(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169120
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】フィンスタビライザ、船舶及びフィンスタビライザの組立方法
(51)【国際特許分類】
B63B 39/06 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B63B39/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086332
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】細野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓慶
(72)【発明者】
【氏名】加藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇司
(57)【要約】
【課題】 フィンが収容されるフィンボックスの内部に流入する流体による抵抗を低減できるフィンスタビライザ、該フィンスタビライザを備える船舶及びフィンスタビライザの組立方法を提供する。
【解決手段】 船舶の動揺を抑制するためのフィンスタビライザであって、回転軸回りに旋回可能に構成されたフィンと、フィンが収容される内部空間を形成するフィンボックスであって、フィンが内部空間に出入りするための開口、及びフィンボックスの船尾側の壁面である船尾側壁面を有するフィンボックスと、フィンボックスよりも船尾側において船舶の船体に対して凹んで形成される溝部であって、船体の外板と船尾側壁面とを繋ぐ溝部を形成する溝部形成部と、フィンの旋回領域よりも船尾側において、フィンボックスの内部空間と船体の外部空間とを仕切る閉塞部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の動揺を抑制するためのフィンスタビライザであって、
回転軸回りに旋回可能に構成されたフィンと、
前記フィンが収容される内部空間を形成するフィンボックスであって、前記フィンが前記内部空間に出入りするための開口、及び、前記フィンボックスの船尾側の壁面である船尾側壁面を有するフィンボックスと、
前記フィンボックスよりも前記船尾側において前記船舶の船体に対して凹んで形成される溝部であって、前記船体の外板と前記船尾側壁面とを繋ぐ溝部を形成する溝部形成部と、
前記フィンの旋回領域よりも前記船尾側において、前記フィンボックスの前記内部空間と前記船体の外部空間とを仕切る閉塞部と、を備える、
フィンスタビライザ。
【請求項2】
前記閉塞部の船首側の縁は、前記船尾側に向かって凹む凹湾曲部を含む、
請求項1に記載のフィンスタビライザ。
【請求項3】
前記閉塞部の船首側の縁は、
前記船体の高さ方向に沿って延在する高さ方向延在部と、
前記高さ方向延在部の上端から上方に向かうに連れて前記船首側に湾曲する上方湾曲部と、
前記高さ方向延在部の下端から下方に向かうに連れて前記船首側に湾曲する下方湾曲部と、を含む、
請求項1に記載のフィンスタビライザ。
【請求項4】
前記溝部は、前記船尾側に向かうに連れて最大深さ及び開口高さの夫々が小さくなるように構成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィンスタビライザ。
【請求項5】
前記溝部は、船首船尾方向に直交する断面における輪郭形状が凹湾曲形状に形成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィンスタビライザ。
【請求項6】
前記フィンは、前記フィンボックスに収容される際に前記フィンの前記回転軸から離隔した側の端部であるフィン先端部が、前記回転軸よりも前記船尾側に位置するように構成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィンスタビライザ。
【請求項7】
前記フィンは、前記フィンボックスに収容される際に前記フィンの前記回転軸から離隔した側の端部であるフィン先端部が、前記回転軸よりも船首側に位置するように構成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィンスタビライザ。
【請求項8】
前記フィンボックスは、
前記フィンボックスの上方側の壁面である天井面と、
前記フィンボックスの下方側の壁面である底面と、を有し、
前記フィンスタビライザは、
前記天井面又は前記底面の何れか一方に一端が接続され、前記船体の高さ方向に沿って延在する少なくとも1つの整流板であって、上方から視た場合において前記フィンスタビライザの前記旋回領域に少なくとも一部が存在し、前記整流板の前記船尾側の端が船首側の端よりも前記フィンボックスの前記開口からの距離が小さくなるように傾斜する少なくとも1つの整流板をさらに備える、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィンスタビライザ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの整流板は、
前記天井面に前記一端が接続された少なくとも1つの上側整流板と、
前記底面に前記一端が接続された少なくとも1つの下側整流板であって、船首船尾方向において前記少なくとも1つの上側整流板に重複する位置に配置された少なくとも1つの下側整流板と、を含む、
請求項8に記載のフィンスタビライザ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの整流板は、
第1の整流板と、
前記第1の整流板よりも前記フィンボックスの前記開口からの距離が大きく、前記第1の整流板よりも船首船尾方向における長さが大きい第2の整流板と、を含む、
請求項8に記載のフィンスタビライザ。
【請求項11】
前記フィンボックスは、
前記フィンボックスの前記開口の上縁から上方に向かって延在する上側開口壁と、
前記フィンボックスの前記開口の下縁から下方に向かって延在する下側開口壁と、を有し、
前記フィンスタビライザは、
前記上側開口壁の下端部又は前記下側開口壁の上端部の何れか一方から前記船体の高さ方向及び船首船尾方向に直交する方向に沿って前記フィンボックスの奥側に向かって延在する少なくとも1つの案内板をさらに備える、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィンスタビライザ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの案内板は、
前記上側開口壁の前記下端部に一端が接続される上側案内板と、
前記下側開口壁の前記上端部に一端が接続される下側案内板であって、前記船首船尾方向において前記上側案内板に重複する位置に少なくとも一部が配置された下側案内板と、を含む、
請求項11に記載のフィンスタビライザ。
【請求項13】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィンスタビライザと、
前記フィンスタビライザが搭載される前記船体と、を備える
船舶。
【請求項14】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィンスタビライザの組立方法であって、
前記船体とは別体である前記溝部形成部を準備する溝部形成部準備ステップと、
前記船体の前記閉塞部よりも前記船尾側に前記溝部形成部を取り付けるための溝部取付孔を形成する溝部取付孔形成ステップと、
前記溝部取付孔に前記溝部形成部を挿入し、前記溝部形成部を前記船体及び前記フィンボックスに溶接等により接合することで、前記船体及び前記フィンボックスに前記溝部形成部を固定する溝部形成部固定ステップと、
前記溝部の内部に形成される溝内空間と前記フィンボックスの前記内部空間とを連通させる連通孔を前記船尾側壁面に形成する連通孔形成ステップと、を備える、
フィンスタビライザの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィンスタビライザ、該フィンスタビライザを備える船舶及びフィンスタビライザの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には、船舶の動揺を抑制するためのフィンスタビライザが設けられることがある。フィンスタビライザには、フィンを回転軸回りに旋回させることで、フィンを船体の外板に設けられたフィンボックスの内部に収容可能な格納式のフィンスタビライザがある(特許文献1参照)。格納式のフィンスタビライザは、フィンを出入りさせるための開口を介して、フィンボックスの内部に船外水(流体)が流入し、フィンボックスの内部に流入した船外水が抵抗となることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフィンスタビライザは、フィンボックスの後端に溝部を設け、溝部を介してフィンボックスの内部に流入した船外水の流れを船体の外部に導くようになっている。このフィンスタビライザに対して、フィンボックスの内部に流入した船外水による抵抗のさらなる低減が求められている。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、フィンが収容されるフィンボックスの内部に流入する流体による抵抗を低減できるフィンスタビライザ、該フィンスタビライザを備える船舶及びフィンスタビライザの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るフィンスタビライザは、
船舶の動揺を抑制するためのフィンスタビライザであって、
回転軸回りに旋回可能に構成されたフィンと、
前記フィンが収容される内部空間を形成するフィンボックスであって、前記フィンが前記内部空間に出入りするための開口、及び、前記フィンボックスの船尾側の壁面である船尾側壁面を有するフィンボックスと、
前記フィンボックスよりも前記船尾側において前記船舶の船体に対して凹んで形成される溝部であって、前記船体の外板と前記船尾側壁面とを繋ぐ溝部を形成する溝部形成部と、
前記フィンの旋回領域よりも前記船尾側において、前記フィンボックスの前記内部空間と前記船体の外部空間とを仕切る閉塞部と、を備える。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る船舶は、
前記フィンスタビライザと、
前記フィンスタビライザが搭載される前記船体と、を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係るフィンスタビライザの組立方法は、
前記フィンスタビライザの組立方法であって、
前記船体とは別体である前記溝部形成部を準備する溝部形成部準備ステップと、
前記船体の前記閉塞部よりも前記船尾側に前記溝部形成部を取り付けるための溝部取付孔を形成する溝部取付孔形成ステップと、
前記溝部取付孔に前記溝部形成部を挿入し、前記溝部形成部を前記船体及び前記フィンボックスに溶接等により接合することで、前記船体及び前記フィンボックスに前記溝部形成部を固定する溝部形成部固定ステップと、
前記溝部の内部に形成される溝内空間と前記フィンボックスの前記内部空間とを連通させる連通孔を前記船尾側壁面に形成する連通孔形成ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、フィンが収容されるフィンボックスの内部に流入する流体による抵抗を低減できるフィンスタビライザ、該フィンスタビライザを備える船舶及びフィンスタビライザの組立方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係るフィンスタビライザを備える船舶を上方から視た概略平面図である。
【
図2】
図1に示される船舶を後方から視た概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の概略斜視図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図6】比較例に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の概略斜視図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係るフィンスタビライザの組立方法を説明するための説明図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る溝部形成部の概略斜視図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係るフィンスタビライザの組立方法を説明するための説明図である。
【
図12】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍を船体の外側から視た概略図である。
【
図13】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図14】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図15】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図16】本開示の一実施形態に係る船舶のフィンスタビライザ近傍の船首船尾方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。「或る方向に沿って延在する」には、或る方向に延びることに限定されず、或る方向に対して所定角度(例えば、±10°)の範囲内で傾斜する方向に延びることも含まれる。
【0012】
(船舶)
図1は、本開示の一実施形態に係るフィンスタビライザ2を備える船舶1を上方から視た概略平面図である。
図2は、
図1に示される船舶1を後方から視た概略図である。船舶1は、
図1及び
図2に示されるように、船舶1の動揺を抑制するためのフィンスタビライザ2と、フィンスタビライザ2が搭載される船体11と、を備える。以下、
図1に示されるように、船体11の前後方向(
図1中左右方向)を船首船尾方向BSDと定義する。船首船尾方向BSDにおいて、船首12が設けられる船体11の前方側(
図1中右側)を船首側BSと定義し、船尾13が設けられる船体11の後方側(
図1中左側)を船尾側SSと定義する。
【0013】
船体11は、
図2に示されるように、一対の外板14、船底板15及び上甲板16を含む船殻を有する。一対の外板14は、船体11の右舷に設けられる右舷側外板14Aと、船体11の左舷に設けられる左舷側外板14Bと、を含む。船底板15は、右舷側外板14Aの下端に一端が接続され、他端に左舷側外板14Bの下端が接続されるようになっている。上甲板16は、右舷側外板14Aの上端に一端が接続され、他端に左舷側外板14Bの上端が接続されるようになっている。
図2に示される実施形態では、一対の外板14及び船底板15は、船首船尾方向BSDに直交する断面における外側輪郭形状がU字状となっている。
【0014】
なお、船体11は、一般的な船舶の船体が備える構成を備えていてもよい。船体11は、例えば、船体11の内部に配置された主機(不図示)、及び、該主機の回転エネルギを船体11の推進力に変換するプロペラ等の推進装置(不図示)を備えていてもよい。また、船体11は、上甲板16よりも上方に形成される上部構造物(不図示)や煙突(不図示)を備えていてもよい。
【0015】
船舶1は、
図1及び
図2に示されるように、複数のフィンスタビライザ2(2A~2D)を備えていてもよい。複数のフィンスタビライザ2の各々は、
図2に示されるように、船舶1の喫水線WLよりも下方、具体的には、外板14における船底板15の近くに設けられている。複数のフィンスタビライザ2の各々は、船舶1の航走中において、船体11の外部に突出するフィン3により、船体11のロール方向の動揺を打ち消す揚力を船体11に作用させることができる。
【0016】
図1に示される実施形態では、複数のフィンスタビライザ2(2A~2D)は、右舷側外板14Aにそれぞれ設けられる二つのフィンスタビライザ2A、2Bと、左舷側外板14Bにそれぞれ設けられる二つのフィンスタビライザ2C、2Dと、を含む。フィンスタビライザ2Cは、船首船尾方向BSDにおいてフィンスタビライザ2Aに少なくとも一部が重なり合う位置に配置されている。フィンスタビライザ2Dは、フィンスタビライザ2Cよりも船尾側SSに設けられ、船首船尾方向BSDにおいてフィンスタビライザ2Aよりも船尾側SSに設けられたフィンスタビライザ2Bに少なくとも一部が重なり合う位置に配置されている。なお、船体11に搭載されるフィンスタビライザ2の数や位置は、図示される実施形態に限定されない。例えば、船体11の右舷側外板14A及び左舷側外板14Bのそれぞれに一つのフィンスタビライザ2が設けられる構成にしてもよく、このような構成にも本開示は好適に適用可能である。
【0017】
(フィンスタビライザ)
図3及び
図7の夫々は、本開示の一実施形態に係る船舶1のフィンスタビライザ2近傍の概略斜視図である。
図4、
図5及び
図8の各々は、本開示の一実施形態に係る船舶1のフィンスタビライザ2近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。幾つかの実施形態に係るフィンスタビライザ2は、
図3~
図5、
図7及び
図8に示されるように、フィン3と、フィン3が収容される内部空間40を形成するフィンボックス4と、フィンボックス4よりも船尾側SSにおいて船舶1の船体11に対して凹んで形成される溝部51を形成する溝部形成部5と、閉塞部6と、を備える。
【0018】
(フィン)
フィン3は、フィン3の回転軸RA回りに旋回可能に構成されている。フィン3は、船体11に回転軸RA回りに回動可能に支持される収容駆動部31と、収容駆動部31に支持される翼部32と、を含む。フィン3は、収容駆動部31を回転軸RA回りに回動させることで、翼部32を回転軸RA回りに旋回させることができる。なお、フィン3は、翼部32の翼角度を変化可能に構成されていてもよい。
【0019】
フィン3は、翼部32を回転軸RA回りに旋回させることで、翼部32の全てがフィンボックス4の内部空間40に収容される収容位置(
図4、5、8中実線参照)と、翼部32の少なくとも一部が船体11の外部に突出して、船体11の減揺を行う突出位置(
図4、5、8中二点鎖線参照、
図1、
図2参照)との間で翼部32を変位可能である。翼部32を収容位置と突出位置との間で変位させた際のフィン3の作動領域を、フィン3の旋回領域TAと定義する。また、内部空間40の収容位置における翼部32よりも船尾側SS側の空間を船尾側空間40Aと定義する。
【0020】
図示される実施形態では、
図4、5、8に示されるように、収容位置における翼部32は、翼部32の前縁及び後縁が船首船尾方向BSDに沿って延在するようになっている。
図4及び
図5に示される実施形態では、収容位置における翼部32は、翼部32の後縁が翼部32の前縁よりもフィンボックス4の奥側(開口41から離れた側)に位置するようになっている。
図8に示される実施形態では、収容位置における翼部32は、翼部32の前縁が翼部32の後縁よりもフィンボックス4の奥側に位置するようになっている。
【0021】
図示される実施形態では、
図4、5、8に示されるように、突出位置における翼部32は、翼部32の前縁及び後縁が船首船尾方向BSDに交差(図示例では、直交)する方向に沿って延在し、翼部32の前縁が船首側BSに位置し、且つ翼部32の後縁が船尾側SSに位置するようになっている。突出位置における翼部32は、船首船尾方向BSDにおける一方側から視た場合に船体11から斜め下方に向かって延在するようになっていてもよい(
図2参照)。なお、翼部32の形状は、図示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の適用可能な範囲において適宜変更可能である。
【0022】
(フィンボックス)
フィンボックス4には、
図3及び
図7に示されるように、フィン3が内部空間40に出入りするための開口41が形成されている。フィンボックス4の開口41は、内部空間40と船体11の外部空間10とを連通させ、フィン3の翼部32を挿通させることができるようになっている。
【0023】
フィンボックス4は、
図3に示されるように、フィンボックス4の上方側の壁面である天井面42と、フィンボックス4の下方側の壁面である底面43と、開口41が形成されたフィンボックス4の開口側の壁面である開口側壁面44と、フィンボックス4の開口41から離隔した側である奥側の壁面である奥側壁面47と、フィンボックス4の船尾側SSの壁面である船尾側壁面49と、を有する。フィンボックス4は、
図4に示されるように、船首側BSの壁面である船首側壁面48をさらに有する。フィンボックス4の内部空間40は、天井面42、底面43、開口側壁面44、奥側壁面47、船首側壁面48及び船尾側壁面49により画定される。図示される実施形態では、内部空間40は、船首船尾方向BSDに沿って長手方向を有する直方体状の空間となっている。
【0024】
(溝部、溝部形成部)
溝部51は、フィンボックス4よりも船尾側SSにおいて船体11の外板14に対して凹んで形成される。溝部51は、船尾側壁面49と船尾側壁面49よりも船尾側SSの外板14とを繋ぐようになっている。溝部形成部5は、船首側の端部53がフィンボックス4の船尾側壁面49を有する船尾側壁に接続され、船尾側の端部54等の船首側の端部53以外の部分が船体11の外板14に接続されている。船尾側壁面49との接続位置における溝部51の深さは、船尾側壁面49に面する内部空間40(船尾側空間40A)の深さを100%とした際に、50%以下となっており、好ましくは30%以下となっている。
【0025】
溝部51は、溝部51の内部に形成される溝内空間50と船体11の外部空間10とを連通させる溝部側開口52を有する。船尾側壁面49の開口側壁面44側端には、溝部51の内部に形成される溝内空間50と内部空間40(船尾側空間40A)とを連通させる連通孔491が形成されている。溝部51を設けることで、連通孔491を介して内部空間40から溝内空間50に船外水を導くことができ、且つ、溝部側開口52を介して溝内空間50から外部空間10に船外水を導くことができる。
【0026】
船舶1の航走中において、開口41を介して船体11の外部空間10から海水等の船外水(流体)がフィンボックス4の内部空間40に流入するようになっている。船外水は、船舶1が航行する水域により異なるものであり、海水に限定されず、河川水や湖沼水であってもよい。内部空間40に流入した船外水の流れが船尾側壁面49に当たり圧力を上昇させることで、内部空間40に流入する船外水による抵抗が増加し、船舶1の効率低下を招く虞がある。上述した溝部51を設けることで、内部空間40に流入した船外水の流れを溝内空間50に導くことで、船尾側壁面49近傍における船外水の圧力上昇を抑制でき、該船外水による抵抗を低減できる。
【0027】
(比較例に係るフィンスタビライザ)
図6は、比較例に係る船舶1のフィンスタビライザ02近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。フィンスタビライザ02は、
図6に示されるように、上述したフィン3と、上述したフィンボックス4と、上述した溝部51を形成する溝部形成部5と、を備える。すなわち、フィンスタビライザ02は、閉塞部6を備えない点以外は上述したフィンスタビライザ2と同様の構成となっている。
【0028】
フィンスタビライザ02は、
図6に示されるように、溝部51を設けることで、溝部51を設けない場合に比べて、開口面積(開口41の面積及び溝部側開口52の面積の和)が増加し、外部空間10から溝内空間50や溝内空間50に隣接する船尾側空間40Aへの船外水の流入量が増加している。このような船外水の流入量の増加により、船尾側壁面49近傍における船外水の圧力上昇の抑制効果や抵抗低減効果が損なわれている虞がある。
【0029】
(閉塞部)
閉塞部6は、
図4、
図5及び
図8に示されるように、フィン3の旋回領域TAよりも船尾側SSにおいてフィンボックス4の内部空間40と船体11の外部空間10とを仕切るようになっている。閉塞部6は、溝部側開口52よりも船首側BSに設けられる。閉塞部6は、
図3及び
図7に示されるように、フィンボックス4の開口41の上縁411から下縁412までに亘り延在している。
【0030】
閉塞部6は、フィンボックス4の形成時においてフィンボックス4とは別体に形成される金属板であってもよい。この場合には、閉塞部6の上端61が開口41の上縁411に溶接等により接続され、且つ、閉塞部6の下端62が開口41の下縁412に溶接等により接続されることで、閉塞部6がフィンボックス4に固定される。なお、閉塞部6は、フィンボックス4の形成時においてフィンボックス4と一体的に形成されてもよい。閉塞部6は、金属材料以外の材料(例えば、繊維強化プラスチック)により構成されていてもよく、接着剤を介した接着等の溶接以外の方法により開口41の上縁411及び下縁412に接続されていてもよい。
【0031】
フィンボックス4は、開口41の上縁411から上方に向かって延在する上側開口壁45と、開口41の下縁412から下方に向かって延在する下側開口壁46と、を有する。上側開口壁45及び下側開口壁46には、開口側壁面44が形成されている。閉塞部6の外部空間10に面する外面65は、上側開口壁45及び下側開口壁46の開口側壁面44とは反対側の外部空間10に面する外面に段差なく連なるようになっている。なお、本段落でいう段差には、製造誤差などにより生じる微小な段差は含まれない。
【0032】
上記の構成によれば、閉塞部6によりフィンボックス4の内部空間40と船体11の外部とを仕切ることで、船舶1の航走中において、船体11の外部空間10から内部空間40(船尾側空間40A)や溝部51の内部に形成される溝内空間50への船外水の流入を抑制できる。これにより、溝部51を設けたことによる、船尾側壁面49近傍における船外水の圧力上昇の抑制効果や抵抗低減効果を効果的に発揮させることができ、フィンスタビライザ2を備える船舶1の効率向上が図れる。なお、閉塞部6は、翼部32が上記収容位置又は上記突出位置の何れに位置する場合であっても上述した効果を発揮できる。
【0033】
(閉塞部の船首側の縁)
幾つかの実施形態では、
図3に示されるように、閉塞部6の船首側の縁63は、船尾側に向かって凹む凹湾曲部631を含む。船首側の縁63は、上端から下端までに亘り凹湾曲部631が形成された凹湾曲形状を有する。凹湾曲部631は、例えば、
図3に示されるような、所定の曲率を有する単一の円弧により構成されていてもよいし、2以上の複数の円弧の組み合わせにより構成されていてもよい。凹湾曲部631を構成する円弧は、円又は楕円の一部を切り取ったような形状であってもよい。
【0034】
上記の構成によれば、船首側の縁63は、フィンボックス4の開口41の開口面積を可能な限り小さくするため、フィン3の旋回領域TAとの間の隙間が小さい方が好ましい。船首側の縁63をフィン3の前縁や後縁等の凸湾曲形状に対応するような、凹湾曲形状とすることで、閉塞部6による船外水の流入抑制効果を効果的に発揮できる。
【0035】
幾つかの実施形態では、
図7に示されるように、閉塞部6の船首側の縁63は、船体11の高さ方向(図中上下方向)に沿って延在する高さ方向延在部632と、高さ方向延在部632の上端から上方に向かうに連れて船首側に湾曲する上方湾曲部633と、高さ方向延在部632の下端から下方に向かうに連れて船首側に湾曲する下方湾曲部634と、を含む。
【0036】
図示される実施形態では、船体11の高さ方向において、船首側の縁63の下端の位置を0%位置、船首側の縁63の上端の位置を100%位置と定義した場合において、高さ方向延在部632の下端は、0%~20%の範囲に位置し、高さ方向延在部632の上端は、80%~100%の範囲に位置するようになっている。
【0037】
上記の構成によれば、船首側の縁63の中央に高さ方向延在部632を設けることで、船首側の縁63を凹湾曲形状とする場合に比べて、閉塞部6の製造性を向上できる。
【0038】
(閉塞部の船尾側の縁)
幾つかの実施形態では、
図3及び
図7に示されるように、閉塞部6の船尾側の縁64は、船体11の高さ方向に沿って延在する高さ方向延在部を含む。船尾側の縁64に高さ方向延在部を設けることで、閉塞部6の製造性を良好なものとすることができる。
【0039】
図4及び
図5では、フィンボックス4の内部空間40と溝内空間50との境界を境界線BLで示している。境界線BLは、船首船尾方向BSDに直交する方向に沿って延在する船尾側壁面49を延長した平面上に設けられる。
【0040】
閉塞部6の船尾側の縁64は、船首船尾方向BSDにおいて、船尾側壁面49及び境界線BLと同じ位置(
図4参照)、又は船尾側壁面49及び境界線BLよりも船首側に設けてもよい。また、閉塞部6の船尾側の縁64は、
図5に示されるように、船首船尾方向BSDにおいて、船尾側壁面49及び境界線BLよりも船尾側に設けてもよい。換言すると、閉塞部6は、溝部側開口52よりも船首側において、溝部側開口52の上縁から下縁までに亘り延在して溝内空間50と外部空間10とを仕切る溝部側閉塞部を含んでいてもよい。
【0041】
(溝部の形状)
幾つかの実施形態では、上述した溝部51は、
図3~
図8に示されるような、船尾側に向かうに連れて最大深さ及び開口高さの夫々が小さくなるように構成されている。溝部51の開口高さは、船体11の高さ方向における溝部51の上縁から下縁までの長さである。図示される実施形態では、溝部51は、船首側の端から船尾側の端までに亘り連続的に最大深さ及び開口高さの夫々が小さくなっているが、断続的に最大深さ及び開口高さの夫々が小さくなっていてもよい。すなわち、溝部51は、最大深さ及び開口高さが一定となる部分を有していてもよい。
【0042】
上記の構成によれば、溝部51の内面形状により、溝内空間50に流入した船外水を、溝部51の深さ方向における溝部側開口52側に向かって流れるように案内できるため、溝内空間50から外部空間10への船外水の排出が促進される。
【0043】
幾つかの実施形態では、上述した溝部51は、
図3及び
図7に示されるような、船首船尾方向に直交する断面における輪郭形状が凹湾曲形状に形成されている。溝部51の内面の凹湾曲形状の輪郭形状は、所定の曲率を有する単一の円弧により構成されていてもよいし、2以上の複数の円弧の組み合わせにより構成されていてもよい。凹湾曲部631を構成する円弧は、円又は楕円の一部を切り取ったような形状であってもよい。溝部51の内面を凹湾曲形状に形成することで、溝内空間50に流入した船外水の圧力上昇を抑制でき、該船外水による抵抗を低減できる。なお、他の実施形態では、溝部51は、船首船尾方向に直交する断面における輪郭形状が、コの字状等の凹湾曲形状以外の形状に形成されていてもよい。
【0044】
幾つかの実施形態では、上述したフィン3は、
図4及び
図5に示されるように、フィンボックス4の内部空間40に収容される際にフィン3の回転軸RAから離隔した側の端部であるフィン先端部33が、回転軸RAよりも船尾側に位置するように構成されている。このような、いわゆるフィン3がフィンボックス4に後方収容される場合であっても、閉塞部6によって船尾側壁面49近傍における船外水の圧力上昇の抑制効果や抵抗低減効果を効果的に発揮させることができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、上述したフィン3は、
図8に示されるように、フィンボックス4の内部空間40に収容される際にフィン3の回転軸RAから離隔した側の端部であるフィン先端部33が、回転軸RAよりも船首側に位置するように構成されている。このような、いわゆるフィン3がフィンボックス4に前方収容される場合であっても、閉塞部6によって船尾側壁面49近傍における船外水の圧力上昇の抑制効果や抵抗低減効果を効果的に発揮させることができる。
【0046】
(フィンスタビライザの組立方法)
以下、
図9~
図11を用いて上述したフィンスタビライザ2の組立方法を説明する。なお、フィンスタビライザ2の組立方法は、後述するフィンスタビライザ2にも適用可能である。
図9及び
図11の各々は、本開示の一実施形態に係るフィンスタビライザ2の組立方法を説明するための説明図である。
図9では、船体11の外板14に固定されたフィンボックス4の船体11の高さ方向に直交する断面が概略的に示されている。
図11では、
図9に示されるフィンボックス4と、フィンボックス4及び外板14に固定された溝部形成部5の船体11の高さ方向に直交する断面が概略的に示されている。
【0047】
フィンスタビライザ2の組立方法では、フィンボックス4は、船体11の外板14に固定されている。フィンボックス4が外板14とは別体である場合には、フィンボックス4を溶接等により外板14に固定することが行われる。
【0048】
フィンスタビライザ2の組立方法は、船体11及びフィンボックス4とは別体である溝部形成部5を準備する溝部形成部準備ステップを備える。
図10は、本開示の一実施形態に係る溝部形成部5の概略斜視図である。図示される実施形態では、溝部形成部5は、上述した溝部51を有する半円錐状に湾曲する金属板からなる。溝部形成部5は、金属材料以外の材料(例えば、繊維強化プラスチック)により構成されていてもよく、接着剤を介した接着等の溶接以外の方法により外板14に固定されてもよい。
【0049】
フィンスタビライザ2の組立方法は、船体11の外板14の、閉塞部6や船尾側壁面49よりも船尾側に溝部形成部5を取り付けるための溝部取付孔141(
図9参照)を形成する溝部取付孔形成ステップをさらに備える。溝部取付孔141は、外板14を貫通する貫通孔であり、溝部形成部5を挿入できる大きさになっている。
【0050】
フィンスタビライザ2の組立方法は、溝部取付孔141に溝部形成部5を挿入し、溝部形成部5を船体11の外板14及びフィンボックス4に溶接等により接合することで、船体11の外板14及びフィンボックス4に溝部形成部5を固定する溝部形成部固定ステップをさらに備える。
図11における符号W1は、フィンボックス4と溝部形成部5とを接合する溶接部を示しており、
図11における符号W2は、フィンボックス4と外板14とを接合する溶接部を示している。本組立方法を用いて組み立てられたフィンスタビライザ2は、
図11に示されるような、溶接部W1及び溶接部W2を備える。
【0051】
フィンスタビライザ2の組立方法は、溝部51の内部に形成される溝内空間50とフィンボックス4の内部空間40とを連通させる連通孔491を船尾側壁面49に形成する連通孔形成ステップをさらに備える。連通孔491は、溝部形成部固定ステップの前に形成されてもよいし、溝部形成部固定ステップの後に形成されてもよい。
【0052】
上記のフィンスタビライザ2の組立方法によれば、溝部51を備えないフィンスタビライザ2に溝部51を新たに設けることができる。また、溝部51を新たに設ける際に、閉塞部6として既存の船体11の外板14を用いることで、閉塞部6を新たに設けなくても溝部51及び閉塞部6を備えるフィンスタビライザ2に改造できる。なお、外板14だけでなく、フィンボックス4の船尾側壁面49を有する船尾側壁部も閉塞部6として用いることができる。
【0053】
(整流板)
図12は、本開示の一実施形態に係る船舶1のフィンスタビライザ2近傍を船体11の外側から視た概略図である。
図13~
図15の各々は、本開示の一実施形態に係る船舶1のフィンスタビライザ2近傍の高さ方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。幾つかの実施形態では、
図12に示されるように、上述したフィンスタビライザ2は、上述した天井面42又は上述した底面43の何れか一方に一端が接続され、船体11の高さ方向に沿って延在する少なくとも1つ(図示例では、複数)の整流板7(7A~7D)を備える。
【0054】
複数の整流板7(7A~7D)の各々は、
図13~
図15に示されるように、上方から視た場合においてフィンスタビライザ2の旋回領域TAに少なくとも一部が存在し、整流板7の船尾側の端72(72A~72D)が船首側の端71(71A~71D)よりも開口41からの距離が小さくなるように傾斜するようになっている。なお、複数の整流板7(7A~7D)の各々は、フィンスタビライザ2の旋回領域TAには存在せず、旋回領域TAよりも上方又は下方に設けられる。
【0055】
図13、
図15に示される実施形態では、複数の整流板7(7A~7D)の各々は、上方から視た場合において船首側の端71から船尾側の端72までに亘り直線状に延在する平板からなる。
図14に示される実施形態では、複数の整流板7(7A~7D)の各々は、上方から視た場合においてフィンボックス4の内部空間40の奥側(図中上側)に向かって凹む凹湾曲面を有する湾曲板からなる。
【0056】
上記の構成によれば、整流板7により、フィンボックス4の内部空間40に流入した船外水が内部空間40の奥側に入り込むのを抑制できる。また、整流板7により、内部空間40に流入した船外水が内部空間40から排出し易くなるように、内部空間40に流入した船外水の流れを内部空間40の開口側に導くことができる。なお、整流板7は、翼部32が上記収容位置又は上記突出位置の何れに位置する場合であっても上述した効果を発揮できる。また、整流板7は、フィン3がフィンボックス4に前方収容される場合と後方収容される場合の何れの場合であっても上述した効果を発揮できる。
図15に示されるような、前方収容のフィンスタビライザ2において、突出位置におけるフィン3よりも船首側に整流板7が配置された場合には、整流板7により導かれた船外水がフィン3に向かって流れ、フィン3に導かれる船外水の流量を増加させることで、フィン3の動揺を低減する効果を高めることができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、
図12に示されるように、上述した少なくとも1つの整流板7は、天井面42に一端(上端)が接続された少なくとも1つ(図示例では、複数)の上側整流板7A、7Bと、底面43に一端(下端)が接続された少なくとも1つ(図示例では、複数)の下側整流板7C、7Dと、を含む。複数の下側整流板7C、7Dの各々は、船首船尾方向において少なくとも1つの上側整流板7A、7Bに重複する位置に配置されている。
【0058】
上記の構成によれば、船首船尾方向において少なくとも一部が重複する位置に上側整流板7A、7Bと下側整流板7C、7Dとを設けることで、上側整流板7A、7B又は下側整流板7C、7Dの一方を設ける場合に比べて、フィンボックス4の内部空間40に流入した船外水の流れを内部空間40の開口側により効果的に導くことができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、
図13~
図15に示されるように、上述した少なくとも1つの整流板7は、少なくとも1つ(図示例では、複数)の第1の整流板7B、7Dと、第1の整流板7B、7Dよりもフィンボックス4の開口41からの距離が大きく、第1の整流板7B、7Dよりも船首船尾方向における長さが大きい少なくとも1つ(図示例では、複数)の第2の整流板7A、7Cと、を含む。
【0060】
上記の構成によれば、フィンボックス4の内部空間40の開口側は、奥側に比べて整流板7を設置できるスペースが小さいが、内部空間40の開口側に配置される第1の整流板7B、7Dの長さを短くすることで、内部空間40に第1の整流板7B、7Dと第2の整流板7A、7Cを設置できる。第1の整流板7B、7Dと第2の整流板7A、7Cを設けることで、第1の整流板7B、7D又は第2の整流板7A、7Cの一方を設ける場合に比べて、内部空間40に流入した船外水の流れを内部空間40の開口側により効果的に導くことができる。
【0061】
(案内板)
図16は、本開示の一実施形態に係る船舶1のフィンスタビライザ2近傍の船首船尾方向に直交する断面を概略的に示す概略断面図である。幾つかの実施形態では、上述したフィンスタビライザ2は、
図16に示されるように、上述した上側開口壁45の下端部又は上述した下側開口壁46の上端部の何れか一方から船体11の高さ方向及び船首船尾方向に直交する方向に沿ってフィンボックス4の内部空間40の奥側に向かって延在する少なくとも1つの案内板8をさらに備える。
【0062】
上記の構成によれば、案内板8により、船体11の外部空間10から上方や下方に向かう船外水の流れがフィンボックス4の内部に流入することを抑制できる。特に、フィン3が突出位置に位置し、翼部32の翼角度が変更された場合には、フィン3の周囲を流れる船外水に上方や下方に向かう流れが生じるので、案内板8が好適に作用する。
【0063】
幾つかの実施形態では、
図16に示されるように、上述した少なくとも1つの案内板8は、上側開口壁45の下端部に一端が接続される上側案内板8Aと、下側開口壁46の上端部に一端が接続される下側案内板8Bであって、船首船尾方向において上側案内板8Aに重複する位置に少なくとも一部が配置された下側案内板8Bと、を含む。
【0064】
上記の構成によれば、船首船尾方向において少なくとも一部が重複する位置に上側案内板8Aと下側案内板8Bとを設けることで、上側案内板8A又は下側案内板8Bの一方を設ける場合に比べて、船外水の上方や下方に向かう流れがフィンボックス4の内部に流入することを効果的に抑制できる。
【0065】
幾つかの実施形態に係る船舶1は、
図1及び
図2に示されるように、上述したフィンスタビライザ2と、フィンスタビライザ2が搭載される上述した船舶1と、を備える。この場合には、フィンスタビライザ2により、船尾側壁面49近傍における船外水による抵抗を低減することで、フィンスタビライザ2を備える船舶1の効率向上が図れる。
【0066】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0067】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0068】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0069】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るフィンスタビライザ(2)は、
船舶(1)の動揺を抑制するためのフィンスタビライザ(2)であって、
回転軸(RA)回りに旋回可能に構成されたフィン(3)と、
前記フィン(3)が収容される内部空間(40)を形成するフィンボックス(4)であって、前記フィン(3)が前記内部空間(40)に出入りするための開口(41)、及び、前記フィンボックス(4)の船尾側の壁面である船尾側壁面(49)を有するフィンボックス(4)と、
前記フィンボックス(4)よりも前記船尾側において前記船舶(1)の船体(11)に対して凹んで形成される溝部(51)であって、前記船体(11)の外板(14)と前記船尾側壁面(49)とを繋ぐ溝部(51)を形成する溝部形成部(5)と、
前記フィン(3)の旋回領域(TA)よりも前記船尾側において、前記フィンボックス(4)の前記内部空間(40)と前記船体(11)の外部空間(10)とを仕切る閉塞部(6)と、を備える。
【0070】
上記1)の構成によれば、閉塞部(6)によりフィンボックス(4)の内部空間(40)と船体(11)の外部とを仕切ることで、船舶(1)の航走中において、船体(11)の外部空間(10)から内部空間(40)や溝部(51)の内部に形成される溝内空間(50)への船外水の流入を抑制できる。これにより、溝部(51)を設けたことによる、船尾側壁面(49)近傍における船外水の圧力上昇の抑制効果や抵抗低減効果を効果的に発揮させることができ、フィンスタビライザ(2)を備える船舶(1)の効率向上が図れる。
【0071】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記閉塞部(6)の船首側の縁(63)は、前記船尾側に向かって凹む凹湾曲部(631)を含む。
【0072】
上記2)の構成によれば、船首側の縁(63)は、フィンボックス(4)の開口(41)の開口面積を可能な限り小さくするため、フィン(3)の旋回領域(TA)との間の隙間が小さい方が好ましい。船首側の縁(63)をフィン(3)の前縁や後縁等の凸湾曲形状に対応するような、凹湾曲形状とすることで、閉塞部(6)による船外水の流入抑制効果を効果的に発揮できる。
【0073】
3)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記閉塞部(6)の船首側の縁(63)は、
前記船体(11)の高さ方向に沿って延在する高さ方向延在部(632)と、
前記高さ方向延在部(632)の上端から上方に向かうに連れて前記船首側に湾曲する上方湾曲部(633)と、
前記高さ方向延在部(632)の下端から下方に向かうに連れて前記船首側に湾曲する下方湾曲部(634)と、を含む。
【0074】
上記3)の構成によれば、船首側の縁(63)の中央に高さ方向延在部(632)を設けることで、船首側の縁(63)を凹湾曲形状とする場合に比べて、閉塞部(6)の製造性を向上できる。
【0075】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から3)までの何れかに記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記溝部(51)は、前記船尾側に向かうに連れて最大深さ及び開口高さの夫々が小さくなるように構成された。
【0076】
上記4)の構成によれば、溝部(51)の内面形状により、溝内空間(50)に流入した船外水を、溝部(51)の深さ方向における溝部側開口(52)側に向かって流れるように案内できるため、溝内空間(50)から外部空間(10)への船外水の排出が促進される。
【0077】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)までの何れかに記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記溝部(51)は、船首船尾方向に直交する断面における輪郭形状が凹湾曲形状に形成された。
【0078】
上記5)の構成によれば、溝部(51)の内面を凹湾曲形状に形成することで、溝内空間(50)に流入した船外水の圧力上昇を抑制でき、該船外水による抵抗を低減できる。
【0079】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)までの何れかに記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記フィン(3)は、前記フィンボックス(4)に収容される際に前記フィン(3)の前記回転軸(RA)から離隔した側の端部であるフィン先端部(33)が、前記回転軸(RA)よりも前記船尾側に位置するように構成された。
【0080】
上記6)の構成のような、いわゆるフィン(3)がフィンボックス(4)に後方収容される場合であっても、閉塞部(6)によって船尾側壁面(49)近傍における船外水の圧力上昇の抑制効果や抵抗低減効果を効果的に発揮させることができる。
【0081】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から5)までの何れかに記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記フィン(3)は、前記フィンボックス(4)に収容される際に前記フィン(3)の前記回転軸(RA)から離隔した側の端部であるフィン先端部(33)が、前記回転軸(RA)よりも船首側に位置するように構成された。
【0082】
上記7)の構成によれば、いわゆるフィン(3)がフィンボックス(4)に前方収容される場合であっても、閉塞部(6)によって船尾側壁面(49)近傍における船外水の圧力上昇の抑制効果や抵抗低減効果を効果的に発揮させることができる。
【0083】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)までの何れかに記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記フィンボックス(4)は、
前記フィンボックス(4)の上方側の壁面である天井面(42)と、
前記フィンボックス(4)の下方側の壁面である底面(43)と、を有し、
前記フィンスタビライザ(2)は、
前記天井面(42)又は前記底面(43)の何れか一方に一端が接続され、前記船体(11)の高さ方向に沿って延在する少なくとも1つの整流板(7)であって、上方から視た場合において前記フィンスタビライザ(2)の前記旋回領域(TA)に少なくとも一部が存在し、前記整流板(7)の前記船尾側の端が船首側の端よりも前記フィンボックス(4)の前記開口(41)からの距離が小さくなるように傾斜する少なくとも1つの整流板(7)をさらに備える。
【0084】
上記8)の構成によれば、整流板(7)により、フィンボックス(4)の内部空間(40)に流入した船外水が内部空間(40)の奥側に入り込むのを抑制できる。また、整流板(7)により、内部空間(40)に流入した船外水が内部空間(40)から排出し易くなるように、内部空間(40)に流入した船外水の流れを内部空間(40)の開口側に導くことができる。
【0085】
9)幾つかの実施形態では、上記8)に記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記少なくとも1つの整流板(7)は、
前記天井面に前記一端が接続された少なくとも1つの上側整流板(7A、7B)と、
前記底面に前記一端が接続された少なくとも1つの下側整流板(7C、7D)であって、船首船尾方向において前記少なくとも1つの上側整流板(7A、7B)に重複する位置に配置された少なくとも1つの下側整流板(7C、7D)と、を含む。
【0086】
上記9)の構成によれば、船首船尾方向において少なくとも一部が重複する位置に上側整流板(7A、7B)と下側整流板(7C、7D)とを設けることで、上側整流板(7A、7B)又は下側整流板(7C、7D)の一方を設ける場合に比べて、フィンボックス(4)の内部空間(40)に流入した船外水の流れを内部空間(40)の開口側により効果的に導くことができる。
【0087】
10)幾つかの実施形態では、上記8)又は9)に記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記少なくとも1つの整流板(7)は、
第1の整流板(7B、7DC)と、
前記第1の整流板(7B、7D)よりも前記フィンボックス(4)の前記開口(41)からの距離が大きく、前記第1の整流板(7B、7D)よりも船首船尾方向における長さが大きい第2の整流板(7A、7C)と、を含む。
【0088】
上記10)の構成によれば、フィンボックス(4)の内部空間(40)の開口側は、奥側に比べて整流板(7)を設置できるスペースが小さいが、内部空間(40)の開口側に配置される第1の整流板(7B、7D)の長さを短くすることで、内部空間(40)に第1の整流板(7B、7D)と第2の整流板(7A、7C)を設置できる。第1の整流板(7B、7D)と第2の整流板(7A、7C)を設けることで、第1の整流板(7B、7D)又は第2の整流板(7A、7C)の一方を設ける場合に比べて、内部空間(40)に流入した船外水の流れを内部空間(40)の開口側により効果的に導くことができる。
【0089】
11)幾つかの実施形態では、上記1)から10)までの何れかに記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記フィンボックス(4)は、
前記フィンボックス(4)の前記開口(41)の上縁(411)から上方に向かって延在する上側開口壁(45)と、
前記フィンボックス(4)の前記開口(41)の下縁(412)から下方に向かって延在する下側開口壁(46)と、を有し、
前記フィンスタビライザ(2)は、
前記上側開口壁(45)の下端部又は前記下側開口壁(46)の上端部の何れか一方から前記船体(11)の高さ方向及び船首船尾方向に直交する方向に沿って前記フィンボックス(4)の奥側に向かって延在する少なくとも1つの案内板(8)をさらに備える。
【0090】
上記11)の構成によれば、案内板(8)により、船体(11)の外部空間(10)から上方や下方に向かう船外水の流れがフィンボックス(4)の内部に流入することを抑制できる。特に、フィン(3)が突出位置に位置し、翼部(32)の翼角度が変更された場合には、フィン(3)の周囲を流れる船外水に上方や下方に向かう流れが生じるので、案内板(8)が好適に作用する。
【0091】
12)幾つかの実施形態では、上記11)に記載のフィンスタビライザ(2)であって、
前記少なくとも1つの案内板(8)は、
前記上側開口壁の前記下端部に一端が接続される上側案内板(8A)と、
前記下側開口壁の前記上端部に一端が接続される下側案内板(8B)であって、前記船首船尾方向において前記上側案内板(8A)に重複する位置に少なくとも一部が配置された下側案内板(8B)と、を含む。
【0092】
上記12)の構成によれば、船首船尾方向において少なくとも一部が重複する位置に上側案内板(8A)と下側案内板(8B)とを設けることで、上側案内板(8A)又は下側案内板(8B)の一方を設ける場合に比べて、船外水の上方や下方に向かう流れがフィンボックス(4)の内部に流入することを効果的に抑制できる。
【0093】
13)本開示の少なくとも一実施形態に係る船舶(1)は、
上記1)から12)までの何れかに記載のフィンスタビライザ(2)と、
前記フィンスタビライザ(2)が搭載される前記船体(11)と、を備える。
【0094】
上記13)の構成によれば、フィンスタビライザ(2)により、船尾側壁面(49)近傍における船外水による抵抗を低減することで、フィンスタビライザ(2)を備える船舶(1)の効率向上が図れる。
【0095】
14)本開示の少なくとも一実施形態に係るフィンスタビライザ(2)は、
上記1)から12)までの何れかに記載のフィンスタビライザ(2)の組立方法であって、
前記船体(11)とは別体である前記溝部形成部(5)を準備する溝部形成部準備ステップと、
前記船体(11)の前記閉塞部(6)よりも前記船尾側に前記溝部形成部(5)を取り付けるための溝部取付孔(141)を形成する溝部取付孔形成ステップと、
前記溝部取付孔(141)に前記溝部形成部(5)を挿入し、前記溝部形成部(5)を前記船体(11)及び前記フィンボックス(4)に溶接等により接合することで、前記船体(11)及び前記フィンボックス(4)に前記溝部形成部(5)を固定する溝部形成部固定ステップと、
前記溝部(51)の内部に形成される溝内空間(50)と前記フィンボックス(4)の前記内部空間(40)とを連通させる連通孔(491)を前記船尾側壁面(49)に形成する連通孔形成ステップと、を備える。
【0096】
上記14)の方法によれば、溝部(51)を備えないフィンスタビライザ(2)に溝部(51)を新たに設けることができる。また、溝部(51)を新たに設ける際に、閉塞部(6)として既存の船体(11)の外板(14)を用いることで、閉塞部(6)を新たに設けなくても溝部(51)及び閉塞部(6)を備えるフィンスタビライザ(2)に改造できる。
【符号の説明】
【0097】
1 船舶
2 フィンスタビライザ
3 フィン
4 フィンボックス
5 溝部形成部
6 閉塞部
7 整流板
8 案内板
10 外部空間
11 船体
12 船首
13 船尾
14 外板
14A 右舷側外板
14B 左舷側外板
15 船底板
16 上甲板
31 収容駆動部
32 翼部
33 フィン先端部
40 内部空間
40A 船尾側空間
41 開口
42 天井面
43 底面
44 開口側壁面
45 上側開口壁
46 下側開口壁
47 奥側壁面
48 船首側壁面
49 船尾側壁面
50 溝内空間
51 溝部
52 溝部側開口
61 上端
62 下端
63 船首側の縁
64 船尾側の縁
65 外面
631 凹湾曲部
632 高さ方向延在部
633 上方湾曲部
634 下方湾曲部
BL 境界線
BS 船首側
BSD 船首船尾方向
RA 回転軸
SS 船尾側
TA 旋回領域
WL 喫水線