(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169078
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】地物特定装置、地物特定方法、および地物特定用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241128BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241128BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T7/00 350B
G06T7/00 650A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086267
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】高野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】万代 悠作
【テーマコード(参考)】
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB20
5H181CC04
5H181FF05
5H181LL02
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA04
5L096EA43
5L096FA52
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA51
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】車線分離設備の種別を適切に特定する。
【解決手段】地物特定装置は、道路上の各位置に関連づけて、当該位置が対面通行区間に含まれるか否かを表す通行情報と、当該位置において前記道路を走行方向別に分離する車線分離設備の種別を表す車線分離設備情報とを記憶部に記憶し、道路上の所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられているか否か、および、通行情報に基づいて所定の位置が対面通行区間に含まれるか否かに応じて、車線分離設備を撮影した画像に基づいて車線分離設備の種別を特定可能な第1のアルゴリズム、または、車線分離設備のうち分離ポールおよび分離ワイヤロープを第1のアルゴリズムよりも高い確からしさで特定可能な第2のアルゴリズムにより、所定の位置において車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の各位置に関連づけて、当該位置が対面通行区間に含まれるか否かを表す通行情報と、当該位置において前記道路を走行方向別に分離する車線分離設備が、所定間隔に配置された複数のポールであってワイヤロープが設置されていない分離ポールか、所定間隔に配置された複数のポールに前記ワイヤロープが設置された分離ワイヤロープか、またはそれ以外かを少なくとも表す車線分離設備情報とを記憶する地図記憶部と、
前記道路上の所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれないと判定される場合、前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて前記車線分離設備の種別を特定可能な第1のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定し、前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれると判定される場合、前記車線分離設備のうち前記分離ポールおよび前記分離ワイヤロープを前記第1のアルゴリズムよりも高い確からしさで特定可能な第2のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する特定部と、
を備える、地物特定装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記第1のアルゴリズムとして、前記画像を予め学習された検出器に入力することで前記画像から物体を検出する検出処理と、検出された物体に基づいて前記車線分離設備の種別を特定する第1特定処理とを少なくとも実行し、前記第2のアルゴリズムとして、前記検出処理と、前記検出処理により前記ポールが複数検出され、かつ、前記複数検出されたポールのうち隣接するポールの一方から他方に向かう線が3本以上検出された場合、前記3本以上の線のそれぞれを前記隣接するポールの一方から他方まで連続するように延長し、延長された前記3本以上の線のうち隣接する線の間隔の差異が所定の誤差閾値より小さい場合、前記車線分離設備を前記分離ワイヤロープとして特定する第2特定処理とを少なくとも実行する、請求項1に記載の地物特定装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられている場合、前記検出処理と、前記第1特定処理と、前記第1特定処理で特定された前記車線分離設備の種別が当該車線分離設備情報に表される種別と同一か否かを判定する種別判定処理とを含む第3のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する、請求項2に記載の地物特定装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられている場合、前記検出処理と、前記第1特定処理と、前記検出処理で検出された物体が、前記所定の位置に関連づけられた前記車線分離設備情報に表された種別の車線分離設備の標準的な外観を有しているか否かを判定する外観判定処理とを含む第3のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する、請求項2に記載の地物特定装置。
【請求項5】
道路上の各位置に関連づけて、当該位置が対面通行区間に含まれるか否かを表す通行情報と、当該位置において前記道路を走行方向別に分離する車線分離設備が、所定間隔に配置された複数のポールであってワイヤロープが設置されていない分離ポールか、所定間隔に配置された複数のポールに前記ワイヤロープが設置された分離ワイヤロープか、またはそれ以外かを少なくとも表す車線分離設備情報とを記憶部に記憶し、
前記道路上の所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれないと判定される場合、前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて前記車線分離設備の種別を特定可能な第1のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定し、
前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれると判定される場合、前記車線分離設備のうち前記分離ポールおよび前記分離ワイヤロープを前記第1のアルゴリズムよりも高い確からしさで特定可能な第2のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する、
ことを含む地物特定方法。
【請求項6】
道路上の所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記道路上の位置ごとに当該位置が対面通行区間に含まれるか否かを表す通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれないと判定される場合、車線分離設備を撮影した画像に基づいて前記車線分離設備の種別を特定可能な第1のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定し、前記車線分離設備情報は、前記道路上の各位置について、当該位置において前記道路を走行方向別に分離する前記車線分離設備が、所定間隔に配置された複数のポールであってワイヤロープが設置されていない分離ポールか、所定間隔に配置された複数のポールに前記ワイヤロープが設置された分離ワイヤロープか、またはそれ以外かを少なくとも表す情報であることと、
前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれると判定される場合、前記車線分離設備のうち前記分離ポールおよび前記分離ワイヤロープを前記第1のアルゴリズムよりも高い確からしさで特定可能な第2のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定することと、
をコンピュータに実行させる地物特定用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像に表された地物の種類を特定する地物特定装置、地物特定方法、および地物特定用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたセンサにより取得される、車両の周辺の地物を表す周辺画像を車両から収集し、周辺画像から検出された地物の情報を用いて、地物を高い精度で表す高精度地図を生成する地図生成装置が知られている。生成された高精度地図は、車両の自動運転制御に使用される。地物には、車両周辺の道路を走行方向別に分離する車線分離設備が含まれる。
【0003】
特許文献1に記載の地図生成装置は、目標道路に対応するストリートビュー画像から候補分離帯情報を検出し、予め設定された修正ポリシーに基づいて候補分離帯情報を修正する。
【0004】
特許文献1に記載の地図データ更新システムでは、車載端末が地図更新サーバから更新用の地図データを取得して車載端末の地図データを更新する。一時的な道路変化開始後の更新データがある状態では、地図更新サーバは、更新データを一時的に利用することを指示するとともに更新データを配信する。一時的な道路変化終了後の更新データがある状態では、地図更新サーバは、一時的な道路変化開始前の地図データを利用することを指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車線分離設備は、例えば分離ポール、分離ワイヤロープ、ガードレールといった種別を有する。分離ポールは、所定間隔に配置された複数のポールであって、ワイヤロープは設置されていない。分離ワイヤロープは、所定間隔に配置された複数のポールにワイヤロープが設置されている。ガードレールは、所定間隔に配置された複数のポールにレール状の鋼材が設置されている。暫定供用区間などの対面通行区間では、車線分離設備として、分離ポールまたは分離ワイヤロープが設置されることが多い。
【0007】
このような対面通行区間において、分離ポールは、分離ワイヤロープやガードレールと比較して、事故発生時に車両が対向車線側に転出することを防ぎにくい。対面通行区間では車線分離設備の種別を適切に識別し、車線分離設備が分離ポールである場合には、例えば車両がより対向車線側に転出しにくい走行制御により、車線分離設備が分離ポールでない場合と同様の安全性を保つことが好ましい。
【0008】
周辺画像から車線分離設備の種別、特に分離ポールであるか分離ワイヤロープであるかを特定するには、ワイヤロープの有無を検出する必要がある。しかし、ワイヤロープは一般に直径18mm程度の細長い形状であるため、画像から適切に検出するのは難しい。
【0009】
本開示は、車線分離設備の種別を適切に特定することができる地物特定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0011】
(1)道路上の各位置に関連づけて、当該位置が対面通行区間に含まれるか否かを表す通行情報と、当該位置において前記道路を走行方向別に分離する車線分離設備が、所定間隔に配置された複数のポールであってワイヤロープが設置されていない分離ポールか、所定間隔に配置された複数のポールに前記ワイヤロープが設置された分離ワイヤロープか、またはそれ以外かを少なくとも表す車線分離設備情報とを記憶する地図記憶部と、
前記道路上の所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれないと判定される場合、前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて前記車線分離設備の種別を特定可能な第1のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定し、前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれると判定される場合、前記車線分離設備のうち前記分離ポールおよび前記分離ワイヤロープを前記第1のアルゴリズムよりも高い確からしさで特定可能な第2のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する特定部と、
を備える、地物特定装置。
【0012】
(2)前記特定部は、前記第1のアルゴリズムとして、前記画像を予め学習された検出器に入力することで前記画像から物体を検出する検出処理と、検出された物体に基づいて前記車線分離設備の種別を特定する第1特定処理とを少なくとも実行し、前記第2のアルゴリズムとして、前記検出処理と、前記検出処理により前記ポールが複数検出され、かつ、前記複数検出されたポールのうち隣接するポールの一方から他方に向かう線が3本以上検出された場合、前記3本以上の線のそれぞれを前記隣接するポールの一方から他方まで連続するように延長し、延長された前記3本以上の線のうち隣接する線の間隔の差異が所定の誤差閾値より小さい場合、前記車線分離設備を前記分離ワイヤロープとして特定する第2特定処理とを少なくとも実行する、上記(1)に記載の地物特定装置。
【0013】
(3)前記特定部は、前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられている場合、前記検出処理と、前記第1特定処理と、前記第1特定処理で特定された前記車線分離設備の種別が当該車線分離設備情報に表される種別と同一か否かを判定する種別判定処理とを含む第3のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する、上記(2)に記載の地物特定装置。
【0014】
(4)前記特定部は、前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられている場合、前記検出処理と、前記第1特定処理と、前記検出処理で検出された物体が、前記所定の位置に関連づけられた前記車線分離設備情報に表された種別の車線分離設備の標準的な外観を有しているか否かを判定する外観判定処理とを含む第3のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する、上記(2)または(3)に記載の地物特定装置。
【0015】
(5)道路上の各位置に関連づけて、当該位置が対面通行区間に含まれるか否かを表す通行情報と、当該位置において前記道路を走行方向別に分離する車線分離設備が、所定間隔に配置された複数のポールであってワイヤロープが設置されていない分離ポールか、所定間隔に配置された複数のポールに前記ワイヤロープが設置された分離ワイヤロープか、またはそれ以外かを少なくとも表す車線分離設備情報とを記憶部に記憶し、
前記道路上の所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれないと判定される場合、前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて前記車線分離設備の種別を特定可能な第1のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定し、
前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれると判定される場合、前記車線分離設備のうち前記分離ポールおよび前記分離ワイヤロープを前記第1のアルゴリズムよりも高い確からしさで特定可能な第2のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する、
ことを含む地物特定方法。
【0016】
(6)道路上の所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記道路上の位置ごとに当該位置が対面通行区間に含まれるか否かを表す通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれないと判定される場合、車線分離設備を撮影した画像に基づいて前記車線分離設備の種別を特定可能な第1のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定し、前記車線分離設備情報は、前記道路上の各位置について、当該位置において前記道路を走行方向別に分離する前記車線分離設備が、所定間隔に配置された複数のポールであってワイヤロープが設置されていない分離ポールか、所定間隔に配置された複数のポールに前記ワイヤロープが設置された分離ワイヤロープか、またはそれ以外かを少なくとも表す情報であることと、
前記所定の位置に前記車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、前記通行情報に基づいて前記所定の位置が前記対面通行区間に含まれると判定される場合、前記車線分離設備のうち前記分離ポールおよび前記分離ワイヤロープを前記第1のアルゴリズムよりも高い確からしさで特定可能な第2のアルゴリズムにより、前記所定の位置において前記車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定することと、
をコンピュータに実行させる地物特定用コンピュータプログラム。
【0017】
本開示にかかる地物特定装置によれば、車線分離設備の種別を適切に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】車線分離設備の第1の例を説明する模式図である。
【
図2】車線分離設備の第2の例を説明する模式図である。
【
図3】地物特定装置が搭載される車両の概略構成図である。
【
図5】地物特定装置が有するプロセッサの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、車線分離設備の種別を適切に特定することができる地物特定装置について詳細に説明する。地物特定装置は、道路上の各位置に関連づけて、通行情報と車線分離設備情報とを地図記憶部に記憶している。
【0020】
通行情報は、道路上の当該位置が対面通行区間に含まれるか否かを表す情報である。車線分離情報は、道路上の当該位置において道路を走行方向別に分離する車線分離設備が、分離ポールか、分離ワイヤポールか、またはそれ以外かを少なくとも表す情報である。分離ポールは、所定間隔に配置された複数のポールであってワイヤロープが設置されていない車線分離設備である。分離ワイヤロープは、所定間隔に配置された複数のポールにワイヤロープが設置された車線分離設備である。
【0021】
図1は車線分離設備の第1の例を説明する模式図であり、
図2は車線分離設備の第2の例を説明する模式図である。
【0022】
図1には、車線区画線LL11およびLL12に区画された車線L11と、車線区画線LL13およびLL14に区画され車線L11と走行方向が異なる車線L12とを有する道路が表されている。車線L11およびL12は、ポールP11-P15、および、ポールP11-P15に設置されたワイヤロープWR1-WR3により、走行方向別に分離される。
図1は、車線L11およびL12を分離する車線分離設備である標準的な分離ワイヤロープを表す。標準的な分離ワイヤロープでは、ポールP11-P15の高さは例えば約1000mmであり、例えば4000mm間隔で設置される。
【0023】
図2には、車線区画線LL21およびLL22に区画された車線L21と、車線区画線LL23およびLL24に区画され車線L21と走行方向が異なる車線L22とを有する道路が表されている。車線L21およびL22は、ポールP21-P23により、走行方向別に分離される。
図2は、車線L21およびL22を分離する車線分離設備である標準的な分離ポールを表す。標準的な分離ポールでは、ポールP21-P23の高さは例えば約650mmであり、例えば10000mm間隔で設置される。
【0024】
地物特定装置は、道路上の所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられているか否かを判定する。また、地物特定装置は、通行情報に基づいて所定の位置が対面通行区間に含まれるか否かを判定する。
【0025】
所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、所定の位置が対面通行区間に含まれないと判定される場合、地物特定装置は、第1のアルゴリズムにより、所定の位置において車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する。第1のアルゴリズムは、車線分離設備を撮影した画像に基づいて車線分離設備の種別を特定可能なアルゴリズムである。
【0026】
所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、所定の位置が対面通行区間に含まれると判定される場合、地物特定装置は、第2のアルゴリズムにより、所定の位置において車線分離設備を撮影した画像に基づいて当該車線分離設備の種別を特定する。第2のアルゴリズムは、車線分離設備のうち分離ポールおよび分離ワイヤロープを第1のアルゴリズムよりも高い確からしさで特定可能なアルゴリズムである。
【0027】
図3は、地物特定装置が搭載される車両の概略構成図である。
【0028】
車両1は、周辺カメラ2と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機3と、ストレージ装置4と、地物特定装置5とを有する。周辺カメラ2、GNSS受信機3、およびストレージ装置4と、地物特定装置5とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0029】
周辺カメラ2は、車両1の周辺状況に応じた周辺画像を生成するためのセンサの一例である。周辺カメラ2は、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系とを有する。周辺カメラ2は、例えば車室内の前方上部に、前方を向けて配置される。周辺カメラ2は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとにフロントガラスまたはリヤガラスを介して車両1の周辺の状況を撮影し、周辺の状況が表された周辺画像を出力する。周辺画像は、車線分離設備を撮影した画像の一例である。
【0030】
GNSS受信機3は、測位センサの一例であり、不図示のGNSSアンテナにより所定の周期ごとにGNSS衛星からのGNSS信号を受信し、受信したGNSS信号に基づいて車両1の自己位置を測位する。GNSS受信機3は、所定の周期ごとに、GNSS信号に基づく車両1の自己位置の測位結果を表す測位信号を、車内ネットワークを介して地物特定装置5へ出力する。
【0031】
ストレージ装置4は、地図記憶部の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ、またはハードディスク装置を有する。ストレージ装置4は、道路上の各位置に関連づけて、通行情報と車線分離設備情報とを含む地図情報を記憶する。
【0032】
通行情報は、道路上の各位置が対面通行区間に含まれるか否かを表す情報である。通行情報は、例えば、対面通行区間の始点および終点のそれぞれの座標により表される。
【0033】
車線分離設備情報は、道路上の各位置において、道路を走行方向別に分離する車線分離設備の種別を表す情報である。車線分離設備の種別は、分離ポールおよび分離ワイヤロープを少なくとも含む。分離ポールは、所定間隔に配置されワイヤロープが設置されていない複数のポールである。分離ワイヤロープは、所定間隔に配置された複数のポールに設置されたワイヤロープである。
【0034】
地物特定装置5は、通信インタフェース回路と、メモリと、プロセッサとを有するECU(Electronic Control Unit)である。地物特定装置5は、通信インタフェースを介して周辺カメラ2から周辺画像を受信し、周辺画像に表された車線分離設備の種別を特定する。
【0035】
地物特定装置5は、通信インタフェース回路を介して、周辺カメラ2から周辺画像を取得する。地物特定装置5は、予め画像から地物を検出するよう学習された識別器に周辺画像を入力し、周辺画像から検出される物体に基づいて、車線分離設備の種別を特定する。
【0036】
図4は、地物特定装置5のハードウェア模式図である。地物特定装置5は、通信インタフェース51と、メモリ52と、プロセッサ53とを備える。
【0037】
通信インタフェース51は、通信部の一例であり、地物特定装置5を車内ネットワークへ接続するための通信インタフェース回路を有する。通信インタフェース51は、受信したデータをプロセッサ53に供給する。また、通信インタフェース51は、プロセッサ53から供給されたデータを外部に出力する。
【0038】
メモリ52は、地図記憶部の他の一例であり、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ52は、ストレージ装置4から読み出した地図情報を一時記憶する。また、メモリ52は、プロセッサ53による処理に用いられる各種データ、例えば第1のアルゴリズムおよび第2のアルゴリズムのそれぞれとして実行される処理内容を保存する。また、メモリ52は、各種アプリケーションプログラム、例えばコンピュータに地物特定方法を実行させるための地物特定用コンピュータプログラム等を保存する。
【0039】
プロセッサ53は、制御部の一例であり、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を有する。プロセッサ53は、論理演算ユニット、数値演算ユニット、またはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0040】
図5は地物特定装置5が有するプロセッサ53の機能ブロック図である。
【0041】
地物特定装置5のプロセッサ53は、機能ブロックとして、特定部531を有する。特定部531は、プロセッサ53上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ53の特定部531の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ53が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして地物特定装置5に実装されてもよい。
【0042】
特定部531は、ストレージ装置4に記憶された地図情報を参照して、車線分離設備が撮影された道路上の所定の位置に、車線分離設備情報が関連づけられているか否かを判定する。また、特定部531は、ストレージ装置4に記憶された地図情報に含まれる通行情報を参照して、当該所定の位置が対面通行区間に含まれるか否かを判定する。
【0043】
特定部531は、所定の位置において車線分離設備を撮影した周辺画像に基づいて、当該車線分離設備の種別を特定する。特定部531は、車線分離設備の種別の特定にあたり、所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられているか否か、および、所定の位置が対面通行区間に含まれると判定されるか否かに応じて、異なるアルゴリズムを用いる。
【0044】
所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、所定の位置が対面通行区間に含まれないと判定される場合、特定部531は、第1のアルゴリズムにより、周辺画像に基づいて車線分離設備の種別を特定する。第1のアルゴリズムは、車線分離設備を撮影した画像に基づいて車線分離設備の種別を特定可能なアルゴリズムである。
【0045】
第1のアルゴリズムは、例えば、画像から物体の領域および種別を検出する検出処理と、検出された種別に基づいて車線分離設備の種別を特定する第1特定処理とを含む。
【0046】
特定部531は、画像を識別器に入力することにより、検出処理を実行する。識別器は、画像から所定の物体および地物に対応する領域および種別を検出するよう予め学習された、入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。ポール、ワイヤロープといった車線分離設備に用いられる物体、および、車線区画線といった地物が表された多数の画像および当該物体の種別を教師データとして用いて、誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って予めCNNの学習を行うことにより、CNNは車線分離設備に用いられる物体および車線区画線といった地物の領域および種別を検出する識別器として動作する。
【0047】
特定部531は、第1特定処理において、周辺画像からワイヤロープが検出され、かつ、ポールが検出された場合、車線分離設備の種別を分離ワイヤロープと特定する。また、特定部531は、第1特定処理において、周辺画像からワイヤロープが検出されず、かつ、ポールが検出された場合、車線分離設備の種別を分離ポールと特定する。
【0048】
所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられておらず、かつ、所定の位置が対面通行区間に含まれると判定される場合、特定部531は、第2のアルゴリズムにより、周辺画像に基づいて車線分離設備の種別を特定する。第2のアルゴリズムは、車線分離設備のうち分離ポールおよび分離ワイヤロープを第1のアルゴリズムよりも高い確からしさで特定可能なアルゴリズムである。
【0049】
第2のアルゴリズムは、例えば、第1のアルゴリズムと同様の検出処理と、第2特定処理とを含む。
【0050】
第2特定処理において、特定部531は、検出処理によりポールが複数検出されたか否かを判定し、ポールが複数検出された場合、複数検出されたポールのうち隣接するポールの一方から他方に向かう線が3本以上検出されたか否かを判定する。
【0051】
隣接するポールの一方から他方に向かう線が3本以上検出された場合、特定部531は、3本以上の線のそれぞれを隣接するポールの一方から他方まで連続するように延長する。
【0052】
さらに、特定部531は、延長された3本以上の線のうち隣接する線の間隔の差異が所定の誤差閾値より小さいか否かを判定する。隣接する線の間隔の差異が所定の誤差閾値より小さいと判定された場合、特定部531は、車線分離設備の種別を分離ワイヤロープと特定する。誤差閾値は、例えば3本以上の線のうちのある隣接する2本の線の間隔に対する、当該間隔と他の隣接する2本の線の間隔との差の比(例えば±10%)として設定され、予めメモリ52に記憶される。ある隣接する2本の線のうちの一つと他の隣接する2本の線のうちの一つとは、同一の線であってよい。
【0053】
第1のアルゴリズムまたは第2のアルゴリズムにより特定された車線分離設備の種別は、車両1に搭載された走行制御装置(不図示)による車両1の自動運転制御に用いることができる。例えば、車線分離設備の種別が分離ポールと特定された場合、走行制御装置は、車線分離設備の種別が分離ワイヤロープと特定された場合よりも車両1の速度が低くなるよう走行を制御する。
【0054】
所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられている場合、特定部531は、第3のアルゴリズムにより、周辺画像に基づいて車線分離設備の種別を特定する。
【0055】
第3のアルゴリズムは、例えば、第1のアルゴリズムと同様の検出処理および第1特定処理と、第1特定処理で特定された車線分離設備の種別が、所定の位置に関連づけられた車線分離設備情報に表される種別と同一か否かを判定する種別判定処理とを含む。
【0056】
種別判定処理において、第1特定処理で特定された車線分離設備の種別が車線分離設備情報に表される種別と同一でないと判定された場合、特定部531は、当該位置に関連づけられた車線分離設備情報を更新すべき車線分離設備情報として特定する。
【0057】
第3のアルゴリズムは、種別判定処理に代えて、または種別判定処理に加えて、検出処理で検出された物体が、所定の位置に関連づけられた車線分離設備情報に表された種別の車線分離設備の標準的な外観を有しているか否かを判定する外観判定処理を含んでもよい。
【0058】
車線分離設備の、分離ワイヤロープや分離ポールといった種別ごとの標準的な外観(例えばポールの高さおよび設置間隔)は、予めメモリ52に記憶される。特定部531は、例えば、ポールと判定された領域の下端を通る水平方向の直線が車線区画線と判定された一対の領域により区切られる長さと、予めメモリ52に記憶された車線区画線の実際の間隔との比に基づいて、ポールと判定された領域の実際の高さを推定する。また、特定部531は、例えば、ポールと判定された領域のうち一の領域の下端を通る水平方向の直線が車線区画線と判定された一対の領域により区切られる長さと、一の領域に隣接する他の領域の下端を通る水平方向の直線が車線区画線と判定された一対の領域により区切られる長さと、予めメモリ52に記憶された車線区画線の実際の間隔と、予めメモリ52に記憶された周辺カメラ2の結像光学系の焦点距離といった撮影パラメータとに基づいて、ポールと判定された領域の間隔の実際の長さを推定する。
【0059】
外観判定処理において、特定部531は、検出処理で検出された物体が、メモリ52に記憶された車線分離設備の種別ごとの標準的な外観を有しているか否かを判定する。検出処理で特定された物体が、所定の位置に関連づけられた車線分離設備情報に表される種別の車線分離設備の標準的な外観を有していないと判定された場合、特定部531は、当該位置に関連づけられた車線分離設備情報を更新すべき車線分離設備情報として特定する。
【0060】
第3のアルゴリズムにおける種別判定処理または外観判定処理により特定された更新すべき車線分離設備情報は、通信インタフェース51および通信ネットワークを経由した外部機器との通信を行うデータ通信モジュール(不図示)を介して地図情報管理サーバ(不図示)に送信される。地図情報管理サーバは、更新すべき車線分離設備情報の数または割合が所定の更新閾値を超えた場合、車線分離設備情報を更新した地図情報を作成する。
【0061】
第1のアルゴリズムないし第3のアルゴリズムの検出処理は、画像の二値化と二値化された画像の細線化とを含む前処理を含んでいてもよい。特定部531は、周辺画像に既知の二値化フィルタおよび細線化フィルタを適用することにより、前処理を実行することができる。
【0062】
図6は、地物特定処理のフローチャートである。地物特定装置5のプロセッサ53は、車線分離設備が撮影された画像が入力される度に、
図6に示す地物特定処理を実行する。
【0063】
まず、プロセッサ53の特定部531は、車線分離設備が撮影された道路上の所定の位置に、車線分離設備情報が関連づけられているか否かを判定する(ステップS1)。
【0064】
所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられていないと判定された場合(ステップS1:N)、特定部531は、所定の位置が対面通行区間に含まれるか否かを判定する(ステップS2)。
【0065】
所定の位置が対面通行区間に含まれないと判定された場合(ステップS2:N)、特定部531は、第1のアルゴリズムにより、画像に基づいて車線分離設備の種別を特定し(ステップS3)、地物特定処理を終了する。
【0066】
所定の位置が対面通行区間に含まれると判定された場合(ステップS2:Y)、特定部531は、第2のアルゴリズムにより、画像に基づいて車線分離設備の種別を特定し(ステップS4)、地物特定処理を終了する。
【0067】
所定の位置に車線分離設備情報が関連づけられていると判定された場合(ステップS1:Y)、特定部531は、第3のアルゴリズムにより、画像に基づいて車線分離設備の種別を特定し(ステップS5)、地物特定処理を終了する。
【0068】
このように地物特定処理を実行することにより、地物特定装置5は、車線分離設備の種別を適切に特定することができる。
【0069】
本実施形態では、地物特定装置がECUとして車両に搭載される例を説明した。しかし、地物特定装置の実施形態はこれに限らない。例えば、地物特定装置は、車両から周辺画像を受信可能なサーバとして実装されてもよい。この場合、周辺画像は、車両からサーバに、通信ネットワークを介して伝達されてよく、データメディアを介して伝達されてもよい。サーバとして実装される地物特定装置により特定された車線分離設備の種別は、地図情報管理サーバによる地図情報の作成に用いることができる。作成された地図情報は、例えば通信ネットワークを介して配信されて車両1のストレージ装置4に記憶され、車両1の自動運転制御に用いられる。
【0070】
当業者は、本開示の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0071】
4 ストレージ装置
5 地物特定装置
52 メモリ
53 プロセッサ
531 特定部