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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169063
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】廃水処理方法および廃水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20241128BHJP
   C02F 3/34 20230101ALI20241128BHJP
   C02F 11/123 20190101ALI20241128BHJP
   C02F 11/127 20190101ALI20241128BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
C02F3/34 101A
C02F3/34 101B
C02F11/123
C02F11/127
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086247
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】501061319
【氏名又は名称】学校法人 東洋大学
(71)【出願人】
【識別番号】591267855
【氏名又は名称】埼玉県
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】井坂 和一
(72)【発明者】
【氏名】見島 伊織
(72)【発明者】
【氏名】澤井 綾香
【テーマコード(参考)】
4D040
4D059
【Fターム(参考)】
4D040BB02
4D040BB42
4D040BB52
4D040BB82
4D059AA04
4D059AA05
4D059AA23
4D059BA12
4D059BA21
4D059BB01
4D059BD00
4D059BE08
4D059BE37
4D059BE49
4D059CA22
4D059CA28
(57)【要約】
【課題】メタン発酵槽の状態、及び汚泥の発生状況に影響を受けることなく安定した汚泥処理、及びアナモックス反応を行うことができる廃水処理方法及び廃水処理装置を提供する。
【解決手段】廃水処理方法は、有機系廃棄物をメタン発酵槽でメタン発酵処理する発酵処理工程と、発酵処理された発酵処理廃棄物を固液分離手段で固液分離する第1固液分離工程と、分離された発酵廃液に含まれる窒素成分を、アナモックス槽でアナモックス反応により処理するアナモックス処理工程と、有機系廃棄物の一部を、バイパスラインで、メタン発酵槽を経由しないでバイパスする工程と、バイパスされた有機系廃棄物の一部を固液分離手段で固液分離する第2固液分離工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系廃棄物をメタン発酵槽でメタン発酵処理する発酵処理工程と、
発酵処理された発酵処理廃棄物を固液分離手段で固液分離する第1固液分離工程と、
分離された発酵廃液に含まれる窒素成分を、アナモックス槽でアナモックス反応により処理するアナモックス処理工程と、
前記有機系廃棄物の一部を、バイパスラインで、前記メタン発酵槽を経由しないでバイパスする工程と、
バイパスされた前記有機系廃棄物の一部を前記固液分離手段で固液分離する第2固液分離工程と、
を備える廃水処理方法。
【請求項2】
前記第1固液分離工程の前に、前記発酵処理廃棄物を第1調整槽で貯留する第1貯留工程を備える、請求項1に記載の廃水処理方法。
【請求項3】
前記第2固液分離工程の前に、前記有機系廃棄物を第2調整槽で貯留する工程を備える、請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項4】
前記アナモックス処理工程の前に、前記発酵廃液を第3調整槽で貯留する工程を備える、請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項5】
前記有機系廃棄物が下水汚泥であり、処理水の返送先が下水処理システムであること特徴とする、請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項6】
前記固液分離手段が、遠心脱水機又はベルト型脱水機である、請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項7】
前記アナモックス処理工程の後、且つ前記第2固液分離工程の後に、前記第2固液分離工程で分離された前記有機系廃棄物を利用して、アナモックス処理された発酵廃液を脱窒する脱窒工程を備える、請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項8】
有機系廃棄物をメタン発酵槽でメタン発酵処理する発酵処理工程と、
発酵処理された発酵処理廃棄物を固液分離手段で固液分離する第1固液分離工程と、
分離された発酵廃液に含まれる窒素成分を、アナモックス槽でアナモックス反応により処理するアナモックス処理工程と、
分離された前記発酵廃液の一部を、バイパスラインで、前記アナモックス槽を経由しないでバイパスするバイバス工程を備える、廃水処理方法。
【請求項9】
前記メタン発酵槽の揮発性有機酸の値が150mg/L以下であるか否かを判断する判断工程を有する請求項1又は8に記載の廃水処理方法。
【請求項10】
有機系廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、
発酵処理された発酵処理廃棄物を固液分離する第1固液分離手段と、
分離された発酵廃液に含まれる窒素成分を、アナモックス反応により処理するアナモックス槽と、
前記有機系廃棄物の一部を、前記メタン発酵槽を経由しないでバイパスするバイパスラインと、
バイパスされた前記有機系廃棄物の一部を固液分離する第2固液分離手段と、
を備える廃水処理装置。
【請求項11】
前記第1固液分離手段の前段に、前記発酵処理廃棄物を貯留する第1調整槽を備える、請求項10に記載の廃水処理装置。
【請求項12】
前記第2固液分離手段の前段に、前記有機系廃棄物を貯留する第2調整槽を備える、請求項10又は11に記載の廃水処理装置。
【請求項13】
有機系廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、
発酵処理された発酵処理廃棄物を固液分離する第1固液分離手段と、
分離された発酵廃液に含まれる窒素成分を、アナモックス反応により処理するアナモックス槽と、
前記分離された前記発酵廃液の一部を、前記アナモックス槽を経由しないでバイパスするバイパスラインと、
を備える廃水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃水処理方法および廃水処理装置に係り、アナモックス反応を用いて処理する廃水処理方法および廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃水中に含まれるアンモニア性窒素(NH-N)は、環境保全の観点からその除去が課題となっている。窒素排水の処理法には、生物処理法が多く用いられている。この窒素排水の生物処理に関わる重要な細菌として、アンモニアと亜硝酸を利用して窒素ガスへ変換するアナモックス(ANAMMOX:Anaerobic Ammonium Oxidation)細菌等が存在する。
【0003】
なお、アナモックス細菌は、下水処理場等の排水を処理する施設から簡単に入手することができる一般的な細菌である。アナモックス細菌は、環境中に広く生息しており、下水汚泥などから簡単に集積培養することが知られている(非特許文献1)。
【0004】
このアナモックス細菌を含むアナモックス槽を廃水処理装置に配置し、アナモックス反応により脱窒させる処理方法が提案されている(特許文献1)。生汚泥及び余剰活性汚泥(合わせて単に汚泥とも称する)を消化設備(メタン発酵槽)でメタン発酵し、脱水設備(固液分離手段)で分離した後に発生する脱水ろ液中には、高濃度の窒素が含まれるため、アナモックス槽で処理することが有効である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yasuhiro Date et al., “D Microbial diversity of anammox bacteria enriched from different types of seed sludge in an anaerobic continuous-feeding cultivation reactor” Journal of Bioscience and Bioengineering Volume 107, (March 2009)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-025438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、汚泥がメタン発酵槽で消化処理(メタン発酵)されない場合、又は十分に消化処理されないで、固液分離を行い、その脱水ろ液をアナモックス槽に流入させると、高濃度の有機物によりアナモックス槽での窒素処理ができなくなるおそれがある。
【0008】
また、汚泥が多量に発生し、メタン発酵槽への投入量を越えた場合、その一部は脱水設備で脱水処理して系外に排出する必要がある。また、メタン発酵槽が何らかの原因で不調となり、計画量の全ての汚泥を受け入れられない場合がある。特に、下水処理場における汚泥処理の場合、汚泥の発生は止まることなく、常に発生しており、発生した汚泥は脱水処理など、何らかの処理をしなくてはいけない。
【0009】
すなわち、1)メタン発酵槽でトラブルが生じ、高濃度の有機物によりアナモックス槽での窒素処理ができない場合の処理方法と、2)発生し続ける汚泥の処理方法とを同時に両立させる必要がある。
【0010】
さらに、汚泥の一部をメタン発酵槽に通さずに脱水処理する必要が生じた場合、この脱水ろ液はアナモックス槽には流せない課題がある。これは、既述したように、アナモックス槽に流入させると、高濃度の有機物によりアナモックス槽での窒素処理ができなくなるおそれがあるためである。
【0011】
本発明では、メタン発酵槽の状態、及び汚泥の発生状況に影響を受けることなく、安定した汚泥処理、及びアナモックス反応を行うことができる、廃水処理方法及び廃水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1態様に係る発明は、廃水処理方法であって、有機系廃棄物をメタン発酵槽でメタン発酵処理する発酵処理工程と、発酵処理された発酵処理廃棄物を固液分離手段で固液分離する第1固液分離工程と、分離された発酵廃液に含まれる窒素成分を、アナモックス槽でアナモックス反応により処理するアナモックス処理工程と、有機系廃棄物の一部を、バイパスラインで、メタン発酵槽を経由しないでバイパスする工程と、バイパスされた有機系廃棄物の一部を固液分離手段で固液分離する第2固液分離工程と、を備える。
【0013】
第2態様に係る廃水処理方法において、第1固液分離工程の前に、発酵処理廃棄物を第1調整槽で貯留する第1貯留工程を備える。
【0014】
第3態様に係る廃水処理方法において、第2固液分離工程の前に、有機系廃棄物を第2調整槽で貯留する工程を備える。
【0015】
第4態様に係る廃水処理方法において、アナモックス処理工程の前に、発酵廃液を第3調整槽で貯留する工程を備える。
【0016】
第5態様に係る廃水処理方法において、有機系廃棄物が下水汚泥であり、処理水の返送先が下水処理システムであること特徴とする。
【0017】
第6態様に係る廃水処理方法において、固液分離手段が、遠心脱水機又はベルト型脱水機である。
【0018】
第7態様に係る廃水処理方法において、アナモックス処理工程の後、且つ第2固液分離工程の後に、第2固液分離工程で分離された有機系廃棄物を利用して、アナモックス処理された発酵廃液を脱窒する脱窒工程を備える。
【0019】
第8態様に係る廃水処理方法において、有機系廃棄物をメタン発酵槽でメタン発酵処理する発酵処理工程と、発酵処理された発酵処理廃棄物を固液分離手段で固液分離する第1固液分離工程と、分離された発酵廃液に含まれる窒素成分を、アナモックス槽でアナモックス反応により処理するアナモックス処理工程と、分離された発酵廃液の一部を、バイパスラインで、アナモックス槽を経由しないでバイパスするバイバス工程を備える。
【0020】
第9態様に係る廃水処理方法において、メタン発酵槽の揮発性有機酸の値が150mg/L以下であるか否かを判断する判断工程を有する。
【0021】
第10態様に係る廃水処理装置は、有機系廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、発酵処理された発酵処理廃棄物を固液分離する第1固液分離手段と、分離された発酵廃液に含まれる窒素成分を、アナモックス反応により処理するアナモックス槽と、有機系廃棄物の一部を、メタン発酵槽を経由しないでバイパスするバイパスラインと、バイパスされた有機系廃棄物の一部を固液分離する第2固液分離手段と、を備える。
【0022】
第11態様に係る廃水処理装置において、第1固液分離手段の前段に、発酵処理廃棄物を貯留する第1調整槽を備える。
【0023】
第12態様に係る廃水処理装置において、第2固液分離手段の前段に、有機系廃棄物を貯留する第2調整槽を備える。
【0024】
第13態様に係る廃水処理装置は、有機系廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、発酵処理された発酵処理廃棄物を固液分離する第1固液分離手段と、分離された発酵廃液に含まれる窒素成分を、アナモックス反応により処理するアナモックス槽と、分離された発酵廃液の一部を、アナモックス槽を経由しないでバイパスするバイパスラインと、を備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、安定した汚泥処理、及びアナモックス反応を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る廃水処理装置の概略構成を示す説明図である。
図2】第1実施形態の変形例に係る廃水処理装置の概略構成を示す説明図である。
図3】第2実施形態に係る廃水処理装置の概略構成を示す説明図である。
図4】第2実施形態の変形例に係る廃水処理装置の概略構成を示す説明図である。
図5】第3実施形態に係る廃水処理装置の概略構成を示す説明図である。
図6】第4実施形態に係る廃水処理装置の概略構成を示す説明図である。
図7】実施例で使用した試験装置を示す図である。
図8】メタン発酵槽の運転データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って、本発明に係る廃水処理方法、及び廃水処理装置について説明する。なお、本明細書において、「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0028】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る廃水処理装置20を含む下水処理システム1の概略構成を示す説明図である。図1に示す下水処理システム1は、最初沈殿池2と、反応タンク4と、最終沈殿池6と、を備える。最初沈殿池2と、反応タンク4と、最終沈殿池6とは、下水処理システム1において、水処理系を構成する。
【0029】
最初沈殿池2は、配管8を介して流入される流入水(例えば、下水)を貯える。最初沈殿池2は、下水を受け入れた際に存在す固形物を沈降分離する。分離された固形物が最初沈殿池2から生汚泥として配管16を介して排出される。一方、固形物が除去された上澄み部分の処理水は、最初沈殿池2から配管10を介して反応タンク4に送られる。流入水は、下水に限定されず、工場廃水などでもよい。
【0030】
反応タンク4は、最初沈殿池2からの処理水を生物処理するための処理槽である。反応タンク4で実行される生物処理は、微生物の作用で、処理水に含まれる有機物等を分解除去する。反応タンク4では、微生物が増殖し汚泥が発生する。反応タンク4の処理水は、生物処理により浄化される。生物処理は、活性汚泥法等、公知の技術を好適に適用できる。反応タンク4で生物処理された処理水は、配管12を介して最終沈殿池6に送られる。
【0031】
最終沈殿池6は、反応タンク4から処理水に含まれる汚泥を沈降分離する。最終沈殿池6に沈降された汚泥の一部は反応タンク4に返送される。汚泥の残りは、余剰汚泥として最終沈殿池6から配管18を介して排出される。最終沈殿池6の上澄み部分の処理水は、配管14を介して川又は海に排出される。
【0032】
図1に示すように廃水処理装置20は、メタン発酵槽22と、複数の脱水機24、26、28と、アナモックス槽30と、を備える。
【0033】
図1に示すように、最初沈殿池2から排出された生汚泥と最終沈殿池6から排出され余剰汚泥とが混合された混合汚泥が、配管32を介してメタン発酵槽22に送られる。混合汚泥が、本発明の有機系廃棄物の一例である。混合汚泥において、生汚泥と余剰汚泥との比率は特に限定されない。混合汚泥は生汚泥のみ、又は余剰汚泥のみで構成される場合を含む(混合汚泥は汚泥ともいう)。
【0034】
メタン発酵槽22は、混合汚泥を、例えば、嫌気性微生物により消化処理し、メタン等のバイオガスを生成する。メタン発酵槽22は、公知のメタン発酵法を適用できる。消化処理(発酵処理)された混合汚泥の一部が、メタン発酵槽22に消化汚泥として残る。消化汚泥がメタン発酵槽22から配管34を介して排出される。メタン発酵槽22では、生成されたバイオガスを回収することで、エネルギー回収が行われる。消化汚泥は、消化処理(発酵処理)により有機物濃度が低減されている。消化汚泥は、本発明の発酵処理された発酵処理廃棄物の一例である。メタン発酵槽22は、本発明のメタン発酵槽の一例である。なお、メタン発酵槽22の前段に、濃縮装置を配置してもよい。
【0035】
メタン発酵槽22から排出された消化汚泥が、配管34を介して脱水機24、26に送られる。脱水機24、26は、脱水処理により、消化汚泥を固液分離する。脱水機24、26は、遠心脱水機、ベルト型脱水機等の公知の脱水機を、単独で、又は組み合わせて適用できる。脱水機24、26により固液分離された脱水消化処理水が配管36から排出される。一方、脱水された脱水消化汚泥は、脱水機24、26から系外に排出され、乾燥、焼却等されて廃棄される。脱水機24、26は、本発明の第1固液分離手段の一例である。なお、第1固液分離手段の脱水機は少なくとの1台あればよい。脱水消化処理水は、本発明の発酵廃液の一例である。
【0036】
脱水消化処理水は、配管36を介して、アナモックス槽30に送られる。アナモックス槽30は、脱水消化処理水に含まれる窒素成分を、アナモックス細菌によるアナモックス反応により処理する。アナモックス反応は、アンモニアと亜硝酸を、窒素ガスへと変換する反応である。脱水消化処理水中のアンモニアの約半量を亜硝酸に酸化し、アンモニアと生成した亜硝酸をアナモックス反応で脱窒する。具体的には、アナモックス反応は、アンモニアを水素供与体とし、亜硝酸を水素受容体として嫌気的条件の下で一時に脱窒させる反応である。アナモックス槽30は、本発明のアナモックス槽の一例である。
【0037】
アンモニアから亜硝酸への酸化は好気性細菌であるアンモニア酸化細菌で行われ、アナモックス反応は嫌気性細菌であるアナモックス細菌で行われる。
【0038】
脱水消化処理水は、アンモニア性窒素濃度が高く、且つ水温も30℃以上と高いので、アナモックス反応に用いるのに好適な処理水となる。さらに、脱水消化処理水は、メタン発酵槽22によりアナモックス細菌の活性を阻害する有機物濃度が下げられているので、アナモックス反応に用いるのに、さらに好適な処理水となる。
【0039】
アナモックス槽30として、アンモニアから亜硝酸への酸化とアナモックス反応とは、それぞれ別の反応槽で行う2槽型のアナモックス槽を適用できる。また、アナモックス槽30として、アンモニア酸化細菌とアナモックス細菌を、1槽(好気層)で利用できる1槽型のアナモックス槽を適用できる。1槽型のアナモックス槽によれば、2つの反応を1槽で行うので、維持管理を容易に行うことができる。
【0040】
アナモックス細菌は、担体に固定化された状態で生物処理が行われ場所に提供されることが好ましい。アナモックス細菌を固定化する方法としては、担体表面に付着固定化させ固定化担体とする方法、及び、担体内に細菌を包摂させて固定化し包括固定化担体とする方法がある。包括固定化担体とすることで、担体の内部にアナモックス細菌を維持することができるので、長期の生物処理を行っても細菌が流出することを防止することができる。
【0041】
担体としては、例えば、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリエチレングリコール、アクリルアミド等のゲル担体や、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリウレタン等のプラスチック担体や、活性炭、珪藻土、ゼオライト等の無機担体等が挙げられる。担体の形態は、例えば、球、円筒、円柱、立方体、直方体等の適宜の形状に成形した浮遊担体を用いる流動床、スポンジ状、不織布状、中空糸状等とした担体濾材をハニカム状、波形状、格子状、繊維状、菊花状等に配列した固定床のいずれでもよい。流動床については、浮遊担体の大きさは、1mm以上10mm以下の範囲が好ましく、その充填率は、培養槽容量に対して10体積%以上40体積%以下の範囲が好ましい。一方、固定床については、その充填率は、培養槽容量に対して見かけ上の占有容積で10体積%以上50体積%以下の範囲が好ましく、その空隙率は、80%以上であることが好ましい。
【0042】
なお、ポリビニルアルコール(PVA)製のゲル担体にアナモックス細菌をあらかじめ付着させる方法については、文献(染谷果穂、井坂和一他(2022)『PVA担体を用いたアナモックス細菌の付着固定化方法の開発』日本水処理生物学会誌 別巻Vol 42, P481)に記載した方法を利用することができる。
【0043】
アナモックス槽30で処理されたアナモックス処理水が、配管38から排出される。配管38はアナモックス槽30と既設40とを接続する。アナモックス処理水は、配管38を介して既設40に返送される。既設40は、例えば、下水処理システム1の水処理系である。
【0044】
また、廃水処理装置20は、バイパスライン42と、脱水機28とを備える。バイパスライン42は、配管32から分岐し、メタン発酵槽22を経由せずに、既設40に接続される。脱水機28はバイパスライン42上に配置される。配管32にはバルブV1が設けられ、バイパスライン42にはバルブV2が設けられている。
【0045】
メタン発酵槽22の消化処理が十分でない場合、有機物濃度の高い脱水消化処理水がアナモックス槽30に流入し、アナモックス槽30でのアナモックス反応が阻害され、窒素処理ができなくなる。そこで、メタン発酵槽22が消化処理を十分に実行できない場合、混合汚泥を、バイパスライン42を介してメタン発酵槽22を経由せずに脱水機28に送る。脱水機28で固液分離された脱水混合汚泥処理水は、アナモックス槽30に流入させることなく、バイパスライン42を介して排出される。脱水混合汚泥処理水はバイパスライン42を介して既設40に返送される。バイパスライン42は、本発明のバイパスラインの一例である。脱水機28は、本発明の第2固液分離手段の一例である。なお、第2固液分離手段の脱水機は、少なくとも1台あればよい。
【0046】
以上のようにバイパスライン42及び脱水機28を設けることにより、有機物濃度が高い脱水消化処理水がアナモックス槽30に流入することを抑制できる。
【0047】
次に、廃水処理装置20による廃水処理について説明する。
【0048】
まず、廃水処理装置20では、配管32のバルブV1を開け、バイパスライン42のバルブV2を閉じる。水処理系で発生する混合汚泥を、配管32を介してメタン発酵槽22に流入する。メタン発酵槽22で混合汚泥を消化処理し、配管34を介して消化汚泥を、脱水機24、26に流入する。消化汚泥を脱水機24、26で固液分離し、配管36を介して脱水消化処理水をアナモックス槽30に流入する。脱水消化処理水をアナモックス槽30で窒素成分を窒素ガスに変換する。配管38を介して、アナモックス処理水を既設40に流入する。
【0049】
一方で、メタン発酵槽22をメンテナンスする場合、又は何らかの理由でメタン発酵槽22が故障して機能しない場合、メタン発酵槽22は混合汚泥の有機物濃度を十分に低減できない。また、メタン発酵槽22での消化処理中に異常が生じた場合、有機物濃度を十分に低減できない。
【0050】
また、下水処理場の運営では生じる生汚泥又は余剰汚泥は一定ではない。そのため多量に生汚泥又は余剰汚泥が生じると、混合汚泥をメタン発酵槽22に流入させることができない場合がある。
【0051】
有機物濃度が十分低減されていない消化汚泥、有機物濃度が高い混合汚泥を、アナモックス槽30を流入させると、アナモックス反応が阻害される。なお、これらの状態をメタン発酵不十分状態とも称する。
【0052】
そこで、配管32のバルブV1を閉じ、バイパスライン42のバルブV2を開ける。混合汚泥を配管32からバイパスライン42に流すことで、混合汚泥は、メタン発酵槽22を経由せずにバイパスライン42を介して脱水機28に送られる。脱水機28で固液分離された脱水混合汚泥処理水を、アナモックス槽30に流入させることなくバイパスさせて、バイパスライン42を介して既設40に流入する。このように運用することで。安定した汚泥処理およびアナモックス槽30の運転を行うことができる。
【0053】
メタン発酵槽22をメンテナンスの場合、メンテナンス情報に基づいて、バルブV1及びバルブV2の開閉の切り替えを行うことができる。
【0054】
メタン発酵槽22に、異常又は故障の際に警報を発する検知手段を設けることで、検知手段から発せられた情報に基づいて、バルブV1及びバルブV2の開閉の切り替えを行うことができる。検知手段は、例えば、メタン発酵槽22の維持管理に使用される揮発性有機酸(VFA)を計測する計測器であってもよい。VFAの上昇から、メタン発酵槽22の異常を検知することができる。VFAの値を閾値として設定し、閾値を超えた場合に異常と判断してもよい。すなわち、VFAの値は、閾値以下であることが好ましい。なお、検知手段は判断工程の一例である。VFAの閾値は、150mg/Lとすることができ、より好ましくは100mg/Lとすることができる。VFAが閾値を超えたか否かを判断し、その情報に基づいて。バルブV1を閉じ、バルブV2を開ける。混合汚泥を、バイパスライン42を介して脱水機28に流入し、アナモックス槽30に流入させない。
【0055】
配管16、18、32に流量測定手段を設けることで、生汚泥、余剰汚泥、混合汚泥の流量を測定する。予め、各流量に対する閾値を設定する。閾値を超えた場合、その情報に基づいて。バルブV1を閉じ、バルブV2を開ける。混合汚泥を、バイパスライン42を介して脱水機28に流入し、アナモックス槽30に流入させない。
【0056】
(変形例)
図2は、第1実施形態の変形例を示す図である。図2において、上述した本実施形態と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。なお、以降の図においては、水系処理を省略している。
【0057】
図1に示すように、本実施形態の廃水処理装置20は、では複数の脱水機24、26、28を備えている。一方、変形例の廃水処理装置20Aは、図2に示すように1台の脱水機24Aのみを備える。
【0058】
廃水処理装置20Aは、配管32から分岐したバイパスライン42Aを備える。バイパスライン42は、メタン発酵槽22を経由せずに、配管34に接続される。配管32にはバルブV1が設けられ、バイパスライン42AにはバルブV2が設けられる。廃水処理装置20Aは、配管36から分岐したバイパスライン42Bを備える。バイパスライン42Bは、アナモックス槽30を経由せずに、既設40に接続される。配管36にはバルブV3が設けられ、バイパスライン42BにはバルブV4が設けられる。バイパスライン42Aは、本発明のバイパスラインの一例である。
【0059】
次に、廃水処理装置20Aによる廃水処理について説明する。
【0060】
まず、廃水処理装置20Aでは、配管32のバルブV1を開け、バイパスライン42AのバルブV2を閉じる。配管36のバルブV3を開け、バイパスライン42BのバルブV4を閉じる。水処理系で発生する混合汚泥を、配管32を介してメタン発酵槽22に流入する。メタン発酵槽22で混合汚泥を消化処理し、配管34を介して消化汚泥を、脱水機24Aに流入する。消化汚泥を脱水機24Aで固液分離する。配管36を介して脱水消化処理水をアナモックス槽30に流入する。脱水消化処理水をアナモックス槽30で窒素成分を窒素ガスに変換する。配管38を介して、アナモックス処理水を既設40に流入する。脱水機24Aは、本発明の第1固液分離手段の一例である。
【0061】
メタン発酵不十分状態では、配管32のバルブV1を閉じ、バイパスライン42AのバルブV2を開ける。バルブV1及びバルブV2の開閉に同期させて、配管36のバルブV3を閉じ、バイパスライン42BのバルブV4を開ける。
【0062】
混合汚泥を脱水機24Aに流入し、混合汚泥を脱水機24Aで固液分離する。配管36を介して脱水混合汚泥処理水を排出する。脱水混合汚泥処理水を配管36からバイパスライン42Bに流すことで、有機物濃度の高い脱水混合汚泥処理水は、アナモックス槽30に流入されることなく、既設40に流入される。脱水機24Aは、本発明の第2固液分離手段の一例である。したがって、変形例では、脱水機24Aは、本発明の第1固液分離手段と第2固液分離手段とを兼ねる。
【0063】
このように運用することで。安定した汚泥処理およびアナモックス槽30の運転を行うことができる。
【0064】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態を説明するための図である。図3において、上述した第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
図3に示す第2実施形態の廃水処理装置20Bは、図1に示す第1実施形態の廃水処理装置20とは異なり、調整槽50、52を備えている。
【0066】
調整槽50は、脱水機24、26の前段で、配管34上に配置される。調整槽50は、メタン発酵槽22から配管34を介して排出される消化汚泥を貯留する。また、調整槽52は、脱水機28の前段で、バイパスライン42上に配置される。調整槽52は、バイパスライン42を介して流入される混合汚泥を貯留する。調整槽50は、本発明の第1調整槽の一例である。調整槽52は、本発明の第2調整槽の一例である。なお、第1調整槽及び第2調整槽は、それぞれ少なくとも1槽あればよい。
【0067】
次に、廃水処理装置20Bによる廃水処理について説明する。
【0068】
まず、廃水処理装置20Bでは、配管32のバルブV1を開け、バイパスライン42のバルブV2を閉じる。混合汚泥を、配管32を介してメタン発酵槽22に流入する。メタン発酵槽22で混合汚泥を消化処理し、配管34を介して消化汚泥を、調整槽50に流入する。調整槽50に消化汚泥を貯留しながら、調整槽50から排出される消化汚泥を、脱水機24、26に流入する。消化汚泥を脱水機24、26で固液分離する。脱水消化処理水をアナモックス槽30で窒素成分を窒素ガスに変換し、アナモックス処理水を既設40に流入する。
【0069】
メタン発酵不十分状態において、配管32のバルブV1を閉じ、バイパスライン42のバルブV2を開ける。バイパスライン42を介して混合汚泥を調整槽52に流入する。調整槽52に混合汚泥を貯留しながら、調整槽52から排出される消化汚泥を、脱水機28で固液分離し、脱水混合汚泥処理水を既設40に流入する。一方、配管32のバルブV1を閉じた場合でも、調整槽50に貯留された消化汚泥を脱水機24、26に連続的に流入し、脱水消化処理水をアナモックス槽30で窒素成分を窒素ガスに変換する。
【0070】
また、メタン発酵が十分な状態に復帰した後において、バイパスライン42のバルブV2が閉じられた場合でも、調整槽52から排出される消化汚泥を、脱水機28で固液分離し、脱水混合汚泥処理水を既設40に流入できる。
【0071】
換言すると、脱水機24、26、28及びアナモックス槽30を連続して稼働でき、廃水処理装置20Bを効率的に運転できる。
【0072】
(変形例)
図4は、第2実施形態の変形例を示す図である。図4において、上述した第1実施形態の変形例(図2)と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図4に示す変形例の廃水処理装置20Cは、図2に示す廃水処理装置20Aとは異なり、調整槽54、56、58を備えている。調整槽54は、脱水機24Aの前段で、配管34上に配置される。調整槽54は、メタン発酵槽22から配管34を介して排出される消化汚泥を貯留する。調整槽54の後段で配管34上にバルブV5が配置される。調整槽56は、バイパスライン42A上に配置される。調整槽56は、バイパスライン42Aを介して流入される混合汚泥を貯留する。調整槽56の後段でバイパスライン42A上にバルブV6が配置される。調整槽58は、アナモックス槽30の前段で、配管36上に配置される。調整槽58は、配管36を介して流入される脱水消化処理水を貯留する。脱水機24Aは、本発明の第1固液分離手段及び第2固液分離手段の一例である。調整槽54は、本発明の第1調整槽の一例である。調整槽56は、本発明の第2調整槽の一例である。
【0074】
次に、廃水処理装置20Cによる廃水処理について説明する。
【0075】
まず、廃水処理装置20Cでは、配管32のバルブV1を開け、配管34のバルブV5を開ける。バイパスライン42AのバルブV2及びバルブV6を閉じる。配管36のバルブV3を開け、バイパスライン42BのバルブV4を閉じる。
【0076】
混合汚泥を、配管32を介してメタン発酵槽22に流入する。メタン発酵槽22で混合汚泥を消化処理し、配管34を介して消化汚泥を、調整槽54に流入する。調整槽54に消化汚泥を貯留しながら、調整槽54から排出される消化汚泥を、脱水機24Aに流入する。消化汚泥を脱水機24Aで固液分離する。配管36を介して脱水消化処理水を調整槽58に流入する。脱水消化処理水を調整槽58に貯留しながら、調整槽58から排出される脱水消化処理水を、アナモックス槽30に流入する。アナモックス槽30で窒素成分を窒素ガスに変換し、アナモックス処理水を既設40に流入する。
【0077】
メタン発酵不十分状態では、配管32のバルブV1を閉じ、バイパスライン42AのバルブV2を開ける。バルブV1及びバルブV2の開閉に同期させて、配管34のバルブV5を閉じ、バイパスライン42AのバルブV6を開け、配管36のバルブV3を閉じ、バイパスライン42BのバルブV4を開ける。
【0078】
バイパスライン42Aを介して混合汚泥を調整槽56に流入する。調整槽56に混合汚泥を貯留しながら、調整槽56から排出される消化汚泥を、混合汚泥を脱水機24Aに流入する。混合汚泥を脱水機24Aで固液分離し、配管36を介して脱水混合汚泥処理水を排出する。脱水混合汚泥処理水を配管36からバイパスライン42Bに流すことで、有機物濃度の高い脱水混合汚泥処理水は、アナモックス槽30に流入されることなく、既設40に流入される。
【0079】
一方、配管36のバルブV3を閉じた場合でも、調整槽58に貯留された脱水消化処理水をアナモックス槽30で窒素成分を窒素ガスに変換する。アナモックス槽30からアナモックス処理水が既設40に流入される。
【0080】
換言すると、脱水機24A及びアナモックス槽30を連続して稼働でき、廃水処理装置20Cを効率的に運転できる。
【0081】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態を説明するための図である。図5において、上述した第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
図5に示す廃水処理装置20Dは、図1に示す廃水処理装置20とは異なり、脱窒槽60を備えている。脱窒槽60は、アナモックス槽30の後段で、配管38上に配置される。脱窒槽60には、脱水機28からのバイパスライン42が接続される。
【0083】
次に、廃水処理装置20Dによる廃水処理について説明する。なお、第1実施形態の廃水処理装置20とことなる処理について説明する。
【0084】
廃水処理装置20Dでは、アナモックス槽30から排出されるアナモックス処理水が、脱窒槽60に流入される。また、脱水機28から排出される脱水混合汚泥処理水が、脱窒槽60に流入される。
【0085】
アナモックス反応では少量の硝酸が生成するため、アナモックス処理水は硝酸を含んでいる。また、脱水混合汚泥処理水はメタン発酵槽を経由していないので有機物を多く含んでいる。脱窒槽60では、アナモックス処理水の含まれる硝酸と、従属栄養性の脱窒細菌とにより脱窒処理を行う。脱窒細菌は、脱水混合汚泥処理水に含まれる有機物を電子供与体として利用しながら窒素成分を窒素ガスに変換する。
【0086】
廃水処理装置20Dでは、脱窒槽60を配置し、脱水混合汚泥処理水を利用することにより、脱窒効率を高めることができる。
【0087】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態を説明するための図である。図6において、上述した第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0088】
図6に示す廃水処理装置20Eは、メタン発酵槽22の後段に脱水機62、64及び66を備えている。脱水機62は、配管34によりメタン発酵槽22と接続される。配管34から分岐するバイパスライン42Cを有する。バイパスライン42Cは分岐し、各バイパスライン42C上には、脱水機64、66が配置される。各バイパスライン42Cは、アナモックス槽30を経由せずに、既設40に接続される。配管34にはバルブV7が配置される。分岐するバイパスライン42Cには、バルブV8及びV9が配置される。
【0089】
配管36から分岐するバイパスライン42Dを有する。バイパスライン42Dは、アナモックス槽30を経由せずに、既設40に接続される。配管36にはバルブV10が配置される。バイパスライン42Dには、バルブV11が配置される。
【0090】
次に、廃水処理装置20Eによる廃水処理について説明する。
【0091】
廃水処理装置20Eでは、バルブV7及びV10が開けられ、バルブV8、V9及びV11が閉じられる。メタン発酵槽22から消化汚泥が脱水機62に流入される。脱水機62から脱水消化処理水がアナモックス槽30に流入する。アナモックス槽30で窒素成分が窒素ガスに変換され、アナモックス処理水が既設40に流入する。
【0092】
メタン発酵槽22の立上げ時、又はメタン発酵槽22の重大なトラブル時など、メタン発酵槽22を更新した場合や、メンテナンス等でメタン発酵槽22の立上げを行う場合がある。メタン発酵槽22が十分な消化処理ができず、高濃度の有機物を含む脱水消化処理水がアナモックス槽30へ流入する可能性がある。
【0093】
そこで、廃水処理装置20Eでは、例えば、バルブV7及びV10が閉じられ、バルブV8及びV9が開けられる。バイパスライン42Cを介して、高濃度の有機物を含む脱水消化処理水を脱水機64及び66に流入する。脱水機64及び66からバイパスライン42Cを介して、高濃度の有機物を含む脱水消化処理水をアナモックス槽30に流入することなく、既設40に流入する。
【0094】
また、脱水機62から排出される脱水消化処理水も高濃度の有機物を含む場合がある。そこで、廃水処理装置20Eにおいて、バルブV10と閉じ、バルブV11を開くことで、高濃度の有機物を含む脱水消化処理水を、アナモックス槽30に流入させることなく、既設40に流入する。
【0095】
<実施例>
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
【0096】
(試験1)
アナモックス槽で、脱水消化処理水の窒素成分がどの程度除去されるかを検証した。メタン発酵槽で消化処理された消化汚泥のみを脱水機で処理した。脱水機で固液分離した後の脱水消化処理水のアンモニア性窒素の濃度は、696mg/L程度であり、全有機体炭素濃度は110mg/L程度であった。
【0097】
脱水消化処理水を用いて、アナモックス反応よる処理試験を実施した結果、80%以上の窒素除去率を安定して維持できることを確認できた。
【0098】
アナモックス槽としては、アナモックス反応と、亜硝酸型硝化反応を同一槽で実施する1槽型のアナモックス槽を用いた。試験においては、図7に示す試験装置200を使用した。反応槽202と、反応槽202を囲うウォータージャケット206と、反応槽202が載置される撹拌器216と、を備える。ウォータージャケット206は、恒温水を供給する恒温水供給管206Aと、恒温水を排出する恒温水排出管206Bとを備える。反応槽202は、原水(脱水消化処理水)を供給する原水供給管208、処理された処理水(アナモックス処理水)を排出する排出管210、0.2N塩酸溶液(HCL)を供給する酸性溶液供給管212、Nガスを供給するガス供給管214、pHセンサー218、Airを供給するエア供給管220、及びを0.5N水酸化ナトリウム溶液(NaOH)を供給するアルカリ性溶液供給管222を備える。
【0099】
供試担体として、アナモックス細菌をポリビニルアルコール(PVA)製のビーズ担体に付着させたアナモックス担体204と、活性汚泥をPVA系のビーズ担体に付着させた硝化担体205を用いた。
【0100】
1.44Lの円筒型の反応槽202にアナモックス担体204と硝化担体205とを、担体充填率がそれぞれ10%となるように充填した。水温は30℃に設定した。pHコントローラー(不図示)によりポンプ(不図示)を制御し、0.2N塩酸溶液及び0.5N水酸化ナトリウム溶液を用いて、槽内pHをpH7.6に調整した。
【0101】
なお、アナモックス担体の作成方法としては、非特許文献の「PVA担体を用いたアナモックス細菌の付着固定化方法の開発」日本水処理生物学会第58回 熊本大会講演要旨(2022)に記載して方法を用いた。流入水の速度としては、アンモニア性窒素の反応槽容積負荷として1.0kg-N(md)-1とした。
【0102】
(試験2)
次に、メタン発酵槽での消化処理が十分でない場合を検証した。図8は横軸が日付、縦軸がVFA(mg/L)とするグラフであり、ある処理場におけるメタン発酵槽の運転データを示している。図8のグラフによれば、VFAの値が上昇し、3/29にはVFAの値が160mg/Lにまで急激に上昇していることが確認された。メタン発酵槽での消化処理が十分でない場合、メタン発酵槽へ流入させる混合汚泥の量を調整する必要があり、混合汚泥の一部を消化処理せず、脱水機で固液分離する必要性が生じる。この時、消化処理していない脱水混合汚泥処理水が脱水消化処理水に混入するため、脱水消化処理水の水質が変動する。脱水混合汚泥処理水が混入した脱水消化処理水の水質に関して、アンモニア性窒素の濃度が409mg/L程まで低下し、全有機体炭素濃度は536mg/Lまで急増した。
【0103】
脱水混合汚泥処理水が混入した脱水消化処理水、試験1と同様の試験を実施した。その結果、アナモックス槽でのアンモニア性窒素除去率は15%以下まで低下し、ほとんど処理ができなかった。これは、有機物濃度の上昇により、供給した酸素が、有機物処理に利用され、窒素処理に利用できなくなったことが原因であると考えられる。
【0104】
(試験3)
試験3では、図5に示す、脱窒槽を備える第3実施形態の廃水処理装置の効果を実験的に検証した。
【0105】
脱水混合汚泥処理水をアナモックス槽の後段の脱窒槽に添加することを想定し、混合汚泥を固液分離した当量の脱水混合汚泥処理水をアナモックス処理水に添加した。具体的には、2Lの三角フラスコに、500mLのアナモックス処理水と、500mLの脱水混合汚泥処理水と、硝酸性窒素排水処理に用いていた50mLの脱窒担体を添加した。なお、水温は30℃に維持した。アナモックス処理水中には、硝酸性窒素が52mg/L含まれていたが、8時間後には、5mg/L以下に処理されていた。脱水混合汚泥処理水に含まれる有機物と、アナモックス処理水中の硝酸性窒素が混合され、脱窒細菌により処理されたことが確認できた。
【0106】
なお、脱窒担体として(包括固定化担体を用いた脱窒システムの開発、井坂和一, 安部直樹, 木村裕哉, 渡部雅智, 大坂利文, 常田聡、日本水処理生物学会誌 42(2) 67-74 2011年6月)に記載された脱窒担体を用いた。
【0107】
以上、本発明に係る廃水処理方法および廃水処理装置について詳細に説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0108】
1・・・下水処理システム、2・・・最初沈殿池、4・・・反応タンク、6・・・最終沈殿池、8、10、14、16、18、32、34、36、38・・・配管、20、20A、20B、20C、20D、20E・・・廃水処理装置、22・・・メタン発酵槽、24、24A、26、28、62、64、66・・・脱水機、30・・・アナモックス槽、40・・・既設、42、42A、42B、42C、42D・・・バイパスライン、50、52、54、56、58・・・調整槽、60・・・脱窒槽、200・・・試験装置、202・・・反応槽、204・・・アナモックス担体、205・・・硝化担体、206・・・ウォータージャケット、206A・・・恒温水供給管、206B・・・恒温水排出管、208・・・原水供給管、210・・・排出管、212・・・酸性溶液供給管、214・・・ガス供給管、216・・・撹拌器、218・・・pHセンサー、220・・・エア供給管、222・・・アルカリ性溶液供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8