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特開2024-169048ストレージシステム、ストレージシステムの管理方法及びストレージシステムの管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169048
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ストレージシステム、ストレージシステムの管理方法及びストレージシステムの管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/06 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G06F3/06
G06F3/06 301X
G06F3/06 304N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086228
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前田 幸哉
(57)【要約】
【課題】階層型ストレージにおける環境負荷軽減のためのデータ移動を適切に判断する。
【解決手段】上位のストレージ装置と、管理装置と、を有するストレージシステムであって、管理装置は、上位のストレージ装置に格納されている各ファイルを対象として、対象ファイルのサイズ及び対象ファイルのアクセス頻度と、消費電力情報と、に基づいて、対象ファイルを下位のストレージ装置に移動することによって対象ファイルを保持するための消費電力を削減できるかを判定し、対象ファイルを下位のストレージ装置に移動することによって対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定した場合に、対象ファイルの上位のストレージ装置から下位のストレージ装置への移動指示を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを保持する上位のストレージ装置と、データを保持するための消費電力が前記上位のストレージ装置より小さい下位のストレージ装置と、前記上位のストレージ装置及び前記下位のストレージ装置に接続される管理装置と、を有するストレージシステムであって、
前記管理装置は、プロセッサと、メモリと、を有し、
前記メモリは、
前記上位のストレージ装置に保持された各ファイルのサイズを示す情報と、前記各ファイルのアクセス頻度に関する情報と、を含むファイル情報と、
前記上位のストレージ装置及び前記下位のストレージ装置の消費電力に関する情報を含む消費電力情報と、を保持し、
前記プロセッサは、
前記上位のストレージ装置に格納されている各ファイルを対象として、前記ファイル情報から取得される対象ファイルのサイズ及び前記対象ファイルのアクセス頻度と、前記消費電力情報と、に基づいて、前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できるかを判定し、
前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定した場合に、前記対象ファイルの前記上位のストレージ装置から前記下位のストレージ装置への移動指示を出力することを特徴とするストレージシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のストレージシステムであって、
前記プロセッサは、前記対象ファイルのアクセス頻度に基づいて特定される前記対象ファイルのアクセス間隔の期間中に前記対象ファイルを前記上位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量より、前記アクセス間隔の期間中に前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量と、前記対象ファイルを前記上位のストレージ装置から前記下位のストレージ装置に移動するための消費電力量と、前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置から前記上位のストレージ装置に移動するための消費電力量と、を合計した消費電力量が小さくなる場合に、前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定することを特徴とするストレージシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のストレージシステムであって、
前記対象ファイルのアクセス間隔の期間中に前記対象ファイルを前記上位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量は、前記上位のストレージ装置の使用済み容量に対する前記対象ファイルのサイズの割合と、前記消費電力情報から取得した前記上位のストレージ装置のアイドル時の消費電力と、前記対象ファイルのアクセス間隔の期間の長さと、に基づいて計算され、
前記対象ファイルを前記上位のストレージ装置から前記下位のストレージ装置に移動するための消費電力量は、前記対象ファイルのサイズから予測した前記上位のストレージ装置から前記対象ファイルを読み出すための所要時間及び前記下位のストレージ装置に前記対象ファイルを書き込むための所要時間と、前記消費電力情報と、に基づいて計算され、
前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置から前記上位のストレージ装置に移動するための消費電力量は、前記対象ファイルのサイズから予測した前記下位のストレージ装置から前記対象ファイルを読み出すための所要時間及び前記上位のストレージ装置に前記対象ファイルを書き込むための所要時間と、前記消費電力情報と、に基づいて計算されることを特徴とするストレージシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のストレージシステムであって、
前記ファイル情報は、前記各ファイルのアクセス頻度に関する情報として、前記各ファイルの最終アクセス日時を示す情報を含み、
前記各ファイルのアクセス間隔の期間は、前記各ファイルの最終アクセス日時から現在日時までの期間であることを特徴とするストレージシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のストレージシステムであって、
前記メモリは、前記上位のストレージ装置に格納されたファイルのサイズと、最終アクセス日時からの経過時間と、を対応付ける閾値情報を保持し、
前記閾値情報において、前記最終アクセス日時からの経過時間は、対応するサイズのファイルを前記最終アクセス日時からの経過時間が示す長さの期間中に前記上位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量より、当該期間中に当該対応するサイズのファイルを前記下位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量と、当該対応するサイズのファイルを前記上位のストレージ装置から前記下位のストレージ装置に移動するための消費電力量と、当該対応するサイズのファイルを前記下位のストレージ装置から前記上位のストレージ装置に移動するための消費電力量と、を合計した消費電力量が小さくなるように設定され、
前記プロセッサは、前記閾値情報に基づいて、前記対象ファイルの最終アクセス日時から現在日時までの経過時間が、前記対象ファイルのサイズに対応する前記最終アクセス日時からの経過時間より長い場合に、前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定することを特徴とするストレージシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のストレージシステムであって、
前記プロセッサは、
前記上位のストレージ装置に格納されているファイルのうち、前記下位のストレージ装置に移動することによって保持するための消費電力を削減できると判定されたファイルを前記下位のストレージ装置に移動した場合の消費電力の削減量を計算し、計算した前記消費電力の削減量、及び、前記消費電力の削減量から推定される環境負荷の削減量の少なくともいずれかを出力することを特徴とするストレージシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のストレージシステムであって、
前記環境負荷の削減量は、前記消費電力の削減量から推定される二酸化炭素排出削減量であることを特徴とするストレージシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のストレージシステムであって、
前記上位のストレージ装置は、ハードディスクドライブ及びソリッドステートドライブの少なくともいずれかを含み、
前記下位のストレージ装置は、光ディスクドライブ、磁気テープドライブ及びパブリッククラウドの少なくともいずれかを含むことを特徴とするストレージシステム。
【請求項9】
ストレージシステムの管理方法であって、
前記ストレージシステムは、データを保持する上位のストレージ装置と、データを保持するための消費電力が前記上位のストレージ装置より小さい下位のストレージ装置と、前記上位のストレージ装置及び前記下位のストレージ装置に接続される管理装置と、を有し、
前記管理装置は、プロセッサと、メモリと、を有し、
前記メモリは、
前記上位のストレージ装置に保持された各ファイルのサイズを示す情報と、前記各ファイルのアクセス頻度に関する情報と、を含むファイル情報と、
前記上位のストレージ装置及び前記下位のストレージ装置の消費電力に関する情報を含む消費電力情報と、を保持し、
前記ストレージシステムの管理方法は、
前記プロセッサが、前記上位のストレージ装置に格納されている各ファイルを対象として、前記ファイル情報から取得される対象ファイルのサイズ及び前記対象ファイルのアクセス頻度と、前記消費電力情報と、に基づいて、前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できるかを判定する手順と、
前記プロセッサが、前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定した場合に、前記対象ファイルの前記上位のストレージ装置から前記下位のストレージ装置への移動指示を出力する手順と、を含むことを特徴とするストレージシステムの管理方法。
【請求項10】
ストレージシステムの管理装置であって、
前記ストレージシステムは、データを保持する上位のストレージ装置と、データを保持するための消費電力が前記上位のストレージ装置より小さい下位のストレージ装置と、を有し、
前記管理装置は、プロセッサと、メモリと、を有し、
前記メモリは、
前記上位のストレージ装置に保持された各ファイルのサイズを示す情報と、前記各ファイルのアクセス頻度に関する情報と、を含むファイル情報と、
前記上位のストレージ装置及び前記下位のストレージ装置の消費電力に関する情報を含む消費電力情報と、を保持し、
前記プロセッサは、
前記上位のストレージ装置に格納されている各ファイルを対象として、前記ファイル情報から取得される対象ファイルのサイズ及び前記対象ファイルのアクセス頻度と、前記消費電力情報と、に基づいて、前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できるかを判定し、
前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定した場合に、前記対象ファイルの前記上位のストレージ装置から前記下位のストレージ装置への移動指示を出力することを特徴とするストレージシステムの管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷に着目したストレージシステムの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
階層型ストレージの消費電力量抑制に関する技術として、例えば特開2018-151815号(特許文献1)に記載の技術がある。特許文献1には、「一次ストレージと二次ストレージとが含まれる階層型ストレージを管理する、コンピュータを含むストレージ管理システムは、判定部と再配置部とを含む。判定部は、一次ストレージ及び二次ストレージのうち、消費電力量の観点で優れているファイルの保存先を、ファイルのサイズ及びファイルのアクセス間隔時間に基づいて判定するための条件に基づいて、一次ストレージに保存されているファイルを二次ストレージに移動させるか否かを決定する。再配置部は、上記決定に従って、一次ストレージに保存されているファイルを二次ストレージに移動させる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-151815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、二次ストレージとして磁気テープ装置が挙げられている。しかし、実際には二次ストレージは一次ストレージよりデータの保持に要する消費電力量が少ないものであれば、磁気テープ装置以外のデバイスを使用することもできる。また、全体として消費電力量を抑制する(すなわちCO2排出量を抑制する)ようにデータを移動するか否かを判定するためには、データの保持に要する消費電力量に加えて、一次ストレージと二次ストレージとの間のデータ移動に要する消費電力量も考慮する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の少なくとも一つを解決するために、本願において開示される発明の代表的な一例は、データを保持する上位のストレージ装置と、データを保持するための消費電力が前記上位のストレージ装置より小さい下位のストレージ装置と、前記上位のストレージ装置及び前記下位のストレージ装置に接続される管理装置と、を有するストレージシステムであって、前記管理装置は、プロセッサと、メモリと、を有し、前記メモリは、前記上位のストレージ装置に保持された各ファイルのサイズを示す情報と、前記各ファイルのアクセス頻度に関する情報と、を含むファイル情報と、前記上位のストレージ装置及び前記下位のストレージ装置の消費電力に関する情報を含む消費電力情報と、を保持し、前記プロセッサは、前記上位のストレージ装置に格納されている各ファイルを対象として、前記ファイル情報から取得される対象ファイルのサイズ及び前記対象ファイルのアクセス頻度と、前記消費電力情報と、に基づいて、前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できるかを判定し、前記対象ファイルを前記下位のストレージ装置に移動することによって前記対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定した場合に、前記対象ファイルの前記上位のストレージ装置から前記下位のストレージ装置への移動指示を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、階層型ストレージにおける下位ストレージとして多様なデバイスが使用された場合に、データの移動に要する消費電力量も考慮して、環境負荷軽減のためのデータの移動を行うか否かを適切に判断することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例のストレージシステム全体の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例のストレージシステムに含まれる管理サーバの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例の管理サーバに含まれる条件判定部の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例の管理サーバが保持するデータを示すブロック図である。
図5】本発明の実施例の管理サーバを実現する計算機システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施例の管理サーバが保持する下位デバイス管理テーブルを示す説明図である。
図7】本発明の実施例の管理サーバが保持するアイドル時の消費電力履歴テーブルを示す説明図である。
図8】本発明の実施例の管理サーバが保持する移動ファイルパス管理テーブルを示す説明図である。
図9】本発明の実施例の管理サーバが保持するファイルリスト(全体)を示す説明図である。
図10】本発明の実施例の管理サーバが保持するファイルリスト(移動対象)を示す説明図である。
図11】本発明の実施例の管理サーバが保持する閾値テーブルを示す説明図である。
図12】本発明の実施例の管理サーバが保持する周期テーブルを示す説明図である。
図13】本発明の実施例の管理サーバが保持するストレージ使用量推移管理テーブルを示す説明図である。
図14】本発明の実施例の管理サーバが保持する電力削減量推移テーブルを示す説明図である。
図15】本発明の実施例のストレージシステムにおいて実行される処理を示すシーケンス図である。
図16】本発明の実施例のストレージシステムにおいて実行される処理を示すフローチャートである。
図17】本発明の実施例のストレージシステムによって表示される画面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施例のストレージシステム全体の構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施例のストレージシステム100は、管理サーバ110、上位ストレージ120及び下位ストレージ130によって構成される。管理サーバ110は、インターフェースケーブル150によって上位ストレージ120及び下位ストレージ130と接続される。
【0011】
上位ストレージ120及び下位ストレージ130は、階層型ストレージ140を構成する。例えば、上位ストレージ120がホスト計算機(図示省略)によって書き込まれたデータを格納し、それらのデータのうち例えばアクセス頻度が低いなどの所定の条件を満たすデータが下位ストレージ130に移動する。管理サーバ110は、上位ストレージ120と下位ストレージ130との間のデータの移動を管理する。
【0012】
上位ストレージ120は、アクセス速度等が比較的高性能である代わりに、データを保持するために要する消費電力が比較的大きいストレージ装置である。上位ストレージ120の典型的な例は、複数のハードディスクドライブ(HDD)123又は複数のソリッドステートドライブ(SSD)122によって構成されるRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)装置である。複数のHDD又はSSDへのデータの書き込み及び読み出しは、上位ストレージコントローラ121によって制御される。複数のHDD又はSSDがRAIDを構成する場合、上位ストレージコントローラ121はRAIDコントローラである。
【0013】
下位ストレージ130は、データを保持するために要する消費電力が比較的小さい代わりに、比較的低性能のストレージ装置である。下位ストレージ130の典型的な例は、光ディスクドライブ131、磁気テープドライブ132及びパブリッククラウド133等である。下位ストレージ130は、これらのうち2以上を含んでもよい。
【0014】
図2は、本発明の実施例のストレージシステムに含まれる管理サーバ110の構成を示すブロック図である。
【0015】
管理サーバ110は、階層型ストレージ管理部200を有する。階層型ストレージ管理部200は、条件判定部201、上位ストレージファイルアクセス部202、下位ストレージファイルアクセス部203及びファイル情報管理部204を有する。
【0016】
条件判定部201は、上位ストレージ120に格納されたデータについて、ファイルごとに、下位ストレージ130に移動するかどうかを、所定の条件に従って判定する。この判定の詳細については後述する。上位ストレージファイルアクセス部202及び下位ストレージファイルアクセス部203は、それぞれ、上位ストレージ120及び下位ストレージ130に格納されたファイルへのアクセスを制御する。ファイル情報管理部204は、上位ストレージ120に格納されたファイルに関する情報を管理する。
【0017】
図3は、本発明の実施例の管理サーバ110に含まれる条件判定部201の構成を示すブロック図である。
【0018】
条件判定部201は、判定部301及び再配置部302を有する。判定部301は、所定の条件に基づいて、上位ストレージ120に格納されたファイルを下位ストレージ130に移動するかどうかの判定を行う。再配置部302は、判定部301による判定結果に従って、ファイルの移動等を行う。
【0019】
図4は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持するデータを示すブロック図である。
【0020】
管理サーバ110内の階層型ストレージ管理部200は、下位デバイス管理テーブル401、アイドル時の消費電力履歴テーブル402、移動ファイルパス管理テーブル403、ファイルリスト(全体)404、ファイルリスト(移動対象)405、閾値テーブル406、周期テーブル407、ストレージ使用量推移管理テーブル408及び電力削減量推移テーブル409を保持する。これらの詳細については後述する。
【0021】
図5は、本発明の実施例の管理サーバ110を実現する計算機システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0022】
図1図4に示した本実施例の管理サーバ110は、例えば、計算機システム500によって実現することができる。計算機システム500は、プロセッサ501、メモリ(主記憶装置)502、補助記憶装置503、出力装置504、入力装置505、及び通信インターフェース(I/F)506を含む。上記の構成要素は、バスによって互いに接続されている。メモリ502及び補助記憶装置503は記憶装置であり、プロセッサ501が使用するプログラム及びデータを格納している。
【0023】
メモリ502は、例えば半導体メモリによって構成され、主に実行中のプログラム及びデータを保持するために利用される。プロセッサ501は、メモリ502に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。プロセッサ501がプログラムに従って動作することで、様々な機能部が実現される。
【0024】
補助記憶装置503は、例えばハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブなどの大容量の記憶装置によって構成され、プログラム及びデータを長期間保持するために利用される。例えば、図4に示したテーブル等が補助記憶装置503に保持されてもよい。
【0025】
プロセッサ501は、単一の処理ユニット又は複数の処理ユニットで構成することができ、単一もしくは複数の演算ユニット、又は複数の処理コアを含むことができる。プロセッサ501は、1又は複数の中央処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロ計算機、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、ステートマシン、ロジック回路、グラフィック処理装置、チップオンシステム、及び/又は制御指示に基づき信号を操作する任意の装置として実装することができる。
【0026】
補助記憶装置503に格納されたプログラム及びデータが起動時又は必要時にメモリ502にロードされ、プログラムをプロセッサ501が実行することによって、計算機システム500の各種処理が実行される。したがって、以下の説明において管理サーバ110の階層型ストレージ管理部200によって実行される処理は、計算機システム500のプロセッサ501がプログラムに従って、必要に応じて当該計算機システム500内の各部を制御して実行する処理である。また、プロセッサ501が実行する処理において、例えば後述する図6から図14に示す情報などが参照される場合、それらの情報のうち少なくともプロセッサ501によって参照される部分が補助記憶装置503からメモリ502にロードされる。
【0027】
入力装置505は、ユーザが指示及び情報などを入力するためのハードウェアデバイスである。出力装置504は、入出力用の各種画像を提示するハードウェアデバイスであり、例えば、表示デバイス又は印刷デバイスである。通信I/F506は、ネットワーク230との接続のためのインターフェースである。
【0028】
なお、計算機システム500は2以上のプロセッサ501を含んでもよい。また、本実施例のシステムの機能は、複数の計算機システム500に実装することができる。その場合、複数の計算機システム500はネットワーク230を介して通信する。例えば、本実施例のシステムの複数の機能の一部が一つの計算機システム500に実装され、他の一部が他の計算機システムに実装されてもよい。
【0029】
次に、管理サーバ110の階層型ストレージ管理部200が保持する情報について説明する。
【0030】
図6は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持する下位デバイス管理テーブル401を示す説明図である。
【0031】
下位デバイス管理テーブル401は、下位ストレージ130に含まれるストレージ装置に関する情報を管理する。例えば、下位デバイス管理テーブル401は、下位デバイス名601、製品番号602、アイドル時の消費電力603、リード時の消費電力604及びライト時の消費電力605を含む。
【0032】
下位デバイス名601は、下位ストレージ130に含まれる各ストレージ装置(例えば光ディスクドライブ131、磁気テープドライブ132及びパブリッククラウド133等)の名称である。製品番号602は、各ストレージ装置を識別する番号である。アイドル時の消費電力603、リード時の消費電力604及びライト時の消費電力605は、それぞれ、各ストレージ装置のアイドル時、データのリード時及びデータのライト時の消費電力を示す。
【0033】
図7は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持するアイドル時の消費電力履歴テーブル402を示す説明図である。
【0034】
アイドル時の消費電力履歴テーブル402は、上位ストレージ120のアイドル時の消費電力量の履歴を管理する。これは、例えば上位ストレージコントローラ121によって生成、保持され、必要に応じてその少なくとも一部が管理サーバ110によって取得されてもよい。
【0035】
アイドル時の消費電力履歴テーブル402は、日時701及び消費電力量702を含む。計測された上位ストレージ120の消費電力量及びその計測の日時が、それぞれ消費電力量702及び日時701に格納される。
【0036】
図8は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持する移動ファイルパス管理テーブル403を示す説明図である。
【0037】
移動ファイルパス管理テーブル403は、移動対象のファイルの移動元及び移動先のファイルパスを管理する。例えば、移動ファイルパス管理テーブル403は、移動対象ファイル名801、移動元ファイルパス802及び移動先デバイス・パス803を含む。移動対象ファイル名801は、移動対象のファイルを識別するファイル名である。移動元ファイルパス802は、移動対象のファイルの上位ストレージ120におけるファイルパスを示す。移動先デバイス・パス803は、下位ストレージ130に含まれるストレージ装置のうち移動対象のファイルの移動先のデバイス及びファイルパスを示す。
【0038】
図9は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持するファイルリスト(全体)404を示す説明図である。
【0039】
ファイルリスト(全体)404は、上位ストレージ120に格納された全てのファイルを管理する情報である。例えば、ファイルリスト(全体)404は、上位ストレージ120に格納された各ファイルのファイル名901、ファイルサイズ902及び最終更新日時903を含む。なお、本実施例では一例としてファイルが最後に更新された日時を示す最終更新日時を記載しているが、ファイルに対する更新又は読み出しのいずれかが最後に行われた日時を示す最終アクセス日時を使用してもよい。
【0040】
図10は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持するファイルリスト(移動対象)405を示す説明図である。
【0041】
ファイルリスト(移動対象)405は、一旦上位ストレージ120に格納された後、下位ストレージ130への移動対象と判定されたファイルを管理する。例えば、ファイルリスト(移動対象)405は、移動対象として判定された各ファイルのファイル名1001、ファイルサイズ1002及び最終更新日時1003を含む。ファイルリスト(移動対象)405に登録されたファイルは、下位ストレージ130に格納されている。後述する再移動によって下位ストレージ130から上位ストレージ120に移動したファイルに関する情報は、ファイルリスト(移動対象)405から削除される。
【0042】
図11は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持する閾値テーブル406を示す説明図である。
【0043】
閾値テーブル406は、上位ストレージ120に格納されたファイルを下位ストレージ130に移動するか否かの判定に使用する閾値を管理する。例えば、閾値テーブル406は、対象ファイルサイズ1101及び最終更新日時からの経過時間1102を含む。対象ファイルサイズは、移動するか否かの判定の対象となるファイルのサイズを示す。最終更新日時からの経過時間1102は、ファイルが最後に更新されてから現在時刻までの時間を示す。
【0044】
図11の例では、閾値テーブル406の各レコードの対象ファイルサイズ1101にそれぞれ異なるファイルのサイズの範囲が設定される。そして、各レコードの最終更新日時からの経過時間1102には、設定されたファイルのサイズの範囲ごとに、ファイルを移動対象とするか否かの判定の基準となる最終更新日時からの経過時間が設定される。
【0045】
なお、通常は、対象ファイルサイズ1101の値が大きいほど最終更新日時からの経過時間1102の値が大きくなるように設定される。これによって、サイズが大きいファイルの頻繁な移動による電力消費が抑制される。また、図1に示すように下位ストレージ130が複数のストレージ装置(例えば光ディスクドライブ131及び磁気テープドライブ132のような種類の異なるストレージ装置)を含む場合、ストレージ装置ごとに閾値テーブル406が生成されてもよい。対象ファイルサイズ1101に対応する最終更新日時からの経過時間1102の値の設定方法の具体例については後述する。
【0046】
図12は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持する周期テーブル407を示す説明図である。
【0047】
周期テーブル407は、管理サーバ110による種々の処理の実行周期を管理する。例えば、周期テーブル407は、処理名1201及び実行周期1202を含む。図12の例では、周期テーブル407の各レコードの処理名1201として「ファイル更新情報取得」、「閾値判定・移動対象リスト更新」、「ファイル階層移動」といった処理の名称が保持され、それらの処理に対応する実行周期1202として所定の時間(例えば日数)が保持される。各処理は、実行周期1202が示す周期で実行される。
【0048】
図13は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持するストレージ使用量推移管理テーブル408を示す説明図である。
【0049】
ストレージ使用量推移管理テーブル408は、上位ストレージ120の使用量(すなわち格納されているデータの総量)の推移を管理する。例えば、ストレージ使用量推移管理テーブル408は、使用量を計測した日時を示す日時1301と、それぞれの日時に計測された使用量を示すストレージ使用量1302と、を含む。
【0050】
図14は、本発明の実施例の管理サーバ110が保持する電力削減量推移テーブル409を示す説明図である。
【0051】
電力削減量推移テーブル409は、後述する方法で計算された電力削減量の推移を管理する。例えば、電力削減量推移テーブル409は、日時1401と、日時1401の値が示す時点において計算された電力削減量を示す電力削減量1402と、を含む。
【0052】
次に、本実施例のストレージシステム100において実行される処理について、図15及び図16を参照して説明する。
【0053】
図15は、本発明の実施例のストレージシステム100において実行される処理を示すシーケンス図である。
【0054】
図16は、本発明の実施例のストレージシステム100において実行される処理を示すフローチャートである。
【0055】
図15及び図16はいずれも同じ処理を記述したものである。すなわち、図15は処理中のストレージシステム100の構成要素間のデータのやり取りが明確になるように記載したシーケンス図であり、図16は処理の流れが明確になるように記載したフローチャートである。両者のステップの対応関係は以下に示す通りである。
【0056】
上位ストレージ120のコントローラ1511は、定期的に、上位ストレージ120のドライブ1512に格納された全ファイルのリストを取得し、管理サーバ110に送信する(ステップS1501、S1601)。この処理は、例えば周期テーブル407に保持されたファイル更新情報取得の実行周期に基づいて実行されてもよい。なお、コントローラ1511は例えば上位ストレージコントローラ121であり、ドライブ1512は例えばSSD122又はHDD123である。管理サーバ110は、コントローラ1511から受信したファイルのリストを、ファイルリスト(全体)404として保持する。
【0057】
次に、管理サーバ110の条件判定部201内の判定部301は、コントローラ1511から受信したファイルリストに含まれる各ファイルについて、当該ファイルの現状値が閾値以上であるかを判定する(ステップS1502、S1602)。判定部301は、現状値が閾値以上であると判定されたファイルを移動すると判定し、当該ファイルの情報をファイルリスト(移動対象)405に追加する(ステップS1502、S1603)。一方、判定部301は、現状値が閾値以上でないと判定されたファイルを移動しないと判定する(ステップS1502、S1604)。この場合、当該ファイルの情報はファイルリスト(移動対象)405に追加されない。
【0058】
ここで、ステップS1502、S1602における、各ファイルの現状値が閾値以上であるかの判定の例を説明する。
【0059】
例えば、判定部301は、上位ストレージ120に格納された各ファイルについて下記の式(1)を計算し、式(1)が満たされる場合に、計算対象のファイル(以下、対象ファイルとも記載する)を下位ストレージ130に移動すると判定してもよい。
【0060】
【数1】
【0061】
ここで、PCidle(upper)は、上位ストレージ120に対象ファイルを保持するために消費される電力量である。これは、例えば、上位ストレージ120の使用済み容量に占める当該ファイルのサイズの割合を計算し、その割合を、上位ストレージ120のアイドル状態の消費電力に乗じ、さらに、対象ファイルの最終更新日時からの経過時間を乗じることによって計算することができる。ここで、上位ストレージ120のアイドル状態の消費電力はアイドル時の消費電力履歴テーブル402(図7)から、上位ストレージ120の使用済み容量はストレージ使用量推移管理テーブル408(図13)から、対象ファイルのサイズはファイルリスト(全体)404(図9)から、それぞれ取得することができる。また、対象ファイルの最終更新日時からの経過時間は、例えば、図9に示したファイルリスト(全体)404の対象ファイルの最終更新日時903と現在時刻とに基づいて算出することができる。ここで、対象ファイルの最終更新日時からの経過時間は、対象ファイルの更新頻度の指標の一例であり、例えば各ファイルの過去のアクセス間隔の平均値、又は将来のアクセス間隔の予測値等の情報が利用できる場合には、その情報を利用してもよい。
【0062】
一方、PCidle(lower)は、下位ストレージ130に対象ファイルを保持するために消費される電力量である。これは、例えば、下位デバイス管理テーブル401(図6)のアイドル時の消費電力603に、対象ファイルのアクセス間隔を乗じることによって計算することができる。
【0063】
PC(down)は、対象ファイルを下位ストレージ130に移動すると判定された場合に、対象ファイルを上位ストレージ120から下位ストレージ130に移動するために消費される電力量である。PC(down)は、例えば、次の式(2)~式(5)の計算結果を合計することで計算することができる。
【0064】
判定部301は、上位ストレージ120から読み出した対象ファイルを下位ストレージ130に書き込む処理のうち、下位ストレージ130への書き込み処理の消費電力量を、式(2)によって計算する。
【0065】
【数2】
【0066】
ここで、Pwriteは、下位ストレージ130が対象ファイルを書き込み先のデバイス(例えば光ディスクドライブ131、磁気テープドライブ132及びパブリッククラウド133等のいずれか)に書き込む処理を行うときに消費する電力である。これは、例えば、下位デバイス管理テーブル401のライト時の消費電力605から取得することができる。T_downwriteは、下位ストレージ130が対象ファイルを書き込み先のデバイスに書き込む処理の所要時間の予測値である。これは、例えば、対象ファイルのサイズと、書き込み先のデバイスの書き込み時のデータ転送速度と、に基づいて計算することができる。
【0067】
判定部301は、上位ストレージ120から読み出した対象ファイルを下位ストレージ130に書き込む処理のうち、上位ストレージ120からの読み出し処理の消費電力量を、式(3)~式(5)によって計算する。
【0068】
【数3】
【0069】
式(3)は、上位ストレージ120からの読み出し処理の消費電力量のうち、上位ストレージコントローラ121のCPU(Central Processing Unit、図示省略)の消費電力量の計算式である。式(3)において、Pmax及びPidleは、それぞれ、上位ストレージコントローラ121のCPUの最大消費電力及びアイドル時の消費電力である。nは、読み出し処理時の上位ストレージコントローラ121のCPU使用率(%)である。T_downreadは、下位ストレージ130が上位ストレージ120から対象ファイルを読み出す処理の所要時間の予測値である。これは、例えば、対象ファイルのサイズと、読み出し元のデバイスの読み出し時のデータ転送速度と、に基づいて計算することができる。
【0070】
式(4)は、上位ストレージ120からの読み出し処理の消費電力量のうち、上位ストレージコントローラ121のメモリ(図示省略)の消費電力量の計算式である。式(4)において、Pmax及びPidleは、それぞれ、上位ストレージコントローラ121のメモリの最大消費電力及びアイドル時の消費電力である。nは、読み出し処理時の上位ストレージコントローラ121のメモリ使用率(%)である。T_downreadは、上記の式(3)におけるものと同じである。
【0071】
式(5)は、上位ストレージ120からの読み出し処理の消費電力量のうち、上位ストレージ120のドライブ(例えばSSD122又はHDD123)の消費電力量の計算式である。ここで、Preadは、ドライブからの読み出し処理の消費電力である。T_downreadは、式(3)におけるものと同じである。
【0072】
式(1)に戻り、PC(up)は、ファイルの再アクセス時の消費電力量、すなわち、対象ファイルを下位ストレージ130に移動した後、ホスト計算機からのアクセスに応じて下位ストレージ130から上位ストレージ120に移動するために消費される電力量である。PC(up)は、例えば、次の式(6)~式(9)の計算結果を合計することで計算することができる。
【0073】
判定部301は、下位ストレージ130から読み出した対象ファイルを上位ストレージ120に書き込む処理のうち、下位ストレージ130からの読み出し処理の消費電力量を、式(6)によって計算する。
【0074】
【数4】
【0075】
ここで、Preadは、下位ストレージ130が対象ファイルを書き込み先のデバイスから読み出す処理を行うときに消費する電力である。これは、例えば、下位デバイス管理テーブル401のリード時の消費電力604から取得することができる。T_upreadは、下位ストレージ130が対象ファイルを書き込み先のデバイスから読み出す処理の所要時間の予測値である。これは、例えば、対象ファイルのサイズと、書き込み先のデバイスの読み出し時のデータ転送速度と、に基づいて計算することができる。
【0076】
判定部301は、下位ストレージ130から読み出した対象ファイルを上位ストレージ120に書き込む処理のうち、上位ストレージ120への書き込み処理の消費電力量を、式(7)~式(9)によって計算する。
【0077】
【数5】
【0078】
式(7)は、上位ストレージ120への書き込み処理の消費電力量のうち、上位ストレージコントローラ121のCPUの消費電力量の計算式である。式(7)において、Pmax及びPidleは、式(3)におけるものと同じである。nは、書き込み処理時の上位ストレージコントローラ121のCPU使用率(%)である。T_upwriteは、上位ストレージ120に対象ファイルを書き込む処理の所要時間の予測値である。これは、例えば、対象ファイルのサイズと、読み出し元のデバイス(すなわち下位ストレージ130から読み出した対象ファイルを書き戻す先のSSD122又はHDD123)の読み出し時のデータ転送速度と、に基づいて計算することができる。
【0079】
式(8)は、上位ストレージ120への書き込み処理の消費電力量のうち、上位ストレージコントローラ121のメモリ(図示省略)の消費電力量の計算式である。式(4)において、Pmax及びPidleは、式(4)におけるものと同じである。nは、書き込み処理時の上位ストレージコントローラ121のメモリ使用率(%)である。T_upwriteは、式(7)におけるものと同じである。
【0080】
式(9)は、上位ストレージ120への書き込み処理の消費電力量のうち、上位ストレージ120のドライブ(例えばSSD122又はHDD123)の消費電力量の計算式である。ここで、Pwriteは、ドライブへの書き込み処理の消費電力である。T_upwriteは、式(7)におけるものと同じである。
【0081】
図16のステップS1602において、あるファイルについて上記の式(1)を計算する場合、当該ファイルは最後に更新されてから現在までの間、実際には上位ストレージ120に保持されている。この場合、式(1)の左辺は、当該ファイルが最後に更新されてから現在まで、上位ストレージ120に保存されていた間に、当該ファイルの保存のために消費された電力の推定値である。
【0082】
一方、式(1)の右辺は、当該ファイルが仮に、最後に更新された直後に上位ストレージ120から下位ストレージ130に移動し、その後、現在時刻の直前に下位ストレージ130から上位ストレージ120に移動したとしたら、それらの移動と、下位ストレージ130における当該ファイルの保存のために消費された電力の推定値である。
【0083】
したがって、式(1)が満たされることは、当該ファイルを上位ストレージ120に保存し続けるより、最終更新後に一旦下位ストレージ130に移動したほうが、消費電力が少なかった(すなわち電力消費に伴う環境負荷、例えば二酸化炭素(CO2)排出量も少なかった)と推定されることを意味する。この場合、判定部301は、当該ファイルを移動すると判定して、当該ファイルの情報をファイルリスト(移動対象)405に追加する。
【0084】
なお、判定部301は、各ファイルについてステップS1502、S1602の処理を実行する度に上記の式(1)~(9)の計算を行ってもよいが、予め式(1)~(9)に基づいて判定の閾値を計算しておき、ステップS1502、S1602ではその閾値に基づいて判定を行ってもよい。
【0085】
例えば、判定部301は、移動対象のファイルのサイズと、そのサイズのファイルについて上記の式(1)を満たす最終更新日時からの経過時間との関係をあらかじめ算出し、その関係を閾値テーブル406として保持してもよい。図11の例では、対象ファイルサイズ1101としてファイルのサイズの範囲が設定されている。この場合、それぞれの範囲に対応する最終更新日時からの経過時間1102の値は、対応する範囲内のいずれのサイズのファイルについても上記の式(1)が満たされるように設定される。
【0086】
下位ストレージ130が複数のストレージ装置を含む場合には、いずれのストレージ装置でも上記の式(1)が満たされるように最終更新日時からの経過時間1102の値を設定してもよいし、ストレージ装置ごとに閾値テーブル406が生成されてもよい。
【0087】
上記のように各ファイルを下位ストレージ130に移動するか否かを判定することによって、更新頻度が低いファイルを下位ストレージ130に移動して、そのファイルの移動に要する消費電力も含めた全体の消費電力量を削減し、CO2排出量などの環境負荷を軽減することができる。
【0088】
次に、条件判定部201内の再配置部302は、ファイルリスト(移動対象)405に追加されたファイルのリスト(すなわち移動リスト)をコントローラ1511に送信する(ステップS1503、1605)。コントローラ1511は、移動リストに含まれる移動対象ファイルのパスを保存し(ステップS1504、S1606)、移動対象ファイルの階層間の移動を指示する(ステップS1505、S1607)。この指示に従って、上位ストレージ120のドライブ1512から、下位ストレージ130のドライブ1514に、移動対象ファイルが移動する(ステップS1506、S1608)。
【0089】
その後、下位ストレージ130に移動したファイルに対する再アクセスが行われる。例えば、上位ストレージ120がホスト計算機からファイルに対するアクセス要求を受信したときに、そのファイルがファイルリスト(移動対象)405に含まれる場合、そのファイルは上位ストレージ120ではなく下位ストレージ130に格納されている。
【0090】
その場合、コントローラ1511は、下位ストレージ130のコントローラ1513にファイル移動指示を送信する(ステップS1507、S1609)。この指示に従って、下位ストレージ130のドライブ1514から、上位ストレージ120のドライブ1512に、移動対象ファイルが移動する(ステップS1508、S1610)。このとき、移動ファイルパス管理テーブル403に従って、移動対象ファイルの元の(すなわち、下位ストレージ130に移動する前の)ファイルパスが再現される。
【0091】
以上で処理が終了する。
【0092】
図17は、本発明の実施例のストレージシステム100によって表示される画面を示す説明図である。
【0093】
図17に示す表示画面1700は、管理サーバ110を実現する計算機システム500の出力装置504によって表示される画面の一例である。表示画面1700は、CO2排出量表示部1701、電力消費量表示部1702、最大温度表示部1703及びCO2排出削減量表示部1704を含む。
【0094】
CO2排出量表示部1701には、例えば、ストレージシステム100の消費電力量の実績から計算されたCO2排出量の実績が表示される。図17の例では、1か月ごとのCO2排出量を示すグラフが表示されている。
【0095】
電力消費量表示部1702には、例えば、ストレージシステム100の消費電力量の実績が表示される。図17の例では、ある月の時間帯ごとの消費電力量を示すグラフとして、2022年9月の時間帯ごとの消費電力量の平均値の推移を示すグラフが表示されている。
【0096】
最大温度表示部1703には、例えば、ストレージシステム100内で計測された温度の実績が表示される。図17の例では、ある月の時間帯ごとのストレージシステム100内の温度を示すグラフとして、2022年9月の時間帯ごとの温度の平均値の推移を示すグラフが表示されている。この例では、ストレージシステム100の複数の部位で温度が計測され、部位ごとに温度の平均値が計算され、計算された各部位の温度の平均値のうち最大のものが実線で、平均値が破線で表示される。
【0097】
CO2排出削減量表示部1704には、CO2排出量表示部1701に表示されたものと同様のグラフに加えて、本実施例に示したデータの階層間の移動(すなわち上位ストレージ120から下位ストレージ130への移動)によるCO2排出削減量が表示される。図17の例では、データの階層間の移動を行ったことによるCO2排出削減量が破線で表示される。すなわち、CO2排出削減量表示部1704に表示したグラフの実線部分と破線部分との合計値が、データの階層間の移動を行わなかった場合のCO2排出量を示す。
【0098】
例えば、図16のステップS1602において、上位ストレージ120に保存された各ファイルについて式(1)を計算し、その結果階層間の移動を行うと判定されたファイルの式(1)の右辺と左辺の差分を合計し、その合計を電力削減量推移テーブル409(図14)に保持するとともに、その合計に基づいて算出したCO2排出量を、CO2排出削減量表示部1704のグラフの破線部分として表示してもよい。なお、消費電力量に基づくCO2排出量の算出は、例えば電力会社が公表しているCO2排出係数に基づいて行うことができる。このような表示を行うことによって、データの階層間の移動による環境負荷の低減効果を容易に把握することができる。
【0099】
また、本発明の実施形態のシステムは次のように構成されてもよい。
【0100】
(1)データを保持する上位のストレージ装置(例えば上位ストレージ120)と、データを保持するための消費電力が上位のストレージ装置より小さい下位のストレージ装置(例えば下位ストレージ130)と、上位のストレージ装置及び下位のストレージ装置に接続される管理装置(例えば管理サーバ110)と、を有するストレージシステム(例えばストレージシステム100)であって、管理装置は、プロセッサ(例えばプロセッサ501)と、メモリ(例えばメモリ502)と、を有し、メモリは、上位のストレージ装置に保持された各ファイルのサイズを示す情報と、各ファイルのアクセス頻度に関する情報と、を含むファイル情報(例えばファイルリスト(全体)404)と、上位のストレージ装置及び下位のストレージ装置の消費電力に関する情報を含む消費電力情報(例えば下位デバイス管理テーブル401及びアイドル時の消費電力履歴テーブル402)と、を保持し、プロセッサは、上位のストレージ装置に格納されている各ファイルを対象として、ファイル情報から取得される対象ファイルのサイズ及び対象ファイルのアクセス頻度と、消費電力情報と、に基づいて、対象ファイルを下位のストレージ装置に移動することによって対象ファイルを保持するための消費電力を削減できるかを判定し(例えばステップS1502、S1602)、対象ファイルを下位のストレージ装置に移動することによって対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定した場合に、対象ファイルの上位のストレージ装置から下位のストレージ装置への移動指示を出力する(例えばステップS1505、S1607)。
【0101】
これによって、階層型ストレージにおける下位ストレージとして多様なデバイスが使用された場合に、データの移動に要する消費電力量も考慮して、環境負荷軽減のためのデータの移動を行うか否かを適切に判断することができる。
【0102】
(2)上記(1)において、プロセッサは、対象ファイルのアクセス頻度に基づいて特定される対象ファイルのアクセス間隔の期間中に対象ファイルを上位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量より、アクセス間隔の期間中に対象ファイルを下位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量と、対象ファイルを上位のストレージ装置から下位のストレージ装置に移動するための消費電力量と、対象ファイルを下位のストレージ装置から上位のストレージ装置に移動するための消費電力量と、を合計した消費電力量が小さくなる場合に(例えば式(1))、対象ファイルを下位のストレージ装置に移動することによって対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定する。
【0103】
これによって、データの移動に要する消費電力量も考慮して、環境負荷軽減のためのデータの移動を行うか否かを適切に判断することができる。
【0104】
(3)上記(2)において、対象ファイルのアクセス間隔の期間中に対象ファイルを上位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量は、上位のストレージ装置の使用済み容量に対する対象ファイルのサイズの割合と、消費電力情報から取得した上位のストレージ装置のアイドル時の消費電力と、対象ファイルのアクセス間隔の期間の長さと、に基づいて計算され、対象ファイルを上位のストレージ装置から下位のストレージ装置に移動するための消費電力量は、対象ファイルのサイズから予測した上位のストレージ装置から対象ファイルを読み出すための所要時間及び下位のストレージ装置に前記対象ファイルを書き込むための所要時間と、消費電力情報と、に基づいて計算され(例えば式(2)~(5))、対象ファイルを下位のストレージ装置から上位のストレージ装置に移動するための消費電力量は、対象ファイルのサイズから予測した下位のストレージ装置から対象ファイルを読み出すための所要時間及び上位のストレージ装置に前記対象ファイルを書き込むための所要時間と、消費電力情報と、に基づいて計算される(例えば式(6)~(9))。
【0105】
これによって、データの移動に要する消費電力量も考慮して、環境負荷軽減のためのデータの移動を行うか否かを適切に判断することができる。
【0106】
(4)上記(3)において、ファイル情報は、各ファイルのアクセス頻度に関する情報として、各ファイルの最終アクセス日時を示す情報(例えば最終更新日時903)を含み、各ファイルのアクセス間隔の期間は、各ファイルの最終アクセス日時から現在日時までの期間である。
【0107】
これによって、環境負荷軽減のためのデータの移動を行うか否かを適切に判断することができる。
【0108】
(5)上記(4)において、メモリは、上位のストレージ装置に格納されたファイルのサイズと、最終アクセス日時からの経過時間と、を対応付ける閾値情報(例えば閾値テーブル406)を保持し、閾値情報において、最終アクセス日時からの経過時間は、対応するサイズのファイルを最終アクセス日時からの経過時間が示す長さの期間中に上位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量より、当該期間中に当該対応するサイズのファイルを下位のストレージ装置が保持した場合の消費電力量と、当該対応するサイズのファイルを上位のストレージ装置から下位のストレージ装置に移動するための消費電力量と、当該対応するサイズのファイルを下位のストレージ装置から上位のストレージ装置に移動するための消費電力量と、を合計した消費電力量が小さくなるように設定され、プロセッサは、閾値情報に基づいて、対象ファイルの最終アクセス日時から現在日時までの経過時間が、対象ファイルのサイズに対応する最終アクセス日時からの経過時間より長い場合に、対象ファイルを下位のストレージ装置に移動することによって対象ファイルを保持するための消費電力を削減できると判定する。
【0109】
これによって、環境負荷軽減のためのデータの移動を行うか否かを簡易かつ適切に判断することができる。
【0110】
(6)上記(1)において、プロセッサは、上位のストレージ装置に格納されているファイルのうち、下位のストレージ装置に移動することによって保持するための消費電力を削減できると判定されたファイルを下位のストレージ装置に移動した場合の消費電力の削減量を計算し、計算した消費電力の削減量、及び、消費電力の削減量から推定される環境負荷の削減量の少なくともいずれかを出力する(例えばCO2排出削減量表示部1704)。
【0111】
これによって、データの階層間の移動による環境負荷の低減効果を容易に把握することができる。
【0112】
(7)上記(6)において、環境負荷の削減量は、消費電力の削減量から推定される二酸化炭素排出削減量である。
【0113】
これによって、データの階層間の移動による環境負荷の低減効果を容易に把握することができる。
【0114】
(8)上記(1)において、上位のストレージ装置は、ハードディスクドライブ(例えばHDD123)及びソリッドステートドライブ(例えばSSD122)の少なくともいずれかを含み、下位のストレージ装置は、光ディスクドライブ(例えば光ディスクドライブ131)、磁気テープドライブ(例えば磁気テープドライブ132)及びパブリッククラウド(例えばパブリッククラウド133)の少なくともいずれかを含む。
【0115】
これによって、階層型ストレージにおける下位ストレージとして多様なデバイスが使用された場合に、データの移動に要する消費電力量も考慮して、環境負荷軽減のためのデータの移動を行うか否かを適切に判断することができる。
【0116】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したものであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0117】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0118】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0119】
100 ストレージシステム
110 管理サーバ
120 上位ストレージ
121 上位ストレージコントローラ
122 ソリッドステートドライブ(SSD)
123 ハードディスクドライブ(HDD)
130 下位ストレージ
131 光ディスクドライブ
132 磁気テープドライブ
133 パブリッククラウド
140 階層型ストレージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17