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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169161
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】MEMS型接触燃焼式ガス検知素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/16 20060101AFI20241128BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01N27/16 B
G01N27/12 B
G01N27/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086393
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋
【テーマコード(参考)】
2G046
2G060
【Fターム(参考)】
2G046AA05
2G046AA11
2G046AA19
2G046AA20
2G046AA21
2G046AA23
2G046BA01
2G046BA03
2G046BB02
2G046FB01
2G046FE03
2G046FE29
2G046FE31
2G046FE34
2G046FE38
2G046FE39
2G060AA02
2G060AB03
2G060AB08
2G060AB17
2G060AB18
2G060AE19
2G060AF07
2G060BA03
2G060BB02
2G060BB16
2G060BB18
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】基板に対するガス感応部の密着性に優れたMEMS型接触燃焼式ガス検知素子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子1は、基板11と、基板11上に設けられるガス感応部12と、ガス感応部12を覆う触媒層13とを備え、ガス感応部12が、触媒材料と、基板11と接着する接着材料とを含むことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板上に設けられるガス感応部と、
前記ガス感応部を覆う触媒層と
を備えるMEMS型接触燃焼式ガス検知素子であって、
前記ガス感応部が、触媒材料と、前記基板と接着する接着材料とを含む、
MEMS型接触燃焼式ガス検知素子。
【請求項2】
前記ガス感応部に含まれる触媒材料が、前記触媒層に含まれる触媒材料と同じ種類の触媒材料である、
請求項1に記載のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子。
【請求項3】
前記ガス感応部が、触媒材料としてパラジウム担持アルミナと、接着材料としてシリカ担持アルミナおよび/または酸化スズを含み、
前記触媒層が、パラジウム担持アルミナを含む、
請求項1に記載のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子。
【請求項4】
前記ガス感応部における前記接着材料と前記触媒材料との重量比が、1:1~1:4である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS型接触燃焼式ガス検知素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可燃性ガスを検知するガス検知素子として、接触燃焼式ガス検知素子が用いられている。接触燃焼式ガス検知素子は、触媒材料を含むガス感応部を加熱し、加熱されたガス感応部と可燃性ガスが接触して燃焼する現象を利用して、可燃性ガスを検知する。たとえば、特許文献1には、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術によって製造された接触燃焼式ガス検知素子が開示されている。このようなMEMS型接触燃焼式ガス検知素子では、小型化されることで、消費電力が抑えられ、電池でも長期間の駆動が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-15521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MEMS型接触燃焼式ガス検知素子では、触媒材料を含むガス感応部が基板上に形成される。ところが、MEMS型接触燃焼式ガス検知素子では、ガス感応部と基板との間の密着性が悪く、ガス感応部が基板から剥離するという問題がある。ガス感応部が基板から剥離すると、可燃性ガスに対する感度が低下し、可燃性ガスを検知できなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、基板に対するガス感応部の密着性に優れたMEMS型接触燃焼式ガス検知素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子は、基板と、基板上に設けられるガス感応部と、前記ガス感応部を覆う触媒層とを備えるMEMS型接触燃焼式ガス検知素子であって、前記ガス感応部が、触媒材料と、前記基板と接着する接着材料とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、前記ガス感応部に含まれる触媒材料が、前記触媒層に含まれる触媒材料と同じ種類の触媒材料であることが好ましい。
【0008】
前記ガス感応部が、触媒材料としてパラジウム担持アルミナと、接着材料としてシリカ担持アルミナおよび/または酸化スズを含み、前記触媒層が、パラジウム担持アルミナを含むことが好ましい。
【0009】
前記ガス感応部における前記接着材料と前記触媒材料との重量比が、1:1~1:4であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板に対するガス感応部の密着性に優れたMEMS型接触燃焼式ガス検知素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るMEMS型接触燃焼式ガス検知素子を備えるガスセンサの平面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3】8つの実施例1のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子のそれぞれから得られたセンサ出力(ゼロ出力)の経時変化を示すグラフである。
図4】7つの比較例1のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子から得られたセンサ出力(ゼロ出力)の経時変化を示すグラフである。
図5】実施例2のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子から得られた、可燃性ガスのガス濃度に対するセンサ出力の関係を示すグラフである。
図6】(a)および(b)はそれぞれ、比較例1および比較例2のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子から得られた、可燃性ガスのガス濃度に対するセンサ出力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るMEMS型接触燃焼式ガス検知素子(以下、単に「ガス検知素子」という)を説明する。ただし、以下に示す実施形態は一例であり、本発明のガス検知素子は、以下の例に限定されることはない。
【0013】
本実施形態のガス検知素子1は、たとえば大気などの環境雰囲気において、環境雰囲気に含まれる可燃性ガスを検知するために用いられる。ガス検知素子1の検知対象となる可燃性ガスとしては、ガス検知素子1と接触して燃焼する性質を有するガスであり、たとえば、水素、メタン、エタン、ブタン、イソブタン、プロパン、アセチレン、一酸化炭素などが例示される。
【0014】
ガス検知素子1は、可燃性ガスの燃焼熱により加熱されることにより抵抗値が変化することに基づいて可燃性ガスを検知する。ガス検知素子1は、所定の温度以上に加熱されることで、ガス検知素子1の周辺に存在する可燃性ガスを燃焼させる。ガス検知素子1は、燃焼した可燃性ガスの燃焼熱を受けて加熱され、それによりガス検知素子1の抵抗値が増加する。ガス検知素子1は、この抵抗値の増加に基づいて、可燃性ガスの存在を検知する。ガス検知素子1の抵抗値の増加量は、環境雰囲気中の可燃性ガスのガス濃度に応じて変化するので、ガス検知素子1は、この抵抗値の増加量に基づいて、環境雰囲気中の可燃性ガスのガス濃度を検知する。
【0015】
ガス検知素子1は、本実施形態では、図1および図2に示されるように、環境の変化など、可燃性ガスの燃焼以外の温度変化に基づく、ガス検知素子1の抵抗値の変化を補正する(温度補償する)ための補償素子2とともにガスセンサ素子GSを構成する。ガスセンサ素子GSは、ガス検知素子1および補償素子2を備え、金属配線3および金属パッド4を介して、公知のブリッジ回路(図示せず)に組み込まれてガスセンサの一部として機能する。本実施形態では、ガス検知素子1は、ブリッジ回路において所定の電圧が印加されることで加熱されるとともに、抵抗値の変化が検知されるように構成されている。ガスセンサ素子GSを含むブリッジ回路は、たとえば、ブリッジ回路において印加する電圧を制御し、ブリッジ回路で出力されるセンサ出力から可燃性ガスのガス濃度を算出する制御部や、可燃性ガスのガス濃度を表示する表示部、算出されたガス濃度が所定の閾値よりも高い場合に警告を通知する通知部などを備えたガス検知器に組み込まれて使用される。
【0016】
ガス検知素子1および補償素子2は、本実施形態では、互いに抵抗値が略等しくなるように設定される。したがって、環境雰囲気中に可燃性ガスが存在しない場合には、ブリッジ回路が平衡状態となって、ブリッジ回路にはセンサ出力が生じない。一方、環境雰囲気中に可燃性ガスが存在すると、可燃性ガスの燃焼によって、補償素子2よりもガス検知素子1の温度が上昇して抵抗値が大きくなるため、ブリッジ回路の平衡がくずれ、ブリッジ回路にはセンサ出力が生じる。ガス検知素子1は、このセンサ出力を検知することで、環境雰囲気中の可燃性ガスを検知する。そして、ガス検知素子1は、このセンサ出力と環境雰囲気中の可燃性ガスのガス濃度との相関関係(たとえば比例関係)に基づいて、環境雰囲気中の可燃性ガスのガス濃度を検知する。なお、ガス検知素子1は、上記構成に限定されることはなく、ガスセンサ素子GSとは別に、単独で、または他の補償素子とともに、ブリッジ回路に組み込んで使用することもできる。
【0017】
ガス検知素子1は、図1および図2に示されるように、MEMS(Micro Electro Mechanical System)型として形成されている。MEMS型とは、シリコン基板などの基板11の上に微細加工技術によって素子構成要素の少なくとも一部を集積化したデバイス構造のことを意味する。ガス検知素子1は、MEMS型として形成されることにより、コイル型として形成される場合と比べて、小型化が可能で、低消費電力での駆動が可能である。なお、本実施形態では、補償素子2もまた、MEMS型として形成される。
【0018】
ガス検知素子1は、図1および図2に示されるように、基板11と、基板11上に設けられるガス感応部12と、ガス感応部12を覆う触媒層13とを備えている。本実施形態では、ガス検知素子1はさらに、ガス感応部12に覆われるように設けられる抵抗体14を備えている。なお、本実施形態では、補償素子2は、ガス検知素子1から触媒層13を取り除き、ガス検知素子1のガス感応部12から後述する触媒材料を取り除いたのと同じ層構成を有している。
【0019】
基板11は、ガス感応部12、触媒層13および抵抗体14(ならびに後述する絶縁皮膜15)を支持する。基板11は、本実施形態では、図1および図2に示されるように、基板本体11aと、基板本体11a上に形成された絶縁支持膜11bとを備えている。絶縁支持膜11bは、その下面で基板本体11aに接触して基板本体11a上に形成された部分と、基板本体11aから離間して基板本体11aの空洞11c上に設けられた部分とを含んでいる。ガス感応部12、触媒層13および抵抗体14(ならびに絶縁皮膜15)は、空洞11c上に設けられた絶縁支持膜11bの部分に設けられている。これによって、ガス感応部12、触媒層13および抵抗体14から基板本体11aへの熱拡散を抑制できるために、ガス感応部12、触媒層13および抵抗体14を効率よく加熱できるとともに、ガス検知素子1の抵抗値変化を精度よく検知することができる。基板11は、ガス感応部12、触媒層13および抵抗体14(ならびに絶縁皮膜15)を支持することができれば、特に限定されることはなく、シリコン基板などにより構成することができる。基板本体11aおよび絶縁支持膜11bはそれぞれ、シリコンおよびシリコン酸化膜などにより構成することができる。
【0020】
抵抗体14は、本実施形態では、加熱電極および抵抗変化検出電極として機能する。抵抗体14は、金属配線3を介して電圧が印加されることで加熱されて、ガス感応部12および触媒層13を加熱する。また、抵抗体14は、ガス感応部12および触媒層13を介して可燃性ガスの燃焼熱を受けて加熱されて抵抗値が変化する。ガス検知素子1は、この抵抗体14の抵抗値の変化を検知することで、可燃性ガスを検知する。抵抗体14は、加熱電極および抵抗変化検出電極として機能すればよく、特に限定されることはないが、本実施形態では、図1および図2に示されるように、基板11(絶縁支持膜11b)上において、シリコン酸化膜などの電気絶縁性を有する絶縁皮膜15に覆われて、絶縁皮膜15を介してガス感応部12に覆われるように設けられている。抵抗体14は、絶縁皮膜15に覆われることで、ガス感応部12および触媒層13との間の電子授受が抑制されるとともに、耐熱性が向上する。ただし、抵抗体14は、絶縁皮膜15に覆われることなく、ガス感応部12に直接覆われるように設けられてもよい。抵抗体14は、たとえば、スパッタリングなどの成膜技術を用いて白金などが成膜されることにより形成される。なお、本実施形態では抵抗体14が加熱電極および抵抗変化検出電極として兼用されているが、加熱電極および抵抗変化検出電極が別々に設けられてもよい。
【0021】
ガス感応部12は、所定の温度に加熱されることで可燃性ガスの燃焼を促進し、可燃性ガスの燃焼熱を受けてさらに加熱される部位である。ガス感応部12は、図2に示されるように、基板11(絶縁支持膜11b)に直接または間接的に接触して、基板11(絶縁支持膜11b)上に設けられる。ガス感応部12は、本実施形態では、抵抗体14を覆う絶縁皮膜15に接触して、絶縁皮膜15を介して基板11(絶縁支持膜11b)に間接的に接触して設けられている。ただし、ガス感応部12は、絶縁皮膜15が設けられない場合は、絶縁皮膜15を介することなく、基板11(絶縁支持膜11b)に直接接触するように設けられてもよい。ガス感応部12は、触媒材料と、基板11(絶縁支持膜11b)と接着する接着材料とを含んでいる。ガス感応部12は、触媒材料とともに接着材料を含むことにより、基板11(絶縁支持膜11b)または絶縁皮膜15との間に優れた密着性を得ることができる。これにより、ガス感応部12が基板11(絶縁支持膜11b)または絶縁皮膜15から剥離することが抑制されて、可燃性ガスに対する感度の低下などが抑制される。
【0022】
ガス感応部12に含まれる触媒材料(以下、「感応部用触媒材料」という)は、可燃性ガスの燃焼を促進する材料である。感応部用触媒材料は、可燃性ガスの燃焼を促進することができれば、特に限定されることはなく、可燃性ガスの燃焼を促進する触媒金属を含む材料として構成することができる。感応部用触媒材料としては、たとえば触媒金属を触媒担体に担持させた微粉体状の材料を用いることができる。触媒金属としては、白金、パラジウム、ロジウムなどの白金族金属が用いられ、その中でもパラジウムが好適に用いられる。触媒担体としては、アルミナ、シリカアルミナなどの金属酸化物が用いられ、その中でもアルミナが好適に用いられる。したがって、ガス感応部12は、触媒材料としてパラジウム担持アルミナ(パラジウムを担持したアルミナ)を含むことが好ましい。触媒金属担持触媒担体は、特に限定されることはないが、触媒機能を高めるとともに、触媒金属同士の凝集を抑制して、触媒活性が低下することによる経時的な燃焼効率の低下を抑制するという観点から、触媒金属と触媒担体との重量比が1:2~1:6であるもの、好ましくは1:3~1:5であるもの、さらに好ましくは1:4であるものを用いることができる。
【0023】
ガス感応部12に含まれる接着材料は、基板11(絶縁支持膜11b)または絶縁皮膜15に対するガス感応部12の密着性を向上させる材料である。接着材料は、基板11(絶縁支持膜11b)または絶縁皮膜15に対するガス感応部12の密着性を向上させることができれば、特に限定されることはなく、基板11(絶縁支持膜11b)または絶縁皮膜15との接着性に優れた微粉体状の金属酸化物を用いることができる。その中でも、ガス感応部12は、接着材料としてシリカ担持アルミナ(シリカを担持したアルミナ)や酸化スズを含むことが好ましい。ガス感応部12は、接着材料として、シリカ担持アルミナおよび酸化スズのいずれか一方を含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。特に、接着材料は、親和性の観点から、ガス感応部12が直接密着する絶縁支持膜11bまたは絶縁皮膜15と同一材料を含むことがさらに好ましい。したがって、接着材料は、本実施形態のように絶縁支持膜11bまたは絶縁皮膜15がシリコン酸化物により構成される場合には、シリカ担持アルミナを含むことがさらに好ましい。シリカ担持アルミナは、特に限定されることはないが、接着機能を高めるとともに、シリカの担持性を高めるという観点から、シリカとアルミナとの重量比が1:2~1:6であるもの、好ましくは1:3~1:5、さらに好ましくは1:4であるものを用いることができる。また、酸化スズは、特に限定されることはないが、抵抗体14が絶縁皮膜15で覆われていない場合には、ガス感応部12の抵抗体14に対する絶縁性を高めるという観点から、ドナーとしてのアンチモンやセリウムなどの金属元素が添加されないものを用いることが好ましい。ただし、酸化スズは、抵抗体14が絶縁皮膜15で覆われている場合には、金属元素が添加されて低抵抗特性を有していても構わない。
【0024】
ガス感応部12は、触媒材料および接着材料を含んでいればよく、その混合比は特に限定されない。たとえば、可燃性ガスの燃焼をさらに促進し、可燃性ガスの感度をさらに向上させるという観点から、接着材料と触媒材料との重量比が1:1以上、すなわち触媒材料重量/接着材料重量が1以上であることが好ましく、接着材料と触媒材料との重量比が1:2以上、すなわち触媒材料重量/接着材料重量が2以上であることがさらに好ましい。また、基板11(絶縁支持膜11b)または絶縁皮膜15に対するガス感応部12の密着性をさらに向上させるという観点から、接着材料と触媒材料との重量比が1:4以下、すなわち触媒材料重量/接着材料重量が4以下であることが好ましく、接着材料と触媒材料との重量比が1:3以下、すなわち触媒材料重量/接着材料重量が3以下であることがさらに好ましい。
【0025】
ガス感応部12は、触媒材料および接着材料を含んでいればよく、その混合形態は特に限定されない。本実施形態では、ガス感応部12内において、触媒材料および接着材料が、ガス感応部12の平面方向および深さ方向で互いに混ざり合って、略均一な濃度分布で配置されている。ただし、接着材料の少なくとも一部が基板11(絶縁支持膜11b)または絶縁皮膜15に接触して配置されていれば、触媒材料および接着材料は、ガス感応部12の平面方向および/または深さ方向で偏って配置されていてもよく、たとえば、ガス感応部12の深さ方向において、基板11側で接着材料の濃度が高く、触媒層13側で触媒材料の濃度が高くなるように配置されてもよい。
【0026】
ガス感応部12は、触媒材料および接着材料を含んでいればよく、その形成方法は特に限定されない。たとえば、ガス感応部12は、いずれも微粉体状の触媒材料および接着材料を公知のバインダおよび分散剤と混合してペースト状にしたものを基板11(絶縁支持膜11b)または絶縁皮膜15上に塗布し、300~600℃程度の、バインダおよび分散剤を揮発させて残存させない温度に加熱することで触媒材料および接着材料を焼結させることにより形成することができる。
【0027】
触媒層13は、ガス感応部12とともに、所定の温度に加熱されることで可燃性ガスの燃焼を促進し、可燃性ガスの燃焼熱を受けてさらに加熱される部位である。触媒層13は、本実施形態では、図2に示されるように、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、ガス感応部12に接触して、ガス感応部12を覆うように設けられる。触媒層13は、触媒材料を含んで構成される。
【0028】
触媒層13に含まれる触媒材料(以下、「触媒層用触媒材料」という)は、可燃性ガスの燃焼を促進する材料である。触媒層用触媒材料は、可燃性ガスの燃焼を促進することができれば、特に限定されることはなく、可燃性ガスの燃焼を促進する触媒金属を含む材料として構成することができる。触媒層用触媒材料としては、たとえば触媒金属を触媒担体に担持させた微粉体状の材料を用いることができる。触媒金属としては、白金、パラジウム、ロジウムなどの白金族金属が用いられ、その中でもパラジウムが好適に用いられる。触媒担体としては、アルミナ、シリカアルミナなどの金属酸化物が用いられ、その中でもアルミナが好適に用いられる。したがって、触媒層13は、触媒材料としてパラジウム担持アルミナ(パラジウムを担持したアルミナ)を含むことが好ましい。触媒金属担持触媒担体は、特に限定されることはないが、触媒機能を高めるとともに、触媒金属同士の凝集を抑制して、触媒活性が低下することによる経時的な燃焼効率の低下を抑制するという観点から、触媒金属と触媒担体との重量比が1:2~1:6であるもの、好ましくは1:3~1:5であるもの、さらに好ましくは1:4であるものを用いることができる。
【0029】
ここで、ガス感応部12に含まれる触媒材料(ガス感応部用触媒材料)は、触媒層13に含まれる触媒材料(触媒層用触媒材料)と同じ種類の触媒材料であることが好ましい。ガス感応部用触媒材料と触媒層用触媒材料とが互いに同じ種類の触媒材料であるとは、少なくとも、ガス感応部用触媒材料における触媒金属が、触媒層用触媒材料における触媒金属と同じ種類であることを意味する。たとえば、ガス感応部用触媒材料および触媒層用触媒材料のいずれにおいても、触媒金属をパラジウムとすることができる。ガス感応部用触媒材料および触媒層用触媒材料に同じ種類の触媒金属を用いることで、ガス検知素子1の可燃性ガスに対する感度を向上させることができる。また、ガス感応部用触媒材料における触媒金属だけでなく触媒担体もまた、触媒層用触媒材料における触媒担体と同じ種類であってもよい。たとえば、ガス感応部用触媒材料および触媒層用触媒材料のいずれにおいても、触媒担体をアルミナとすることができる。ガス感応部用触媒材料と触媒層用触媒材料とが互いに同じ種類の触媒金属および触媒担体であることにより、ガス感応部12と触媒層13との間の親和性が向上し、互いに対する密着性が向上する。
【0030】
触媒層13は、触媒材料を含んでいればよく、その形成方法は特に限定されない。たとえば、触媒層13は、ガス感応部12とは別に、ガス感応部12が形成された後に、ガス感応部12上に形成される。たとえば、触媒層13は、微粉体状の触媒材料を公知のバインダおよび分散剤と混合してペースト状にしたものをガス感応部12上に塗布し、300~600℃程度の、バインダおよび分散剤を揮発させて残存させない温度に加熱することで触媒材料を焼結させることにより形成することができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0032】
(1)基板と、基板上に設けられるガス感応部と、前記ガス感応部を覆う触媒層とを備えるMEMS型接触燃焼式ガス検知素子であって、前記ガス感応部が、触媒材料と、前記基板と接着する接着材料とを含む、MEMS型接触燃焼式ガス検知素子。
【0033】
上記構成によれば、基板に対するガス感応部の密着性を向上させることができる。
【0034】
(2)前記ガス感応部に含まれる触媒材料が、前記触媒層に含まれる触媒材料と同じ種類の触媒材料である、(1)に記載のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子。
【0035】
上記構成によれば、可燃性ガスに対する感度を向上させることができる。
【0036】
(3)前記ガス感応部が、触媒材料としてパラジウム担持アルミナと、接着材料としてシリカ担持アルミナおよび/または酸化スズを含み、前記触媒層が、パラジウム担持アルミナを含む、(1)または(2)に記載のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子。
【0037】
上記構成によれば、基板に対するガス感応部の密着性をさらに向上させることができるとともに、可燃性ガスに対する感度をさらに向上させることができる。
【0038】
(4)前記ガス感応部における前記接着材料と前記触媒材料との重量比が、1:1~1:4である、(1)~(3)のいずれかに記載のMEMS型接触燃焼式ガス検知素子。
【0039】
上記構成によれば、可燃性ガスの燃焼をさらに促進し、可燃性ガスに対する感度をさらに向上させることができるとともに、基板に対するガス感応部の密着性をさらに向上させることができる。
【実施例0040】
以下において、実施例をもとに本実施形態のガス検知素子の優れた効果を説明する。ただし、本発明のガス検知素子は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例のガス検知素子)
実施例のガス検知素子として、図1および図2に示されるガス検知素子を作製した。基板は、シリコン基板とし、絶縁支持膜は、シリコン酸化膜とした。絶縁支持膜上に白金で抵抗体を形成し、抵抗体上にシリコン酸化物で絶縁皮膜を形成した。ガス検知素子のガス感応部および触媒層は、以下の要領で形成した。なお、補償素子としては、ガス検知素子から触媒層を除き、ガス検知素子のガス感応部から触媒金属であるパラジウムを除いた、図1および図2に示される補償素子を作製した。
【0042】
ガス感応部を形成するために、触媒材料として微粉体状のパラジウム担持アルミナを、接着材料として微粉体状のシリカ担持アルミナをそれぞれ用意した。パラジウム担持アルミナとしては、パラジウム20wt%およびアルミナ80wt%のものを用いた。シリカ担持アルミナとしては、シリカ20wt%およびアルミナ80wt%のものを用いた。接着材料と触媒材料との重量比は、1:3(実施例1)および1:4(実施例2)とした。ガス感応部は、いずれも微粉体状の触媒材料および接着材料を公知のバインダおよび分散剤と混合してペースト状にしたものを基板(絶縁支持膜)上の絶縁皮膜上に塗布し、バインダおよび分散剤を揮発させて残存させない温度に加熱することで触媒材料および接着材料を焼結させることにより形成した。ガス感応部の膜厚は、10~20μmの範囲とした。
【0043】
触媒層を形成するために、触媒材料として微粉体状のパラジウム担持アルミナを用意した。パラジウム担持アルミナとしては、パラジウム20wt%およびアルミナ80wt%のものを用いた。触媒層は、微粉体状の触媒材料を公知のバインダおよび分散剤と混合してペースト状にしたものをガス感応部上に塗布し、バインダおよび分散剤を揮発させて残存させない温度に加熱することで触媒材料を焼結させることにより形成した。触媒層の膜厚は、50~60μmの範囲とした。
【0044】
(比較例のガス検知素子)
比較例1のガス検知素子として、微粉体状のパラジウム担持アルミナを触媒材料として用い、その触媒材料のみを基板(絶縁支持膜)上の絶縁皮膜上に焼結させたものを作製した。パラジウム担持アルミナとしては、パラジウム20wt%およびアルミナ80wt%のものを用いた。触媒材料の焼結は、実施例のガス検知素子の触媒層と同様の方法で行なった。焼結体の膜厚は、50~60μmの範囲とした。
【0045】
比較例2のガス検知素子として、実施例のガス検知素子のガス感応部から触媒材料を除いた構成のものを作製した。比較例2のガス検知素子は、ガス感応部に触媒材料が含まれないことを除いて、実施例のガス検知素子と同じ材料を用いて同じ方法で作製した。実施例のガス検知素子のガス感応部に対応する、接着材料のみの部位の膜厚は、8~12μmの範囲とし、実施例のガス検知素子の触媒層に対応する部位の膜厚は、50~60μmの範囲とした。
【0046】
(ガス検知素子のゼロ出力の経時変化)
実施例1のガス検知素子を8つと、比較例1のガス検知素子を7つとを用意し、それぞれのガス検知素子を補償素子とともにブリッジ回路に組み込んで、可燃性ガスを含まない大気環境下でセンサ出力(ゼロ出力)の経時変化を調べた。経時期間中は、ガス検知素子を20℃、60%RHの環境下で保管した。センサ出力(ゼロ出力)測定時におけるガス検知素子および補償素子の加熱温度は500℃とした。
【0047】
図3は、8つの実施例1のガス検知素子のそれぞれから得られたセンサ出力(ゼロ出力)の経時変化を示すグラフであり、図4は、7つの比較例1のガス検知素子のそれぞれから得られたセンサ出力(ゼロ出力)の経時変化を示すグラフである。図4の比較例1のガス検知素子では、いずれのガス検知素子においても経時初期にゼロ出力が急激に上昇し、特に1つの比較例1のガス検知素子ではゼロ出力が大きく上昇している。このことは、比較例1のガス検知素子では、経時初期において、触媒材料のみにより形成された皮膜が絶縁皮膜から、ひいては基板(絶縁支持膜)から剥離したことを示している。それに対して、図3の実施例1のガス検知素子では、いずれのガス検知素子においても、経時に伴ってわずかにゼロ出力が低下しているものの、経時に伴う大きな変動は見られない。このことは、実施例1のガス検知素子では、比較例1のガス検知素子で見られるような、ガス感応部の剥離が生じていないことを示している。以上のことから、ガス感応部が触媒材料だけでなく接着材料を含むことにより、絶縁皮膜に対する、ひいては基板(絶縁支持膜)に対するガス感応部の密着性を向上させることができることが分かる。
【0048】
(ガス検知素子の感度)
実施例2のガス検知素子および比較例1、2のガス検知素子のそれぞれを補償素子とともにブリッジ回路に組み込んで、可燃性ガスを含む大気環境下でセンサ出力を測定した。可燃性ガスとしては、それぞれ様々な濃度の水素(H2)、メタン(CH4)、イソブタン(i-C410)を用いた。センサ出力測定時におけるガス検知素子および補償素子の加熱温度は500℃とした。
【0049】
図5は、実施例2のガス検知素子から得られた、可燃性ガスのガス濃度に対するセンサ出力の関係を示すグラフであり、図6(a)、(b)はそれぞれ、比較例1、2のガス検知素子から得られた、可燃性ガスのガス濃度に対するセンサ出力の関係を示すグラフである。図5図6(a)、(b)とを対比すると、実施例2のガス検知器のメタンおよびイソブタンについてのセンサ出力が、比較例1、2のガス検知器のメタンおよびイソブタンについてのセンサ出力よりも高い。このことは、メタンおよびイソブタンに対する感度が、比較例2のガス検知素子よりも実施例2のガス検知素子の方が高いことを示している。以上のことから、ガス感応部および触媒層の両方に触媒材料が含まれることにより、可燃性ガスに対する感度が向上することが分かる。
【符号の説明】
【0050】
1 MEMS型接触燃焼式ガス検知素子(ガス検知素子)
11 基板
11a 基板本体
11b 絶縁支持膜
11c 空洞
12 ガス感応部
13 触媒層
14 抵抗体
15 絶縁皮膜
2 補償素子
3 金属配線
4 金属パッド
GS ガスセンサ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6