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  • 特開-施工管理システム及び施工管理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169028
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】施工管理システム及び施工管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 21/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01D21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086198
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 千晶
(72)【発明者】
【氏名】増田 英樹
【テーマコード(参考)】
2F076
【Fターム(参考)】
2F076BA01
2F076BA12
2F076BD07
2F076BD17
2F076BE06
2F076BE08
2F076BE09
2F076BE13
2F076BE18
(57)【要約】
【課題】 施工による施工現場の周辺地盤や周辺建物への影響を評価可能とする。
【解決手段】 施工現場1、又は施工現場1の隣接地に設置される検出ユニット2と、検出ユニット2から送信された検出値を取得する管理端末3と、を備えた施工管理システムSであって、検出ユニット2は、傾斜センサ24を有し、該傾斜センサ24で検出した傾斜値を検出値として送信し、管理端末3は、検出ユニット2が送信した傾斜値を受信し、受信した傾斜値を時系列データとして記憶する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場、又は前記施工現場の隣接地に設置される検出ユニットと、
前記検出ユニットから送信された検出値を取得する管理端末と、を備えた施工管理システムであって、
前記検出ユニットは、傾斜センサを有し、該傾斜センサで検出した傾斜値を前記検出値として送信し、
前記管理端末は、前記傾斜値を時系列データとして記憶する、施工管理システム。
【請求項2】
前記検出ユニットは、さらに温度センサを有し、該温度センサが検出した温度値と前記傾斜値を前記検出値として送信し、
前記管理端末は、前記温度値に基づいて前記傾斜値を補正し、補正後傾斜値を時系列データとして記憶する、請求項1に記載の施工管理システム。
【請求項3】
前記検出ユニットは、無線通信により前記検出値を前記管理端末に送信し、
前記管理端末は、前記時系列データ、又は前記時系列データに基づいて検出した事象を、インターネットを介して他の端末に送信する、請求項1又は2に記載の施工管理システム。
【請求項4】
施工現場、又は前記施工現場の隣接地に設置される検出ユニットと、
前記検出ユニットから送信された検出値を取得する管理端末と、を用いた施工管理方法であって、
前記検出ユニットが、傾斜センサで検出した傾斜値を前記検出値として送信し、
前記管理端末が、前記傾斜値を時系列データとして記憶する、施工管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、施工管理システム及び施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木や建設などの施工を行うにあたって、施工による周辺地盤や周辺建物への悪影響を防ぐ技術として、特許文献1に開示される矢板を施工現場と周囲との間に設置するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/029426号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術は、施工による周辺地盤や周辺建物への悪影響を防ぐものであるが、施工による周辺地盤や周辺建物への影響を検出したいという要望もある。
【0005】
そこで、本開示は、施工による周辺地盤や周辺建物への影響を評価できる施工管理システム及び施工管理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、以下のような解決手段を提供する。
施工現場、又は前記施工現場の隣接地に設置される検出ユニットと、
前記検出ユニットから送信された検出値を取得する管理端末と、を備えた施工管理システムであって、
前記検出ユニットは、傾斜センサを有し、該傾斜センサで検出した傾斜値を前記検出値として送信し、
前記管理端末は、前記傾斜値を時系列データとして記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、施工による周辺地盤や周辺建物への影響を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】施工管理システムの構成を示す図である。
図2】施工管理システムの利用例を示す図である。
図3】施工管理システムの処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0010】
<施工管理システムの概要>
図1は、施工管理システムSの構成を示す図である。
図1に示すように、施工管理システムSは、検出ユニット2と、管理端末3と、他の端末4と、を備える。
【0011】
検出ユニット2は、施工現場などに設置され、検出した検出値を管理端末3に無線送信する。
管理端末3は、スマートフォンなどの通信端末であり、検出ユニット2から送信された検出値を受信日時と紐づけて時系列データとして記憶する。
他の端末4は、管理端末3から他の端末4に対して送信された情報を受信するスマートフォンなどの通信端末である。
なお、以下の説明や図面では、検出値を時系列データとして記憶する処理をロギングと称する場合がある。
【0012】
<施工管理システムの利用例>
図2は、施工管理システムSの利用例を示す図である。
図2に示すように、施工管理システムSは、例えば、現場監督者P1の監督のもとで作業者P2が建設機械Mを操作して掘削作業をしている施工現場1で利用される。
【0013】
この利用例では、傾斜を検出可能な2つの検出ユニット2A、2Bが使用される。検出ユニット2Aは、施工現場1と隣接地とを区切る矢板11に設置され、検出ユニット2Bは、施工現場1に隣接した建物12に設置される。稼働状態の検出ユニット2A、2Bは、所定時間毎又は所定時刻に傾斜を検出し、検出値として傾斜値を管理端末3に無線送信する。
【0014】
この利用例の管理端末3は、現場監督者P1が所持するスマートフォンであり、検出ユニット2A、2Bから無線送信された検出値を受信日時に紐付けて時系列データとして記憶する。
【0015】
また、管理端末3は、決まった時刻になると、過去数日分(例えば、2日分)の時系列データや、時系列データに基づいて検出した事象を電子メールで他の端末4に送信する。なお、時系列データに基づいて検出する事象は、例えば、矢板11の傾斜値が前日の周期的な変動とは異なった推移で変化したなど、施工による周辺地盤や周辺建物への影響を示唆するものである。
【0016】
この利用例では、管理端末3が送信した電子メールをインターネットを介して受信する2つの他の端末4A、4Bが使用される。他の端末4Aは、施工現場1の作業者P2が所持するスマートフォンであり、他の端末4Bは、施工現場1から離れた遠隔地にいる施主P3が所持するラップトップPCである。
【0017】
このように利用される施工管理システムSによれば、施工現場や施工現場周辺における傾斜値の推移を時系列データとして記録するので、時系列データに基づいて施工による周辺地盤や周辺建物への影響を評価できる。
【0018】
以下、本実施例の検出ユニット2及び管理端末3の具体的な構成について、図1を参照して説明する。
【0019】
<検出ユニットの構成>
検出ユニット2は、制御部21、無線通信部22、通知部23、傾斜センサ24、温度センサ25、較正用パラメータ保持部26、ID保持部27及びデータ送信部28を備える。
【0020】
制御部21は、CPU、RAM、ROMなどを備えた集積演算回路であり、ROMに書き込まれたプログラムにしたがって動作し、検出ユニット2の各部を制御する。
【0021】
無線通信部22は、管理端末3と無線通信を行う。使用する無線通信規格は、例えば、Bluetooth(登録商標)の長距離用通信モード(Bluetooth ver. 5.0 Long Range)であり、最大で約1kmの無線通信が可能になる。
【0022】
通知部23は、異常発生時に警告通知を行う。例えば、本実施例の通知部23は、異常発生時に警告ランプ(例えば、LEDランプ)を点灯(例えば、赤色点滅)させることで、検出ユニット2の周囲にいる作業者P2などに異常の発生を通知する。
【0023】
傾斜センサ24は、少なくとも2軸の傾き(ロール角及びピッチ角)を検出する。例えば、本実施例の傾斜センサ24は、3軸の加速度及び角速度を検出するIMUセンサを用いて構成される。
【0024】
温度センサ25は、傾斜センサ24の近傍に配置され、傾斜センサ24の近傍温度を検出する。
【0025】
較正用パラメータ保持部26は、傾斜センサ24が検出した傾斜値を温度補正(較正)するための較正用パラメータを保持する。例えば、本実施形態の較正用パラメータ保持部26は、制御部21に内蔵されるROMに較正用パラメータを保持する。
【0026】
つまり、傾斜センサ24は、個体差が少なからずあることから、温度補正の度合いも個別に調整する必要がある。このため、工場出荷時において、検出ユニット2に組み込む傾斜センサ24の個体差に基づく較正用パラメータをあらかじめ検出ユニット2内に記憶しておき、この較正用パラメータを所定のタイミングで管理端末3に送る。
【0027】
これにより、傾斜センサ24の個体差にかかわらず、管理端末3において傾斜センサ24の検出値を精度良く温度補正し、正確な傾斜値を取得することが可能になる。なお、較正用パラメータの送信タイミングは、無線通信のペアリング時であってもよいし、傾斜値及び温度値を送信する際、送信データに含める形で毎回送信するようにしてもよい。
【0028】
ID保持部27は、検出ユニット2の個体識別子(ID)を保持する。例えば、本実施形態のID保持部27は、制御部21に内蔵されるROMに個体識別子を保持する。
【0029】
つまり、検出ユニット2が複数の場合、管理端末3は、受信した検出値(傾斜値及び温度値)がどの検出ユニット2から送信されたものかを識別する必要がある。そのため、検出ユニット2は、所定のタイミングで個体識別子を管理端末3に送信する。なお、個体識別子の送信タイミングは、無線通信のペアリング時であってもよいし、傾斜値及び温度値を送信する際、送信データに含める形で毎回送信するようにしてもよい。
【0030】
データ送信部28は、所定時間毎又は所定時刻に傾斜センサ24及び温度センサ25の検出値を取得し、取得した検出値を無線通信部22を介して管理端末3に送る。
【0031】
<管理端末の構成>
管理端末3は、制御部31、無線通信部32、通知部33、伝達部34、補正部35、データログ部36及び通知判定部37を備える。
【0032】
制御部31は、CPU、RAM、ROMなどを備えた集積演算回路であり、ROMに書き込まれたプログラムにしたがって動作し、管理端末3の各部を制御する。
【0033】
無線通信部32は、検出ユニット2と無線通信を行う。使用する無線通信規格は、検出ユニット2の無線通信部22と同様である。
【0034】
通知部33は、異常発生時に現場監督者P1に対して警告通知を行う。例えば、本実施形態の通知部33は、検出ユニット2から受信した傾斜値の時系列データに警告に相当する事象が含まれる場合、各種の警告通知を行う。具体的には、管理端末3のディスプレイに警告内容や根拠となる時系列データを表示させたり、管理端末3のスピーカやバイブレータを利用して音警報や振動警報を行う。
【0035】
伝達部34は、施工よる周辺地盤や周辺建物への影響を他の端末4に対して伝達する。例えば、本実施形態の伝達部34は、通知判定部37が施工より周辺地盤や周辺建物へ悪影響が生じたと判定した場合、警告内容やその根拠となる時系列データが含まれる電子メールをインターネットを介して他の端末4に送信する。これにより、管理端末3を所持する現場監督者P1だけでなく、施工現場1内の関係者(例えば、作業者P2)や、施工現場1から離れた場所にいる関係者(例えば、施主P3)にも、施工よる周辺地盤や周辺建物への影響を伝達することができる。
【0036】
補正部35は、検出ユニット2から受信した温度値に基づいて傾斜値を補正する。本実施形態の補正部35は、傾斜センサ24の個体差を考慮し、検出ユニット2が保持する較正用パラメータに基づいて温度値による傾斜値の補正度合いを調整する。
【0037】
データログ部36は、補正部35による補正後の傾斜値を受信日時と紐づけて時系列データとして記憶する。これにより、気候(気温)の変化によらず正確な傾斜値の推移を時系列で記録できるので、施工による周辺地盤や周辺建物への影響をより厳密に評価することが可能になる。
【0038】
通知判定部37は、データログ部36が記憶した時系列データに基づいて、施工よって周辺地盤や周辺建物へ悪影響が生じたか否かを判定する。例えば、施工日当日の時系列データにおいてに大きな変化があった場合に悪影響が生じたと判定する。または、施工日当日の時系列データと一日前の時系列データを比較し、その差分が大きい場合に悪影響が生じたと判定する。
【0039】
以下、施工管理システムSの処理の流れ(施工管理方法)について、図3を参照して説明する。
【0040】
<施工管理システムの処理手順>
図3は、施工管理システムSの処理の流れを示す図である。
図3に示すように、施工管理システムSの利用に際しては、まず、検出ユニット2と管理端末3との間で無線通信を行うためのペアリングを行う。このペアリングは、例えば、検出ユニット2から管理端末3に個体識別子及び較正用パラメータを送信し、これを受信した管理端末3が検出ユニット2を認識してペアリング処理を行うことにより実施される。
【0041】
施工管理システムSは、検出ユニット2と管理端末3との間のペアリングが成立すると、定期処理に移行する。定期処理時の検出ユニット2は、所定時間毎又は所定時刻に、傾斜センサ24及び温度センサ25の検出値(傾斜値及び温度値)を取得し、取得した検出値を管理端末3に無線送信する。
【0042】
定期処理時の管理端末3は、検出ユニット2から送信される検出値の受信を待機する(S1)。定期処理時の管理端末3は、検出ユニット2が送信した検出値を受信すると、温度値及び較正用パラメータに基づいて傾斜値を補正し(S2)、補正後の傾斜値を受信日時と紐づけて時系列データとして記憶する(S3)。さらに、定期処理時の管理端末3は、時系列データに基づいて、通知条件が成立したか否かを判断し(S4)、この判断結果がNOの場合は、ステップS1の受信待機状態に戻って定期処理を繰り返す。
【0043】
施工管理システムSは、ステップS4の判断結果がYESの場合、通知や伝達を行う処理に移行する。例えば、施工日当日の時系列データにおいて傾斜値に大きな変化があった場合や、施工日当日の時系列データと一日前の時系列データとの差分が大きい場合に、通知や伝達を行う処理に移行する。
【0044】
管理端末3は、ステップS4の判断結果がYESの場合、検出ユニット2及び他の端末4に対する伝達処理を実行する(S5)。例えば、管理端末3は、検出ユニット2に警告通知要求を送信し、他の端末4に警告メールを送信する。検出ユニット2は、管理端末3から警告通知要求を受信すると、警告ランプを点灯させることで、検出ユニット2の周囲にいる作業者P2などに異常の発生を通知する(S6)。
【0045】
管理端末3が他の端末4に送信する警告メールには、警告内容、警告が生じた期間の時系列データ、警告発生時の時系列データと施工前の時系列データとの比較データなどが含まれる。これにより、警告メールを受信した他の端末4の使用者(作業者P2、施主P3など)は、施工により施工現場1の周辺地盤や周辺建物に悪影響が生じたことを速やかに認識し、適切な対応を行うことが可能になる。
【0046】
管理端末3は、ステップS5を実行した後、管理端末3における通知処理を実行する(S7)。この通知処理には、例えば、警告メールと同等の情報、又はそれよりも詳細な情報を管理端末3のディスプレイに表示する処理や、管理端末3のスピーカやバイブレータを動作させて音警告や振動警告を出力する処理が含まれる。これにより、管理端末3の使用者(現場監督者P1など)は、施工により施工現場1の周辺地盤や周辺建物に悪影響が生じたことを速やかに認識し、適切な対応を行うことが可能になる。
【0047】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0048】
例えば、前述した実施例の検出ユニットは、傾斜センサ及び温度センサを備えるが、傾斜センサ及び温度センサ以外のセンサ(例えば、湿度センサ、振動センサ、騒音センサなど)をさらに備え、これらの検出値を管理端末に送信してもよい。
【0049】
また、前述した実施例の管理端末は、検出ユニットから受信した検出値を時系列データとして記憶するが、時系列データは、検出ユニットから受信した検出値だけでなく、検出ユニット以外から取得した情報を含めてもよい。例えば、施工現場の施工スケジュール、施工現場を含む地域の気象情報(気温、湿度、風速、雨量など)や災害情報(台風、地震、津波、噴火など)などの情報を時系列データに紐づけることができる。このようにすると、傾斜値が変化した原因が施工によるものなのか、気象や災害によるものなのか、などの特定が容易になる。
【符号の説明】
【0050】
1 施工現場
11 矢板
12 施工現場に隣接した建物
2(2A、2B) 検出ユニット
21 制御部
22 無線通信部
23 通知部
24 傾斜センサ
25 温度センサ
26 較正用パラメータ保持部
27 ID保持部
28 データ送信部
3 管理端末
31 制御部
32 無線通信部
33 通知部
34 伝達部
35 補正部
36 データログ部
37 通知判定部
4 他の端末
4A 作業者所有の端末
4B 施主所有の端末
S 施工管理システム
M 建設機械
P1 現場監督者
P2 作業者
P3 施主
図1
図2
図3