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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169171
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20241128BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241128BHJP
   A62C 3/07 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/00 Z
E02F9/00 M
E02F9/00 N
B60K1/04 Z
A62C3/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086419
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 薫
【テーマコード(参考)】
2D015
3D235
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D235AA19
3D235BB13
3D235BB36
3D235BB43
3D235BB45
3D235CC14
3D235HH08
(57)【要約】
【課題】ショベルにおいて、蓄電装置の発火時の消火や異常な過熱状態での発火の抑制を図ることが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回自在に搭載される上部旋回体3と、油圧アクチュエータHAと、油圧アクチュエータHAの動力源の蓄電装置19と、蓄電装置19に向けて消火剤を送り入れるための送入口82と、送入口82と蓄電装置19との間を接続し、消火剤を送入口82から蓄電装置19に送るための供給管84と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータと、
前記アクチュエータの動力源の蓄電部と、
前記蓄電部に向けて消火剤を送り入れるための送入口と、を備える、
ショベル。
【請求項2】
前記送入口は、前記蓄電部よりも下方にある、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記送入口と前記蓄電部との間を接続し、前記消火剤を前記送入口から前記蓄電部に送るための管路を備える、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項4】
前記蓄電部を外部の電源で充電するためのケーブルを接続する充電口を備え、
前記送入口及び前記充電口は、互いに独立して設けられる、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項5】
前記蓄電部の筐体は、前記筐体の内部に前記消火剤が入るための入口と、前記筐体の内部の前記消火剤が外部に排出される出口と、を有し、
前記入口よりも前記出口の方が上方にある、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項6】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、を備え、
前記送入口は、前記上部旋回体の下部に設けられる、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項7】
冷媒により前記蓄電部を冷却するための冷却部を備え、
前記送入口を含む消火用設備は、前記冷却部とは独立して設けられる、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項8】
前記蓄電部は、複数の単位電池を含み、
前記送入口から送り入れられた前記消火剤は、前記単位電池に接触する、
請求項1又は2に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動ショベルやハイブリッドショベル等、アクチュエータの動力源としての蓄電部(例えば、バッテリ)を搭載するショベルが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-77853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、蓄電部の発火や発火の可能性がある蓄電部の異常な過熱状態には言及されていない。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、ショベルにおいて、蓄電部の発火時の消火や異常な過熱状態での発火の抑制を図ることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの動力源の蓄電装置と、
前記蓄電装置に向けて消火剤を送り入れるための送入口と、を備える、
ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、ショベルにおいて、蓄電部の発火時の消火や異常な過熱状態での発火の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ショベルの一例を示す外観図である。
図2】ショベルのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】ショベルの各種構成要素の配置構造の一例を示す上面図である。
図4】ショベルにおける蓄電装置及び消火用設備の配置構造の一例を示す前面図である。
図5】蓄電装置、及び消火剤の供給管の配置構造の一例を示す斜視図である。
図6】蓄電モジュールの構造の一例を示す断面図である。
図7】ショベルにおける消火剤の送入口の一例を示す斜視図である。
図8】ショベルの電気駆動系及び電源系の構成要素の冷却装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0010】
[ショベルの概要]
図1を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明をする。
【0011】
図1は、ショベル100の一例を示す外観図である。具体的には、図1は、ショベル100の一例を示す側面図である。以下、ショベル100の上面視でアタッチメントATが延び出す方向(図2の上方向)を"前"と規定して、ショベル100における方向、或いは、ショベル100から見た方向を説明する場合がある。
【0012】
図1に示すように、ショベル100は、下部走行体1と、上部旋回体3と、ブーム4、アーム5、及び、バケット6を含むアタッチメントATと、キャビン10とを備える。
【0013】
下部走行体1は、左右一対のクローラを用いて、ショベル100を走行させる。左右のクローラは、それぞれ、走行油圧モータ1ML,1MR(図2参照)で油圧駆動される。これにより、下部走行体1は、自走することができる。
【0014】
上部旋回体3は、旋回機構2を介して下部走行体1に旋回自在に搭載される。例えば、上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Mで旋回機構2が油圧駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回することができる。
【0015】
ブーム4は、左右方向に沿う回転軸を中心として俯仰可能なように、上部旋回体3の前部中央に取り付けられる。アーム5は、左右方向に沿う回転軸を中心として回転可能なように、ブーム4の先端に取り付けられる。バケット6は、左右方向に沿う回転軸を中心として回転可能なように、アーム5の先端に取り付けられる。
【0016】
バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、例えば、掘削作業や法面作業や整地作業等に用いられる。
【0017】
バケット6は、ショベル100の作業内容に応じて、適宜交換可能な態様で、アーム5の先端に取り付けられている。つまり、アーム5の先端には、バケット6に代えて、バケット6とは異なる種類のバケット、例えば、相対的に大きい大型バケット、法面用バケット、浚渫用バケット等が取り付けられてもよい。また、アーム5の先端には、バケット以外の種類のエンドアタッチメント、例えば、攪拌機、ブレーカ、クラッシャー等が取り付けられてもよい。また、アーム5と、エンドアタッチメントとの間には、例えば、クイックカップリングやチルトローテータ等の予備アタッチメントが設けられてもよい。
【0018】
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
【0019】
本例では、ショベル100は、後述の如く、ポンプ用電動機12を動力源とするメインポンプ14(図2参照)から供給される作動油で全ての被駆動要素が油圧駆動される。つまり、本例では、ショベル100は、いわゆる油圧ショベルの原動機(エンジン)をポンプ用電動機12に置換した形態に対応する。
【0020】
尚、ショベル100の被駆動要素の一部又は全部が電気駆動されてもよい。例えば、上部旋回体3は、旋回機構2を通じて、旋回用電動機で電気駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回してもよい。
【0021】
キャビン10は、オペレータが搭乗し、ショベル100を操作するための操縦室である。キャビン10は、例えば、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0022】
例えば、ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、下部走行体1(即ち、左右の一対のクローラ)、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を動作させる。
【0023】
また、ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータによって操作可能に構成されるのに代えて、或いは、加えて、ショベル100の外部から遠隔操作(リモート操作)が可能に構成されてもよい。ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。また、ショベル100が遠隔操作専用である場合、キャビン10は省略されてもよい。以下、オペレータの操作には、キャビン10のオペレータの操作装置26に対する操作、及び外部のオペレータの遠隔操作の少なくとも一方が含まれる前提で説明を進める。
【0024】
例えば、遠隔操作には、ショベル100と通信可能な遠隔操作支援装置で行われるショベル100のアクチュエータに関する操作入力によって、ショベル100が操作される態様が含まれる。
【0025】
遠隔操作支援装置は、例えば、ショベル100の作業を作業現場の外部から管理する管理センタ等に設けられる。また、遠隔操作支援装置は、可搬型の操作端末であってもよく、この場合、オペレータは、ショベル100の周辺からショベル100の作業状況を直接確認しながらショベル100の遠隔操作を行うことができる。
【0026】
ショベル100は、例えば、自身に搭載される通信装置を通じて、自身に搭載される撮像装置が出力する撮像画像に基づくショベル100の前方を含む周辺の様子を表す画像(以下、「周辺画像」)を遠隔操作支援装置に送信してよい。また、ショベル100は、通信装置を通じて、撮像装置の出力する撮像画像を遠隔操作支援装置に送信し、遠隔操作支援装置は、ショベル100から受信する撮像画像を加工して周辺画像を生成してもよい。そして、遠隔操作支援装置は、ショベル100の前方を含む周辺の様子を表す周辺画像を自身の表示装置に表示させてよい。また、キャビン10の内部の出力装置50(表示装置)に表示される各種の情報画像(情報画面)は、同様に、遠隔操作支援装置の表示装置にも表示されてよい。これにより、遠隔操作支援装置を利用するオペレータは、例えば、表示装置に表示されるショベル100の周辺の様子を表す画像や情報画面等の表示内容を確認しながら、ショベル100を遠隔操作することができる。そして、ショベル100は、通信装置により遠隔操作支援装置から受信される、遠隔操作の内容を表す遠隔操作信号に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を駆動してよい。
【0027】
また、遠隔操作には、例えば、ショベル100の周囲の人(例えば、作業者)のショベル100に対する外部からの音声入力やジェスチャ入力等によって、ショベル100が操作される態様が含まれてもよい。具体的には、ショベル100は、自身に搭載される音声入力装置(例えば、マイクロフォン)やジェスチャ入力装置(例えば、撮像装置)等を通じて、周囲の作業者等により発話される音声や作業者等により行われるジェスチャ等を認識する。そして、ショベル100は、認識した音声やジェスチャ等の内容に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1(左右のクローラ)、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を駆動してもよい。
【0028】
また、ショベル100は、オペレータの操作の内容に依らず、自動でアクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、アタッチメントAT等の被駆動要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能、即ち、いわゆる「自動運転機能」を実現することができる。自動運転機能は、「マシンコントロール(Machine Control:MC)機能」とも称する。
【0029】
自動運転機能には、例えば、半自動運転機能が含まれる。半自動運転機能は、「操作支援型のMC機能」とも称する。半自動運転機能は、オペレータの操作に応じて、操作対象の被駆動要素(アクチュエータ)以外の被駆動要素(アクチュエータ)を自動で動作させる機能である。また、自動運転機能には、完全自動運転機能が含まれてもよい。完全自動運転機能は、「完全自動型のMC機能」とも称する。完全自動運転機能は、オペレータの操作がない前提で、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能である。ショベル100において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、ショベル100が完全自動運転専用である場合、キャビン10は省略されてもよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、例えば、ルールベースの自動運転機能が含まれる。ルールベースの自動運転機能は、自動運転の対象の被駆動要素(アクチュエータ)の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様の自動運転機能である。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、自律運転機能が含まれてもよい。自律運転機能は、ショベル100が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自動運転の対象の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が決定される態様の自動運転機能である。
【0030】
また、ショベル100の作業が遠隔監視されてもよい。この場合、遠隔操作支援装置と同様の機能を有する遠隔監視支援装置が設けられてもよい。これにより、遠隔監視支援装置のユーザである監視者は、遠隔監視支援装置の表示装置に表示される周辺画像を確認しながら、ショベル100の作業の状況を監視することができる。また、例えば、監視者は、安全性の観点から必要と判断した場合、遠隔監視支援装置の入力装置を用いて、所定の入力を行うことによって、ショベル100のオペレータによる操作や自動運転に介入しショベル100を緊急停止させることができる。
【0031】
[ショベルの構成]
次に、図1に加えて、図2図8を参照して、ショベル100の構成について説明する。
【0032】
図2は、ショベル100のハードウェア構成の一例を示す図である。図3は、ショベル100の各種構成要素の配置構造の一例を示す上面図である。図4は、ショベル100における蓄電装置19及び消火用設備80の配置構造の一例を示す前面図である。図5は、蓄電装置19、及び消火剤の供給管84の配置構造の一例を示す斜視図である。図6は、蓄電モジュール19MDの構造の一例を示す断面図である。図7は、ショベル100における消火剤の送入口82の一例を示す斜視図である。図8は、ショベル100の電気駆動系及び電源系の構成要素の冷却装置60の一例を示す図である。
【0033】
尚、図2では、機械的動力が伝達される経路は二重線、油圧アクチュエータを駆動する高圧の作動油が流れる経路は太い実線、パイロット圧が伝達される経路は破線、電力が伝達される経路は細い実線、及び電気信号が伝達される経路は点線でそれぞれ示される。また、図3では、上部旋回体3の内部に搭載される構成要素を露出させるために上部旋回体3の外板部(「ハウス部」とも称する)の記載が省略されると共に、キャビン10が破線で記載されている。
【0034】
ショベル100は、油圧駆動系、電気駆動系、電源系、操作系、冷却系、ユーザインタフェース系、制御系、及び消火系等のそれぞれの構成要素を含む。
【0035】
<油圧駆動系>
ショベル100の油圧駆動系は、被駆動要素の油圧駆動に関する構成要素群である。
【0036】
図2に示すように、ショベル100の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1(左右のクローラ)、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素のそれぞれを駆動する油圧アクチュエータHAを含む。また、本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、ポンプ用電動機12と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17と、作動油タンクTとを含む。
【0037】
油圧アクチュエータHAには、走行油圧モータ1ML,1MR、旋回油圧モータ2M、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等が含まれる。
【0038】
例えば、図3に示すように、旋回油圧モータ2Mは、上部旋回体3の旋回軸3X付近に配置されるように、上部旋回体3の底部3B(「旋回フレーム」とも称する)に搭載される。これにより、旋回油圧モータ2Mは、下部走行体1に対して旋回軸3Xを中心に回転可能に構成される旋回機構2を駆動し上部旋回体3を旋回させることができる。
【0039】
ポンプ用電動機12は、ショベル100の原動機である。ポンプ用電動機12は、例えば、IPM(Interior Permanent Magnet)モータである。ポンプ用電動機12は、インバータ18を介して蓄電装置19と接続される。ポンプ用電動機12は、インバータ18を介して蓄電装置19から供給される三相交流電力で力行運転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。ポンプ用電動機12の駆動制御は、後述するコントローラ30Bの制御下で、インバータ18により実行されてよい。
【0040】
例えば、図3に示すように、ポンプ用電動機12は、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、及びインバータ18と共に、上部旋回体3の後部の左右方向の中央部から右端部に亘る範囲に配置される。具体的には、ポンプ用電動機12は、回転軸が左右方向に沿い、且つ、出力軸が右向きに延び出すように配置されてよい。例えば、ポンプ用電動機12は、インバータ18と一体的に構成され、マウント部材を介して、上部旋回体3の底部3Bに搭載される。具体的には、ポンプ用電動機12は、機械駆動可能な態様で連結されるメインポンプ14及びパイロットポンプ15の位置が極力低くなるように、相対的に底部3Bと近接する位置に配置されてよい。これにより、メインポンプ14の位置を作動油タンクTの内部の液面よりも低く配置させることができる。そのため、メインポンプ14におけるエア噛みの発生を抑制することができる。
【0041】
尚、ショベル100の原動機として、ポンプ用電動機12に加えて、エンジンが搭載されてもよい。つまり、ショベル100は、いわゆるハイブリッドショベルであってもよい。
【0042】
メインポンプ14は、作動油タンクTから作動油を吸い込み、高圧油圧ライン16に吐出することにより、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、ポンプ用電動機12により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、後述するコントローラ30Aの制御下で、レギュレータ(不図示)が斜板の角度(傾転角)を制御する。これにより、メインポンプ14は、ピストンのストローク長を調整し、吐出流量や吐出圧を調整することができる。
【0043】
例えば、図3に示すように、ポンプ用電動機12は、その入力軸がポンプ用電動機12の出力軸に連結される態様で、ポンプ用電動機12の右側に隣接して配置される。メインポンプ14は、例えば、ポンプ用電動機12に連結されることにより、ポンプ用電動機12を介して、上部旋回体3の底部3Bに搭載される。
【0044】
コントロールバルブ17は、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作の内容、或いは、自動運転機能に対応する操作指令に応じて、油圧アクチュエータHAを駆動する。コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載される。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ライン16を介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、オペレータの操作、或いは、自動運転機能に対応する操作指令に応じて、それぞれの油圧アクチュエータHAに選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータHAのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の制御弁(方向切換弁)を含むバルブユニットであってよい。メインポンプ14から供給され、コントロールバルブ17や油圧アクチュエータを通流した作動油は、コントロールバルブ17から作動油タンクTに排出される。
【0045】
例えば、図3に示すように、コントロールバルブ17は、上部旋回体3の後部の左右方向の中央部で、且つ、ポンプ用電動機12の上に配置される。例えば、ポンプ用電動機12及びメインポンプ14は、上部旋回体3における底部3Bとハウス部との間の空間の相対的に低い位置に配置され、コントロールバルブ17は、その空間の相対的に高い位置に配置される。具体的には、ポンプ用電動機12を前後方向で跨ぐように設けられる架台17MTが底部3Bに取り付けられる。そして、コントロールバルブ17は、架台17MTの上に取り付けられることにより、架台17MTを介して、底部3Bに搭載される。
【0046】
作動油タンクTは、油圧駆動系及び操作系で利用される作動油を貯留する。
【0047】
例えば、図3に示すように、作動油タンクTは、旋回油圧モータ2Mとポンプ用電動機12及びコントロールバルブ17との間の前後方向の空間に配置される。作動油タンクTは、例えば、直接或いはブラケット等を介して、上部旋回体3の底部3Bに搭載される。
【0048】
<電気駆動系>
ショベル100の電気駆動系は、ショベル100の原動機の電気駆動や被駆動要素の電気駆動に関する構成要素群である。
【0049】
図2に示すように、ショベル100の電気駆動系は、ポンプ用電動機12と、センサ12sと、インバータ18とを含む。
【0050】
尚、ショベル100の電気駆動系は、上述の如く、被駆動要素の一部又は全部が電気駆動される場合、被駆動要素を駆動する電動アクチュエータや電動アクチュエータを駆動するインバータ等を含んでもよい。
【0051】
センサ12sは、電流センサ12s1と、電圧センサ12s2と、回転状態センサ12s3とを含む。
【0052】
電流センサ12s1は、ポンプ用電動機12の電流を検出する。例えば、電流線さん12s1は、ポンプ用電動機12の三相(U相、V相、及びW相)のうちの少なくとも二相分のそれぞれの電流を検出する。二相の電流の検出値から残りの一相の電流の検出値を演算することができるからである。電流センサ12s1は、例えば、ポンプ用電動機12とインバータ18の間の電力経路に設けられる。また、電流センサ12s1は、インバータ18に内蔵されてもよい。電流センサ12s1により検出されるポンプ用電動機12の電流に対応する検出信号は、通信線を通じて、インバータ18に直接取り込まれる。また、当該検出信号は、通信線を通じて、コントローラ30Bに取り込まれ、コントローラ30B経由で、インバータ18に入力されてもよい。
【0053】
電圧センサ12s2は、ポンプ用電動機12の電圧を検出する。例えば、電圧センサ12s2は、ポンプ用電動機12の三相のそれぞれの印加電圧を検出する。電圧センサ12s2は、例えば、ポンプ用電動機12とインバータ18の間の電力経路に設けられる。また、電圧センサ12s2は、インバータ18に内蔵されてもよい。電圧センサ12s2により検出されるポンプ用電動機12の三相それぞれの印加電圧に対応する検出信号は、通信線を通じて、インバータ18に直接取り込まれる。また、当該検出信号は、通信線を通じて、コントローラ30Bに取り込まれ、コントローラ30B経由で、インバータ18に入力されてもよい。
【0054】
回転状態センサ12s3は、ポンプ用電動機12の回転状態を検出する。ポンプ用電動機12の回転状態には、例えば、回転位置(回転角)、回転速度等が含まれる。回転状態センサ12s3は、例えば、ロータリエンコーダやレゾルバである。回転状態センサ12s3により検出されるポンプ用電動機12の回転状態に対応する検出信号は、通信線を通じて、インバータ18に直接取り込まれる。また、当該検出信号は、通信線を通じて、コントローラ30Bに取り込まれ、コントローラ30B経由で、インバータ18に入力されてもよい。
【0055】
インバータ18は、コントローラ30Bの制御下で、ポンプ用電動機12を駆動制御する。インバータ18は、例えば、直流電力を三相交流電力に変換したり、三相交流電力を直流電力に変換したりする変換回路と、変換回路をスイッチ駆動する駆動回路と、駆動回路の動作を規定する制御信号を出力する制御回路とを含む。制御信号は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0056】
インバータ18の制御回路は、ポンプ用電動機12の動作状態を把握しながら、ポンプ用電動機12の駆動制御を行う。例えば、インバータ18の制御回路は、回転状態センサ12s3の検出信号に基づき、ポンプ用電動機12の動作状態を把握する。また、インバータ18の制御回路は、電流センサ12s1の検出信号及び電圧センサ12s2の検出信号(或いは制御過程で生成する電圧指令値)に基づき、逐次、ポンプ用電動機12の回転軸の回転角等を推定することにより、ポンプ用電動機12の動作状態を把握してもよい。
【0057】
尚、インバータ18の駆動回路及び制御回路の少なくとも一方は、インバータ18の外部に設けられてもよい。
【0058】
<電源系>
ショベル100の電源系は、各種電気機器に電力を供給するための構成要素群である。
【0059】
図2に示すように、ショベル100の電源系は、蓄電装置19と、DC-DCコンバータ44と、バッテリ46と、車載充電器70と、充電口72とを含む。
【0060】
蓄電装置19は、ショベル100のアクチュエータを駆動するための動力源であり、比較的高い出力電圧(例えば、数百ボルト)を有する。蓄電装置19は、外部の商用電源と所定のケーブル(以下、「充電ケーブル」)で接続されることにより充電(蓄電)されると共に、充電(蓄電)された電力をポンプ用電動機12に供給する。蓄電装置19は、例えば、リチウムイオンバッテリである。
【0061】
例えば、図3に示すように、蓄電装置19は、上部旋回体3の右側の前後方向の前部から中央部に亘る範囲に搭載される。
【0062】
例えば、図4図5に示すように、蓄電装置19は、複数の蓄電モジュール19MDが上下方向に積み重ねられ、上下で隣接する蓄電モジュール同士がワイヤハーネス19Cで接続されることにより構成される。本例では、複数の蓄電モジュール19MDが直列接続されており、上下に隣接する蓄電モジュール19MDの一方の正側端子と、他方の負側端子とが1本のワイヤハーネス19Cで接続される。
【0063】
尚、複数の蓄電モジュール19MDの少なくとも一部が並列接続される場合、並列接続の対象の上下に隣接する蓄電モジュール19MDは、互いの正側端子同士及び負側端子同士を接続する2本のワイヤハーネス19Cで接続されてよい。
【0064】
例えば、図5に示すように、蓄電装置19は、最下層の蓄電モジュール19MDに取り付けられるマウント部材19MTを介して、上部旋回体3の底部3Bに搭載される。
【0065】
例えば、図6に示すように、蓄電モジュール19MDは、複数のバッテリモジュールBMDと、筐体19Hとを含む。
【0066】
バッテリモジュールBMDは、複数のバッテリセル(「単位電池」とも称する)が直列接続されることにより構成される組立体である。
【0067】
筐体19Hは、複数のバッテリモジュールBMD等の蓄電モジュール19MDの構成要素を内部に収容する。筐体19Hは、例えば、アルミ合金や鉄等の金属で構成される。
【0068】
例えば、図6に示すように、筐体19Hの内部は、空間SP1,SP2に隔離される。
【0069】
空間SP1は、バッテリモジュールBMD等を収容する空間である。
【0070】
尚、空間SP1には、バッテリモジュールBMDの他、例えば、バッテリマネジメントユニット(BMU:Battery Management Unit)等が収容される。バッテリマネジメントユニットは、蓄電モジュール19MDに内蔵される各種センサと通信を行い、その検出データを逐次取得すると共に、上位のコントローラ30Cと通信を行い、その検出データをコントローラ30Cに送信する。各種センサは、電圧センサ、電流センサ、温度センサ等である。これにより、コントローラ30Cは、バッテリモジュールBMDの状態やバッテリモジュールBMDに含まれる各バッテリセルの状態を監視することができる。
【0071】
空間SP2は、空間SP1の下方、具体的には、筐体19Hの内部空間の底部付近に設けられ、バッテリモジュールBMD等の蓄電モジュール19MDの構成要素の冷却のための冷媒流路に相当する。
【0072】
バッテリモジュールBMDは、空間SP1,SP2を区画する隔壁に相当する空間SP1の床部に載置され、その床部を通じて空間SP2の冷媒と熱交換を行うことができる。これにより、ショベル100の冷却系は、バッテリモジュールBMDを冷却することができる。
【0073】
筐体19Hには、その内部と外部との間を連通する開口OP1~OP3が設けられる。
【0074】
開口OP1は、筐体19Hの内部の空間SP1,SP2のうちの空間SP1のみと連通するように筐体19Hの側面に設けられる。開口OP1には、後述の供給管84が接続される。例えば、開口OP1は、高さ方向(上下方向)において、空間SP1の下部、好ましくは、空間SP1の床面付近に配置される。
【0075】
開口OP2は、筐体19Hの内部の空間SP1,SP2のうちの空間SP2のみと連通するように筐体19Hの側面下部に設けられる。開口OP2には、後述の冷媒流路66Aに相当するホース等が接続される。これにより、開口OP2を通じて空間SP2に冷媒を流入させることができる。また、開口OP2は、更に少なくとも1つ設けられ、後述の冷媒流路66Bに相当するホース等が接続される。これにより、開口OP2を通じて空間SP2から冷媒流路66Bに冷媒を流出させることができる。
【0076】
開口OP3は、筐体19Hの内部の空間SP1,SP2のうちの空間SP1のみと連通するように筐体19Hの側面に設けられる。例えば、開口OP3は、高さ方向(上下方向)において、空間SP1の上部、好ましくは、空間SP1の天井面付近に配置される。つまり、開口OP3は、開口OP1よりも上方にあるように配置される。空間SP1の開口OP3には、ブリーザ19BRが設けられる。
【0077】
ブリーザ19BRは、空間SP1と外部との間の通気を行う。ブリーザ19BRは、圧力開放弁(リリーフバルブ)である。これにより、ブリーザ19BRは、空間SP1の圧力が所定基準に対して相対的に大きくなった場合に開弁し、空間SP1の圧力を低減することができる。一方、ブリーザ19BRは、筐体19Hの外部の作用によって開弁しないように構成される。これにより、筐体19Hの外部から筐体19Hの内部の空間SP1への水や異物等の侵入を抑制することができる。また、ブリーザ19BRは、透湿性の材料で構成されていてもよい。これにより、ブリーザ19BRは、筐体19Hの外部から空間SP1への水や異物等の侵入を抑制しつつ、空間SP1の湿度調整を行うことができる。
【0078】
複数の蓄電モジュール19MDは、それぞれ、略同じ形状の筐体19Hを有する。これにより、上面視で略同じ形状を有することで、容易に、複数の蓄電モジュール19MDを上下方向で積み重ねることができる。
【0079】
尚、蓄電装置19とポンプ用電動機12との間には、蓄電装置19の出力電圧を昇圧してポンプ用電動機12に印加するための電力変換装置が設けられてもよい。また、上述の如く、被駆動要素の一部又は全部が電気駆動される場合、ポンプ用電動機12に代えて、或いは、加えて、被駆動要素を電気駆動する電動アクチュエータに蓄電装置19の電力が供給される。
【0080】
DC-DCコンバータ44は、蓄電装置19から出力される比較的高い電圧の直流電力を比較的低い所定の電圧(例えば、約24ボルト)に降圧し出力する。DC-DCコンバータ44の出力電力は、バッテリ46に供給され、充電(蓄電)されたり、バッテリ46の電力で駆動される電気機器(以下、「低電圧機器」)に供給されたりする。低電圧機器には、例えば、制御装置30に含まれる各種コントローラ(コントローラ30A,30B,30C,30D等)が含まれる。また、低電圧機器には、例えば、後述のウォータポンプ64やファン68等が含まれる。DC-DCコンバータ44は、例えば、上部旋回体3に搭載される。
【0081】
尚、DC-DCコンバータ44は、オルタネータに置換されてもよい。この場合、オルタネータは、上部旋回体3に設けられ、ポンプ用電動機12の動力により発電を行ってよい。オルタネータの発電電力は、DC-DCコンバータ44の場合と同様、バッテリ46に供給され、バッテリ46に充電(蓄電)されたり、低電圧機器に供給されたりする。
【0082】
バッテリ46は、比較的低い出力電圧(例えば、24ボルト)を有し、比較的高い電力を要する電気駆動系以外の低電圧機器に電力を供給する。バッテリ46は、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオンバッテリ等であり、上述の如く、DC-DCコンバータ44の出力電力で充電される。
【0083】
車載充電器70は、インレット72A及びワイヤハーネス74を通じて外部電源から供給される相対的に低い電圧(例えば、100ボルトや200ボルト)の単相交流電力を直流電力に変換する。そして、車載充電器70は、ワイヤハーネス76を通じて、変換後の直流電力を蓄電装置19に出力することにより、蓄電装置19の充電を行う。
【0084】
例えば、図3に示すように、車載充電器70は、上部旋回体3の左側における前後方向の中央部、具体的には、キャビン10の後部の下方に配置される形で、上部旋回体3の底部3Bに搭載される。
【0085】
充電口72は、外部電源から延びる充電ケーブルの先端が差し込まれる形で接続される。
【0086】
例えば、図3に示すように、充電口72は、インレット72A,72Bと、リッド72Cを含む。
【0087】
インレット72Aは、例えば、相対的に低い電圧の単相交流電力を供給可能な外部電源(例えば、商用電源)から延びる充電ケーブルが接続可能に構成される。インレット72Aは、車載充電器70とワイヤハーネス74で接続され、外部電源から供給される電力を、車載充電器70を通じて蓄電装置19に供給する。これにより、蓄電装置19のいわゆる普通充電が実現される。
【0088】
インレット72Bは、例えば、相対的に高い電圧(例えば、400ボルト)の直流電力を供給可能な外部電源から延びる充電ケーブルが接続可能に構成される。インレット72Bは、蓄電装置19とワイヤハーネス78で直接接続され、外部電源から供給される直流電力を蓄電装置19に直接供給する。これにより、蓄電装置19のいわゆる急速充電が実現される。
【0089】
例えば、図3に示すように、インレット72A,72Bは、外板面よりも内側に奥まった凹部の底面に設けられる。
【0090】
リッド72Cは、インレット72A,72Bが設けられる凹部の空間を外側から覆い且つその空間を開閉可能な蓋部材である。これにより、インレット72A,72Bへの外部からの水や異物の付着等を抑制することができる。
【0091】
例えば、図3図7に示すように、充電口72は、上部旋回体3の下部且つ前後方向の中央部の左側面に設けられる。具体的には、充電口72は、上部旋回体3における、キャビン10の後部の下方の左側面に設けられる。図3図7に示すように、充電口72は、通常、インレット72A,72Bがリッド72Cに覆われた状態に保持される一方、蓄電装置19の充電の際に、ユーザがリッド72Cを開ける操作を行うことによって、インレット72A,72Bを露出させることができる。
【0092】
<操作系>
ショベル100の操作系は、被駆動要素の操作に関する構成要素群である。
【0093】
図2に示すように、ショベル100の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26と、油圧制御弁31とを含む。
【0094】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介してショベル100に搭載される各種油圧機器(例えば、油圧制御弁31)にパイロット圧を供給する。これにより、油圧制御弁31は、コントローラ30Aの制御下で、操作装置26の操作内容(例えば、操作量や操作方向)に応じたパイロット圧をコントロールバルブ17に供給することができる。そのため、コントローラ30A及び油圧制御弁31は、オペレータの操作装置26に対する操作内容に応じた被駆動要素(油圧アクチュエータ)の動作を実現することができる。また、油圧制御弁31は、コントローラ30Aの制御下で、遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容に応じたパイロット圧をコントロールバルブ17に供給することができる。また、油圧制御弁31は、コントローラ30Aの制御下で、自動運転機能に対応する操作指令に応じたパイロット圧をコントロールバルブ17に供給することができる。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、ポンプ用電動機12により駆動される。
【0095】
尚、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。この場合、油圧制御弁31等の各種油圧機器には、メインポンプ14から吐出され、減圧弁等を介して所定のパイロット圧に減圧された作動油が供給されてよい。
【0096】
操作装置26は、キャビン10の操縦席のオペレータから手の届く範囲に設けられ、オペレータがそれぞれの被駆動要素(即ち、下部走行体1の左右のクローラ、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等)の操作を行うために用いられる。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの被駆動要素を駆動する油圧アクチュエータHAの操作を行うために用いられる。例えば、図2に示すように、操作装置26は、電気式であり、オペレータによる操作内容に応じた電気信号(以下、「操作信号」)を出力する。操作装置26から出力される操作信号は、コントローラ30Aに取り込まれる。これにより、コントローラ30Aを含む制御装置30は、油圧制御弁31等を制御し、オペレータの操作内容や自動運転機能に対応する操作指令等に合わせて、ショベル100の被駆動要素(アクチュエータ)の動作を制御することができる。
【0097】
操作装置26は、例えば、レバー26A~26Cを含む。レバー26Aは、例えば、前後方向及び左右方向の操作に応じて、アーム5(アームシリンダ8)及び上部旋回体3(旋回動作)のそれぞれに関する操作を受け付け可能に構成される。レバー26Bは、例えば、前後方向及び左右方向の操作に応じて、ブーム4(ブームシリンダ7)及びバケット6(バケットシリンダ9)のそれぞれに関する操作を受け付け可能に構成される。レバー26Cは、例えば、下部走行体1(クローラ1C)の操作を受け付け可能に構成される。
【0098】
尚、コントロールバルブ17が電磁パイロット式の油圧制御弁(方向切換弁)で構成される場合、電気式の操作装置26の操作信号は、コントロールバルブ17に直接入力され、それぞれの油圧制御弁が操作装置26の操作内容に応じた動作を行う態様であってもよい。また、操作装置26は、操作内容に応じたパイロット圧を出力する油圧パイロット式であってもよい。この場合、操作内容に応じたパイロット圧は、コントロールバルブ17に供給される。
【0099】
油圧制御弁31は、コントローラ30Aの制御下で、パイロットポンプ15からパイロットライン25を通じて供給される作動油を用いて、所定のパイロット圧を出力する。油圧制御弁31の二次側のパイロットラインは、コントロールバルブ17に接続され、油圧制御弁31から出力されるパイロット圧は、コントロールバルブ17に供給される。
【0100】
<冷却系>
ショベル100の冷却系は、ショベル100の稼働に伴い発熱する構成要素を冷却するための構成要素群である。
【0101】
図8に示すように、ショベル100の冷却系は、冷却装置60を含む。
【0102】
冷却装置60は、ショベル100における電気駆動系及び電源系の構成要素を冷却するために用いられる。例えば、図8に示すように、冷却装置60による冷却対象の機器には、ポンプ用電動機12、インバータ18、蓄電装置19、DC-DCコンバータ44、車載充電器70等が含まれる。
【0103】
冷却装置60は、ラジエータ62と、ウォータポンプ64と、冷媒回路66と、ファン68を含む。
【0104】
尚、複数の冷却対象ごとの必要な冷却性能に関する条件が満足する限りにおいて、冷媒回路66における冷却対象同士の接続態様は任意であってよい。即ち、複数の冷却対象ごとの必要な冷却性能に関する条件が満足する限りにおいて、冷媒回路66により冷却される複数の冷却対象は、その一部又は全部が直列接続されてもよいし、その一部又は全部が並列接続されてもよい。また、複数の冷却対象ごとの必要な冷却性能に関する条件が満足する限りにおいて、冷媒回路66におけるラジエータ62を起点とする複数の冷却対象の配置の順番は任意であってよい。
【0105】
ラジエータ62は、冷媒回路66内の冷媒(例えば、冷却水)を冷却する。具体的には、ラジエータ62は、周囲の空気と冷媒との間で熱交換を行わせ、冷媒を冷却する。例えば、図3に示すように、ラジエータ62は、上部旋回体3の後部左側の底部3Bに搭載される。
【0106】
ウォータポンプ64は、冷媒回路66内で冷媒を循環させる。ウォータポンプ64は、例えば、DC-DCコンバータ44やバッテリ46から供給される電力で稼働する。
【0107】
冷媒回路66は、冷媒流路66A,66B,66C,66C1,66C2,66D,66D1,66D2,66E,66Fを含む。
【0108】
冷媒流路66Aは、ウォータポンプ64と蓄電装置19との間を接続し、ウォータポンプ64から吐出される冷媒を蓄電装置19の内部或いは周囲の冷媒流路に流入させる。これにより、冷却装置60は、蓄電装置19を冷媒で冷却することができる。蓄電装置19の内部或いは周囲の冷媒流路を通流した冷媒は、冷媒流路66Bに流出する。
【0109】
冷媒流路66B,66B1,66B2は、蓄電装置19と、インバータ18及びDC-DCコンバータ44との間を接続する。冷媒流路66B,66B1,66B2は、蓄電装置19の内部或いは周囲の冷媒流路から流出する冷媒をインバータ18及びDC-DCコンバータ44の内部或いは周囲の冷媒流路に流入させる。具体的には、蓄電装置19にその一端が接続される冷媒流路66Bは、他端で冷媒流路66B1,66B2に分岐し、それぞれ、インバータ18及びDC-DCコンバータ44に接続される。そして、冷媒流路66B1,66B2は、インバータ18及びDC-DCコンバータ44の内部或いは周囲の冷媒流路に冷媒を流入させる。これにより、冷却装置60は、インバータ18及びDC-DCコンバータ44を冷媒で冷却することができる。インバータ18の内部或いは周囲の冷媒流路を通流した冷媒は、冷媒流路66C1に流出する。また、DC-DCコンバータ44の内部或いは周囲の冷媒流路を通流した冷媒は、冷媒流路66C2に流出する。
【0110】
冷媒流路66C,66C1,66C2は、インバータ18及びDC-DCコンバータ44とポンプ用電動機12との間を接続する。冷媒流路66C,66C1,66C2は、インバータ18及びDC-DCコンバータ44の内部或いは周囲の冷媒流路から流出する冷媒をポンプ用電動機12の内部或いは周囲の冷媒流路に流入させる。具体的には、一端がそれぞれにインバータ18及びDC-DCコンバータ44に接続される冷媒流路66C1,66C2は、冷媒流路66Cの一端に合流し、冷媒流路66Cの他端がポンプ用電動機12に接続される。これにより、冷却装置60は、ポンプ用電動機12を冷媒で冷却することができる。ポンプ用電動機12の内部或いは周囲の冷媒流路を通流した冷媒は、冷媒流路66Dに流出する。
【0111】
尚、蓄電装置19とポンプ用電動機12との間に電力変換装置が設けられる場合、当該電力変換装置が冷却装置60により冷却されてもよい。この場合、電力変換装置は、例えば、冷媒回路66において、インバータ18及びDC-DCコンバータ44と並列に配置され、蓄電装置19から流出する冷媒によって冷却される態様であってよい。また、DC-DCコンバータ44は、空冷されてもよい。この場合、冷媒流路66B2,66C2は省略される。また、インバータ18及びDC-DCコンバータ44等の少なくとも一部は、冷媒回路66において、直列に配置されてもよい。
【0112】
冷媒流路66Dは、ポンプ用電動機12と車載充電器70との間を接続し、ポンプ用電動機12の内部或いは周囲の冷媒流路から流出する冷媒を車載充電器70の内部或いは周囲の冷媒流路に流入させる。これにより、冷却装置60は、車載充電器70を冷媒で冷却することができる。車載充電器70の内部或いは周囲の冷媒流路を通流した冷媒は、冷媒流路66Eに流出する。
【0113】
冷媒流路66Eは、車載充電器70とラジエータ62との間を接続し、車載充電器70の内部或いは周囲の冷媒流路から流出する冷媒をラジエータ62に供給する。これにより、冷媒回路66は、電気駆動系や電源系の各種機器を冷却することで、温度が上昇した冷媒をラジエータ62で冷却させて、再度、電気駆動系や電源系の各種機器を冷却可能な状態に戻すことができる。
【0114】
冷媒流路66Fは、ラジエータ62とウォータポンプ64との間を接続し、ラジエータ62により冷却された冷媒をウォータポンプ64に供給する。これにより、ウォータポンプ64は、ラジエータ62により冷却された冷媒を冷媒流路66Aに吐出し、冷媒回路66で循環させることができる。
【0115】
ファン68は、制御装置30(例えば、コントローラ30A)の制御下で稼働し、空気との間で熱交換を行う所定の機器(以下、「熱交換機器」)に向けて送風する。ファン68は、例えば、DC-DCコンバータ44やバッテリ46から供給される電力で稼働する。
【0116】
ファン68は、例えば、図8に示すように、ラジエータ62に向けて送風し、ラジエータ62を冷却してよい。これにより、ラジエータ62の周囲には、内部を通流する冷媒との間で熱交換を行うことが可能な空気が逐次供給されることになり、ラジエータ62による冷媒の冷却度合いを高めることができる。
【0117】
ファン68は、1つであってもよいし、複数であってもよい。つまり、ファン68は、熱交換機器に必要な熱交換度合い(冷却度合い)を確保可能であれば、任意の個数が設けられてよい。例えば、図3に示すように、ファン68は、上部旋回体3の後部左側の底部3Bに搭載されるラジエータ62の右側に配置される。
【0118】
尚、ショベル100の冷却系は、油圧駆動系の高圧油圧ライン16や操作系のパイロットライン25等で利用される作動油を冷却するオイルクーラを含んでもよい。オイルクーラは、例えば、コントロールバルブ17と作動油タンクTとの間の戻り油路に設けられ、周囲の空気と内部を通流する作動油との間で熱交換を行い、作動油を冷却してよい。この場合、ファン68は、オイルクーラに向けて送風し、オイルクーラを冷却してもよい。これにより、オイルクーラの周囲には、内部を通流する作動油との間で熱交換を行うことが可能な空気が逐次供給されることになり、オイルクーラによる作動油の冷却度合いを高めることができる。この場合、ラジエータ62に対する送風を行うファンと、オイルクーラに対する送風を行うファンとは共通のファン68であってもよいし、互いに異なるファン68であってもよい。
【0119】
<ユーザインタフェース系>
ショベル100のユーザインタフェース系は、ユーザとショベル100の間のやり取りに関する構成要素群である。
【0120】
図2に示すように、ショベル100のユーザインタフェース系は、操作装置26と、出力装置50と、入力装置52とを含む。
【0121】
出力装置50は、ショベル100のユーザ(例えば、キャビン10のオペレータや外部の遠隔操作のオペレータ)やショベル100の周辺の人(例えば、作業者や作業車両の運転者)等に向けて各種情報を出力する。
【0122】
例えば、出力装置50は、視覚的な方法で各種情報を出力する照明機器や表示装置等を含む。照明機器は、例えば、警告灯(インジケータランプ)等である。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。例えば、図2に示すように、照明機器や表示装置は、キャビン10の内部に設けられ、キャビン10の内部のオペレータ等に視覚的な方法で各種情報を出力してよい。また、照明機器や表示装置は、例えば、上部旋回体3の側面等に設けられ、ショベル100の周囲の作業者等に視覚的な方法で各種情報を出力してもよい。
【0123】
また、出力装置50は、聴覚的な方法で各種情報を出力する音出力装置を含んでもよい(図7参照)。音出力装置には、例えば、ブザーやスピーカ等が含まれる。音出力装置は、例えば、キャビン10の内部及び外部の少なくとも一方に設けられ、キャビン10の内部のオペレータやショベル100の周囲の人(作業者等)に聴覚的な方法で各種情報を出力してよい。
【0124】
また、出力装置50は、操縦席の振動等の触覚的な方法で各種情報を出力する装置を含んでもよい。
【0125】
入力装置52は、ショベル100のユーザからの各種入力を受け付け、受け付けられた入力に対応する信号は、コントローラ30Aに取り込まれる。例えば、図2に示すように、入力装置52は、キャビン10の内部に設けられ、キャビン10の内部のオペレータ等からの入力を受け付ける。また、入力装置52は、例えば、上部旋回体3の側面等に設けられ、ショベル100の周辺の作業者等からの入力を受け付けてもよい。
【0126】
例えば、入力装置52は、ユーザからの機械的な操作による入力を受け付ける操作入力装置を含む。操作入力装置には、表示装置に実装されるタッチパネル、表示装置の周囲に設置されるタッチパッド、ボタンスイッチ、レバー、トグル、操作装置26(レバー装置)に設けられるノブスイッチ等が含まれてよい。
【0127】
また、入力装置52は、ユーザの音声入力を受け付ける音声入力装置を含んでもよい。音声入力装置には、例えば、マイクロフォンが含まれる。
【0128】
また、入力装置52は、ユーザのジェスチャ入力を受け付けるジェスチャ入力装置を含んでもよい。ジェスチャ入力装置には、例えば、ユーザが行うジェスチャの様子を撮像する撮像装置が含まれる。
【0129】
また、入力装置52は、ユーザの生体入力を受け付ける生体入力装置を含んでもよい。生体入力には、例えば、ユーザの指紋、虹彩等の生体情報の入力が含まれる。
【0130】
<制御系>
ショベル100の制御系は、ショベル100の各種制御に関する構成要素群である。
【0131】
図2に示すように、ショベル100の制御系は、制御装置30を含む。また、ショベル100の制御系は、センサ48と、温度センサ54とを含む。
【0132】
制御装置30は、コントローラ30A,30B,30C,30Dを含む。以下、コントローラ30A,30B,30C,30Dを包括的に或いはその中の任意の1つを便宜的に「コントローラ30X」と称する場合がある。
【0133】
尚、コントローラ30B,30C,30Dの一部又は全部の機能は、コントローラ30Aに統合されてもよい。即ち、制御装置30により実現される各種機能は、1つのコントローラにより実現されてもよいし、適宜設定される2以上の数のコントローラにより分散して実現されてもよい。
【0134】
コントローラ30Xは、それぞれの機能が任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。例えば、コントローラ30Xは、CPU(Central Processing Unit)、メモリ装置、補助記憶装置、及びインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。これにより、コントローラ30Xは、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。メモリ装置は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)である。補助記憶装置は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリである。インタフェース装置は、例えば、ショベル100の内部の他の機器と通信を行うための通信インタフェースを含む。また、インタフェース装置は、外部の記憶媒体との間でデータの入出力が可能な外部インタフェースを含んでもよい。これにより、インタフェース装置は、外部インタフェースを通じて、外部の記憶媒体から各種機能を実現するプログラムや各種のデータ等をインストールすることができる。
【0135】
コントローラ30Aは、コントローラ30B,30C,30Dを含む制御装置30を構成する各種コントローラと連携し、ショベル100の駆動制御を行う。
【0136】
コントローラ30Aは、例えば、操作装置26から入力される操作信号に応じて、油圧制御弁31に制御指令を出力し、油圧制御弁31から操作装置26の操作内容に応じたパイロット圧を出力させる。これにより、コントローラ30Aは、電気式の操作装置26の操作内容に対応するショベル100の被駆動要素の動作を実現させることができる。
【0137】
また、ショベル100が遠隔操作される場合、コントローラ30Aは、例えば、遠隔操作に関する制御を行ってもよい。具体的には、コントローラ30Aは、油圧制御弁31に制御指令を出力し、油圧制御弁31から遠隔操作の内容に応じたパイロット圧を出力させてよい。これにより、コントローラ30Aは、遠隔操作の内容に対応するショベル100の被駆動要素の動作を実現させることができる。
【0138】
また、コントローラ30Aは、例えば、自動運転機能に関する制御を行ってもよい。具体的には、コントローラ30Aは、油圧制御弁31に制御指令を出力し、自動運転機能に対応する操作指令に応じたパイロット圧を油圧制御弁31からコントロールバルブ17に作用させてよい。これにより、コントローラ30Aは、自動運転機能に対応するショベル100の被駆動部(油圧アクチュエータ)の動作を実現させることができる。
【0139】
また、コントローラ30Aは、例えば、コントローラ30B~30D等の各種コントローラとの双方向通信に基づき、ショベル100全体(ショベル100に搭載される各種機器)の動作を統合的に制御してよい。
【0140】
コントローラ30Bは、コントローラ30Aから入力される各種情報(例えば、操作装置26の操作信号を含む制御指令等)に基づき、電気駆動系に関する制御を行う。
【0141】
コントローラ30Bは、例えば、インバータ18に制御指令を出力し、ポンプ用電動機12の駆動制御を行う。
【0142】
尚、上述の如く、蓄電装置19とポンプ用電動機12との間に電力変換装置が設けられる場合、コントローラ30Bは、例えば、電力変換装置に制御指令を出力し、電力変換装置の動作に関する制御を行ってよい。
【0143】
コントローラ30Cは、蓄電装置19に関する制御を行う。
【0144】
コントローラ30Cは、例えば、蓄電装置19の充電に関する制御を行う。
【0145】
コントローラ30Cは、例えば、蓄電装置19に内蔵される各種センサの出力に基づき、蓄電装置19の各種状態(例えば、電流状態、電圧状態、温度状態、充電状態、劣化状態、異常の有無等)を監視する。
【0146】
コントローラ30Dは、DC-DCコンバータ44に関する制御を行う。
【0147】
コントローラ30Dは、例えば、DC-DCコンバータ44の動作に関する制御を行う。
【0148】
コントローラ30Dは、例えば、センサ48等の出力に基づき、DC-DCコンバータ44の各種状態(例えば、電流状態、電圧状態、温度状態等)を監視する。
【0149】
センサ48は、DC-DCコンバータ44やバッテリ46から低電圧負荷に供給される電力の状態を測定する。例えば、センサ48は、DC-DCコンバータ44やバッテリ46から低電圧負荷に供給される電流を計測する電流センサや電圧を計測する電圧センサを含んでよい。
【0150】
温度センサ54は、冷却装置60の冷却対象の電気駆動系の機器の温度を検出する。温度センサ54は、例えば、ポンプ用電動機12の温度を検出する温度センサを含む。また、温度センサ54は、インバータ18の温度を検出する温度センサを含む。また、温度センサ54は、例えば、蓄電装置19の温度を検出する温度センサを含む。また、温度センサ54は、例えば、DC-DCコンバータ44の温度を検出する温度センサを含む。また、温度センサ54は、例えば、車載充電器70の温度を検出する温度センサを含む。温度センサ54の検出信号は、例えば、コントローラ30Aに取り込まれる。これにより、コントローラ30Aは、電気駆動系の機器の温度状態を把握することができる。
【0151】
尚、蓄電装置19とポンプ用電動機12との間に電力変換装置が設けられる場合、温度センサは、当該電力変換装置の温度状態を把握する温度センサを含んでよい。
【0152】
<消火系>
ショベル100の消火系は、異常な過熱状態から出火した蓄電装置19の消火のための構成要素群である。ショベル100の消火系の構成要素は、蓄電装置19が実際に発火した場合だけでなく、異常な過熱状態にあり発火の可能性がある場合にも用いられる。
【0153】
図3図4に示すように、ショベル100の消火系は、消火用設備80を含む。
【0154】
消火用設備80は、送入口82と、供給管84とを含む。
【0155】
送入口82は、発火した蓄電装置19の消火、或いは、異常な過熱状態にある蓄電装置の発火の抑制のための消火剤を蓄電装置19に向けて送り入れる(送入する)ために用いられる。これにより、ユーザは、ホース300等を通じて送入口82から消火剤を送り入れることによって、蓄電装置19に消火剤を送り届ける形で消火活動を行うことができる。消火剤は、例えば、水である。また、消火剤は、水以外の液体であってもよい。また、消火剤は、粉末であってもよい。
【0156】
送入口82は、連結部82Aと、リッド82Bとを含む。
【0157】
図4に示すように、連結部82Aは、消火剤を送り入れるためのホース300の先端の連結部材301を固定するために用いられる。例えば、連結部82Aと連結部材301とは雄雌の対応関係にあり、双方の対応関係によって、連結部82Aに連結部材301が固定される。これにより、ショベルは、例えば、送入口82からホース300の先端が外れてしまい、消火剤が蓄電装置19に送られないような事態を抑制することができる。また、ショベルは、ユーザがホース300を保持することなく、ホース300の連結部材301が連結部82Aに接続された状態を維持することができる。これにより、消火活動時のユーザの安全性を向上させることができる。
【0158】
例えば、図4に示すように連結部82Aの開口は、蓄電装置19より下方に設けられる。本例では、上下方向に積層される、複数の蓄電モジュール19MDのうちの最下層の蓄電モジュール19MDよりも下方に設けられる。これにより、連結部82Aの開口から水や異物等が混入した場合であっても、蓄電モジュール19MDにその水や異物が到達し混入してしまうような事態を抑制することができる。
【0159】
連結部82A及びホース300の連結部材301は、例えば、クイックカプラである。また、連結部82A及びホース300の連結部材301は、雄ねじ及び雌ねじの関係であってもよい。
【0160】
例えば、図3図4図7に示すように、連結部82Aは、外板面よりも内側に奥まった凹部の底面に設けられる。
【0161】
尚、連結部82Aは省略され、送入口82には、消火剤を送入するためのホース等を差し込むことが可能な開口が設けられるだけであってもよい。
【0162】
リッド82Bは、連結部82Aが設けられる凹部の空間を外側から覆い且つその空間を開閉可能な蓋部材である。
【0163】
例えば、図3図7に示すように、送入口82は、連結部82Aの開口がリッド82Bに覆われた状態に保持される。これにより、連結部82Aの開口への水や異物等の混入を抑制することができる。一方、図7に示すように、送入口82は、蓄電装置19の消火活動時にユーザがリッド82Bを開ける操作を行うことによって、連結部82Aの開口を露出させることができる。
【0164】
また、例えば、図3図7に示すように、送入口82は、蓄電装置19が配置される、上部旋回体3の右側の部分とは反対側の左側に設けられる。これにより、送入口82と蓄電装置19との間の距離を比較的大きく確保することができる。そのため、蓄電装置19の発火時や蓄電装置19の異常な過熱状態による発火の可能性がある状況において、送入口82にアクセスし消火活動を行うユーザの安全性を向上させることができる。
【0165】
また、例えば、図3図7に示すように、送入口82は、充電口72とは完全に独立する形で、上部旋回体3の下部且つ前部の左側面に設けられる。具体的には、充電口72は、上部旋回体3における、キャビン10の後部の下方の左側面に設けられ、送入口82は、上部旋回体3における、キャビン10の前部の下方の左側面に設けられる。これにより、ユーザは、充電口72及び送入口82を全く別の機能要素として容易に把握することができる。そのため、例えば、充電口72及び送入口82が隣接して配置される場合のように、充電作業時に送入口82に充電ケーブルを接続しようとしたり、消火活動時にホース300を充電口72に接続しようとしたりする誤操作を抑制することができる。
【0166】
供給管84は、連結部82Aの開口と、蓄電装置19との間を接続する管路である。これにより、供給管84は、蓄電装置19に消火剤を送り届けることができる。供給管84は、例えば、金属製のパイプや可撓性を有するホースやこれらの組み合わせ等により形成される。
【0167】
例えば、図4図5に示すように、供給管84は、連結部82Aの開口と蓄電モジュール19MDの開口OP1との間を接続する。具体的には、連結部82Aの開口が設けられる上部旋回体3の左側面からキャビン10と底部3Bとの間の上下方向の空間を通過する形で右向きに延びるように設けられる。そして、供給管84は、蓄電装置19の左側の近傍で上向きに延びる方向を変化させ、蓄電モジュール19MDが設置される高さ位置に合わせて右向きに蓄電モジュール19MDの筐体19Hに接続される。本例では、供給管84の蓄電モジュール19MD側の先端は、複数の蓄電モジュール19MDの個数分(本例では、4つ)に分岐している。これにより、供給管84は、送入口82から送入される消火剤を複数の蓄電モジュール19MDに対して並列に送り届けることができる。そのため、複数の蓄電モジュール19MDのうちの何れの蓄電モジュール19MDに発火の要因がある場合であっても、発火の要因がある蓄電モジュール19MDにより早く消火剤を送り届けることができる。
【0168】
例えば、図6に示すように、供給管84により送り届けられる消火剤は、開口OP1から蓄電モジュール19MDの筐体19Hの内部(空間SP1)に入り込む(図中の白抜き矢印参照)。これにより、消火剤をバッテリモジュールBMDに含まれる複数のバッテリセルに直接接触させることができる。そのため、消火用設備80は、実際の発熱源としてのバッテリセルに消火剤を直接作用させることができ、その結果、蓄電装置19の消火や蓄電装置19の異常な過熱状態による発火の抑制をより確実に図ることができる。
【0169】
送入口82から消火剤が継続的に送入されると、筐体19Hの内部に供給され続ける消火剤の圧力によって開口OP3のブリーザ19BRが開放され、消火剤は、開口OP3から筐体19Hの外部に排出される(図中の黒塗矢印参照)。
【0170】
上述の如く、開口OP3は、開口OP1よりも上方にある。そのため、空間SP1は、開口OP1から供給され続ける消火剤によって、開口OP3の高さ位置まで消火剤で満たされる状態になる。その結果、バッテリモジュールBMDの周囲が消火剤により満たされた状態が継続することによって、バッテリモジュールBMDの消火をより迅速且つより確実に行ったり、バッテリモジュールBMDの異常な過熱状態による発火をより確実に抑制したりすることができる。また、バッテリモジュールBMDの周囲が消火剤により満たされた状態を継続させることができることから、比較的少量の消火剤によって、バッテリモジュールBMDの鎮火やバッテリモジュールBMDの発火の抑制を図ることができる。
【0171】
このように、本例では、冷媒との熱交換により蓄電装置19を冷却する冷却装置60に加えて、消火剤をバッテリモジュールBMDに送り届ける消火用設備80が設けられる。これにより、冷却装置60による冷却だけでは蓄電装置19の異常な過熱状態を抑制することができない場合に、消火剤を用いて、出火した蓄電装置19の消火や蓄電装置19の異常な過熱状態による発火の抑制をより確実に実現することができる。
【0172】
[作用]
次に、本実施形態に係るショベルの作用について説明する。
【0173】
本実施形態では、ショベルは、アクチュエータと、蓄電部と、送入口と、を備える。ショベルは、例えば、上述のショベル100である。アクチュエータは、例えば、上述の油圧アクチュエータHAである。蓄電部は、例えば、蓄電装置19である。送入口は、例えば、上述の送入口82である。具体的には、蓄電部は、アクチュエータの動力源である。そして、送入口は、蓄電部に向けて消火剤を送り入れるために設けられる。
【0174】
これにより、例えば、ショベルの蓄電部が異常な過熱状態から発火した場合や異常な過熱状態からショベルの蓄電部の発火の可能性がある場合に、ショベルのユーザは、送入口から消火剤を送り入れることができる。そのため、ショベルは、ユーザの作業の下で、蓄電部の消火や異常な過熱状態による蓄電部の発火の抑制を図ることができる。
【0175】
また、本実施形態では、送入口は、蓄電部よりも下方にあってもよい。
【0176】
これにより、送入口から水や異物等が仮に侵入した場合でも、侵入した水や異物が蓄電部に到達し、蓄電部に混入してしまうような事態を抑制することができる。
【0177】
また、本実施形態では、ショベルは、管路を備える。管路は、例えば、上述の供給管84である。具体的には、管路は、送入口と蓄電部との間を接続し、消火剤を送入口から蓄電部に送るために設けられる。
【0178】
これにより、ショベルは、送入口と蓄電部との距離を比較的大きく確保することができる。そのため、ショベルは、送入口から消火剤を送入するユーザの安全性を向上させることができる。
【0179】
また、本実施形態では、ショベルは、充電口を備えてもよい。充電口は、例えば、上述の充電口72である。具体的には、充電口は、蓄電部を外部の電源で充電するためのケーブルを接続するために設けられる。そして、送入口及び充電口は、互いに独立して設けられてもよい。
【0180】
これにより、ショベルは、例えば、送入口及び充電口が隣接して設けられる場合のように、ユーザが誤って送入口に充電用のケーブルを接続したり、充電口に消火剤を送入したりする誤操作を抑制することができる。
【0181】
また、本実施形態では、蓄電部の筐体は、入口と出口とを有してもよい。筐体は、例えば、上述の筐体19Hである。入口は、例えば、上述の開口OP1である。出口は、例えば、上述の開口OP3である。具体的には、入口は、筐体の内部に消火剤が入るために設けられる。また、出口は、筐体の内部の消火剤が外部に排出されるために設けられる。そして、入口よりも出口の方が上方にある。
【0182】
これにより、筐体の内部は、入口から供給される消火剤によって出口の高さまで満たされる。その結果、筐体の内部の単位電池が消火剤に埋まった或いは浸った状態を実現することができる。そのため、ショベルは、蓄電部の消火や蓄電部の発火の抑制をより確実に実現することができる。
【0183】
また、本実施形態では、下部走行体と、下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、を備えてもよい。下部走行体は、例えば、上述の下部走行体1である。上部旋回体は、例えば、上述の上部旋回体3である。そして、送入口は、上部旋回体の下部に設けられてもよい。
【0184】
これにより、送入口の高さ位置がユーザからアクセスし易くなり、その結果、ユーザは、より容易に送入口から消火剤を送入することができる。
【0185】
また、本実施形態では、ショベルは、冷却部を備えてもよい。冷却部は、例えば、上述の冷却装置60である。具体的には、冷却部は、冷媒により蓄電部を冷却するために設けられる。そして、送入口を含む消火用設備は、冷却部とは独立して設けられてもよい。消火用設備は、例えば、上述の消火用設備80である。
【0186】
これにより、ショベルは、例えば、冷却部による冷却だけでは蓄電部の発火を抑制できないような状況であっても、消火用設備を用いて、蓄電部の消火や蓄電部の発火の抑制を図ることができる。
【0187】
また、本実施形態では、蓄電部は、複数の単位電池を含んでもよい。そして、送入口から送り入れられた消火剤は、単位電池に接触してもよい。
【0188】
これにより、ショベルは、消火剤を単位電池に直接届けることができ、その結果、蓄電部の消火や蓄電部の発火の抑制をより確実に実現することができる。
【0189】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0190】
1 下部走行体
3 上部旋回体
3B 底部
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
10 キャビン
12 ポンプ用電動機
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
17 コントロールバルブ
18 インバータ
19 蓄電装置
19BR ブリーザ
19H 筐体
19MD 蓄電モジュール
30 制御装置
30A~30D コントローラ
60 冷却装置
62 ラジエータ
62A ファン
64 ウォータポンプ
66 冷媒回路
68 ファン
70 車載充電器
72 充電口
80 消火用設備
82 送入口
82A 連結部
82B リッド
84 供給管
100 ショベル
300 ホース
301 連結部材
HA 油圧アクチュエータ
OP1~OP3 開口
SP1,SP2 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8