(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169129
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ガラスフィラメント群分割用治具、及びガラス繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/03 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
C03B37/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086346
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】苗村 健
(72)【発明者】
【氏名】寺平 怜央
(72)【発明者】
【氏名】上田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌内 優仁
(57)【要約】
【課題】複数のガラスストランドの製造を容易に開始することのできるガラスフィラメント群分割用治具、及びガラス繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラスフィラメント群分割用治具16は、分割工程及び支持工程を備える準備工程に用いられる。分割工程では、ブッシングから引き出された第1ガラスフィラメント群GF1を分割することで複数の第2ガラスフィラメント群を得る。支持工程では、複数の第2ガラスフィラメント群の各々を、ギャザリングシューに支持させる。ガラスフィラメント群分割用治具16は、第1ガラスフィラメント群GF1が挿入される挿入凹部18と、挿入凹部18に挿入される第1ガラスフィラメント群GF1を複数の第2ガラスフィラメント群に分割する分割壁19とを備える。ガラスフィラメント群分割用治具16は、複数の第2ガラスフィラメント群の各々を保持する複数の保持部20を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラスストランドの製造を準備する準備工程に用いられるガラスフィラメント群分割用治具であって、
前記準備工程は、ブッシングから引き出された第1ガラスフィラメント群を分割することで複数の第2ガラスフィラメント群を得る分割工程と、
前記複数の第2ガラスフィラメント群の各々を、並設された複数の凹部を有するギャザリングシューに支持させる支持工程とを備え、
前記第1ガラスフィラメント群が挿入される挿入凹部を有する基部と、
前記挿入凹部内に設けられ、前記挿入凹部に挿入される前記第1ガラスフィラメント群を複数の第2ガラスフィラメント群に分割する分割壁と、
前記分割壁の両側に設けられ、前記複数の第2ガラスフィラメント群の各々を保持する複数の保持部と、を備える、ガラスフィラメント群分割用治具。
【請求項2】
前記分割壁は、先端に向かうにつれて幅寸法が小さくなる形状の先端部を有する、請求項1に記載のガラスフィラメント群分割用治具。
【請求項3】
前記分割壁の周縁部は、面取りされている、請求項1に記載のガラスフィラメント群分割用治具。
【請求項4】
前記基部に接続される操作部をさらに有し、
前記操作部は、前記分割壁の突出方向に沿った方向に延びる形状を有する、請求項1に記載のガラスフィラメント群分割用治具。
【請求項5】
複数のガラスストランドの製造を準備する準備工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、
前記準備工程は、ブッシングから引き出された第1ガラスフィラメント群を分割することで複数の第2ガラスフィラメント群を得る分割工程と、
前記複数の第2ガラスフィラメント群の各々を、並設された複数の凹部を有するギャザリングシューに支持させる支持工程と、を備え、
前記分割工程及び支持工程では、ガラスフィラメント群分割用治具を用いる、ガラス繊維の製造方法。
【請求項6】
前記ガラスフィラメント群分割用治具は、
前記第1ガラスフィラメント群が挿入される挿入凹部を有する基部と、
前記挿入凹部内に設けられ、前記挿入凹部に挿入される前記第1ガラスフィラメント群を複数の第2ガラスフィラメント群に分割する分割壁と、
前記分割壁の両側に設けられ、前記複数の第2ガラスフィラメント群の各々を保持する複数の保持部と、を備える、請求項5に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項7】
前記ガラスフィラメント群分割用治具の前記複数の保持部の間隔は、前記ギャザリングシューの前記複数の凹部の間隔と同一である、請求項6に記載のガラス繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィラメント群分割用治具、及びガラス繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、多数のガラスフィラメントが集束されたガラスストランドが知られている。ガラスストランドは、ブッシングから引き出されたガラスフィラメント群に、アプリケータを用いて集束剤を塗布した後、ギャザリングシューを通過させることで得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにブッシングから引き出されたガラスフィラメント群を複数に分割することで、複数のガラスストランドを製造することができる。このように複数のガラスストランドを製造するには、分割工程と支持工程とを備える準備工程を行うことが必要となる。分割工程では、ブッシングから引き出された第1ガラスフィラメント群を分割することで複数の第2ガラスフィラメント群を得る。支持工程では、複数のガラスフィラメント群の各々を、ギャザリングシューの複数の凹部に支持させる。このような準備工程が煩雑であることで、複数のガラスストランドの製造の開始に手間を要している。
【0005】
本発明の目的は、複数のガラスストランドの製造を容易に開始することのできるガラスフィラメント群分割用治具、及びガラス繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラスフィラメント群分割用治具、及びガラス繊維の製造方法の各態様について説明する。
態様1のガラスフィラメント群分割用治具は、複数のガラスストランドの製造を準備する準備工程に用いられるガラスフィラメント群分割用治具であって、前記準備工程は、ブッシングから引き出された第1ガラスフィラメント群を分割することで複数の第2ガラスフィラメント群を得る分割工程と、前記複数の第2ガラスフィラメント群の各々を、並設された複数の凹部を有するギャザリングシューに支持させる支持工程とを備え、前記第1ガラスフィラメント群が挿入される挿入凹部を有する基部と、前記挿入凹部内に設けられ、前記挿入凹部に挿入される前記第1ガラスフィラメント群を複数の第2ガラスフィラメント群に分割する分割壁と、前記分割壁の両側に設けられ、前記複数の第2ガラスフィラメント群の各々を保持する複数の保持部と、を備える。
【0007】
この構成によれば、挿入凹部内の分割壁によって、第1ガラスフィラメント群を複数の第2ガラスフィラメント群に分割することができる。また、分割壁の両側に設けられた保持部に複数の第2ガラスフィラメント群の各々を保持させることができる。保持部に保持された複数の第2ガラスフィラメント群を、ギャザリングシューの複数の凹部に支持させることで、複数の凹部の各々で集束された複数のガラスストランドの製造を開始することができる。
【0008】
態様2のガラスフィラメント群分割用治具では、態様1において、前記分割壁は、先端に向かうにつれて幅寸法が小さくなる形状の先端部を有してもよい。この構成によれば、第1ガラスフィラメント群が挿入凹部に挿入される際の抵抗を抑えることで、第1ガラスフィラメント群のガラスフィラメントにかかる負荷を低減することが可能となる。
【0009】
態様3のガラスフィラメント群分割用治具では、態様1又は態様2において、前記分割壁の周縁部は、面取りされていてもよい。この構成によれば、ガラスフィラメントと分割壁との摺動抵抗を抑えることで、ガラスフィラメントにかかる負荷を低減することが可能となる。
【0010】
態様4のガラスフィラメント群分割用治具は、態様1から態様3のいずれか一つにおいて、前記基部に接続される操作部をさらに有し、前記操作部は、前記分割壁の突出方向に沿った方向に延びる形状を有してもよい。この構成によれば、操作部を分割壁の突出方向に沿った方向に操作することで、分割壁の先端部を第1ガラスフィラメント群に容易に押し当てることができる。
【0011】
態様5のガラス繊維の製造方法は、複数のガラスストランドの製造を準備する準備工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、前記準備工程は、ブッシングから引き出された第1ガラスフィラメント群を分割することで複数の第2ガラスフィラメント群を得る分割工程と、前記複数の第2ガラスフィラメント群の各々を、並設された複数の凹部を有するギャザリングシューに支持させる支持工程と、を備え、前記分割工程及び支持工程では、ガラスフィラメント群分割用治具を用いる。この方法によれば、複数のガラスストランドの製造を準備する準備工程を容易に行うことができる。
【0012】
態様6のガラス繊維の製造方法では、態様5において、前記ガラスフィラメント群分割用治具は、前記第1ガラスフィラメント群が挿入される挿入凹部を有する基部と、前記挿入凹部内に設けられ、前記挿入凹部に挿入される前記第1ガラスフィラメント群を複数の第2ガラスフィラメント群に分割する分割壁と、前記分割壁の両側に設けられ、前記複数の第2ガラスフィラメント群の各々を保持する複数の保持部と、を備えてもよい。
【0013】
態様7のガラス繊維の製造方法では、態様6において、前記ガラスフィラメント群分割用治具の前記複数の保持部の間隔は、前記ギャザリングシューの前記複数の凹部の間隔と同一であってもよい。この方法によれば、支持工程において複数の第2ガラスフィラメント群をガラスフィラメント群分割用治具の複数の保持部からギャザリングシューの複数の凹部に容易に移動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、複数のガラスストランドの製造を容易に開始することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態におけるガラス繊維の製造装置を示す概略図である。
【
図2】
図2は、ガラスフィラメント群分割用治具を示す上面図である。
【
図3】
図3は、ガラスフィラメント群分割用治具を用いた分割工程を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、ガラスフィラメント群分割用治具を用いた分割工程を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、ガラスフィラメント群分割用治具を拡大して示す上面図である。
【
図7】
図7は、ガラスフィラメント群分割用治具を用いた支持工程を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、ガラスフィラメント群分割用治具を用いた支持工程を説明する説明図である。
【
図9】
図9は、ガラスフィラメント群分割用治具を用いた支持工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ガラスフィラメント群分割用治具、及びガラス繊維の製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。図面中のXYZ軸におけるX軸は、水平方向を表し、Y軸は、X軸と直交する水平方向を表し、Z軸は、XY平面に対して直交する鉛直方向(上方)を表している。まず、ガラス繊維の製造装置の概要について説明する。
【0017】
<ガラス繊維の製造装置>
図1に示すように、ガラス繊維の製造装置は、ブッシング11と、アプリケータ12と、ギャザリングシュー13と、トラバース14と、コレット15とを備えている。ガラス繊維の製造装置は、複数のガラスストランドGSが巻き取られてなるケーキCを製造する。
【0018】
ブッシング11は、溶融ガラスMGを繊維状に成形する。ブッシング11は、溶融ガラスMGから多数のガラスフィラメントGFを製造する。ブッシング11は、溶融ガラスMGが供給されるブッシング本体11aと、ブッシング本体11aの底部に設けられたベースプレート11bとを備えている。なお、図示を省略するが、ブッシング本体11aは、溶融ガラスMGが供給される供給口、ベースプレート11b上に異物が堆積するのを抑制するスクリーン、抵抗加熱用のターミナル等を有している。
【0019】
ブッシング11は、ガラスフィラメントGFが引き出されるノズル群を有している。ノズル群は、ベースプレート11bに設けられている。ブッシング11のノズル数は、800~10000本であることが好ましく、2000~8000本であることがより好ましい。
【0020】
ガラスフィラメントGFのガラスとしては、例えば、Eガラス(アルカリ含有量2%以下のガラス)、Dガラス(低誘電率ガラス)、ARガラス(耐アルカリ性ガラス)、Cガラス(耐酸性のガラス)、Mガラス(高弾性率のガラス)、Sガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Tガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Hガラス(高誘電率のガラス)、NEガラス(低誘電率のガラス)が挙げられる。ガラスの密度は、例えば、2.0~3.0g/cm3である。
【0021】
アプリケータ12は、ブッシング11から引き出された多数のガラスフィラメントGFに液体状の集束剤を塗布する。ギャザリングシュー13は、集束剤が塗布された多数のガラスフィラメントGFを集束させる。ギャザリングシュー13は、並設された複数の凹部13aを有している。ギャザリングシュー13の複数の凹部13aは、X軸に沿って並設されている。本実施形態のギャザリングシュー13は、4つの凹部13aを有している。ギャザリングシュー13の凹部13aは、ギャザリングシュー13の本体部の全周にわたって設けられているが、ギャザリングシュー13の外周の一部に設けられていてもよい。
【0022】
上述したブッシング11から引き出された多数のガラスフィラメントGFは、4つのガラスフィラメント群に分割された状態でギャザリングシュー13の4つの凹部13aに供給される。ギャザリングシュー13は、4つのガラスフィラメント群をそれぞれ集束させる。これにより、4本のガラスストランドGSが得られる。
【0023】
ガラスストランドGSを構成するモノフィラメントの本数は、例えば、30~400本である。ガラスストランドGSの番手は、例えば、10~500texである。
ガラスストランドGSは、集束剤から形成された被膜を有している。被膜の材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
トラバース14は、複数のガラスストランドGSを往復移動させる。トラバース14を通過した複数のガラスストランドGSがコレット15に装着されたボビンBに巻き取られることで、ケーキCが得られる。このように複数のガラスストランドGSを巻き取ったケーキCは、分繊ケーキと呼ばれる。
【0025】
ガラスストランドGSの使用形態としては、例えば、チョップドストランド、ミルドファイバ、ロービング、ヤーン、マット、クロス、テープ、組布等が挙げられる。ガラスストランドGSの用途としては、例えば、車両用途、電子材料用途、建材用途、土木用途、航空機関連用途、造船用途、物流用途、産業機械用途、及び日用品用途が挙げられる。
【0026】
<ガラス繊維の製造方法>
次に、ガラス繊維の製造方法について説明する。
ガラス繊維の製造方法は、複数のガラスストランドGSの製造を準備する準備工程を備えている。準備工程は、分割工程と支持工程とを備えている。
【0027】
図2~
図9に示すように、分割工程及び支持工程では、ガラスフィラメント群分割用治具16を用いる。
図2~
図6に示すように、分割工程は、ブッシング11から引き出された第1ガラスフィラメント群GF1を、ガラスフィラメント群分割用治具16を用いて分割することで複数の第2ガラスフィラメント群GF2を得る。分割工程は、ブッシング11とギャザリングシュー13との間の第1ガラスフィラメント群GF1に対して行うことができる。ガラスフィラメント群分割用治具16には、複数の第2ガラスフィラメント群GF2を保持させることができる。図面では、第1ガラスフィラメント群GF1の断面、及び第2ガラスフィラメント群GF2の断面を梨地模様で示している。
【0028】
図7~
図9に示すように、支持工程は、分割工程により分割された複数の第2ガラスフィラメント群GF2の各々を、ガラスフィラメント群分割用治具16を用いてギャザリングシュー13の複数の凹部13aに支持させる。これにより、複数のガラスストランドGSの製造を準備する準備工程が完了することで、複数のガラスストランドGSの製造を開始することができる。
【0029】
<ガラスフィラメント群分割用治具>
次に、ガラスフィラメント群分割用治具16の詳細について説明する。
図2に示すように、ガラスフィラメント群分割用治具16の基部17は、第1ガラスフィラメント群GF1が挿入される挿入凹部18を有している。詳述すると、基部17は、底壁部17aと、底壁部17aに設けられる一対の側壁部17bとを有している。第1ガラスフィラメント群GF1は、一対の側壁部17bの間に挿入される。
【0030】
第1ガラスフィラメント群GF1は、第1ガラスフィラメント群GF1の長さ方向(X軸に沿った方向)において、挿入凹部18の幅寸法と同等の幅寸法となる部分を有している。上記分割工程では、ガラスフィラメント群分割用治具16を、
図3に白抜き矢印で示すように、第1ガラスフィラメント群GF1に向けて移動させることで、第1ガラスフィラメント群GF1の長さ方向の一部を挿入凹部18に挿入する。
【0031】
図2~
図4に示すように、ガラスフィラメント群分割用治具16は、挿入凹部18内に設けられる分割壁19を備えている。分割壁19は、挿入凹部18に挿入される第1ガラスフィラメント群GF1を、複数の第2ガラスフィラメント群GF2に分割する。本実施形態のガラスフィラメント群分割用治具16は、3つの分割壁19を備えている。複数の分割壁19は、X軸方向に沿って並設されている。複数の分割壁19は、X軸に沿った直線上で等間隔となるように設けられている。複数の分割壁19は、基部17からY軸方向に延びるように設けられている。
【0032】
図5に示すように、分割壁19は、先端に向かうにつれて幅寸法が小さくなる形状の先端部19aを有している。
図5及び
図6に示すように、分割壁19の周縁部は、面取りされている。分割壁19の周縁部の面取りは、R面取りであってもよいし、C面取りであってもよい。詳述すると、
図6に示すように、分割壁19は、第1ガラスフィラメント群GF1の上流側に位置する第1縁部E1と、第1ガラスフィラメント群GF1の下流側に位置する第2縁部E2とを有している。分割壁19の第1縁部E1及び第2縁部E2は、曲面又は傾斜面により構成されている。なお、図面では、第1ガラスフィラメント群GF1の流れ方向は、Z軸に沿った方向であるが、Z軸に対して傾斜する方向であってもよい。
【0033】
図2及び
図3に示すように、ガラスフィラメント群分割用治具16は、分割壁19の両側に設けられる複数の保持部20を備えている。
図4及び
図5に示すように、複数の保持部20は、複数の第2ガラスフィラメント群GF2の各々を保持する。保持部20の数は、ギャザリングシュー13の凹部13aの数と同一であることが好ましい。本実施形態のガラスフィラメント群分割用治具16は、4つの保持部20を有している。
【0034】
複数の保持部20の間隔は、ギャザリングシュー13の複数の凹部13aの間隔と同一であることが好ましい。
図5に示すように、保持部20の内底部の形状は、第2ガラスフィラメント群GF2の流れ方向(Z軸に沿った方向)から見た平面視で円弧状であることが好ましい。なお、保持部20の内底部の形状は、第2ガラスフィラメント群GF2の流れ方向から見た平面視で屈曲部を有する形状であってもよい。
【0035】
図2に示すように、ガラスフィラメント群分割用治具16は、基部17に接続される操作部21をさらに有している。ガラスフィラメント群分割用治具16の操作部21は、分割壁19の突出方向に沿った方向に延びる形状を有する。本実施形態の操作部21は、分割壁19の突出方向に沿った方向であり、かつ突出方向とは反対方向に延びる形状を有している。上記分割工程では、操作部21を、
図3に白抜き矢印で示す方向に移動させることで、複数の分割壁19を第1ガラスフィラメント群GF1に容易に押し付けることができる。
【0036】
上記支持工程では、
図7に示すように、ガラスフィラメント群分割用治具16をギャザリングシュー13の上方に配置し、操作部21を
図7に白抜き矢印で示す方向に移動させる。これにより、
図8に示すように、ガラスフィラメント群分割用治具16に保持された第2ガラスフィラメント群GF2をギャザリングシュー13の凹部13a内に配置する。次に、操作部21を
図8に白抜き矢印で示す方向に移動させる。これにより、
図9に示すように、第2ガラスフィラメント群GF2からガラスフィラメント群分割用治具16を離間させる。
【0037】
操作部21は、作業者が把持する把持部として利用してもよいし、ロボットアームに装着する装着部として利用してもよい。ガラスフィラメント群分割用治具16の基部17及び分割壁19の材料は、例えば、第1ガラスフィラメント群GF1の温度に耐え得る耐熱性を有する材料から選択することができる。ガラスフィラメント群分割用治具16の基部17及び分割壁19の材料としては、例えば、フェノール樹脂等の樹脂材料、ステンレス鋼等の金属材料等が挙げられる。樹脂材料のモース硬度は、ガラスフィラメントGFのモース硬度よりも低い。このため、基部17及び分割壁19をフェノール樹脂等の樹脂材料から構成することで、ガラスフィラメントGFと、基部17及び分割壁19との摺接を要因としてガラスフィラメントGFが損傷することを抑えることができる。また、基部17及び分割壁19は、ガラスフィラメントGFのモース硬度との差が比較的小さいモース硬度の樹脂材料(例えば、フェノール樹脂等)から構成されることが好ましい。この場合、ガラスフィラメントGFと、基部17及び分割壁19との摺接を要因として基部17及び分割壁19が損傷することを抑えることができる。なお、操作部21の材料は、機械的強度や耐久性の観点からステンレス鋼等の金属材料であることが好ましい。
【0038】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ガラスフィラメント群分割用治具16は、分割工程及び支持工程を備える準備工程に用いられる。分割工程では、ブッシング11から引き出された第1ガラスフィラメント群GF1を分割することで複数の第2ガラスフィラメント群GF2を得る。支持工程では、複数の第2ガラスフィラメント群GF2の各々を、並設された複数の凹部13aを有するギャザリングシュー13に支持させる。ガラスフィラメント群分割用治具16の基部17は、第1ガラスフィラメント群GF1が挿入される挿入凹部18を有している。ガラスフィラメント群分割用治具16は、挿入凹部18内に設けられ、挿入凹部18に挿入される第1ガラスフィラメント群GF1を複数の第2ガラスフィラメント群GF2に分割する分割壁19を備えている。ガラスフィラメント群分割用治具16は、分割壁19の両側に設けられ、複数の第2ガラスフィラメント群GF2の各々を保持する複数の保持部20を備えている。
【0039】
この構成によれば、挿入凹部18内の分割壁19によって、第1ガラスフィラメント群GF1を複数の第2ガラスフィラメント群GF2に分割することができる。また、分割壁19の両側に設けられた保持部20に複数の第2ガラスフィラメント群GF2の各々を保持させることができる。保持部20に保持された複数の第2ガラスフィラメント群GF2を、ギャザリングシュー13の複数の凹部13aに支持させることで、複数の凹部13aの各々で集束された複数のガラスストランドGSの製造を開始することができる。従って、複数のガラスストランドGSの製造を容易に開始することができる。
【0040】
(2)ガラスフィラメント群分割用治具16において、分割壁19は、先端に向かうにつれて幅寸法が小さくなる形状の先端部19aを有している。この場合、第1ガラスフィラメント群GF1が挿入凹部18に挿入される際の抵抗を抑えることで、第1ガラスフィラメント群GF1のガラスフィラメントGFにかかる負荷を低減することが可能となる。従って、分割工程においてガラスフィラメントGFの損傷を抑えることが可能となる。
【0041】
(3)ガラスフィラメント群分割用治具16において、分割壁19の周縁部は、面取りされている。この場合、ガラスフィラメントGFと分割壁19との摺動抵抗を抑えることで、ガラスフィラメントGFにかかる負荷を低減することが可能となる。従って、分割工程及び支持工程においてガラスフィラメントGFの損傷を抑えることが可能となる。
【0042】
(4)ガラスフィラメント群分割用治具16は、基部17に接続される操作部21をさらに有している。操作部21は、分割壁19の突出方向に沿った方向に延びる形状を有している。この場合、操作部21を分割壁19の突出方向に沿った方向に操作することで、分割壁19の先端部19aを第1ガラスフィラメント群GF1に容易に押し当てることができる。従って、分割工程を安定して行うことが可能となる。
【0043】
(5)ガラスフィラメント群分割用治具16における複数の保持部20の内底部の形状は、第2ガラスフィラメント群GF2の流れ方向から見た平面視で円弧状であることが好ましい。この場合、ガラスフィラメントGFと保持部20との摺動抵抗を抑えることで、ガラスフィラメントGFにかかる負荷を低減することが可能となる。従って、保持部20で保持される第2ガラスフィラメント群GF2の損傷を抑えることが可能となる。
【0044】
(6)ガラス繊維の製造方法は、複数のガラスストランドGSの製造を準備する準備工程を備えている。ガラス繊維の製造方法の準備工程は、分割工程及び支持工程を備えている。分割工程及び支持工程では、ガラスフィラメント群分割用治具16を用いている。この方法によれば、複数のガラスストランドGSの製造を準備する準備工程を容易に行うことができる。従って、複数のガラスストランドGSの製造を容易に開始することができる。
【0045】
(7)ガラスフィラメント群分割用治具16における複数の保持部20の間隔は、ギャザリングシュー13の複数の凹部13aの間隔と同一であることが好ましい。この場合、支持工程において複数の第2ガラスフィラメント群GF2をガラスフィラメント群分割用治具16の複数の保持部20からギャザリングシュー13の複数の凹部13aに容易に移動させることができる。従って、上記準備工程を円滑に行うことが可能となる。
【0046】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
・上記ガラスフィラメント群分割用治具16において、分割壁19は、先端に向かうにつれて幅寸法が小さくなる形状の先端部19aを有しているが、これに限定されない。分割壁19の形状は、例えば、基端から先端まで一定の幅寸法を有する形状であってもよい。
【0048】
・上記ガラスフィラメント群分割用治具16において、分割壁19は、X軸に沿った方向において挿入凹部18内に配置されていればよい。例えば、分割壁19の先端が挿入凹部18の外方(図面のY軸方向)に突出するように、分割壁19の寸法を変更してもよい。
【0049】
・ガラスフィラメント群分割用治具16において、分割壁19の周縁部は、面取りされていなくてもよい。
・上記ガラスフィラメント群分割用治具16において、基部17及び分割壁19の形状は、Z軸に沿った方向を厚さ方向とする板状であるが、この形状に限定されない。基部17の底壁部17aの形状は、X軸に沿って延びる円柱状、角柱状等の形状であってもよい。また、基部17の側壁部17bの形状は、底壁部17aからY軸方向に突出する円柱状、円錐状、角柱状、角錘状等の形状であってもよい。分割壁19の形状は、基部17の底壁部17aからY軸方向に突出する円柱状、円錐状、角柱状、角錘状等の形状であってもよい。
【0050】
・上記ガラスフィラメント群分割用治具16の操作部21は、基部17の底壁部17aの端部(X軸に沿った方向における端部)から延びるように設けられているが、例えば、基部17の底壁部17aの中央部分から延びるように設けることもできる。
【0051】
・上記ガラスフィラメント群分割用治具16において、操作部21は、分割壁19の突出方向に沿った方向であり、かつ突出方向とは反対方向に延びる形状を有している。この操作部21は、分割壁19の突出方向に沿った方向であり、かつ突出方向と同方向に延びる形状を有する操作部21に変更することもできる。この場合であっても、上記(4)欄に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0052】
・上記ガラスフィラメント群分割用治具16の上記操作部21を省略することもできる。すなわち、ガラス繊維の製造方法では、操作部21を用いずにガラスフィラメント群分割用治具16を操作することもできる。
【0053】
・ギャザリングシュー13の凹部13aの数は、4つ以外の複数であってもよい。
・ガラスフィラメント群分割用治具16の分割壁19の数、保持部20の数は、第1ガラスフィラメント群GF1を分割する数に応じて変更することができる。保持部20の数は、挿入凹部18内の分割壁19の数を“n”としたとき、“n+1”となる。nは、例えば、2~20の範囲であり、好ましくは、3~16の範囲である。
【符号の説明】
【0054】
11…ブッシング
13…ギャザリングシュー
13a…凹部
16…ガラスフィラメント群分割用治具
17…基部
18…挿入凹部
19…分割壁
19a…先端部
20…保持部
21…操作部
GF…ガラスフィラメント
GF1…第1ガラスフィラメント群
GF2…第2ガラスフィラメント群
GS…ガラスストランド