(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169145
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電線取込量算出装置、電線取込量算出プログラム、及び電線取込量算出方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20241128BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20241128BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02G1/02
G01B11/24 M
G01C15/00 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086365
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520320446
【氏名又は名称】中部電力パワーグリッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】八尾 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】牛本 卓二
【テーマコード(参考)】
2F065
5G352
【Fターム(参考)】
2F065AA46
2F065AA53
2F065BB12
2F065DD03
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH04
2F065MM06
2F065MM16
2F065PP25
2F065QQ17
2F065QQ31
5G352AA01
5G352AA10
5G352AA12
5G352AM01
(57)【要約】
【課題】少ない計算量で求められる近似曲線式を用いて電線の弛度を目標弛度にするための電線の取込量を算出する。
【解決手段】電線取込量算出装置としての役割を担うコンピュータは、鉄塔11,12によって支持される電線13の弛度を目標弛度d0とするための電線13の取込量Ltを算出する。コンピュータの中央処理装置は、電線13を三次元点群で表したときの各点の三次元座標を取り込み、それら三次元座標を二次元座標に変換する。同装置は、二次元座標に基づき電線13を表す近似曲線式を求めるとともに、鉄塔11における電線13の支持点Aと鉄塔12における電線13の支持点Bとを通過する直線を求め、上記近似曲線式と上記直線とに基づき電線13の弛度dを算出する。同装置は、電線13の弛度を弛度d、目標弛度d0としたときの支持点A,B間の電線13の実長L、実長L0を求め、実長L及び実長L0に基づき取込量Ltを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに距離をおいた第1の電線支持体と第2の電線支持体とによって支持される電線の弛度を目標弛度とするための前記電線の取込量を算出するものであり、
座標取得部と、座標変換部と、電線弛度算出部と、取込量算出部と、を備え、
前記座標取得部は、前記電線を三次元点群で表したときの各点の三次元座標を取り込むものであり、
前記座標変換部は、取り込まれた前記各点の三次元座標を、二次元座標系の二次元座標に変換するものであり、
前記電線弛度算出部は、前記二次元座標系における前記各点の二次元座標に基づき前記電線を表す近似曲線式を求めるとともに、前記第1の電線支持体における前記電線の支持点Aと前記第2の電線支持体における前記電線の支持点Bとを通過する直線を求め、前記近似曲線式と前記直線とに基づき前記電線の弛度dを算出するものであり、
前記取込量算出部は、前記電線の弛度を前記弛度dとしたときの前記電線における前記支持点Aと前記支持点Bとの間の実長Lと、前記電線の弛度を目標弛度d0としたときの前記電線における前記支持点Aと前記支持点Bとの間の実長L0とを求め、前記実長L及び前記実長L0に基づき前記電線の取込量を算出するものである電線取込量算出装置。
【請求項2】
前記電線弛度算出部は、前記近似曲線式を二次関数で表されるものとし、その二次関数の係数を最小二乗法によって求めるものである請求項1に記載の電線取込量算出装置。
【請求項3】
互いに距離をおいた第1の電線支持体と第2の電線支持体とによって支持される電線の弛度を目標弛度とするための前記電線の取込量を算出するコンピュータに、座標取得処理、座標変換処理、電線弛度算出処理、及び取込量算出処理を実行させるための電線取込量算出プログラムであって、
前記座標取得処理は、前記電線を三次元点群で表したときの各点の三次元座標を取り込むものであり、
前記座標変換処理は、取り込まれた前記各点の三次元座標を、二次元座標系の二次元座標に変換するものであり、
前記電線弛度算出処理は、前記二次元座標系における前記各点の二次元座標に基づき前記電線を表す近似曲線式を求めるとともに、前記第1の電線支持体における前記電線の支持点Aと前記第2の電線支持体における前記電線の支持点Bとを通過する直線を求め、前記近似曲線式と前記直線とに基づき前記電線の弛度dを算出するものであり、
前記取込量算出処理は、前記電線の弛度を前記弛度dとしたときの前記電線における前記支持点Aと前記支持点Bとの間の実長Lと、前記電線の弛度を目標弛度d0としたときの前記電線における前記支持点Aと前記支持点Bとの間の実長L0とを求め、前記実長L及び前記実長L0に基づき前記電線の取込量を算出するものである電線取込量算出プログラム。
【請求項4】
互いに距離をおいた第1の電線支持体と第2の電線支持体とによって支持される電線の弛度を目標弛度とするための前記電線の取込量を算出するものであり
座標取得工程、座標変換工程、電線弛度算出工程、及び取込量算出工程が順に実行され、
前記座標取得工程は、前記電線を三次元点群で表したときの各点の三次元座標を取り込むものであり、
前記座標変換工程は、取り込まれた前記各点の三次元座標を、二次元座標系の二次元座標に変換するものであり、
前記電線弛度算出工程は、前記二次元座標系における前記各点の二次元座標に基づき前記電線を表す近似曲線式を求めるとともに、前記第1の電線支持体における前記電線の支持点Aと前記第2の電線支持体における前記電線の支持点Bとを通過する直線を求め、前記近似曲線式と前記直線とに基づき前記電線の弛度dを算出するものであり、
前記取込量算出工程は、前記電線の弛度を前記弛度dとしたときの前記電線における前記支持点Aと前記支持点Bとの間の実長Lと、前記電線の弛度を目標弛度d0としたときの前記電線における前記支持点Aと前記支持点Bとの間の実長L0とを求め、前記実長L及び前記実長L0に基づき前記電線の取込量を算出するものである電線取込量算出方法。
【請求項5】
前記座標取得工程は、レーザー測量装置を搭載した飛行体を前記支持点Aと前記支持点Bとの間で前記電線に沿って往復させて前記電線を測量することにより、前記電線を三次元点群で表したときの各点の三次元座標を求め、求められた前記各点の三次元座標を取り込むものである請求項4に記載の電線取込量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線取込量算出装置、電線取込量算出プログラム、及び電線取込量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに距離をおいた複数の電線支持体によって電線を支持した設備では、設備を新設したり電線を交換したりする際、複数の電線支持体に電線を架け渡した後、その電線の弛度が目標弛度となるよう電線をウインチ等によって取り込むという作業が行われる。こうした作業を行うため、例えば特許文献1に示されるように上記電線を表す三次元点群を用いて上記電線に対応する懸垂曲線を求め、その懸垂曲線を用いて上記電線の弛度を評価することが考えられる。
【0003】
特許文献1では、上記電線に対応する懸垂曲線が次のように求められる。すなわち、上記電線を表す三次元点群の最小二乗平面を求め、その三次元点群の各点から最小二乗平面に下ろした垂線の足の座標を求める。更に、上記垂線の足の座標を二次元直交座標に変換し、その二次元直交座標に変換された座標群に適合する懸垂曲線を求める。このように上記電線に対応する懸垂曲線を求めることにより、その懸垂曲線を用いて上記電線の弛度を評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記懸垂曲線を用いて電線の弛度を評価したとしても、その弛度を目標弛度にするため、ウインチ等によって上記電線をどの程度取り込めばよいのかは分からない。従って、上記電線を取り込むことによる上記電線の弛度の目標弛度への調整を効率良く行えなくなる。また、上記懸垂曲線を求める際に最小二乗平面を求めたり、三次元点群の各点から最小二乗平面に下ろした垂線の足の座標を求めたりしなければならないため、上記懸垂曲線を求めるための計算量が多くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する電線取込量算出装置は、互いに距離をおいた第1の電線支持体と第2の電線支持体とによって支持される電線の弛度を目標弛度とするための電線の取込量を算出する。同装置は、座標取得部と、座標変換部と、電線弛度算出部と、取込量算出部と、を備える。座標取得部は、電線を三次元点群で表したときの各点の三次元座標を取り込むものとされる。座標変換部は、取り込まれた前記各点の三次元座標を、二次元座標系の二次元座標に変換するものとされる。電線弛度算出部は、二次元座標系における上記各点の二次元座標に基づき電線を表す近似曲線式を求めるとともに、第1の電線支持体における電線の支持点Aと第2の電線支持体における電線の支持点Bとを通過する直線を求める。電線弛度算出部は、上記近似曲線式と上記直線とに基づき、電線の弛度dを算出するものとされる。取込量算出部は、電線の弛度を弛度dとしたときの電線における支持点Aと支持点Bとの間の実長Lと、電線の弛度を目標弛度d0としたときの電線における支持点Aと支持点Bとの間の実長L0とを求める。取込量算出部は、実長L及び実長L0に基づき電線の取込量を算出するものとされる。
【0007】
上記構成によれば、電線を表す三次元点群における各点の三次元座標を二次元座標系の二次元座標に変換し、二次元座標系における各点の二次元座標に基づき、電線を表す近似曲線式が求められる。このため、支持点Aと支持点Bとに支持された電線を表す上記近似曲線式を少ない計算量で求めることができる。電線の弛度dは、支持点Aと支持点Bとを通過する直線と上記近似曲線式とに基づき算出される。そして、電線の弛度を弛度dとしたときの電線の実長Lと、電線の弛度を目標弛度d0としたときの電線の実長L0とに基づき、電線の取込量が算出される。従って、少ない計算量で求められる近似曲線式を用いて電線の弛度を目標弛度d0にするための電線の取込量を算出できる。
【0008】
なお、上記電線弛度算出部は、上記近似曲線式を二次関数で表されるものとし、その二次関数の係数を最小二乗法によって求めるものとすることが考えられる。
上記課題を解決する電線取込量算出プログラムは、互いに距離をおいた第1の電線支持体と第2の電線支持体とによって支持される電線の弛度を目標弛度とするための電線の取込量を算出するコンピュータに、座標取得処理、座標変換処理、電線弛度算出処理、及び取込量算出処理を実行させるためのものである。座標取得処理は、電線を三次元点群で表したときの各点の三次元座標を取り込むものである。座標変換処理は、取り込まれた各点の三次元座標を、二次元座標系の二次元座標に変換するものである。電線弛度算出処理は、二次元座標系における各点の二次元座標に基づき電線を表す近似曲線式を求めるとともに、第1の電線支持体における電線の支持点Aと第2の電線支持体における電線の支持点Bとを通過する直線を求めるものである。電線弛度算出処理は、上記近似曲線式と上記直線とに基づき、電線の弛度dを算出するものである。取込量算出処理は、電線の弛度を弛度dとしたときの電線における支持点Aと支持点Bとの間の実長Lと、電線の弛度を目標弛度d0としたときの電線における支持点Aと支持点Bとの間の実長L0とを求めるものである。取込量算出処理は、上記実長L及び上記実長L0に基づき、電線の取込量を算出するものである。
【0009】
上記プログラムによれば、電線を表す三次元点群における各点の三次元座標を二次元座標系の二次元座標に変換し、二次元座標系における各点の二次元座標に基づき、電線を表す近似曲線式が求められる。このため、支持点Aと支持点Bとに支持された電線を表す上記近似曲線式を少ない計算量で求めることができる。電線の弛度dは、支持点Aと支持点Bとを通過する直線と上記近似曲線式とに基づき算出される。そして、電線の弛度を弛度dとしたときの電線の実長Lと、電線の弛度を目標弛度d0としたときの電線の実長L0とに基づき、電線の取込量が算出される。従って、少ない計算量で求められる近似曲線式を用いて電線の弛度を目標弛度d0にするための電線の取込量を算出できる。
【0010】
上記課題を解決する電線取込量算出方法は、互いに距離をおいた第1の電線支持体と第2の電線支持体とによって支持される電線の弛度を目標弛度とするための電線の取込量を算出する。同方法では、座標取得工程、座標変換工程、電線弛度算出工程、及び取込量算出工程が順に実行される。座標取得工程は、電線を三次元点群で表したときの各点の三次元座標を取り込むものである。座標変換工程は、取り込まれた各点の三次元座標を、二次元座標系の二次元座標に変換するものである。電線弛度算出工程は、二次元座標系における各点の二次元座標に基づき電線を表す近似曲線式を求めるとともに、第1の電線支持体における電線の支持点Aと第2の電線支持体における電線の支持点Bとを通過する直線を求めるものである。電線弛度算出工程は、上記近似曲線式と上記直線とに基づき、電線の弛度dを算出するものである。取込量算出工程は、電線の弛度を弛度dとしたときの電線における支持点Aと支持点Bとの間の実長Lと、電線の弛度を目標弛度d0としたときの電線における支持点Aと支持点Bとの間の実長L0とを求めるものである。取込量算出工程は、上記実長L及び上記実長L0に基づき、電線の取込量を算出するものである。
【0011】
上記方法によれば、電線を表す三次元点群における各点の三次元座標を二次元座標系の二次元座標に変換し、二次元座標系における各点の二次元座標に基づき、電線を表す近似曲線式が求められる。このため、支持点Aと支持点Bとに支持された電線を表す上記近似曲線式を少ない計算量で求めることができる。電線の弛度dは、支持点Aと支持点Bとを通過する直線と上記近似曲線式とに基づき算出される。そして、電線の弛度を弛度dとしたときの電線の実長Lと、電線の弛度を目標弛度d0としたときの電線の実長L0とに基づき、電線の取込量が算出される。従って、少ない計算量で求められる近似曲線式を用いて電線の弛度を目標弛度d0にするための電線の取込量を算出できる。
【0012】
上記座標取得工程は、レーザー測量装置を搭載した飛行体を支持点Aと支持点Bとの間で電線に沿って往復させて電線を測量することにより、電線を三次元点群で表したときの各点の三次元座標を求め、求められた各点の三次元座標を取り込むものとすることが考えられる。
【0013】
この方法によれば、電線を表す三次元点群における各点の正確な三次元座標を取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】電線取込量算出装置、電線取込量算出プログラム、及び電線取込量算出方法が用いられる設備を示す略図である。
【
図2】上記電線取込量算出装置を具体化したコンピュータの構造を示す略図である。
【
図3】電線を表す三次元点群における各点の三次元座標を示す表である。
【
図4】
図3の表に示される点P0の三次元座標を原点としたときの各点のx座標、y座標、及びz座標を示す表である。
【
図5】
図4の表に示される各点のx座標及びy座標を、s軸上のs座標に変換するための式(1)を示す図である。
【
図6】
図3の表に示される各点の三次元座標を、二次元座標系の二次元座標に変換したときの二次元座標を示す表である。
【
図8】支持点A,Bを通過する直線を表す式を示す図である。
【
図9】
図8の式で用いられる係数b’を表す式を示す図である。
【
図10】
図7の近似曲線式による曲線及び
図8の直線を示すグラフである。
【
図13】
図10の直線に対する曲線の最下点での電線の弛度dを表す式を示す図である。
【
図14】電線の弛度を
図13の弛度dとしたときの支持点A,B間での電線の実長Lを表す式を示す図である。
【
図15】電線の弛度を目標弛度d0としたときの支持点A,B間での電線の実長L0を表す式を示す図である。
【
図16】電線の取込量Ltを算出する式を示す図である。
【
図17】電線取込量算出プログラムの実行手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電線取込量算出装置、電線取込量算出プログラム、及び電線取込量算出方法の一実施形態について、
図1~
図17を参照して説明する。
図1に示すように、互いに距離を置いた鉄塔11,12によって電線13が支持されている送電設備では、鉄塔11が第1の電線支持体としての役割を担うとともに、鉄塔12が第2の電線支持体としての役割を担っている。電線13は、鉄塔11の支持点Aと鉄塔11の支持点Bとで支持されている。こうした送電設備を新設したり電線13を交換したりする際には、鉄塔11の支持点A及び鉄塔12の支持点Bに電線13を架け渡した後、その電線13の弛度が目標弛度となるように電線13をウインチ14によって取り込むという作業が行われる。
【0016】
<電線取込量算出装置>
電線13の弛度を目標弛度に調整する際には、電線13の弛度を目標弛度にするためのウインチ14による電線13の取込量Ltを算出する電線取込量算出装置が用いられる。この電線取込量算出装置によって算出された取込量Lt分、電線13をウインチ14によって取り込むことにより、電線13の弛度が目標弛度とされるようになる。電線取込量算出装置はコンピュータ16によって実現される。コンピュータ16としては、例えばデスクトップ型、ノート型、及びタブレット型といったパーソナルコンピュータを採用したり、スマートフォン等の携帯型のコンピュータを採用したりすることが考えられる。
【0017】
図2に示すように、コンピュータ16は、記憶部17と、ディスプレイ18と、通信部21と、中央処理装置22と、を備えている。記憶部17は、電線13を三次元点群で表したときの各点の三次元座標といった各種データを記憶するためのものである。ディスプレイ18は、電線13の取込量Ltを表示することが可能となっている。通信部21は、
図1に示すレーザー測量装置等を搭載したドローン等の飛行体20と通信するためのものである。中央処理装置22は、コンピュータ16における記憶部17、ディスプレイ18、及び通信部21といった各種の機器を制御するとともに、記憶部17に記憶された各種データに基づく演算処理等を行うためのものである。
【0018】
飛行体20は、
図1に矢印で示すように電線13に沿って往復することにより、レーザー測量装置によって電線13を測量する。こうしたレーザー測量装置による電線13の測量により、電線13を三次元点群で表したときの各点の三次元座標が求められる。そして、求められた各点の三次元座標は、コンピュータ16の記憶部17に記憶される。なお、記憶部17に記憶される上記各点の三次元座標は、必ずしも飛行体20を用いたレーザー測量装置による電線13の測量によって得たものである必要はなく、それ以外の手法により得たものであってもよい。
【0019】
コンピュータ16の中央処理装置22は、記憶部17に記憶された三次元座標、すなわち電線13を表す三次元点群における各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)を取り込む。このときの中央処理装置22は座標取得部としての役割を担う。上記三次元座標(x,y,z)の例を
図3に示す。
図3の表における点P0は、電線13における鉄塔11の支持点Aに繋がる箇所に相当する点である。
【0020】
中央処理装置22は、各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)を二次元座標系の二次元座標に変換する。このときの中央処理装置22は座標変換部としての役割を担う。詳しくは、中央処理装置22は、各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)を、点P0を原点とする座標(x-x0,y-y0,z-z0)に変換する。
【0021】
すなわち、中央処理装置22は、点P0のx座標、y座標、及びz座標をそれぞれx0、y0、及びz0とし、それらx0、y0、及びz0を各点P0~Pnのx座標、y座標、及びz座標から減算する。これにより、各点P0~Pnの上記座標(x-x0,y-y0,z-z0)を求める。各点P0~Pnの上記座標(x-x0,y-y0,z-z0)のx座標(x-x0)、y座標(y-y0)、及びz座標(z-z0)の例を
図4に示す。
【0022】
中央処理装置22は、各点P0~Pnの上記座標(x-x0,y-y0,z-z0)のx座標(x-x0)及びy座標(y-y0)を、
図5に示す式(1)を用いてs座標に変換する。これにより、各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)が二次元座標系の二次元座標(s,z-z0)に変換される。変換後の各点P0~Pnの二次元座標(s,z-z0)の例を
図6に示す。
【0023】
中央処理装置22は、各点P0~Pnの二次元座標(s,z-z0)に基づき電線13を表す近似曲線式を求めるとともに、支持点Aと支持点Bとを通過する直線を求め、上記近似曲線式と上記直線とに基づき電線13の弛度dを算出する。このときの中央処理装置22は電線弛度算出部としての役割を担う。
【0024】
詳しくは、上記近似曲線式は、
図7に示す二次関数の式(2)で表される。中央処理装置22は、式(2)の係数a、b、cを各点P0~Pnの二次元座標(s,z-z0)に基づき最小二乗法によって求める。また、上記直線は、
図8の式(3)で表される。式(3)の係数b’は、鉄塔11と鉄塔12との径間長S、及び、支持点Aと支持点Bとの高低差hに基づき、
図9に示す式(4)によって表される。
【0025】
図10は、式(2)で表される近似曲線式による曲線、及び,式(3)で表される直線を示している。
図10のグラフでは横軸をs軸とするとともに縦軸をz軸とし、そのグラフにおける支持点Aと支持点Bとを結ぶ上記曲線及び上記直線をそれぞれ実線L1及び実線L2で示している。そして、電線13の弛度は、
図10における直線(実線L2)に対する曲線(実線L2)の垂れ下がり量「z-z’」で表される。このため、電線13の弛度を表す式は、
図11に示す式(5)となる。
【0026】
式(5)の「b-b’」を「E」に置き換えて式(5)を変形することにより、
図12に示す式(6)が得られる。電線13の弛度dは、
図10の直線に対する曲線の最下点での垂れ下がり量である。従って、電線13の弛度dは、式(6)のsの値を「s=-(E/2a)」としたときの「z-z’」であり、
図13の式(7)で表される。
【0027】
中央処理装置22は、電線13の弛度を上記弛度dとしたときの電線13における支持点Aと支持点Bとの間の実長Lと、電線13の弛度を目標弛度d0としたときの電線13における支持点Aと支持点Bとの間の実長L0とを求める。中央処理装置22は、実長L及び実長L0に基づき、電線13の弛度を目標弛度d0にするための電線13の取込量Ltを算出する。このときの中央処理装置22は、取込量算出部としての役割を担う。
【0028】
詳しくは、中央処理装置22は、径間長S、弛度d、及び高低差hに基づき、
図14の式(8)を用いて電線13の実長Lを算出するとともに、
図15の式(9)を用いて電線13の実長L0を算出する。更に、中央処理装置22は、
図16の式(10)を用いて、電線13の取込量Ltを算出する。中央処理装置22は、算出された取込量Ltをディスプレイ18に表示させる。そして、ディスプレイ18に表示された取込量Lt分、電線13をウインチ14によって取り込むことにより、電線13の弛度が目標弛度d0とされる。
【0029】
<電線取込量算出プログラム>
次に、取込量Ltを算出するための電線取込算出プログラムについて説明する。
図17のフローチャートは、電線取込量算出プログラムの実行手順を示している。この電線取込量算出プログラムは、コンピュータ16の中央処理装置22を通じて実行される。
【0030】
中央処理装置22は、
図17のフローチャートにおけるステップ101(S101)の処理として、記憶部17に記憶された三次元座標、すなわち電線13を表す三次元点群における各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)を取り込む。このS101の処理は、座標取得処理に相当する。中央処理装置22は、S102の処理として、各点P0~Pnの上記座標(x,y,z)のx座標(x)、y座標(y)、及びz座標(z)を、二次元座標系の二次元座標(s,z-z0)に変換する。このS102の処理は、座標変換処理に相当する。
【0031】
中央処理装置22は、S103の処理として、各点P0~Pnの二次元座標(s,z-z0)に基づき、
図7に示す式(2)の係数a,b,cを最小二乗法で求めることにより、電線13を表す近似曲線式である式(2)を求める。中央処理装置22は、S104の処理として、径間長S及び高低差hに基づき、支持点Aと支持点Bとを通過する直線、すなわち
図8の式(3)で表される直線を求める。中央処理装置22は、S105の処理として、上記近似曲線式と上記直線とに基づき、現状の電線13における実際の弛度dを算出する。上記S103~上記S105の処理は、電線弛度算出処理に相当する。
【0032】
中央処理装置22は、S106の処理として、電線13の弛度を弛度dとしたとき、すなわち現状の電線13の弛度dにおける支持点Aと支持点Bとの間の電線13の実長Lを、径間長S、弛度d、及び高低差hに基づき
図14の式(8)を用いて算出する。中央処理装置22は、S107の処理として、電線13の弛度を目標弛度d0としたときの支持点Aと支持点Bとの間の電線13の実長L0を、径間長S、目標弛度d0、及び高低差hに基づき
図15の式(9)を用いて算出する。中央処理装置22は、S108の処理として、実長Lと実長L0とに基づき、
図16の式(10)を用いて、電線13の取込量Ltを算出する。上記S106~上記S108の処理は、取込量算出処理に相当する。
【0033】
<電線取込量算出方法>
次に、取込量Ltを算出するための電線取込算出方法について説明する。
この取込量算出方法では、座標取得工程、座標変換工程、電線弛度算出工程、及び取込量算出工程が順に実行される。
【0034】
座標取得工程では、飛行体20を
図1に矢印で示すように電線13に沿って往復させることにより、飛行体20のレーザー測量装置によって電線13を測量する。こうしたレーザー測量装置による電線13の測量により、電線13を三次元点群で表したときの各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)が求められる。そして、求められた各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)は、コンピュータ16の記憶部17に記憶される。こうして記憶部17に記憶された各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)が、コンピュータ16の中央処理装置22に取り込まれる。
【0035】
座標変換工程では、中央処理装置22に取り込まれた上記各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)が、二次元座標系の二次元座標(s,z-0)に変換される。
電線弛度算出工程では、各点P0~Pnの二次元座標(s,z-z0)に基づき、電線13を表す近似曲線式、すなわち
図7に示す式(2)が求められる。更に、支持点Aと支持点Bとを通過する直線、すなわち
図8の式(3)で表される直線も求められる。そして、上記近似曲線式と上記直線とに基づき、現状の電線13における実際の弛度dが算出される。
【0036】
取込量算出工程では、電線13の弛度を弛度dとしたときの支持点Aと支持点Bとの間の電線13の実長Lが、
図14の式(8)を用いて算出される。更に、電線13の弛度を目標弛度d0としたときの支持点Aと支持点Bとの間の電線13の実長L0が、
図15の式(9)を用いて算出される。そして、上記実長Lと上記実長L0とに基づき、
図16の式(10)を用いて、電線13の取込量Ltが算出される。
【0037】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)電線13を表す三次元点群における各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)を二次元座標系の二次元座標(s,z-z0)に変換し、二次元座標系における各点P0~Pnの二次元座標(s,z-z0)に基づき、電線13を表す近似曲線式が求められる。このため、支持点Aと支持点Bとに支持された電線13を表す上記近似曲線式を少ない計算量で求めることができる。電線13の弛度dは、支持点Aと支持点Bとを通過する直線と上記近似曲線式とに基づき算出される。そして、電線13の弛度を弛度dとしたときの電線13の実長Lと、電線13の弛度を目標弛度d0としたときの電線13の実長L0とに基づき、電線13の取込量Ltが算出される。従って、少ない計算量で求められる近似曲線式を用いて電線13の弛度を目標弛度d0にするための電線13の取込量Ltを算出できる。
【0038】
(2)電線取込量算出方法における座標取得工程では、飛行体20を支持点Aと支持点Bとの間で電線13に沿って往復させることにより、飛行体20に搭載したレーザー測量装置で電線13を測量する。こうしたレーザー測量装置による電線13の測量により、電線13を三次元点群で表したときの各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)が求められる。上記三次元座標(x,y,z)は、コンピュータ16の記憶部17に記憶される。そして、取込量Ltを算出する際、上記三次元座標(x,y,z)は、コンピュータ16の中央処理装置22に取り込まれる。これにより、電線13を表す三次元点群における各点P0~Pnの正確な三次元座標(x,y,z)を中央処理装置22に取り込むことができる。
【0039】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・中央処理装置22は、飛行体20のレーザー測量装置を用いて電線13を三次元点群で表したときの各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)が求められたとき、それら三次元点群(x,y,z)を記憶部17に記憶することなく取り込むものであってもよい。
【0040】
・電線取込量算出方法における座標取得工程では、必ずしも電線13を三次元点群で表したときの各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)を求める必要はない。例えば、予め求められて記憶部17に記憶された各点P0~Pnの三次元座標(x,y,z)を中央処理装置22に取り込むだけであってもよい。
【0041】
・算出した取込量Ltをディスプレイ18に表示する代わりに、音声等によって知らせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
11,12…鉄塔
13…電線
14…ウインチ
16…コンピュータ
17…記憶部
18…ディスプレイ
20…飛行体
21…通信部
22…中央処理装置