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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169047
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】バラ花弁由来グルコシルセラミド
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/10 20060101AFI20241128BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20241128BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 36/738 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07H15/10
A61K8/60
A61Q19/00
A61K31/7028
A61P17/16
A61P43/00 107
A61K36/738
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/12
A61K9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086227
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(71)【出願人】
【識別番号】594081375
【氏名又は名称】オカヤス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩士
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕太
(72)【発明者】
【氏名】岡安 武蔵
(72)【発明者】
【氏名】西尾 和正
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C057AA06
4C057BB02
4C057DD01
4C057JJ12
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC18
4C076CC26
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE30
4C083AA082
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC422
4C083AD392
4C083CC05
4C083DD31
4C086AA01
4C086EA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB22
4C088AB51
4C088AC03
4C088BA08
4C088BA10
4C088BA13
4C088CA06
4C088CA09
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本願では、従来の植物性グルコシルセラミドに比べ収率が良く得られる植物性グルコシルセラミドを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、バラの花弁を使用することで、上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ花弁から得られたグルコシルセラミド。
【請求項2】
次の(1)~(4)のステップにより得られたグルコシルセラミド画分。
(1)バラ花弁を、エタノール、クロロホルム、メタノールよりなる群から選択される少なくとも1種以上の溶媒に浸漬してバラ花弁抽出液を得るステップ
(2)バラ花弁抽出液をろ過、乾固してバラ花弁抽出物を得るステップ
(3)バラ花弁抽出物をエタノール、アセトン、水よりなる群から選択される2種以上とヘキサンの溶媒で分液を行うステップ
(4)ヘキサン層を得るステップ
【請求項3】
次の(1)~(4)のステップを含むグルコシルセラミドの製造方法。
(1)バラ花弁を、エタノール、クロロホルム、メタノールよりなる群から選択される少なくとも1種以上の溶媒に浸漬してバラ花弁抽出液を得るステップ
(2)バラ花弁抽出液をろ過、乾固してバラ花弁抽出物を得るステップ
(3)バラ花弁抽出物をエタノール、アセトン、水よりなる群から選択される2種以上とヘキサンの溶媒で分液を行うステップ
(4)ヘキサン層を蒸発乾固するステップ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はバラの花弁から得られるグルコシルセラミドに関する。
【背景技術】
【0002】
植物の主要なスフィンゴ糖脂質である植物性のグルコシルセラミドはグルコセレブロシドとも呼ばれ、塗布時および経口投与時の肌の保湿機能向上作用や細胞賦活作用をもつことから機能性素材として利用されている。化粧品・食品など用途は多岐に渡るため、市場が拡大している。グルコシルセラミドは化学合成によって製造するにはコストが高く、植物から抽出、精製するほうがコストが低いことから、植物性グルコシルセラミドを得るためにグルコシルセラミド含量が多い植物原材料が求められている。
【0003】
グルコシルセラミドを得るための植物原材料としては、非特許文献1に柑橘類の果実・果皮、特許文献1に小麦、大豆、米、綿実、菜種、トウモロコシ、サトウキビ、ゴマ、ピーナッツなど、特許文献2に米糠、特許文献3にパイナップルが用いられることが記載されている。これらの植物原材料には、脂質が多く含まれることからグルコシルセラミドの含有が期待できる植物の果実・果皮・胚乳・胚芽類等の部位が用いられてきた。一方で、市場の要求を満たす量のグルコシルセラミドが植物から得られているとはいえず、十分量のグルコシルセラミドを得ることができる原材料植物が求められている。
【0004】
バラは、バラ科バラ属に分類される植物の総称であり、多様な種が存在する。野生種とそれらが交配されて生まれた栽培品種に大別される。野生種として、西洋バラ(Rosa Centifolia)、ダマスクバラ(Rosa Damask)、カニナバラ(Rosa Canina)等が知られており、栽培品種として主にハイブリッド・ティー・ローズ(Rosa Hybrida)が知られている。
【0005】
バラの野生種、栽培品種はともに、その美しい外観から観賞用として重宝され、多くの種類が栽培されている。また、バラの花弁の香りを楽しむため、バラの花弁に水を添加し加温抽出・蒸留を行い得られる芳香水として利用されている。香りを楽しむだけではなく、バラ花弁の抽出物の人体に対する有用な作用が知られている。例えば、特許文献4には西洋バラ花弁の抽出物がカルボニル化タンパク生成促進作用を抑制する効果をもつことが記載されている。特許文献5にはバラ属植物の花弁抽出物がムコ多糖類断片化抑制効果、スーパーオキサイドディスムターゼ様を示す活性酸素消去剤として有効であることが記載されている。
【0006】
バラの花弁に含有される成分としては、花弁の組織を構成する線維成分(セルロース)、香り成分(2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオール等)、活性酸素消去成分(ポリフェノール類)、が知られている。バラの花弁に含有される脂質と言えば、上述のような香り成分として認識することが一般的で、バラの花弁が既知の植物原材料に勝る量のグルコシルセラミドを含むということは全く知られておらず、グルコシルセラミドの原材料植物としてバラの花弁が使用される例もなかった。
【0007】
また、観賞用に栽培されるバラは観賞時期を過ぎると廃棄されており、有効な利用方法が望まれている。バラは栽培されている観賞用の植物の中で最も多くの種類が栽培されており、栽培されているバラの量も多いことから、観賞時期を過ぎたバラの廃棄量も多い。上記のバラの成分の利用については、観賞時期を過ぎたバラの花弁は香り成分やポリフェノールが減少もしくは変性しており利用が難しく、観賞時期が過ぎたバラの花弁を有効に利用する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-232699号公報
【特許文献2】特開2002-030093号公報
【特許文献3】特開2013-241370号公報
【特許文献4】特開2009-298726号公報
【特許文献5】特開平7-309770号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】岩城知子、「食品中の健康機能性成分の分析法マニュアル」、産技連食品健康産業分科会、食品機能成分分析研究会、2012年1月、p1ー8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願では、従来の植物性グルコシルセラミドに比べ収率良く得られる植物性グルコシルセラミドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、バラの花弁を使用することで、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
バラの花弁を使用することで、収率良く植物性グルコシルセラミドを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願発明について詳細に説明する。
【0014】
本願発明で用いられるバラはバラ属(Rosa属)に分類される植物であれば特に限定されず、野生種または交配されて生まれた栽培品種を用いることができる。例えば、野生種として自生している西洋バラ(Rosa Centifolia)、ダマスクバラ(Rosa Damask)、カニナバラ(Rosa Canina)、また、栽培品種として知られているハイブリッド・ティー・ローズ(Rosa Hybrida)などを用いることができる。特に観賞用として多く栽培されており、観賞時期が過ぎた花弁を多く利用できるハイブリッド・ティー・ローズを使用することが好ましい。交配された品種、特に栽培品種の名称は市場で流通する際に命名される販売名、商品名や種苗法で登録される品種登録名、特許法で登録される商標などの複数の名称が存在する場合がある。一例として、ハイブリッド・ティー・ローズでは、桃色系統のレディラック、カリナ、シャーロットアームストロング、コンフィダンス、デインティー・ベス、ファーストプライズ、ミシェルメイヤン、桃山、オフェリア、ロイヤルハイネス、ソニア、黄色系統のケイハキタミ、ゴールデンハート、アールスメノールゴールド、天津乙女、アーリンフランシス、ゴールデンマスターピース、ゴールデンラブチェア、ゴールデンセプター、ヘルムートシュミット、ピース、赤色系統のパパメイアン、オクラホマ、シャルルマルラン、クリスチャンディオール、クライスラーインペリアル、クリムゾングローリー、イナハークネス、グランドマスターピース、ハピネス、ジョンウォータラー、シッドデヴィル、バッカラ、ドゥフトヴォルケ、レディーローズ、朱雀、サマーホリデー、スーパースター、白色系統の正雪、ブランシュマルラン、ホナー、メサージュ、パスカリ、ヴィルゴ、ホワイトクリスマス、ホワイトマスターピース、キャラメルアンティーク、紫色系統の紫香、ブラックティー、ブルームーン、グレーパール、レディーエクス、マダムヴィオレ、スターリングシルヴァー、複色系統のダブルデライト、ガーデンパーティー、コルデスパーフェクタ、聖火、コロラマ、ケーニヒンデルローゼン、ラブ、モダンタイムズ、ピカデリー、ツィガヌ等を用いることができる。入手しやすさ、花弁の採花可能重量などの産業利用上の利点から、特にレディラック、ケイハキタミ、ゴールデンハート、パパメイアン、オクラホマ、正雪、紫香、ダブルデライトを用いることが好適である。
【0015】
本願発明で用いられるバラの部位は花弁であるが、工業生産上、作業上等の理由により、調製の過程で花弁以外の部分(例えば、萼、花糸、葯、柱頭、花柱、子房、胚珠、花柄、花枝、茎、葉、)が多少含まれることは差し支えない。花弁は生のまま用いても、また予め乾燥もしくは半乾燥した上で用いてもよい。前処理として、凍結処理、加熱処理、発酵処理、洗浄処理を行った花弁を使用することもできる。グルコシルセラミドが残存しているバラの花弁であれば、グルコシルセラミド以外の成分を溶媒抽出したあとの花弁の残渣を使用することもできる。また、観賞時期が過ぎ、痛み、腐敗がある花弁であってもグルコシルセラミドが残存していれば使用することができる。また、形状としては、特に限定されないが、採取したものをそのまま用いることもできるが、細断あるいは粉砕して微細化したものを用いてもよい。
【0016】
バラの花弁から、グルコシルセラミドを得るための抽出溶媒は、特に限定されないが、グルコシルセラミドの溶解性が良い溶媒、例えば、低級アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、炭化水素類(プロパン、ブタン、ヘキサン、シクロヘキサン等)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトン等)、酢酸エステル類(酢酸エチル、酢酸メチル等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン等)、またはこれらの混液等を用いることができる。バラの花弁と溶媒との混合比(重量比)は、花弁の乾燥重量換算で一般に1:1~1:1000、好ましくは1:5~1:100、より好ましくは1:10~1:50の範囲である。
【0017】
バラの花弁から、グルコシルセラミドを得るための抽出工程は、グルコシルセラミドが溶媒に溶出すれば特に限定されないが、例えば次の方法で行うことができる。まず、抽出しようとするバラの花弁を前記溶媒に浸漬、または分散させる。抽出工程は、バラの花弁を溶媒に浸漬、または分散させるだけで十分であり、抽出時間は特段設ける必要はないが、一定時間の抽出時間を適宜設けてもよい。抽出温度は特に限定されないが、室温(5℃以上~30℃未満)・加温抽出(30℃以上)・低温抽出(5℃未満)など適宜抽出温度条件を設定することができる。得られたグルコシルセラミドを含む抽出溶媒はろ過あるいは遠心分離等の固液分離手段によって液相を分取し、浸漬、または分散させた花弁等を取り除くのが好ましいが、以降の精製工程において障害にならなければ、本固液分離工程を省いても差し支えない。
【0018】
バラの花弁から得たグルコシルセラミドの精製工程は、特に限定されないが、例えば、次の方法で行うことができる。バラの花弁からエタノール抽出で得たバラ抽出液を乾固して、バラ抽出物を得る。乾固させる方法は特に限定されないが、エバポレーターによる減圧乾燥、自然乾燥、温度50~100℃で加温乾燥させる方法で抽出物の乾固を行うことができる。乾固して得られたバラ抽出物にヘキサンとエタノールと水 または ヘキサンとアセトンと水 または、ヘキサンとアセトンと水とエタノールの混液を添加・攪拌し、分液抽出を行い、グルコシルセラミドが多く含まれる画分であるヘキサン層を得ることができる。その他の精製方法として、薄層分取クロマトグラフィーや分取液体クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー処理等によってグルコシルセラミドの精製度をより高めることもできる。もっとも、完全な単一の化合物まで精製する必要はなく、多少の夾雑物、不純物が残存していても差し支えない。
【実施例0019】
以下、本願発明におけるバラ花弁からグルコシルセラミドを得る方法の実施例を示すが、これらの抽出法・精製法に限定されるものではない。
【0020】
<グルコシルセラミド含有量の確認>
植物から得られる抽出物中のグルコシルセラミド含有量は標準品となる市販のグルコシルセラミドの検量線からTLC(thin-layer chromatography)法を用いて確認した。展開溶媒はクロロホルム:メタノール:酢酸:水=20:3.5:2.3:0.7(v/v)を用意し、展開を始める3時間程度前に展開槽に入れて展開槽内を展開溶媒の蒸気で飽和させた。グルコシルセラミド標準品(トウモロコシ由来グルコシルセラミド(Glucosylceramide from Maize、辻製油))5mgを0.5mLクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)に溶解させ10mg/mLに調製したものをグルコシルセラミド標準品液とし、1スポットが10,5,2.5,1.25μgとなるようにTLC plate(TLCシリカゲル60F254,Merck)にスポットし、ドライヤー(冷風)で乾燥させた。植物から得られる抽出物をクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)に100mg/mLとなるように溶解させ、1スポット100μgとなるようにTLC plateにスポットした。上記のTLC plateを展開槽に入れて展開させた。展開溶媒がTLC plateの上部から1cmに到達した時点で展開を止め、ドライヤー(冷風)で乾燥させた。バニリン硫酸溶液(バニリン15g、濃硫酸2.5mL、エタノール250mLを混合した)を噴霧し、180℃で5分間加熱した。Dolphin-DOC(KURABO)で発色させたTLC plateの写真撮影・画像解析を行い、グルコシルセラミド標準品のRf値と一致するバンドのバンド強度(Int.OD:バンドとして認識した領域全体のシグナル強度)を求めた。既知の濃度のグルコシルセラミド標品のバンド強度とグルコシルセラミド量の検量線を作成し、検量線をもとに抽出物中のグルコシルセラミド量を算出した。
【0021】
<植物原材料からの植物性グルコシルセラミドの抽出>
予め乾燥させたバラの花弁(バラの品種はハイブリッド・ティー・ローズのダブルデライト、レディラック)、バラの葉、茎(バラの品種はハイブリッド・ティー・ローズのダブルデライト)、レッドクローバーの花弁、スミレの花弁、ハクモクレンの花弁、各1gにエタノール、10gを加え、室温(20℃~30℃)で抽出した後、ろ過により原材料を取り除き、各10gのエタノール抽出液を得た。予め乾燥させたバラの花弁(バラの品種はハイブリッド・ティー・ローズのダブルデライト、レディラック)、各1gにクロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液10gを加え、室温(20℃~30℃)で抽出した後、ろ過により原材料を取り除き、各10gのクロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液抽出液を得た。また、予め乾燥させた米ぬか、かぼすの果皮、かぼすの種子、タチバナの果皮、パイナップルの果皮、ひまわりの種子1gにエタノール10gを加え、室温(20℃~30℃)で抽出した後、ろ過により原材料を取り除き、各10gのエタノール抽出液を得た。各エタノール抽出液、クロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液抽出液をエバポレーターで乾固し、エタノール抽出物、クロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液抽出物を得た。上記の抽出物をクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)で100mg/mLとなるように溶解させた。溶解しない不溶物を含む抽出物に関しては可溶部のみ溶解したものを試料とした。
【0022】
<グルコシルセラミド含有量の確認結果>
予め乾燥させたバラの花弁1gのエタノール抽出物には800μ、クロロホルム:メタノール=1:1(v/v)抽出物には700μgのグルコシルセラミドが含有されていることが確認された。一方で、バラの葉、バラの茎の抽出物にはほとんどグルコシルセラミドは含有されておらず、バラの部位の中でも花弁の抽出物に特徴的に多くグルコシルセラミドが含まれていることを確認した。また、レッドクローバーの花弁、スミレの花弁、ハクモクレンの花弁の抽出物にはほとんどグルコシルセラミドは含有されておらず、グルコシルセラミドは植物の花弁の中でもバラの花弁から特徴的に得られることを確認した。また、バラの花弁からはグルコシルセラミド原材料として汎用されている下記の原材料、米ぬか、かぼすの果皮、かぼすの種子、タチバナの果皮、パイナップルの果皮、ひまわりの種子と比較してもグルコシルセラミドを多く得られることが確認された。上記の結果から、バラの花弁からは既存のグルコシルセラミド原材料として汎用されている原材料よりも収率良く、グルコシルセラミドを得ることができることが示された。実施例に使用したバラの花弁は観賞時期が過ぎた乾燥したバラの花弁を使用しており、観賞時期が過ぎたバラの花弁を有効に利用する方法として、グルコシルセラミドの原材料として使用できることがわかった。なお、鑑賞時期が過ぎていない新鮮なバラの花弁を使用して同様の検討を行った場合も同量のグルコシルセラミドが得られることを確認しており、鑑賞時期が過ぎている、過ぎていないに関わらず、バラの花弁がグルコシルセラミド原材料として利用可能であることが確認された。一方で、バラの花弁のエタノール抽出物、クロロホルム:メタノール=1:1(v/v)抽出物中のグルコシルセラミド含量は0.1%(質量%)以下であり、グルコシルセラミドとして産業上利用するために精製が必要であることがわかった。
【0023】
【表1】
【0024】
<植物原材料からの植物性グルコシルセラミドの精製1>
バラ花弁から得られたグルコシルセラミドを夾雑物が少ないルコシルセラミドとして産業上利用可能な状態に調製するため、不要な夾雑物を除く精製を行った。予め乾燥させたバラの花弁(バラの品種はハイブリッド・ティー・ローズのダブルデライト)100g、および比較品として米ぬか100g、ひまわりの種子100gにエタノール1000gを加え、室温(20℃~30℃)で抽出した後、ろ過によりバラの花弁、米ぬかおよびひまわりの種子を取り除き、得られた液をエバポレーターで乾固し、バラ花弁エタノール抽出物を5g、米ぬかエタノール抽出物を16g、ひまわりの種子エタノール抽出物10gを得た。バラの花弁、米ぬかおよびひまわりの種子エタノール抽出物500mgに対して、下記のヘキサン:エタノール:水=1:1:1(v/v)を5g加えて攪拌、分液後、ヘキサン層を回収した。ヘキサン層をエバポレーターで濃縮・乾固させた。乾固物をクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)に100mg/mLとなるように溶解させた。溶解しない不溶物を含む抽出物に関しては可溶部のみ溶解したものを試料とした。段落0020の方法に従って、グルコシルセラミド含有量の確認を行った。
【0025】
<植物原材料からの植物性グルコシルセラミドの精製2>
予め乾燥させたバラの花弁(バラの品種はハイブリッド・ティー・ローズのダブルデライト
)100g、および比較品として米ぬか100g、ひまわりの種子100gにクロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液1000gを加え、室温(20℃~30℃)で抽出した後、ろ過によりバラの花弁、米ぬかおよびひまわりの種子を取り除き、得られた液をエバポレーターで乾固し、バラ花弁クロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液抽出物を4g、米ぬかクロロホルム:メタノール=1:1混液抽出物を14g、ひまわりの種子クロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液抽出物8gを得た。バラの花弁、米ぬかおよびひまわりの種子クロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液抽出物500mgに対して、下記のヘキサン:エタノール:水=2:2:1(v/v)を5g加えて攪拌、分液後、ヘキサン層を回収した。ヘキサン層をエバポレーターで濃縮・乾固させた。乾固物をクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)に100mg/mLとなるように溶解させた。溶解しない不溶物を含む抽出物に関しては可溶部のみ溶解したものを試料とした。段落0020の方法に従って、グルコシルセラミド含有量の確認を行った。
【0026】
<植物原材料からの植物性グルコシルセラミドの精製3>
予め乾燥させたバラの花弁(バラの品種はハイブリッド・ティー・ローズのダブルデライト
)100g、および比較品として米ぬか100g、ひまわりの種子100gにエタノール1000gを加え、室温(20℃~30℃)で抽出した後、ろ過によりバラの花弁、米ぬかおよびひまわりの種子を取り除き、得られた液をエバポレーターで乾固し、バラ花弁エタノール抽出物を5g、米ぬかエタノール抽出物を16g、ひまわりの種子エタノール抽出物10gを得た。バラの花弁、米ぬかおよびひまわりの種子エタノール抽出物500mgに対して、下記のヘキサン:アセトン:水:エタノール=5:5:3:1(v/v)を5g加えて攪拌、分液後、ヘキサン層を回収した。ヘキサン層をエバポレーターで濃縮・乾固させた。乾固物をクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)に100mg/mLとなるように溶解させた。溶解しない不溶物を含む抽出物に関しては可溶部のみ溶解したものを試料とした。段落0020の方法に従って、グルコシルセラミド含有量の確認を行った。
【0027】
<植物原材料からの植物性グルコシルセラミドの精製4>
予め乾燥させたバラの花弁(バラの品種はハイブリッド・ティー・ローズのダブルデライト)100g、および比較品として米ぬか100g、ひまわりの種子100gにそれぞれクロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液1000gを加え、室温(20℃~30℃)で抽出した後、ろ過によりバラの花弁、米ぬかおよびひまわりの種子を取り除き、得られた液をエバポレーターで乾固し、バラ花弁クロロホルム:メタノール=1:1混液抽出物を4g、米ぬかクロロホルム:メタノール=1:1混液抽出物を14g、ひまわりの種子クロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液抽出物8gを得た。バラの花弁、米ぬかおよびひまわりの種子クロロホルム:メタノール=1:1混液抽出物500mgに対して、下記のヘキサン:アセトン:水=2:2:1(v/v)を5g加えて攪拌、分液後、ヘキサン層を回収した。ヘキサン層をエバポレーターで濃縮・乾固させた。乾固物をクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)に100mg/mLとなるように溶解させた。溶解しない不溶物を含む抽出物に関しては可溶部のみ溶解したものを試料とした。段落0020の方法に従って、グルコシルセラミド含有量の確認を行った。
【0028】
<グルコシルセラミド含有量の確認結果>
バラの花弁のエタノール抽出物およびクロロホルム:メタノール=1:1(v/v)混液抽出物について、グルコシルセラミドの精製法1~4いずれの精製法で精製を行った場合でもグルコシルセラミドを得ることができ、不要な夾雑物は除去され、精製法1~4抽出物中のグルコシルセラミド含量は2%(質量%)以上であった。また、いずれの精製法でもバラの花弁から得られたグルコシルセラミドは一般的なグルコシルセラミド原材料として汎用されている米ぬか、ひまわりの種子から得られたグルコシルセラミドよりも多くの量を得ることができ、より低コストで夾雑物が除去されたグルコシルセラミドを得ることができた。上記のバラ花弁からグルコシルセラミドを得る抽出方法・精製方法は、ハイブリッド・ティー・ローズのダブルデライトに限らず、ハイブリッド・ティー・ローズのその他の品種や、ハイブリッド・ティー・ローズ以外の種である西洋バラなど異なる品種のバラを使用して同様の試験を行った際もバラの花弁からグルコシルセラミドを得ることができ、バラの種によらず、グルコシルセラミドを得ることができることを確認した。
【0029】
【表2】
【0030】
次に、本願発明のバラ花弁から得られるグルコシルセラミドを含有する皮膚外用剤および経口投与剤の処方例を示すが、本願発明はこれに限定されるものでない。なお、以下において、部はすべて質量部を、また%はすべて質量%を意味する。以下の各処方例で示すバラ花弁から得られるグルコシルセラミドは、〔0024〕もしくは〔0025〕に記載の方法で調製したものであり、その配合量は蒸発残分に換算した質量%で示した。なお、各処方例において、従来の植物性グルコシルセラミドと同様に皮膚外用剤および経口投与剤に配合するグルコシルセラミドとして産業上利用できることが確認された。
【0031】
<皮膚外用剤の処方例>
(処方例1)化粧用クリーム(質量%)
a)ミツロウ・・・2.0
b)ステアリルアルコール・・・5.0
c)ステアリン酸・・・8.0
d)スクワラン・・・10.0
e)自己乳化型グリセリルモノステアレート・・・3.0
f)ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)・・・1.0
g)バラ花弁から得られるグルコシルセラミド(〔0024〕で調製)・・・0.01
h)1,3-ブチレングリコール・・・5.0
i)水酸化カリウム・・・0.3
j)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
k)精製水・・・残部
合計:100.0
製法
a)~f)までを加熱溶解し、80℃に保つ。h)~k)までを加熱溶解し、80℃に保ち、a)~f)に加えて乳化し、40℃まで撹拌しながら冷却する。その後、g)を加え、攪拌し均一に溶解する。
【0032】
<経口投与剤の処方例>
(処方例2)錠剤(質量%)
a)デキストリン・・・40.0
b)粉糖・・・49.99
c)ステアリン酸・・・10.0
d)バラ花弁から得られるグルコシルセラミド(〔0025〕で調製)・・・0.01
合計:100.0
製法
a)~d)までを混合・撹拌 して均一に調製し、打錠し、1錠200mgである錠剤として経口投与剤を得た。