(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169142
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】路面診断装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241128BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241128BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20241128BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20241128BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/09 F
E01C23/01
B60W40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086362
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】太田 洋介
【テーマコード(参考)】
2D053
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053AB03
2D053FA02
3D241BA50
3D241CE04
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
5H181AA01
5H181CC27
5H181MC16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】路面の粗さの指標を生成する路面診断装置を提供する。
【解決手段】路面の粗さの指標を生成する路面診断装置は、プローブカーの複数のタイヤの状態を特定するタイヤ状態特定部と、該タイヤ状態特定部が特定した第n時刻及び第n+1時刻におけるタイヤの状態を表すスコアを各タイヤに付与するスコア付与部と、各タイヤのスコアの時間的変動に基づき、路面の粗さに対応する指標を生成する指標生成部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の粗さの指標を生成する路面診断装置であって、
プローブカーの複数のタイヤの状態を特定するタイヤ状態特定部と、
該タイヤ状態特定部が特定した第n時刻及び第n+1時刻における前記タイヤの状態を表すスコアを各タイヤに付与するスコア付与部と、
前記各タイヤのスコアの時間的変動に基づき、路面の粗さに対応する指標を生成する指標生成部と、
を備える路面診断装置。
【請求項2】
前記指標生成部は第1集計部と第2集計部とを備え、前記第1集計部は前記第n時刻における前記各タイヤのスコアと前記第n+1時刻における各タイヤのスコアとの関係を、前記タイヤ毎に演算する第1演算部と、
該第1演算部が演算した前記タイヤ毎の演算結果を集計する第2演算部と、を備え、
前記第2集計部は、前記n+1をnとして、前記第1集計部に演算をk回繰り返させて、各回の前記第2演算部の演算結果を集計する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スコア付与部は前記タイヤの速度の順位を各タイヤのスコアとし、
前記第1演算部は、各タイヤにおける前記スコアの差分を演算し、
前記第2演算部は、該スコアの差分を全タイヤについて加算し、
前記第2集計部は、前記n+1をnとして、前記第1集計部の演算をk回繰り返させて、各回の前記第2演算部の加算結果を加算する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プローブカーの走行状態に対応するスコアパターンを標準スコアパターンとして保存する標準スコアパターン保存部と、
前記プローブカーの走行状態を特定する走行状態特定部と、
前記走行状態特定部が特定した走行状態に対応する前記標準スコアパターンを前記標準スコアパターン保存部から読み出し、読み出した前記標準スコアパターンと前記第1演算部の演算結果とを比較するスコアパターン比較部と、
該スコアパターン比較部の比較結果に基づき、前記第2演算部の演算結果に補正を及ぼす補正部と、を更に備える請求項2に記載の装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の路面診断装置が生成する指標を地図に反映させる路面情報表示装置。
【請求項6】
路面の粗さの指標を生成する路面診断装置を用いる路面診断方法であって、前記路面診断装置はタイヤ状態特定部と、スコア付与部と、指標生成部とを備え、
前記タイヤ状態特定部に、プローブカーの複数のタイヤの状態を特定させ、
前記スコア付与部に、前記タイヤ状態特定部が特定した第n時刻及び第n+1時刻における前記タイヤの状態を表すスコアを各タイヤに付与させ、
前記指標生成部に、前記各タイヤのスコアの時間的変動に基づき、路面の粗さに対応する指標を生成させる、路面診断方法。
【請求項7】
路面の粗さの指標を生成する路面診断装置に適用されるコンピュータ用のプログラムであって、前記路面診断装置はタイヤ状態特定部と、スコア付与部と、指標生成部とを備え、
前記タイヤ状態特定部に、プローブカーの複数のタイヤの状態を特定させ、
前記スコア付与部に、前記タイヤ状態特定部が特定した第n時刻及び第n+1時刻における前記タイヤの状態を表すスコアを各タイヤに付与させ、
前記指標生成部に、前記各タイヤのスコアの時間的変動に基づき、路面の粗さに対応する指標を生成させる、コンピュータ用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は路面診断装置及びその方法に関し、道路の舗装の点検に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
道路の舗装点検要領(国土交通省)によれば、道路の舗装の損傷の点検手法は道路管理者により適宜設定されるものであり、その中には機器を用いた点検手法も許されている。
路面診断方法の一例として、プローブカーを用いるものが特許文献1に提案されている。この方法では、タイヤ速度の時間的変化に基づき、路面の粗さ(凹凸)を推定している。
その他、特許文献2に記載の路面診断方法では左右タイヤの速度差が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020‐013537号公報
【特許文献2】特開2021‐189627号公報
【特許文献3】特開2013‐184650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の診断方法では、タイヤの速度の時間的変化(特許文献1)や左右タイヤの速度差(特許文献2)に関する情報を処理して、路面状態を推定し、もってその診断をしていた。
しかしながら、本発明者の検討によれば、タイヤの速度の時間的変化は、プローブカーの単なる加速や減速のときにも生じ得るし、また、左右タイヤの速度差もプローブカーが単に右左折するときにも生じ得る。
路面の診断に際し、プローブカーの走行状態に起因するタイヤの状態変化をキャンセルする方法は提案されていない。そのため、得られた診断結果にノイズが含まれ、正確な路面診断が実行できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その第1局面は次のように規定される。
路面の粗さの指標を生成する路面診断装置であって、
プローブカーの複数のタイヤの状態を特定するタイヤ状態特定部と、
該タイヤ状態特定部が特定した第n時刻及び第n+1時刻における前記タイヤの状態を表すスコアを各タイヤに付与するスコア付与部と、
前記各タイヤのスコアの時間的変動に基づき、路面の粗さに対応する指標を生成する指標生成部と、
を備える路面診断装置。
【0006】
このように規定される第1局面の路面診断装置によれば、スコア付与部によりプローブカーのタイヤの状態にスコアが付与され、各タイヤに付与されたスコアの時間的変動に基づき、路面の粗さが指標化される。
このようにして得られた指標は、従来の路面診断方法に比べて、路面の状況をより正確に反映する。
【0007】
これは、各タイヤの状態をスコア化して、その時間的変動に基づき指標が生成されるので、プローブカー自体の走行状態に起因するタイヤの状態がキャンセルされるためと考えられる。例えば、後輪駆動のプローブカーが右折するとき、平滑な路面においては前左タイヤ(前左)、前右タイヤ(前右)、後左タイヤ(後左)及び後右タイヤ(後右)の速度の順位をスコアとすると、前左:3、前右:4、後左:1、後右:2となる。プローブカーが右折を続ける限り、そのハンドルの切れ角や減加速にかかわらず、この順位(スコア)は絶対的な値として維持される。ここで、路面の粗さに変化があると、これがタイヤの速度に影響し、上記の順位(スコア)に変化が生じる。
この発明の第1局面の指標生成部が生成する指標では、このスコアの変化が顕現化され、その結果、プローブカーの走行状態に起因するタイヤの状態変化がキャンセル若しくは減衰され、路面の粗さに起因するタイヤの状態変化が強調される。
【0008】
上記で説明したように、タイヤの状態を表すスコアとしてタイヤの速度を用いることができる。ここで速度とは、タイヤの半径と角速度から得られる速度であってもよいし、単に角速度を用いてもよい。この速度を微分して得られる加速度も当該指標として用いられることは当業者であれば容易に想到できよう。
タイヤの状態のスコアとしては、路面状態を反映するものであれば特に限定されず、例えば、空気圧や路面からの反発力を用いることもできる。
タイヤ状態検出部は車両の前左、前右、後左、後右の4つの各タイヤについてそのタイヤの状態を検出することが好ましい。
【0009】
タイヤの状態を表すスコアはその時間的変動を表現できる値であれば特に限定されないが、各タイヤの速度の順位などタイヤ相互の絶対的な関係を数値化したものとすることが好ましい。ここに絶対とは、タイヤ相互の状態の差に影響されないことを指す。スコアの大きさは任意に設定可能であり、例えば平滑な道路をプローブカーが右折したときの既述の例において、速度の遅い順にスコアを付けたり(スコア:前左:2、前右:1、後左:4、後右:3)、順位を表す数値を加工したりすることができる(スコア:順位1=1×1、順位2=2×2、順位3=3×2、順位4=4×4)。
【0010】
この発明の第2局面は次の様に規定される。即ち、
第1局面に規定の路面診断装置において、前記指標生成部は第1集計部と第2集計部とを備え、前記第1集計部は前記第n時刻における前記各タイヤのスコアと前記第n+1時刻における各タイヤのスコアとの関係を、前記タイヤ毎に演算する第1演算部と、
該第1演算部が演算した前記タイヤ毎の演算結果を集計する第2演算部と、を備え、
前記第2集計部は、前記n+1をnとして、前記第1集計部に演算をk(kは4以上の整数)回繰り返させて、各回の前記第2演算部の演算結果を集計する。
このように規定される第2局面の路面診断装置によれば、第1演算部の演算に各タイヤのスコアの時間的変動が反映されている。このようにスコアの時間的変動が反映されたタイヤ毎の演算結果が、第2演算部により、集計される。第2集計部により、第2演算部による集計がk回繰り返され、各回で得られた集計結果が更に集計される。
プローブカーの走行状態は所定の期間継続するので、上記のように集計を繰り返すことで、プローブカーの走行状態に起因する各タイヤの指標に対する影響を減滅させられる。
【0011】
この発明の第3局面は次のように規定される。
第2局面に規定の路面診断装置において、前記スコア付与部は前記タイヤの速度の順位を各タイヤのスコアとし、
前記第1演算部は、各タイヤにおける前記スコアの差分を演算し、
前記第2演算部は、該スコアの差分を全タイヤについて加算し、
前記第2集計部は、前記n+1をnとして、前記第1集計部の演算をk(kは例えば4以上の整数)回繰り返させて、各回の前記第2演算部の加算結果を加算する。
【0012】
このようにして得られた加算結果が指標となり、スカラーとして表される。
ここに、時刻nと時刻n+1とのインターバルは10~100m秒とすることができ、kは4~20とすることができる。例えばインターバルを50m秒として、k=20とすると、プローブカーが1秒間に走行した路面の状況(粗さ)をスカラーとして表せる。
このとき、プローブカーの速度v(m/秒)を参照すれば、vmの路面の状況がスカラーとして表せる。
【0013】
スカラーとして表される指標を、目視などの他の手法で得られた実路面診断の結果と関係付けることができる。かかる関係付けに基づき、スカラーに閾値を設けることで、目視などの実路面診断が必要とされる路面を抽出することが可能となる。
【0014】
この発明の他の局面では、プローブカーの走行状態による各タイヤの状態変化をより積極的にキャンセルする。
そのため、ハンドルの切れ角、ブレーキやアクセルの開度などプローブカーの走行情報にもとづき、平滑路面での各タイヤのスコアのパターン(標準スコアパターン)を標準スコアパターン保存部に予め保存しておく。
ここに、走行情報とは、プローブカーから汎用的に得られるプローブ情報(位置情報、時間情報)の他、プローブカーの車両インナー情報も該当する。ここに、車両インナー情報とは、車両が備えるセンサ、コントロールユニットその他から出力される当該車両の各種状態に関する情報であって、当該車両に搭載されたネットワーク上でCAN(Controller Area Network)をはじめとした各種通信プロトコルにより伝送可能な情報をいう。この車両インナー情報には、走行速度情報、加速度情報、ブレーキ操作情報、ハンドルの切れ角情報及びその他の情報が含まれる。
【0015】
スコア付与部で与えられた各タイヤのスコアと標準スコアパターンとをスコア比較部で比較して、両者に差があったときは、スコア付与部がスコアを付与した時刻において路面に粗さがあるものと推定される。そこで、第2演算部の演算結果が増強されるように補正することができる。例えば、第1演算部の演算が各タイヤのスコアの差分を表し、第2演算部の演算が当該差分を加算するものであるとき、第2演算部の加算結果にパラメータm(1<m)を乗算したり、パラメータn(1<n)を加算したりすることができる。
【0016】
第1局面で規定される装置の発明を用いる方法の発明は次のように規定される。即ち、
路面の粗さの指標を生成する路面診断装置を用いる路面診断方法であって、前記路面診断装置はタイヤ状態特定部と、スコア付与部と、指標生成部とを備え、
前記タイヤ状態特定部に、プローブカーの複数のタイヤの状態を特定させ、
前記スコア付与部に、前記タイヤ状態特定部が特定した第n時刻及び第n+1時刻における前記タイヤの状態を表すスコアを各タイヤに付与させ、
前記指標生成部に、前記各タイヤのスコアの時間的変動に基づき、路面の粗さに対応する指標を生成させる、路面診断方法。
【0017】
この発明の第1局面で規定される装置に用いられるコンピュータを実行させるプログラムは次のように規定される。即ち、
路面の粗さの指標を生成する路面診断装置に適用されるコンピュータ用のプログラムであって、前記路面診断装置はタイヤ状態特定部と、スコア付与部と、指標生成部とを備え、
前記タイヤ状態特定部に、プローブカーの複数のタイヤの状態を特定させ、
前記スコア付与部に、前記タイヤ状態特定部が特定した第n時刻及び第n+1時刻における前記タイヤの状態を表すスコアを各タイヤに付与させ、
前記指標生成部に、前記各タイヤのスコアの時間的変動に基づき、路面の粗さに対応する指標を生成させる、コンピュータ用プログラム。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1はこの発明の実施形態の路面診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2はこの発明の実施形態の路面情報表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は路面診断装置の生成した指標を反映した地図と、現場写真との関係を示す。
【
図4】
図4はこの発明の他の実施形態の路面診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は路面診断装置に適用されるコンピュータの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照しながら、説明する。
図1はこの発明の実施形態の路面診断装置1を示す。この路面診断装置1は走行情報保存部10、タイヤ速度特定部20、スコア付与部30及び指標生成部40を備える。
走行情報保存部10にはプローブカーの走行情報が保存される。より具体的には、プローブカーの各タイヤの速度情報、プローブカー自体の加速度情報及びハンドルの切れ角情報等が保存される。
【0020】
タイヤ速度特定部20には、前左タイヤ速度特定部21、前右タイヤ速度特定部22、後左タイヤ速度特定部25及び後右タイヤ速度特定部26が備えられ、走行情報保存部10に保存されるプローブカーの走行情報に基づき、プローブカーの各タイヤの速度が特定される。
【0021】
各タイヤ速度特定部21、22、25、26が特定したプローブカーの各タイヤ(前左、前右、後左、後右)の速度の例を表1に示す。この速度は、例えば、タイヤの半径×角速度から計算される車両移動方向への速度を指す。
【表1】
表1においてプローブカーは個車IDで特定され、各タイヤの速度を得た時刻、当該時刻における座標及び加速度も併せて特定されている。
【0022】
スコア付与部30は、各タイヤの速度に順位を付し、順位をスコアとしている。
指標生成部40は、第1集計部50と第2集計部60とを備える。
第1集計部50は第1演算部51と第2演算部52とを備える。
第1演算部51は、各時刻nとそれに続く時刻n+1における各タイヤの順位差を演算する(表2参照)
【表2】
表1における時刻31:49:10をn、時刻31:09:20を時刻n+1、時刻31:39:20を時刻n+2として、各タイヤの順位差(絶対値)を表2の欄Aに示す。
【0023】
第2演算部52は、各タイヤの順位差を集計(加算)する(表2の欄B)。
第2演算部52は全ての時刻について、表2の欄Bに示す順位差小計を演算する。
【0024】
第2集計部60は、時刻nからn+k(k=10)までの表2の欄Bに示す順位差小計を集計(加算)して指標とし、これを繰り返した例を表3に示す。表3における10フレーム分順位差合計の欄の値が指標であり、スカラーとして表される。
【表3】
指標が大きいほど、各タイヤの速度の順位が入れ替わっていることを示し、もって、路面の粗さが大きいことを指す。
【0025】
この指標は数値(スカラー)で表せるので、閾値を任意に設定可能である。また、表3の座標より、この指標に該当する道路の領域が特定できる。
図2は、特定された道路の領域の指標を地図に反映する装置(路面情報表示装置70)の構成を示すブロック図である。
特定された道路の領域の座標と指標とを指標保存部71に保存し、これを地図データ保存部73に保存されている地図データへ、路面情報重畳部75を用いて重畳することにより、
図3に示すように地図上に指標を表示することができる。なお、
図3においては、予め設定された閾値に基づき、指標に濃淡(色付け)を設けている。
【0026】
図3の右側の地図に示される四角枠内の道路には濃い領域(指標大)と薄い領域(指標小)とが含まれ、その現地写真が左側に示される。四角枠の領域の道路の路面に粗さの変化があることがわかる。
これにより、道路の舗装点検をする際、道路管理者は、指標が大きい領域の道路にその注意を集中することができる。
【0027】
図4に他の実施形態の路面診断装置100を示す。なお、
図1と同じ動作の要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
表1のフレーム1~20(時刻n~n+20、表の上段から順にフレーム番号を付すものとする、以下同じ)において、プローブカーが右折していたとする。
平滑な路面において右折する後輪駆動のプローブカーの各タイヤの標準的なスコアのパターンは前左:3、前右:4、後左:1、後右:2である。
【0028】
フレーム1~10において、かかるパターンが3つ含まれるのに対し、フレーム11~20にはかかるパターンは含まれない。換言すれば、フレーム1~10で示される道路の領域においてはプローブカーが右折するときの標準的なスコアのパターンが出現しているので、当該領域は比較的平滑であるものと推定される。他方、フレーム11~20で示される道路の領域は粗面であると推定される。その結果は、指標「14」、「38」として現れている。
【0029】
図4の路面診断装置100では、プローブカーの走行状態(例えば右折状態)における各タイヤのスコアの標準パターンが標準スコアパターン保存部154に予め保存されている。走行状態特定部153は走行情報保存部10からプローブカーの走行状態を特定する。スコア比較部155は、走行状態特定部153が特定した走行状態に対応する標準スコアパターンを標準スコアパターン保存部154から読み出し、スコア付与部30が付与した、各時刻における各タイヤのスコアと比較する。
平滑な路面であればプローブカーの各タイヤのスコアは上記標準的なパターン(前左:3、前右:4、後左:1、後右:2)を示すべきところ、これとパターンが異なれば異なるほど、路面の粗さが大きいものと推定される。
【0030】
そこで、スコア比較部155は、標準スコアパターンとスコア付与部30が出力したスコアのパターンとを比較して、両者の差(各タイヤのスコアの差を加算した値)が所定の閾値を超えて大きくなったとき、補正部156に異常信号を送る。この異常信号を受けた補正部156は第1演算部157へ補正信号を送り、第1演算部157は各タイヤの順位差のスコアを補正する。例えば、順位差のスコアがゼロのものに所定の値(例えば 1)を加算する。これにより、路面の粗さがスコアにおいて強調され、もって、指標に反映される。
なお、スコアの補正の方法は特に限定されず、第2演算部52による順位差小計の値に所定のパラメータを付加したり、また乗算したりしてその値を増減させることもできる。
【0031】
図5に、
図1や
図4に示した路面診断装置のハード構成を示す。
演算部300はCPU301、ROM303及びRAM305を備え、システム全体の制御をつかさどる。それとともに、タイヤ速度特定部20及び指標生成部40の演算部分をつかさどる。ROM303は、演算部300を制御する制御プログラム等が格納された不揮発性メモリである。RAM305はCPU301に対してワーキングエリアを提供する。演算部300を制御する制御プログラムはROM303に限らずRAM305や第1、第2記憶装置340及び350に格納されていてもよい。出力装置320を介して各種のデータが出力される。
【0032】
第1記憶装置340は走行情報保存部10として機能する。
第2記憶装置350は標準スコアパターン保存部154として機能する。
第1、第2記憶装置340、350はハードメモリやフラッシュメモリなど、サーバシステムのメモリ装置の一部の領域を利用することが好ましい。
一時的に保存されるデータ用保存部としての、いわゆるバッファメモリには、演算部のRAMの一部領域を利用できる。外部の通信ネットワークには通信インターフェース13でつながれる。
コンピュータを構成する各装置はシステムバス370で連結されている。
【0033】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1、100 路面診断装置
10 走行情報保存部
20 タイヤ速度特定部
30 スコア付与部
40 指標生成部
50 第1集計部
60 第2集計部