(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169066
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車載融雪装置
(51)【国際特許分類】
B60L 58/10 20190101AFI20241128BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241128BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241128BHJP
B60W 10/00 20060101ALI20241128BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20241128BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20241128BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20241128BHJP
【FI】
B60L58/10
B60L50/16 ZHV
B60L50/60
B60W10/00 900
B60W20/15
B60K6/40
B60K6/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086252
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 新也
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB00
3D202DD00
3D202DD01
3D202EE00
3D202EE23
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BD17
5H125CA01
5H125CD09
5H125DD01
5H125DD05
5H125EE51
5H125EE63
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】車載融雪装置に関し、雪道における路面の積雪と車両の下面との接触によるスタックを簡素な構成で解消する。
【解決手段】開示の車載融雪装置は、車両10が走行する路面と対向するように車両10の下面に配索される電熱線7と、車両10の雪道でのスタックを検出する検出手段11~14と、車両10の雪道でのスタックが検出された場合に電熱線7に通電する制御を実施する制御手段20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する路面と対向するように前記車両の下面に配索される電熱線と、
前記車両の雪道でのスタックを検出する検出手段と、
前記車両の雪道でのスタックが検出された場合に前記電熱線に通電する制御を実施する制御手段と、
を備えることを特徴とする、車載融雪装置。
【請求項2】
前記車両が、駆動用モーター及び走行用バッテリーを具備する電動車両であって、
前記制御手段が、前記走行用バッテリーの電力を前記電熱線に供給する制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1記載の車載融雪装置。
【請求項3】
前記車両が、駆動用エンジンを具備するハイブリッド車両であって、
前記制御手段が、前記駆動用エンジンを始動させる制御を実施する
ことを特徴とする、請求項2記載の車載融雪装置。
【請求項4】
前記ハイブリッド車両が、前記駆動用エンジンの動力を利用して発電するジェネレーターを具備し、
前記制御手段が、前記ジェネレーターの発電電力を前記走行用バッテリー及び前記電熱線に供給する制御を実施する
ことを特徴とする、請求項3記載の車載融雪装置。
【請求項5】
前記駆動用エンジンの排気管が、前記車両の下面に配索されるとともに、
前記電熱線が、前記車両の下面視において前記排気管を避けて面状の領域を覆うように蛇行して配索される
ことを特徴とする、請求項3又は4記載の車載融雪装置。
【請求項6】
前記検出手段が、前記スタックの検出に際し、車輪の車体に対する距離が所定距離以上であることを判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車載融雪装置。
【請求項7】
前記検出手段が、前記スタックの検出に際し、駆動輪の回転数の増加を判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車載融雪装置。
【請求項8】
前記検出手段が、前記スタックの検出に際し、前記車両の停止を判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車載融雪装置。
【請求項9】
前記検出手段が、前記スタックの検出に際し、前記車両の下面側の温度が所定温度未満であることを判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車載融雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両に搭載される車載融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地における車両の運転操作を補助するための装置として、フロントガラスに貼り付けられた電熱線に通電することでガラス上の積雪を溶融させるものが知られている。この種の電熱線は、例えばワイパーブレードによるフロントガラスの払拭領域よりも車幅方向外側に配置される。ワイパーブレードは、電熱線が敷設された領域に向かってガラス上の積雪を移動させるように作用する。これにより、ガラス上の積雪が効率よく溶融され、運転者の視界が確保されやすくなる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、除雪されていない路面や積雪による深い轍(わだち)が形成された路面を走行したときに、車両の下面が路面上の積雪に接触した状態で車輪が路面から離隔し、車両がスタックすることがある。この場合、アクセルペダルを踏み込んだとしても車輪が空転してしまうため、他の車両や大人数で車両を移動させて車輪を接地させる必要が生じるという課題がある。このような課題は、車高が低い車両(すなわち、車両の下面が路面上の積雪に乗り上げた状態になりやすい車両)において顕著となる。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、雪道における路面の積雪と車両の下面との接触によるスタックを簡素な構成で解消できるようにした車載融雪装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の車載融雪装置は、以下に開示する態様(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。態様2以降の各態様は、何れもが付加的に適宜選択されうる態様であって、何れもが省略可能な態様である。態様2以降の各態様は、何れもが本件にとって必要不可欠な態様や構成を開示するものではない。
【0007】
態様1.開示の車載融雪装置は、車両が走行する路面と対向するように前記車両の下面に配索される電熱線と、前記車両の雪道でのスタックを検出する検出手段と、前記車両の雪道でのスタックが検出された場合に前記電熱線に通電する制御を実施する制御手段と、を備える。
態様2.上記の態様1において、前記車両が、駆動用モーター及び走行用バッテリーを具備する電動車両であって、前記制御手段が、前記走行用バッテリーの電力を前記電熱線に供給する制御を実施することが好ましい。
【0008】
態様3.上記の態様2において、前記車両が、駆動用エンジンを具備するハイブリッド車両であって、前記制御手段が、前記駆動用エンジンを始動させる制御を実施することが好ましい。
態様4.上記の態様3において、前記ハイブリッド車両が、前記駆動用エンジンの動力を利用して発電するジェネレーターを具備し、前記制御手段が、前記ジェネレーターの発電電力を前記走行用バッテリー及び前記電熱線に供給する制御を実施することが好ましい。
【0009】
態様5.上記の態様3又は4において、前記駆動用エンジンの排気管が、前記車両の下面に配索されるとともに、前記電熱線が、前記車両の下面視において前記排気管を避けて面状の領域を覆うように蛇行して配索されることが好ましい。
態様6.上記の態様1を含む態様において、前記検出手段が、前記スタックの検出に際し、車輪の車体に対する距離が所定距離以上であることを判定することが好ましい。
【0010】
態様7.上記の態様1を含む態様において、前記検出手段が、前記スタックの検出に際し、駆動輪の回転数の増加を判定することが好ましい。
態様8.上記の態様1を含む態様において、前記検出手段が、前記スタックの検出に際し、前記車両の停止を判定することが好ましい。
態様9.上記の態様1を含む態様において、前記検出手段が、前記スタックの検出に際し、前記車両の下面側の温度が所定温度未満であることを判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示の車載融雪装置によれば、車両の雪道でのスタックが検出された場合に、路面と対向するように車両の下面に配索される電熱線に通電する制御が実施されるため、車両の下面に堆積している雪を効率よく溶かすことができる。これにより、車両の下面と車輪下の路面(轍の底面)との離隔距離を短縮でき、車輪を路面に接触させることができる。したがって、簡素な構成で雪道におけるスタックを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の車載融雪装置が適用された車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す車両の下面構造を説明するための模式図である。
【
図3】
図1に示す制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】制御装置による制御の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図5】制御装置による制御の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示の車載融雪装置は、以下の実施例に示す車両10に適用される。この車両10には、少なくとも車両10が走行する路面と対向するように車両10の下面に配索された電熱線7が設けられる。電熱線7に通電される電力は、車両10に搭載された蓄電装置から供給される。蓄電装置の具体例としては、補機バッテリー(12Vバッテリー)や車両10の走行用バッテリー,汎用蓄電池,燃料電池等が挙げられる。
【0014】
開示の車載融雪装置を適用するのに好適な車両10としては、例えば駆動用モーター及び走行用バッテリーを具備する電動車両が挙げられる。この場合、電熱線7の電力源として、駆動用モーターを駆動するための電力が蓄えられる走行用バッテリーを利用可能である。また、他の好適な車両10としては、駆動用エンジンとエンジン動力を利用して発電するジェネレーターとを具備するハイブリッド車両が挙げられる。この場合、ジェネレーターの発電電力を利用した電熱線7への通電が可能である。
【0015】
以下の実施例で説明される車両10は、駆動用モーター,駆動用エンジン,ジェネレーター,走行用バッテリーを具備するプラグインハイブリッド自動車(PHEV,Plug-in Hybrid Electric Vehicle)である。プラグインハイブリッド自動車とは、走行用バッテリーに対する外部充電、又は、走行用バッテリーから各種電化製品への外部給電が可能なハイブリッド自動車を意味する。ここでいうプラグインハイブリッド自動車には、外部充電設備からの電力が送給される充電ケーブルを差し込むための充電口(インレット)や、外部給電用のコンセント(アウトレット)が設けられる。
【実施例0016】
[1.構成]
図1は、実施例としての車載融雪装置が適用される車両10の構成を示すブロック図である。この車両10は、駆動源としてのモーター1(駆動用モーター)及びエンジン2(駆動用エンジン)と、エンジン2の駆動軸に接続されるジェネレーター3と、モーター1及びジェネレーター3に接続されるインバーター4及びバッテリー5(走行用バッテリー)とを備えるハイブリッド車両(電動車両)である。
【0017】
モーター1は、例えば三相交流式の同期型電動機兼発電機である。モーター1は、バッテリー5の電力やジェネレーター3の発電電力を用いて車両10を走行させる機能と、回生発電によりバッテリー5に充電する機能とを兼ね備える。モーター1の駆動軸は、車両10の駆動輪に連結される。モーター1と駆動輪とを繋ぐ動力伝達経路上には、図示しない変速機構や差動機構が介装されうる。モーター1の個数は不問であり、例えば単一のモーター1に前輪及び/又は後輪を駆動させてもよいし、複数のモーター1を用いて前輪及び後輪を個別に駆動するような装置構成にしてもよい。
【0018】
エンジン2は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関である。エンジン2の排気管6は、車両10の下面に沿って車両前後方向に配索される。また、ジェネレーター3は、例えば三相交流式の同期型電動機兼発電機である。ジェネレーター3は、エンジン2を始動させる際にクランキングする電動機としての機能と、始動後のエンジン2によって駆動されて発電する発電機としての機能とを兼ね備える。ジェネレーター3の発電電力は、モーター1の駆動やバッテリー5の充電に用いられる。エンジン2とジェネレーター3とを繋ぐ動力伝達経路上には、図示しない変速機構が介装されうる。
【0019】
バッテリー5は、数百ボルトの高電圧直流電流を供給しうる二次電池であり、例えばリチウムイオン二次電池,ニッケル水素電池等である。バッテリー5は、モーター1及びジェネレーター3に対し、インバーター4を介して接続される。インバーター4は、バッテリー5側の直流電力とモーター1及びジェネレーター3側の交流電力とを変換するための電力変換装置である。インバーター4には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などのスイッチ素子を含むインバーター回路が内蔵される。
【0020】
インバーター4の作動状態(スイッチ素子のオンオフのタイミングや駆動周波数)を制御することで、モーター1及びジェネレーター3の出力(トルク)が制御される。インバーター4の作動状態は、制御装置20によって制御される。制御装置20は、少なくともモーター1及びジェネレーター3の出力(トルク)を制御する機能を持った電子制御装置(コンピューター,ECU,Electronic Control Unit)である。制御装置20の内部には、例えばプロセッサー(中央処理装置),メモリ(メインメモリ),記憶装置(ストレージ),インタフェース装置などが内蔵される。制御装置20が実施する制御の内容(制御プログラム)はメモリに保存され、その内容がプロセッサーに適宜読み込まれることによって実行される。
【0021】
車両10は、走行モード(駆動力の伝達経路及び使用する駆動力の組み合わせについての制御様式)として、エンジン2が停止した状態でモーター1を使用して走行するEVモードと、モーター1及びエンジン2を併用して(場合によってはエンジン2のみを使用して)走行するハイブリッドモードとを有する。EVモードは、比較的低速な走行状態で自動的に選択される走行モードであり、ハイブリッドモードは、比較的高速な走行状態で自動的に選択される走行モードである。これらの走行モードの具体的な切り替え条件については公知の各種条件を適用可能である。
【0022】
車両10の下部には、車両10が雪道でスタックした場合に、車両10の下面側にある雪を溶かすための電熱線7が設けられる。電熱線7は、車両10が走行する路面と対向するように、車両10の下面に配索される。
図1に示すように、電熱線7はバッテリー5とインバーター4とを接続する直流回路から分岐するようにインバーター4に対して並列に設けられる。また、電熱線7の配索経路上には、電熱線7の通電状態を断接制御するためのスイッチ8が介装される。スイッチ8の作動状態は制御装置20によって制御される。
【0023】
電熱線7の配索レイアウトを
図2に例示する。電熱線7は、車両10の下面視において、エンジン2の排気管6を避けて配索されるとともに、面状の領域を覆うように蛇行して配索される。
図2に示すエンジン2の排気管6は、例えば車両10の車幅方向の中央付近において、車両前後方向に延在するように配置されている。排気管6の後端部は、車両10の下面後部に配置されたマフラー16に接続される。また、車両10の下面は、平板状の下面プレート17によって覆われており、この下面プレート17には排気管6を車両10の下方に露出させるスリット状の切り込みが形成されている。排気管6は、このスリット状の切り込みに対応するレイアウトで配索される。
【0024】
電熱線7は、下面プレート17の板面に沿ってその下面側に配索されている。なお、下面プレート17は、熱伝導率の高い材質で形成されることが好ましい。また、下面プレート17は、排気管6の保護性を高めるべく、排気管6の下端部よりも下方においてほぼ水平に配設されることが好ましい。この場合、電熱線7が排気管6よりも下方(すなわち、排気管6よりも路面に近い位置)に配索されることになり、車両10の下面側に存在する雪を電熱線7で効率よく溶かしやすくなる。
【0025】
本実施例の制御装置20は、車両10が雪道でスタック状態に陥った場合に、そのスタック状態を解消するための融雪制御を実施する制御手段としての機能を持つ。この融雪制御を実施するにあたり、制御装置20は各種装置で得られる情報に基づいて、エンジン2やジェネレーター3,インバーター4,スイッチ8等の作動状態を制御する。また、制御装置20には、図示しない車載通信網を介して、タイヤ位置センサー11,下面温度センサー12,アクセル開度センサー13,車輪速センサー14が接続される。制御装置20は、これらの各種センサー11~14で取得された情報に基づいて融雪制御を実施する。なお、これらの各種センサー11~14は、制御装置20との協働により、車両10の雪道でのスタックを検出する検出手段として機能する。
【0026】
タイヤ位置センサー11は、車輪15の路面からの浮き上がり状態を検出するためのセンサーであり、車体から車輪15の車軸までの距離を検出するものである。例えば、タイヤ位置センサー11は、車輪15とサイドメンバーとの間を接続するサスペンションの伸縮量に基づいて、車体から車輪15の車軸までの距離を検出する。この距離は、例えば車両10の下面が路面上の積雪に接触した状態で車輪15が路面から離隔すると、極端に大きくなる。したがって、この距離が所定距離以上である場合には、車輪15が路面から浮き上がった状態であると判断することができる。タイヤ位置センサー11は、少なくとも駆動輪に設けられる。
【0027】
下面温度センサー12は、車両10の下面側の温度を検出するセンサーである。車両10が雪道を走行しているときには、ここで検出された温度が氷点に近い値となる。したがって、ここで検出された温度に基づいて、車両10が雪道を走行しているか否かを判断することができる。下面温度センサー12は、例えば
図2に示すように、車両10の下部における複数箇所に設けられる。アクセル開度センサー13は、アクセルペダルの踏み込み量を検出するセンサーである。車輪速センサー14は、車輪15の角速度を検出するセンサーである。ここで検出される角速度に基づいて車両10の車速(移動速度)やオド値(オドメーター表示値,累積移動距離)が算出される。車輪速センサー14は、例えば四輪の各々に設けられる。
【0028】
図3は、制御装置20の具体的な構成を例示するブロック図である。この制御装置20には、PHEV-ECU21(車両制御装置),エンジンECU22(エンジン制御装置),モーターECU23(モーター制御装置),BMU24(Battery Management Unit,バッテリー管理装置)が含まれる。これらのECU21~24は、図示しない車載通信網を介して互いに通信可能に接続される。
【0029】
PHEV-ECU21は、車両10に搭載される他の全ての電子制御装置を総合的に管理する電子制御装置である。ここでは、パワートレーンに含まれる各種装置の作動状態や車両10の走行状態等が把握され、各種の電子制御装置による各種装置の作動状態が統括管理される。車両10の走行モードは、車両10の走行状態や運転者の操作入力等に基づいてPHEV-ECU21で選択,設定される。また、本実施例のスイッチ8の作動状態は、PHEV-ECU21又はBMU24によって制御される。
【0030】
エンジンECU22は、エンジン2の作動状態を専門的に制御する電子制御装置である。モーターECU23は、モーター1,ジェネレーター3,インバーター4の作動状態を専門的に制御する電子制御装置である。モーター1及びジェネレーター3の出力は、モーターECU23によって制御される。BMU24は、バッテリー5の作動状態を制御する電子制御装置である。ここでは、バッテリー5の電圧,電流,温度等が計測されるとともに、充電率(SOC,State Of Charge),劣化度(SOH,State Of Health),最大出力等が算出される。
【0031】
[2.制御]
制御装置20で実施される融雪制御について詳述する。本実施例の融雪制御は、車両10の下面に堆積する雪を溶かす制御であり、少なくとも車両10が雪道でスタックした場合に開始される。雪道でのスタックの有無を判断するための各種条件を以下に例示する。本実施例では、開始条件1,2がともに成立し、かつ開始条件3,4の何れかが成立する場合に融雪制御が開始される。
【0032】
開始条件1.車両10の走行モードがEVモードである。
開始条件2.車両10の下面側の温度が所定温度未満である。
開始条件3.車輪15(駆動輪)が路面から浮き上がった状態である。
開始条件4.アクセル操作に対して車両10が移動不能である。
開始条件5.車両10の現在位置が積雪地帯に含まれる。
開始条件6.車両10の現在位置で雪が降っている。
開始条件7.バッテリー5の充電率が所定充電率以上である。
【0033】
開始条件1は、PHEV-ECU21で設定されている走行モードに基づいて判定可能である。開始条件1の判定により、エンジン2の排気熱が期待できない状況における車両10の下面の融雪を促進できる。開始条件2~4は、上記の各種センサー11~14で検出された情報に基づいて判定可能である。開始条件2に含まれる所定温度は、例えば氷点に近い温度であって、路面上における積雪の存在が推定される温度に設定される。開始条件3は、例えばタイヤ位置センサー11の検出値に基づいて車体から車輪15の車軸までの距離を算出し、その距離が所定距離以上であることを以て判定可能である。あるいは、その距離が所定距離以上である状態が所定時間以上継続されたことを以て判定可能である。
【0034】
開始条件5,6は、例えば図示しないカーナビゲーション装置で計測された車両10の位置情報や、インターネット経由で取得される気象情報に基づいて判定可能である。開始条件7は、BMU24で算出された充電率に基づいて判定可能である。なお、上記以外の開始条件として、エンジン2やジェネレーター3の故障の有無,バッテリー5の劣化度,エンジン2に供給可能な燃料量等を確認してもよい。
【0035】
また、融雪制御は、少なくとも車両10のスタックが解消された場合に終了する。ただし、融雪制御の実施時間が過剰に長くなった場合には、バッテリー5の電力の過放電や溶融しにくい氷雪の存在等の可能性を考慮して、融雪制御を停止させてもよい。融雪制御の終了条件を以下に例示する。本実施例では、終了条件1~3の何れかが成立する場合に融雪制御が終了する。
【0036】
終了条件1.融雪制御の実施時間が所定時間以上になった。
終了条件2.車輪15(駆動輪)が路面に接地した状態になった。
終了条件3.アクセル操作に対して車両10が移動可能になった。
終了条件4.バッテリー5の充電率が所定第二充電率未満になった。
【0037】
終了条件1は、図示しないタイマーで計時される融雪制御の実施時間に基づいて判定可能である。終了条件1に含まれる所定時間は、例えば数分~数十分の範囲内で設定される。終了条件2,3は、上記の各種センサー11,13,14で検出された情報に基づいて判定可能であり、終了条件4は、BMU24で算出された充電率に基づいて判定可能である。終了条件4の所定第二充電率は、開始条件7の所定充電率と同一の値であってもよいし、所定充電率よりも低い値であってもよい。なお、上記以外の終了条件として、エンジン2やジェネレーター3の故障の有無,バッテリー5の劣化度,エンジン2に供給可能な燃料量等を確認してもよい。
【0038】
融雪制御には、少なくともバッテリー5の電力で電熱線7に通電することで、車両10の下面側の雪を溶かす制御が含まれる。好ましくはこれに加えて、エンジン2を作動させる制御(排気熱を利用して車両10の下面側の雪を溶かす制御)や、ジェネレーター3の発電電力で電熱線7に通電する制御(ジェネレーター3の発電電力を利用して車両10の下面側の雪を溶かす制御)が含まれる。エンジン2の作動状態は、エンジンECU22によって制御され、ジェネレーター3の作動状態は、モーターECU23によって制御される。また、電熱線7のスイッチ8の作動状態は、PHEV-ECU21やBMU24によって制御される。
【0039】
[3.フローチャート]
図4,
図5は、融雪制御の手順を例示するフローチャートである。
図4に示すフローは融雪制御の開始条件の判定に係るものであり、車両10のメインスイッチ(主電源)がオンである状態において、所定の周期で繰り返し実行される。
図5に示すフローは融雪制御の終了条件の判定に係るものであり、融雪制御が開始された後に、
図4に示すフローの代わりに所定の周期で繰り返し実行される。
【0040】
図4のステップA1では、車両10の走行モードがEVモードであるか否かが判定される。ここで、走行モードがEVモードである場合にはステップA2に進み、EVモードでない場合にはこの制御周期での制御が終了する。ステップA2では、アクセル開度センサー13の検出情報に基づき、アクセル操作の有無が判定される。ここで、アクセル操作があればステップA3に進み、アクセル操作がなければステップA5に進む。
【0041】
ステップA3では、駆動輪に関するタイヤ回転数の今回値(最新値)が前回値(過去の演算周期で算出された値)よりも大きいか否かが判定される。ここでは、アクセル操作によって駆動輪が回転している状態であるか否かが判定される。ここで、駆動輪が回転している状態であればステップA4に進み、回転していない状態(例えば、何らかの理由により駆動輪が拘束された状態)であればこの制御周期での制御が終了する。
【0042】
ステップA4では、車両10がスタック中であるか否かが判定される。例えば、車輪速センサー14の検出値に基づいて算出されるオド値の今回値が前回値に等しいか否か(オド値が一定であるか否か)が判定される。あるいは、車速がほぼ0であるか否かが判定される。ここで、車両10がスタック中であると判断されればステップA6に進み、車両10がスタック中ではないと判断されればこの制御周期での制御が終了する。
【0043】
アクセル操作がない場合に実施されるステップA5では、駆動輪の浮き上がりが検出されたか否かが判定される。例えば、タイヤ位置センサー11の検出値に基づいて算出される車体から車輪15の車軸までの距離が所定距離以上であるか否かが判定される。あるいは、その距離が所定距離以上である状態が所定時間以上継続されたか否かが判定される。ここで、駆動輪の浮き上がりが検出されればステップA6に進み、検出されなければこの制御周期での制御が終了する。
【0044】
ステップA6では、車両10の下面側の温度が所定温度未満であるか否かが判定される。ステップA2~A5が車両10のスタックを把握するためのステップであるのに対し、ステップA6は、そのスタックが雪道でのスタックであることを把握するためのステップである。ここで、下面側の温度が所定温度未満であればステップA7に進む。一方、所定温度以上であれば、雪道以外でのスタックが発生しているものと判断され、この制御周期での制御が終了する。
【0045】
ステップA7では、スイッチ8を接続するための制御信号がPHEV-ECU21又はBMU24から出力されて電熱線7が通電され、融雪制御が開始される。このとき、図示しないタイマーによる計時が開始され、融雪制御の実施時間がカウントされる。続くステップA8では、エンジン2を始動させるための制御信号がエンジンECU22から出力され、エンジン2が駆動される。また、ジェネレーター3及びインバーター4の作動状態がモーターECU23によって制御され、ジェネレーター3の発電電力がインバーター4とバッテリー5とを繋ぐ直流回路へと導入される。これにより、ジェネレーター3の発電電力がバッテリー5や電熱線7に供給される。
【0046】
融雪制御が開始されると、
図5に示すフローが開始される。
図5のステップB1では、融雪制御の実施時間が所定時間未満であるか否かが判定される。ここで、実施時間が所定時間未満である場合にはステップB2に進む。実施時間が所定時間以上である場合には、融雪制御の終了条件が成立するものと判断され、ステップB6に進む。このステップB6では、スイッチ8を切断するための制御信号がPHEV-ECU21又はBMU24から出力されて電熱線7への通電が停止される。続くステップB7では、エンジン2を停止させるための制御信号がエンジンECU22から出力され、エンジン2が非作動の状態となり、ジェネレーター3での発電も停止する。これにより、融雪制御が終了する。
【0047】
ステップB2では、アクセル開度センサー13の検出情報に基づき、アクセル操作の有無が判定される。ここで、アクセル操作があればステップB3に進み、アクセル操作がなければステップB5に進む。
ステップB3では、ステップA3と同様に、アクセル操作によって駆動輪が回転している状態であるか否かが判定される。ここで、駆動輪が回転している状態であればステップB4に進み、回転していない状態であればステップB8に進んで融雪制御が継続される。
【0048】
ステップB4では、車両10のスタックが解消されたか否かが判定される。例えば、車輪速センサー14の検出値に基づいて算出されるオド値の今回値が前回値よりも大きいか否かが判定される。あるいは、車速が正の所定速度以上であるか否かが判定される。ここで、車両10のスタックが解消されたと判断されれば、融雪制御を終了させるためのステップB6に進む。一方、車両10のスタックが解消されていないと判断されればステップB8に進み、融雪制御が継続される。
【0049】
ステップB5では、駆動輪の接地が検出されたか否かが判定される。例えば、タイヤ位置センサー11の検出値に基づいて算出される車体から車輪15の車軸までの距離が所定距離未満(通常値)であるか否かが判定される。あるいは、その距離が所定距離未満(通常値)である状態が所定時間以上継続されたか否かが判定される。ここで、駆動輪の接地が検出されれば、融雪制御を終了させるためのステップB6に進む。一方、駆動輪の接地が検出されなければステップB8に進み、融雪制御が継続される。
【0050】
[4.効果]
(1)上記の実施例に係る車載融雪装置は、電熱線7と検出手段(各種センサー11~14及び制御装置20)と制御手段(制御装置20)とを備える。電熱線7は、車両10が走行する路面と対向するように車両10の下面に配索される。検出手段は、車両10の雪道でのスタックを検出する。制御手段は、車両10の雪道でのスタックが検出された場合に電熱線7に通電する制御を実施する。
【0051】
上記の実施例では、車両10の雪道でのスタックが検出された場合に、路面と対向するように車両10の下面に配索される電熱線7に通電する制御が実施されるため、車両10の下面に堆積している雪を効率よく溶かすことができる。これにより、車両10の下面と車輪15の下の路面(轍の底面)との離隔距離を短縮でき、車輪15を路面に接触させる(接地させる)ことができる。したがって、簡素な構成で雪道における車両10のスタックを解消でき、車両10の利便性を向上させることができる。
【0052】
(2)上記の車載融雪装置は、
図1に示すように、駆動用モーター(モーター1)及び走行用バッテリー(バッテリー5)を具備する電動車両(車両10)に適用されうる。また、制御手段は、走行用バッテリーの電力を電熱線7に供給する制御を実施しうる。このような構成により、車両10のスタック時には消費されない走行用バッテリーの電力を利用して融雪を促進できる。また、走行用バッテリーは、例えば補機バッテリーと比較して大電流を出力できるため、短時間で効率的に雪道スタックを解消でき、車両10の利便性をさらに向上させることができる。
【0053】
(3)上記の車載融雪装置は、
図1に示すように、駆動用エンジン(エンジン2)を具備するハイブリッド車両(車両10)に適用されうる。また、制御手段は、電熱線7に通電する制御とともに駆動用エンジンを始動させる制御を実施しうる。このような構成により、駆動用エンジンの排気管6の熱を利用して効率的に融雪を促進できる。したがって、短時間で効率的に雪道スタックを解消でき、車両10の利便性をさらに向上させることができる。
【0054】
(4)上記の車載融雪装置は、
図1に示すように、駆動用エンジンの動力を利用して発電するジェネレーター3を具備するハイブリッド車両(車両10)に適用されうる。また、制御手段は、ジェネレーター3の発電電力を走行用バッテリー及び電熱線7に供給する制御を実施しうる。このような構成により、ジェネレーター3の発電電力を利用して、短時間で効率的に雪道スタックを解消できる。また、走行用バッテリーの電力を温存できるため、例えば雪道スタックの解消後における走行可能距離の減少を防止でき、車両10の走行性能を確保できる。したがって、車両10の利便性をさらに向上させることができる。
【0055】
(5)上記の実施例では、駆動用エンジンの排気管6が車両10の下面に配索される。また、電熱線7は
図2に示すように、車両10の下面視において排気管6を避けて面状の領域を覆うように蛇行して配索される。このような構成により、車両10の下面における排気管6以外の領域を電熱線7で効率的に加熱できる。また、排気管6の直下方には電熱線7を設けないようにすることで、排気熱を効率よく雪面に伝達できる。さらに、車両10の下面の全体に電熱線7を配索した場合と比較して、電熱線7の長さ(総延長距離)を短縮でき、省エネ効果を高めることができる。
【0056】
(6)上記の検出手段は、スタックの検出に際し、車輪15の車体に対する距離が所定距離以上であることを判定しうる。この判定は、例えばタイヤ位置センサー11で検出された車体から車輪15の車軸までの距離と予め設定された所定距離との比較によってなされる。このような構成により、車輪15が路面から浮き上がった状態を精度よく把握することができ、雪道スタックの検出精度を改善できる。
【0057】
(7)上記の検出手段は、スタックの検出に際し、駆動輪の回転数の増加を判定しうる。この判定は、例えば
図4のステップA3に示すように、駆動輪に関するタイヤ回転数の今回値と前回値との比較によってなされる。このような構成により、スタック時のアクセル操作による駆動輪のスリップ状態(すなわち、アクセルペダルを踏み込んでも車両10が前進しない状態であること)を精度よく把握することができ、雪道スタックの検出精度を改善できる。
【0058】
(8)上記の検出手段は、スタックの検出に際し、車両10の停止を判定しうる。この判定は、例えば
図4のステップA4に示すように、オド値の今回値と前回値との比較によってなされる。このような構成により、車両10がスタック(停止)していることを精度よく把握することができ、雪道スタックの検出精度を改善できる。
【0059】
(9)上記の検出手段は、スタックの検出に際し、車両10の下面側の温度が所定温度未満であることを判定しうる。このような構成により、積雪による車両10のスタック(すなわち、泥道や砂利道でのスタックではないこと)を精度よく把握することができ、雪道スタックの検出精度を改善できる。
【0060】
[5.その他]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は必要に応じて取捨選択でき、あるいは、適宜組み合わせることができる。
【0061】
上記の実施例では、車両10の走行モードがEVモードであるときに実施される融雪制御について詳述したが、他の走行モード時に走行モードを実施してもよい。融雪制御の開始条件や終了条件は適宜変更可能である。上記の実施例では、四つのセンサー11~14を例示して制御装置20との協働により検出手段として機能する場合を説明したが、センサー11~14の一部を検出手段として機能させてもよい。少なくとも、車両10の雪道でのスタックが検出された場合に融雪制御を実施することで、車両10の下面に堆積している雪を効率よく溶かすことができ、車両10のスタックを解消できる。
【0062】
また、上記の実施例に係る融雪制御では、電熱線7への通電だけでなくエンジン2を始動させてジェネレーター3に発電させ、その発電電力を利用して雪を効率よく溶かしているが、エンジン2の始動やジェネレーター3の発電は省略してもよい。また、電熱線7への通電に使用される電力として、バッテリー5(走行用バッテリー)の電力を用いてもよいし、図示しない補機バッテリー(12Vバッテリー)や燃料電池等の電力を用いてもよい。電熱線7への通電に係る電力の供給源は適宜変更可能である。