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特開2024-169151見守り装置、見守り方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169151
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】見守り装置、見守り方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20241128BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20241128BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20241128BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241128BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G08B21/02
A61B5/00 102C
G08B25/04 K
A61B5/11 110
G08B25/00 510F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086378
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一星 彰
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
4C038VA16
4C038VA18
4C038VB32
4C038VB33
4C038VC20
4C117XB02
4C117XB11
4C117XC02
4C117XE13
4C117XE24
4C117XE43
4C117XE56
4C117XE60
4C117XJ13
4C117XL01
4C117XQ20
5C086AA22
5C086BA01
5C086CA06
5C086CA09
5C086CB26
5C086DA08
5C086FA06
5C087AA37
5C087DD03
5C087DD24
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG66
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】飲酒や運動などの被測定者の一時的な身体状態を踏まえて、被測定者の異常を適切に報知できるようにすること。
【解決手段】見守り装置10は、被測定者の生体情報を取得する生体情報取得部11と、前記生体情報に基づいて前記被測定者が異常状態にあるか否かを判定する異常判定部16と、前記被測定者が異常状態にあると判定される場合に、その旨を報知する報知部17と、前記被測定者が所定の一時的な身体状態にあるか否かを判定する状態判定部13と、前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記報知部17による報知を制限する報知制限部15と、を含む。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記生体情報に基づいて前記被測定者が異常状態にあるか否かを判定する異常判定手段と、
前記被測定者が異常状態にあると判定される場合に、その旨を報知する報知手段と、
前記被測定者が所定の一時的な身体状態にあるか否かを判定する状態判定手段と、
前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記報知手段による報知を制限する報知制限手段と、
を含むことを特徴とする見守り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の見守り装置において、
前記報知制限手段は、前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記判定手段における判定基準を変更する、
ことを特徴とする見守り装置。
【請求項3】
請求項2に記載の見守り装置において、
前記被測定者について前記一時的な身体状態の影響レベルを判定する影響レベル判定手段をさらに含み、
前記報知制限手段は、前記影響レベルに応じて前記判定手段における判定基準を変更する、
ことを特徴とする見守り装置。
【請求項4】
請求項1に記載の見守り装置において、
前記報知制限手段は、前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記被測定者が前記一時的な身体状態にないと判定されるまで、前記報知手段による報知を行わない、
ことを特徴とする見守り装置。
【請求項5】
請求項1に記載の見守り装置において、
前記状態判定手段は、前記生体情報に基づいて前記被測定者が前記一時的な身体状態にあるか否かを判定する、
ことを特徴とする見守り装置。
【請求項6】
請求項5に記載の見守り装置において、
前記状態判定手段は、前記一時的な身体状態にある人間の前記生体情報を用いて訓練された機械学習モデルを含む、
ことを特徴とする見守り装置。
【請求項7】
請求項6に記載の見守り装置において、
前記一時的な身体状態は、飲酒後の状態又は運動後の状態である、
ことを特徴とする見守り装置。
【請求項8】
被測定者の生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記生体情報に基づいて前記被測定者が異常状態にあるか否かを判定する異常判定ステップと、
前記被測定者が異常状態にあると判定される場合に、その旨を報知する報知ステップと、
前記被測定者が所定の一時的な身体状態にあるか否かを判定する状態判定ステップと、
前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記報知ステップでの報知を制限する報知制限ステップと、
を含むことを特徴とする見守り方法。
【請求項9】
被測定者の生体情報を算出する生体情報取得手段、
前記生体情報に基づいて前記被測定者が異常状態にあるか否かを判定する異常判定手段、
前記被測定者が異常状態にあると判定される場合に、その旨を報知する報知手段、
前記被測定者が所定の一時的な身体状態にあるか否かを判定する状態判定手段、及び
前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記報知手段による報知を制限する報知制限手段
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は見守り装置、見守り方法及びプログラムに関し、特に被測定者の生体情報に基づいてその身体的異常を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
心拍数や呼吸数などの被測定者の生体情報を就寝中などに検出するシステムが知られている。例えば下記特許文献1には、就寝中の被測定者の呼吸数を取得し、該呼吸数と基準呼吸数とを比較することにより被測定者が身体的な異常状態にあるか否かを判断する異常評価装置が開示されている。この装置では、被測定者が異常状態にあると判断されると、本人や看護者に対し、その旨が報知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6193650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲酒後や運動後には、一時的ではあるものの被測定者の心拍数や呼吸数は大きく変化する。このため、上記従来技術によれば、飲酒後や運動後の測定において被測定者が異常状態にあると判断され、異常状態の旨の報知が行われてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、飲酒や運動などの被測定者の一時的な身体状態を踏まえて、被測定者の異常を適切に報知できる見守り装置、見守り方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る見守り装置は、被測定者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記生体情報に基づいて前記被測定者が異常状態にあるか否かを判定する異常判定手段と、前記被測定者が異常状態にあると判定される場合に、その旨を報知する報知手段と、前記被測定者が所定の一時的な身体状態にあるか否かを判定する状態判定手段と、前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記報知手段による報知を制限する報知制限手段と、を含む。
【0007】
(2)上記(1)に記載の見守り装置において、前記報知制限手段は、前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記判定手段における判定基準を変更してよい。
【0008】
(3)上記(2)に記載の見守り装置において、前記被測定者について前記一時的な身体状態の影響レベルを判定する影響レベル判定手段をさらに含んでよい。前記報知制限手段は、前記影響レベルに応じて前記判定手段における判定基準を変更してよい。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の見守り装置において、前記報知制限手段は、前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記被測定者が前記一時的な身体状態にないと判定されるまで、前記報知手段による報知を行わないようにしてもよい。
【0010】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の見守り装置において、前記状態判定手段は、前記生体情報に基づいて前記被測定者が前記一時的な身体状態にあるか否かを判定してよい。
【0011】
(6)上記(5)に記載の見守り装置において、前記状態判定手段は、前記一時的な身体状態にある人間の前記生体情報を用いて訓練された機械学習モデルを含んでよい。
【0012】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の見守り装置において、前記一時的な身体状態は、飲酒後の状態又は運動後の状態であってよい。
【0013】
(8)また、本発明に係る見守り方法は、被測定者の生体情報を取得する生体情報取得ステップと、前記生体情報に基づいて前記被測定者が異常状態にあるか否かを判定する異常判定ステップと、前記被測定者が異常状態にあると判定される場合に、その旨を報知する報知ステップと、前記被測定者が所定の一時的な身体状態にあるか否かを判定する状態判定ステップと、前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記報知ステップでの報知を制限する報知制限ステップと、を含む。
【0014】
(9)また、本発明に係るプログラムは、被測定者の生体情報を算出する生体情報取得手段、前記生体情報に基づいて前記被測定者が異常状態にあるか否かを判定する異常判定手段、前記被測定者が異常状態にあると判定される場合に、その旨を報知する報知手段、前記被測定者が所定の一時的な身体状態にあるか否かを判定する状態判定手段、及び前記被測定者が前記一時的な身体状態にあると判定される場合に、前記報知手段による報知を制限する報知制限手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。このプログラムは、半導体メモリや光磁気ディスクなどのコンピュータ可読情報記憶媒体に格納されてよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、飲酒や運動などの被測定者の一時的な身体状態を踏まえて、被測定者の異常を適切に報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る見守りシステムの全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る見守り装置の機能ブロック図である。
図3】見守り装置の動作例を示すフロー図である。
図4】見守り装置の変形動作例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る見守りシステムの全体構成図である。同図に示す見守りシステム1は、住宅内に設置されたベッド40を中心に構成されている。ベッド40のヘッドボードには、スピーカマイク43及びドップラセンサ45が取り付けられている。ドップラセンサ45は、ベッド40で就寝する被測定者の胸部に向けてマイクロ波を照射し、その反射波を受信する。反射波からは心拍や呼吸に伴う胸部の動き示すドップラ信号が生成され、このドップラ信号をデジタル化したドップラデータを出力する。スピーカマイク43もベッド40で就寝する被測定者を向くように設けられている。またベッド40の床板等には重量計41が取り付けられており、被測定者や寝具などの重量を計測する。重量計41、スピーカマイク43及びドップラセンサ45は、同じ住宅内に設置された見守り装置10に接続されている。
【0019】
見守り装置10は、ベッド40で就寝する図示しない被測定者の生体情報(ここでは心拍数及び脈拍数)をドップラセンサ45で計測されるドップラデータに基づいて取得し、この生体情報に基づいて被測定者の異常を検知する。異常を検知した場合には、スピーカマイク43のスピーカ部から「異常を検知しました。大丈夫ですか?」などの呼びかけメッセージを音声出力する。これに対して、被測定者から「大丈夫です。」などの応答がスピーカマイク43のマイク部に入力されなければ、見守り装置10は、インターネットなどの通信ネットワーク30を介して接続された見守りサーバ20に異常の旨を送信する。ここで見守りサーバ20は、遠隔に設けられた見守りセンタ内に設置されたコンピュータである。異常の旨を見守りサーバ20が受信すると、見守りセンタの職員は、再度スピーカマイク43のスピーカ部から被測定者に呼びかけなどを行い、必要に応じて当該住宅に対して医師等の医療従事者、或いは救急車の派遣要請を行う。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る見守り装置10の機能ブロック図である。同図に示すように、見守り装置10は、機能的には生体情報取得部11、入床判定部12、状態判定部13、影響レベル判定部14、報知制限部15、異常判定部16、報知部17を含む。見守り装置10は、CPU及びメモリを含む汎用コンピュータを含んでおり、このコンピュータにおいて、本発明の実施形態に係るプログラムを実行することにより、図2に示される各機能は実現されている。このプログラムは、半導体メモリなどのコンピュータ可読情報記憶媒体からコンピュータに供給されてもよいし、インターネットなどの通信ネットワーク30を介して他のコンピュータからダウンロードされることにより、コンピュータに供給されてもよい。
【0021】
生体情報取得部11は、ドップラセンサ45で検知されるドップラデータに基づいて、被測定者の生体情報を取得する。ここでは、生体情報として心拍数と呼吸数を取得する。例えば、ドップラデータをフーリエ解析することにより、心拍数及び呼吸数に対応するピークを特定し、それらピークの位置(周波数)から心拍数及び呼吸数を取得する。
【0022】
入床判定部12は、重量計41で検知される重量に基づいて、ベッド40で被測定者が寝ているか否かを判定する。例えば、被測定者の体重を事前に記憶しておき、その体重の分だけ重量計41で検知される重量が増加したタイミングで、被測定者が入床したと判定する。また、事前に記憶された体重の分だけ重量計41で検知される重量が減少したタイミングで、被測定者が離床したと判定する。
【0023】
状態判定部13は、被測定者が所定の一時的な身体状態にあるか否かを判定する。ここでは、「所定の一時的な身体状態」は、飲酒後の状態及び運動後の状態であり、ドップラセンサ45で検出されるドップラデータに基づき、被測定者が飲酒後の状態(飲酒の影響が残った状態)であるか、運動後の状態(運動の影響が残った状態)であるか、通常の状態であるか、その他の状態であるか、を判定する。一例として、この判定は機械学習モデルを用いて行うことができる。具体的には、飲酒後の状態にある人間の一定期間(ここでは一例として5分間)のドップラデータ又はその特徴量に対して、飲酒後の状態を示すラベルを付与し、学習データを作成する。また、運動後の状態にある人間の一定期間のドップラデータ又はその特徴量に対して、運動後の状態を示すラベルを付与し、学習データを作成する。さらに、通常状態(飲酒後の状態でもなく、運動後の状態でもない状態)にある人間の一定期間のドップラデータ又はその特徴量に対して、通常状態を示すラベルを付与し、学習データを作成する。そして、これらの学習データにより、ドップラデータ又はその特徴量から身体状態の分類を行う機械学習モデルを訓練する。飲酒後の状態にある場合、心拍数及び呼吸数は大きくなり、強度も大きい傾向にある。また、入眠後も心拍数や呼吸数の変化が少ない傾向にある。また、呼吸においては、呼気と吸気の比が変化する傾向にある。一方、運動後の状態にある場合には、心拍数及び呼吸数は大きくなり、強度も大きい傾向にある。また、入眠後、心拍数や呼吸数は徐々に減少する傾向にある。呼吸においては、呼気と吸気の比が一定範囲に収まる傾向にある。このような特徴を機械学習モデルに学習させることで、被測定者が飲酒後の状態であるか、運動後の状態であるか、通常状態であるか、その他の状態であるか、を判定することができる。
【0024】
なお、ここでは機械学習モデルにより被測定者の一時的な身体状態を判定するようにしたが、他の方法により判定するようにしてもよい。例えば、食卓や冷蔵庫にセンサを設けて、その検出結果から被測定者が飲酒後の状態にあるか否かを判定してもよい。また、呼気センサを設けて、呼気に含まれるアルコール濃度から被測定者が飲酒後の状態にあるか否かを判定するようにしてもよい。また、住宅内の食卓付近に動画カメラを設けて、その撮影内容から被測定者が飲酒したかどうかを判定するようにしてよい。またリビングルームに動画カメラを設けて、その撮影内容から被測定者が宅内で運動したかどうかを判定するようにしてよい。また、被測定者自身により、飲酒したか、運動したか、を見守り装置10に入力させるようにしてもよい。
【0025】
影響レベル判定部14は、被測定者が飲酒後の状態にある場合に、その影響レベル(飲酒の影響の大きさ)を判定する。また、被測定者が運動後の状態にある場合に、その影響レベル(運動の影響の大きさ)を判定する。例えば、飲酒後、飲酒の影響が大きく残っているほど、被測定者の心拍数や呼吸数は高くなる。そこで、影響レベルごとに(例えば3段階で)心拍数及び/又は呼吸数の範囲を設定しておき、影響レベル判定部14は、状態判定部13により被測定者が飲酒後の状態にあると判定される場合、生体情報取得部11により取得される被測定者の心拍数や呼吸数がどの影響レベルの範囲に属するかを調べ、それにより飲酒の影響レベルを判定する。
【0026】
また、運動後、運動の影響が大きく残っているほど、被測定者の心拍数や呼吸数は高くなる。そこで、影響レベルごとに(例えば3段階で)心拍数及び/又は呼吸数の範囲を事前に設定しておき、影響レベル判定部14は、状態判定部13により被測定者が運動後の状態にあると判定される場合、生体情報取得部11により取得される被測定者の心拍数や呼吸数がどの影響レベルの範囲に属するかを調べ、それにより運動の影響レベルを判定してもよい。
【0027】
異常判定部16は、生体情報取得部11により取得される被測定者の心拍数及び呼吸数に基づいて、被測定者が異常状態にあるか否かを判定する。一例として、心拍数の数値範囲を複数設けておき、数値範囲のそれぞれにリスク値を設定しておく。そして、心拍数がどの数値範囲に属するかを調べることにより、心拍数に係るリスク値を決定する。同様に、呼吸数の数値範囲を複数設けておき、数値範囲のそれぞれにリスク値を設定しておく。そして、呼吸数がどの数値範囲に属するかを調べることにより、呼吸数に係るリスク値を決定する。その後、異常判定部16は、心拍数に係るリスク値と呼吸数に係るリスク値を加算することにより、総合リスク値を算出する。この総合リスク値が所与の閾値以上であれば、被測定者が異常状態にあると判定する。所与の閾値としては、被測定者が通常状態にある場合に用いられる通常閾値、飲酒後の状態にある場合に用いられる飲酒後閾値が用意されている。飲酒後閾値は、後述するように、飲酒の影響が残る程度(影響レベル)に応じて複数種類が用意されてもよい。また、被測定者が運動後の状態にある場合にも被測定者が異常状態にあるかを判定してよく、この場合には運動後閾値をさらに用意してよい。運動後閾値も、運動の影響が残る程度(影響レベル)に応じて複数種類が用意されてよい。
【0028】
報知部17は、被測定者が異常状態にあると判定される場合に、その旨を報知する。具体的には、スピーカマイク43のスピーカ部から呼びかけメッセージを音声出力する。また、それに対して被測定者からの応答がスピーカマイク43のマイク部に入力されなければ、通信ネットワーク30を介して見守りサーバ20に被測定者が異常状態にある旨のメッセージを送信する。
【0029】
報知制限部15は、被測定者が飲酒後の状態や運動後の状態にあると判定される場合に、報知部17による報知を制限する。例えば、被測定者が飲酒後の状態にある場合には、異常判定部16における異常状態の判定基準を変更する。具体的には、総合リスク値と比較される上記閾値を通常閾値から所定値だけ上昇した飲酒後閾値に変更する。これにより、総合リスク値が閾値以上となって異常状態と判定されることが少なくなる。こうして、報知部17による報知を抑制できる。この際、閾値を上昇させる程度を、飲酒の影響レベルに応じて変えてもよい。具体的には、飲酒の影響レベルが高いほど値が大きな飲酒後閾値を用いてよい。こうすれば、飲酒の影響レベルに応じて適切に判定基準を設定することができる。なお、報知制限部15は、被測定者が飲酒後の状態にないと判定されるまで、異常判定部16による異常判定を停止したり、報知部17による報知を停止したりしてもよい。
【0030】
同様に、被測定者が運動後の状態にある場合にも、異常判定部16における異常状態の判定基準を変更してよい。具体的には、総合リスク値と比較される上記閾値を通常閾値から所定値だけ上昇した運動後閾値に変更する。この際、閾値を上昇させる程度を、運動の影響レベルに応じて変えてもよい。具体的には、運動の影響レベルが高いほど値が大きな運動後閾値を用いてよい。或いは、報知制限部15は、被測定者が運動後の状態にないと判定されるまで、異常判定部16による異常判定を停止したり、報知部17による報知を停止したりしてもよい。
【0031】
図3は、見守り装置10の動作例を示すフロー図である。同図に示すように、見守り装置10では、まず入床判定部12により、被測定者がベッド40に入床したか否かを監視する(S101)。被測定者が入床すれば、次に生体情報取得部11がドップラセンサ45から送信されるドップラデータを取得する(S102)。見守り装置10は、一分経過するまで(S103)、S101及びS102の処理を繰り返し、一分経過すると(S103)、次に入床後5分以上が経過しているか否かを判断する(S104)。5分以上が経過していなければ、異常判定部16は、判定基準として通常閾値を設定する(S109)。
【0032】
S104において入床後5分以上が経過していると判断する場合には、状態判定部13が被測定者の状態を判定するとともに、影響レベル判定部14が飲酒等の影響レベルを判定する(S105)。具体的には、状態判定部13は、直近の5分間のドップラデータを機械学習モデルに入力することにより、被測定者が飲酒や運動の後の状態であるか否かを判定する。その結果、被測定者が通常状態にあると判定されれば(S106)、異常判定部16は、判定基準として通常閾値を設定する(S109)。また、被測定者が飲酒後の状態にあると判定されれば(S107)、異常判定部16は、判定基準として飲酒の影響レベルに応じた飲酒後閾値を設定する(S109)。また、被測定者が運動後の状態にあると判定されれば(S108)、報知部17は、異常判定を一時停止(保留)する旨をスピーカマイク43のスピーカ部から音声出力し(S112)、S101に戻る。また、被測定者が運動後の状態にないと判定されれば(S108)、報知部17は、異常判定を停止する旨をスピーカマイク43のスピーカ部から音声出力し(S111)、その旨のメッセージを見守りサーバ20に送信する。
【0033】
その後、異常判定部16は、生体情報取得部11により取得される心拍数及び呼吸数に基づき、総合リスク値を算出する(S113)。そして、総合リスク値を、S109又はS110において設定された閾値と比較することにより、異常判定を実施する(S114)。
【0034】
異常判定部16が、直近5回の異常判定にて連続して異常状態にあることを判定すると(S115)、報知部17は、スピーカマイク43のスピーカ部により呼びかけを行う(S116)。この呼びかけに対して、スピーカマイク43のマイク部で被測定者の応答が収音されれば(S117)、S101に戻る。また、被測定者の応答が収音されなければ(S117)、報知部17は見守りサーバ20に被測定者に異常が発生した旨のメッセージを送信し(S118)、S101に戻る。
【0035】
またS115において、直近5回の異常判定にて連続して異常状態にないことを異常判定部16が判定する場合も、S101に戻る。そして、1分経過後、直近の5分間のドップラデータに基づいて、状態判定部13が被測定者の状態を再び判定し、影響レベル判定部14が飲酒等の影響レベルを判定する(S105)。
見守り装置10は、被測定者が飲酒後の状態(S107)から通常状態にあると判定されれば(S106)、判定基準として通常閾値を設定し(S109)、以降の処理を継続する。
【0036】
以上説明した見守りシステム1によれば、ドップラセンサ45により取得されるドップラデータに基づいて、入床後、又は就寝中の被測定者の心拍数及び呼吸数を取得でき、それらの値から総合リスク値を算出する。総合リスク値は、所与の閾値と比較され、閾値以上であれば異常が発生したと判断する。報知部17は、被測定者本人や見守りセンタの職員にその旨を報知する。本実施形態では、被測定者が飲酒又は運動による一時的な身体状態にあるか否かをドップラデータから判定しており、それにより報知部17による報知を制限している。このため、被測定者本人や見守りセンタの職員に対し、報知が過剰になされないようにできる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形も可能であって、そのような変形もまた、本発明の技術的範囲に属する。
【0038】
例えば、図3の動作例では、入床後5分以上が経過するまで飲酒等の状態判定は行われなかったが、入床後1分経過すれば飲酒特の状態判定を行ってもよい。図4は、この場合の見守り装置の動作を示すフロー図である。同図に示すように、入床後1分経過すると、状態判定部13が被測定者の状態を判定するとともに、影響レベル判定部14が飲酒等の影響レベルを判定する(S105a)。このとき、状態判定部13は、入床後5分未満の場合には、直前の1分間のドップラデータに基づいて被測定者の状態を、例えば第1の機械学習モデルにより判定する。また、入床後5分以上が経過すれば、直前の5分間のドップラデータに基づいて被測定者の状態を、例えば第2の機械学習モデルにより判定する。第1の機械学習モデルを作成する場合、飲酒後、運動後、通常のそれぞれ状態にある人間の1分間のドップラデータ又はその特徴量に対して、飲酒後等の状態を示すラベルを付与し、学習データを作成する。そして、こうして作成される学習データにより1分間のドップラデータ又はその特徴量から身体状態の分類を行う第1の機械学習モデルを訓練すればよい。同様に、第2の機械学習モデルを作成する場合は、飲酒後、運動後、通常のそれぞれ状態にある人間の5分間のドップラデータ又はその特徴量に対して、飲酒後等の状態を示すラベルを付与し、学習データを作成する。そして、こうして作成される学習データにより、5分間のドップラデータ又はその特徴量から身体状態の分類を行う第2の機械学習モデルを訓練すればよい。かかる変形例によれば、入床後1分経過すれば、被測定者の一時的な身体状態を踏まえて、適切に異常判定を行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
1 見守りシステム、10 見守り装置、11 生体情報取得部、12 入床判定部、13 状態判定部、14 影響レベル判定部、15 報知制限部、16 異常判定部、17 報知部、20 見守りセンタサーバ、30 通信ネットワーク、40 ベッド、41 重量計、43 スピーカマイク、45 ドップラセンサ。
図1
図2
図3
図4