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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169124
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】壁紙の施工方法及び内装構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20241128BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E04F13/08 101K
E04F13/07 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086338
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】内村 陽介
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA47
2E110AB04
2E110AB23
2E110BC04
2E110CA03
2E110DA12
2E110DC21
2E110GA32W
2E110GA33Y
2E110GB16Y
(57)【要約】
【課題】目地部における不具合の発生を抑制可能な壁紙の施工方法を提供する。
【解決手段】左右に並んだ複数の石膏ボード13の間に目地部10bが形成された壁面10aに壁紙14を貼り付ける壁紙14の施工方法であって、壁面10aのうち、目地部10bの少なくとも一部を含む第1範囲R1よりも、第1範囲R1とは異なる第2範囲R2の方が強い力で接着されるように、壁面10aに壁紙14を貼り付ける貼り付け工程を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の面材の間に目地部が形成された壁面に壁紙を貼り付ける壁紙の施工方法であって、
前記壁面のうち、前記目地部の少なくとも一部を含む第1範囲よりも、前記第1範囲とは異なる第2範囲の方が強い力で接着されるように、前記壁面に前記壁紙を貼り付ける貼り付け工程を具備する、
壁紙の施工方法。
【請求項2】
前記貼り付け工程は、
前記壁面に前記壁紙を貼り付けるための接着剤に対して、前記壁面よりも接着の相性が悪い材料によって構成される接着抑制層を前記第1範囲に形成する第1工程と、
前記接着抑制層を形成した後で、前記接着剤により前記壁面に前記壁紙を貼り付ける第2工程と、
を含む、
請求項1に記載の壁紙の施工方法。
【請求項3】
前記第1工程では、
前記目地部が平らになるように、前記接着抑制層を形成する、
請求項2に記載の壁紙の施工方法。
【請求項4】
前記第2工程では、
前記壁紙の長手方向及び幅方向のうち、前記壁紙が伸び易い一方向が前記目地部に対して垂直となるように、前記壁面に前記壁紙を貼り付ける、
請求項2又は請求項3に記載の壁紙の施工方法。
【請求項5】
壁面を形成する複数の面材と、
前記壁面に貼り付けられる壁紙と、
を具備し、
前記壁紙は、
前記壁面のうち、前記複数の面材の間に形成された目地部の少なくとも一部を含む第1範囲よりも、前記第1範囲とは異なる第2範囲の方が強い力で接着されるように、前記壁面に貼り付けられる、
内装構造。
【請求項6】
前記第1範囲には、
前記壁面に前記壁紙を貼り付けるための接着剤に対して、前記壁面よりも接着の相性が悪い材料によって構成される接着抑制層が形成される、
請求項5に記載の内装構造。
【請求項7】
前記接着抑制層は、
前記複数の面材に片面テープが貼り付けられることによって形成される、
請求項6に記載の内装構造。
【請求項8】
前記片面テープは、
前記目地部を跨がないように貼り付けられる、
請求項7に記載の内装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙を施工するための壁紙の施工方法及び内装構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁紙を施工するための壁紙の施工方法の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、でん粉糊系接着剤で壁紙を壁面に貼り付ける壁紙施工法の技術が記載されている。前記壁紙施工法において、壁紙の小口部には、コーキング剤が塗布される。これによって、でん粉糊系接着剤の乾燥に伴って壁紙が縮む前に小口部の接着を済ませ、小口部で目透きや剥離が発生するのを抑制できる。
【0004】
特許文献1にあるような壁面は、一般的に複数の面材(例えば石膏ボード)の端面が突き合わされることで形成される。これにより壁面には、複数の面材の間に目地部が形成される。目地部は、パテ材等の充填材が充填され、平滑化される。また壁紙は、一般的に裏面の全域にでん粉糊系接着剤が塗布され、目地部と共に壁面に貼り付けられる。このように、壁紙は、目地部一面に糊付けされ、当該目地部と一体的化している。
【0005】
ここで、前記目地部は壁面の伸縮や地震等によって変位する場合がある。具体的には何らかの力を受けて、隣接する壁面が相対的に変位すると、これに応じて前記壁面の間の目地部も部分的に変位する場合がある。このような場合、壁紙は、上述の如く目地部と一体化しているために目地部を覆う部分に伸びしろがなく、目地部の変位を吸収できないことがある。こうして、壁紙が目地部の変位を吸収できない場合、壁紙が塑性変形してひび割れやしわが生じたり、破れたりするおそれがあった。このため、壁紙の不具合(ひび割れ等)の発生を抑制可能な技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-61368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、壁紙の不具合の発生を抑制可能な壁紙の施工方法及び内装構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、複数の面材の間に目地部が形成された壁面に壁紙を貼り付ける壁紙の施工方法であって、前記壁面のうち、前記目地部の少なくとも一部を含む第1範囲よりも、前記第1範囲とは異なる第2範囲の方が強い力で接着されるように、前記壁面に前記壁紙を貼り付ける貼り付け工程を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記貼り付け工程は、前記壁面に前記壁紙を貼り付けるための接着剤に対して、前記壁面よりも接着の相性が悪い材料によって構成される接着抑制層を前記第1範囲に形成する第1工程と、前記接着抑制層を形成した後で、前記接着剤により前記壁面に前記壁紙を貼り付ける第2工程と、を含むものである。
【0011】
請求項3においては、前記第1工程では、前記目地部が平らになるように、前記接着抑制層を形成するものである。
【0012】
請求項4においては、前記第2工程では、前記壁紙の長手方向及び幅方向のうち、前記壁紙が伸び易い一方向が前記目地部に対して垂直となるように、前記壁面に前記壁紙を貼り付けるものである。
【0013】
請求項5においては、壁面を形成する複数の面材と、前記壁面に貼り付けられる壁紙と、を具備し、前記壁紙は、前記壁面のうち、前記複数の面材の間に形成された目地部の少なくとも一部を含む第1範囲よりも、前記第1範囲とは異なる第2範囲の方が強い力で接着されるように、前記壁面に貼り付けられるものである。
【0014】
請求項6においては、前記第1範囲には、前記壁面に前記壁紙を貼り付けるための接着剤に対して、前記壁面よりも接着の相性が悪い材料によって構成される接着抑制層が形成されるものである。
【0015】
請求項7においては、前記接着抑制層は、前記複数の面材に片面テープが貼り付けられることによって形成されるものである。
【0016】
請求項8においては、前記片面テープは、前記目地部を跨がないように貼り付けられるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、壁紙の伸びしろを確保することができるため、壁紙に不具合が発生するのを抑制できる。
【0019】
請求項2においては、施工性を向上させることができる。
【0020】
請求項3においては、接着抑制層を利用して、美観の向上を図ることができる。
【0021】
請求項4においては、壁紙に不具合が発生するのを効果的に抑制できる。
【0022】
請求項5においては、壁紙の伸びしろを確保することができるため、壁紙に不具合が発生するのを抑制できる。
【0023】
請求項6においては、接着抑制層により、第2範囲を第1範囲よりも強い力で接着することができる。
【0024】
請求項7においては、接着抑制層を簡単に形成することができる。
【0025】
請求項8においては、片面テープを容易に貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る内装構造を示す正面図。
図2】目地部、壁紙及び片面テープを示す拡大斜視図。
図3】(a)試験に用いられた壁紙単体の試験体を示す図。(b)試験に用いられた壁紙及び石膏ボードを組み合わせた試験体を示す分解斜視図。
図4】壁紙単体の試験体に対して行った試験の結果を示すグラフ。
図5】壁紙及び石膏ボードを組み合わせた試験体に対して行った試験の結果を示すグラフ。
図6】壁紙を施工する手順を示すフローチャート。
図7】目地部に片面テープが貼り付けられる様子を示す斜視図。
図8】目地部に壁紙が貼り付けられる様子を示す正面図。
図9】片面テープの変形例を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0028】
以下では、本発明の一実施形態に係る内装構造10について説明する。
【0029】
図1に示す内装構造10は、建物の内装を構成するためのものである。内装構造10は、壁面10aに対して壁紙14が貼り付けられる種々の内装に対して適用可能である。例えば内装構造10は、建物の内壁、天井等に対して適用可能である。本実施形態では、建物の内壁を例に挙げ、内装構造10を説明する。内装構造10は、ランナー11、スタッド12、複数の石膏ボード13、壁紙14及び片面テープ15を具備する。
【0030】
ランナー11は、スタッド12を支持するためのものである。ランナー11は、長手状に形成される。本実施形態のランナー11は、長手方向を左右方向に向けて配置される。ランナー11は、上下一対設けられる。上部ランナー11は、上階の床スラブあるいは床スラブを支える鉄骨に固定される。また下部ランナー11は、当該階の床スラブに固定される。
【0031】
スタッド12は、内壁における鉛直部材である。スタッド12は、長手方向を上下方向に向けた長尺状に形成される。スタッド12は、左右方向(ランナー11の長手方向)に沿って等間隔に複数配置される。
【0032】
複数の石膏ボード13は、内壁において壁面10aを形成するための部材(面材)である。複数の石膏ボード13は、板面を前後方向に向けて配置される。複数の石膏ボード13は、スタッド12に対して前後両側にそれぞれ隣接するように配置される。複数の石膏ボード13は、スタッド12の前側及び後側のそれぞれにおいて、左右方向に並んで配置される。また左右の石膏ボード13は、左右の端面13aが互いに突き合わされた状態で(図2参照)、ランナー11及びスタッド12に固定される。なお複数の石膏ボード13は、ランナー11の左端部から右端部までに亘って配置されるものであるが、図1では説明の便宜上、一部の石膏ボード13の記載が省略されている。
【0033】
複数の石膏ボード13の前側面及び後側面のうち、スタッド12に対して遠い側の面は、後述する壁紙14が接着される貼り付け面13bとなっている。当該貼り付け面13bにより、内壁の壁面10aが形成される。なお、壁面10aを形成するための面材は、石膏ボード13に限定されるものではなく、その他の部材(ケイカル板等)であってもよい。
【0034】
図1及び図2に示すように、壁面10aには、目地部10bが形成される。目地部10bは、互いに隣接する石膏ボード13の継ぎ目の部分である。本実施形態では複数の石膏ボード13が左右に並んで配置されるため、目地部10bは、上下に延びるように形成される。
【0035】
壁紙14は、内壁の保護や装飾等に用いられるものである。壁紙14の裏面(貼り付け面13b側を向いた面)の全体には、接着剤が塗布される。壁紙14は、当該接着剤により壁面10aに貼り付けられ、壁面10aの全面を覆うように設けられる。なお本実施形態では接着剤として、でん粉糊が用いられるものとしているが、接着剤の種類はこれに限定されるものではない。接着剤は、壁紙14を壁面10aに貼り付け可能なその他の接着剤であってもよい。
【0036】
片面テープ15は、壁面10aの目地部10bに貼り付けられるものである。片面テープ15は、壁紙14を接着するための接着剤(本実施形態ではでん粉糊)に対して、接着の相性が悪い材料によって構成される。なお本実施形態では、接着の相性の良し悪しは、石膏ボード13の貼り付け面13b(壁面10a)を基準としたものとなっている。したがって片面テープ15は、貼り付け面13bよりも、でん粉糊に対して接着の相性が悪い材料によって構成される。例えば片面テープ15は、ポリエチレンによって構成される。
【0037】
本実施形態の片面テープ15は、10mm程度の幅を有する。片面テープ15は、目地部10bの全体に(上端部から下端部までに亘って)貼り付けられる。また片面テープ15の左右中途部(幅方向中途部)は、正面視で目地部10bと重複する。こうして本実施形態では、壁面10aの目地部10b周辺に、接着剤との接着の相性が悪い部分が形成される。以下では壁面10aのうち、前記接着の相性が悪い部分が占める範囲を「第1範囲R1」と称し、第1範囲R1以外の範囲を「第2範囲R2」と称する。
【0038】
ここで上述の如く、壁紙14の裏面の全域には、接着剤が塗布される。これに対して、壁面10aには、当該接着剤に対する接着の相性が異なる第1範囲R1及び第2範囲R2が存在する。その結果本実施形態では、第1範囲R1において壁紙14と壁面10aとの接着が抑制され、第2範囲R2の方が第1範囲R1よりも強い力で壁紙14と壁面10aとが接着される。当該構成により、目地部10bにおける壁紙14の不具合(ひび割れ、しわ、破れ)の発生を抑制することができる。
【0039】
具体的には、目地部10bは壁面10aの伸縮や地震等によって変位する。本実施形態では、目地部10bを含む第1範囲R1の接着力が第2範囲R2よりも弱いため、目地部10bが変位した際に、接着力が弱い第1範囲R1において壁紙14の少なくとも一部が壁面10aからはがれ、壁紙14が伸縮(弾性変形)し易い状態となる。
【0040】
これによって例えば、目地部10bが左右に広がる(左右の石膏ボード13が互いに離間する)ように変位する場合、左右に伸びるように壁紙14を弾性変形させることができる。当該構成によると、目地部10bが元に戻った際に、壁紙14が元の形状に戻ることとなる。このように、接着の相性が悪い第1範囲R1(接着が抑制される接着抑制層)が壁面10aに存在することで、壁紙14の伸びしろを確保して、目地部10bの変位を壁紙14の弾性変形で吸収することができる。これにより、目地部10bが変位したとしても、壁紙14にひび割れやしわが発生したり、破れたりするのを抑制できる。
【0041】
なお本実施形態では、接着剤がでん粉糊であるのに対して、第1範囲R1がポリエチレン(片面テープ15)であるため、第1範囲R1において壁紙14と壁面10aとが接着されないようになっている。これによって、第1範囲R1の全域で壁紙14が伸縮し易い状態にできるため、壁紙14に不具合が発生するのを効果的に抑制できる。
【0042】
以下では図3から図5を参照し、壁紙14の伸びを試験した結果について説明する。
【0043】
図3には、本試験で用いた試験体が示されている。本試験では試験体として、壁紙14単体の試験体と、壁紙14及び石膏ボード13を組み合わせた試験体とを準備した。より詳細には本試験では、図3(a)に示すように、壁紙14単体の試験体として、縦向き単体T1及び横向き単体T2を準備した。また図3(b)に示すように、本試験では、壁紙14及び石膏ボード13を組み合わせた試験体として、縦向き複合体T3及び横向き複合体T4を準備した。
【0044】
図3(a)に示す縦向き単体T1は、壁紙14の長手方向Nに沿った長手状の壁紙14である。なお長手方向Nは、芯材14aに壁紙14が巻き取られる方向、及びその反対方向である。本試験では、互いに異なる複数種類の壁紙14を用いて、複数の縦向き単体T1を準備した。本試験の結果を示す図4では、これら複数の縦向き単体T1が、「第1縦向き単体」、「第2縦向き単体」及び「第3縦向き単体」と記載されている。
【0045】
図3(a)に示す横向き単体T2は、壁紙14の幅方向Wに沿った長手状の壁紙14である。なお幅方向Wは、壁紙14の長手方向N及び厚み方向に対して垂直な方向である。横向き単体T2の寸法は、縦向き単体T1と同じ寸法となっている。本試験では、縦向き単体T1と同じ種類の複数の横向き単体T2を準備した。図4では、これら複数の横向き単体T2が、「第1横向き単体」、「第2横向き単体」及び「第3横向き単体」と記載されている。
【0046】
図3(b)に示す縦向き複合体T3は、縦向き単体T1を石膏ボード13に貼り付けたものである。石膏ボード13は、2つに分割されており、当該分割箇所が互いに突き合わされている。縦向き単体T1は、裏面の全域に塗布されたでん粉糊により、石膏ボード13に貼り付けられている。本試験では、上述した複数種類の縦向き単体T1を石膏ボード13にそれぞれ貼り付けて、複数の縦向き複合体T3を準備した。図5では、これら複数の縦向き複合体T3が、「第1縦向き複合体」、「第2縦向き複合体」及び「第3縦向き複合体」と記載されている。
【0047】
図3(b)に示す横向き複合体T4は、縦向き複合体T3と同様に、横向き単体T2を石膏ボード13に貼り付けたものである。本試験では、上述した複数種類の横向き単体T2を石膏ボード13にそれぞれ貼り付けて、複数の横向き複合体T4を準備した。図5では、これら複数の横向き複合体T4が、「第1横向き複合体」、「第2横向き複合体」及び「第3横向き複合体」と記載されている。
【0048】
本試験では、上述した縦向き単体T1及び横向き単体T2等を引っ張って、どの程度伸びるのかを試験した。その結果が図4及び図5に示される。より詳細には図4及び図5において本試験の結果は、縦軸に引っ張り荷重、横軸に試験体(縦向き単体T1等)の伸びをとったグラフで示される。以下、縦向き単体T1、横向き単体T2、縦向き複合体T3及び横向き複合体T4の試験結果について説明する。
【0049】
図4に示すように、縦向き単体T1の試験では、引っ張り荷重をかけてから、縦向き単体T1がXmm程度伸びるまでは、引っ張り荷重の増加に伴って縦向き単体T1の伸びが増加している。
【0050】
横向き単体T2の試験では、引っ張り荷重をかけてから、横向き単体T2がXmmの2倍以上伸びるまで、引っ張り荷重の増加に伴って横向き単体T2の伸びが増加している。このことから、横向き単体T2は、縦向き単体T1よりもさらに伸張可能(伸びるように弾性変形可能)であることがわかる。また、この縦向き単体T1と横向き単体T2との関係を考慮すると、本試験で準備した壁紙14は、長手方向Nよりも幅方向Wに伸び易いことがわかる。
【0051】
図5に示すように、縦向き複合体T3及び横向き複合体T4の試験では、引っ張り荷重をかけてから、縦向き複合体T3等がXmmの3分の1程度伸びるまでしか、引っ張り荷重の増加に伴って縦向き複合体T3等の伸びが増加していない。このことから、目地部10b周辺(第1範囲R1)が他の部分と同じように石膏ボード13に貼り付けられてしまうと、壁紙14と石膏ボード13とが一体となってしまい、壁紙14単体の場合よりも伸びが制限されることがわかる。
【0052】
上述した本試験の結果より、図1に示す第1範囲R1において壁紙14の接着が抑制されることで、壁紙14の伸びしろを確保して、ひび割れ等の不具合の発生を抑制できることもわかる。
【0053】
以下では図6から図8を参照し、本実施形態の壁紙14を施工する手順(施工方法)について説明する。図6に示すように、本施工方法では、主としてテープ貼り付け工程S10及び壁紙貼り付け工程S20が行われる。
【0054】
テープ貼り付け工程S10は、片面テープ15を貼り付ける工程である。図7に示すように、テープ貼り付け工程S10において作業者は、壁面10aの目地部10bに片面テープ15を貼り付ける。本実施形態では、目地部10bを跨ぐように片面テープ15が貼り付けられる。より詳細には、片面テープ15は、左右中途部(幅方向中途部)が目地部10bと重なるように、壁面10aに貼り付けられる。こうして片面テープ15により目地部10bの隙間が埋められる。
【0055】
これにより目地部10bが平らになって壁紙14の上から目地部10bが目立ち難くなり、美観の向上を図ることができる。また目地部10bをパテで埋める作業を省略し、施工性を向上させることもできる。図6に示すように、本施工方法では、テープ貼り付け工程S10の後で、壁紙貼り付け工程S20が行われる。
【0056】
壁紙貼り付け工程S20は、図8に示す壁面10aに壁紙14を貼り付ける工程である。壁紙貼り付け工程S20において作業者は、芯材14a(図3(a)参照)に巻回された壁紙14を繰り出す。そして作業者は、当該壁紙14の裏面の全域に接着剤を塗布し、当該接着剤によって壁紙14を壁面10aに貼り付ける。なお壁紙貼り付け工程S20では、糊付きの壁紙14を用いることも可能である。これによって接着剤を塗布する作業を省略することができる。
【0057】
ここで、上述した引っ張り試験の結果(図4)にあるように、本試験で準備した壁紙14は、長手方向Nよりも幅方向Wに伸び易い。そこで本試験で準備した壁紙14が壁紙貼り付け工程S20で用いられる場合には、目地部10bに対して壁紙14の幅方向W(長手方向N及び幅方向Wのうち、壁紙14が伸び易い方向)が垂直となるように、壁面10aに壁紙14が貼り付けられる。これによって、壁紙14を左右方向(石膏ボード13が並ぶ方向)に伸び易い状態にすることができるため、目地部10bが左右に広がるように変位した場合に、壁紙14に不具合が発生するのを効果的に抑制できる。
【0058】
なお本施工方法は、内壁(内装)の補修に用いることも可能である。例えば、補修前の壁紙の上に片面テープ15及び壁紙14を貼り付けて、内装を補修することも可能である。これによって内壁で不具合が再発するのを抑制することができる。なお上述した補修の手順は一例であり、適宜変更可能である。例えば、補修前の壁紙をはがしてから片面テープ15及び壁紙14を貼り付けることで、内壁を補修することも可能である。
【0059】
ここで、本実施形態では第1範囲R1で壁紙14が壁面10aに貼り付き難いことに起因して、壁紙14の見た目に影響が生じることが懸念される。例えば、第1範囲R1の周辺(壁面10aに貼り付かない部分)だけが浮いて見えてしまうことが懸念される。そこで内装構造10は、建物の中で、目立ち難い場所(人目に付かない壁や天井等)に適用することも可能である。
【0060】
以上の如く、本実施形態に係る壁紙14の施工方法は、複数の石膏ボード13(面材)の間に目地部10bが形成された壁面10aに壁紙14を貼り付ける壁紙14の施工方法であって、前記壁面10aのうち、前記目地部10bの少なくとも一部を含む第1範囲R1よりも、前記第1範囲R1とは異なる第2範囲R2の方が強い力で接着されるように、前記壁面10aに前記壁紙14を貼り付ける貼り付け工程S10・S20を具備するものである。
【0061】
このように構成することにより、壁紙14の伸びしろを確保することができるため、目地部10bが変位したとしても、壁紙14の不具合の発生を抑制することができる。
【0062】
また、前記貼り付け工程S10・S20は、前記壁面10aに前記壁紙14を貼り付けるための接着剤に対して、前記壁面10aよりも接着の相性が悪い材料によって構成される接着抑制層(片面テープ15)を前記第1範囲R1に形成するテープ貼り付け工程S10(第1工程)と、前記接着抑制層を形成した後で、前記接着剤により前記壁面10aに前記壁紙14を貼り付ける壁紙貼り付け工程S20(第2工程)と、を含むのである。
【0063】
このように構成することにより、壁紙14の裏面に対する接着剤の塗り方を工夫する(例えば、第1範囲R1を除いて接着剤を塗布する)ことなく、第1範囲R1と第2範囲R2との間で接着力を異ならせることができる。これにより、壁紙貼り付け工程S20において、裏面の全域に接着剤が塗布された壁紙14を用いることができるため、煩雑な作業が生じるのを抑制し、施工性を向上することができる。
【0064】
また、前記テープ貼り付け工程S10では、前記目地部10bが平らになるように、前記接着抑制層(片面テープ15)を形成するものである。
【0065】
このように構成することにより、接着抑制層(片面テープ15)を利用して、美観の向上を図ることができる。
【0066】
また、前記壁紙貼り付け工程S20では、前記壁紙14の長手方向N及び幅方向Wのうち、前記壁紙14が伸び易い一方向(図4に示す本試験結果を考慮した場合、幅方向W)が前記目地部10bに対して垂直となるように、前記壁面10aに前記壁紙14を貼り付けるものである(図8参照)。
【0067】
このように構成することにより、目地部10bが広がるように変位した場合に壁紙14に不具合が発生するのを効果的に抑制できる。
【0068】
また、以上の如く、本実施形態に係る内装構造10は、壁面10aを形成する複数の石膏ボード13(面材)と、前記壁面10aに貼り付けられる壁紙14と、を具備し、前記壁紙14は、前記壁面10aのうち、前記複数の石膏ボード13の間に形成された目地部10bの少なくとも一部を含む第1範囲R1よりも、前記第1範囲R1とは異なる第2範囲R2の方が強い力で接着されるように、前記壁面10aに貼り付けられるものである。
【0069】
このように構成することにより、壁紙14の伸びしろを確保することができるため、目地部10bが変位したとしても、壁紙14の不具合の発生を抑制することができる。
【0070】
また、前記第1範囲R1には、前記壁面10aに前記壁紙14を貼り付けるための接着剤に対して、前記壁面10aよりも接着の相性が悪い材料によって構成される接着抑制層(片面テープ15)が形成されるものである。
【0071】
このように構成することにより、接着抑制層(片面テープ15)により、第2範囲R2を第1範囲R1よりも強い力で接着することができる。
【0072】
また、前記接着抑制層は、前記複数の面材に片面テープ15が貼り付けられることによって形成されるものである(図7参照)。
【0073】
このように構成することにより、接着抑制層を簡単に形成することができる。
【0074】
なお、本実施形態に係る石膏ボード13は、本発明に係る面材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る片面テープ15は、本発明に係る接着抑制層の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るテープ貼り付け工程S10は、本発明に係る第1工程の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る壁紙貼り付け工程S20は、本発明に係る第2工程の実施の一形態である。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、本実施形態では、内壁に壁紙14が施工されるものとしたが、壁紙14の施工対象は、特に限定されるものではなく、内壁以外の内装に施工されてもよい。また内装構造10は、建物のうち、目地部10bが比較的動き易い(変位し易い)場所に適用されるものでもよい。例えば内装構造10は、建物の1階部分の内壁よりも、目地部10bが動き易い場所に適用されるものでもよい。具体的には内装構造10は、天井に適用されるものでもよい。こうして建物の内装のうち、内装構造10を適用する必要性が比較的高い場所(壁紙14に不具合が生じ易い場所)に部分的に内装構造10を適用することで、費用対効果を向上させることができる。
【0077】
また本実施形態では、目地部10bを跨ぐように片面テープ15が貼り付けられるものとしたが(図7参照)、片面テープ15の貼り付け方は特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば図9に示すように、石膏ボード13の端面13aと貼り付け面13bとの角部に片面テープ15を貼り付けることも可能である。
【0078】
こうして目地部10bを跨がないように片面テープ15を貼り付ける場合、石膏ボード13を下地(ランナー11等)に固定する前にテープ貼り付け工程S10を行うことができる。これにより石膏ボード13を所望の姿勢(例えば作業者が作業し易い姿勢)にした状態で、片面テープ15を容易に貼り付けることができる。
【0079】
なお、目地部10bを跨がないように片面テープ15を貼り付ける方法は、図9に示すものに限定されるものではなく、種々の方法を採用可能である。例えば石膏ボード13の角部ではなく、貼り付け面13bに片面テープ15を貼り付けてもよい。
【0080】
また本実施形態では、目地部10bの全体に片面テープ15が貼り付けられるものとしたが、これは一例であり、片面テープ15は、目地部10bの少なくとも一部に貼り付けられていればよい。したがって片面テープ15は、例えば目地部10bの下端部から上下中途部までに亘って貼り付けられる(上端部に貼り付けられない)ものであってもよい。これによって片面テープ15を貼り付ける際の作業負担を低減することができる。
【0081】
また片面テープ15の幅は10mmであるものとしたが、これは一例であり、適宜変更可能である。
【0082】
また本実施形態では、片面テープ15により壁紙14の接着を抑制するものとしたが、接着を抑制するための方法は、特に限定されるものではない。例えば片面テープ15とは異なる部材を壁面10aに設けることで、第1範囲R1における壁紙14の接着を抑制することも可能である。また接着剤の使い方を工夫することで、第1範囲R1における壁紙14の接着を抑制することも可能である。例えば、第1範囲R1に接着剤を塗布しないことで、第1範囲R1における壁紙14の接着を抑制することが可能である。また例えば、第1範囲R1と第2範囲R2とで接着力の異なる接着剤を使用することでも、第1範囲R1における壁紙14の接着を抑制することも可能である。
【0083】
こうして第1範囲R1で壁紙14が壁面10aに貼り付けられることにより、目地部10bが変位するまでは、壁紙14と目地部10bとが一体化され、壁紙14の見た目に影響が生じるのを抑制することができる。また目地部10bが変位した場合、第1範囲R1において壁紙14の少なくとも一部が第1範囲R1からはがれ、伸びしろを確保することができる。
【0084】
また本実施形態の壁紙14は、目地部10bに対して幅方向Wが垂直となるように壁面10aに貼り付けられるものとしたが(図8参照)、目地部10bと幅方向Wとの関係は特に限定されるものではない。例えば壁紙14は、目地部10bに対して幅方向Wが平行となるように貼り付けられるものでもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 内装構造
10a 壁面
10b 目地部
13 石膏ボード
14 壁紙
15 片面テープ
R1 第1範囲
R2 第2範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9