(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169118
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】筆記具用水性インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/16 20140101AFI20241128BHJP
【FI】
C09D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086327
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中田 有亮
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB01
4J039BE01
4J039CA07
4J039EA38
4J039EA41
4J039EA42
4J039EA44
4J039GA26
4J039GA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐水固着性が良好で、低温安定性に優れ、紙面等に対して裏抜けせず、優れた描線乾燥性を高度に両立することができる筆記具用水性インク組成物を提供する。
【解決手段】本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、色材と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションと、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物と、凝固点が-20℃以下のアルコール類と、水とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、色材と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションと、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物と、凝固点が-20℃以下のアルコール類と、水とを含むことを特徴とする、筆記具用水性インク組成物。
【請求項2】
前記水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションの質量を(A)、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物の質量を(B)、凝固点が-20℃以下のアルコール類の質量を(C)とした場合に、〔(B)+(C)〕/(A)の質量比率が下記式(I)の範囲を充足することを特徴とする、請求項1記載の筆記具用水性インク組成物。
式(I):0.05<〔(B)+(C)〕/(A)<2.0
【請求項3】
前記アルコール類の凝固点が-50℃以下であることを特徴とする、請求項1又は2記載の筆記具用水性インク組成物。
【請求項4】
前記イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物の質量平均分子量が50,000~400,000であることを特徴とする、請求項1又は2記載の筆記具用水性インク組成物。
【請求項5】
前記水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションのガラス転移温度(Tg)が140℃以下であることを特徴とする、請求項1又は2記載の筆記具用水性インク組成物。
【請求項6】
前記水性インク組成物のずり速度38.3s-1の粘度が10~45mPa・sであることを特徴とする、請求項1又は2記載の筆記具用水性インク組成物。
【請求項7】
前記水性インク組成物には、更に多糖類を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の筆記具用水性インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サインペン、マーキングペン等に好適な筆記具用水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、サインペン、マーキングペン、ボールペン等に用いられる水性インク組成物は、耐水固着性や、描線乾燥性の向上などが求められている。
【0003】
従来において、優れた耐水固着性を付与するため、樹脂エマルションや水溶性樹脂を添加したインクは、低温に保管した際に樹脂成分同士が融着し、凝集体が発生することで筆記の際に不具合が生じることがある。
この不具合を解消するには、例えば、グリコール類を一定量以上添加することである程度抑制できるが、一方で、耐水固着性が低下するだけでなく、紙面などに対して裏抜けしやすく、描線の乾燥性も遅くなるという課題があった。
【0004】
従来の筆記具用水性インク組成物において、耐水固着性、描線乾燥性、描線の滲みの発生の防止、低温に保管した際に筆記性能などを考慮した水性インク組成物等としては、例えば、
(1) 経時安定性、低温安定性を損なわず、描線の滲みが発生せず、描線乾燥性に優れた筆記具用水性インク組成物を提供するために、少なくとも、グリシンベタインと、二糖以上の糖アルコールを含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物(例えば、特許文献1参照)、
(2) ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない筆記具用水性インク組成物を提供するために、着色剤と、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールと、10質量%以下の水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物(例えば、特許文献2参照)、
【0005】
(3) -10℃以下の極低温化にあっても凍結防止性能に優れ、低温化での筆記性にも優れ、しかも、裏抜けもなく描線乾燥性及びインキ経時安定性にも優れた水性インキ組成物を提供するために、少なくとも着色剤と水とを含有する水性インキ組成物であって、更に溶剤として(a)低級アルコールと(b)グリコール類とを含有し、該低級アルコールとグリコール類の合計含有量がインキ組成物全量に対して10~18重量%であり、その含有比率〔(b)/(a)〕が重量比で0.9~9であることを特徴とする水性インキ組成物(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~3に記載の筆記具用水性インク組成物は、従来にない優れた機能を有するものであるが、耐水固着性が良好で、低温安定性に優れ、紙面等に対して裏抜けせず、優れた描線乾燥性を高度に両立することは未だ不十分であり更なる改善などが切望されていた。
【0007】
他方、イソブチレン-無水マレイン酸ポリマーを水性インク組成物等に用いたものとしては、例えば、
(4) 記録媒体上の耐水性や耐擦過性等の堅牢性が高い印刷物が得られる着色剤水溶液の提供、さらにインクジェット記録方式に用いた場合に耐目詰まり性が高い水性インクを提供するために、油溶染料、分散染料、溶剤易溶性顔料等の疎水性着色剤、カルボン酸、フェノール基等の酸性基を含んだ疎水性樹脂とアルカリ物質からなる塩、水を含む疎水性着色剤水溶液であって、疎水性着色剤を溶解した前記疎水性樹脂をアルカリ物質にて水溶性塩にして水に溶解あるいは分散されているインク組成物、実施例13等には上記疎水性樹脂として、イソブチレン-無水マレイン酸ポリマーを用いる例示(例えば、特許文献4参照)があり、
(5) また、溶解性、再分散性に優れる着色タブレット、これを用いた筆記具用水性インク組成物などを提供するために、少なくとも、着色剤、分散剤としての、イソブチレン系ポリマーなどを含む着色タブレットを含有した筆記具用水性インク組成物、実施例3等には上記イソブチレン系ポリマーとして、イソブチレン無水マレイン酸共重合ポリマーを用いる例示などが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
しかしながら、上記特許文献4及び5に記載の水性インク組成物等は、イソブチレン-無水マレイン酸ポリマーを用いる例示が開示されている点で本発明とは近接技術を示すものであるが、特許文献5の水性インク組成物は、インクジェット記録方式に用いるものであり、また、特許文献6の水性インク組成物も、イソブチレン-無水マレイン酸ポリマーを分散剤として用いる例示であり、本発明とはその使用目的や、技術思想(構成及びその構成に基づく作用効果)が相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-52832号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2016-151003号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2006-206640号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開平9-143410号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2023-31243号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の課題などに鑑み、これを解消しようとするものであり、耐水固着性が良好で、低温安定性に優れ、紙面等に対して裏抜けせず、優れた描線乾燥性を高度に両立することができる筆記具用水性インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、色材と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションと、特定のイソブチレン共重合物の中和物と、特定物性となるアルコール類と、水とを含むことにより、上記目的の筆記具用水性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0012】
すなわち、本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、色材と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションと、イソブチレン-無水マレイン酸共重合物の中和物と、凝固点が-20℃以下のアルコール類と、水とを含むことを特徴とする。
前記水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションの質量を(A)、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物の質量を(B)、凝固点が-20℃以下のアルコール類の質量を(C)とした場合に、〔(B)+(C)〕/(A)の質量比率が下記式(I)の範囲を充足することが好ましい。
式(I):0.05<〔(B)+(C)〕/(A)<2.0
前記アルコール類の凝固点が-50℃以下であることが好ましい。
前記イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物の質量平均分子量が50,000~400,000であることが好ましい。
前記水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションのガラス転移温度(Tg)が140℃以下であることが好ましい。
前記水性インク組成物のずり速度38.3s-1の粘度が10~45mPa・sであることが好ましい。
前記水性インク組成物には、更に多糖類を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐水固着性が良好で、低温安定性に優れ、紙面等に対して裏抜けせず、優れた描線乾燥性を高度に両立することできる筆記具用水性インク組成物が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0015】
〈筆記具用水性インク組成物〉
本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、色材と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションと、イソブチレン-無水マレイン酸共重合物の中和物と、凝固点が-20℃以下のアルコール類と、水とを含むことを特徴とするものである。
【0016】
<色材>
本発明に用いる色材としては、水に溶解もしくは分散する全ての染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、中空樹脂顔料(粒子)、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、アルミニウム顔料などの光輝性顔料、熱変色性顔料(粒子)、光変色性顔料(粒子)等、およびこれらの複合顔料(粒子)を制限なく使用することができる。用いることができるアルミニウム顔料としては、市販品では、例えば、アルミニウム表面をリン系化合物により防錆処理したWXMシリーズ、アルミニウム表面をモリブテン化合物により防錆処理したWLシリーズ、アルミニウムフレークの表面を密度の高いシリカでコーティングしたEMRシリーズ〔以上、東洋アルミニウム社製〕、SW-120PM〔以上、旭化成ケミカルズ社製〕等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、酸化チタンを添加する場合においては、例えば、アルミナまたはシリカ、またはジルコニアまたは亜鉛処理されたものを用いることが望ましく、ルチル型またはアナターゼ型の酸化チタンを用いることが好ましい。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6-C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154,ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBB等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
【0017】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0018】
熱変色性顔料(粒子)としては、発色剤として機能するロイコ色素と、該ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となる顕色剤及び上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールすることができる変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~10μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された熱変色性顔料などを挙げることができる。
光変色性顔料(粒子)としては、例えば、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などから選択される1種以上と、テルペンフェノール樹脂などの樹脂とにより構成される光変色性粒子や、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などから選択される1種以上と、有機溶媒と、酸化防止剤、光安定剤、増感剤などの添加剤とを含む光変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~10μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された光変色性顔料(粒子)などを挙げることができる。
【0019】
本発明(実施例等含む)において、「平均粒子径」は、レーザー回析または動的光散乱法により測定した値であり、レーザー回折法においては、体積基準により算出されたD50の値であり、この測定は、例えば日機装株式会社の粒子径分布解析装置HRA9320-X100を用いることができ、動的光散乱法を用いた平均粒子径とは、例えば、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子社製)を用いて算出された、散乱強度分布におけるキュムラント法解析の平均粒子径の値である。
上記色材は、各単独で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)使用することができる。
また、これらの色材において、耐光性などの点から、顔料の使用、すなわち、上記無機顔料、有機顔料、顔料を含有した樹脂粒子顔料または樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料などの着色樹脂顔料、白色系プラスチック顔料、中空樹脂顔料(粒子)、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、アルミニウム顔料などの光輝性顔料、熱変色性顔料(粒子)、光変色性顔料(粒子)等、およびこれらの複合顔料(粒子)の使用が望ましい。
【0020】
これらの色材の(合計)含有量は、筆記具用水性インク組成物全量(以下、単に「インク組成物全量」という)に対して、好ましくは0.5~50質量%、更に好ましくは、2~40質量%、特に好ましくは、5~30質量%とすることが望ましい。
この色材の含有量を0.5質量%以上とすることにより、塗膜の低光沢性、および均一性を発現しより美しい塗膜の形成を実現とすることができ、一方50質量%以下とすることにより、粘度上昇を抑制し、インクの流動性が良好となるので好ましい。
【0021】
本発明に用いる水溶性樹脂、樹脂エマルションは、定着剤、分散剤、安定化剤として機能するものであり、例えば、ポリアクリル酸、アクリル系樹脂、水溶性スチレン-アクリル樹脂、水溶性スチレン-マレイン酸樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性マレイン酸樹脂、水溶性スチレン樹脂、水溶性エステル-アクリル樹脂、エチレン-マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、水溶性ウレタン樹脂等の分子内に疎水部を持つ水溶性樹脂、また、アクリル系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、ポリオレフィン系エマルション、ウレタン系エマルション、スチレン-ブタジエンエマルション、スチレン-アクリロニトリルエマルション、シリコーンレジンエマルション、シリコーンアクリル共重合体エマルションなどの樹脂エマルションなどから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0022】
好ましくは、色材の分散性、粘度調整、並びに、定着力向上の点から、ガラス転移温度(Tg)が140℃以下、好ましくはTgが120℃以下、更に好ましくは、Tgが50℃以下、特に好ましくはTgが20℃以下のアクリル系樹脂、水溶性スチレン-アクリル樹脂、スチレンマレイン酸、ウレタン樹脂の水溶性樹脂、または、アクリル系樹脂エマルションなどの各樹脂エマルションの使用が望ましい。
上記樹脂のTgが好ましくは120℃以下のもの、更に好ましくは、Tgが50℃以下、特に20℃以下とすることにより、分散安定性と低温安定性を更に良好とすることができる。
本発明において、「ガラス転移温度」は、JIS K7121に準じて測定した際のTg、例えば、Rigaku thermo plus evo DSC8230(リガク社製)を用いて測定することができる。
【0023】
上記水溶性樹脂、樹脂エマルションとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび/またはスチレン系モノマーとの共重合体などを使用することができ、市販品では、BASF社製のジョンクリルシリーズ、例えば、水溶性樹脂では、BASF社製のジョンクリルPDX-6102B(水溶性アクリル系樹脂、Tg:19℃)、ジョンクリル52J(水溶性スチレン-アクリル樹脂、Tg:56℃)、ジョンクリル63J(水溶性スチレン-アクリル樹脂、Tg:73℃)、ジョンクリルJDX-6180(水溶性スチレン-アクリル樹脂、Tg:134℃)ジョンクリル6610(水溶性スチレン-アクリル樹脂、Tg:85℃)、または、樹脂エマルションでは、BASF社製のジョンクリルPDX-7182(アクリル系樹脂エマルション、Tg:5℃)、ジョンクリルPDX-7734(アクリル系樹脂エマルション、Tg:40℃)、ジョンクリルPDX-7780(アクリル系樹脂エマルション、Tg:92℃)、ジョンクリルPDX-7158(アクリル系樹脂エマルション、Tg:55℃)などが使用できる。
【0024】
これらの水溶性樹脂、樹脂エマルションの(合計:固形分)含有量は、インク組成物全量に対して、描線品位の向上、インク吐出性の更なる向上の点から、0.1~20質量%が好ましく、更に好ましくは、0.5~15質量%、特に好ましくは、1~10質量%である。
【0025】
本発明に用いるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物は、イソブチレンと無水マレイン酸の共重合物の中和物であり、本発明においては上記水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションと、後述する凝固点が-20℃以下のアルコール類との併用等により、本発明の効果を相乗的に発揮せしめる成分となるものである。
用いるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物において、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の基本構造は下記式(I)で示されるものであり、下記式(II)は、本発明において好ましく用いることができるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物のアンモニア中和物(変性物)である。
【0026】
【0027】
【0028】
本発明では、上記式(II)のアンモニア中和物の他、水酸化ナトリウム中和物、アミン中和物であってもよいものである。また、上記式(I)中のn、(II)中のlとm、下記式(III)中のjとkなどの数値は、後述する重量平均分子量などにより変動し、好適な範囲が定まるものである。
また、本発明では、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物をイミド化(イミド変性)した下記式(III)で示されるイミド化イソブチレン・無水マレイン酸共重合物をアンモニア、水酸化ナトリウム、アミンなどで中和した各中和物であってもよいものである。
【化3】
式(III)
【0029】
上記式(II)、(III)などのイソブチレン・無水マレイン酸共重合物を中和した各中和物の重量平均分子量は、3,000~400,000が好ましく、5,000~400,000が更に好ましく、30,000~400,000、特に好ましくは、50,000~400,000が最も好ましい。この重量平均分子量は、水系ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の値である。
上記イソブチレン・無水マレイン酸共重合物やその中和物は、市販品を使用することができ、例えば、クラレ社製の「イソバン」等を挙げることができ、例えば、イソバン-04,06,10,18の中和物、イソバン-104,110は上記式(II)におけるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物のアンモニア中和物(変性物)の市販品などが挙げられ、更に、イソバン-304,306,310の中和物などが挙げられる。なお、用いるイソブチレン・無水マレイン酸共重合物〔上記式(I)等から〕の中和物を調製する場合は、例えば、イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の全てのカルボキシル基が中和された場合、中和度1とし、中和に用いるアンモニア、水酸化ナトリウム、アミンなどの必要量を算出して調製することなどにより各中和物を得ることができる。
【0030】
これらのイソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物の含有量は、インク組成物全量に対して、0.01~10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.05~4質量%、特に好ましくは、0.1~2質量%である。
このイソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物の含有量が0.01質量%以上とすることにより本発明の効果が得られることとなり、一方、10質量%以下とすることにより、粘度上昇を抑制でき、インク吐出性、筆記性に優れることとなる。
【0031】
本発明に用いるアルコール類は、上記イソブチレン・無水マレイン酸共重合物の中和物との併用により、耐水固着性を損なうことなく、インク組成物の低温安定性を更に良好とするために用いるものであり、凝固点が-20℃以下となるアルコール類を用いることが必要となる。
用いることができる凝固点が-20℃以下となるアルコール類としては、例えば、1-プロパノール(-126.5℃)、2-プロパノール(-89℃)、1―ブタノール(-90℃)、1-ペンタノール(-79℃)、2-ブタノール(-115℃)、エタノール(-117℃)、1-ヘプタノール(-34.6)、3-ヘプタノール(-70℃)、2-メチル-1-プロパノール(-108℃)、1-ヘキサノール(-46.7℃)等を挙げることができる。
好ましくは、他の筆記性能などの諸機能を損なうことなく、更に優れた低温安定性を発揮せしめる点から、前記アルコール類の凝固点は-50℃以下であるものを用いることが望ましい。特に好ましくは、1-プロパノール(凝固点-126.5℃)、エタノール(凝固点-117℃)が望ましい。
【0032】
これらの凝固点が-20℃以下となるアルコール類の含有量は、インク組成物全量に対して、0.3~10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.5~8質量%、特に好ましくは、1~6質量%である。
この凝固点が-20℃以下となるアルコール類の含有量が0.3質量%以上とすることにより、優れた低温特性を発揮せしめることができ、一方、10質量%以下とすることにより、優れた耐水固着性、耐裏抜け効果を得ることとなる。
【0033】
本発明において、耐水固着性向上の点、低温安定性向上の点から、前記水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションの質量を(A)、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物の質量を(B)、凝固点が-20℃以下のアルコールの水性組成物の質量を(C)とした場合に、〔(B)+(C)〕/(A)の質量比率が下記式(I)の範囲を充足することが望ましい。
式(I):0.05<〔(B)+(C)〕/(A)<2.0
上記〔(B)+(C)〕/(A)の質量比率を0.05超過2.0未満とすることにより、耐水固着性を損なうことなく、低温安定性、裏抜け抑制、優れた描線乾燥性を得ることができる。
【0034】
更に本発明では、前記水性インク組成物には、更なる低温安定性を得ること、更なる裏抜け抑制の観点から、更に多糖類を含むことが好ましい。
用いることができる多糖類としては、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、発酵セルロース、結晶セルロース、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、HMペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガムなどが挙げられる。好ましくは、ダイセルCMC1180(カルボキシメチルセルロース、ダイセルミライズ社製)、SATIAXANE CX 90(キサンタンガム、ユニテックフーズ社製)が望ましい。
【0035】
これらの多糖類の含有量は、更なる低温安定性向上、裏抜け抑制の点から、インク組成物全量に対して、0.05~1質量%が好ましく、更に好ましくは、0.1~0.8質量%、特に好ましくは、0.1~0.5質量%である。
【0036】
本発明の筆記具用水性インク組成物には、少なくとも、色材と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションと、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物と、凝固点が-20℃以下のアルコール類の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)、また、本発明の効果を損なわない範囲で、分散剤、潤滑剤、pH調整剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
【0037】
用いることができる分散剤としては、ノニオン、アニオン界面活性剤などが用いられる。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0038】
pH調整剤としては、アンモニア、尿素、モノエタノーアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンや、トリポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなとの炭酸やリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水和物などが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの市販品があればそれを使用することができる。
【0039】
本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、色材と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションと、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物と、凝固点が-20℃以下のアルコール類の他、残部として溶媒である水と、他の各成分を筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)インクの用途に応じて適宜組み合わせて、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の撹拌機により撹拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって本発明の効果を奏する筆記具用水性インク組成物が得られる。
また、本発明の筆記具用水性インク組成物のpH(25℃)は、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6~9.5とすることが望ましい。
【0040】
得られる本発明の筆記具用水性インク組成物は、更なる描線乾燥性の点、耐裏抜け性の向上の点から、25℃における、ずり速度38.3s-1の粘度が10~45mPa・sであることが好ましい。
上記粘度範囲の調整は、用いる色材、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルション、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物、凝固点が-20℃以下のアルコール類、水などを好適な量等の組み合わせで、また、混練機種、混練条件などにより行うことができる。
【0041】
このように構成される本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、色材と、水溶性樹脂及び/又は樹脂エマルションと、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物と、凝固点が-20℃以下のアルコール類の他、残部として溶媒である水とを含み、これらの各成分の相互作用により、耐水固着性が良好で、低温安定性に優れ、紙面等に対して裏抜けせず、優れた描線乾燥性を高度に両立することできる筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
具体的には、従来において、通常は低温安定性を上げるために糖類、グリシン、グリコールを多量添加すると、耐水固着が低下するものであったが、本発明では、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物と凝固点が-20℃以下のアルコール類との併用により、耐水固着性を向上させることができ、また、低温でエマルション樹脂などが高濃度になった際に、凝固点-20℃以下のアルコール類による凝固点降下に加え、イソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物の親水-疎水の活性剤的作用によりエマルションの融着が抑制されるため、低温特性に優れることになり、紙に対して裏抜け対策として、アルコール類だけでは多量添加が必要であるが、本発明ではイソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物を併用することで上記特性のアルコール類の含有量が抑えられることとなり、描線の乾燥過程でイソブチレン-無水マレイン酸共重合中和物が緩凝集するため、紙の表面に色材が残りやすくなり、紙に対して裏抜け防止となり、しかも、優れた描線乾燥性を奏することとなる。
【0042】
本発明の筆記具用水性インク組成物は、例えば、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、繊維芯、多孔質芯などのペン先部を備えたボールペン、マーキングペン等に搭載することにより、耐水固着性が良好で、低温安定性に優れ、紙面等に対して裏抜けせず、優れた描線乾燥性を高度に両立することできる筆記具が得られることとなる。
【0043】
本発明において、「マーキングペン」とは、インク貯蔵部に貯蔵されているインクを、毛細管現象により樹脂製の筆記部に供給する機構を有するペンを意味し、「サインペン」として言及されるペンをも包含する。また、「ボールペン」とは、筆記部に備えられているボールの回転によって、インク貯蔵部に貯蔵されているインクを滲出させる機構を有するペンを意味する。
ボールペンとしては、前記組成の筆記具用水性インク組成物を直径が0.18~2.0mmのボールを備えたボールペン用インク収容体(リフィール)に収容すると共に、インク追従体を追加する。インク追従体には、インク収容体内に収容された上記特性の筆記具用水性インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インク組成物に対して比重が小さい液体、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等が使用される。
なお、ボールペン、マーキングペン等の構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に前記構成の筆記具用水性インク組成物を充填したコレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式のボールペン、マーキングペンであってもよい。
特に本発明では、非吸収面への耐水固着性が良好な点、吸収面への優れた裏抜け抑制の点から、マーキングペンとして用いることが特に望ましい実施形態となる。
【0044】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0045】
〔実施例1~9及び比較例1~2〕
下記表1に示す配合組成により、常法により、各筆記具用水性インク組成物を調製した。各筆記具用水性インク組成物の25℃下のpHをpH測定計(HORIBA社製)で測定したところ、7.9~8.2の範囲内であった。
上記で得られた各筆記具用水性インク組成物について、下記測定方法にて、25℃におけるずり速度38.3s-1の粘度を測定した。また、下記方法により筆記具(水性サインペン)を作製して、下記各評価方法により、耐水固着性、低温安定性、裏抜け性、描線乾燥性の各評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0046】
(粘度の測定方法)
得られた各筆記具用水性インク組成物について、コーンプレート型粘度計〔東機産業株式会社製:TV-25(ELD)タイプ〕を用いて、測定した。
【0047】
(サインペンの作製)
上記で得られた各インク組成物を用いてサインペンを作製した。具体的には、サインペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:PM-120T、軸材質:再生PP樹脂、ペン芯:(細)PET繊維、(極細)POM樹脂〕に各インク組成物を装填してサインペンを作製した。得られた実施例1~9及び比較例1~2のサインペンを用いて、各評価を行った。
【0048】
(耐水固着性の評価方法)
気温25℃、湿度65%の環境下において、5重で幅15mmの螺旋を8回PETフィルム上に描き十分に乾燥させたのち、市販のシャワーのノズルから毎分12リットルの流量で水道水を噴射し、その後の描線の様子を観察し、下記評価基準で評価した(n=10)。
<評価基準>
A:描線に全く変化が見られない。
B:描線の色相が薄くなったり、描線が一部欠けたりした。
C:描線は全て流れてしまった。
【0049】
(低温安定性の評価方法)
上記で得た各インク組成物をガラス製バイアル瓶に充填し蓋を閉め、-10℃の環境下に保存し、一定期間後に試験試料インクが筆記可能で、バイアル瓶内のインクに凝集や凍結が見られない期間を「低温安定性が維持されている期間」とし、下記評価基準で評価した。尚、一定期間後に試験試料インクが筆記可能かの判断は、前記と同じサインペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:PM-120T〕の軸を用いて評価を行った。
<評価基準>
A:3ヶ月以上。
B:1ヶ月以上3ヶ月未満。
C:1ヶ月未満。
【0050】
(裏抜け性の評価方法)
上記の筆記具を用いて、ISO規格に準拠した筆記用紙の表面に手書きで螺旋を筆記した後、紙の裏面を目視することにより、筆記描線の裏抜け状態を下記の基準で評価した。
<評価基準>
A:描線の裏抜けがない。
B:描線の裏抜けがわずかにある。
C:描線の裏抜けが顕著にある。
【0051】
(描線乾燥性の評価方法)
上記の筆記具を用いて、ISO規格に準拠した筆記用紙の表面に手書きで螺旋を筆記した後、一定時間ごとに筆記線直角方向に指サック(コクヨ株式会社製、事務用指サック・メク-2)を装着した指で軽く擦り、筆記線が擦りとられたり延びたりしなくなった最短の時間を「描線乾燥時間」とし、下記評価基準で評価した。
<評価基準>
A:3秒未満。
B:3秒以上10秒未満。
C:10秒以上。
【0052】
【0053】
上記表1の結果から明らかなように、本発明となる実施例1~9各筆記具用水性インク組成物は、本発明の範囲外となる比較例1~2の筆記具用水性インク組成物に較べて、耐水固着性、低温安定性に優れ、裏抜けもなく、描線乾燥性に優れることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
マーキングペンなどの筆記具用水性インク組成物に好適に用いることができる。