(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169114
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20241128BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086322
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敏之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直明
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
(72)【発明者】
【氏名】奥村 武史
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BB03
5E070CB13
5E070CB17
5E070DA13
(57)【要約】
【課題】コイルパターン及びバンプ電極が磁性素体で埋め込まれた構造を有する電子部品において、バンプ電極に加わる応力を緩和しつつ、バンプ電極の抵抗値を低減する。
【解決手段】電子部品1は、磁性素体Mに埋め込まれ、絶縁層10~12を介して積層された導体層C0,C1と、磁性素体Mに埋め込まれ、実装面4に露出するバンプ電極P1,P2とを備える。導体層C0はコイルパターン100を含む。導体層C1は、コイルパターン110と接続パターン111とを含む。コイルパターン100の一端は、接続パターン111を介してバンプ電極P1に接続され、コイルパターン100の他端は、コイルパターン110を介してバンプ電極P2に接続される。バンプ電極P1は、接続パターン111よりも面積が大きく、且つ、円形度が高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する磁性素体と、
前記磁性素体に埋め込まれ、絶縁層を介して積層された複数の導体層と、
前記磁性素体に埋め込まれ、前記実装面に露出する第1のバンプ電極及び第2のバンプ電極と、
を備え、
前記複数の導体層は、第1の導体層と、前記第1の導体層と前記第1のバンプ電極及び前記第2のバンプ電極と、の間に位置する少なくとも1層の第2の導体層とを含み、
前記第1の導体層は、第1のコイルパターンを含み、
前記第2の導体層は、第2のコイルパターンと、積層方向から見て前記第1のバンプ電極と重なる接続パターンとを含み、
前記第1のコイルパターンの一端は、前記第2の導体層に含まれる前記接続パターンを介して前記第1のバンプ電極に電気的に接続され、
前記第1のコイルパターンの他端は、前記第2の導体層に含まれる前記第2のコイルパターンを介して前記第2のバンプ電極に電気的に接続され、
前記第1のバンプ電極は、積層方向から見て、前記第2の導体層に含まれる前記接続パターンよりも面積が大きく、且つ、円形度が高い、
電子部品。
【請求項2】
前記第2の導体層に含まれる前記接続パターンは、第1の方向を長手方向とし、前記第1の方向と直交または略直交する第2の方向を短手方向とする形状を有する、
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第2の導体層に含まれる前記接続パターンは、第1のビアを介して、前記第1のバンプ電極に接続されるとともに、第2のビアを介して、前記第1のコイルパターンの前記一端に接続され、
前記第1のビア及び前記第2のビアは、前記接続パターンの前記長手方向における異なる位置に形成されている、
請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記複数の導体層は、前記第1の導体層と、前記第1のバンプ電極及び前記第2のバンプ電極と、の間に積層された複数の前記第2の導体層を含み、
前記複数の第2の導体層にそれぞれ含まれる前記接続パターンは、第1の方向を長手方向とし、前記第1の方向と直交または略直交する第2の方向を短手方向とする形状を有する、
請求項2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記複数の第2の導体層にそれぞれ含まれる前記接続パターンは、
第1のビアを介して、該接続パターンよりも積層方向において上層に位置する他の前記第2の導体層に含まれる接続パターンに接続されるか、または、該接続パターンよりも積層方向において上層に位置する前記第1のバンプ電極に電気的に接続されるとともに、
第2のビアを介して、該接続パターンよりも積層方向において下層に位置する他の前記第2の導体層に含まれる接続パターンに接続されるか、または、該接続パターンよりも積層方向において下層に位置する前記第1の導体層における前記第1のコイルパターンの前記一端に電気的に接続され、
前記第1のビア及び前記第2のビアは、対応する前記接続パターンの前記長手方向における異なる位置に形成されている、
請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第2のバンプ電極は、積層方向から見て、前記第1のバンプ電極と同じ平面形状に形成され、
前記第1のコイルパターン及び前記第2のコイルパターンは、前記第2のバンプ電極と重なる位置において径方向におけるパターン幅が拡大する突起部を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
実装面を有する磁性素体と、
前記磁性素体に埋め込まれ、絶縁層を介して積層された複数の導体層と、
前記磁性素体に埋め込まれ、前記実装面に露出する第1のバンプ電極及び第2のバンプ電極と、
を備え、
前記複数の導体層は、第1の導体層と、前記第1の導体層と前記第1のバンプ電極及び前記第2のバンプ電極と、の間に位置する少なくとも1層の第2の導体層とを含み、
前記第1の導体層は、第1のコイルパターンを含み、
前記第2の導体層は、第2のコイルパターンと、積層方向から見て前記第1のバンプ電極と重なる接続パターンとを含み、
前記第1のコイルパターンの一端は、前記第2の導体層に含まれる前記接続パターンを介して前記第1のバンプ電極に電気的に接続され、
前記第1のコイルパターンの他端は、前記第2の導体層に含まれる前記第2のコイルパターンを介して前記第2のバンプ電極に電気的に接続され、
積層方向から平面視した前記第1のバンプ電極の面積は、積層方向から平面視した前記第2の導体層に含まれる前記接続パターンの面積よりも大きく、且つ、積層方向から平面視した前記第1のバンプ電極の形状のアスペクト比と、積層方向から平面視した前記接続パターンの形状のアスペクト比とが異なる、
電子部品。
【請求項8】
積層方向から平面視した前記第1のバンプ電極の形状のアスペクト比は、積層方向から平面視した前記接続パターンの形状のアスペクト比よりも1に近い
請求項7に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイルパターン及びこれに接続されたバンプ電極が磁性素体で埋め込まれた構造を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルパターン及びこれに接続されたバンプ電極が磁性素体に埋め込まれた構造を有するコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示においては、コイルパターン及びバンプ電極が磁性素体で埋め込まれた構造を有する電子部品において、バンプ電極に加わる応力を緩和しつつ、バンプ電極の抵抗値を低減する技術が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面による電子部品は、実装面を有する磁性素体と、磁性素体に埋め込まれ、絶縁層を介して積層された複数の導体層と、磁性素体に埋め込まれ、実装面に露出する第1のバンプ電極及び第2のバンプ電極とを備え、複数の導体層は、第1の導体層と、第1の導体層と第1のバンプ電極及び第2のバンプ電極と、の間に位置する少なくとも1層の第2の導体層とを含み、第1の導体層は、第1のコイルパターンを含み、第2の導体層は、第2のコイルパターンと、積層方向から見て第1のバンプ電極と重なる接続パターンとを含み、第1のコイルパターンの一端は、第2の導体層に含まれる接続パターンを介して第1のバンプ電極に電気的に接続され、第1のコイルパターンの他端は、第2の導体層に含まれる第2のコイルパターンを介して第2のバンプ電極に電気的に接続され、第1のバンプ電極は、積層方向から見て、第2の導体層に含まれる接続パターンよりも面積が大きく、且つ、円形度が高い。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、コイルパターン及びバンプ電極が磁性素体で埋め込まれた構造を有する電子部品において、バンプ電極に加わる応力を緩和しつつ、バンプ電極の抵抗値を低減する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による電子部品(コイル部品1)の外観を説明するための略斜視図である。
【
図2】
図2は、コイル部品1の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、導体層C0のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図4】
図4は、導体層C1のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図5】
図5は、導体層C2のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図6】
図6は、導体層C3のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図7】
図7は、バンプ電極P1と接続パターン111,121,131の形状をより詳細に説明するための透視拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、本開示の一実施形態による電子部品1の外観を説明するための略斜視図である。以下、電子部品1を、コイル部品1と記載する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、Z方向をコイル軸とするコイル部3が磁性素体Mに埋め込まれた構造を有するチップ型のコイル部品である。磁性素体Mは、コイル軸と直交(または略直交)しXY面を構成する実装面4及び上面5を有している。実装面4と上面5は、互いに反対側に位置する。実装面4には端子電極E1,E2が設けられており、実装時においては、実装面4が回路基板と向かい合うよう、端子電極E1,E2が回路基板にハンダ付けされる。つまり、
図1に示すコイル部品1の上下方向は、実装時とは180°異なっている。
【0011】
図2は、本実施形態によるコイル部品1の模式的な断面図である。
【0012】
図2に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、コイル軸方向(Z方向)に交互に積層された絶縁層10~14及び導体層C0~C3を有している。導体層C0~C3はCuなどからなり、コイル部3を構成する。絶縁層10~14は、樹脂などからなる。磁性素体Mは、磁性樹脂層M1,M2からなる。このうち、磁性樹脂層M1はコイル部3の内径領域、コイル部3の径方向における外側領域、並びに、コイル部3のコイル軸方向における一方側に設けられる。磁性樹脂層M2は、コイル部3のコイル軸方向における他方側に設けられる。磁性樹脂層M1,M2は、磁性フィラーとバインダー樹脂を含む複合磁性材料からなる。磁性樹脂層M1を構成する複合磁性材料と磁性樹脂層M2を構成する複合磁性材料は、互いに同じ材料であっても構わないし、互いに異なる材料であっても構わない。磁性フィラーとしては、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などの金属磁性材料を用いることができる。バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0013】
磁性樹脂層M1にはバンプ電極P1,P2が埋め込まれている。バンプ電極P1,P2はCuなどからなり、Z方向に延在するピラー状の導体である。このうち、バンプ電極P1の一端である下面Bは、導体層C0~C3によって構成されるコイルの一端に接続され、バンプ電極P2の一端である下面Bは、導体層C0~C3によって構成されるコイルの他端に接続される。導体層C0はバンプ電極P1,P2から最も遠い最下層の導体層であり、他の導体層C1~C3は、導体層C0とバンプ電極P1,P2との間に位置する。
【0014】
バンプ電極P1,P2の他端である上面Tは実装面4から露出し、それぞれ端子電極E1,E2に接続される。バンプ電極P1,P2の側面S(Z方向に沿った面)は、バンプ保護膜15で覆われている。これにより、バンプ電極P1,P2と磁性素体Mの間にバンプ保護膜15が介在することから、バンプ電極P1,P2と磁性素体Mの接触が防止され、両者の絶縁が確保される。また、バンプ電極P1,P2を有する本実施形態のコイル部品1を回路基板等に実装すると、バンプ電極P1,P2によって応力が緩和され、コイル部3へのダメージが低減される。このため、コイル部品1の実装信頼性も向上する。
【0015】
磁性素体Mの実装面4及び上面5は、それぞれカバー絶縁膜21,22で覆われている。このうち、カバー絶縁膜22については上面5のほぼ全面を覆うのに対し、カバー絶縁膜21にはバンプ電極P1,P2をそれぞれ露出させる開口21a,21bが設けられている。これにより、バンプ電極P1,P2の上面T(XY面)は、カバー絶縁膜21の開口21a,21bからそれぞれ露出する。開口21a,21bから露出するバンプ電極P1,P2の上面Tには、それぞれ端子電極E1,E2が設けられる。端子電極E1,E2の一部は、カバー絶縁膜21の表面上に位置していても構わない。端子電極E1,E2は、例えば、Agなどからなる金属粉とバインダー樹脂を含む導電性樹脂材料からなる導体層31と、導体層31の表面に形成された金属からなる導体層32によって構成される。したがって、導体層32を構成する導電材料は、導体層31を構成する導電材料よりも抵抗値が低い。
【0016】
導体層32は、複数の金属の積層膜、例えばNiとSnの積層膜であっても構わない。NiとSnの積層膜は、銀ペーストなどの導電性樹脂材料よりも十分に低抵抗であるとともに、ハンダに対する高い耐熱性と高い濡れ性を有している。一方、下層に位置する導体層31は、上層に位置する導体層32と比べ、カバー絶縁膜21に対して高い密着性を得ることができるとともに、導電性樹脂の持つ高い柔軟性によって熱衝撃や外部応力を緩和することができるため、信頼性が高められる。
【0017】
このように、磁性素体Mの実装面4がカバー絶縁膜21で覆われていることから、端子電極E1,E2と磁性素体Mの接触が防止され、これにより製品の信頼性が高められる。バンプ電極P1,P2の上面Tについては、カバー絶縁膜21で覆われることなく、その全面がそれぞれ端子電極E1,E2で覆われていても構わない。バンプ電極P1,P2の上面Tは、カバー絶縁膜21の表面と同一又は略同一の平面を構成していても構わない。このような構成によれば、バンプ電極P1,P2と端子電極E1,E2の接触面積が増大するため、両者間における接触抵抗を低減することが可能となる。しかも、バンプ電極P1,P2の上面Tがカバー絶縁膜21で覆われていない場合、全体の高さも低背化される。また、バンプ保護膜15の端面についても、実装面4から露出しても構わない。バンプ保護膜15は、カバー絶縁膜21と接触するとともに、その上端面は、バンプ電極P1,P2の上面T及びカバー絶縁膜21の表面と同一又は略同一の平面を構成しても構わない。これによれば、バンプ電極P1,P2の側面Sがバンプ保護膜15によって確実に保護される。また、磁性素体Mの上面5については、カバー絶縁膜22で覆われていることから、製品の信頼性が高められるとともに、上面5に方向性マークなどを設けることが可能となる。
【0018】
図3~
図6は、それぞれ導体層C0~C3のパターン形状を説明するための略平面図である。
図3~
図6に示すA-A線は、
図2に示す断面位置を示している。
【0019】
図3に示すように、導体層C0にはコイルパターン100が設けられる。コイルパターン100は約1ターン周回するパターンであり、その両端は、絶縁層11に設けられたビア11a,11bを介して導体層C1に接続される。
【0020】
図4に示すように、導体層C1にはコイルパターン110及び接続パターン111が設けられる。コイルパターン110は約1ターン周回するパターンであり、その一端は、絶縁層11に設けられたビア11bを介して導体層C0のコイルパターン100の他端に接続されるとともに、その他端は、絶縁層12に設けられたビア12bを介して導体層C2に接続される。接続パターン111は、導体層C0に設けられたコイルパターン100の一端と重なる位置に設けられており、絶縁層11に設けられたビア11aを介して導体層C0のコイルパターン100の一端に接続されるとともに、絶縁層12に設けられたビア12aを介して導体層C2に接続される。
【0021】
図5に示すように、導体層C2にはコイルパターン120及び接続パターン121が設けられる。コイルパターン120は約1ターン周回するパターンであり、その一端は、絶縁層12に設けられたビア12bを介して導体層C1のコイルパターン110の他端に接続されるとともに、その他端は、絶縁層13に設けられたビア13bを介して導体層C3に接続される。接続パターン121は、導体層C1に設けられた接続パターン111と重なる位置に設けられており、絶縁層12に設けられたビア12aを介して導体層C1の接続パターン111に接続されるとともに、絶縁層13に設けられたビア13aを介して導体層C3に接続される。
【0022】
図6に示すように、導体層C3にはコイルパターン130及び接続パターン131が設けられる。コイルパターン130は約0.5ターン周回するパターンであり、その一端は、絶縁層13に設けられたビア13bを介して導体層C2のコイルパターン120の他端に接続されるとともに、その他端は、絶縁層14に設けられたビア14bを介してバンプ電極P2に接続される。接続パターン131は、導体層C2に設けられた接続パターン121と重なる位置に設けられており、絶縁層13に設けられたビア13aを介して導体層C2の接続パターン121に接続されるとともに、絶縁層14に設けられたビア14aを介してバンプ電極P1に接続される。ビア14a,14bの平面位置は、それぞれバンプ電極P1,P2の中心位置であっても構わないし、それぞれバンプ電極P1,P2の中心からオフセットした位置であっても構わない。
【0023】
これにより、最下層に位置するコイルパターン100の一端は、導体層C1~C3に含まれる接続パターン111,121,131を介してバンプ電極P1に接続される。コイルパターン100の他端は、導体層C1~C3に含まれるコイルパターン110,120,130を介してバンプ電極P2に接続される。その結果、端子電極E1,E2間には、コイルパターン100,110,120,130が直列に接続され、合計で約3.5ターンのコイルが形成される。本実施形態によるコイル部品1は、絶縁層10~14と導体層C0~C3が交互に積層されてなるコイル部3が磁性素体Mに埋め込まれた構造を有する埋め込み型のコイル部品であり、セラミックなどからなる磁性シートとコイルパターンが交互に積層されてなる積層型のコイル部品とは構造が異なる。例えば、積層型のコイル部品においては、積層方向に隣接するコイルパターン間に磁性シートが介在するが、本実施形態によるコイル部品1は、積層方向に隣接するコイルパターンが絶縁層によって絶縁されており、両者間に磁性素体Mは介在しない。また、プリント基板上にコイルパターンを形成したタイプのシートコイルとも構造が異なる。
【0024】
図7は、バンプ電極P1と接続パターン111,121,131の形状をより詳細に説明するための透視拡大平面図である。
【0025】
図7に示すように、積層方向であるZ方向から見た平面視で、バンプ電極P1がほぼ真円形状であるのに対し、接続パターン111,121,131は、Y方向を長手方向とし、X方向を短手方向とする非円形状であり、楕円に近い平面形状を有している。バンプ電極P1の平面形状が真円である必要はないが、少なくとも接続パターン111,121,131よりも円形度が高い。これにより、バンプ電極P1と素体10の熱膨張係数の差によって両者の界面に生じる応力が緩和され、バンプ電極P1と磁性素体Mとの間に剥離などが生じにくくなる。バンプ電極P1の平面形状の円形度が比較的高い場合、バンプ電極P1の平面形状は、円に近い形状となることから、応力が集中する箇所が低減される。このため、例えば、応力の集中による剥離が生じにくくなる。バンプ電極P2についても、バンプ電極P1と同じサイズ及び同じ平面形状を有していても構わない。
【0026】
また、
図7に示すように、積層方向であるZ方向から見た平面視で、バンプ電極P1の面積は、接続パターン111,121,131のそれぞれの面積よりも大きい。これにより、バンプ電極P1の抵抗値が低減されるとともに、機械的強度を十分に確保できる。これに対し、接続パターン111,121,131についてはバンプ電極P1よりも面積が小さいことから、コイルパターン110,120,130の径や導体幅を十分に確保することが可能となる。ここで、バンプ電極P1の径をDとし、接続パターン111,121,131の長手方向におけるサイズをL1、短手方向におけるサイズをL2とした場合、本実施形態においては、D>L2を満たしている。つまり、接続パターン111,121,131の短手方向におけるサイズL2は、バンプ電極P1の径Dよりも小さい。接続パターン111,121,131の長手方向におけるサイズL1については、バンプ電極P1の径Dとほぼ同じであっても構わない。
【0027】
さらに、断面図である
図2に示すように、接続パターン111,121,131にそれぞれ割り当てられた2つのビアは、平面位置が長手方向に異なっている。例えば、接続パターン111に着目すると、接続パターン111よりも下層に位置するコイルパターン100に接続するためのビア11aについてはY方向における一方側に配置され、接続パターン111よりも上層に位置する接続パターン121に接続するためのビア12aについてはY方向における他方側に配置されている。また、接続パターン121に着目すると、接続パターン121よりも下層に位置する接続パターン111に接続するためのビア12aについてはY方向における他方側に配置され、接続パターン121よりも上層に位置する接続パターン131に接続するためのビア13aについてはY方向における一方側に配置されている。さらに、接続パターン131に着目すると、接続パターン131よりも下層に位置する接続パターン121に接続するためのビア13aについてはY方向における一方側に配置され、接続パターン131よりも上層に位置するバンプ電極P1に接続するためのビア14aについてはY方向における他方側に配置されている。このような構成により、同じ接続パターンに割り当てられた2つのビアが上下に一直線に並ばないことから、バンプ電極P1を介して外部から加わる応力が緩和されるとともに、導体層C1~C3を構成するCuなどからなる金属材料と絶縁層10~14を構成する樹脂材料との熱膨張係数の差に起因する応力が緩和されることから、ビアの接続信頼性が高められる。
【0028】
また、
図3~
図6に示すように、コイルパターン100,110,120,130は、Z方向から見た平面視でバンプ電極P2と重なる位置において径方向におけるパターン幅が拡大する突起部102,112,122,132を有している。これにより、バンプ電極P2を形成する際、下地となる面の平坦性が確保されることから、バンプ電極P2を設計通りの形状に形成することが可能となる。
【0029】
さらに、本実施形態においては、コイル部3を構成するコイルパターン100,110,120,130や接続パターン111,121,131については絶縁層10~14によって磁性素体Mから絶縁され、バンプ電極P1,P2についてはバンプ保護膜15によって磁性素体Mから絶縁され、端子電極E1,E2についてはカバー絶縁膜21によって磁性素体Mから絶縁される。これにより、全ての導体パターンが磁性素体Mから絶縁されることから、高い絶縁特性を得ることが可能となる。
【0030】
ここで、絶縁層10~14、バンプ保護膜15及びカバー絶縁膜21,22を構成する具体的な材料については特に限定されないが、バンプ保護膜15とカバー絶縁膜21,22が互いに異なる絶縁材料からなるものであっても構わない。これは、バンプ保護膜15については、磁性素体Mに埋め込まれるとともに、バンプ電極P1,P2と接触するのに対し、カバー絶縁膜21,22については、コイル部品1の最表層を構成することから、製品の信頼性を高めるために求められる諸特性が異なるからである。
【0031】
具体的には、バンプ保護膜15については、シリカなどの無機材料からなるフィラーを含有する熱膨張係数の低い絶縁材料を選択することにより、バンプ電極P1,P2の材料であるCuとの熱膨張係数差を低減することができる。これに対し、カバー絶縁膜21,22については、ヤング率の低い樹脂材料を用いることにより、実装面4及び上面5における磁性素体Mの物理的な保護特性が高められる。したがって、バンプ保護膜15としては、カバー絶縁膜21,22よりも熱膨張係数の低い絶縁材料を選択し、カバー絶縁膜21,22については、バンプ保護膜15よりもヤング率よりも低い絶縁材料を選択すればよい。また、求められる特性に応じ、カバー絶縁膜21,22を構成する絶縁材料にフィラーを添加しても構わない。例えば、カバー絶縁膜21,22を構成する絶縁材料に磁性フィラーを添加すれば、インダクタンスをより高めることも可能である。
【0032】
絶縁層10~14については、磁性素体Mに埋め込まれるとともに、コイルパターン100,110,120,130や接続パターン111,121,131と接触することから、バンプ保護膜15と同じ絶縁材料を用いても構わない。絶縁層10~14とバンプ保護膜15に同じ絶縁材料を用いれば、材料コストを低減することが可能となる。
【0033】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0034】
例えば、上記実施形態では、コイル部3が4層の導体層C0~C3によって構成されているが、コイル部に含まれる導体層の層数については特に限定されない。また、上記実施形態では、各導体層C0~C2に設けられたコイルパターン100,110,120のターン数が約1ターンであるが、各導体層に設けられるコイルパターンのターン数については特に限定されない。
【0035】
また、バンプ電極(P1、P2)の平面形状は、非円形状であってよく、例えば、矩形や、角が丸められた矩形であってもよい。接続パターン(111,121,131)の平面形状も、例えば、矩形や、角が丸められた矩形であってもよい。この場合において、バンプ電極の平面形状のアスペクト比は、接続パターンのアスペクト比と異なっていてよい。バンプ電極の平面形状のアスペクト比は、例えば、バンプ電極の平面形状のY方向の最大幅を、X方向の最大幅により除算する(平面形状のY方向の最大幅/X方向の最大幅)ことにより算出されてよい。バンプ電極の平面形状のY方向の最大幅と、X方向の最大幅とが等しい場合、アスペクト比は「1」と計算される。同様に、接続パターンの平面形状のアスペクト比は、例えば、接続パターンの平面形状のY方向の最大幅をX方向の最大幅により除算することにより算出されてよい。接続パターンの平面形状のY方向の最大幅と、X方向の最大幅とが等しい場合、アスペクト比は「1」と計算される。
【0036】
例えば、バンプ電極の平面形状のアスペクト比が、接続パターンの平面形状のアスペクト比よりも「1」に近くなるように、バンプ電極の平面形状と、接続パターンの平面形状とが形成されてもよい。この場合、バンプ電極の平面形状よりも、接続パターンの平面形状の方が、X方向に横長(X方向が長軸方向)か、Y方向に縦長(Y方向が長軸方向)な形状となる。接続パターンがこのように形成されることで、例えば、当該接続パターンに接続されるビア導体を、当該接続パターンの長軸方向における異なる位置に形成することができる。
【0037】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0038】
本開示の一側面による電子部品は、実装面を有する磁性素体と、磁性素体に埋め込まれ、絶縁層を介して積層された複数の導体層と、磁性素体に埋め込まれ、実装面に露出する第1のバンプ電極及び第2のバンプ電極とを備え、複数の導体層は、第1の導体層と、第1の導体層と第1のバンプ電極及び第2のバンプ電極と、の間に位置する少なくとも1層の第2の導体層とを含み、第1の導体層は、第1のコイルパターンを含み、第2の導体層は、第2のコイルパターンと、積層方向から見て第1のバンプ電極と重なる接続パターンとを含み、第1のコイルパターンの一端は、第2の導体層に含まれる接続パターンを介して第1のバンプ電極に電気的に接続され、第1のコイルパターンの他端は、第2の導体層に含まれる第2のコイルパターンを介して第2のバンプ電極に電気的に接続され、第1のバンプ電極は、積層方向から見て、第2の導体層に含まれる接続パターンよりも面積が大きく、且つ、円形度が高い。これによれば、第1のバンプ電極と磁性素体との間に剥離などが生じにくくなる。
【0039】
上記の電子部品において、第2の導体層に含まれる接続パターンは、第1の方向を長手方向とし、第1の方向と直交または略直交する第2の方向を短手方向とするものであっても構わない。これによれば、接続パターンに接続されるビアの形成位置についての自由度が高められる。
【0040】
上記の電子部品において、第2の導体層に含まれる接続パターンは、第1のビアを介して、第1のバンプ電極に接続されるとともに、第2のビアを介して、第1のコイルパターンの一端に接続され、第1のビア及び第2のビアは、対応する接続パターンの長手方向における位置が互いに異なっても構わない。これによれば、第1のバンプ電極を介して外部から加わる応力が緩和されるとともに、熱膨張係数の差に起因する応力が緩和されることから、ビアの接続信頼性が高められる。
【0041】
上記の電子部品において、複数の導体層は、第1の導体層と、第1のバンプ電極及び第2のバンプ電極と、の間に積層された複数の第2の導体層を含み、複数の第2の導体層にそれぞれ含まれる接続パターンは、第1の方向を長手方向とし、第1の方向と直交または略直交する第2の方向を短手方向とする形状を有していても構わない。これによれば、より高いインダクタンスを得ることが可能となる。
【0042】
上記の電子部品において、複数の第2の導体層にそれぞれ含まれる接続パターンは、第1のビアを介して、該接続パターンよりも積層方向において上層に位置する他の第2の導体層に含まれる接続パターンに接続されるか、または、該接続パターンよりも積層方向において上層に位置する第1のバンプ電極に電気的に接続されるとともに、第2のビアを介して、該接続パターンよりも積層方向において下層に位置する他の第2の導体層に含まれる接続パターンに接続されるか、または、該接続パターンよりも積層方向において下層に位置する第1の導体層における第1のコイルパターンの一端に電気的に接続され、第1のビア及び第2のビアは、対応する接続パターンの長手方向における異なる位置に形成されていても構わない。これによれば、第1のバンプ電極を介して外部から加わる応力が緩和されるとともに、熱膨張係数の差に起因する応力が緩和されることから、ビアの接続信頼性が高められる。
【0043】
上記の電子部品において、第2のバンプ電極は、積層方向から見て、第1のバンプ電極と同じ平面形状に形成され、第1のコイルパターン及び第2のコイルパターンは、第2のバンプ電極と重なる位置において径方向におけるパターン幅が拡大する突起部を有していても構わない。これによれば、第2のバンプ電極を形成する際の下地となる面の平坦性を確保することができる。
【0044】
本開示の他の側面による電子部品は、実装面を有する磁性素体と、磁性素体に埋め込まれ、絶縁層を介して積層された複数の導体層と、磁性素体に埋め込まれ、実装面に露出する第1のバンプ電極及び第2のバンプ電極とを備え、複数の導体層は、第1の導体層と、第1の導体層と第1のバンプ電極及び第2のバンプ電極と、の間に位置する少なくとも1層の第2の導体層とを含み、第1の導体層は、第1のコイルパターンを含み、第2の導体層は、第2のコイルパターンと、積層方向から見て第1のバンプ電極と重なる接続パターンとを含み、第1のコイルパターンの一端は、第2の導体層に含まれる接続パターンを介して第1のバンプ電極に電気的に接続され、第1のコイルパターンの他端は、第2の導体層に含まれる第2のコイルパターンを介して第2のバンプ電極に電気的に接続され、積層方向から平面視した第1のバンプ電極の面積は、積層方向から平面視した第2の導体層に含まれる接続パターンの面積よりも大きく、且つ、積層方向から平面視した第1のバンプ電極の形状のアスペクト比と、積層方向から平面視した接続パターンの形状のアスペクト比とが異なる。これによれば、設計の自由度が高められる。
【0045】
上記の電子部品において、積層方向から平面視した第1のバンプ電極の形状のアスペクト比は、積層方向から平面視した接続パターンの形状のアスペクト比よりも1に近くても構わない。これによれば、第1のバンプ電極と磁性素体との間に剥離などが生じにくくなる。
【符号の説明】
【0046】
1 コイル部品(電子部品)
3 コイル部
4 実装面
5 上面
10 素体
10~14 絶縁層
11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b ビア
15 バンプ保護膜
21,22 カバー絶縁膜
21a,21b 開口
31,32 導体層
100,110,120,130 コイルパターン
102,112,122,132 突起部
111,121,131 接続パターン
B 下面
C0~C3 導体層
E1,E2 端子電極
M 磁性素体
M1,M2 磁性樹脂層
P1,P2 バンプ電極
S 側面
T 上面