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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169029
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】生物モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/00 20060101AFI20241128BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A01K67/00 Z
G01D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086199
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】宮田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】三輪 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐野 祐士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康平
【テーマコード(参考)】
2F076
【Fターム(参考)】
2F076BA12
2F076BA16
2F076BD05
2F076BD07
2F076BD12
2F076BE04
2F076BE06
2F076BE08
2F076BE13
2F076BE15
2F076BE18
(57)【要約】
【課題】多様な生物を誘引して自動的にモニタリングできる生物モニタリングシステムを提供する。
【解決手段】生物モニタリングシステムは、モニタリング対象地域に設置された人工の水溜まり(バス24A、24B)と、水溜まりの全体を画角内に収め、水溜まりへ誘引された生物を自動的に撮影する撮影装置40と、撮影装置40が撮影した映像から生物の種類を特定する生物特定装置10と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタリング対象地域に設置された人工の水溜まりと、
前記水溜まりの全体を画角内に収め、前記水溜まりへ誘引された生物を自動的に撮影する撮影装置と、
前記撮影装置が撮影した映像から前記生物の種類を特定する生物特定装置と、
を有する生物モニタリングシステム。
【請求項2】
水面の高さが異なる複数の前記水溜まりを有し、
前記水溜まり同士を連結して水流を発生させる流水部を備えている、請求項1に記載の生物モニタリングシステム。
【請求項3】
前記水溜まりの水深が一定ではない、請求項1に記載の生物モニタリングシステム。
【請求項4】
前記水溜まりの水底は、それぞれ異なる材質の底材で敷き詰められた複数の領域を有する、請求項1に記載の生物モニタリングシステム。
【請求項5】
前記水溜まりに貯水される水の水温を調整する調整装置を備えた、
請求項1に記載の生物モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市部においては、地域の生物多様性に配慮して緑地計画が行われることがある。生物多様性に配慮し、順応的に緑地を維持管理するためには、緑地に集まる生物をモニタリングして把握する必要がある。例えば下記特許文献1には、鳥類を監視するための監視コンポーネント、鳥類を誘引するための鳥類モデルを備えた鳥誘引コンポーネントを備えた鳥誘引監視装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7084568号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示された鳥誘引監視装置では、鳥類モデルを継続的にうなずくように駆動させることにより鳥類の摂食動作を模倣して鳥類を誘引する。
【0005】
しかしながら、このような誘引方法では、誘引されるのは集団化する特性を持つ鳥類に限定される虞があり、それ以外の鳥類を含む生物を誘引することは難しい。また、広い屋外空間にいる鳥類等は相対的に小さいため、ある一定の領域内に誘引しない限り、モニタリングするのは困難である。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、多様な生物を誘引して自動的にモニタリングできる生物モニタリングシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の生物モニタリングシステムは、モニタリング対象地域に設置された人工の水溜まりと、前記水溜まりの全体を画角内に収め、前記水溜まりへ誘引された生物を自動的に撮影する撮影装置と、前記撮影装置が撮影した映像から前記生物の種類を特定する生物特定装置と、を有する。
【0008】
請求項1の生物モニタリングシステムでは、モニタリング対象地域に人工の水溜まりが設置されている。水溜まりには、水浴びや水飲みのために、鳥類のような生物が集まりやすい。このため、モニタリング対象地域に生息する多様な生物を誘引できる。
【0009】
また、この生物モニタリングシステムは、水溜まりの全体を画角内に収める撮影装置を備えている。このため、水溜まりに誘引された生物は全て画角内に収まって撮影され易い。そして、生物特定装置が、撮影された生物を特定する。これにより、モニタリング対象地域に生息する多様な生物を誘引して自動的にモニタリングできる。
【0010】
請求項2の生物モニタリングシステムは、請求項1に記載の生物モニタリングシステムにおいて、水面の高さが異なる複数の前記水溜まりを有し、前記水溜まり同士を連結して水流を発生させる流水部を備えている。
【0011】
請求項2の生物モニタリングシステムは、水面の高さが異なる複数の水溜まりを連結する流水部に、水流を有する。これにより、滞留した水場ではなく水流がある水場を好む生物を誘引し易い。
【0012】
請求項3の生物モニタリングシステムは、請求項1に記載の生物モニタリングシステムにおいて、前記水溜まりの水深が一定ではない。
【0013】
請求項3の生物モニタリングシステムは、水溜まりの水深が一定ではないため、それぞれ異なる水深を好む異なる生物を誘引できる。例えば身体の大きさが多様な複数種類の生物を誘引し易い。
【0014】
なお、請求項3の生物モニタリングシステムは、請求項1又は2に記載の生物モニタリングシステムにおいて、前記水溜まりの水深が一定ではないものとしてもよい。
【0015】
請求項4の生物モニタリングシステムは、請求項1に記載の生物モニタリングシステムにおいて、前記水溜まりの水底は、それぞれ異なる材質の底材で敷き詰められた複数の領域を有する。
【0016】
請求項4の生物モニタリングシステムは、水溜まりの水底が、それぞれ異なる材質の底材で敷き詰められた複数の領域を有する。これにより、例えば砂利の水底を好む生物や、泥の水底を好む生物を誘引できる。また、これらの水底の環境に住み着く生物を捕食する生物も誘引し易い。
【0017】
なお、請求項4の生物モニタリングシステムは、請求項1~3の何れか1項に記載の生物モニタリングシステムにおいて、前記水溜まりの水底は、それぞれ異なる材質の材料で敷き詰められた複数の領域を有するものとしてもよい。
【0018】
請求項5の生物モニタリングシステムは、請求項1に記載の生物モニタリングシステムにおいて、前記水溜まりに貯水される水の水温を調整する調整装置を備える。
【0019】
請求項5の生物モニタリングシステムでは、水溜まりに貯水される水の水温が、調整装置によって調整される。例えば冬季に貯水された水の凍結を抑制すれば、生物を誘引し易い。また、夏季に貯水された水の温度を下げれば、鳥などの恒温動物の体温との差が生じやすい。このため、検出した温度を利用して生物の種類を特定する場合などにおいて、生物の種類を特定し易い。
【0020】
なお、請求項5の生物モニタリングシステムは、請求項1~4の何れか1項に記載の生物モニタリングシステムにおいて、前記水溜まりに貯水される水の水温を調整する調整装置を備えるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、多様な野生の生物を誘引して自動的にモニタリングできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る生物モニタリングシステムの全体構成及びモニタリング装置の構成を示す概念図である。
図2】実施形態に係る生物特定装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る生物特定装置の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
図4】実施形態に係る生物モニタリング処理の一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態に係るバードバスの変形例を示す概念図である。
図6】実施形態に係るモニタリング装置の変形例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る生物モニタリングシステムについて、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0024】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0025】
<生物モニタリングシステム>
図1には、本発明の実施形態に係る生物モニタリングシステム80の概要が示されている。生物モニタリングシステム80は、生物特定装置10、モニタリング装置20及び外部モニタ90を備えて形成されている。生物特定装置10、モニタリング装置20及び外部モニタ90は、ネットワークNを介して互いに各種の情報を送受信できる。
【0026】
<モニタリング装置>
モニタリング装置20は、野生の生物、特に鳥類をモニタリングするモニタリング対象地域に置かれる可搬性の装置である。
【0027】
図1においてモニタリング装置20は1台しか図示されていないが、生物モニタリングシステム80には、複数のモニタリング装置20を設けてもよい。複数のモニタリング装置20を設ける場合、これらのモニタリング装置20は、モニタリング対象地域において、樹木の下、丘の上、岩陰、河川の近くなど、多様な場所に設置することが好ましい。
【0028】
モニタリング装置20は、筐体22、バードバス24、流水部26を備えて形成されている。
【0029】
(筐体)
筐体22は、樹脂で形成されたモニタリング装置20の本体であり、後述する検出センサ30、撮影装置40が取付けられる。
【0030】
また、筐体22には鳥が止まりやすい枝のような止まり木を設けることが好ましい。この止まり木は、モニタリング装置20に飛来した鳥を撮影装置40で撮影する際に、鳥が撮影装置40に対していつも同方向(正面や側面等)を向くように形成することが好ましい。
【0031】
また、筐体22にはトンボなどの生物が止まれる止まり木を設けてもよい。また、筐体22には、部分的に蜜源や花弁を模した彩色を施して、蝶を誘引してもよい。
【0032】
(バードバス)
バードバス24は、筐体22の上面に設けられた窪みであり、図示しない水道栓から送られた水を滞留して、人工の水溜まりを形成する。バードバス24は、バス24Aと、バス24Aより下方に設けられたバス24Bと、を備えている。
【0033】
バス24Bの水底は、それぞれ異なる材質の材料で敷き詰められた複数の領域を有する。具体的には、バス24Bの底部には、底材25Aが敷き詰められた部分と、底材25Bが敷き詰められた部分とがある。底材25Aは例えば砂利であり、底材25Bは例えば砂利より粒子が細かい粘性土である。なお、これらの底材を総称して、以下の説明では底材25と称す場合がある。
【0034】
なお、バス24Bの水底には、必ずしも複数の材質の底材25を敷く必要はなく、単一の材質のみを敷いてもよいし、何も敷かなくてもよい。モニタリング装置20が複数ある場合は、複数のモニタリング装置20毎に、異なる材料を敷いてもよい。
【0035】
図1に水深H1、H2で示すように、バス24Bの水深は一定でなく形成する(水深が異なる部分を形成する)ことが好ましい。水深が異なる部分を形成する態様としては、図1にも示すように、バス24Bの底を擂鉢状に形成する方法がある。この場合、底材25の有無に関わらず水深が異なる部分を形成できるが、図1に示すように底材25を配置してもよい。
【0036】
水深が異なる部分を形成する別の態様としては、バス24Bの深さを一定に形成し、底材25の量(厚み)によって水深が異なる部分を形成してもよい。
【0037】
(流水部)
流水部26は、バス24Aとバス24Bとを連通する溝であり、バス24Aからバス24Bへ向かう水流を発生させる流路である。なお、筐体22には、流水音を模した音を発生するスピーカ70を配置してもよい。
【0038】
(検出センサ)
モニタリング装置20には、検出センサ30が備えられている。検出センサ30は、後述する撮影装置40の画角内、かつ、モニタリング装置20の周囲に生物が存在していることを熱や動きによって検出したり、モニタリング装置20周辺の環境情報を検出したりする装置である。
【0039】
(撮影装置)
モニタリング装置20には、バードバス24へ誘引された生物を自動的に撮影する撮影装置40が備えられている。撮影装置40としては、バードバス24の全体を画角内に収めるカメラが用いられる。
【0040】
撮影装置40は、後述するモニタリングプログラム13Aが実行されている間、撮影を断続的に実行するものとする。また、撮影装置40は、モニタリングプログラム13Aが実行されている間であって、検出センサ30が生物を検出している間のみ、撮影を実行するものとしてもよい。
【0041】
また、撮影装置40としては、カラー画像または近赤外線画像のどちらか一方のみを撮影するカメラを組み合わせて用いてもよい。近赤外線画像を撮影する際には、近赤外線ライトを、撮影装置40の画角内へ照射してもよい。
【0042】
近赤外線画像を撮影することにより、可視光量が少ない夜間の撮影を実現できる。これにより、夜行性の生物を同定し易い。
【0043】
また、撮影装置40には、生物の鳴き声、流水部26の流水音、モニタリング装置20が設置された環境音等を集音する集音装置を備えてもよい。このような集音装置は、撮影装置40とは別に設けてもよい。
【0044】
また、撮影装置40は、複数設けてもよい。これにより、異なる角度から生物を同時撮影できるため、生物の種類を特定し易い。
【0045】
調整装置66は、バス24Bの水の温度を調整(加熱及び冷却)可能なヒーター及びチラーを備えた熱源装置である。
【0046】
(その他の装置)
モニタリング装置20は、検出センサ30によって検出された検出情報、撮影装置40によって撮影された画像情報及び音声情報をネットワークNへ送信する通信装置76を備えている。
【0047】
また、通信装置76は、生物特定装置10によって作成された制御情報をネットワークNから受信する。
【0048】
モニタリング装置20は、その他の装置として、上述したスピーカ70を備えていてもよい。また、モニタリング装置20は、検出センサ30、撮影装置40及びスピーカ70へ電力を供給するための発電装置74を備えていてもよい。発電装置74は、太陽光発電パネル及び蓄電池を備えた装置とすることが好適である。
【0049】
<外部モニタ>
生物モニタリングシステム80の外部モニタ90は、モニタリング対象地域において対象地域の住民が集まる場所や、公共施設(図書館や役所など)に設置されるディスプレイである。外部モニタ90は、撮影装置40によって撮影された画像及び音声をネットワークNから取得して放映することができる。また、これらの画像や音声と共に、生物特定装置10によって特定された生物の種類をネットワークNから取得して放映することもできる。
【0050】
なお、外部モニタ90としては、不特定または特定の個人が所有する携帯端末(スマートフォンなど)を利用することもできる。この場合、携帯端末の所有者は、ネットワークN上に記憶された生物の画像や音声を閲覧することができる。
【0051】
<生物特定装置>
[生物特定装置の電気的な構成]
図2には、生物特定装置10の電気的な構成を示すブロック図が示されている。生物特定装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16、通信インタフェース(I/F)部18及び外部I/F部19を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、通信I/F部18及び外部I/F部19はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0052】
(記憶部)
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、モニタリングプログラム13Aが記憶されている。モニタリングプログラム13Aは、モニタリングプログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からのモニタリングプログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、モニタリングプログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、モニタリングプログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0053】
記憶部13には生物記録データベース13Bが記憶される。この生物記録データベース13Bについては、詳細を後述する。
【0054】
(入力部)
入力部14では、ユーザによって、モニタリングプログラム13Aを開始及び終了するための操作が実行される。ユーザとは、一例として、生物モニタリングシステム80の管理者である。
【0055】
(表示部)
表示部15には、モニタリングプログラム13Aを開始及び終了するための情報が表示される。表示部15と入力部14とは、タッチパネルを用いて一体的に形成することもできる。
【0056】
[生物特定装置の機能的な構成]
次に、図3を参照して、本実施形態に係る生物特定装置10の機能的な構成について説明する。図3に示すように、生物特定装置10は、生物情報取得部11A、生物特定部11B及び出力部11Eを含む。生物特定装置10のCPU11は、モニタリングプログラム13Aを実行することで、生物情報取得部11A、生物特定部11B及び出力部11Eとして機能する。
【0057】
(生物情報取得部)
生物情報取得部11Aは、モニタリング装置20の撮影装置40が撮影した画像を取得する。生物情報取得部11Aは、画像と併せて、モニタリング装置20の検出センサ30が検出した検出情報を取得してもよい。
【0058】
(生物特定部)
生物特定部11Bは、生物情報取得部11Aが取得した画像(カラー画像又は近赤外線画像)から、撮影された生物の種類を特定する。
【0059】
具体的には、生物特定部11Bは、生物を特定するための機械学習を行った学習済みのニューラルネットワーク(不図示)に、取得した画像を入力することで、当該ニューラルネットワークから生物の種類を取得する。
【0060】
機械学習では、生物を撮影した画像と生物の種類との組み合わせを教師データとして利用して、生物を撮影した画像が入力されると生物の種類を出力する学習済みのニューラルネットワークを生成する。
【0061】
なお、教師データとして、画像に加えて、検出情報である集音装置が集音した生物の鳴き声を用いることもできる。この場合、学習済みのニューラルネットワークは、生物を撮影した画像及び検出情報が入力されると、生物の種類を出力する。または、学習済みのニューラルネットワークは、生物を撮影した画像のみが入力された場合も、生物の種類を出力する。
【0062】
生物特定部11Bによって特定された生物の種類は、生物記録データベース13Bに記憶される。生物記録データベース13Bには、生物情報取得部11Aが取得した画像と、集音装置が集音した音と、画像が撮影された場所及び日時と、生物特定部11Bによって特定された生物の種類と、が紐づけて記憶される。
【0063】
生物記録データベース13Bに記憶されたこれらの諸情報を、以下の説明ではまとめて「生物記録データベース13Bに記憶された画像等」と称する場合がある。
【0064】
(出力部)
出力部11Eは、生物記録データベース13Bに記憶された画像等を、ネットワークNを介して外部モニタ90へ出力する。なお、出力部11Eは、生物記録データベース13Bに記憶された画像等を、自動的に外部モニタ90へ出力するが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0065】
例えばユーザが、生物記録データベース13Bに記憶された画像等から、作為的に特定の画像等を選択し、選択された画像などを外部モニタ90へ出力してもよい。
【0066】
<作用>
次に、図4を参照して、本実施形態に係る生物モニタリングシステム80の作用を説明する。ユーザからの入力部14を介した実行指示等に応じて、生物特定装置10のCPU11がモニタリングプログラム13Aを実行することにより、図4に示す生物モニタリング処理が実行される。
【0067】
なお、錯綜を避けるため、ここではモニタリング装置20が一台の場合について説明する。また、学習済みのニューラルネットワークが生成されている場合について説明する。
【0068】
モニタリングプログラム13Aの実行が開始されると、ステップ104で、CPU11は、検出センサ30による生物の検出待ちを実行する。CPU11は、生物が検出されるまで、ステップ104を繰り返し実行する。生物が検出されると、ステップ106へ移行する。
【0069】
ステップ106で、CPU11は、撮影装置が撮影した画像及び検出センサ30が検出した検出情報を取得する。ステップ106の後は、ステップ108へ移行する。
【0070】
ステップ108で、CPU11は、画像及び検出情報のうち、少なくとも画像から生物を特定する生物特定処理を実行する。これにより、CPU11は、画像に映った生物を特定する。ステップ108の後は、ステップ110へ移行する。
【0071】
ステップ110で、CPU11は、特定された生物の種類を含む生物の画像等を生物記録データベース13Bに記録する。ステップ110の後は、ステップ112へ移行する。
【0072】
ステップ112で、CPU11は、生物モニタリング処理の終了タイミングが到来したか否かを判定し、肯定判定となった場合は生物モニタリング処理を終了する。この終了タイミングは、一例として、ユーザの入力部14を介した入力によって到来する。ステップ112で否定判定となった場合はステップ104へ戻る。
【0073】
<効果>
本発明の実施形態に係る生物モニタリングシステム80では、モニタリング対象地域に人工の水溜まりとしてのバードバス24(バス24A及び24B)が設置される。水溜まりには、水浴びや水飲みのために、鳥類のような生物が集まりやすい。このため、モニタリング対象地域に生息する、多様な生物を誘引できる。
【0074】
また、この生物モニタリングシステム80は、バードバス24の全体を画角内に収める撮影装置40を備えている。このため、バードバス24に誘引された生物は全て画角内に収まる。また、当該生物は、撮影装置40によって自動的に撮影される。そして、生物特定装置10が、撮影された生物を特定する。
【0075】
これにより、モニタリング対象地域に生息する多様な生物を誘引してモニタリングし、生息状況を自動的に把握できる。
【0076】
また、この生物モニタリングシステム80は、水面の高さが異なるバス24A及び24Bを連結する流水部26に、水流を有する。これにより、滞留した水場ではなく水流がある水場を好む生物を誘引し易い。
【0077】
また、この生物モニタリングシステム80は、バス24Bの水深が一定ではないため、それぞれ異なる水深を好む異なる生物を誘引できる。例えば身体の大きさが多様な複数種類の生物を誘引し易い。
【0078】
また、この生物モニタリングシステムは、バス24Bの水底が、それぞれ異なる材質の底材25A及び25Bで敷き詰められた複数の領域を有する。これにより、例えば砂利の水底を好む生物や、泥の水底を好む生物を誘引できる。また、これらの水底の環境に住み着く生物を捕食する生物も誘引し易い。
【0079】
また、この生物モニタリングシステム80では、バス24Bに貯水される水の水温が、調整装置66によって調整される。例えば冬季に貯水された水の凍結を抑制すれば、冬季間に飛来する鳥などの生物を誘引し易い。
【0080】
また、夏季に貯水された水の温度を下げれば、鳥などの恒温動物の体温との差が生じやすい。このため、検出した温度を利用して生物の種類を特定する場合などにおいて、特定精度を向上できる。
【0081】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、水面の高さが異なるバス24A及び24Bを有するが、本発明の実施形態はこれに限らない。人工の水溜まりとしては、ひとつのバス24Bのみを設け、流水部26を備えない構成としてもよい。ひとつのバス24Bでも、人工の水溜まりがない場合と比較して、多様な生物を誘引できる効果を得られる。
【0082】
また、上記実施形態においては、バス24Bの水深が一定ではないものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば底材25の有無に関わらず、バス24Bの水深は一定にしてもよい。バス24Bの水深が一定でも、人工の水溜まりがない場合と比較して、多様な生物を誘引できる効果を得られる。
【0083】
また、上記実施形態においては、モニタリング装置20が、バス24Bに貯水される水の水温を加温及び冷却できる調整装置66を備えているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば調整装置66は加温及び冷却の何れかのみを実行できるものとしてもよい。また、調整装置66を備えないものとしてもよい。調整装置66を省略しても、人工の水溜まりがない場合と比較して、多様な生物を誘引できる効果を得られる。
【0084】
また、上記実施形態においては、バス24Bの底部に複数の底材25を敷き詰める場合において、底材25Aが敷き詰められた部分と、底材25Bが敷き詰められた部分とを分けて設けているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0085】
例えば図5(A)に示すように、バス24Bの底部に底材25Cを敷き詰め、底材25Cと異なる底材25Dを底材25Cの中に離散的に配置してもよい。この例においては、底材25Cは小石であり、底材25Dは、底材25Cより大きい礫である。
【0086】
また、上記実施形態においては、モニタリング装置20を樹木の下に設置する例について説明したが、モニタリング装置20には、図6に示すように、プランター78を設けて、低木を当該プランター78に植樹することにより、樹木の下の環境を形成してもよい。バードバス24と低木とが隣接することで、鳥などの生物を誘引し易くできる。
【0087】
また、上記実施形態においては、モニタリング装置20が、検出センサ30によって検出された検出情報、撮影装置40によって撮影された画像情報及び音声情報をネットワークNへ送信する通信装置76を備えているものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0088】
例えばモニタリング装置20は、このような通信装置76を備えない構成としてもよい。この場合、例えばモニタリング装置20には、諸情報を記憶する記憶装置を設ける。そして、生物特定装置10を搭載した携帯端末(ノート型パソコンなど)をモニタリング装置20に接続して、生物特定装置10に諸情報を取得させてもよい。
【0089】
あるいは、生物特定装置10のうち、生物情報取得部11A、生物特定部11B及び出力部11Eを携帯端末に搭載して、当該携帯端末をモニタリング装置20に接続して諸情報を取得させてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 生物特定装置
24 バードバス(水溜まり)
24A バス(水溜まり)
24B バス(水溜まり)
25 底材
25A 底材
25B 底材
26 流水部
40 撮影装置80 生物モニタリングシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6