(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169099
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】床版揚重装置、床版設置方法及び床版撤去方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20241128BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20241128BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20241128BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D19/12
E01D24/00
E01D22/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086295
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】小柳 裕
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA13
2D059AA14
2D059DD02
2D059DD03
2D059DD06
2D059GG39
2D059GG40
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】運搬車両により運搬可能な床版揚重装置の揚重高さを高くする。
【解決手段】床版揚重装置100は、床版2を吊り上げ可能な揚重機構70と、揚重機構を保持する上側保持体32と、上側保持体32に取り付けられる複数の支柱40と、を備え、支柱40は、一端が上側保持体32に接続される第1支柱41と、第1支柱41の他端に接続されるヒンジ部42と、一端がヒンジ部42に接続される第2支柱43と、を有し、床版揚重装置100は、第1支柱41と第2支柱43とがヒンジ部42を介して折り畳まれた第1形態と、第1支柱41と第2支柱43とがヒンジ部42を介して一直線状に展開された第2形態と、に支柱40の形態を変化させる形態変更機構60をさらに備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版揚重装置であって、
床版を吊り上げ可能な揚重機構と、
前記揚重機構を保持する保持体と、
前記保持体に取り付けられる複数の支柱と、を備え、
前記支柱は、一端が前記保持体に接続される第1支柱と、前記第1支柱の他端に接続されるヒンジ部と、一端が前記ヒンジ部に接続される第2支柱と、を有し、
前記床版揚重装置は、前記第1支柱と前記第2支柱とが前記ヒンジ部を介して折り畳まれた第1形態と、前記第1支柱と前記第2支柱とが前記ヒンジ部を介して一直線状に展開された第2形態と、に前記支柱の形態を変化させる形態変更機構をさらに備える、
床版揚重装置。
【請求項2】
前後方向に配置された2つの前記支柱の前記ヒンジ部が両端部に取り付けられるヒンジ接続部材をさらに備え、
前記形態変更機構は、
前記ヒンジ接続部材に沿って移動可能な移動部材と、
前記ヒンジ接続部材によって前記ヒンジ部が連結された2つの前記支柱のうちの一方の前記支柱の前記第1支柱と前記移動部材とを連結する第1リンク部材と、
前記ヒンジ接続部材によって前記ヒンジ部が連結された2つの前記支柱のうちの一方の前記支柱の前記第2支柱と前記移動部材とを連結する第2リンク部材と、
前記ヒンジ接続部材に沿って前記移動部材を移動させる移動機構と、を有し、
前後方向に配置された2つの前記支柱は、
前記第1リンク部材及び前記第2リンク部材が連結された前記支柱側へと前記移動部材が前記移動機構によって移動することにより前記第1形態となり、
前記第1リンク部材及び前記第2リンク部材が連結されていない前記支柱側へと前記移動部材が前記移動機構によって移動することにより前記第2形態となる、
請求項1に記載の床版揚重装置。
【請求項3】
前記第1支柱及び前記第2支柱の少なくとも一方には、前記第2形態において上下方向に伸縮可能な伸縮機構が設けられる、
請求項1または2に記載の床版揚重装置。
【請求項4】
前記保持体と前記支柱とを水平方向において連結する水平連結部材と、
前記保持体と前記水平連結部材との連結位置を中心に水平面内において前記水平連結部材を回動させる回動機構と、をさらに備え、
前記保持体に対する前記支柱の位置は、前記回動機構により回動される前記水平連結部材の位置に応じて変化する、
請求項1または2に記載の床版揚重装置。
【請求項5】
走行機構を取り付け可能な下側ユニットと、前記下側ユニットに接続される上側ユニットと、を備え、
前記上側ユニットには、前記揚重機構、前記保持体及び前記支柱が設けられ、
前記第2支柱の他端が前記下側ユニットに連結される、
請求項1または2に記載の床版揚重装置。
【請求項6】
運搬車両に積載されて搬入された新設床版を門型のフレームを有する床版移送装置により搬送台車に移載し、前記搬送台車に移載された前記新設床版を門型のフレームを有する床版設置装置により設置する床版設置方法であって、
前記床版移送装置は、前記新設床版を吊り上げ可能な揚重機構と、前記揚重機構を保持する保持体と、前記保持体を支持する複数の支柱と、を備え、
前記支柱は、一端が前記保持体に接続される第1支柱と、前記第1支柱の他端に接続されるヒンジ部と、一端が前記ヒンジ部に接続される第2支柱と、を有し、前記第1支柱と前記第2支柱とが前記ヒンジ部を介して折り畳まれた第1形態と、前記第1支柱と前記第2支柱とが前記ヒンジ部を介して一直線状に展開された第2形態と、に変形可能であり、
前記床版移送装置は、前記支柱が前記第2形態となった状態において、前記新設床版を揚重可能な前記門型のフレームを有する状態となり、
前記運搬車両は、前記新設床版が積載される荷台の床面よりも運転室が高く、一般道路を走行して前記新設床版を搬入するトラックであり、
前記床版移送装置によって揚重される前記新設床版の下面の最高高さは、前記運搬車両の前記運転室の高さよりも高く設定される、
床版設置方法。
【請求項7】
前記床版移送装置は、走行機構をさらに備え、
前記床版移送装置は、前記運搬車両の前記荷台から吊り上げた前記新設床版を前記搬送台車へと移載する際、停車した前記運搬車両の前記運転室の上方を、揚重された前記新設床版が通過するように、前記走行機構により移動する、
請求項6に記載の床版設置方法。
【請求項8】
門型のフレームを有する床版撤去装置により既設床版を搬送台車に移載し、前記搬送台車に移載された前記既設床版を門型のフレームを有する床版移送装置により運搬車両に移載し、前記既設床版を撤去する床版撤去方法であって、
前記床版移送装置は、前記既設床版を吊り上げ可能な揚重機構と、前記揚重機構を保持する保持体と、前記保持体を支持する複数の支柱と、を備え、
前記支柱は、一端が前記保持体に接続される第1支柱と、前記第1支柱の他端に接続されるヒンジ部と、一端が前記ヒンジ部に接続される第2支柱と、を有し、前記第1支柱と前記第2支柱とが前記ヒンジ部を介して折り畳まれた第1形態と、前記第1支柱と前記第2支柱とが前記ヒンジ部を介して一直線状に展開された第2形態と、に変形可能であり、
前記床版移送装置は、前記支柱が前記第2形態となった状態において、前記既設床版を揚重可能な前記門型のフレームを有する状態となり、
前記運搬車両は、前記既設床版が積載される荷台の床面よりも運転室が高く、一般道路を走行して前記既設床版を搬出するトラックであり、
前記床版移送装置によって揚重される前記既設床版の下面の最高高さは、前記運搬車両の前記運転室の高さよりも高く設定される、
床版撤去方法。
【請求項9】
前記床版移送装置は、走行機構をさらに備え、
前記床版移送装置は、前記運搬車両の前記荷台から吊り上げた前記既設床版を前記搬送台車へと移載する際、停車した前記運搬車両の前記運転室の上方を、揚重された前記既設床版が通過するように、前記走行機構により移動する、
請求項8に記載の床版撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版を揚重する床版揚重装置、床版揚重装置を用いた床版設置方法及び床版揚重装置を用いた床版撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、床版を撤去または設置する床版揚重装置が開示されている。この床版揚重装置は、トレーラによる運搬を容易とするために、門形の脚部が上下方向及び幅方向に伸縮する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の床版揚重装置が揚重作業を行う際の装置の全高や全幅は、伸縮機構の伸縮量に応じて決まるが、トレーラによる運搬を可能とするためには、収縮した状態の伸縮機構の長さが規定の長さを超えないようにする必要があり、伸縮機構の伸縮量が制限されることになる。このように伸縮機構の伸縮量が制限されると、例えば、揚重作業時における床版揚重装置の全高を十分に高くすることができず、結果として、床版を要求される高さまで揚重することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、運搬車両により運搬可能な床版揚重装置の揚重高さを高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床版を吊り上げ可能な揚重機構と、揚重機構を保持する保持体と、保持体に取り付けられる複数の支柱と、を備える床版揚重装置であって、支柱は、一端が保持体に接続される第1支柱と、第1支柱の他端に接続されるヒンジ部と、一端がヒンジ部に接続される第2支柱と、を有し、床版揚重装置は、第1支柱と第2支柱とがヒンジ部を介して折り畳まれた第1形態と、第1支柱と第2支柱とがヒンジ部を介して一直線状に展開された第2形態と、に支柱の形態を変化させる形態変更機構をさらに備える。
【0007】
また、本発明は、運搬車両に積載されて搬入された新設床版を門型のフレームを有する床版移送装置により搬送台車に移載し、搬送台車に移載された新設床版を門型のフレームを有する床版設置装置により設置する床版設置方法であって、床版移送装置は、新設床版を吊り上げ可能な揚重機構と、揚重機構を保持する保持体と、保持体を支持する複数の支柱と、を備え、支柱は、一端が保持体に接続される第1支柱と、第1支柱の他端に接続されるヒンジ部と、一端がヒンジ部に接続される第2支柱と、を有し、第1支柱と第2支柱とがヒンジ部を介して折り畳まれた第1形態と、第1支柱と第2支柱とがヒンジ部を介して一直線状に展開された第2形態と、に変形可能であり、床版移送装置は、支柱が第2形態となった状態において、新設床版を揚重可能な門型のフレームを有する状態となり、運搬車両は、新設床版が積載される荷台の床面よりも運転室が高く、一般道路を走行して新設床版を搬入するトラックであり、床版移送装置によって揚重された新設床版の下面の最高高さは、運搬車両の運転室の高さよりも高く設定される。
【0008】
また、本発明は、門型のフレームを有する床版撤去装置により既設床版を搬送台車に移載し、搬送台車に移載された既設床版を門型のフレームを有する床版移送装置により運搬車両に移載し、既設床版を撤去する床版撤去方法であって、床版移送装置は、既設床版を吊り上げ可能な揚重機構と、揚重機構を保持する保持体と、保持体を支持する複数の支柱と、を備え、支柱は、一端が保持体に接続される第1支柱と、第1支柱の他端に接続されるヒンジ部と、一端がヒンジ部に接続される第2支柱と、を有し、第1支柱と第2支柱とがヒンジ部を介して折り畳まれた第1形態と、第1支柱と前記第2支柱とがヒンジ部を介して一直線状に展開された第2形態と、に変形可能であり、床版移送装置は、支柱が第2形態となった状態において、既設床版を揚重可能な門型のフレームを有する状態となり、運搬車両は、既設床版が積載される荷台の床面よりも運転室が高く、一般道路を走行して既設床版を搬出するトラックであり、床版移送装置によって揚重された既設床版の下面の最高高さは、運搬車両の運転室の高さよりも高く設定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運搬車両により運搬可能な床版揚重装置の揚重高さを高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】床版更新作業を説明するための概略図である。
【
図2】床版撤去方法について説明するための概略図である。
【
図3】床版設置方法について説明するための概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る床版揚重装置の側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る床版揚重装置の平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る床版揚重装置の背面図である。
【
図9】下側ユニットを荷台から降ろす工程を順に説明するための図である。
【
図10】上側ユニットを荷台から降ろす工程を順に説明するための図である。
【
図11】上側ユニットを荷台から降ろす工程を順に説明するための図であり、
図10(c)に続く状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る床版揚重装置、床版設置方法及び床版撤去方法について、図面を参照して説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係る床版揚重装置は、橋梁やトンネル内に設けられた既設の床版を新たな床版に更新する作業において、床版を吊り上げ下げする際に用いられる装置であり、本発明の実施形態に係る床版設置方法及び床版撤去方法において用いられる。
【0013】
まず、
図1~
図3を参照して、本発明の実施形態に係る床版設置方法及び床版撤去方法によって行われる床版更新作業について説明する。
図1は、橋梁1での床版更新作業をわかりやすく誇張して示したイメージ図であり、(a)は作業現場の側面図であり、(b)は作業現場の平面図である。
図2は、床版更新作業において床版を撤去する方法を工程順に示したイメージ図であり、
図3は、床版更新作業において床版を設置する方法を工程順に示したイメージ図である。なお、これら図中の装置等については、簡略化して示されており、実際とは異なる比率で図示されている。
【0014】
橋梁1は、例えば
図1(b)に示すように、橋台(図示省略)の間に橋梁1の幅方向に間隔を空けて架け渡された複数の桁4と、隣り合う桁4の間に設けられた複数の横梁5と、を有し、
図1(a)に示すように、複数の床版2が隣り合う桁4の間を塞ぐように橋梁1の長手方向に沿って設置されることによって構築されている。
【0015】
橋梁1を通過する車両等の荷重は、主に鉄筋コンクリートによって製造される床版2を介して桁4に伝達される。このため、床版2は、時間の経過とともに徐々に劣化ないし損傷することになる。したがって、定期的に床版2を交換する床版更新作業を行う必要がある。
【0016】
床版更新作業では、既設床版2aが撤去用揚重装置11(床版撤去装置)によって桁4上から順次撤去され、搬送台車12及び移送用揚重装置13(床版移送装置)を介して搬出されると共に、移送用揚重装置17(床版移送装置)及び搬送台車16を介して搬入された新設床版2bが設置用揚重装置15(床版設置装置)によって桁4上に順次設置される。このように床版更新作業では、床版を撤去する作業と床版を設置する作業とが並行して進められる。なお、これらの作業とともに、桁4の錆などを除去するケレン作業や桁4の高さを調整する高さ調整作業も同時並行で進められる。
【0017】
定期的に実施される床版更新作業は、一般車両等の通行への影響を最小限に抑えるために、橋梁1上の複数車線3a,3bのうち、1つの車線3aのみの通行を規制する、いわゆる、半断面床版取替工法により行われる。なお、床版2が更新される範囲は、橋梁1全体であってもよいし、一部分のみであってもよい。
【0018】
次に、
図2を参照し、床版を撤去する方法について説明する。
【0019】
床版を撤去する際に用いられる撤去用揚重装置11(床版撤去装置)及び移送用揚重装置13(床版移送装置)は、門型のフレームと走行機構とを備えた、いわゆる、移動式門型クレーンであり、撤去用揚重装置11は、床版を吊り上げ可能な揚重機構11aと、揚重機構11aを保持する保持体11bと、保持体11bを支持する複数の支柱11cと、を備え、移送用揚重装置13は、床版を吊り上げ可能な揚重機構13aと、揚重機構13aを保持する保持体13bと、保持体13bを支持する複数の支柱13cと、を備える。また、撤去用揚重装置11の下方には搬送台車12が橋梁1の長手方向に通り抜けることが可能な空間が形成されており、移送用揚重装置13の下方には搬送台車12及び運搬車両14が橋梁1の長手方向に通り抜けることが可能な空間が形成されている。撤去用揚重装置11の保持体11bは、複数の支柱11cに対して撤去される床版側(
図2の右側)へと張り出した形状となっており、撤去用揚重装置11は、走行機構である支持部を今後撤去予定の床版2上に位置させた状態において、保持体11bの張り出した部分に配置された揚重機構11aによって既設床版2aを吊り上げる。
【0020】
運搬車両14は、一般道路を走行可能な大型のトラックであり、既設床版2aを載置可能な荷台と、荷台の床面よりも高さが高い運転室と、を有する。搬送台車12は、作業現場のみで用いられる電動式の無人走行台車であり、運搬車両14の荷台の床面よりも高さが低い荷台を有する。なお、トラックには、トラクタヘッドとトレーラとが連結された形式のものも含まれる。
【0021】
本実施形態に係る床版撤去方法では、
図2(a)に示されるように、まず、撤去用揚重装置11によって既設床版2aが吊り上げられる。なお、既設床版2aは予め所定の寸法で切り出されている。
【0022】
既設床版2aを吊り上げた撤去用揚重装置11は、既設床版2aを搬送台車12に載置するために、図中左方向へと移動する一方、搬送台車12は、既設床版2aを撤去用揚重装置11から受け取るために、撤去用揚重装置11の下方を通り抜けて図中右方向へと移動する。撤去用揚重装置11及び搬送台車12のいずれか一方のみが移動してもよい。なお、撤去用揚重装置11及び搬送台車12は、床版2上に予め設置された図示しないレール上を移動する。
【0023】
撤去用揚重装置11は、既設床版2aを搬送台車12に載置可能な位置に到達すると、既設床版2aを回転させた後、吊り降ろして搬送台車12の荷台に載置する。ここで、無人走行台車である搬送台車12の荷台の高さは比較的低いことから、撤去用揚重装置11によって吊り上げられる既設床版2aの下面の高さH1、すなわち、床版2の上面から吊り上げられた既設床版2aの下面までの距離(
図2(a)参照。)は、搬送台車12の荷台の高さに合わせて比較的低くすることが可能である。このように要求される揚重高さが低くなることで撤去用揚重装置11の全高を低くすることができる。
【0024】
撤去用揚重装置11から既設床版2aを受け取った搬送台車12は、既設床版2aを移送用揚重装置13に受け渡すために、
図2(c)に示されるように、撤去用揚重装置11の下方を通り抜けて、移送用揚重装置13の下方へと移動する。また、これと同時に運搬車両14は、既設床版2aを受け取るために、移送用揚重装置13の近くまで前進する。なお、運搬車両14は、後進により移送用揚重装置13の近くまで移動してもよいが、大型のトラックを後退させるには、一旦、前進させるスペースを、交通を規制するなどして確保する必要があることから、前進により移送用揚重装置13の近くへと移動させることが好ましい。
【0025】
移送用揚重装置13は、搬送台車12に載置された既設床版2aを運搬車両14へと移送するために、搬送台車12に載置された既設床版2aを吊り上げる。ここで、運搬車両14の運転室の高さHtは比較的高いことから、移送用揚重装置13により吊り上げられる既設床版2aの下面の高さH2、すなわち、床版2の上面から吊り上げられた既設床版2aの下面までの距離(
図2(d)参照。)は、運搬車両14の運転室の高さHtに合わせて比較的高くする必要がある。このように揚重高さを高くするには移送用揚重装置13の全高を高くする必要がある。
【0026】
既設床版2aを所定の高さまで吊り上げた移送用揚重装置13は、既設床版2aを運搬車両14の荷台に載置するために、
図2(d)に示されるように、図中左方向へと移動する。この際、既設床版2aが運搬車両14の運転室の上方を通過することから、安全のため、運搬車両14の運転者は、運転室の外で待機する。なお、移送用揚重装置13は、床版2上に予め設置された図示しないレール上を移動する。
【0027】
移送用揚重装置13は、既設床版2aを運搬車両14の荷台に載置可能な位置に到達すると、
図2(e)に示されるように、既設床版2aを吊り降ろして運搬車両14の荷台へと載置する。
【0028】
移送用揚重装置13から既設床版2aを受け取った運搬車両14は、
図2(f)に示されるように、前進しつつ通行が規制されていない車線3bへと移動し、作業現場から退出する。なお、運搬車両14は、一旦後退した後、通行が規制されていない車線3bへと移動してもよい。
【0029】
以上のように撤去用揚重装置11を橋梁1の一端側から他端側へと向かって移動させながら、既設床版2aを桁4から順次撤去することにより、既設床版2aの撤去が行われる。なお、
図2(c)~
図2(f)に示されるように、移送用揚重装置13によって既設床版2aが運搬車両14へと移送される間も、撤去用揚重装置11による既設床版2aの撤去が同時並行で進められる。
【0030】
上記の床版撤去方法では、移送用揚重装置13(床版移送装置)によって揚重された既設床版2aの下面の高さH2は、撤去用揚重装置11(床版撤去装置)によって揚重された既設床版2aの下面の高さH1よりも高く、運搬車両14の運転室の高さHtよりも高く設定される。
【0031】
このように移送用揚重装置13によって揚重された既設床版2aの下面の高さH2を、運搬車両14の運転室の高さHtよりも高くすることにより、撤去された既設床版2aを、一般道路を走行可能な運搬車両14を用いて円滑に搬出することができる。
【0032】
続いて、
図3を参照し、床版を設置する方法について説明する。
【0033】
床版を設置する際に用いられる設置用揚重装置15(床版設置装置)及び移送用揚重装置17(床版移送装置)は、上述の揚重装置11,13と同様に、門型のフレームと走行機構とを備えた、いわゆる、移動式門型クレーンであり、設置用揚重装置15は、床版を吊り上げ可能な揚重機構15aと、揚重機構15aを保持する保持体15bと、保持体15bを支持する複数の支柱15cと、を備え、移送用揚重装置17は、床版を吊り上げ可能な揚重機構17aと、揚重機構17aを保持する保持体17bと、保持体17bを支持する複数の支柱17cと、を備える。また、設置用揚重装置15の下方には搬送台車16が橋梁1の長手方向に通り抜けることが可能な空間が形成されており、移送用揚重装置17の下方には搬送台車16及び運搬車両18が橋梁1の長手方向に通り抜けることが可能な空間が形成されている。設置用揚重装置15の保持体15bは、複数の支柱15cに対して新たに設置される床版側(
図3の左側)へと張り出した形状となっており、設置用揚重装置15は、走行機構である支持部を既に交換された床版2上に位置させた状態において、保持体15bの張り出した部分に配置された揚重機構15aによって新設床版2bを吊り降ろす。
【0034】
運搬車両18は、上述の運搬車両14と同様の大型のトラックであり、搬送台車16は、上述の搬送台車12と同様の無人走行台車である。
【0035】
本実施形態に係る床版設置方法では、
図3(a)に示されるように、まず、運搬車両18によって新設床版2bが作業現場に搬入される。具体的には、運搬車両18は前進して移送用揚重装置17の下方に進入する。なお、運搬車両18は、後進により移送用揚重装置17の下方に進入してもよいが、大型のトラックを後退させるには、一旦、前進させるスペースを、交通を規制するなどして確保する必要があることから、前進により移送用揚重装置17の下方に進入させることが好ましい。
【0036】
移送用揚重装置17は、運搬車両18によって搬入された新設床版2bを搬送台車16へと移送するために、
図3(b)に示されるように、運搬車両18に載置された新設床版2bを吊り上げる。ここで、運搬車両18の運転室の高さHtは比較的高いことから、移送用揚重装置17により吊り上げられる新設床版2bの下面の高さH2、すなわち、床版2の上面から吊り上げられた新設床版2bの下面までの距離(
図3(c)参照。)は、運搬車両18の運転室の高さHtに合わせて比較的高くする必要がある。このように揚重高さを高くするには移送用揚重装置17の全高を高くする必要がある。
【0037】
新設床版2bを所定の高さまで吊り上げた移送用揚重装置17は、新設床版2bを搬送台車16の荷台に載置するために、
図3(c)に示されるように、図中左方向へと移動する。この際、新設床版2bが運搬車両18の運転室の上方を通過することから、安全のため、運搬車両18の運転者は、運転室の外で待機する。
【0038】
移送用揚重装置17は、新設床版2bを搬送台車16に載置可能な位置に到達すると、
図3(d)に示されるように、新設床版2bを吊り降ろして搬送台車16の荷台に載置する。一方、移送用揚重装置17に新設床版2bを引き渡した運搬車両18は、前進しつつ通行が規制されていない車線3bへと移動し、作業現場から退出する。
【0039】
移送用揚重装置17から新設床版2bを受け取った搬送台車16は、新設床版2bを設置用揚重装置15に受け渡すために、
図3(e)に示されるように、設置用揚重装置15の下方を通り抜けて、設置用揚重装置15の揚重機構15aの下方へと移動する。一方、搬送台車16に新設床版2bを引き渡した移送用揚重装置17は、図中右方向へと移動し、運搬車両18によって次の新設床版2bが搬入されるまで待機する。
【0040】
搬送台車16が設置用揚重装置15の揚重機構15aの下方の所定位置に到達すると、設置用揚重装置15は、
図3(e)に示されるように、新設床版2bを吊り上げた後、回転し、新設床版2bの向きを桁4上に設置可能な向きとする。ここで、無人走行台車である搬送台車16の荷台の高さは比較的低いことから、設置用揚重装置15によって吊り上げられる新設床版2bの下面の高さH1、すなわち、床版2の上面から吊り上げられた新設床版2bの下面までの距離(
図3(e)参照。)は、搬送台車16の荷台の高さに合わせて比較的低くすることが可能である。このように要求される揚重高さが低くなることで設置用揚重装置15の全高を低くすることができる。
【0041】
搬送台車16から新設床版2bを吊り上げた設置用揚重装置15は、新設床版2bを桁4上に設置するために、
図3(f)に示されるように、図中左方向へと移動した後、新設床版2bを吊り降ろして桁4上へと設置する。一方、設置用揚重装置15に新設床版2bを引き渡した搬送台車16は、図中右方向へと移動し、次の新設床版2bを移送用揚重装置17から受け取るために、所定の位置で待機する。設置用揚重装置15及び搬送台車16のいずれか一方のみが移動してもよい。
【0042】
以上のように設置用揚重装置15を、撤去用揚重装置11と同様に、橋梁1の一端側から他端側へと向かって移動させながら、既設床版2aが撤去された部分に新設床版2bを順次設置することにより、新設床版2bの設置が行われる。
【0043】
上記の床版設置方法では、上述の床版撤去方法と同様に、移送用揚重装置17(床版移送装置)によって揚重された新設床版2bの下面の高さH2は、設置用揚重装置15(床版設置装置)によって揚重された新設床版2bの下面の高さH1よりも高く、運搬車両18の運転室の高さHtよりも高く設定される。
【0044】
このように移送用揚重装置17によって揚重された新設床版2bの下面の高さH2を、運搬車両18の運転室の高さHtよりも高くすることにより、一般道路を走行可能な運搬車両18を用いて新設床版2bを作業現場へと円滑に搬入することができる。
【0045】
以上のような床版撤去方法及び床版設置方法により床版を撤去する作業と床版を設置する作業とが並行して進められることによって、床版更新作業は行われる。
【0046】
ここで、上述のように、床版撤去方法及び床版設置方法において用いられる移送用揚重装置13,17は、吊り上げられた床版2a,2bの下面の高さH2が運搬車両14,18の運転室の高さHtを超えるように、床版2a,2bを揚重しなければならないが、移送用揚重装置13,17の揚重最高高さを高くするためには、移送用揚重装置13,17の全高を高くする必要がある。
【0047】
しかしながら、全高が高く比較的大型の床版揚重装置を橋梁1上に設置するには、全車線3a,3bの通行を規制してクレーン車等の大型重機を設置し、トレーラ等の運搬車両によって搬入された床版揚重装置の構成部品をクレーン車によって吊り下げながら組み立てる必要がある。このため、一般車両等の通行を一時的に禁止しなければならず、交通への影響が大きくなってしまうおそれがある。
【0048】
このような課題を解決するために、上述の床版撤去方法及び床版設置方法では、以下に説明される構造を備えた床版揚重装置100が、移送用揚重装置13,17として用いられる。
【0049】
次に
図4~6を参照し、本実施形態に係る床版揚重装置100の構成について説明する。
図4は、床版揚重装置100の右側面図であり、
図5は、床版揚重装置100の平面図であり、
図6は、
図4の背面図である。なお、以下では、
図4~6に矢印で示されるように、
図4及び
図5の左側を前方、右側を後方とし、
図5の上側を右方、下側を左方として説明する。
【0050】
床版揚重装置100は、
図4に示すように、走行機構25を有する下側ユニット20と、一対の揚重機構70が取り付けられた上側ユニット30と、から構成され、下側ユニット20の上方に上側ユニット30が接続されることで一体化される。つまり、床版揚重装置100は、後述のように、下側ユニット20と上側ユニット30とに分割された状態で運搬可能な構成となっている。
【0051】
下側ユニット20は、
図5及び
図6に示されるように、前後方向に沿って、床版揚重装置100の左側に配置される第1下側ユニット20Aと、床版揚重装置100の右側に配置される第2下側ユニット20Bと、で構成され、各下側ユニット20A,20Bは、
図4に示されるように、前後方向に延在して設けられた下側保持体21と、下側保持体21の下方前方と下方後方とに取り付けられた一対の走行機構25と、をそれぞれ有する。
【0052】
下側保持体21は、前後方向に延在する下側主桁22と、下側主桁22の上方前方と上方後方とに設けられた一対の接続フランジ22aと、下側主桁22の下方前方と下方後方とに設けられた一対の連結部22bと、を有する。下側主桁22は、鋼管やH形鋼等の鋼材によって形成される。接続フランジ22aは、下側ユニット20と上側ユニット30とを接続する接続部として機能し、連結部22bは、走行機構25を下側保持体21に連結するために設けられる。なお、走行機構25は床版揚重装置100が載荷する支持部となる部分であり、走行するための機構は必須ではない。
【0053】
走行機構25には、床版2上に設置された図示しないレール上を走行可能なウレタン製の車輪26が複数設けられているとともに、何れかの車輪26を駆動させることが可能な電動モータ27が設けられている。なお、走行機構25には、車輪26がレール上から脱輪することを防止するために、図示しないガイド部材が設けられる。
【0054】
電動モータ27の駆動は、図示しない操作盤を介してオペレータにより操作される。このように下側ユニット20に車輪26を駆動させる電動モータ27が設けられることで、床版揚重装置100は、オペレータの操作に応じて前後方向へと自走することができる。なお、上述の走行機構の数や車輪の数、電動モータの配置等は、一例であって、例えば、走行機構は3つ以上設けられていてもよく、また、電動モータは何れか1つの走行機構のみに設けられていてもよい。
【0055】
上側ユニット30は、床版2を吊り上げ下げ可能な一対の揚重機構70と、前後方向に延在し一対の揚重機構70を保持する上側保持体32(保持体)と、上側保持体32に取り付けられる複数の支柱40と、支柱40の位置を左右方向において上側保持体32に近接した第1位置と上側保持体32から離れた第2位置とに変位させる支柱変位機構50と、支柱40を上下方向において折り畳まれた第1形態と上下方向に一直線状に展開された第2形態とに変化させる形態変更機構60と、を有する。なお、
図4~6に示される支柱40の位置は第2位置であり、支柱40の形態は第2形態である。
【0056】
上側保持体32は、前後方向に延在する一対の主桁33と、一対の主桁33間を水平方向において連結する一対の連結梁34と、主桁33及び連結梁34の下方に設けられる架構部36と、を有する。これらの部材は鋼管やH形鋼等の鋼材によって形成され、互いに溶接等で接合される。架構部36は、発電機や油圧供給ユニットといった設備機器を設置するための架台として用いられる。
【0057】
揚重機構70は、吊荷となる床版2を図示しない吊り天秤を介して揚重可能なチェーンブロックであり、一対の連結梁34にそれぞれ設けられた係止部34aに図示しない上側フックが係止されることによって、床版揚重装置100に取り付けられる。なお、
図5及び
図6では、揚重機構70の図示を省略している。
【0058】
各支柱40は、一端が上側保持体32に接続される第1支柱41と、第1支柱41の他端に接続されるヒンジ部42と、一端がヒンジ部42に接続され他端が下側ユニット20に連結される第2支柱43と、を有し、各支柱41,43は、左右方向に延びる軸を中心に回動可能にヒンジ部42に対してそれぞれ接続され、第1支柱41と第2支柱43とはヒンジ部42を介して接続されている。このため、各支柱40は、第1支柱41と第2支柱43とがヒンジ部42を介して折り畳まれた第1形態と、第1支柱41と第2支柱43とがヒンジ部42を介して一直線状に展開された第2形態と、に変形可能である。
【0059】
また、前後方向に並んで配置される2つの支柱40のヒンジ部42は、前後方向に延在する第1接続部材47(ヒンジ接続部材)の両端部に剛接合によってそれぞれ取り付けられる。これにより、前後方向に並んで配置される2つの支柱40は、一方の支柱40が第1形態から第2形態に変形すると他方の支柱40も連動して同様に変形する構成となっている。なお、前後方向に並んで配置された2つの支柱40を円滑に連動させるために、一端が前方に配置された支柱40の第2支柱43に回動可能に連結され、他端が後方に配置された支柱40の第2支柱43に回動可能に連結された第2接続部材48がさらに設けられている。
【0060】
第1支柱41は、鋼管やH形鋼等の鋼材によって形成される一方、第2支柱43は、入れ子式に形成された2つの鋼管43a,43bによって構成される。
【0061】
具体的には、第2支柱43は、上方に配置される外筒43aと、少なくとも一部分が外筒43a内に挿入され下方に配置される内筒43bと、外筒43a及び内筒43bの内部に設置されたアクチュエータ45(伸縮機構)と、内筒43bの下端に回動可能に設けられた接続フランジ43cと、を有する。
【0062】
アクチュエータ45は、シリンダチューブ45aと、シリンダチューブ45a内を摺動する図示しないピストンと、一端がピストンに連結され他端がシリンダチューブ45aの外側に延びるロッド45bと、を有する油圧シリンダである。シリンダチューブ45aは、シリンダチューブ45aの端部に設けられた連結部を介して外筒43aの内側上端に回動可能に連結されており、ロッド45bは、先端部に設けられた連結部を介して内筒43bの内側下端に回動可能に連結されている。
【0063】
このため、アクチュエータ45が伸縮すると外筒43aに対する内筒43bの相対位置が変化し、第2支柱43はアクチュエータ45の伸縮に応じて伸縮する。このようにアクチュエータ45は、上下方向において第2支柱43を伸縮可能な伸縮機構として機能する。なお、
図4~6に示される第2支柱43は、伸長した状態となっている。また、アクチュエータ45は、油圧シリンダに限定されず、伸縮可能な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動リニアアクチュエータであってもよい。
【0064】
また、第2支柱43の下端に設けられた接続フランジ43cが下側保持体21の接続フランジ22aに接合されることによって、上側ユニット30と下側ユニット20とは一体化された状態となる。なお、床版揚重装置100を定置式とする場合には、接続フランジ43cは、接続フランジ22aに接合されることなく、路面に接する脚部となる。
【0065】
支柱変位機構50は、前後方向に並んで配置される2つの支柱40の第1支柱41同士を連結する連結部材51と、上側保持体32と連結部材51とを水平方向において連結する第1水平連結部材52及び第2水平連結部材53と、上側保持体32に対する連結部材51の位置を変位させるアクチュエータ55(回動機構)と、で構成される機構であり、上側ユニット30の右側と左側とに設けられる。
【0066】
連結部材51は、
図4に示されるように、前後方向に沿って延在する部材であり、その両端部には、支柱40の第1支柱41を左右方向に延びる軸を中心に回動可能に支持する回動支持部51aが設けられる。
【0067】
第1水平連結部材52は、
図5に示されるように、一端部が主桁33によって上下方向に延びる軸を中心に回動可能に支持され、他端部が連結部材51によって上下方向に延びる軸を中心に回動可能に支持される。
【0068】
また、第2水平連結部材53は、一端部が連結梁34によって上下方向に延びる軸を中心に回動可能に支持され、他端部が連結部材51によって上下方向に延びる軸を中心に回動可能に支持される。
【0069】
このように第1水平連結部材52及び第2水平連結部材53によって上側保持体32と連結部材51とが接続されることにより、連結部材51は、上側保持体32の長手方向(前後方向)に対して平行な状態を維持したまま、左右方向において上側保持体32に近接した位置と上側保持体32から離れた位置とに変位可能となる。
【0070】
アクチュエータ55は、シリンダチューブ55aと、シリンダチューブ55a内を摺動する図示しないピストンと、一端がピストンに連結され他端がシリンダチューブ55aの外側に延びるロッド55bと、を有する油圧シリンダである。シリンダチューブ55aは、シリンダチューブ55aの端部に設けられた連結部を介して主桁33に回動可能に連結されており、ロッド55bは、先端部に設けられた連結部を介して第1水平連結部材52に回動可能に連結されている。なお、アクチュエータ55は、油圧シリンダに限定されず、伸縮可能な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動リニアアクチュエータであってもよい。
【0071】
具体的には、アクチュエータ55は、
図5に示されるように、第1水平連結部材52と主桁33との連結位置と第1水平連結部材52と連結部材51との連結位置とを結ぶ第1水平連結部材52の材軸方向に対して、伸縮方向が交差し、シリンダチューブ55aと主桁33との連結位置が第1水平連結部材52と主桁33との連結位置よりも前方に位置するように配置される。
【0072】
このようにアクチュエータ55が配置されることによって、アクチュエータ55が収縮すると、第1水平連結部材52は、主桁33との連結位置を中心に水平面内を前方に向かって回動し、これに伴い第1水平連結部材52の他端部が連結された連結部材51は、前方に移動しつつ上側保持体32に近付くことになる。一方、アクチュエータ55が伸長すると、第1水平連結部材52は、主桁33との連結位置を中心に水平面内を後方に向かって回動し、これに伴い連結部材51は、後方に移動しつつ上側保持体32から離れることになる。このようにアクチュエータ55は、第1水平連結部材52及び第2水平連結部材53を回動させる回動機構として機能する。なお、
図4~
図6は、アクチュエータ55が伸長した状態が示されている。
【0073】
また、このように連結部材51を変位させることによって、連結部材51に連結された支柱40の位置を、左右方向において上側保持体32に近接した第1位置と上側保持体32から離れた第2位置とに変位させることが可能である。
【0074】
形態変更機構60は、第1接続部材47の材軸方向に沿って移動可能なスリーブ61(移動部材)と、スリーブ61に固定された一対のアクチュエータ64(移動機構)と、スリーブ61と後方側に配置された支柱40の第1支柱41とを連結する第1リンク部材66と、スリーブ61と後方側に配置された支柱40の第2支柱43とを連結する第2リンク部材67と、を有する。
【0075】
スリーブ61は、第1接続部材47の外周面に摺接するように第1接続部材47の外側に配置された筒状の部材である。第1接続部材47には、前方へのスリーブ61の移動を制限する制限部62が設けられる。
【0076】
アクチュエータ64は、シリンダチューブ64aと、シリンダチューブ64a内を摺動する図示しないピストンと、一端がピストンに連結され他端がシリンダチューブ64aの外側に延びるロッド64bと、を有する油圧シリンダである。シリンダチューブ64aは、第1接続部材47の材軸方向に沿ってスリーブ61の外周面に固定されており、ロッド64bは、先端部に設けられた連結部を介して第1接続部材47の後方側の端部に連結されている。つまり、アクチュエータ64は、第1接続部材47の材軸方向に沿って伸縮するように設置されている。なお、アクチュエータ55は、油圧シリンダに限定されず、伸縮可能な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動リニアアクチュエータであってもよい。
【0077】
第1リンク部材66は、一端部がスリーブ61によって左右方向に延びる軸を中心に回動可能に支持され、他端部が支柱40の第1支柱41によって左右方向に延びる軸を中心に回動可能に支持される。具体的には、第1リンク部材66の他端部は、第1支柱41の上方寄りの部分に連結される。
【0078】
また、第2リンク部材67は、一端部がスリーブ61によって左右方向に延びる軸を中心に回動可能に支持され、他端部が支柱40の第2支柱43によって左右方向に延びる軸を中心に回動可能に支持される。具体的には、第2リンク部材67の他端部は、第2支柱43の外筒43aの下方寄りの部分に連結される。
【0079】
このように構成された形態変更機構60の一対のアクチュエータ64が収縮すると、スリーブ61は、制限部62から離れ、後方側に配置された支柱40のヒンジ部42に接近するように移動する。
【0080】
後方側に配置された支柱40のヒンジ部42にスリーブ61が接近する過程において、後方側に配置された支柱40の第1支柱41は、第1リンク部材66を介してスリーブ61により押圧され、この押圧力は、第1支柱41とヒンジ部42との連結位置を中心に第1支柱41を後方へと回動させる力となる。
【0081】
同様に、後方側に配置された支柱40のヒンジ部42にスリーブ61が接近する過程において、後方側に配置された支柱40の第2支柱43は、第2リンク部材67を介してスリーブ61により押圧され、この押圧力は、第2支柱43とヒンジ部42との連結位置を中心に第2支柱43を後方へと回動させる力となる。
【0082】
また、上述のように、後方側に配置された支柱40と前方側に配置された支柱40とは、第1接続部材47、第2接続部材48、及び、連結部材51を介して連結されていることから、前方側に配置された支柱40は、後方側に配置された支柱40の動きに連動することになる。
【0083】
したがって、一対のアクチュエータ64が収縮すると、前後方向に並んで配置された2つの支柱40は、共に上下方向において折り畳まれた第1形態、すなわち、第1支柱41と第2支柱43とがヒンジ部42を介して折り畳まれた状態となる。
【0084】
一方、形態変更機構60の一対のアクチュエータ64が伸長すると、スリーブ61は、後方側に配置された支柱40のヒンジ部42から離れ、制限部62に向かって移動する。
【0085】
スリーブ61が制限部62へ向かって移動する過程において、後方側に配置された支柱40の第1支柱41は、第1リンク部材66を介してスリーブ61により引っ張られ、この引張力は、第1支柱41とヒンジ部42との連結位置を中心に第1支柱41を前方へと回動させる力となる。
【0086】
同様に、スリーブ61が制限部62へ向かって移動する過程において、後方側に配置された支柱40の第2支柱43は、第2リンク部材67を介してスリーブ61により引っ張られ、この引張力は、第2支柱43とヒンジ部42との連結位置を中心に第2支柱43を前方へと回動させる力となる。
【0087】
したがって、一対のアクチュエータ64が伸長すると、前後方向に並んで配置された2つの支柱40は、
図4に示されるように、共に上下方向に一直線状に展開された第2形態、すなわち、第1支柱41と第2支柱43とがヒンジ部42を介して一直線状に展開された状態となる。
【0088】
上記構成の床版揚重装置100は、
図4~6に示されるように、支柱40の位置が上側保持体32から離れた第2位置となり、支柱40の形態が上下方向に一直線状に展開された第2形態になるとともに、第2支柱43に設けられたアクチュエータ45が伸長した状態となることで、床版2を揚重することが可能な状態となる。
【0089】
このため、揚重作業中に支柱40の位置が第2位置から第1位置へ移動してしまうことを防止するために、第2位置となっているときに重なり合う図示しない貫通孔を連結梁34と第2水平連結部材53とに形成しておき、この貫通孔に図示しないピン部材を差し込むことにより、揚重作業中に支柱40の位置が第1位置とならないようにしている。
【0090】
また、揚重作業中に支柱40の形態が第2形態から第1形態となってしまうことを防止するために、アクチュエータ64には、アクチュエータ64が伸長した状態において、作動油の供給ホース等が破損した場合であっても、伸長状態を保持する油圧回路が設けられる。
【0091】
同様に、揚重作業中に第2支柱43が収縮してしまうことを防止するために、アクチュエータ45には、アクチュエータ45が伸長した状態において、作動油の供給ホース等が破損した場合であっても、伸長状態を保持する油圧回路が設けられる。
【0092】
上記構成の下側ユニット20の接続フランジ22aと、上記構成の上側ユニット30の接続フランジ43cとは、接続・分離自在であり、図示しないボルトを介して結合されることによって、床版揚重装置100は一体的な構成となる。
【0093】
続いて、
図7及び
図8を参照し、床版揚重装置100の運搬状態について説明する。床版揚重装置100は、
図7及び
図8に示されるように、下側ユニット20と上側ユニット30とに分割され、それぞれ別の運搬車両T1,T2によって運搬される。
図7の(a)は、下側ユニット20の運搬状態を第1運搬車両T1の左側方から見た図であり、(b)は、下側ユニット20の運搬状態を第1運搬車両T1の上方から見た図である。
図8の(a)は、上側ユニット30の運搬状態を第2運搬車両T2の左側方から見た図であり、(b)は、上側ユニット30の運搬状態を第2運搬車両T2の上方から見た図である。なお、以下では、
図7及び
図8に矢印で示されるように車両の前方を前、後方を後、車両の左方を左、右方を右として説明する。
【0094】
まず、
図7を参照し、下側ユニット20の運搬状態について説明する。
【0095】
下側ユニット20を運搬する第1運搬車両T1の荷台には、下側ユニット20を路上に下ろす際に使用されるリフト装置80が設けられる。なお、リフト装置80は、下側ユニット20を路上から荷台に積載する際にも用いられる。
【0096】
リフト装置80は、上下方向に下側ユニット20を移動可能なリフト部81と、車両の幅方向に下側ユニット20を移動可能なスライド部84と、を有する。
【0097】
リフト部81は、荷台に固定され上方が開口した箱状のベース部83と、ベース部83を上方から覆うように設けられ下方が開口した箱状の変位部82と、ベース部83及び変位部82の内部に区画された空間内に配置された図示しない複数の油圧シリンダと、を有する。
【0098】
変位部82とベース部83とは入れ子式となっており、変位部82はベース部83によって上下方向に摺動自在に支持されている。また、複数の油圧シリンダは、シリンダチューブがベース部83に固定され、シリンダチューブから延出するロッドの先端部が変位部82に連結され、上下方向に伸縮可能な状態で設置される。このため、変位部82は、複数の油圧シリンダの伸縮に応じて、ベース部83に対して上下方向に変位する。
【0099】
スライド部84は、リフト部81を挟んで車両の前方側と後方側とに設けられており、リフト部81の変位に合わせて上下方向に変位する。なお、2つのスライド部84の構成は同じであるため、以下では車両の後方側に設けられたスライド部84について説明する。
【0100】
スライド部84は、リフト部81の変位部82に取り付けられたスライドガイド部84aと、スライドガイド部84aにより左右方向に摺動自在に支持される2つのスライド部材85a,85bと、スライドガイド部84a内に設けられ各スライド部材85a,85bを左右方向へと水平にスライドさせる2つの油圧シリンダ87a,87bと、を有する。
【0101】
スライド部材85a,85bは、荷台の左側に積載された第1下側ユニット20Aに結合される第1スライド部材85aと、荷台の右側に積載された第2下側ユニット20Bに結合される第2スライド部材85bと、から構成される。
【0102】
第1スライド部材85aの左側端部には、下方に向かって延びる延出部86が設けられ、延出部86の下端には、第1下側ユニット20Aの下側主桁22に図示しないボルトを介して結合されるフランジ部86aが設けられる。
【0103】
第1スライド部材85aをスライドさせる第1油圧シリンダ87aは、シリンダチューブがスライドガイド部84aに固定される一方で、シリンダチューブから延出するロッドの先端部が第1スライド部材85aに設けられた延出部86に連結されている。このため、第1スライド部材85aは、第1油圧シリンダ87aが伸長することによって左方向へとスライドし、第1油圧シリンダ87aが収縮することによって右方向へとスライドする。
【0104】
第2スライド部材85b及び第2油圧シリンダ87bも同様の構成となっており、第2スライド部材85bは第2油圧シリンダ87bが伸長することによって右方向へとスライドし、第2油圧シリンダ87bが収縮することによって左方向へとスライドする。
【0105】
スライド部84の各油圧シリンダ87a,87bは、
図7に示されるように、第1下側ユニット20A及び第2下側ユニット20Bを第1運搬車両T1により運搬する際には、第1下側ユニット20A及び第2下側ユニット20Bが荷台上に収まるように、左右方向における第1下側ユニット20Aと第2下側ユニット20Bとの間隔を小さくするために、収縮した状態とされる。また、このとき、リフト部81は、各車輪26が荷台に接する程度に伸長した状態とされる。
【0106】
なお、リフト部81を上下方向に伸縮させる機構やスライド部材85aを水平方向にスライドさせる機構としては、油圧シリンダに限定されず、伸縮可能な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動リニアアクチュエータであってもよい。
【0107】
荷台に積載された第1下側ユニット20A及び第2下側ユニット20Bは、上記構成のリフト装置80によって、荷台に対してある程度固定された状態となるが、運搬時の振動等により荷台上で動いてしまうことを防止するために、図示しない固定具が適宜用いられる。
【0108】
続いて、
図8を参照し、上側ユニット30の運搬状態について説明する。
【0109】
上側ユニット30を第2運搬車両T2により運搬する際には、上側ユニット30が荷台上に収まるようにするために、支柱変位機構50のアクチュエータ55を収縮させることによって、支柱40の位置を左右方向において上側保持体32に近接した第1位置とし、上側ユニット30の左右方向における幅をできるだけ小さくする。
【0110】
また、運搬時の第2運搬車両T2の高さとなる荷台に積載された上側ユニット30の高さが法定された高さ制限を超えないようにするために、形態変更機構60のアクチュエータ64を収縮させることによって、支柱40の形態を上下方向において折り畳まれた第1形態とするとともに、第2支柱43に設けられたアクチュエータ45を収縮させることによって、第2支柱43を最も収縮した状態とし、上側ユニット30の高さをできるだけ低くする。
【0111】
このように幅方向及び高さ方向においてコンパクト化された上側ユニット30は、
図8(a)に示されるように、上側保持体32の架構部36が荷台に接し、各支柱40の接続フランジ43cが荷台に接しない状態で積載される。架構部36が荷台に接することで比較的安定した状態となっているが、運搬時の振動等により荷台上で上側ユニット30が動いてしまうことを防止するために、図示しない固定具が適宜用いられる。なお、運搬中の上側ユニット30の姿勢を安定させるために、形態変更機構60のアクチュエータ64または第2支柱43に設けられたアクチュエータ45を僅かに伸長することによって、接続フランジ43cを荷台に接触させた状態としておいてもよい。また、運搬時の振動等によって、折り畳まれた支柱40の第2支柱43が揺動して荷台に当たることを防止するために、支柱40が第1形態となっている場合に第1支柱41の上端側と第2支柱43の下端側とを上下方向において連結可能な連結部材を設けてもよい。
【0112】
次に、
図9~
図11を参照し、各ユニット20,30を運搬車両T1,T2の荷台からそれぞれ降ろし、床版揚重装置100を組み立てる工程について説明する。
図9は、下側ユニット20を第1運搬車両T1の荷台から降ろす工程を順に示した図であり、
図10及び
図11は、上側ユニット30を第2運搬車両T2の荷台から降ろし、下側ユニット20に組み付ける工程を順に示した図である。なお、以下では、
図7及び
図8と同様に、車両の前方を前、後方を後、車両の左方を左、右方を右として説明する。
【0113】
まず、
図9を参照し、下側ユニット20を第1運搬車両T1の荷台から降ろす工程について説明する。
【0114】
下側ユニット20を運搬する第1運搬車両T1は、上側ユニット30を運搬する第2運搬車両T2よりも先行して床版揚重装置100を設置する現場に到着し、下側ユニット20をその荷台から路上へと降ろす。
【0115】
具体的には、床版揚重装置100を設置する現場へと第1運搬車両T1が到着すると、第1運搬車両T1の荷台上では、リフト装置80のリフト部81がさらに伸長され、
図9の(a)に示されるように、下側ユニット20の各車輪26が荷台から所定の隙間G1だけ上昇した状態、すなわち、各車輪26が荷台から僅かに離れた状態とされる。
【0116】
このように各車輪26が荷台から離れた状態において、スライド部84の各油圧シリンダ87a,87bを伸長し、
図9の(b)に示されるように、第1スライド部材85aを左方向へ、第2スライド部材85bを右方向へとそれぞれスライドさせる。つまり、第1運搬車両T1の左右方向における第1下側ユニット20Aと第2下側ユニット20Bとの間隔は、スライド部84の各油圧シリンダ87a,87bを伸長させることによって拡げられる。
【0117】
これにより、第1スライド部材85aに結合された第1下側ユニット20Aは荷台の左方の外側へ、第2スライド部材85bに結合された第2下側ユニット20Bは荷台の右方の外側へとそれぞれ移動することになる。なお、第1下側ユニット20Aと第2下側ユニット20Bとの間隔は、床版2上に予め設置される図示しないレールの間隔と同じ大きさに設定される。
【0118】
そして、第1下側ユニット20A及び第2下側ユニット20Bが荷台の外側にそれぞれ位置した状態において、リフト部81を徐々に収縮し、
図9の(c)に示されるように、下側ユニット20の各車輪26をレール上に着地させる。各車輪26がレールに接した第1下側ユニット20A及び第2下側ユニット20Bは、図示しない輪止め等の支持部材によって支持され、自立した状態となる。
【0119】
そして、第1下側ユニット20A及び第2下側ユニット20Bがレール上で自立可能に支持された状態において、各スライド部材85aのフランジ部86aと下側ユニット20の下側主桁22とを結合するボルトが取り外される。
【0120】
これにより、第1運搬車両T1によって運搬された第1下側ユニット20A及び第2下側ユニット20Bは、1つの車線上において、第1運搬車両T1に沿って、その左側方と右側方とにそれぞれ降ろされた状態となり、下側ユニット20を第1運搬車両T1の荷台から降ろす工程が完了する。なお、左右方向における第1下側ユニット20Aと第2下側ユニット20Bとの間の間隔は、後続する第2運搬車両T2が進入可能な間隔となっている。
【0121】
続いて、
図10及び
図11を参照し、上側ユニット30を第2運搬車両T2の荷台から降ろして、レール上に先に降ろされた下側ユニット20へと組み付ける工程について説明する。
【0122】
上側ユニット30を運搬する第2運搬車両T2は、下側ユニット20を降ろして前方へと退去した第1運搬車両T1と入れ替わるようにして、第1下側ユニット20Aと第2下側ユニット20Bとの間に進入する(
図10(a)参照)。
【0123】
なお、レール上に降ろされた下側ユニット20の接続フランジ22aの上面の高さは、第2運搬車両T2の荷台に積載された上側ユニット30の接続フランジ43cの下面の高さよりも低くなるように設定されている。このため、上側ユニット30を荷台から上昇させることなく、下側ユニット20に上側ユニット30を組み付けることが可能である。
【0124】
続いて、
図10の(b)に示すように、各支柱変位機構50のアクチュエータ55を伸長することにより、各支柱40の位置を第1位置(
図8の(b)参照)から第2位置へと変位させる。なお、
図10の(b)では各支柱40の動きをわかりやすくするために、下側ユニット20の図示を省略している。
【0125】
そして、各支柱40の位置が第2位置となった状態において、形態変更機構60のアクチュエータ64を僅かに伸長することによって、
図10の(c)に示されるように、上側ユニット30の接続フランジ43cを下側ユニット20の接続フランジ22aに当接させ、図示しないボルトによって、接続フランジ43cと接続フランジ22aとを結合する。
【0126】
接続フランジ43cと接続フランジ22aとがボルトを介して結合された後、
図11の(a)に示されるように、形態変更機構60のアクチュエータ64を、スリーブ61が制限部62に当接するまで伸長させることによって、各支柱40の形態を上下方向に一直線状に展開された第2形態とする。これにより上側保持体32は荷台から離れ、上側保持体32及びこれにより保持された一対の揚重機構70は上方へと移動する。なお、上側保持体32を上方へと円滑に移動させるために、上下方向に伸縮可能なアクチュエータを、上側保持体32の上昇を補助する補助機構として上側保持体32または荷台に設置しておいてもよい。
【0127】
このように各支柱40の形態が第2形態となった後、第2支柱43内に設置されたアクチュエータ45を伸長することによって、床版揚重装置100は、
図11の(b)に示すように、揚重機構70の高さが所定の高さとなり、床版2を吊り上げ下げする揚重作業を行うことが可能な状態となる。この後、第2運搬車両T2は前方へと退去する。なお、第2支柱43は、すべて同じ長さだけ伸長させてもよいが、床版揚重装置100が設置される設置面の傾斜に応じて、伸長量をそれぞれ異ならせてもよい。
【0128】
これにより、第2運搬車両T2によって運搬された上側ユニット30は、1つの車線上において、先にレール上に降ろされた下側ユニット20に組み付けられた状態となり、上側ユニット30を第2運搬車両T2の荷台から降ろす工程が完了するとともに、床版揚重装置100の設置が完了する。
【0129】
床版揚重装置100を撤去する際の工程は、上述の搬入時の工程とは逆の手順により1つの車線上において行われる。このため、その説明を省略する。
【0130】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0131】
本実施形態の床版揚重装置100は、下側ユニット20の下側保持体21に上側ユニット30の各支柱40が接続された後、ヒンジ部42を介して接続された第1支柱41と第2支柱43とを有する支柱40が一直線状に展開されることによって組み立てられる。このように床版揚重装置100は、ヒンジ部42を介して折り畳まれた支柱40を展開することによって組み立てられるため、床版揚重装置100の全高は、支柱40を構成する第1支柱41及び第2支柱43の長さに応じて決まることになる。
【0132】
第2運搬車両T2によって上側ユニット30が運搬される際に折り畳まれる第1支柱41及び第2支柱43の長さは、特に制限されないことから、第1支柱41及び第2支柱43の長さを長くしておくことによって、揚重作業時における床版揚重装置100の全高を十分に高くすることが可能となる。これにより一般的な運搬車両T1,T2によって運搬して組み立てることが可能な床版揚重装置100の揚重高さを所望の高さまで高くすることができる。
【0133】
また、床版揚重装置100は、上側ユニット30の各支柱40を下側ユニット20の下側保持体21に対して接続することによって、1つの車線上において、容易に設置される。このように床版揚重装置100を組み立てるために、複数車線の通行を規制する必要がなく、また、クレーン車等の大型重機を用意する必要もないことから、床版揚重装置100を施工現場に設置する際の交通への影響を最小限に留めることができる。
【0134】
また、このように揚重高さを高くすることが可能な床版揚重装置100を、上述の床版撤去方法及び床版設置方法において用いられる移送用揚重装置13,17(床版移送装置)として用いることによって、移送用揚重装置13により揚重された既設床版2aの下面の高さH2を、運搬車両14の運転室の高さHtよりも十分に高くすることで、撤去された既設床版2aを、一般道路を走行可能な運搬車両14を用いて円滑に搬出することができるとともに、移送用揚重装置17により揚重された新設床版2bの下面の高さH2を、運搬車両18の運転室の高さHtよりも十分に高くすることで、一般道路を走行可能な運搬車両18を用いて新設床版2bを作業現場へと円滑に搬入することができる。
【0135】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0136】
上記実施形態では、第2支柱43のみがアクチュエータ45(伸縮機構)により伸縮可能な構成となっている。これに代えて、または、これに加えて、第1支柱41をアクチュエータ45(伸縮機構)により伸縮可能な構成としてもよい。
【0137】
また、上記実施形態では、床版揚重装置100は、走行機構25を介してレール上に設置されている。これに代えて、床版揚重装置100は、レール上ではなく、路面上に走行機構25を介して設置されてもよいし、路面上に走行機構25を介することなく設置されてもよい。
【0138】
また、上記実施形態では、各支柱40の位置は、第1水平連結部材52及び第2水平連結部材53を回動させることによって、第1位置と第2位置とに切り換えられる。これに代えて、第1水平連結部材52及び第2水平連結部材53を左右方向にスライドさせるスライド機構により、各支柱40の位置を、第1位置と第2位置とに切り換えてもよい。
【0139】
また、上記実施形態では、走行機構25が予め下側ユニット20に取り付けられているが、走行機構25は、下側ユニット20を荷台から降ろす際に、下側主桁22の連結部22bに連結されてもよい。
【0140】
また、上記実施形態では、揚重機構70や走行機構25、支柱変位機構50、形態変更機構60といった各機構の操作盤や電源、作動油供給源について明示されていないが、各機構の操作盤や電源となる発電機、作動油供給源となる油圧供給ユニットは、上側ユニット30の架構部36に設置されてもよい。この場合、床版揚重装置100の移動や揚重作業を単独で行うことが可能となる。
【0141】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0142】
100・・・床版揚重装置(床版移送装置)
2・・・床版
2a・・・既設床版(床版)
2b・・・新設床版
11・・・撤去用揚重装置(床版撤去装置)
12,16・・・搬送台車
13,17・・・移送用揚重装置(床版移送装置)
14,18・・・運搬車両
15・・・設置用揚重装置(床版設置装置)
20・・・下側ユニット
20A・・・第1下側ユニット(下側ユニット)
20B・・・第2下側ユニット(下側ユニット)
25・・・走行機構
30・・・上側ユニット
32・・・上側保持体(保持体)
40・・・支柱
41・・・第1支柱
42・・・ヒンジ部
43・・・第2支柱
45・・・アクチュエータ(伸縮機構)
47・・・第1接続部材(ヒンジ接続部材)
50・・・支柱変位機構
52・・・第1水平連結部材(水平連結部材)
53・・・第2水平連結部材(水平連結部材)
55・・・アクチュエータ(回動機構)
60・・・形態変更機構
61・・・スリーブ(移動部材)
64・・・アクチュエータ(移動機構)
66・・・第1リンク部材
67・・・第2リンク部材
70・・・揚重機構