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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169167
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】建築物とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20241128BHJP
   E02D 29/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E02D5/20 101
E02D29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086409
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山黒 寛矢
【テーマコード(参考)】
2D049
2D147
【Fターム(参考)】
2D049EA02
2D049EA08
2D049GB05
2D049GC11
2D049GD03
2D049GE01
2D147AB08
(57)【要約】
【課題】建物の地下部の側壁に対して、ソイルセメント柱列式連続壁が接合されてなる建築物に関し、建物から芯材に作用する引抜力に対する引抜抵抗力が高められた建築物とその施工方法を提供すること。
【解決手段】地盤G内にあって建物10の備える地下部11の少なくとも側壁15と、建物10の周囲に設けられているソイルセメント柱列式連続壁20とが接合され、ソイルセメント柱列式連続壁20は、ソイルセメント30の内部に芯材40が埋設されている、建築物200であり、芯材40には、その下端47とソイルセメント30の下端35の間の下方領域38に延びる鋼製の延伸部材60が接合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内にあって建物の備える地下部の少なくとも側壁と、前記建物の周囲に設けられているソイルセメント柱列式連続壁とが接合され、前記ソイルセメント柱列式連続壁は、ソイルセメントの内部に芯材が埋設されている、建築物であって、
前記芯材には、該芯材の下端と前記ソイルセメントの下端の間の下方領域に延びる鋼製の延伸部材が接合されていることを特徴とする、建築物。
【請求項2】
前記延伸部材が、軸状部材であることを特徴とする、請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記軸状部材が、直線状の部材であることを特徴とする、請求項2に記載の建築物。
【請求項4】
前記軸状部材が鉄筋であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の建築物。
【請求項5】
前記軸状部材が形鋼材であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の建築物。
【請求項6】
前記側壁の下端から前記延伸部材の下端までの範囲にある、前記ソイルセメントと周辺の地盤との間の周面摩擦力が、少なくとも前記側壁から前記芯材に作用する引抜力以上となるように、前記延伸部材における前記芯材の下端から下方への延伸長さが設計されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の建築物。
【請求項7】
前記芯材にシアコネクタが接合され、該シアコネクタが前記地下部の側壁に埋設されることにより、前記側壁と前記ソイルセメント柱列式連続壁が接合されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の建築物。
【請求項8】
地盤内にあって建物の備える地下部の少なくとも側壁と、前記建物の周囲に設けられているソイルセメント柱列式連続壁とが接合されている、建築物の施工方法であって、
削孔内のソイルセメントの内部に、建物側の第1フランジと、前記建物と反対側の第2フランジと、ウェブとを備えるH形鋼により形成されている芯材を建て込むことにより、ソイルセメント柱列式連続壁を施工する、A工程と、
前記ソイルセメント柱列式連続壁の上端にあるソイルセメントを切削して、前記第1フランジの一部を露出させ、前記第1フランジの露出部にシアコネクタを接合する、B工程と、
前記建物のうち、前記第1フランジと当接する少なくとも前記側壁を施工し、前記側壁に前記シアコネクタを埋設することにより、前記地下部の側壁と前記ソイルセメント柱列式連続壁とを相互に接合する、C工程と、を有し、
前記A工程において、前記芯材には、該芯材の下端と前記ソイルセメントの下端の間の下方領域に延びる鋼製の延伸部材が接合されていることを特徴とする、建築物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山留め壁には、親杭横矢板壁や鋼製矢板壁等の既製矢板壁と、柱列山留め壁や連続地中壁等の場所打ち壁とがあり、柱列山留め壁には、場所打ち鉄筋コンクリート柱列山留め壁や鋼管柱列山留め壁、ソイルセメント柱列山留め壁(ソイルセメント柱列式連続壁)等がある。
【0003】
例えば上記するソイルセメント柱列式連続壁は仮設構造物である一方、本設構造物である建物の備える地下部の側壁と連結されることにより、ソイルセメント柱列式連続壁を本設構造物である建築物の基礎の一部として利用する形態も存在する。このように、ソイルセメント柱列式連続壁を山留め壁としてのみならず、本設構造物の基礎の一部としても利用することにより、本設構造物の基礎の構造をよりシンプルにでき、例えば基礎のコンクリート数量や鉄筋数量を低減できることから、施工コストの大幅な削減を図ることができる。例えば、特許文献1には、ソイルセメント柱列壁の構築後に建物の地下構造を施工する際に、ソイルセメント柱列壁にシアコネクタ等を取り付け、ソイルセメント柱列壁と建物の地下構造とを一体に構築する方法が提案されている。
【0004】
ここで、上記するソイルセメント柱列式連続壁を本設構造物である建築物の基礎の一部として利用する形態の具体的な構成を、図5図6を参照して説明する。図5は、建築物の一例を示す縦断面図であり、図6は、図5のVI-VI矢視図である。
【0005】
図示例の建築物100は、地盤G内にある建物10の備える地下部11の側壁15及び底盤17と、建物10の周囲に施工されているソイルセメント柱列式連続壁20とが接合されることにより、構成されている。例えば平面視矩形の建物10の地下部11の側壁15の周囲に、平面視矩形枠状のソイルセメント柱列式連続壁20が造成され、複数箇所にて双方が接合される。図5は、建物10の側壁15と底盤17、柱16の一部のみを取り出して図示している。
【0006】
ソイルセメント柱列式連続壁20は、平面視円形のソイルセメント30の一部が相互にラップするようにして造成され、平面視円形の削孔G1内にあるソイルセメント30の内部には、ウェブ41と、建物10側にある第1フランジ42と、建物10と反対側の第2フランジ43とを有する、H形鋼により形成される芯材40が埋設されている。ここで、芯材40は一般に、その下端47とソイルセメント30の下端35の離間t1が1m程度となるようにソイルセメント30内に挿入されることになる。
【0007】
ソイルセメント30に埋設される芯材40のうち、上方の建物10側の第1フランジ42には、複数のシアコネクタ50が溶接等により接合されて側方に張り出し、張り出しているシアコネクタ50が地下部11の側壁15や底盤17に埋設されることにより、建物10とソイルセメント柱列式連続壁20の一体化が図られている。建物10の自重や、建物が地震時に変位した際に生じる押込力N1は、建物10からシアコネクタ50を介して芯材40に伝達される。
【0008】
芯材40のウェブ41の下方には、複数のシアコネクタ45が溶接等により接合されてウェブ41の側方に張り出し、ソイルセメント30の内部に埋設されている。芯材40に伝達された押込力N1は、芯材40の先端や周面、シアコネクタ45を介して芯材40の周囲のソイルセメント30に伝達され、ソイルセメント30と周囲の地盤Gとの間の周面摩擦力を介して押込力N1がソイルセメント30から周囲の地盤Gに伝達されることにより、ソイルセメント柱列式連続壁20の支持力が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4466418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、地下水位が高いケースでは、ソイルセメント柱列式連続壁20に止水性が期待されることになるが、芯材40の下端付近にある地盤が透水性の砂質地盤等である場合は、ソイルセメント30のみを下方にある粘性土等の不透水層や難透水層まで伸ばし、地下水のX1方向への回り込みを防止する対策が講じられることになる。例えば、図7に示すように、ソイルセメント30のみが、下方にある不透水層GA等まで伸ばされることにより、地下水の回り込みが防止される。土留め壁として必要な強度を備えた芯材40の長さと不透水層GAの位置等に応じて、離間t2の長さは10m乃至20m程度に及ぶこともあり得る。
【0011】
ここで、図7に示すように、仮に建物10の側壁15を介して芯材40に引抜力N2が作用した際には、芯材40の下端47もしくはその近傍にてソイルセメント30に割れCが入り易くなる。そのため、芯材40に作用する引抜力N2に対しては、側壁15の下端(もしくは建物10の下端)から芯材40の下端47までの範囲t3にある、ソイルセメント30と周辺の地盤Gとの間の周面摩擦力F1が引抜抵抗力として抵抗することになる。この際、引抜力N2が周面摩擦力F1よりも大きな場合には、十分に引抜力N2に抗することができない。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、建物の地下部の側壁に対して、ソイルセメント柱列式連続壁が接合されてなる建築物に関し、建物から芯材に作用する引抜力に対する引抜抵抗力が高められた建築物とその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明による建築物の一態様は、
地盤内にあって建物の備える地下部の少なくとも側壁と、前記建物の周囲に設けられているソイルセメント柱列式連続壁とが接合され、前記ソイルセメント柱列式連続壁は、ソイルセメントの内部に芯材が埋設されている、建築物であって、
前記芯材には、該芯材の下端と前記ソイルセメントの下端の間の下方領域に延びる鋼製の延伸部材が接合されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、芯材において、その下端とソイルセメントの下端の間の下方領域に延びる鋼製の延伸部材が接合されていることにより、建物の側壁から芯材に引抜力が作用した際に、芯材の下端近傍におけるソイルセメントに割れが生じることが延伸部材によって抑制もしくは抑止され、例えば芯材の下端から延伸部材の下端までの範囲のソイルセメントと周辺地盤との間の周面摩擦力を引抜抵抗力に見込むことができる。このことにより、建物の地下部の側壁に対して、ソイルセメント柱列式連続壁が接合された建築物において、建物から芯材に作用する引抜力に対する引抜抵抗力を高めることができる。さらに、この引抜抵抗力を高めるに当たり、例えば芯材の長さを土留めとしての強度を確保できる長さよりも必要以上に長くすることなく、芯材に対して延伸部材を単に溶接接合する構成であることから、材料コストを含む施工コストを抑制しながら、ソイルセメント柱列式連続壁の引抜抵抗力を高めることができる。
【0015】
ここで、「建物の少なくとも側壁と」とは、建物の(地下部)側壁の他に、側壁と底盤の双方が含まれる。
【0016】
また、本発明による建築物の他の態様は、
前記延伸部材が、軸状部材であることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、延伸部材がシンプルな軸状部材であることにより、材料コストを含む施工コストをより一層抑制しながら、ソイルセメント柱列式連続壁の引抜抵抗力を高めることができる。ここで、「軸状部材」には、細長の直線状の部材や、細長の螺旋状の部材等が含まれる。
【0018】
また、本発明による建築物の他の態様は、
前記軸状部材が、直線状の部材であることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、軸状部材が直線状の部材であることにより、芯材の下方に延伸部材が取り付けられている状態でソイルセメント内に挿入される際に、ソイルセメントから延伸部材に作用する抵抗力を可及的に小さくすることができるため、芯材の挿入性を含むソイルセメント柱列式連続壁の施工性を良好にでき、ソイルセメント内に挿入される芯材の鉛直精度を高めることができる。
【0020】
また、本発明による建築物の他の態様は、
前記軸状部材が鉄筋であることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、軸状部材が一般に市販される鉄筋であることにより、材料コストを含む施工コストをより一層抑制しながら、ソイルセメント柱列式連続壁の引抜抵抗力を高めることができる。ここで、「鉄筋」には、異形棒鋼と丸鋼の他に、PC(Prestressed Concrete)鋼棒等も含んでよい。
【0022】
また、本発明による建築物の他の態様は、
前記軸状部材が形鋼材であることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、軸状部材が一般に市販される形鋼材であることにより、材料コストを含む施工コストをより一層抑制しながら、ソイルセメント柱列式連続壁の引抜抵抗力を高めることができる。ここで、「形鋼材」には、溝形鋼や山形鋼の他、平鋼も含んでよい。
【0024】
また、本発明による建築物の他の態様は、
前記側壁の下端から前記延伸部材の下端までの範囲にある、前記ソイルセメントと周辺の地盤との間の周面摩擦力が、少なくとも前記側壁から前記芯材に作用する引抜力以上となるように、前記延伸部材における前記芯材の下端から下方への延伸長さが設計されていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、側壁の下端から延伸部材の下端までの範囲にある、ソイルセメントと周辺の地盤との間の周面摩擦力が芯材に作用する引抜力以上となるように、延伸部材における芯材の下端から下方への延伸長さが設計されていることにより、作用する引抜力に抗し得る引抜抵抗力を備えたソイルセメント柱列式連続壁を有する建築物となる。ここで、「周面摩擦力が芯材に作用する引抜力以上となるように」とは、周面摩擦力が引抜力と同じ値以上となるように設計される方法や、周面摩擦力が引抜力に安全率を乗じた値以上に設計される方法等が含まれる。
【0026】
また、本発明による建築物の他の態様は、
前記芯材にシアコネクタが接合され、該シアコネクタが前記地下部の側壁に埋設されることにより、前記側壁と前記ソイルセメント柱列式連続壁が接合されることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、芯材の上方に設けられているシアコネクタが地下部の側壁に埋設され、側壁とソイルセメント柱列式連続壁が接合されることにより、建物から作用する押込み荷重と引抜き荷重をシアコネクタを介して芯材に有効に伝達することができ、芯材を含むソイルセメント柱列式連続壁にて押込み荷重と引抜き荷重の双方を負担することが可能になる。ここで、シアコネクタには、スタッドジベルやバーリングシアコネクタ等が含まれる。
【0028】
また、本発明による建築物の施工方法の一態様は、
地盤内にあって建物の備える地下部の少なくとも側壁と、前記建物の周囲に設けられているソイルセメント柱列式連続壁とが接合されている、建築物の施工方法であって、
削孔内のソイルセメントの内部に、建物側の第1フランジと、前記建物と反対側の第2フランジと、ウェブとを備えるH形鋼により形成されている芯材を建て込むことにより、ソイルセメント柱列式連続壁を施工する、A工程と、
前記ソイルセメント柱列式連続壁の上端にあるソイルセメントを切削して、前記第1フランジの一部を露出させ、前記第1フランジの露出部にシアコネクタを接合する、B工程と、
前記建物のうち、前記第1フランジと当接する少なくとも前記側壁を施工し、前記側壁に前記シアコネクタを埋設することにより、前記地下部の側壁と前記ソイルセメント柱列式連続壁とを相互に接合する、C工程と、を有し、
前記A工程において、前記芯材には、該芯材の下端と前記ソイルセメントの下端の間の下方領域に延びる鋼製の延伸部材が接合されていることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、芯材においてその下端とソイルセメントの下端の間の下方領域に延びる鋼製の延伸部材が接合されていることにより、芯材の下方に延伸部材が取り付けられている状態でソイルセメント内に挿入される際に、ソイルセメントから延伸部材に作用する抵抗力を可及的に小さくすることができるため、芯材の挿入性を含むソイルセメント柱列式連続壁の施工性を良好にでき、ソイルセメント内に挿入される芯材の鉛直精度を高めることができる。延伸部材が直線状で軸状の部材である、鉄筋等である場合は、この効果がより一層顕著になる。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明から理解できるように、本発明の建築物とその施工方法によれば、建物の地下部の側壁に対して、ソイルセメント柱列式連続壁が接合されてなる建築物に関し、建物から芯材に作用する引抜力に対する引抜抵抗力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態に係る建築物の一例を示す縦断面図であって、かつ、実施形態に係る建築物の施工方法の一例のC工程を説明する図である。
図2図1のII-II矢視図である。
図3】実施形態に係る建築物の施工方法の一例のA工程を説明する図である。
図4】実施形態に係る建築物の施工方法の一例のB工程を説明する図である。
図5】従来の建築物の一例を示す縦断面図である。
図6図5のVI-VI矢視図である。
図7】従来の建築物の他の例を示す縦断面図であって、ソイルセメントのみが下方の不透水層まで延びた状態で施工されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施形態に係る建築物とその施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0033】
[実施形態に係る建築物]
はじめに、図1図2を参照して、実施形態に係る建築物の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る建築物の一例を示す縦断面図であり、図2は、図1のII-II矢視図である。尚、図1は、実施形態に係る建築物の施工方法の一例のC工程を説明する図でもあり、以下で詳説する施工方法の際にも参照する。
【0034】
図示する建築物200は、地盤G内にある建物10の備える地下部11の側壁15及び底盤17と、建物10の周囲に施工されているソイルセメント柱列式連続壁20とが接合されることにより、構成されている。例えば平面視矩形の建物10の地下部11の側壁15の周囲には、平面視矩形枠状のソイルセメント柱列式連続壁20が造成され、複数箇所にて双方が接合される。尚、建物10の平面視形状は多様であり、建物10の平面視形状に応じた枠状にソイルセメント柱列式連続壁20が造成される。
【0035】
建物10は、RC(Reinforced Concrete、鉄筋コンクリート)造、S(Steel、鉄骨)造、SRC(Steel Reinforced Concrete、鉄骨鉄筋コンクリート)造や、これらのハイブリッド構造の建物のいずれであってもよく、建物10には、オフィスビルやマンション、体育館やショッピングモール、各種公共建物等、様々な形態が含まれる。以下、図示例では、少なくとも地下部11の側壁15と底盤17がRC造の建物として説明する。
【0036】
一方、ソイルセメント柱列式連続壁20は、平面視円形のソイルセメント30の一部が相互にラップするようにして造成され、平面視円形の削孔G1内にあるソイルセメント30の内部には、H形鋼により形成される芯材40が埋設されている。ここで、芯材としては、H形鋼の他、鋼矢板やコンクリート二次製品等が適用されてもよい。
【0037】
ソイルセメント30は、地盤Gを掘削することにより発生する土砂と、多軸混練オーガー機等(図示せず)の先端から吐出されるセメントミルクを混合撹拌することにより造成され、硬化前のソイルセメントの内部に芯材40が挿入されることにより構築される。
【0038】
図示例のソイルセメント柱列式連続壁20は、建物10を施工する際の山留め壁であることに加えて、建物10が施工された後は、建物10の地下部11に接合されることにより、建物10の基礎として機能する。
【0039】
図示例のソイルセメント30は、地盤Gの下方にある不透水層GAにその下端35が埋め込まれるように造成されており、ソイルセメント30が不透水層GAまで延びていることにより、地下水の建物10側への回り込み(図7参照)が防止される。
【0040】
これに対して、芯材40は、土留め壁としての要求強度を満たす長さを有しており、従って、図示例では、芯材40の下端47のレベルに比べて不透水層GAの深度が深いことから、芯材40に比べてソイルセメント30の長さが通常よりも長く設定されている。
【0041】
ソイルセメント30に埋設される芯材40のうち、上方の建物10側の第1フランジ42には、複数のシアコネクタ50が溶接接合されて側方に張り出し、張り出しているシアコネクタ50が地下部11の側壁15や底盤17に埋設されることにより、建物10とソイルセメント柱列式連続壁20の一体化が図られている。
【0042】
ソイルセメント柱列式連続壁20において、ソイルセメント30に埋設される芯材40の下方には、芯材40の下端47とソイルセメント30の下端35の間の下方領域38に延びる鋼製の延伸部材60が接合されている。
【0043】
延伸部材60は、直線状の鉄筋(異形棒鋼、丸鋼)であり、図示例は、図2に示すように、第1フランジ42と第2フランジ43の外周面に2本ずつと、ウェブ41の中央位置に2本の計6本の鉄筋60が溶接接合されている。ここで、芯材40に接合される鉄筋60の本数やその径は、必要な引抜抵抗力(鉄筋によって付加される引抜抵抗力)に応じて様々に設定されてよい。
【0044】
また、延伸部材60には、鉄筋に代わり、溝形鋼や山形鋼、平鋼等の形鋼材が適用されてもよい。
【0045】
延伸部材60が図示例のような鉄筋や形鋼材等であることにより、材料コストを含む施工コストを抑制しながら、ソイルセメント柱列式連続壁20の引抜抵抗力を延伸部材60の引張抵抗力によって高めることができる。
【0046】
また、図示例のように直線状の延伸部材60を適用することにより、ソイルセメント30内に延伸部材60を備えた芯材40を挿入していく際に、延伸部材60がソイルセメント30から受ける抵抗を可及的に小さくすることができるため、延伸部材60の挿入性(施工性)が良好になり、このことに起因して芯材40の建て込み精度を向上させることができる。
【0047】
尚、延伸部材60として例えば螺旋状の鉄筋等を適用してもよいが、上記するソイルセメント30内への挿入性の観点から、延伸部材60は図示例のように直線状の部材であることが好ましい。
【0048】
図1に示す例では、鉄筋60がソイルセメント30の下端35の近傍(例えば1m程度近接したレベル)まで延びている。このように、芯材40の下端47とソイルセメント30の下端35の間の下方領域38に対して、芯材40に溶接接合された複数の鉄筋60が埋設されていることにより、建物10から芯材40に引抜力N2が作用した際に、芯材40の下端47の近傍におけるソイルセメント30に割れC(図7参照)が生じることが複数の鉄筋60の引張抵抗力により防止される。
【0049】
従って、側壁15(建物10)の下端から延伸部材である鉄筋60の下端までの範囲(長さt5)にある、ソイルセメント30と周辺の地盤Gとの間の周面摩擦力F2を、引抜力N2に対抗する引抜抵抗力とすることが可能になり、芯材40の下端47までの範囲(図7に示す長さt3)に比べて、ソイルセメント柱列式連続壁20の引抜抵抗力を格段に大きくすることができる。
【0050】
[実施形態に係る建築物の施工方法]
次に、図3及び図4と、図1を参照して、実施形態に係る建築物の施工方法の一例について説明する。ここで、図3図4はそれぞれ、実施形態に係る建築物の施工方法の一例のA工程とB工程を説明する図である。また、既述するように、図1は、実施形態に係る建築物の一例を示す縦断面図であって、かつ、実施形態に係る建築物の施工方法の一例のC工程を説明する図である。
【0051】
建築物の施工方法では、まず、図3に示すように、建物の構築に先行して、建物の構築エリアの周囲に、山留め壁として、例えば平面視矩形枠状のソイルセメント柱列式連続壁20を施工する。
【0052】
ソイルセメント柱列式連続壁20の施工方法は、公知のSMW(Soil Mixing Wall)工法等が適用でき、地中障害物の撤去にはじまり、ガイドウォール(図示せず)を設置し、ソイルセメントの配合を行い、設計配合のセメントスラリーを多軸混練オーガー機等のオーガーヘッドの先端から吐出しながら削孔混連し、所定深度に到達後に反復混連を行いながらオーガーヘッドを引き上げることにより、削孔G1内にソイルセメント30を造成する。
【0053】
そして、ソイルセメント30が硬化する前に、ソイルセメント30の内部に芯材40をX1方向に挿入して建て込みを行う。また、造壁手順としては、第1エレメントを造成し、次いで、間隔を置いて第2エレメントを造成し、次いで、第3エレメントの両端の孔を第1エレメントと第2エレメントの双方の一方端の孔にラップさせながら造成する、連続方式や、各エレメントの孔が追随する位置に間隔を置いて複数の孔を先行削孔しておき、次いで、各エレメントの孔を先行削孔された孔にラップさせるようにして各エレメントを造成する、先行削孔併用方式などが適用できる。
【0054】
この芯材40の建て込みに際して、芯材40の下方には、軸状で直線状の複数の延伸部材60(鉄筋)が溶接接合されている。
【0055】
このように、芯材40の下方に取り付けられている延伸部材60が直線状の鉄筋であることにより、ソイルセメント30内への芯材40の挿入に際して延伸部材60に作用するソイルセメント30からの抵抗を可及的に小さくすることができ、延伸部材60を備えた芯材40のスムーズな挿入を実現でき、芯材40のソイルセメント30内への建て込み性が良好になることから、建て込み精度も向上する(以上、A工程)。
【0056】
次いで、図4に示すように、ソイルセメント柱列式連続壁20のうち、建物側の上方領域31を切削して、第1フランジ42の一部を露出させる。
【0057】
次いで、露出した第1フランジ42に対して、複数のシアコネクタ50を溶接接合する(以上、B工程)。
【0058】
次いで、図1に示すように、建物10のうち、少なくとも第1フランジ42と当接する地下部11の側壁15と底盤17を施工し、側壁15と底盤17に複数のシアコネクタ50が埋設されることにより、地下部11の側壁15及び底盤17とソイルセメント柱列式連続壁20とを相互に接合する。
【0059】
その後、建物10の全体を施工することにより、建物10とソイルセメント柱列式連続壁20とが相互に接合された建築物200が施工される(以上、C工程)。
【0060】
図示例の施工方法によれば、建物から作用する引抜力N2に対する引抜抵抗力の高いソイルセメント柱列式連続壁20を一体に備えている建築物200を施工することができる。
【0061】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0062】
10:建物
11:地下部
15:側壁
16:柱
17:底盤
20:ソイルセメント柱列式連続壁
30:ソイルセメント
31:上方領域
38:下方領域
40:芯材(H形鋼)
41:ウェブ
41a:広幅面
42:第1フランジ
43:第2フランジ
50:シアコネクタ
60:延伸部材(軸状部材、直線状の部材、鉄筋)
200:建築物
G:地盤
G1:削孔
GA:不透水層
N1:押込力
N2:引抜力
F1、F2:周面摩擦力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7