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特開2024-169123プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物
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  • 特開-プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169123
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/04 20060101AFI20241128BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20241128BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E04B1/04 C
E04B1/21 A
E04B1/61 502D
E04B1/61 505A
E04B1/61 503C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086337
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】300011139
【氏名又は名称】株式会社ビーオーセイツ・ジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】523197412
【氏名又は名称】伊藤 喜啓
(71)【出願人】
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 公一
(72)【発明者】
【氏名】棗田 義尚
(72)【発明者】
【氏名】石原 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 喜啓
(72)【発明者】
【氏名】志田 弘二
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA29
2E125AA53
2E125AA57
2E125AA62
2E125AC15
2E125AE02
2E125AG02
2E125AG07
2E125AG11
2E125AG31
2E125AG41
2E125BA02
2E125BA26
2E125BB18
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE01
2E125BE02
2E125BF03
2E125CA03
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする。
【解決手段】建物を構成するプレキャストコンクリート部材Pは、板状に形成されたコンクリート部20と、コンクリート部20の端部端面20t、または表面20fに設置される鋼管30と、を備え、鋼管30は、各々が軸線方向に延在するように設けられた、第1板部31、第1板部31に対向する第2板部32、互いに対向して設けられて第1板部31と第2板部32を連結する一対の側板部33を備え、鋼管30は、第1板部31がコンクリート部20に埋設され、第2板部32がコンクリート部20から突出して設けられるとともに、側板部33にはボルト接合用の孔33hが開設されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を構成するプレキャストコンクリート部材であって、
板状に形成されたコンクリート部と、
前記コンクリート部の端部端面、または表面に設置される鋼管と、を備え、
前記鋼管は、各々が軸線方向に延在するように設けられた、第1板部、前記第1板部に対向する第2板部、及び互いに対向して設けられて前記第1板部と前記第2板部を連結する一対の側板部を備え、
前記鋼管は、前記第1板部が前記コンクリート部に埋設され、前記第2板部が前記コンクリート部から突出して設けられるとともに、前記側板部にはボルト接合用の孔が開設されていることを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材同士を接合する接合構造であって、
第1の前記プレキャストコンクリート部材と、第2の前記プレキャストコンクリート部材が、各々の前記第2板部が互いに当接し、かつ各々の前記側板部が同一の平面内に位置するように設けられ、
前記第2板部を跨り、前記同一の平面内に位置する前記側板部の各々に沿うように、連結鋼板が設けられ、前記連結鋼板と前記側板部の各々とが、ボルト接合されている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合構造。
【請求項3】
請求項2に記載の接合構造によって前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材同士が接合されることで、壁とスラブのいずれか一方または双方が形成されていることを特徴とする構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物を構成するプレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材同士を接合するプレキャストコンクリート部材の接合構造、及びプレキャストコンクリート部材の接合構造で形成される構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物を施工する際に、プレキャストコンクリート部材が使用されることがある。例えば壁式構造の建築構造物の場合においては、プレキャストコンクリート部材を板状に形成しておいて、これを現場で組み立てることで、建築構造物を施工することが行われている。
建築構造物は、利用者や居住者による利用が終了した後には、解体される。この際に、建築構造物が上記のようなプレキャストコンクリート部材を用いて構築されている場合、プレキャストコンクリート部材ができるだけ原形のまま残るように解体できれば、このプレキャストコンクリート部材を用いて新たな建築構造物を構築することができる。これにより、廃材の量が大きく低減されてSDGs(持続可能な開発目標)に貢献できるとともに、建築構造物の施工費用を低減することが可能となる。次の特許文献1~3には、このようなプレキャストコンクリート部材が開示されている。
【0003】
特許文献1には、再使用が可能なリサイクル基礎であって、複数体が所定の対向面を対向させた状態で一体に接続されるプレキャストコンクリート製の基礎本体と、各基礎本体のそれぞれの対向位置に互いに対応するように設けられ、かつ、近接状態で互いに接続される接続部材と、基礎本体の対向面および接地面に積層された剥離材層とからなり、基礎本体は、接続部材で一体に接続された状態で互いに対向した対向面間に後打ちコンクリートが施工される構成が記載されている。このような構成において、一旦施工された基礎を分解して回収するに際しては、後打ちコンクリート部を、例えば削岩機等の治具を用いて斫り落とす。
また、特許文献2には、接合端面に突設部を有するプレキャストコンクリート床版同士が梁上で接合される構造において、対向するプレキャストコンクリート床版の、ダボ筋が突出する接合端面間には充填材が充填されるとともに、充填材硬化後に引抜き可能な仕切板が介挿されている構成が記載されている。
特許文献3には、リサイクルの壁体構成として、上梁と、ボルトによって上梁に固定接続される上接続ブロックと、下梁と、ボルトによって下梁に固定接続される下接続ブロックと、末端ブロックと、複数個の基準ブロックと、左立柱と、右立柱と、ボルトによって左立柱に固定接続される左接続ブロックと、ボルトによって右立柱に固定接続される右接続ブロックとを備える構成が記載されている。
壁式構造においても、これらのような構造を適用すれば、解体後にプレキャストコンクリート部材を再利用可能な状態となるように、建築構造物を構築できる可能性がある。
【0004】
しかし、特許文献1の構成においては、施工された基礎を分解して回収するに際し、上記のように、布基礎本体間に形成された後打ちコンクリート体を斫り落とす必要があり、この作業の際に、布基礎本体が損傷し、再利用できない状態となる可能性がある。
特許文献2の構成においては、床を解体してプレキャストコンクリート床版をリユースする際に、仕切板を引き抜いてプレキャストコンクリート床版を取り外した後に、プレキャストコンクリート床版の接合端面に付着した充填材を除去する必要がある。このため、特許文献1と同様に、この除去作業の際に、プレキャストコンクリート床版が損傷し、再利用できない状態となる可能性がある。
特許文献3の構成においては、壁体構造を構成する各要素をボルトによって接続するため、コンクリートの斫りや充填剤の除去作業が不要となり、解体時に、各要素が損傷する可能性が低減する。しかし、壁体構造が、上梁、下梁、上接続ブロック、下接続ブロック等の、多くの種類の構成要素で構成され、またこれらの構成要素間の取り合いも複雑なものとなっている。したがって、組み立てや解体作業が容易ではない。
壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物が、望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-55743号公報
【特許文献2】特開2006-2541号公報
【特許文献3】特開2018-162658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、建物を構成するプレキャストコンクリート部材同士の接合構造として、先ず、板状のコンクリート部の端部端面、または表面に鋼管を設置し、鋼管の一部(第1板部)をコンクリート部に埋設させ、鋼管の他方部(第2板部、一対の側板部)を突出させたプレキャストコンクリート部材を考案した。そして、其々のプレキャストコンクリート部材を構成するコンクリート部から突出させた鋼管同士を、当該鋼管に添わせる連結鋼板を介してボルト接合させることで、コンクリートや充填材の打設、溶接等を行うことなく、プレキャストコンクリート部材同士を容易に接合可能である点に着眼し、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のプレキャストコンクリート部材は、建物を構成するプレキャストコンクリート部材であって、板状に形成されたコンクリート部と、前記コンクリート部の端部端面、または表面に設置される鋼管と、を備え、前記鋼管は、各々が軸線方向に延在するように設けられた、第1板部、前記第1板部に対向する第2板部、及び互いに対向して設けられて前記第1板部と前記第2板部を連結する一対の側板部を備え、前記鋼管は、前記第1板部が前記コンクリート部に埋設され、前記第2板部が前記コンクリート部から突出して設けられるとともに、前記側板部にはボルト接合用の孔が開設されていることを特徴とする。
このような構成によれば、コンクリート部の端部端面または表面に鋼管が設けられ、鋼管の第1板部がコンクリート部の端部端面または表面の内側に埋設され、第2板部がコンクリート部から突出して設けられている。具体的には、コンクリート部の端部端面または表面から、鋼管の、軸線方向に延在するように設けられた、第2板部側の部分が突出して設けられている。これに伴って、鋼管の一対の側板部も、コンクリート部の端部端面または表面から突出している。この鋼管の一対の側板部には、プレキャストコンクリート部材を他の部材と接合するための、ボルト接合用の孔が開設されている。このように、プレキャストコンクリート部材の、他の部材との接合に使用される部分は、コンクリート部の端部端面または表面から、鋼管が部分的に突出したのみの、簡潔な構成となっている。特に、プレキャストコンクリート部材を他の部材と接合する際には、他の部材に設けられたボルト孔と、側板部に開設されたボルト接合用の孔の位置をあわせて、他の部材側からボルトを緊締することにより接合すればよい。このように、プレキャストコンクリート部材を他の部材と接合する際に、コンクリートや充填材の打設、溶接等の作業が不要となる。したがって、プレキャストコンクリート部材を用いた組立作業が容易となる。
また、他の部材からプレキャストコンクリート部材を分離し、解体する際には、ボルトによる接合を解除すればよく、コンクリートや充填材の斫り作業が不要である。したがって、解体作業が容易である。特に、斫り等の、構成要素を破壊する作業が不要であるため、このような破壊作業に伴うプレキャストコンクリート部材の損傷が抑制される。したがって、プレキャストコンクリート部材の再利用をより容易とすることができる。
このようにして、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材を提供することができる。
【0008】
また、本発明のプレキャストコンクリート部材の接合構造は、上記したようなプレキャストコンクリート部材同士を接合する接合構造であって、第1の前記プレキャストコンクリート部材と、第2の前記プレキャストコンクリート部材が、各々の前記第2板部が互いに当接し、かつ各々の前記側板部が同一の平面内に位置するように設けられ、前記第2板部を跨り、前記同一の平面内に位置する前記側板部の各々に沿うように、連結鋼板が設けられ、前記連結鋼板と前記側板部の各々とが、ボルト接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、第1のプレキャストコンクリート部材の第2板部と、第2のプレキャストコンクリート部材の第2板部とを互いに当接させ、連結鋼板を、双方の第2板部を跨がり、同一の平面内に位置する側板部の各々に沿うように設けて、連結鋼板と側板部の各々とを、ボルト接合することで、第1のプレキャストコンクリート部材と第2のプレキャストコンクリート部材とが接合される。このように、第1のプレキャストコンクリート部材と第2のプレキャストコンクリート部材とを接合する際に、コンクリートや充填材の打設、溶接等の作業が不要である。また、第1のプレキャストコンクリート部材と第2のプレキャストコンクリート部材とを分離し、解体する際には、ボルト、及び連結鋼板による接合を解除すればよく、コンクリートや充填材の斫り作業が不要である。このため、このような破壊作業に伴うプレキャストコンクリート部材の損傷が抑制される。したがって、プレキャストコンクリート部材の再利用をより容易とすることができる。
このようにして、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材の接合構造を提供することができる。
【0009】
また、本発明の構造物は、上記したようなプレキャストコンクリート部材の接合構造によって前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材同士が接合されることで、壁とスラブのいずれか一方または双方が形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、上記したようなプレキャストコンクリート部材の接合構造によって第1及び第2のプレキャストコンクリート部材同士が接合されることで、壁とスラブのいずれか一方または双方が形成されている。したがって、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、構造物を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る構造物の構成を示す断面図である。
図2図1のI-I矢視断面図である。
図3】プレキャストコンクリート部材を上から見下ろした伏せ図(板厚方向から見た図)である。
図4】鋼管が端部端面に設けられたプレキャストコンクリート部材の断面図である。
図5】鋼管が表面に設けられたプレキャストコンクリート部材の断面図である。
図6】プレキャストコンクリート部材の接合構造の一例を示す図である。
図7図6を左側から見た正面図である。
図8】プレキャストコンクリート部材の接合構造の他の一例を示す図である。
図9】プレキャストコンクリート部材の接合構造の更に他の一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る構造物の第1変形例を示す断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る構造物の第1変形例に備えた杭頭周囲鉄筋付鉄板の構成を示す斜視図である。
図12】本発明の実施形態に係る構造物の第2変形例を示す断面図である。
図13】本発明の実施形態に係る構造物の第2変形例に備えた杭頭周囲鉄筋付鉄板、及び杭頭免震ゴムの構成を示す斜視図である。
図14】本発明の第3変形例に係るプレキャストコンクリート部材及びその接合構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、建物を構成するプレキャストコンクリート部材と、そのプレキャストコンクリート部材同士を接合するプレキャストコンクリート部材の接合構造、及びプレキャストコンクリート部材の接合構造で形成される構造物である。プレキャストコンクリート部材は、板状のコンクリート部と、前記コンクリート部の端部端面、または表面に設置される鋼管とで形成される。鋼管は、第1板部、前記第1板部に対向する第2板部、及び互いに対向して設けられて前記第1板部と前記第2板部を連結する一対の側板部とを備えており、前記第1板部がコンクリート部に埋設され、前記第2板部がコンクリート部から突出している。プレキャストコンクリート部材同士は、コンクリート、モルタル、グラウト剤等を用いた湿式接合方法や、溶接接合方法ではなく、コンクリート部から突出させた角形鋼管の一部(側板部)に連結鋼板を添わせ、連結鋼板を介して乾式によるボルト接合方法で接合させた。
以下、添付図面を参照して、本発明によるプレキャストコンクリート部材、コンクリート部材の接合構造、及び構造物を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
本発明の実施形態に係る構造物の構成を示す断面図を図1に示す。図2は、図1のI-I矢視断面図である。
図1図2に示されるように、構造物1は、例えば、戸建て住宅、集合住宅等であり、地盤G上に構築されている。構造物1は、例えば3階建てで、基礎スラブ(スラブ)3、各階の床スラブ(スラブ)4、壁5、屋根スラブ(スラブ)6等が、それぞれ、プレキャストコンクリート部材Pにより形成されている。基礎スラブ3、床スラブ4、壁5、屋根スラブ6の各々は、板状に形成されたプレキャストコンクリート部材Pを、1枚使用するか、または2枚以上を1つの平面を成すように互いに接合することで、形成されている。1つの平面を成すように2枚以上のプレキャストコンクリート部材P同士が接合される場合には、プレキャストコンクリート部材Pは、後述の鋼管30を用いた接合構造により接合されている。構造物1は、このようにして板状のプレキャストコンクリート部材Pを互いに接合して組み立てることで、壁式構造として形成されている。このように、プレキャストコンクリート部材Pは、建物を構成する。
以降、基礎スラブ3を形成するプレキャストコンクリート部材Pをプレキャストコンクリート部材Psと記載し、壁5を形成するプレキャストコンクリート部材Pをプレキャストコンクリート部材Pwと記載し、床スラブ4を形成するプレキャストコンクリート部材Pをプレキャストコンクリート部材Pfと記載し、屋根スラブ6を形成するプレキャストコンクリート部材Pをプレキャストコンクリート部材Prと記載する。これらの、基礎スラブ3を形成するプレキャストコンクリート部材Ps、各階の床スラブ4を形成するプレキャストコンクリート部材Pf、及び屋根スラブ6を形成するプレキャストコンクリート部材Prと、壁5を形成するプレキャストコンクリート部材Pwとの間も、それぞれ後述の鋼管30を用いた接合構造により接合されている。
【0014】
図3は、プレキャストコンクリート部材を板厚方向から見た図である。図4は、鋼管が端部端面に設けられたプレキャストコンクリート部材の断面図である。図5は、鋼管が表面に設けられたプレキャストコンクリート部材の断面図である。
図3図5に示すように、プレキャストコンクリート部材Pは、板状のコンクリート部20と、鋼管30と、を備えている。
コンクリート部20は、その内部に鉄筋21が埋設された、例えば鉄筋補強スチールファイバーコンクリートからなる。コンクリート部20は、その板厚方向から見ると矩形状をなし、その四方の辺20sに沿って、端部端面20tを有している。コンクリート部20は、その板厚方向の両側に一対の表面20fを有している。
【0015】
鋼管30は、プレキャストコンクリート部材Pの端部端面20t、または表面20fに設けられている。プレキャストコンクリート部材Pの端部端面20tに他のプレキャストコンクリート部材Pを接合する場合、図3図4に示されるように、鋼管30は、端部端面20tに設けられている。プレキャストコンクリート部材Pの表面20fに他のプレキャストコンクリート部材Pを接合する場合、図3図5に示されるように、鋼管30は、表面20fに設けられている。図3の例では、矩形状のプレキャストコンクリート部材Pを板厚方向から見た場合に、3つの辺20sにおいては、端部端面20tに鋼管30が設けられ、残る1つの辺20sにおいては、表面20fに鋼管30が設けられている。すなわち、プレキャストコンクリート部材Pに対して他のプレキャストコンクリート部材Pが接合される方向に応じて、各辺20sにおいて、鋼管30は、端部端面20tに設けられる場合と、表面20fに設けられる場合がある。このように、プレキャストコンクリート部材Pにおいては、どの端部端面20tや表面20fに、鋼管30が設けられても構わない。
【0016】
鋼管30は、プレキャストコンクリート部材Pの各辺20sにおいて、端部端面20t、または表面20fに、各辺20sに沿った方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、鋼管30は、プレキャストコンクリート部材Pの各辺20sにおいて、端部端面20t、または表面20fに、各辺20sに沿った方向に間隔をあけて、それぞれ2つずつ設けられている。鋼管30は、プレキャストコンクリート部材Pの各辺20sにおいて、1つのみ設けてもよいし、3つ以上を設けるようにしてもよい。
【0017】
鋼管30は、端部端面20t、または表面20fにおいて、各辺20sに沿った方向に延びる角筒状に形成されている、角形鋼管である。図4図5に示すように、鋼管30は、第1板部31と、第1板部31に対向する第2板部32と、互いに対向して設けられて第1板部31と第2板部32を連結する一対の側板部33を備えている。第1板部31、第2板部32、及び一対の側板部33の各々は、鋼管30が延びる軸線方向に延在するように設けられている。第1板部31、第2板部32、及び一対の側板部33の各々は、本実施形態においては、各々が平板状に形成されている。このようにして、鋼管30は、軸線方向に直交する平面で断面視したときに、外輪郭が矩形形状となるように形成されている。
【0018】
図4に示されるように、鋼管30が、端部端面20tに設けられている場合、第1板部31は、端部端面20tと平行に設けられている。第1板部31は、コンクリート部20に、より詳細にはコンクリート部20の端部端面20tの内側に、埋設されている。第2板部32は、コンクリート部20から、より詳細にはコンクリート部20の端部端面20tから、外方に突出した位置に設けられている。第2板部32は、第1板部31に対し、間隔をあけて設けられている。第2板部32は、第1板部31と平行に設けられている。一対の側板部33は、一部がコンクリート部20に埋設され、残部がコンクリート部20から突出している。一対の側板部33は、コンクリート部20内で、第1板部31の幅方向両端部に接合されている。一対の側板部33は、コンクリート部20内から、端部端面20tに直交する方向に突出している。一対の側板部33は、コンクリート部20から突出した位置で、第2板部32の幅方向両端部に接合されている。一対の側板部33の各々において、コンクリート部20から突出した部分には、ボルト接合用の孔33hが開設されている。鋼管30の内側の表面には、孔33hに連通する位置に、ナット36が溶接されている。
【0019】
また、図5に示されるように、鋼管30が、表面20fに設けられている場合、第1板部31は、表面20fと平行に設けられている。第1板部31は、コンクリート部20に、より詳細にはコンクリート部20の表面20fの内側に、埋設されている。第2板部32は、コンクリート部20から、より詳細にはコンクリート部20の表面20fから、外方に突出した位置に設けられている。第2板部32は、第1板部31に対し、間隔をあけて設けられている。第2板部32は、第1板部31と平行に設けられている。一対の側板部33は、一部がコンクリート部20に埋設され、残部がコンクリート部20から突出している。一対の側板部33は、コンクリート部20内で、第1板部31の幅方向両端部に接合されている。一対の側板部33は、コンクリート部20内から、表面20fに直交する方向に突出している。一対の側板部33は、コンクリート部20から突出した位置で、第2板部32の幅方向両端部に接合されている。一対の側板部33の各々において、コンクリート部20から突出した部分には、ボルト接合用の孔33hが開設されている。鋼管30の内側の表面には、孔33hに連通する位置に、ナット36が溶接されている。
【0020】
また、コンクリート部20内に埋設された第1板部31には、第2板部32とは反対側の表面に、鋼材35が接合されている。鋼材35は、断面形状がT字状に形成されている。鋼材35は、一端が第1板部31に接合されて、第1板部31から、第2板部32側とは反対側の、コンクリート部20の内側に向けて延びる延出部35aと、延出部35aの先端から、第1板部31と平行になるように、延出部35aの両側に突出するように設けられた突出部35bとを一体に有している。鋼材35は、第1板部31に沿って各辺20sが延びる方向に連続している。この鋼材35は、第1板部31とともに、コンクリート部20に埋設され、アンカーとしての効果を有している。
なお、鋼材35と、コンクリート部20に埋設された鉄筋21とは、互いに干渉しないように設けられている。
【0021】
図6は、プレキャストコンクリート部材の接合構造の一例を示す図である。図7は、図6を左側から見た正面図である。これらの図6図7は、図1におけるA矢視部分における、基礎スラブ3を形成するプレキャストコンクリート部材Psと、壁5を形成するプレキャストコンクリート部材Pwとを接合する構造を示す図である。
図6図7に示すように、基礎スラブ3を形成するプレキャストコンクリート部材Psと、壁5を形成するプレキャストコンクリート部材Pwとを接合する場合、第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Psにおいては、鋼管30を、コンクリート部20の表面20fに設ける。また、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pwにおいては、鋼管30を、コンクリート部20の下端の端部端面20tに設ける。
図6に示されるように、プレキャストコンクリート部材Psの第2板部32と、プレキャストコンクリート部材Pwの第2板部32とを、互いに当接させ、各々の一対の側板部33が、それぞれ同一の平面内に位置するように設ける。
【0022】
この状態で、プレキャストコンクリート部材Psの鋼管30と、プレキャストコンクリート部材Pwの鋼管30とを、連結鋼板40により接合する。連結鋼板40は、プレキャストコンクリート部材Pwの板厚方向の両側にそれぞれ設けられている。各連結鋼板40は、互いに当接したプレキャストコンクリート部材Psの第2板部32と、プレキャストコンクリート部材Pwの第2板部32とを跨がるように設けられている。各連結鋼板40は、プレキャストコンクリート部材Psの側板部33と、プレキャストコンクリート部材Pwの側板部33の各々に沿うように設けられている。各連結鋼板40には、孔33hに連通するよう、挿通孔40hが形成されている。また、各連結鋼板40は、プレキャストコンクリート部材Psのコンクリート部20の表面20fと、プレキャストコンクリート部材Pwのコンクリート部20の端部端面20tとの間を塞ぐように設けられている。
【0023】
プレキャストコンクリート部材Pwの板厚方向の両側で、連結鋼板40と側板部33の各々は、複数本のボルト50によって接合されている。各ボルト50は、挿通孔40h、孔33hを通して、ナット36に緊締されている。これにより、第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Psと、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pwとが、ボルト接合される。
本実施形態においては、ボルト50は高力ボルトであり、連結鋼板40と側板部33の各々は、高力ボルトによって、トルク管理されて、摩擦接合されている。
連結鋼板40と、プレキャストコンクリート部材Psのコンクリート部20の表面20fとの境界、及び、連結鋼板40と、プレキャストコンクリート部材Pwのコンクリート部20の端部端面20tとの境界の各々は、止水テープ等により止水処置が施されている。
【0024】
図8は、プレキャストコンクリート部材の接合構造の他の一例を示す図である。図8は、図1におけるB矢視部分における、床スラブ4を形成するプレキャストコンクリート部材Pfと、壁5を形成するプレキャストコンクリート部材Pwとを接合する構造を示す図である。
図8に示すように、各階の床スラブ4を形成するプレキャストコンクリート部材Pfと、床スラブ4の上下の壁5を形成するプレキャストコンクリート部材Pwとを接合する場合、第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Pfにおいては、鋼管30を、コンクリート部20の上下の表面20fにそれぞれ設ける。また、床スラブ4の上側に配置される、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pwにおいては、鋼管30を、コンクリート部20の下端の端部端面20tに設ける。床スラブ4の下側に配置される、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pwにおいては、鋼管30を、コンクリート部20の上端の端部端面20tに設ける。
そして、プレキャストコンクリート部材Pfの上下の各々において、プレキャストコンクリート部材Pfの第2板部32と、プレキャストコンクリート部材Pwの第2板部32とを、互いに当接させ、各々の一対の側板部33が、それぞれ同一の平面内に位置するように設ける。
【0025】
この状態で、プレキャストコンクリート部材Pfの鋼管30と、プレキャストコンクリート部材Pwの鋼管30とを、連結鋼板40により接合する。連結鋼板40は、プレキャストコンクリート部材Pwの板厚方向の両側にそれぞれ設けられている。各連結鋼板40は、互いに当接したプレキャストコンクリート部材Pfの第2板部32と、プレキャストコンクリート部材Pwの第2板部32とを跨がるように設けられている。各連結鋼板40は、プレキャストコンクリート部材Pfの側板部33と、プレキャストコンクリート部材Pwの側板部33の各々に沿うように設けられている。各連結鋼板40には、孔33hに連通するよう、挿通孔40hが形成されている。また、各連結鋼板40は、プレキャストコンクリート部材Pfの上下の各々において、コンクリート部20の表面20fと、プレキャストコンクリート部材Pwのコンクリート部20の端部端面20tとの間を塞ぐように設けられている。
【0026】
プレキャストコンクリート部材Pwの板厚方向の両側で、連結鋼板40と側板部33の各々は、複数本のボルト50によって接合されている。各ボルト50は、挿通孔40h、孔33hを通して、ナット36に緊締されている。これにより、第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Pfと、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pwとが、ボルト接合される。
本実施形態においては、ボルト50は高力ボルトであり、連結鋼板40と側板部33の各々は、高力ボルトによって、トルク管理されて、摩擦接合されている。
【0027】
なお、図8に示したような、床スラブ4を形成するプレキャストコンクリート部材Pfと、床スラブ4の下側の壁5を形成するプレキャストコンクリート部材Pwとを接合する構成は、図1にC矢視部分として示される、屋根スラブ6を形成するプレキャストコンクリート部材Prと、屋根スラブ6の下側の壁5を形成するプレキャストコンクリート部材Pwとを接合する場合にも同様に適用できる。
【0028】
図9は、プレキャストコンクリート部材の接合構造の他の一例を示す図である。図9は、図2におけるD矢視部分における、床スラブ4を形成するプレキャストコンクリート部材Pf同士を接合する構造を示す図である。
図9に示すように、各階の床スラブ4において、互いに隣り合うプレキャストコンクリート部材Pf同士を接合する場合、一方の、第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Pfにおいては、鋼管30を、コンクリート部20において、第2のプレキャストコンクリート部材P2側を向く端部端面20tに設ける。また、他方の、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pfにおいては、鋼管30を、コンクリート部20において、第1のプレキャストコンクリート部材P1側を向く端部端面20tに設ける。
そして、第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Pfの第2板部32と、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pfの第2板部32とを、互いに当接させ、各々の一対の側板部33が、それぞれ同一の平面内に位置するように設ける。
【0029】
この状態で、第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Pfの鋼管30と、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pfの鋼管30とを、連結鋼板40により接合する。連結鋼板40は、プレキャストコンクリート部材Pfの板厚方向の両側にそれぞれ設けられている。各連結鋼板40は、互いに当接したプレキャストコンクリート部材Pfの第2板部32間を跨がるように設けられている。各連結鋼板40は、双方のプレキャストコンクリート部材Pfの側板部33の各々に沿うように設けられている。各連結鋼板40は、第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Pfのコンクリート部20の端部端面20tと、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pfのコンクリート部20の端部端面20tとの間を塞ぐように設けられている。
【0030】
プレキャストコンクリート部材Pfの板厚方向の両側で、連結鋼板40と側板部33の各々は、複数本のボルト50によって接合されている。各ボルト50は、挿通孔40h、孔33hを通して、ナット36に緊締されている。これにより、第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Pfと、第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pfとが、ボルト接合される。
本実施形態においては、ボルト50は高力ボルトであり、連結鋼板40と側板部33の各々は、高力ボルトによって、トルク管理されて、摩擦接合されている。
【0031】
なお、図9に示したような構成は、基礎スラブ3や屋根スラブ6において、互いに隣り合うプレキャストコンクリート部材Ps、Pr同士を接合する場合にも同様に適用できる。
同様に、図9に示したような構成は、壁5において、互いに隣り合うプレキャストコンクリート部材Pw同士を接合する場合にも同様に適用できる。
【0032】
上述したようなプレキャストコンクリート部材Pは、建物を構成するプレキャストコンクリート部材Pであって、板状に形成されたコンクリート部20と、コンクリート部20の端部端面20t、または表面20fに設置される鋼管30と、を備え、鋼管30は、各々が軸線方向に延在するように設けられた、第1板部31、第1板部31に対向する第2板部32、及び互いに対向して設けられて第1板部31と第2板部32を連結する一対の側板部33を備え、鋼管30は、第1板部31がコンクリート部20に埋設され、第2板部32がコンクリート部20から突出して設けられるとともに、側板部33にはボルト接合用の孔33hが開設されている。
このような構成によれば、コンクリート部20の端部端面20tまたは表面20fに鋼管30が設けられ、鋼管30の第1板部31がコンクリート部20の端部端面20tまたは表面20fの内側に埋設され、第2板部32がコンクリート部20から突出して設けられている。具体的には、コンクリート部20の端部端面20tまたは表面20fから、鋼管30の、軸線方向に延在するように設けられた、第2板部32側の部分が突出して設けられている。これに伴って、鋼管30の一対の側板部33も、コンクリート部20の端部端面20tまたは表面20fから突出している。この鋼管30の一対の側板部33には、プレキャストコンクリート部材Pを他の部材と接合するための、ボルト接合用の孔33hが開設されている。このように、プレキャストコンクリート部材Pの、他の部材との接合に使用される部分は、コンクリート部20の端部端面20tまたは表面20fから、鋼管30が部分的に突出したのみの、簡潔な構成となっている。特に、プレキャストコンクリート部材Pを他の部材と接合する際には、他の部材に設けられたボルト孔と、側板部33に開設されたボルト接合用の孔33hの位置をあわせて、他の部材側からボルトを緊締することにより接合すればよい。このように、プレキャストコンクリート部材Pを他の部材と接合する際に、コンクリートや充填材の打設、溶接等の作業が不要となる。したがって、プレキャストコンクリート部材Pを用いた組立作業が容易となる。
また、他の部材からプレキャストコンクリート部材Pを分離し、解体する際には、ボルトによる接合を解除すればよく、コンクリートや充填材の斫り作業が不要である。したがって、解体作業が容易である。特に、斫り等の、構成要素を破壊する作業が不要であるため、このような破壊作業に伴うプレキャストコンクリート部材Pの損傷が抑制される。したがって、プレキャストコンクリート部材Pの再利用をより容易とすることができる。
このようにして、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材Pを提供することができる。
【0033】
また、プレキャストコンクリート部材P同士を接合する接合構造は、第1のプレキャストコンクリート部材P1と、第2のプレキャストコンクリート部材P2が、各々の第2板部32が互いに当接し、かつ各々の側板部33が同一の平面内に位置するように設けられ、第2板部32を跨り、同一の平面内に位置する側板部33の各々に沿うように、連結鋼板40が設けられ、連結鋼板40と側板部33の各々とが、ボルト接合されている。
このような構成によれば、第1のプレキャストコンクリート部材P1の第2板部32と、第2のプレキャストコンクリート部材P2の第2板部32とを互いに当接させ、連結鋼板40を、双方の第2板部32を跨がり、同一の平面内に位置する側板部33の各々に沿うように設けて、連結鋼板40と側板部33の各々とを、ボルト接合することで、第1のプレキャストコンクリート部材P1と第2のプレキャストコンクリート部材P2とが接合される。このように、第1のプレキャストコンクリート部材P1と第2のプレキャストコンクリート部材P2とを接合する際に、コンクリートや充填材の打設、溶接等の作業が不要である。また、第1のプレキャストコンクリート部材P1と第2のプレキャストコンクリート部材P2とを分離し、解体する際には、ボルト50、及び連結鋼板40による接合を解除すればよく、コンクリートや充填材の斫り作業が不要である。このため、このような破壊作業に伴うプレキャストコンクリート部材Pの損傷が抑制される。したがって、プレキャストコンクリート部材Pの再利用をより容易とすることができる。
このようにして、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材Pの接合構造を提供することができる。
【0034】
例えば、他の部材と接合するための仕口を、プレキャストコンクリート部材の表面に雄ネジ部を突出させるように形成し、この雄ネジ部に連結鋼板のボルト孔を挿通させて、プレキャストコンクリート部材の表面に連結鋼板を設けたうえで、その外側から、ナットを緊締することにより、プレキャストコンクリート部材を、連結鋼板を介して、他の部材と接合することも考えられる。しかし、この場合においては、連結鋼板よりもプレキャストコンクリート部材のコンクリート部は剛性が低いために、ナットを緊締する際に、あるいは地震等により連結鋼板とコンクリート部との間に力が作用した際に、連結鋼板がコンクリート部にめり込んだりすることによって、コンクリート部が破損する可能性がある。
これに対し、上記のように、連結鋼板40を、第1のプレキャストコンクリート部材P1の側板部33と、第2のプレキャストコンクリート部材P2の側板部33とに、連結鋼板40を添えて、連結鋼板40と側板部33の各々を、ボルト接合している。鋼管30と連結鋼板40は、いずれも鋼製であり、同様の剛性を有している。このため、プレキャストコンクリート部材Pの、他の部材との接合に関連する部分が損傷することが抑制される。
【0035】
また、構造物1は、上記したようなプレキャストコンクリート部材Pの接合構造によって第1及び第2のプレキャストコンクリート部材P1、P2同士が接合されることで、壁5とスラブ(基礎スラブ3、床スラブ4、屋根スラブ6)のいずれか一方または双方が形成されている。
このような構成によれば、上記したようなプレキャストコンクリート部材Pの接合構造によって第1及び第2のプレキャストコンクリート部材P1、P2同士が接合されることで、壁と床スラブ3、4、6のいずれか一方または双方が形成されている。したがって、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、構造物1を提供することができる。
【0036】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明のプレキャストコンクリート部材、コンクリート部材の接合構造、及び構造物は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、地盤G上に形成された基礎スラブ3を備えるようにしたが、図10に示すように、基礎スラブ3を、地盤G中に設けられた基礎杭8により支持するようにしてもよい。
この場合、基礎杭8としては、先端(下端)に螺旋状の翼状部を備えるつばさ杭等を用いるようにしても良い。基礎杭8上には、現場打ちのコンクリート部9を形成し、基礎スラブ3は、コンクリート部9を介して基礎杭8によって下方から支持される。
このとき、基礎杭8の頭部には、杭頭周囲鉄筋付鉄板70を設ける。図10図11に示すように、杭頭周囲鉄筋付鉄板70は、円盤状の鉄板71と、鉄板71から下方に突出するように設けられた複数本の下側鉄筋72と、鉄板71から上方に突出するように設けられた複数本の上側鉄筋73と、を有している。複数本の下側鉄筋72は、基礎杭8の頭部に埋設されている。複数本の上側鉄筋73は、コンクリート部9に埋設されている。
【0037】
(実施形態の第2変形例)
上記第1変形例においては、基礎杭8の頭部とコンクリート部9の間には、杭頭周囲鉄筋付鉄板70が設けられていたが、この杭頭周囲鉄筋付鉄板に杭頭免震ゴムを設けることで、図12に示すように、基礎スラブ3を、杭頭免震ゴム83を介して、地盤G中に設けられた基礎杭8により支持するようにしてもよい。
基礎杭8の頭部には、図12図13に示されるような、下側鉄筋付鉄板81と、上側鉄筋付鉄板82と、杭頭免震ゴム83と、を備える。下側鉄筋付鉄板81は、円盤状の下側鉄板81aと、下側鉄板81aから下方に突出するように設けられた複数本の下側鉄筋81bと、を有している。複数本の下側鉄筋81bは、基礎杭8の頭部に埋設されている。上側鉄筋付鉄板82は、円盤状の上側鉄板82aと、上側鉄板82aから上方に突出するように設けられた複数本の上側鉄筋82bと、を有している。複数本の上側鉄筋82bは、コンクリート部9に埋設されている。杭頭免震ゴム83は、下側鉄板81aと、上側鉄板82aとの間に挟み込まれている。杭頭免震ゴム83は、粘弾性ゴム等からなり、下側鉄板81aと、上側鉄板82aとの水平方向の相対変位エネルギーを減衰する。
【0038】
(実施形態の第3変形例)
上記実施形態においては、鋼管30は、軸線方向に直交する平面で断面視したときに、外輪郭が矩形形状となるように形成された、角形鋼管であったが、鋼管の形状はこれに限られない。図14は、本第3変形例に係るプレキャストコンクリート部材及びその接合構造を示す図である。本変形例の鋼管30A、30Bは、第2板部32A、32Bの形状が、上記実施形態の第2板部32とは異なっており、他の部分については概ね同様な構成となっているため、ここでは特に、第2板部32A、32Bの形状について説明する。
本変形例は、上記実施形態において図9を用いて説明したものと同様に、床スラブ4を形成するための、プレキャストコンクリート部材Pf同士を接合する構造である。本変形例のプレキャストコンクリート部材Pfにおいては、図14において右側に位置する第1のプレキャストコンクリート部材P1としてのプレキャストコンクリート部材Pf1と、左側に位置する第2のプレキャストコンクリート部材P2としてのプレキャストコンクリート部材Pf2は、それぞれ異なる形状の鋼管30A、30Bを備えている。
【0039】
プレキャストコンクリート部材Pf1の鋼管30Aの第2板部32Aは、傾斜部32a、第1平板部32b、及び第2平板部32cを備えている。
傾斜部32aは、図14において上側に位置する、一方の側板部33に対して、鋭角を成すように、傾斜して設けられて、接合されている。傾斜部32aの、一方の側板部33とは反対側の端部には、側板部33と平行に、かつ第1板部31へと向かうように、第1平板部32bが設けられている。第1平板部32bの、傾斜部32aとは反対側の端部には、第1板部31と平行に、かつ他方の側板部33へと向かうように、第2平板部32cが設けられている。第2平板部32cの、第1平板部32bとは反対側の端部は、他方の側板部33に接続されている。このようにして、第2板部32Aは、一枚の平板が2か所で屈曲されたような形状を成している。
【0040】
プレキャストコンクリート部材Pf2の鋼管30Bの第2板部32Bは、傾斜部32a、第1平板部32b、及び第2平板部32cを備えている。
傾斜部32aは、図14において上側に位置する、一方の側板部33に対して、鈍角を成すように、傾斜して設けられて、接合されている。傾斜部32aの、一方の側板部33とは反対側の端部には、側板部33と平行に、かつ第1板部31から離間するように、第1平板部32bが設けられている。第1平板部32bの、傾斜部32aとは反対側の端部には、第1板部31と平行に、かつ他方の側板部33へと向かうように、第2平板部32cが設けられている。第2平板部32cの、第1平板部32bとは反対側の端部は、他方の側板部33に接続されている。このようにして、第2板部32Bは、一枚の平板が2か所で屈曲されたような形状を成している。
【0041】
プレキャストコンクリート部材Pf1の鋼管30Aの第2板部32Aと、プレキャストコンクリート部材Pf2の鋼管30Bの第2板部32Bは、互いに対応するような形状を成している。
上記実施形態と同様に、プレキャストコンクリート部材Pf1とプレキャストコンクリート部材Pfが接合される際には、これらの鋼管30A、30Bの第2板部32A、32B同士を、互いに当接させる。この際に、第2板部32A、32Bの、傾斜部32a、第1平板部32b、及び第2平板部32cの各々が、互いに当接するように設けられる。
そのうえで、鋼管30Aと鋼管30Bとを、上記実施形態と同様に、連結鋼板40により接合することで、プレキャストコンクリート部材Pf1とプレキャストコンクリート部材Pf2とが接合される。
【0042】
このようにしてプレキャストコンクリート部材Pf1とプレキャストコンクリート部材Pf2とを接合した場合には、鋼管30A、30B同士が互いに嵌合することで、接合構造をより強固なものとすることができる。
特に、本変形例のようにして床スラブ4を形成することで、例えばプレキャストコンクリート部材Pf1に下方向に荷重が作用した場合に、荷重は、プレキャストコンクリート部材Pf1の鋼管30Aの傾斜部32a、第1平板部32bを介して、プレキャストコンクリート部材Pf2の鋼管30Bの傾斜部32a、第1平板部32bへと伝達される。このため、荷重によりプレキャストコンクリート部材Pf1が、プレキャストコンクリート部材Pf2に対してずれたりすることが抑制される。
なお、図14に示したような構成は、基礎スラブ3や屋根スラブ6において、互いに隣り合うプレキャストコンクリート部材Ps、Pr同士を接合する場合にも同様に適用できる。
【0043】
(その他の変形例)
鋼管30をコンクリート部20の表面20fに設ける場合、鋼管30は、コンクリート部20の辺20sに沿って延びるように設けるとは限らない。鋼管30は、例えば、コンクリート部20の表面20fの中央部等に設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、プレキャストコンクリート部材Pが接合される対象は、同様に形成されたプレキャストコンクリート部材Pであったが、これに限られず、プレキャストコンクリート部材Pは、例えば上記のような連結鋼板を介して、鉄骨柱、鉄骨梁等の、異なる種類の部材を対象として、接合されても構わない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 構造物 31 第1板部
3 基礎スラブ(スラブ) 32 第2板部
4 床スラブ(スラブ) 33 側板部
5 壁 33h 孔
6 屋根スラブ(スラブ) 35 鋼材
20 コンクリート部 40 連結鋼板
20f 表面 50 ボルト
20t 端部端面 P1 第1のプレキャストコンクリート部材
30 鋼管 P2 第2のプレキャストコンクリート部材
P、Pf、Pr、Ps、Pw プレキャストコンクリート部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14