次側と加圧室213を接続し、水起動弁214が設けられている。水起動弁214は、並列に設けられた水手動起動弁214aと水遠隔起動弁214bから構成されている。このうち、水遠隔起動弁214bは制御装置105と電気的に接続されており、制御装置105による開閉制御が可能となっている。
【0022】
水起動弁214の一次側の配管は、警戒時において、本弁204の一次側から供給された水が充満した状態となっている。水手動起動弁214aを手動で開放するか、または、水遠隔起動弁214bを制御装置105によって遠隔で開放することで、加圧室213に水が導入されて本弁204が開放する。
【0023】
泡原液阻止弁側加圧水供給ライン212は、本弁204の一次側と泡原液阻止弁205の加圧室205aを接続し、泡原液起動弁215が設けられている。泡原液起動弁215は、並列に設けられた泡原液手動起動弁215aと泡原液遠隔起動弁215bから構成されている。このうち、泡原液遠隔起動弁215bは制御装置105と電気的に接続されており、制御装置105による開閉制御が可能となっている。
【0024】
泡原液起動弁215の一次側の配管は、警戒時において、本弁204の一次側から供給された水が充満した状態となっている。泡原液手動起動弁215aを手動で開放するか、または、泡原液遠隔起動弁215bを制御装置105によって遠隔で開放することで、泡原液阻止弁205の加圧室205aに水が導入されて泡原液阻止弁205が開放する。
【0025】
なお、上述した制御装置105による泡原液遠隔起動弁215bの制御は、火災検知器101から入力される火災信号と、圧力スイッチ206からの入力される検知信号に基づいて行われる。具体的には、自動弁104と同区画の火災検知器101から火災信号が入力され、かつ、圧力スイッチ206から検知信号が入力されたときに、当該自動弁104の泡原液遠隔起動弁215bを開放できる。すなわち、本弁204が開となって本弁204の二次側に所定圧力の水が通流しているときに限り、泡原液が消火剤供給ライン201に供給される。そのため、泡原液のみが本弁204の二次側に流出することはない。
【0026】
上記の泡原液起動弁215の二次側には、泡用圧力スイッチ216が設けられている。この泡用圧力スイッチ216は、制御装置105と電気的に接続されており、泡原液阻止弁側加圧水供給ライン212における泡原液起動弁215の二次側の圧力が所定圧力に達したときにこれを検知し、検知信号を制御装置105に送信する。
【0027】
1-1-2.制御装置105
次に、制御装置105の詳細について、
図3を参照して説明する。
図3は、制御装置105の構成例を示す。
制御装置105は、火災車両の動力源を判別するためのシステムである。この制御装置105は、1以上の情報処理装置により構成される。
【0028】
制御装置105は、RAM等の主記憶装置301と、HDD等の補助記憶装置302、CPU等のプロセッサ303と、タッチパネルや操作ボタン等の入力装置304と、ディスプレイやスピーカ等の出力装置305と、ネットワークカード等の通信制御部306を備える。
【0029】
このうち、主記憶装置301には、各種のプログラムが記憶されている。これらのプログラムは、非一時的な記憶媒体やインターネット等のネットワークを介して頒布可能なプログラムである。また、これらのプログラムをプロセッサ303が実行することで、各種の機能が実現される。実現される機能には、車両特定部311、動力源特定部312、情報出力部313、消火剤特定部314、放水制御部315が含まれる。以下、各機能について説明する。
【0030】
車両特定部311は、火災車両を撮影したカメラ画像を解析して、当該車両のナンバープレート情報を特定する。
具体的には、車両特定部311は、まず、火災検知区画のカメラ102からカメラ画像を取得する。そして車両特定部311は、取得したカメラ画像を解析して、火災車両領域を抽出する。その際、車両特定部311は、まず、周知の煙検出アルゴリズム(例えば、特開2008-046916号公報参照)を用いて煙を検出する。そして車両特定部311は、検出した煙が上方に立ち昇る車両を特定し、その車両を写す領域を火災車両領域として抽出する。
【0031】
次に車両特定部311は、抽出した火災車両領域を解析して、ナンバープレート情報を特定する。その際、車両特定部311は、周知のナンバープレート認識技術(例えば、ALPR(Automatic License Plate Recognition))を用いてナンバープレート情報を特定する。
【0032】
なお、本明細書においてナンバープレート情報とは、ナンバープレートに表された情報を意味する。このナンバープレート情報には、登録自動車に付与される自動車登録番号、軽自動車等に付与される車両番号、原動機付自転車等に付与される標識番号が含まれる。また、このナンバープレート情報には、ナンバープレートの色も含まれる。
【0033】
動力源特定部312は、後述する車両情報-動力源テーブル321を参照して、車両特定部311により特定されたナンバープレート情報に対応する動力源を特定する。特定される動力源には、一例として、ガソリン、電気、水素が含まれる。
【0034】
情報出力部313は、動力源特定部312により特定された動力源の情報を出力する。具体的には、情報出力部313は、特定された動力源の情報を制御装置105のディスプレイに表示する。加えて情報出力部313は、特定した動力源の情報を所定の連絡先に通知する。例えば情報出力部313は、トンネル106の管理者の端末装置や、近隣の消防署に設置された端末装置に当該情報を送信する。
【0035】
消火剤特定部314は、後述する動力源-消火剤テーブル322を参照して、動力源特定部312により特定された動力源に対応する消火剤を特定する。特定される消火剤は、水または泡水溶液である。
ただし、水および泡水溶液は、使用可能な消火剤のあくまで一例である。本実施例の変形例として、別の消火剤を使用してもよい。
【0036】
放水制御部315は、火災検知区画の自動弁104を制御して、同区画の放水ヘッド103から火災車両に向けて、消火剤特定部314により特定された消火剤を放出させる。
【0037】
その際、放水制御部315は、消火剤として泡水溶液を放出させる場合、自動弁104の水遠隔起動弁214bを開とする。水遠隔起動弁214bを開とすると、本弁204の加圧室213に水が導入されて、本弁204が開となる。本弁204が開となると、水が通流し、本弁204の二次側の圧力が上昇する。この圧力が所定圧力に達すると圧力スイッチ206がこれを検知し、検知信号を制御装置105に送信する。
【0038】
放水制御部315は、圧力スイッチ206から検知信号が入力されると、次に泡原液遠隔起動弁215bを開とする。泡原液遠隔起動弁215bを開とすると、泡原液阻止弁205の加圧室205aに水が導入されて、泡原液阻止弁205が開となる。泡原液阻止弁205が開となると、消火剤供給ライン201を流れる水に泡原液が供給されて、水と泡原液が混合されて泡水溶液となる。生成された泡水溶液は、火災検知区画の放水ヘッド103から放出される。
【0039】
一方、消火剤として水を放出させる場合は、放水制御部315は、自動弁104の水遠隔起動弁214bを開とする。この結果、同自動弁の圧力スイッチ206から検知信号が入力されるが、放水制御部315は、泡原液遠隔起動弁215bを閉のままとする。これにより、本弁204の加圧室213には水が導入されて本弁204が開となるが、泡原液阻止弁205の加圧室205aには水が導入されないので、泡原液阻止弁205は閉のままである。したがって、消火剤供給ライン201を流れる水に泡原液が供給されず、火災検知区画の放水ヘッド103からは水が放出される。
【0040】
次に、補助記憶装置302について説明する。
補助記憶装置302は、車両情報-動力源テーブル321と、動力源-消火剤テーブル322を記憶する。以下、各テーブルについて説明する。
【0041】
図4は、車両情報-動力源テーブル321の一例を示す。同図に示す車両情報-動力源テーブル321は、ナンバープレート情報と動力源を対応付けたテーブルである。この車両情報-動力源テーブル321は、ナンバープレート情報401と動力源402の2つのカラムを有する。このうち、ナンバープレート情報401のカラムは、地域名403、分類番号404、ひらがな405、一連指定番号406の4つのカラムからなる。
上述した消火剤特定部314は、この動力源-消火剤テーブル322を参照して、動力源特定部312により特定された動力源に対応する消火剤を特定する。
【0042】
図5は、動力源-消火剤テーブル322の一例を示す。同図に示す動力源-消火剤テーブル322は、動力源と消火剤を対応付けたテーブルである。この動力源-消火剤テーブル322は、動力源501と消火剤502の2つのカラムを有する。
上述した消火剤特定部314は、この動力源-消火剤テーブル322を参照して、動力源特定部312により特定された動力源に対応する消火剤を特定する。
【0043】
1-2.動作
次に、制御装置105により実行される消火処理について説明する。
図6は、この消火処理の一例を示す。同図に示す消火処理600は、制御装置105が火災検知器101から火災信号を受信すると開始される。
【0044】
まず、制御装置105の車両特定部311は、火災検知区画のカメラ102からカメラ画像を取得する(ステップ601)。このカメラ画像は、火災検知区画を撮影した画像である。
【0045】
次に車両特定部311は、取得したカメラ画像を解析して、火災車両領域を抽出する(ステップ602)。その際、車両特定部311は、まず、周知の煙検出アルゴリズムを用いて煙を検出する。そして車両特定部311は、検出した煙が上方に立ち昇る車両を特定し、その車両を写す領域を火災車両領域として抽出する。
【0046】
次に車両特定部311は、抽出した火災車両領域を解析して、ナンバープレート情報を特定する(ステップ603)。その際、車両特定部311は、周知のナンバープレート認識技術を用いてナンバープレート情報を特定する。
【0047】
次に動力源特定部312は、車両情報-動力源テーブル321を参照して、特定したナンバープレート情報に対応する動力源を特定する(ステップ604)。
【0048】
次に情報出力部313は、特定した動力源の情報を出力する(ステップ605)。具体的には、情報出力部313は、特定した動力源の情報を制御装置105のディスプレイに表示する。これにより制御装置105の使用者は、火災車両の動力源を知ることができる。この使用者は、動力源を知ることで、ひいては火災車両の消火に最適な消火剤を知ることができる。
【0049】
加えて情報出力部313は、特定した動力源の情報を所定の連絡先に通知する。例えば情報出力部313は、トンネル106の管理者の端末装置や、近隣の消防署に設置された端末装置に当該情報を送信する。これにより通知先は、火災車両の動力源を知ることができる。この通知先は、動力源を知ることで、ひいては火災車両の消火に最適な消火剤を知ることができる。
【0050】
次に消火剤特定部314は、動力源-消火剤テーブル322を参照して、ステップ604で特定した動力源に対応する消火剤を特定する(ステップ606)。
【0051】
次に放水制御部315は、火災検知区画の自動弁104を制御して、同区画の放水ヘッド103から、特定した消火剤を放出させる(ステップ607)。その際、放水制御部315は、消火剤として泡水溶液を放出させる際には、自動弁104の水遠隔起動弁214bを開とし、圧力スイッチ206から検知信号が入力されると、次に泡原液遠隔起動弁215bを開とする。この結果、消火剤供給ライン201を流れる水に泡原液が供給されて、水と泡原液が混合されて泡水溶液となり、火災検知区画の放水ヘッド103から放出される。
【0052】
一方、消火剤として水を放出させる際には、放水制御部315は、自動弁104の水遠隔起動弁214bを開とし、圧力スイッチ206から検知信号が入力されても泡原液遠隔起動弁215bを閉のままとする。この結果、消火剤供給ライン201を流れる水に泡原液が供給されず、火災検知区画の放水ヘッド103からは水が放出される。
以上が消火処理600についての説明である。
【0053】
以上説明した消火処理600によれば、火災車両の動力源を判別することができる。そのため、火災車両の消火に適切な消火剤を使用することができる。
加えて、上記の消火処理600によれば、適切な消火剤を使用した消火作業を自動的に行うことができる。
【0054】
2.変形例
上記の実施例を下記のように変形してもよい。以下の変形例は互いに組み合わせてもよい。
(1)上記の実施例では、火災車両のナンバープレート情報を特定し、特定したナンバープレート情報に対応する動力源を特定している。このような動力源の特定方法に代えて、火災車両の車名を特定し、特定した車名に対応する動力源を特定するようにしてもよい。このような方法でも火災車両の動力源を判別することができる。
【0055】
この変形例を採用する場合、上記の車両特定部311は、火災車両を撮影したカメラ画像を解析して、当該車両の車名を特定する。
具体的には、車両特定部311は、まず、火災検知区画のカメラ画像を解析して、火災車両領域を抽出する。この抽出処理は、上記の消火処理600のステップ602と同様である。
【0056】
次に車両特定部311は、抽出した火災車両領域を解析して、車名を特定する。その際、車両特定部311は、抽出した火災車両領域を識別器に入力して、目的の車名を取得する。ここで、車両特定部311により火災車両領域が入力される識別器は、車両画像の入力を受けて車名を出力するように予め学習させた識別モデルである。
【0057】
動力源特定部312は、車名が特定されると、車名-動力源テーブル700を参照して、特定された車名に対応する動力源を特定する。この際に参照される車名-動力源テーブル700は、車名と動力源を対応付けたテーブルである。
【0058】
図7は、この車名-動力源テーブル700の一例を示す。同図に示す車名-動力源テーブル700は、車名701と動力源702の2つのカラムを有する。なお、本明細書において車名とは、メーカーが付けた車両の固有名称である。
動力源特定部312は、この車名-動力源テーブル700を参照して、特定された車名に対応する動力源を特定する。
以上説明した特定方法でも、火災車両の動力源を判別することができる。
【0059】
なお、以上説明した特定方法を補助的に使用してもよい。具体的には、車両特定部311は、カメラ画像を解析して火災車両のナンバープレート情報を特定できない場合に、当該車両の車名を特定するようにしてもよい。ここで、火災車両のナンバープレート情報を特定できない場合とは、例えば、火災車両のナンバープレートが他の車両の陰に隠れてしまい、カメラ102から捉えられない場合である。このような場合には、火災車両のナンバープレート情報を特定することができない。そのため車両特定部311は、ナンバープレート情報に代えて車名を特定するようにしてもよい。このように特定された車名は、上述のように、動力源特定部312により動力源に変換される。
【0060】
(2)上記の実施例で情報出力部313は、動力源の情報に加えて又は代えて、消火剤特定部314により特定された消火剤の情報を出力してもよい。具体的には、情報出力部313は、特定された消火剤の情報を制御装置105のディスプレイに表示してもよい。あるいは、情報出力部313は、特定された消火剤の情報を所定の連絡先に通知してもよい。通知先の連絡先としては、例えば、トンネル106の管理者の端末装置や、近隣の消防署に設置された端末装置がある。
【0061】
(3)上記の実施例では、火災検知器101が火災を検知してから、ナンバープレート情報を特定している。この手順では、ナンバープレート情報を特定する頃には、ナンバープレートが煙や炎で隠れてしまい、ナンバープレート情報を特定できない可能性がある。そこで、火災が発生する可能性のある車両について予めナンバープレート情報を特定しておき、実際に火災が発生したら、予め特定しておいたナンバープレート情報を出力するようにしてもよい。このようにすれば、ナンバープレートが煙や炎で隠れてしまい、ナンバープレート情報を特定できないといった事態を回避できる。
【0062】
本変形例を採用する場合、制御装置105の車両特定部311は、各カメラ102から周期的にカメラ画像を取得する。そして車両特定部311は、取得したカメラ画像を解析して、異常走行車両を検出する。ここで検出される異常走行車両とは、停止車両または低速走行車両のことであり、火災車両候補である。
なお、異常走行車両を検出するにあたっては、周知の交通異常検出技術(例えば、特開2013-122624号公報参照)を用いてよい。
【0063】
車両特定部311は、異常走行車両を検出すると、当該車両を撮影したカメラ画像を解析して、当該車両のナンバープレート情報を特定する。
【0064】
その後、車両特定部311は、検出した異常走行車両を監視する。具体的には、当該車両を撮影したカメラ画像を周期的に解析して、煙の有無を判定する。この煙の有無の判定には、周知の煙検出アルゴリズム(例えば、特開2013-122624号公報)が用いられてよい。
【0065】
動力源特定部312は、この判定の結果、煙が検出されると、車両情報-動力源テーブル321を参照して、上記特定したナンバープレート情報に対応する動力源を特定する。
【0066】
情報出力部313は、動力源が特定されると、特定した動力源の情報を出力する。その際の出力方法は、上述した消火処理600のステップ605と同様である。
なお、この際、情報出力部313は、動力源の情報に加えて又は代えて、消火剤特定部314により特定される消火剤の情報を出力してもよい。
以上説明した処理でも、火災車両の動力源を判別することができる。
【0067】
なお、以上説明した処理に、変形例(1)を適用してもよい。
具体的には、車両特定部311は、ナンバープレート情報に代えて車名を特定し、動力源特定部312は、特定された車名に対応する動力源を特定してもよい。
【0068】
さらに、以上説明した処理において、変形例(1)で説明した特定方法を補助的に使用してもよい。
具体的には、車両特定部311は、カメラ画像を解析してナンバープレート情報を特定できない場合に、当該車両の車名を特定するようにしてもよい。ここで、ナンバープレート情報を特定できない場合とは、例えば、ナンバープレートがカメラ102の死角に入ってしまった場合である。このような場合には、ナンバープレート情報を特定することができない。そのため車両特定部311は、ナンバープレート情報に代えて車名を特定するようにしてもよい。
【0069】
(4)上記の実施例では、ナンバープレートに記載された文字情報に基づいて動力源を特定している。しかし、今後、車両の動力源に応じてナンバープレートの色を変えるようになった場合には、ナンバープレートの色に基づいて動力源を特定してもよい。
【0070】
その場合、制御装置105は、ナンバープレートの色と動力源を対応付けたテーブルを予め記憶しておく。そして、車両特定部311は、火災車両を撮影したカメラ画像を解析して、ナンバープレートの文字情報に代えて色を特定する。ここで特定される色は、ナンバープレート情報の一例である。
【0071】
動力源特定部312は、色が特定されると、上記テーブルを参照して、特定された色に対応する動力源を特定する。
このような処理でも、火災車両の動力源を判別することができる。
【0072】
(5)なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0073】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0074】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【符号の説明】
【0075】
100…消火設備、101…火災検知器、102…カメラ、103…放水ヘッド、104…自動弁、105…制御装置、106…トンネル、201…消火剤供給ライン、202…泡原液供給ライン、203…加圧水供給ライン、204…本弁、205…泡原液阻止弁、205a…加圧室、206…圧力スイッチ、207…二次圧調整パイロット弁、208…泡原液抜き弁、209…泡原液戻し弁、210…定流量弁、211…本弁側加圧水供給ライン、212…泡原液阻止弁側加圧水供給ライン、213…加圧室、214…水起動弁、214a…水手動起動弁、214b…水遠隔起動弁、215…泡原液起動弁、215a…泡原液手動起動弁、215b…泡原液遠隔起動弁、216…泡用圧力スイッチ、311…車両特定部、312…動力源特定部、313…情報出力部、314…消火剤特定部、315…放水制御部、321…車両情報-動力源テーブル、322…動力源-消火剤テーブル